本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械として無給油式のスクロール式空気圧縮機を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態を図1ないし図5に従って説明する。図1は、本発明の第1の実施形態であるスクロール式空気圧縮機を示している。図1に示すスクロール式空気圧縮機1において、ケーシング2は、スクロール式空気圧縮機1の外枠を形成している。ケーシング2は、軸方向の一側がほぼ閉塞し、他側が開口した段付筒状体である。ケーシング2は、大径筒部2Aと、大径筒部2Aよりも小径な筒状に形成され大径筒部2Aの軸方向の一側から外側に向けて突出した小径の軸受筒部2Bと、軸受筒部2Bと大径筒部2Aとの間に形成された環状部2Cとを有する。
また、ケーシング2の外周側には例えば3個の軸受収容部3(1個のみ図示)が周方向に離間して設けられている。軸受収容部3は段付の円形穴によって形成され、その内部には後述する補助クランク機構20の固定側玉軸受21が収容されている。
駆動軸4は、軸受5,6を介し、ケーシング2の軸受筒部2B内に回転可能に設けられている。駆動軸4はクランク部4Aを有する。クランク部4Aは、ケーシング2の他側に位置する駆動軸4の先端側に形成され、駆動軸4の軸線O−Oに対して所定の偏心量εをもって偏心している。一方、ケーシング2の一側に位置する駆動軸4の先端側はケーシング2の外部に突出し、その突出部分にはプーリ7が取付けられている。プーリ7は、駆動軸4を回転させるためのモータにベルト(いずれも図示せず)を介して接続されている。また、クランク部4Aには主バランスウェイト8が取り付けられ、プーリ7の内部には副バランスウェイト9が取り付けられている。
固定スクロール10はケーシング2の他側に設けられ、ケーシング2の大径筒部2Aを軸方向他側から閉塞するように大径筒部2Aの開口端に固定されている。また、固定スクロール10は、軸線O−Oを中心としてほぼ円板状に形成された板体10Aと、板体10Aの表面に軸方向に立設された渦巻状のラップ部10Bと、ラップ部10Bを取り囲んで板体10Aの外周側に設けられた筒部10Cと、板体10Aの背面に突設された複数の冷却フィン10Dとによって大略構成されている。また、固定スクロール10の外周側には、吸込フィルタ11Aを通じて圧縮室17内に空気を流入させる例えば2個の吸込口11が形成され、固定スクロール10の中心部には、圧縮室17内の圧縮空気を吐出パイプ12Aを介して外部に吐出させる吐出口12が形成されている。
旋回スクロール13は、固定スクロール10と対向し、ケーシング2の大径筒部2A内に旋回可能に設けられている。旋回スクロール13は、固定スクロール10の板体10Aと対向して配置されたほぼ円板状の板体13Aと、板体13Aの表面に立設された渦巻状のラップ部13Bと、板体13Aの背面に突設された複数の冷却フィン13Cと、冷却フィン13Cの先端側に位置して固定された背面プレート13Dとによって大略構成されている。
また、背面プレート13Dの中央側には、駆動軸4のクランク部4Aと軸受14を介して回転可能に連結される有底筒状のボス部15が一体形成されている。また、背面プレート13Dの外周側には例えば3個の軸受収容部16(1個のみ図示)が周方向に離間して設けられている。軸受収容部16は、ケーシング2に設けられた軸受収容部3と対応する位置にそれぞれ配置されている。各軸受収容部16は有底の円形穴によって形成され、その内部には後述する補助クランク機構20の旋回側玉軸受31が収容されている。さらに、旋回スクロール13と固定スクロール10との間には、複数の圧縮室17が形成されている。
また、スクロール式空気圧縮機1には、固定スクロール10またはケーシング2に対する旋回スクロール13の自転を防止する複数の、例えば3個の補助クランク機構20が設けられている。これら補助クランク機構20は、ケーシング2の環状部2Cと旋回スクロール13との間において周方向に離間してそれぞれ配置されている。
図2は、図1中の補助クランク機構20を拡大して示している。なお、図2には、スクロール式空気圧縮機1が有する複数の補助クランク機構20のうちの1個の補助クランク機構20の構成を示しているが、他の補助クランク機構の構成もこれと同じである。
図2に示す補助クランク機構20において、固定側玉軸受21は、固定スクロール10側またはケーシング2側に設けられ、具体的には、ケーシング2の軸受収容部3内に収容されている。固定側玉軸受21は、背面組合せアンギュラ玉軸受であり、軸受収容部3の底部側に位置したアンギュラ玉軸受22と、軸受収容部3の開口部側に位置したアンギュラ玉軸受23とを背面合わせすることにより構成されている。
アンギュラ玉軸受22は、径方向外側に位置する外輪22Aと、径方向内側に位置する内輪22Bと、外輪22Aと内輪22Bとの間に配設された鋼球である転動子22Cとによって構成されている。アンギュラ玉軸受23も、アンギュラ玉軸受22と同様に、外輪23A、内輪23Bおよび転動子23Cにより構成されている。
外輪22A,23Aはケーシング2の軸受収容部3内に径方向および軸方向に変位不能に設けられている。具体的には、外輪22A,23Aは軸受収容部3内に圧入されており、外輪22A,23Aの外周面は軸受収容部3の内周面に押さえ付けられている。これにより、外輪22A,23Aは径方向に変位することができない。また、ボルト24を締着して押え板25をケーシング2に取り付けることにより、外輪22A,23Aは、押え板25と軸受収容部3の環状段部3Aとの間に押し付けられている。これにより、外輪22A,23Aは軸方向に変位することができない。
また、押え板25には、固定側玉軸受21の外輪22A,23Aと内輪22B,23Bとの間に充填された潤滑油が漏洩するのを防止するための円環状のシール部材26が設けられている。
内輪22B,23Bは、ボルト27を補助クランク37の固定側軸部38の雌ねじ44に螺着することにより、補助クランク37のフランジ部40とボルト27との間に固定されている。また、固定側軸部38とボルト27との間にはワッシャ28が設けられている。ボルト27の締付により、内輪22B,23Bには予圧が与えられている。これにより、外輪22A,23Aと転動子22C,23Cとの間の軸受隙間、および内輪22B,23Bと転動子22C,23Cとの間の軸受隙間はいずれも小さい。
また、ワッシャ28の当接面28Aには凸部47が形成され、ワッシャ28の外周側には工具装着部48が形成されている。凸部47および工具装着部48については後述する。
一方、旋回側玉軸受31は、旋回スクロール13側に設けられ、具体的には、背面プレート13Dの軸受収容部16内に収容されている。旋回側玉軸受31は、正面組合せアンギュラ玉軸受であり、軸受収容部16の底部側に位置したアンギュラ玉軸受32と、開口部側に位置したアンギュラ玉軸受33とを正面合わせすることにより構成されている。
アンギュラ玉軸受32は、外輪32A、内輪32Bおよび複数の転動子32Cにより構成され、アンギュラ玉軸受33は、外輪33A、内輪33Bおよび複数の転動子33Cにより構成されている。そして、外輪32A,33Aは旋回スクロール13の軸受収容部16内に径方向および軸方向に変位不能に設けられている。具体的には、外輪32A,33Aは、ボルト34を締着して押え板35を旋回スクロール13に取り付けることにより、押え板35と軸受収容部16の底面との間に押し付けられている。また、ボルト34を締め付けることにより、外輪32A,33Aには予圧が与えられている。これにより、外輪32A,33Aと転動子32C,33Cとの間の軸受隙間、および内輪32B,33Bと転動子32C,33Cとの間の軸受隙間はいずれも小さい。
また、押え板35には、旋回側玉軸受31の外輪32A,33Aと内輪32B,33Bとの間に充填された潤滑油が漏洩するのを防止するための円環状のシール部材36が設けられている。
補助クランク37は、固定側玉軸受21および旋回側玉軸受31に支持されている。補助クランク37は、固定側玉軸受21の内輪22B,23Bに挿入され、固定側玉軸受21に回転可能に支持された固定側軸部38と、旋回側玉軸受31の内輪32B,33Bに挿入され、旋回側玉軸受31に支持された旋回側軸部39と、固定側軸部38の基端側に鍔状に形成されたフランジ部40と、旋回側軸部39の基端側に鍔状に形成されたフランジ部41と、フランジ部40とフランジ部41とを接続する接続部42とにより構成されている。
固定側軸部38には、雌ねじ44が、ケーシング2の一側に位置する固定側軸部38の先端面38A(図3参照)から固定側軸部38の軸方向に穿設され、雌ねじ44にはワッシャ28を介してボルト27が螺着されている。また、固定側軸部38の先端面38Aには、ワッシャ28の当接面28A(図3参照)に形成された複数の凸部47と係合する凹部46が形成されている。凹部46については後述する。
旋回側軸部39は、フランジ部40,41等を介し、固定側軸部38に対して偏心量ε′をもって偏心して形成されている。偏心量ε′は、駆動軸4の偏心量εとほぼ同様の値に設定されている。
スペーサ43は、補助クランク37の固定側軸部38に挿入され、補助クランク37のフランジ部40と固定側玉軸受21の内輪23Bとの間に狭持されている。スペーサ43の厚さ寸法により、固定スクロール10と旋回スクロール13との間のスラスト方向における間隔が定まる。
以上のような構成を有するスクロール式空気圧縮機1は次のように動作する。すなわち、図1において、モータを駆動し、駆動軸4を回転させ、旋回スクロール13を固定スクロール10に対して旋回させると、圧縮室17が、ラップ部10B,13Bの外周側から中心側に向けて移動しつつ、これらの間で連続的に縮小する。これにより、吸引口11から、ラップ部10B,13Bの外周側に位置する圧縮室17に空気が取り込まれる。そして、圧縮室17に取り込まれた空気は、圧縮室17の連続的な縮小により圧縮され、吐出口12から吐出パイプ12Aを介して吐出される。
また、各補助クランク機構20の補助クランク37は、旋回スクロール13の旋回に伴って回転する。補助クランク機構20により旋回スクロール13の固定スクロール10に対する自転が防止される。また、補助クランク機構20により、固定スクロール10と旋回スクロール13との間のスラスト方向における間隔が高精度に維持され、各圧縮室17の気密性の保持、固定スクロール10の板体10Aと旋回スクロール13のラップ部13Bとの衝突防止、および旋回スクロール13の板体13Aと固定スクロール10のラップ部10Bとの衝突防止などが図られる。
図3は、図2中の補助クランク機構20における補助クランク37、ボルト27およびワッシャ28を分解した状態で示している。図4は、図3中の補助クランク37の固定側軸部38の先端面38Aを示している。図5は、図3中のワッシャ28の当接面28Aを示している。
図3に示すように、補助クランク37の固定側軸部38とワッシャ28との間には、ボルト27を固定側軸部38の雌ねじ44に締着するときに固定側軸部38とワッシャ28とを相互に係合する係合部45が設けられている。
係合部45は、補助クランク37の固定側軸部38に設けられた凹部46と、ワッシャ28に設けられ、凹部46とを係合する凸部47とを有する。すなわち、図4に示すように、固定側軸部38の先端面38Aには例えば2個の凹部46が周方向に離間して形成されている。一方、図5に示すように、ワッシャ28の当接面28Aには例えば2個の凸部47が周方向に離間して形成されている。固定側軸部38の2個の凹部46とワッシャ28の2個の凸部47とは、それぞれ互いに係合するように、それぞれ互いに対向する部位に配置されている。また、各凹部46および各凸部47は、各凹部46と各凸部47とを係合してボルト27を固定側軸部38の雌ねじ44に締着するときに、ワッシャ28と固定側軸部38とが相互に周方向に位置ずれしないような形状に形成されている。
また、ワッシャ28には、ボルト27を固定側軸部38に締着するときにワッシャ28がボルト27と共に回転するのを抑える工具を装着するための工具装着部48が設けられている。すなわち、ワッシャ28は、図5に示すように、その外形が六角形状に形成されており、この六角形状をしたワッシャ28の外周部が工具装着部48に当たる。この場合、工具は例えばレンチまたはスパナなどである。
スクロール式空気圧縮機1の製造においては、旋回スクロール13に予め装着された旋回側玉軸受31に補助クランク37の旋回側軸部39を挿入し、固定スクロール10に予め装着された固定側玉軸受21に補助クランク37の固定側軸部38を挿入し、旋回スクロール13と固定スクロール10とを位置決めしつつ重ね合わせる。その後、補助クランク37の固定側軸部38に、当該固定側軸部38の先端部の軸方向外側からワッシャ28を挿入し、固定側軸部38の凹部46とワッシャ28の凸部47とを相互に係合させる。続いて、ワッシャ28の工具装着部48に例えばレンチを装着し、レンチによりワッシャ28を回転しないように押さえる。そして、このようにレンチによりワッシャ28を廻り止めしながら、固定側軸部38の雌ねじ44にボルト27を装着し、当該ボルト27を締め付ける。これにより、固定側玉軸受21に予圧を与えつつ、固定側玉軸受21を固定側軸部38に固定する。
固定側軸部38とワッシャ28とは、各凹部46および各凸部47の係合により、周方向(すなわちボルト27締着時または取外時におけるボルト27の回転方向)に位置ずれしないように結合されている。これにより、ボルト27を締付時に、レンチによりワッシャ28を廻り止めすることにより、補助クランク37ひいては旋回スクロール13を廻り止めすることができる。したがって、治具などを用いて旋回スクロール13を固定しなくても、ボルト27締着時の回転力(すなわち締付力)またはボルト27取外時の回転力により旋回スクロール13が動くのを防止することができる。
次に、本発明の第2の実施形態を図6ないし図8に従って説明する。図6は、第2の実施形態であるスクロール式空気圧縮機における補助クランク機構の補助クランク、ボルトおよびワッシャを分解した状態で示している。図7は、図6中の補助クランクの固定側軸部の先端面を示している。図8は、図6中のワッシャの当接面を示している。なお、第1の実施形態と共通する部位については、同一の呼称、同一の符号で表す。
図6に示すように、本発明の第2の実施形態であるスクロール式空気圧縮機の補助クランク機構における補助クランク51の固定側軸部52とワッシャ53との間には、ボルト27を固定側軸部52の雌ねじ54に締着するときに固定側軸部52とワッシャ53とを相互に係合する係合部55が設けられている。
係合部55は、固定側軸部52に設けられた凸部56と、ワッシャ53に設けられ、凸部56とを係合する凹部57とを有する。すなわち、図7に示すように、固定側軸部52の先端面52Aには例えば2個の凸部56が周方向に離間して形成されている。一方、図8に示すように、ワッシャ53の当接面53Aには例えば2個の凹部57が周方向に離間して形成されている。固定側軸部52の2個の凸部56とワッシャ53の2個の凹部57とは、それぞれ互いに係合するように、それぞれ互いに対向する部位に配置されている。また、各凸部56および各凹部57は、各凸部56と各凹部57とを係合してボルト27を固定側軸部52の雌ねじ54に締着するときに、ワッシャ53と固定側軸部52とが相互に周方向に位置ずれしないような形状に形成されている。
また、ワッシャ53には、ボルト27を固定側軸部52に締着するときにワッシャ53がボルト27と共に回転するのを抑える工具を装着するための工具装着部58が設けられている。すなわち、図8に示す六角形状をしたワッシャ53の外周部が工具装着部58に当たる。
このような構成を有する第2の実施形態のスクロール式空気圧縮機によっても、上述した第1の実施形態のスクロール式空気圧縮機1とほぼ同様に、ボルト27の締付時に、レンチによりワッシャ53を廻り止めすることにより、治具などを用いて旋回スクロールを固定しなくても、ボルト27締着時の回転力(すなわち締付力)またはボルト27取外時の回転力により旋回スクロールが動くことを防止することができる。
また、図1ないし図3に示す補助クランク37の固定側軸部38とボルト27との間に設けられたワッシャ28を、図9および図10に示すワッシャ61に置き換えてもよい。ワッシャ61の当接面61Aには、ワッシャ28と同様に、補助クランク37の固定側軸部38の2個の凹部46と係合する2個の凸部62がそれぞれ形成されている。また、ワッシャ61は円形の外形を有し、ワッシャ61の外周側には2個の溝部63が180度の間隔をもって形成されている。これら溝部63が、ボルト27を固定側軸部38に締着するときにワッシャ61がボルト27と共に回転するのを抑える工具を装着するための工具装着部に当たる。この場合、ワッシャ61の回転を抑える工具として、図9および図11に示すような工具64を用いる。工具64の先端部には、内部にボルト27のヘッド部を通す穴65が形成され、さらに、ワッシャ61の2個の溝部63にそれぞれ係合するための2個の突起66が一体形成されている。
このような構成によっても、ボルト27の締付時に、工具64によりワッシャ61を廻り止めすることにより、治具などを用いて旋回スクロール13を固定しなくても、ボルト27締着時の回転力またはボルト27取外時の回転力により旋回スクロール13が動くことを防止することができる。
また、図6に示す補助クランク51の固定側軸部52とボルト27との間に設けられたワッシャ53を、図12および図13に示すワッシャ71に置き換えてもよい。ワッシャ71は例えば円板状に形成されている。また、補助クランク51の固定側軸部52と当接するワッシャ71の当接面71Aには、ワッシャ53と同様に、固定側軸部52の2個の凸部56とそれぞれ係合する2個の凹部72が形成されている。また、ワッシャ71の外周側に位置し、ワッシャ71の当接面71Aと反対側の面71Bには、2個の穴73が180度の間隔をもって形成されている。これら穴73が、ボルト27を固定側軸部52に締着するときにワッシャ71がボルト27と共に回転するのを抑える工具を装着するための工具装着部に当たる。この場合、ワッシャ71の回転を抑える工具として、図12および図14に示すような工具74を用いる。工具74の先端部には、内部にボルト27のヘッド部を通す穴75が形成され、さらに、ワッシャ71の2個の穴73にそれぞれ係合するための2個のピン76が取り付けられている。
このような構成によっても、ボルト27の締付時に、工具74によりワッシャ71を廻り止めすることにより、治具などを用いて旋回スクロールを固定しなくても、ボルト27締着時の回転力またはボルト27取外時の回転力により旋回スクロールが動くことを防止することができる。
また、図6に示す補助クランク51の固定側軸部52とボルト27との間に設けられたワッシャ53を、図15および図16に示すワッシャ81に置き換えてもよい。ワッシャ81は例えば円板状に形成されている。また、補助クランク51の固定側軸部52と当接するワッシャ81の当接面81Aには、ワッシャ53と同様に、固定側軸部52の2個の凸部56とそれぞれ係合する2個の凹部82が形成されている。また、ワッシャ81の当接面81Aと反対側の面81Bには2個の溝83が180度の間隔をもって形成されている。これら溝83が、ボルト27を固定側軸部52に締着するときにワッシャ81がボルト27と共に回転するのを抑える工具を装着するための工具装着部に当たる。この場合、ワッシャ81の回転を抑える工具として、図15および図17に示すような工具84を用いる。工具84の先端部には、内部にボルト27のヘッド部を通す穴85が形成され、さらに、ワッシャ81の2個の溝83にそれぞれ係合するための2個の突条部86が取り付けられている。
このような構成によっても、ボルト27の締付時に、工具84によりワッシャ81を廻り止めすることにより、治具などを用いて旋回スクロールを固定しなくても、ボルト27締着時の回転力またはボルト27取外時の回転力により旋回スクロールが動くことを防止することができる。
次に、本発明の第3の実施形態を図18に従って説明する。図18は、本発明の第3の実施形態であるスクロール式空気圧縮機における補助クランク機構を示している。なお、図18には、スクロール式空気圧縮機が有する複数の補助クランク機構のうちの1個の補助クランク機構の構成を示しているが、他の補助クランク機構も構成もこれと同じである。また、他の実施形態と共通する部位については、同一の呼称、同一の符号で表す。
図18中の補助クランク機構90において、旋回側玉軸受31の内輪32B,33Bには、補助クランク91の旋回側軸部92がキャップ部材93を介して挿入されている。キャップ部材93は有底筒状に形成され、円板状の底部93Aと、底部93Aから軸方向に延びる円筒部93Bと、円筒部93Bの開口部側に設けられた径方向外側に広がる鍔部93Cとを備えている。キャップ部材93は、内輪32B,33Bに圧入固定され、内輪32B,33Bと一体化して回転する。また、円筒部93Bの内周側において、キャップ部材93の底側には小径の穴部93Dが形成され、キャップ部材93の開口側には、穴部93Dの径と比較して大径の穴部93Eが形成されている。
補助クランク91は、第1の実施形態における補助クランク37とほぼ同様に、固定側軸部94、旋回側軸部92、フランジ部95およびフランジ部96により構成され、固定側軸部94には雌ねじ97および2個の凹部98が形成されている。補助クランク91の旋回側軸部92の径は、キャップ部材93の底側に位置する小径の穴部93Dの径に適合するように、第1の実施形態における補助クランク37の旋回側軸部39の径よりも小さい。補助クランク91の旋回側軸部92の先端部は、キャップ部材93の小径の穴部93Dに締まり嵌めされている。これにより、旋回側軸部92の先端部は旋回側玉軸受31に軸方向および径方向に変位不能に取り付けられている。一方、旋回側軸部92の基端部の外周と、キャップ部材93の大径の穴部93Eとの間には所定寸法の隙間d1が形成されている。すなわち、旋回側軸部92の基端部は、キャップ部材93または旋回側玉軸受31に拘束されていない非拘束部99となっている。また、旋回側軸部92の長さ寸法は、キャップ部材93の穴部93Dおよび穴部93Eを加えた深さ寸法よりも長く形成されている。これにより、キャップ部材93の鍔部93Cと補助クランク91のフランジ部96との間には所定寸法の隙間d2が形成され、鍔部93Cとフランジ部96とが接触しない構造となっている。旋回スクロール13の旋回により、旋回スクロール13に遠心力が作用したときには、隙間d1,d2により、補助クランク91の旋回側軸部92の非拘束部99がフランジ部96を支点として変形し、補助クランク91が径方向に変位する。これにより、旋回スクロール13に作用する遠心力が補助クランク91に作用するのを緩和し、補助クランク91の耐久性の低下を防止することができる。
このような構成を有するスクロール式空気圧縮機の第3実施形態によっても、ボルト27の締付時に、レンチまたはスパナなどの工具によりワッシャ28を廻り止めすることにより、治具などを用いて旋回スクロール13を固定しなくても、ボルト27締着時の回転力またはボルト27取外時の回転力により旋回スクロール13が動くことを防止することができる。
また、スクロール式空気圧縮機の第3実施形態では、隙間d1,d2を形成することにより、補助クランク91における旋回側軸部92の非拘束部99を変位可能とし、旋回スクロール13の旋回時に作用する遠心力により補助クランク91の耐久性が低下するのを防止する構成を採用している。このような構成を採用した都合上、ボルト27を固定側軸部94の雌ねじ97に締着するときに、仮にワッシャ28を回転しないように工具で押さえないとすれば(または補助クランク91の固定側軸部94とワッシャ28とを相互に係合する係合部がないとすれば)、ボルト27の締着による締付力が補助クランク91に加わる。このため、補助クランク91が傾斜して旋回スクロール13が固定スクロール10側から抜け出たり、補助クランク91の旋回側軸部92の基端に大きな応力が加わり、旋回側軸部92が曲がったり、折れたりするおそれが想定される。しかしながら、本発明のスクロール式空気圧縮機の第3実施形態によれば、ボルト27の締付時に、レンチまたはスパナなどの工具によりワッシャ28を廻り止めすることにより、ボルト27締着時の締付力が補助クランク91に加わるのを防止することができる。これにより、補助クランク91が傾斜して旋回スクロール13が固定スクロール10側から抜け出ることを防止することができる。また、補助クランク91の旋回側軸部92の基端に大きな応力が加わるのを防止でき、旋回側軸部92が曲がったり、折れたりするのを防止することができる。
なお、前記各実施形態では、スクロール式流体機械として無給油式のスクロール式空気圧縮機を例にあげたが、本発明はこれに限らず、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機、真空ポンプ、膨張機などの他のスクロール式流体機械にも適用することができる。
また、図3ないし図17に示した係合部45,55を構成する凹部46,57,72,82,98および凸部47,56,62の形状、および工具装着部48,58などの形状、さらには工具64,74,84の形状などは、図示したものに限らない。取付部材を補助クランクの固定側軸部の雌ねじに締着するときに固定側軸部とワッシャとを相互に係合するのに相応しい形状であれば、他の形状を採用することもできる。また、凹部46,57,72,82,98および凸部47,56,62の個数も限定されない。
以上説明した通り、請求項1の発明によるスクロール式流体機械は、補助クランクの固定側軸部の雌ねじに螺着され、補助クランクのフランジ部との間に固定側玉軸受を固定する取付部材と、固定側軸部と取付部材との間に設けられたワッシャと、取付部材を固定側軸部の雌ねじに締着するときに固定側軸部とワッシャとを相互に係合する係合部とを備えている。このような構成により、スクロール式流体機械の製造において、取付部材を補助クランクの固定側軸部の雌ねじに締着するときに、工具によりワッシャを押さえつつ、取付部材を締め付けることにより、治具などを用いて旋回スクロールを固定しなくても、取付部材の締め付けにより発生する締付力により旋回スクロールが動くのを防止することができる。したがって、スクロール式流体機械の製造時における固定スクロール、旋回スクロールおよび補助クランク機構などの組付工程において、治具などを用いて旋回スクロールを固定する工程を省くことができ、よって、固定スクロール、旋回スクロールおよび補助クランク機構などの組付作業を簡単化することができる。
具体的には、上述した本発明の第1の実施形態であるスクロール式空気圧縮機1によれば、スクロール式空気圧縮機1の製造において、ボルト27を補助クランク37の固定側軸部38の雌ねじ44に締着するときに、工具によりワッシャ28を押さえつつ、ボルト27を締め付けることにより、治具などを用いて旋回スクロール13を固定しなくても、ボルト27の締め付けにより発生する締付力により旋回スクロール13が動くのを防止することができる。したがって、固定スクロール10、旋回スクロール13および補助クランク機構20などの組付作業を簡単化することができる。
また、上述した本発明の第3の実施形態であるスクロール式空気圧縮機のように、補助クランク91における旋回側軸部92の基端部周辺に隙間d1,d2を形成し、旋回側軸部92の基端部に非拘束部99を設ける構成とした場合には、当該スクロール式空気圧縮機の製造において、ボルト27を補助クランク91の固定側軸部94に締着するときに、工具によりワッシャ28を押さえつつ、ボルト27を締め付けることにより、ボルト27の締め付けにより発生する締付力により補助クランク91の旋回側軸部92の基端に大きな応力が加わるのを防ぐことができ、補助クランク91の耐久性が低下するのを防止することができる。
請求項2の発明によるスクロール式流体機械によれば、例えば上記第1の実施形態のスクロール式空気圧縮機1のように、補助クランク37の固定側軸部38とワッシャ28とを相互に係合する係合部45を、固定側軸部38に設けられた凹部46と、ワッシャ28に設けられた凸部47とから構成したことにより、ボルト27(取付部材)を補助クランク37の固定側軸部38の雌ねじ44に締着するときに、固定側軸部38とワッシャ28とを相互に確実に係合することができる係合部45を容易に実現することができる。
請求項3の発明によるスクロール式流体機械によれば、例えば上記第2の実施形態のスクロール式空気圧縮機のように、補助クランク51の固定側軸部52とワッシャ53とを相互に係合する係合部55を、固定側軸部52に設けられた凸部56と、ワッシャ53に設けられた凹部57とから構成することによっても、ボルト27(取付部材)を補助クランク51の固定側軸部52の雌ねじ54に締着するときに、固定側軸部52とワッシャ53とを相互に確実に係合することができる係合部55を容易に実現することができる。
請求項4の発明によるスクロール式流体機械によれば、例えば上記第1の実施形態のスクロール式空気圧縮機1のように(図5参照)、ボルト27(取付部材)を補助クランク37の固定側軸部38に螺着するときにワッシャ28がボルト27と共に回転するのを抑える工具を装着するための工具装着部48をワッシャ28に形成する構成としたから、ボルト27を補助クランク37の固定側軸部38に締着するときに、工具をワッシャ28の工具装着部48に装着することにより、ワッシャ28を当該工具により確実に押さえることができ、ボルト27締着時の締付力が旋回スクロール13または補助クランク37の旋回側軸部39の基端に加わるのを確実に防止することができる。また、上記第2の実施形態のスクロール式空気圧縮機におけるワッシャ53の工具装着部58(図8参照)、図10中のワッシャ61の溝部63、図13中のワッシャ71の穴73、または図16中のワッシャ81の溝83によっても、ワッシャ53、61、71または81をレンチ、スパナまたは工具64、74、84により確実に押さえることができ、ボルト27締着時の締付力が旋回スクロール13または補助クランク37の旋回側軸部39の基端に加わるのを確実に防止することができる。