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JP5116345B2 - 位相差測定方法及び装置 - Google Patents
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JP5116345B2 - 位相差測定方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は位相差の決定方法に関し、特に散乱、吸収または偏光解消により透過率が低下した試料の位相差を、分光器を用いて正確に決定できる位相差の決定方法、および該方法を用いた位相差測定装置に関する。
位相差の測定は、液晶ディスプレイ(LCD)用の位相差フィルムの評価や光ディスク、プラスチック等の光学素子の品質管理などにおいて、その必要性が増しており、精度と共に、簡便性などが求められている。
位相差測定方法としては、エリプソメトリによる偏光解析を用いる方法が知られている。エリプソメトリは、偏光子や補償子を高速に回転させる機構または光弾性変調器(PEM)または左右円偏光ヘテロダイン干渉法など偏光もしくは位相を変調させる方法と、取得したデータを高速演算処理するための装置などからなり、精度の高い位相差の測定が可能である。しかし、この方法は、原理的に複雑で高価な方法である。また、単一波長での測定データを基にする方法であるため、特に液晶ディスプレイ(LCD)用の位相差フィルムの評価を行う際のように可視光全域の位相差の測定が必要な場合には、モノクロメータなどで波長をスキャンしてデータを取得する必要があり、高速に位相差の波長分散測定ができないという問題がある。
その他の位相差測定方法としては、例えば特許文献1に記載の方法がある。この方法は、パラニコルの偏光子/検光子間に配置した試料を1回転させたときの単色光の透過光強度の角度依存性から位相差を求める方法であり、偏光や位相の変調の必要がなく必要とするデータ量も少ない。そのためこの方法を用いた測定装置は安価な構成が可能である装置として、現在市販されている。しかし、この方法では位相差は透過光強度を基に求められるため、吸収、散乱あるいは偏光解消などを示す試料の位相差を決定する際には大きな誤差が生じやすい。
さらに、非特許文献1や特許文献2及び3に開示されるように、分光光度計などにより得られる透過スペクトルを用いて位相差を測定する方法が知られている。この方法は必要とする波長範囲において、位相差の波長分散を簡便に測定することができる。
特許第2791479号 Westら,Journal of Optical Society of America,vol.39,p.791−794(1949). 特許第3777659号 特公平5−18370号公報
位相差フィルムなどの測定対象は無色透明であることが多いため、従来の位相差測定方法においてはいずれも、測定された透過光強度が試料自体の光吸収、散乱あるいは偏光解消の影響は考慮されていない。しかし、試料が有色の場合、積層構造を有するフィルムである場合や、試料に何らかの欠陥がある場合、試料に吸収等が生じることがあるため、透過光強度を利用する従来の位相差測定方法においては正確な測定は不可能である。そこで、本発明においては、散乱、吸収または偏光解消を示す試料の位相差を正確に決定できる方法の提供を課題とする。
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、分光光度計などにより得られる分光スペクトルを用いて位相差を測定する方法として、試料自体の光吸収、散乱あるいは偏光解消の影響を考慮して正確に位相差を測定する方法を見出して、この知見を基に本発明を完成した。すなわち、本発明は下記[1]〜[9]を提供するものである。
[1]光源、偏光子、試料、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系で測定された分光スペクトルから該試料の位相差を決定する方法であって、
該試料の位相差の影響がない該試料の分光スペクトルデータを用意すること、
該偏光子の透過軸と該試料の光学軸と該検光子の透過軸との配置を該試料の位相差が検出される配置として測定される少なくとも1つの分光スペクトルを測定すること、
および
前記分光スペクトルデータにより前記分光スペクトルを補正すること
を含む方法。
[2]光源、偏光子、試料、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系で測定された分光スペクトルから該試料の位相差を決定する方法であって、
(1)偏光子と検光子とをパラニコル配置とし、かつ偏光子の透過軸と試料の光学軸との為す角を0または90度として分光スペクトルを測定すること、及び
(2)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として分光スペクトルを測定すること
(3)(2)で得られるスペクトルにより(1)で得られるスペクトルを補正すること
を含む方法。
[3]補正が、(1)で得られるスペクトルの波長λにおける透過率を(2)で得られるスペクトルの該波長λにおける透過率で除算することにより行われる[2]に記載の方法。
[4]光源、偏光子、試料台、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系、ならびに下記(11)により(12)を補正する手段を含む位相差測定装置:
(11)試料台上に配置される試料の位相差の影響がない該試料の分光スペクトルデータ;
(12)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料台上に配置される試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として測定される分光スペクトル。
[5]光源、偏光子、試料台、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系、ならびに下記(21)により(12)を補正する手段を含む位相差測定装置:
(21)偏光子の透過軸と試料台上に配置された試料の光学軸と該検光子の透過軸との配置を該試料の位相差が検出されない配置として測定された分光スペクトル;
(12)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料台上に配置される試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として測定される分光スペクトル。
[6]光源、偏光子、試料台、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系、ならびに下記(31)により(12)を補正する手段を含む位相差測定装置:
(31)偏光子と検光子とをパラニコル配置とし、かつ偏光子の透過軸と試料台上に配置される試料の光学軸との為す角を0または90度として測定される分光スペクトル;
(12)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料台上に配置される試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として測定される分光スペクトル。
[7] 前記(12)を、コーシーの分散式を用いてフィッティングする手段をさらに含む[4]〜[6]のいずれか一項に記載の位相差測定装置。
[8] 前記光学系の偏光子と検光子の間に波長板が配置されている[4]〜[7]のいずれか一項に記載の位相差測定装置。
[9]測定波長域内の2つ以上の波長それぞれにおいて、前記波長板のレターデーション値を0.5以上の整数または半整数で除算した値が該波長と一致する[8]に記載の位相差測定装置。
本発明により、散乱、吸収または偏光解消を示す試料の位相差を正確に測定できる位相差測定方法および装置が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、角度について記載のある場合は、厳密な角度との誤差が±1度の範囲内であればよく、±0.1度の範囲内であることがより好ましい。
0度とは実質的に二つの軸の為す角度が平行である状態を表し、90度とは実質的に二つの軸の為す角度が直交している状態を表す。
パラニコルとは偏光子と検光子の透過軸の為す角度が0度であることを表し、クロスニコルとは偏光子と検光子の透過軸の為す角度が90度であることを表すが、実際は後述の測定手段で示すように、本発明の測定方法で用いられる光学系において、試料がない状態での偏光子と検光子の配置につき、入射光透過率が最も小さい位置と最も大きい位置をそれぞれクロスニコル、パラニコル位置とする場合もある。
本明細書において、「分光スペクトル」とは「吸収スペクトル」、「散乱スペクトル」、及び「透過スペクトル」等を含む意味であり、「透過スペクトル」であることが好ましい。
[位相差測定原理]
分光スペクトルから試料の位相差を決定する原理を以下に説明する。
偏光状態とそれに基づく透過率などの光学特性は、ジョーンズ行列やミューラー行列により記述することができるが、以下では特に偏光解消度が考慮できるミューラー行列で説明する。ミューラー行列によれば、偏光状態はストークスパラメータで記述され、位相差フィルムや偏光子、検光子などを通過するときの各素子による偏光状態の変化が、4×4のミューラー行列により記述される。
まず、偏光子と検光子とがクロスニコルであり、偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた位相差フィルムの光の透過率につき説明する。
偏光子の透過軸を基準方向(0度)とすると、
偏光子のミューラー行列Mpは式(1)のように記述される。
Figure 0005116345
検光子のミューラー行列Maは式(2)のように記述される。
Figure 0005116345
偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた位相差フィルムのミューラー行列Mrは式(3)のように記述される。
Figure 0005116345
ここで、Γは式(4)で表される値である。
Figure 0005116345
式中、Reは前記位相差フィルムの位相差であり、λは測定波長である。分光スペクトル測定の際はλが変数となる。
入射光が偏光子を100%通過する偏光であるとしたとき、言い換えると偏光子を通過した光を100%としたとき、この偏光子→位相差フィルム→検光子を通過するストークスパラメータは式(5)のようになる。
Figure 0005116345
上記式Soutの第一成分が光の透過率である。すなわち、光の透過率T(λ)は以下式(6)のように表される
Figure 0005116345
式(6)から、偏光子と検光子とがクロスニコルであり、偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた位相差Reのフィルムの光の透過率T(λ)は、理論上Re/λが整数のときに0(透過率0%)となり、Re/λが半整数のときに1(透過率100%)となることが分かる。図1にRe=2000nmの試料(フィルム)の分光スペクトルの例を示す。
同様に偏光子と検光子とがパラニコルとして、偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた位相差フィルムの光の透過率は、下記の式(7)で表される。
Figure 0005116345
式(7)から、理論上Re/λが整数のときに0(透過率0%)となり、Re/λが半整数のときに1(透過率100%)となることが分かる。
したがって、偏光子、試料、および検光子が上記何れかの配置である場合に、分光スペクトルにおいて谷の位置(透過率0%)である波長及び山の位置(透過率100%)である波長を読み取ることによって位相差Reの値を求めることができることがわかる。
[吸収、散乱の影響]
本発明の方法は、偏光子の透過軸と該試料の光学軸と該検光子の透過軸との配置を該試料の位相差が検出される配置として測定される分光スペクトルを、該試料の位相差の影響がない該試料の分光スペクトルデータで補正することにより、試料の位相差をより正確に決定することを可能とする。
上記分光スペクトルデータから得られる試料の光透過率が波長の関数としてt(λ)で表されるとすると、吸収性または散乱性フィルムのミューラー行列Mtは等方性の場合はスカラー量となるので、上述した偏光子と検光子とがクロスニコルであり偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた位相差フィルムの光の透過率T(λ)は下記式(8)のように記述される。
Figure 0005116345
式(8)からわかるように、位相差の影響がない試料の分光スペクトルデータからt(λ)を求めることにより、吸収/散乱項と位相差項を分離することができる。
位相差の影響がない試料の分光スペクトルデータとしては該試料の既知のデータを用いてもよいが、位相差測定のための光学系において偏光子の透過軸と該試料の光学軸と該検光子の透過軸との配置を該試料の位相差が検出されない配置として測定された分光スペクトルデータであることが好ましい。
試料の位相差が検出されない配置としては偏光子と検光子とをパラニコル配置とし、かつ偏光子の透過軸と試料の光学軸との為す角を0または90度とした配置が挙げられる。すなわち、例えば透過軸と試料の光学軸との為す角を0度とした場合(偏光子の透過軸と光学軸が一致している場合)について以下に説明する。
偏光子の透過軸と光学軸が一致した位相差フィルムのミューラー行列Mr2は式(9)のように記述される。
Figure 0005116345
これより偏光子と検光子がパラニコルのときの吸収や散乱を考慮した透過光のストークスパラメータSoutは式(10)となる。
Figure 0005116345
(10)式からこの光学系の透過率はt(λ)で表されることがわかる。
位相差の影響がない試料の分光スペクトルデータにおける透過率t(λ)を用いて、たとえば上記式(8)の透過率T(λ)の式を割り算により補正してやることにより、吸収や散乱の影響のないスペクトルに補正することができ、その結果として得られる位相差の精度が向上する。
[位相差の波長分散]
試料の位相差に波長分散がある場合は、分光スペクトルにある山と谷のピークにおける波長が上記の理論で説明される波長よりずれる。例えば図1の例で500nmにおいて位相差が2000nmならば図1の通り透過率は0%であるが、仮に400nmにおける位相差が波長分散で2200nmとなったとすると、半整数倍なので透過率は100%となり、図1と異なる。この2200nmは400nmの5.5倍であるが、2000nmの5.5分の1は約363nmであるから、この波長分散を有する試料の400nmに見られる山のピークは、図1においてグラフの外にある363nmに存在するはずの山のピークが、位相差が大きくなったことによって長波側にシフトしたものであるということになる。位相差の波長分散は、コーシーの分散式によって記述することができるので、透過スペクトルからフィッティングにより位相差を求めるには、コーシーの分散式を用いることが好ましい。
コーシーの分散式は、一般に屈折率の波長依存性(波長分散)を表すために用いられ、式(11)のように記述される。
Figure 0005116345
レターデーションは、複屈折すなわち二つの異なる屈折率の差に試料の厚みdを乗じたものであるから、屈折率と同様に式(12)のようにコーシーの分散式を適用することができる。
Figure 0005116345
コーシーの分散式は波長の4次までを用いることが多いが、よりフィッティングをより簡便かつ高速にするためには2次まででもよく、精度上必要がある場合には6次以上の偶数次まで用いてもよい。精度と速度のバランスからは4次までを用いることが好ましい。また、位相差の波長分散としてはコーシーの分散式以外にもHandbook of optics(2nd ed.),vol.1(McGraw−Hill)のp.33.61−33.84に記載されている任意の式もしくは任意の2つ以上の和を用いることができる。
[波長板の利用]
図2にRe=100nmの試料(フィルム)の分光スペクトル例を示す。このように試料の位相差が小さくなると、測定波長範囲において半整数倍も整数倍も見られなくなるため、スペクトルにピークが見られなくなる。ピークが観測されないスペクトルによっても理論的には位相差を求めることはできるが、実際には計測系のノイズや試料の吸収、散乱、偏光解消などの影響によってスペクトルの絶対値が変化してしまい、算出される位相差の精度に影響がある。
測定波長範囲においてスペクトルにピークが観測される状態とするため、位相差が小さい試料の測定には波長板を利用して、得られる値の精度を上げることができる。例えば試料の光学軸と光学軸の一致した位相差Rewpの波長板を挿入することを考える。偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた波長板のミューラー行列Mwpは式(13)のようになる。
Figure 0005116345
偏光子と検光子とがクロスニコルであり偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた試料および偏光子の透過軸に対して光学軸が45度傾いた波長板を有する光学系のストークスパラメータは、式(14)となる。
Figure 0005116345
であり、Rewpは波長板の位相差を表す。
すなわち光の透過率T(λ)は下記の式(15)で表される。
Figure 0005116345
この式より、波長板によって位相差を底上げすることによって、測定波長範囲においてスペクトルにピークを検出することができることがわかる。このピークから測定された位相差を決定後、試料の位相差は波長板の位相差を差し引いて算出すればよい。
[位相差測定装置]
以上で説明した本発明の方法は下記で説明する位相差測定装置によって、実施することができる。
位相差測定装置は、光源、偏光子、試料台、検光子、及び分光器を含み、図3に示す順で配置されていることが好ましい。位相差測定装置はさらに上記の補正、フィッティング等を行う計算手段として光信号解析装置等を含む。
[光源]
光源は白色光源であることが好ましい。白色光源としては、レ−ザーやLEDのように狭い波長範囲でなく、測定波長範囲において出力を有していれば特に限定はなく、測定波長範囲が可視域の一部であるならば、必ずしも見た目に白色でなくともよい。そのような光源の例としては、ハロゲンランプやキセノンランプが挙げられる。また、複数色の光源を混色させて用いてもよい。光源は入力する電源や環境温度により出力が変化するため、電源点灯後20分〜1時間程度放置した後に輝度の変化が5%/時間以下であることが好ましく、そのようにするために電源に安定化装置が用いられていることが好ましい。
[偏光子、検光子]
偏光子には回転機構は特に必要ないが、光軸中心の回転機構があると全方位角測定が可能となるので好ましい。検光子は、その透過軸を偏光子の透過軸とパラニコル又はクロスニコルにする等の必要があるため、光軸中心の回転機構があることが好ましい。
偏光子および検光子としては、分光器を用いるため広い波長域で高い偏光度を有することが望ましい。本発明の方法は、従来の方法に比較して、透過率の絶対値に影響されにくいので偏光度は95%以上あればよい。この偏光度を有する波長域は390〜800nmであることが特に好ましい。この偏光度を有している限り、偏光子は吸収型偏光子でも反射型偏光子でもよいが、検光子としては吸収型偏光子が好ましい。具体的には、広い波長域で比較的高い偏光度を有するヨウ素系偏光子、二色性色素を用いた二色性色素偏光子、プリズム型偏光子としてグラントムソン型偏光子、グランテーラー型偏光子、その他の偏光子としてワイヤグリッド偏光子、誘電体偏光子等が挙げられ、波長域が広いヨウ素系偏光子とプリズム型偏光子が好ましく、より波長域が広くかつ必要とする偏光度を有するヨウ素系偏光子が特に好ましい。
[試料台]
偏光子と検光子の間には試料台が配置されているが、試料台は光軸中心の回転機構があることが好ましく、さらに斜め入射時の位相差を測定するために、試料台全体が回転する機構があることが好ましい。
[分光器]
分光器としては、必要な波長範囲の分光が可能で十分な光強度の分解能を有していれば特に限定はない。モノクロメータでスキャンする分光器でも回折格子で分光した光を1次元フォトディテクタアレイで計測するマルチチャンネルタイプ分光器でもよいが、測定時間が短いマルチチャンネルタイプが好ましい。分光器の強度の分解能としてはデジタルならば8ビット以上であることが好ましく、12ビット以上であることが特に好ましい。また、波長分解能Fは位相差の測定精度と対応するため、FWHMで10nm以下が好ましく、5nm以下が特に好ましい。さらに、波長板の位相差が測定対象波長λに対してnλとするとき、F×nは200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が最も好ましい。
[波長板]
位相差測定装置としては、図4のように偏光子と検光子の間に波長板が挿入されていることがさらに好ましい。波長板は試料台の偏光子側に配置しても検光子側に配置してもよい。波長板は光軸を中心とした回転機構と、光軸上から波長板を退避させるための一軸ステージがあることが好ましい。波長板によって、前述の通り小さな位相差の試料を測定することが可能となる。
さらに、光源や分光器にはわずかな偏光依存性があり、それがスペクトル測定に影響する可能性があるため、光源と偏光子の間、および検光子と分光器の間には測定波長域においてなるべく吸収を持たない偏光解消子を挿入することもできる。
波長板としては、測定波長範囲にピークが見られれば特に限定はないが、測定波長域において0.5以上の整数または半整数との積が前記波長板のレターデーション値を示している波長を2つ以上有していることが好ましい。測定精度との関係から400〜10000nm波長板が好ましく、1200〜8000nm波長板がさらに好ましく、2000〜6000nm波長板が特に好ましい。材料としては一般に延伸したポリマーフィルムや水晶、カルサイトなどの無機結晶が挙げられるが、波長板は測定される位相差の値に直接影響するため、温度や湿度などの環境により変化しにくいものが望ましい。そのような波長板の好ましい例として、水晶、カルサイト、ポリマー延伸フィルムをガラスでサンドイッチしたものなどが挙げられる。
[測定手順]
測定手順の一例を説明する。
入射偏光子は試料台全体の回転軸方向に対して45度に透過軸を固定する。次に、光軸上に波長板と試料がない状態で検光子を360度回転させ、分光器で透過スペクトルを観測しながら、最も透過率の小さい位置と透過率の大きい位置をそれぞれクロスニコル、パラニコル位置として検出する。それらのときの分光スペクトルをそれぞれ、0%、100%として光学系を較正し、透過率測定ができるようにしてから、検光子をクロスニコルもしくはパラニコルに配置する。以下、クロスニコルで説明する。次いで、標準となる波長板の位相差を測定する。波長板を光軸回転で360度回転させて試料の透過率が最小となる角度を検出する。次いで、最小となる角度から45度回転させ(クロスニコル下における明光位)、分光スペクトルを測定すると図1のようなスペクトルが得られる。このスペクトルに対し、式(14)の第一要素を用いてフィッティングすることで、位相差を求めることができる。波長板は既知のものを用いてよいので、波長板の遅相軸(屈折率の大きい方の軸で光学軸に対して平行または直交)はあらかじめ既知であるから、最初から遅相軸を45度傾斜させた状態で分光スペクトルを測定してもよい。
次いで波長板を光軸上から退避させ、試料を光軸回転で360度回転させて試料の透過率が最小となる角度を検出する。次いで波長板を遅相軸を45度にして挿入し、試料を透過率が最小となる角度から±45度に設定して2つの分光スペクトルを測定する。この分光スペクトルを波長板のときと同様にしてフィッティングすると、式(14)に従って波長板+試料、もしくは波長板−試料(偏光子と検光子とがクロスニコルであり偏光子の透過軸に対して遅相軸が−45度傾いた試料および偏光子の透過軸に対して遅相軸が45度傾いた波長板を有する光学系のストークスパラメータとして式(14)と同様に求められる)の位相差を得ることができる。±45度の二つの配置のうち、波長板+試料を得る配置が波長板と試料の遅相軸が一致しているので、これにより試料の遅相軸を識別することができる。以上により、位相差の波長分散と遅相軸の方向を得ることができる。
本発明の方法においては、波長板測定後に波長板を退避させ、試料を光軸回転で360度回転させて試料の透過率が最小となる角度を検出した後、この配置のままでスペクトルを測定する。これが、位相差の影響がない分光スペクトル(吸収・散乱スペクトル)となる。このまま上記と同様にして波長板挿入状態で試料の±45度での分光スペクトルを求めるが、フィッティングの前にこの分光スペクトルを吸収・散乱スペクトルで除算することにより、吸収や散乱による透過率のロスを補正する。これにより、吸収や散乱を有する試料でも、精度よく位相差を測定することができる。
[補正、及びフィッティング手段]
得られたデータを基に、上記(8)式に基づいて、T(λ)をt(λ)で除算して、スペクトルの補正を行い、位相差を決定する。
実際にはt(λ)で除算して得られた補正後のスペクトルT(λ)はさらに式(16)でフィッティングを行うことが好ましい。すなわち、位相差の波長分散として上記のコーシーの式を用い、さらに光学系のノイズ等に起因する透過率変化を考慮することが好ましい。
Figure 0005116345
Tmax(λ)、Tmin(λ)は透過率を補正するためのものであり、波長依存性のない定数でも一次式(17)でも二次式(18)でも指数関数(19)でもよいが、精度上は一次式で十分であるので好ましい。
Figure 0005116345
フィッティングの方法は、例えば科学計測のためのデータ処理入門,南茂夫監修、河田聡編著に記載のような非線形最適化手法や、遺伝的アルゴリズム等を用いることができる。これら手法はフィッティングの際の初期値が重要であるが、精度良くフィッティングするために、式(16)においてC=0、Tmax=1、Tmin=0として先にフィッティングしたものを初期値として、全パラメータをフィッティングすることが好ましい。フィッティングにおいては、二乗誤差を最小にするのが最もポピュラーであり好ましい。あるいは、各波長ごとの二乗誤差に対し、山谷のピーク位置が重要であるから例えば(50−T(λ))の二乗を重み関数として乗じる方法や、吸収・散乱スペクトルの透過率が高い部分が重要であるから例えば吸収・散乱スペクトルを乗じる方法、さらにはそれらの組み合わせなどの手法を用いることが好ましい。
本発明の位相差の決定方法は、上記の順序でなくとも必要な測定データを得ることができれば、上記の方法に限定されない。実際、波長板がない場合でも遅相軸検出はできないが、位相差測定は可能である。また、試料や波長板の光軸上での回転は360度でなくとも180度でも可能である。さらには、偏光子を45度以外に配置しても測定は可能であるし、偏光子と検光子がクロスニコルでなくパラニコルでも測定は可能である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
(位相差測定装置の構成)
図4に示す構成の位相差測定装置を用いた。偏光子は45度に固定し、波長板として図5に示す位相差を有する水晶板を用いた。光源としては、ハロゲンランプ(EDI100DH,三菱レイヨン製)、偏光子および検光子としてはヨウ素系偏光子(HC2−8118,サンリッツ製)、分光器としてはファイバ型のマルチチャンネル分光器(USB2000,オーシャンオプティクス社製,A/D分解能12bit,波長分解能(FWHM)1.5nm)を用いた。測定波長範囲は400〜700nmとした。
(実施例1、比較例1、参照例1)
550nmにおいておよそλ/4の位相差を有する試料を測定した。上述の手順に従って、偏光子と検光子の配置をクロスニコルとし、波長板と試料との遅相軸を偏光子の透過軸に対して45度に設定して測定を行った。フィッティングとしては、式(16)および(17)を用い、最小二乗誤差を与えるものを解とした。実施例1においては、上記のλ/4の位相差を有する試料に緑に着色した位相差を持たないフィルタを重ねたものを試料とした。この試料を波長板のない状態で、光軸回転で360度回転させて試料の透過率が最小となる角度を検出した後、この配置のままでスペクトルを測定して、スペクトル補正に用いた。比較例1ではλ/4の位相差を有する試料に緑に着色した位相差を持たないフィルタを重ねたものを試料としたうえで、実施例1で行ったスペクトル補正を行わなかった。参照例1では緑のフィルタを重ねない試料を用い、実施例1で行ったスペクトル補正を行わなかった。実施例1と比較例1のスペクトルを図6に、そのときに測定された位相差の波長分散を図7に、500、550、600nmにおける位相差の値を表1に示した。フィッティングには非線形最適化の一つとして高速かつ高精度であることが知られているLevenberg-Marquardtのアルゴリズムを用いてコンピュータ上で計算することにより位相差を求めた。
Figure 0005116345
さらに、二乗誤差の代わりに(50−T(λ))の二乗と吸収・散乱スペクトルを両方用いた誤差でもフィッティングを行ったが、ほぼ同様の結果であった。以上の結果より、本発明の方法により、吸収や散乱を有する位相差試料において精度よく位相差が測定できることがわかる。
本発明の位相差測定における分光スペクトルの原理的な図である。 本発明の位相差測定における小さな位相差の試料に対する分光スペクトルの原理的な図である。 本発明の位相差測定装置の一例の概略図である。 本発明の位相差測定装置の一例の概略図である。 本発明の実施例に用いた波長板の位相差の波長分散である。 本発明の実施例1および比較例1で得られた分光スペクトルである。 本発明の実施例1、比較例1、参照例1で得られた位相差の波長分散である。

Claims (9)

  1. 光源、偏光子、試料、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系で測定された分光スペクトルから該試料の位相差を決定する方法であって、
    該試料の位相差の影響がない該試料の分光スペクトルデータを用意すること、
    該偏光子の透過軸と該試料の光学軸と該検光子の透過軸との配置を該試料の位相差が検出される配置として測定される少なくとも1つの分光スペクトルを測定すること、
    および
    前記分光スペクトルデータにより前記分光スペクトルを補正すること
    を含む方法。
  2. 光源、偏光子、試料、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系で測定された分光スペクトルから該試料の位相差を決定する方法であって、
    (1)偏光子と検光子とをパラニコル配置とし、かつ偏光子の透過軸と試料の光学軸との為す角を0または90度として分光スペクトルを測定すること、及び
    (2)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として分光スペクトルを測定すること
    (3)(2)で得られるスペクトルにより(1)で得られるスペクトルを補正すること
    を含む方法。
  3. 補正が、(1)で得られるスペクトルの波長λにおける透過率を(2)で得られるスペクトルの該波長λにおける透過率で除算することにより行われる請求項2に記載の方法。
  4. 光源、偏光子、試料台、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系、ならびに下記(11)により(12)を補正する手段を含む位相差測定装置:
    (11)試料台上に配置される試料の位相差の影響がない該試料の分光スペクトルデータ;
    (12)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料台上に配置される試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として測定される分光スペクトル。
  5. 光源、偏光子、試料台、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系、ならびに下記(21)により(12)を補正する手段を含む位相差測定装置:
    (21)偏光子の透過軸と試料台上に配置された試料の光学軸と該検光子の透過軸との配置を該試料の位相差が検出されない配置として測定された分光スペクトル;
    (12)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料台上に配置される試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として測定される分光スペクトル。
  6. 光源、偏光子、試料台、検光子、及び分光器がこの順に配置されている光学系、ならびに下記(31)により(12)を補正する手段を含む位相差測定装置:
    (31)偏光子と検光子とをパラニコル配置とし、かつ偏光子の透過軸と試料台上に配置される試料の光学軸との為す角を0または90度として測定される分光スペクトル;
    (12)偏光子と検光子とをパラニコル配置又はクロスニコル配置とし、かつ試料台上に配置される試料の光学軸を偏光子の透過軸の為す角を45度として測定される分光スペクトル。
  7. 前記(12)を、コーシーの分散式を用いてフィッティングする手段をさらに含む請求項4〜6のいずれか一項に記載の位相差測定装置。
  8. 前記光学系の偏光子と検光子の間に波長板が配置されている請求項4〜7のいずれか一項に記載の位相差測定装置。
  9. 測定波長域内の2つ以上の波長それぞれにおいて、前記波長板のレターデーション値を0.5以上の整数または半整数で除算した値が該波長と一致する請求項8に記載の位相差測定装置。
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