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JP5118766B2 - 磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気記憶装置、および磁気メモリ - Google Patents
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JP5118766B2 - 磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気記憶装置、および磁気メモリ - Google Patents

磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気記憶装置、および磁気メモリ Download PDF

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本発明は、磁気抵抗効果膜の膜面の垂直方向にセンス電流を流して磁気を検知する磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気記憶装置、および磁気メモリに関する。
巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto-Resistive Effect:GMR)の発見により、磁気デバイス、特に磁気ヘッドの性能が飛躍的に向上している。特に、スピンバルブ膜(Spin-Valve:SV膜)の磁気ヘッドやMRAM(Magnetic Random Access Memory)などへの適用は、磁気デバイス分野に大きな技術的進歩をもたらした。
「スピンバルブ膜」とは、二つの強磁性層の間に非磁性のスペーサ層を挟んだ構造を有し、一方の強磁性層(「ピン層」や「磁化固着層」などと称される)の磁化を反強磁性層などで固着し、もう一方の強磁性層(「フリー層」や「磁化自由層」などと称される)の磁化を外部磁界に応じて回転するようにした積層膜をいう。スピンバルブ膜では、ピン層とフリー層の磁化方向の相対角度が変化することによって、巨大な磁気抵抗変化が得られる。
従来のスピンバルブ膜は、膜面に平行にセンス電流を通電するCIP(Current In Plane)−GMR素子であった。近年、膜面に対してほぼ垂直方向にセンス電流を通電するCPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR素子(以下、「CPP素子」という)が、CIP−GMR素子よりも大きなGMR効果を発現することから、注目されている。
これらの磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに応用することを考慮した場合、素子抵抗が高くなるとショットノイズおよび高周波応答の点で問題が生じる。素子抵抗に関しては、RA(抵抗×通電面積)で評価するのが妥当である。具体的には、RAは、200Gbpsi(Gigabit per square inch)の記録密度で数百mΩμm〜1Ωμm、500Gbpsiの記録密度で500mΩμm以下であることが必要とされている。
このような要求に対して、CPP素子は、磁気デバイスがますます微細化される傾向下において、抵抗が低くても大きなMR変化率が得られるポテンシャルを有している。このような背景から、CPP素子およびそれを用いた磁気ヘッドは、200Gbpsi〜1Tbpsi(Terabit per square inch)の記録密度を実現するための有力候補と考えられる。
しかし、ピン層/スペーサ層/フリー層(これら三層構造をスピン依存散乱ユニット、またはスピンバルブ膜と呼ぶ)が金属層で形成されているメタルCPP素子では、磁化による抵抗変化量が小さく、高密度化に伴う微弱磁界を検知するのは困難である。
この問題を解決するために、非磁性スペーサ層として、厚み方向への電流パスを含む酸化物層[NOL(nano-oxide layer)]を用いたCPP素子が提案されている(例えば特許文献1参照)。このようなCPP素子では、電流狭窄[CCP(Current-confined-path)]効果により素子抵抗およびMR変化率ともに増大させることができる。以下、このような素子をCCP−CPP素子という。
ここで、素子(磁気デバイス)の微細化傾向に伴い、CPPスピンバルブ膜の平面方向のサイズを100nm×100nmより小さくすることが要求される。例えば、磁気ディスクの高密度化により、0.1μm以下のトラック幅が必要となる。
このように面積の小さなCPPスピンバルブ膜の膜面垂直方向にセンス電流を流す場合、スピントランスファートルクに起因するノイズが生じることが報告されている(STI(Spin-Transfer Induced)ノイズの発生、非特許文献1、2参照)。
スピントランスファー効果は、ある臨界値以上の電流をCPPスピンバルブ膜に通電したときに、外部磁界を全く印加しない状態でも、フリー層の磁化方向が変化する現象である。このとき、通電方向が変化すると、フリー層の磁化方向が反転する可能性がある。言い換えれば、通電方向が一方向に固定されれば、フリー層の磁化安定方向も一方向に固定されることになる。
なお、このときの磁化安定方向は、次のようになる。電子がピン層からフリー層に流れる(電流がフリー層からピン層に流れる)ときには、フリー層の磁化方向がピン層の向きに揃うようなスピントルクが働く。一方、電子がフリー層からピン層に流れる(電流がピン層からフリー層に流れる)ときには、フリー層の磁化方向がピン層とは反平行の向きに揃うような方向にスピントルクが働く。
磁気ヘッドでは、媒体磁界の向きによって、フリー層の磁化方向が変化する。このため、通電方向が一定の場合、フリー層の磁化方向によっては、フリー層が磁化的に不安定となり、ノイズが発生する可能性がある。
このように、外部磁界を印加せず、センス電流を流した状態においても、フリー層内の磁化が不安定となり、素子のノイズが増大する可能性がある。このノイズは、スピントランスファー効果に誘導されたノイズということで、STI(Spin Transfer Induced)ノイズと呼ばれる。
STIノイズが発生すると、信号出力が一定でも、ノイズが増大することから、磁気ヘッドのS/N比が悪くなり、HDDでのBER(Bit Error Rate)が増大してしまう。この結果、高密度記録時の微弱な媒体磁界を素子で検知することが困難となり、磁気ヘッド等に用いることが実質的に不可能となる危険性がある。
特開2002−208744号公報
M. Covington et al., Phys. Rev. B69, 184406 (2004) M. Covington et al., J. Magn. Magn. Mater. 287, 325 (2005) H. Yuasa et al., J. Appl. Phys. 92 (5), 2646 (2002) H. Fukuzawa et al., Appl. Phys. Lett. 87, 082507 (2005)
非特許文献1、2には、メタルCu層をスペーサ層として用いた、メタルCPPスピンバルブ膜でのSTIノイズが示されている。CCPを有するNOLスペーサ層を用いた、CCP−CPPスピンバルブ膜においては、メタルCPPスピンバルブ膜と比べて、STIノイズを巡る状況がより複雑となる可能性がある。
CCP−CPPスピンバルブ膜では、CCPの電流狭窄されたスペーサ層を介して、電流が局所的に集中した状態で、フリー層からピン層、もしくはピン層からフリー層へと、電子が注入される。局所的な電流密度は通常のメタルCPPスピンバルブ膜よりもはるかに大きな値となる。STIノイズが電流密度に敏感な点を考慮すると、CCP−CPPスピンバルブ膜でのSTIノイズは、メタルCPPスピンバルブ膜でのSTIノイズよりも大きくなる可能性がある。このように、CCP−CPPスピンバルブ膜において、STIノイズの抑制は重要な課題である。
上記に鑑み、本発明は、ノイズの低減を図った磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気記憶装置、および磁気メモリを提供することを目的とする。
本発明に係る磁気抵抗効果素子は、ピニング層を有する磁化固着層と、前記磁化固着層上に配置され、絶縁層と、この絶縁層の層方向に電流を通過させる導電体と、を有する非磁性層と、前記非磁性層上に配置され、前記非磁性層との界面にCoFe層が挿入されたNiFe層を有する磁化自由層とを有するスピンバルブ膜と、前記磁化自由層の内部に配置され、Ti又はPdを含み、前記非磁性層から1nm以上離れて一層あるいは複数層配置され、かつ厚さが0.1nm以上で1nm以下(1nmを除く)の所定の層と、前記スピンバルブ膜の上下に設けられ前記スピンバルブ膜の膜面に垂直に通電する1対の電極と、を具備し、前記スピンバルブ膜のfcc(111)ピーク、前記ピニング層のfct(111)ピークまたはbcc(110)でのロッキングカーブの半値幅が3.5〜6度であることを特徴とする。
本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子を表す斜視図である。 本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の製造工程を表すフロー図である。 磁気抵抗効果素子の製造に用いられる成膜装置の概略図を示す模式図である。 酸化チャンバーの構成を表す模式図である。 本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子を表す斜視図である。 本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の製造工程を表すフロー図である。 本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図である。 本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図である。 本発明の実施形態に係る磁気記録再生装置の斜視図である。 本発明の実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリの斜視図である。 本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の他の例を示す図である。 本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図である。 図13のA−A’線に沿う断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施の形態においては、合金の組成は原子%(atomic%)で表される。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)を表す斜視図である。なお、図1および以降の図は全て模式図であり、図上での膜厚同士の比率と、実際の膜厚同士の比率は必ずしも一致しない。
図1に示すように本実施の形態に係る磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果膜10、およびこれを上下から夾む下電極11および上電極20を有し、図示しない基板上に構成される。
磁気抵抗効果膜10は、下地層12、ピニング層13、ピン層14、下部金属層15、スペーサ層(CCP−NOL)16、上部金属層17、フリー層18、キャップ層19が順に積層されて構成される。この内、ピン層14、スペーサ層16、およびフリー層18が、全体として、二つの強磁性層の間に非磁性のスペーサ層を挟んでなるスピンバルブ膜に対応する。なお、見やすさのために、スペーサ層16はその上下層(下部金属層15および上部金属層17)から切り離した状態で表している。
本実施形態では、ピン層14、およびフリー層18の少なくとも一方にダンピングファクタ(DF)調整層21を挿入することで、STIノイズの低減を図っている。
なお、図1のCCP−CPP素子はピン層14を下部に配置したボトム型であるが、ピン層14を上部に配置したトップ型でも差し支えない。即ち、下電極11、下地層12〜キャップ層19、および上電極20の積層構造の上下を逆転することが可能である。
以下、磁気抵抗効果素子の構成要素を説明する。
下電極11は、スピンバルブ膜の垂直方向に通電するための電極である。下電極11と上電極20との間に電圧が印加されることで、スピンバルブ膜内部をその膜垂直方向に沿って電流が流れる。この電流によって、磁気抵抗効果に起因する抵抗の変化を検出することで、磁気の検知が可能となる。具体的な材料としては、下シールドと兼用したNiFeや、非磁性のCu,Ta,Ru、Crなどの金属層が用いられる。
下地層12は、例えば、バッファ層12a、シード層12bに区分することができる。
バッファ層12aは下電極11表面の荒れを緩和したりするための層である。シード層12bは、その上に成膜されるスピンバルブ膜の結晶配向および結晶粒径を制御するための層である。
バッファ層12aとしては、Ta、Ti、W、Zr、Hf、Crまたはこれらの合金を用いることができる。バッファ層12aの膜厚は2〜10nm程度が好ましく、3〜5nm程度がより好ましい。バッファ層12aの厚さが薄すぎるとバッファ効果が失われる。
一方、バッファ層12aの厚さが厚すぎるとMR変化率に寄与しない直列抵抗を増大させることになるので好ましくない。なお、バッファ層12a上に成膜されるシード層12bがバッファ効果も有する場合には、バッファ層12aを必ずしも設ける必要はない。
シード層12bは、その上に成膜される層の結晶配向を制御できる材料であればよいが、hcp構造(hexagonal close-packed structure:六方最密構造)またはfcc構造(face-centered cubic structure:面心立方構造)を有する金属層などが好ましい。シード層12bとして、Ruを用いることにより、その上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。また、ピニング層13(例えば、PtMn)の結晶配向を規則化したfct構造(face-centered tetragonal structure:面心正方構造)、あるいはbcc(body-centered cubic structure:体心立方構造)(110)配向とすることができる。
スピンバルブ膜やピニング層13の結晶配向性は、X線回折により測定できる。スピンバルブ膜のfcc(111)ピーク、ピニング層13(PtMn)のfct(111)ピークまたはbcc(110)ピークでのロッキングカーブの半値幅を3.5〜6度として、良好な配向性を得ることができる。なお、この配向の分散角は断面TEMを用いた回折スポットからも判別することができる。
また、シード層12bを設けることにより、スピンバルブ膜の結晶粒径を10〜40nmに制御することができ、CCP−CPP素子のサイズが小さくなっても特性のばらつきを招くことなく高MR変化率を実現できる。
シード層12bとして、Ruの代わりに、例えばNiFe100−x(x=90〜50%、好ましくは75〜85%)や、NiFeに第3元素Xを添加して非磁性にした(NiFe100−x100−y(X=Cr、V、Nb、Hf、Zr、Mo)などのNiFeベースの合金を用いることもできる。Ruよりも、NiFeベースのほうが、シード層12bとして良好な結晶配向性を得るのがより容易であり、上記と同様に測定したロッキングカーブの半値幅を3〜5度とすることができる。
上述した10〜40nmという適正な結晶粒径を得るためには、第3元素Xの組成yを0〜30%程度とすることが好ましい(yが0%の場合も含む)。結晶粒径を40nmよりも粗大化させるためには、さらに多量の添加元素を用いることが好ましい。例えば、NiFeCrの場合にはCr量を35〜45%程度とし、fccとbccの境界相を示す組成を用いることが好ましい。
ただし、高密度記録に対応した再生ヘッドとして用いる場合には、素子サイズが100nm以下になるので、結晶粒径が大きすぎると特性のばらつきを招くことがあり、大きな結晶粒を用いることはあまり好ましくない。一方、例えばMRAMとして用いる場合には、素子サイズが100nm以上の場合があるので、結晶粒径を粗大化させるシード層12bを用いてもよい。
シード層12bの膜厚は1.5nm〜6nm程度が好ましく、2〜4nmがより好ましい。シード層12bの厚さが薄すぎると結晶配向制御などの効果が失われる。一方、シード層12bの厚さが厚すぎると直列抵抗の増大を招くうえに、スピンバルブ膜の界面凹凸の原因となることがある。
ピニング層13は、その上に成膜されるピン層14となる強磁性層に一方向異方性を付与して磁化を固着する機能を有する。ピニング層13の材料としては、PtMn、PdPtMn、IrMn、RuRhMnなどの反強磁性材料を用いることができる。
十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層13の膜厚を適切に設定する。ピニング層13がPtMnやPdPtMnの場合には、膜厚は8〜20nm程度が好ましく、10〜15nmがより好ましい。ピニング層13がIrMnやRuRhMnの場合には、PtMnなどより薄い膜厚でも一方向異方性を付与することができるので、5〜18nmが好ましく、7〜15nmがより好ましい。
PtMn等の反強磁性層の比抵抗は概ね100μΩcm以上と大きいため、ピニング層13がMR変化率に直接寄与しない直列抵抗を増大させ、RAの値を大きくする要因になる可能性がある。直列抵抗の増加を防止するために、ピニング層13として、反強磁性層の代わりに、ハード磁性層を用いることができる。ハード磁性層としては、例えばCoPt(Co=50〜85%)、(CoPt100−x100−yCr(x=50〜85%、y=0〜40%)、FePt(Pt40〜60%)などを用いることができる。ハード磁性層(特にCoPt)は比抵抗が比較的小さいため、直列抵抗およびRAの増大を抑制できる。
ピン層14は、下部ピン層141(例えば、Co90Fe10)、磁気結合層142(例えば、Ru)、および上部ピン層143(例えば、Co90Fe10[4nm])からなる3層構造のシンセティックピン層とすることができる。ピニング層13(例えば、PtMn)とその直上の下部ピン層141は一方向異方性をもつように交換磁気結合している。磁気結合層142の上下の下部ピン層141および上部ピン層143は、磁化の向きが互いに反平行になるように強く磁気結合している。
下部ピン層141には、例えばCoFe100−x合金(x=0〜100%)、NiFe100−x合金(x=0〜100%)、またはこれらに非磁性元素を添加したものを用いることができる。
下部ピン層141は、磁気膜厚すなわち飽和磁化Bs×膜厚t(Bs・t積)が、上部ピン層143とほぼ等しくなるように設計することが好ましい。一例として、上部ピン層143が(Fe50Co50[1nm]/Cu[0.25nm])×2/Fe50Co50[1nm]の場合には、FeCoの飽和磁化が約2.2Tであるため、磁気膜厚は2.2T×3nm=6.6Tnmとなる。下部ピン層141についてはCo90Fe10の飽和磁化が約1.8Tなので、上記と等しい磁気膜厚を与える下部ピン層141の膜厚tは6.6Tnm/1.8T=3.66nmとなる。したがって、膜厚が約3.6nmのCo90Fe10を用いることが望ましい。
下部ピン層141に用いられる磁性層の膜厚は2〜5nm程度が好ましい。ピニング層13(例えば、PtMn)による一方向異方性磁界強度およびRuを介した下部ピン層141と上部ピン層143との反強磁性結合磁界強度という観点に基づく。下部ピン層141が薄すぎるとMR変化率が小さくなる。一方、下部ピン層141が厚すぎるとデバイス動作に必要な十分な一方向性異方性磁界を得ることが困難になる。
磁気結合層142(例えば、Ru)は上下の磁性層に反強磁性結合を生じさせてシンセティックピン構造を形成する機能を有する。磁気結合層142としてのRu層の膜厚は0.8〜1nmであることが好ましい。なお、上下の磁性層(下部ピン層141および上部ピン層143)に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、Ru以外の材料を用いてもよい。
上部ピン層143(Co90Fe10[4nm])は、スピン依存散乱ユニットの一部をなす。上部ピン層143として、fcc構造をもつCo90Fe10の換わりに、bcc構造をもつFeCoなどを用いた場合、スピン依存界面散乱効果が大きいため、大きなMR変化率を実現することができる。bcc構造をもつFeCo系合金としては、FeCo100−x(x=30〜100%)や、FeCo100−xに添加元素を加えたものが挙げられる。スピンバルブ膜に用いられる金属材料は、fcc構造またはfct構造であることが多いため、上部ピン層143のみがbcc構造を有することがあり得る。
上部ピン層143の膜厚が薄すぎると、bcc構造を安定に保つことが困難になり、高いMR変化率が得られなくなるので、上部ピン層143の膜厚は2nm以上であることが好ましい。一方、大きなピン固着磁界を得るために、上部ピン層143の膜厚は5nm以下であることが好ましい。
上部ピン層143が高MR変化率を実現しやすいbcc構造をもつ磁性層から形成されている場合には、bcc構造をより安定に保つために、bcc構造をもつ層の膜厚は2nm以上であることが好ましい。
大きなピン固着磁界とbcc構造の安定性とを両立させるには、bcc構造をもつ層の膜厚は2.5nm〜4nm程度が好ましい。FeCo系の磁性膜に関しては、相図上でより安定なbcc構造が得られる組成範囲として、Fe75Co25〜Fe85Co15が挙げられる。
上部ピン層143には、bcc構造をもつ磁性材料の代わりに、fcc構造のCoFe合金や、hcp構造をもつコバルト合金も用いることができる。Co、Fe、Niなどの単体金属、またはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料はすべて用いることができる。上部ピン層143の磁性材料として、大きなMR変化率を得るのに有利なものから並べると、bcc構造をもつ合金材料、50%以上のコバルト組成をもつコバルト合金、50%以上のNi組成をもつニッケル合金の順になる。
上部ピン層143中にダンピングファクタ(DF)調整層21を挿入して、STIノイズの抑制を図ることができる。この詳細は後述する。
下部金属層15は、電流パス162を形成するときに用いられ、いわば電流パス162の供給源である。ただし、電流パス162の形成後にも明確な金属層として残存している必要はない。
スペーサ層(CCP−NOL)16は、絶縁層161、電流パス162を有する。なお、スペーサ層16、下部金属層15、および上部金属層17を含めて、スペーサ層として取り扱うことも可能である。
絶縁層161は、酸化物、窒化物、酸窒化物等から構成され、アモルファスから形成されるAl23もあれば、MgOのような結晶構造を有する場合もある。
絶縁層161に用いる典型的な絶縁材料として、Alをベース材料としたものや、これに添加元素を加えたものがある。添加元素として、Ti、Hf、Mg、Zr,V,Mo、Si,Cr,Nb,Ta,W、B,Cなどがある。これらの添加元素の割合は0%〜50%程度の割合で適宜変えて用いることができる。
絶縁層161には、AlのようなAl酸化物の換わりに、Ti酸化物、Hf酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Cr酸化物、V酸化物、Ta酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Si酸化物なども用いることができる。これらの酸化物の場合でも、添加元素として上述したような材料を用いることができる。また、添加元素の量としても0%〜50%程度の割合で適宜変えて用いることができる。
これら酸化物の換わりに、上述したようなAl,Si,Hf,Ti,Mg,Zr,V,Mo,Nb,Ta,W,B,Cをベースとした酸窒化物や、窒化物を用いても良い。
電流パス162は、電流を狭窄するためのものであり、絶縁層161の層方向に電流を通過させる導電体として機能し、例えば、Cu等の非磁性金属から構成できる。即ち、スペーサ層16は電流狭窄構造(CCP構造)を有する。電流狭窄効果により素子抵抗およびMR変化率を増大させることができる。
電流パス162は絶縁層161と比べて著しく酸素、窒素の含有量が少ない領域であり(少なくとも2倍以上の酸素や窒素の含有量の差がある)、一般的には結晶相である。結晶相は非結晶相よりも抵抗が小さいため、電流パス162として機能しやすい。
上部金属層17は、その上に成膜されるフリー層18がスペーサ層16の酸化物に接して酸化されないように保護するバリア層としての機能を有する。
なお、フリー層18の酸化はアニール条件の最適化などによって回避可能なので、必ずしも上部金属層17を設けなくてもよい。しかし、製造上のマージンを考慮すると、スペーサ層16上に上部金属層17を形成することが好ましい。
上部金属層17の構成材料として、Cu以外に、Au、Ag、Ruなどを用いることもできる。上部金属層17の材料は、スペーサ層16の電流パス162の材料と同一であることが好ましい。上部金属層17の材料が電流パス162の材料と異なる場合には界面抵抗の増大を招くが、両者が同一の材料であれば界面抵抗の増大は生じない。
上部金属層17の膜厚は、0〜1nmが好ましく、0.1〜0.5nmがより好ましい。上部金属層17が厚すぎると、スペーサ層16で狭窄された電流が上部金属層17で広がって電流狭窄効果が不十分になり、MR変化率の低下を招く。
フリー層18は、磁化方向が外部磁界によって変化する強磁性体を有する層であり、例えば、界面にCoFeを挿入してNiFeを用いたCo90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]という3層を用いてもよい。高いMR変化率を得るためには、スペーサ層16の界面に位置するフリー層18の磁性材料の選択が重要である。この場合、スペーサ層16との界面には、NiFe合金よりもCoFe合金を設けることが好ましい。なお、NiFe層を用いない場合には、Co90Fe10[4nm]を用いることができる。
CoFe合金のなかでも、軟磁気特性が安定であることから、Co90Fe10が好ましい。Co90Fe10近傍のCoFe合金を用いる場合には、膜厚を0.5〜4nmとすることが好ましい。
また、フリー層18として、1〜2nmのCoFe層またはFe層と、0.1〜0.8nm程度の極薄Cu層とを、複数層交互に積層したものを用いてもよい。
フリー層18の場合においても、ピン層14の場合と同様に、スペーサ層16がCu層から形成される場合には、bccのFeCo層をスペーサ層16との界面材料として用いるとMR変化率が大きくなるので、スペーサ層16との界面材料として、fccのCoFe合金の換わりにbccのFeCo合金を用いることもできる。この場合にはbcc層が形成されやすい、FeCo100−x(x=30〜100)や、これに添加元素を加えた材料も用いることができる。
ここで、これらのフリー層18中にダンピングファクタ(DF)調整層21を挿入して、STIノイズの抑制を図ることができる。この詳細は後述する。
キャップ層19は、スピンバルブ膜を保護する機能を有する。キャップ層19は、例えば、複数の金属層、例えば、Cu層とRu層の2層構造とすることができる。このときCu層の膜厚は0.5〜10nm程度が好ましい。また、Ru層の膜厚を0.5〜10nm程度とすることができる。
キャップ層19として、Cu層を用いず、0.5〜10nm程度の厚さのRu層をフリー層18上に直接設けてもよい。また、Ru層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層19の構成は特に限定されず、キャップとしてスピンバルブ膜を保護可能なものであれば、他の材料を用いてもよい。
上電極20は、スピンバルブ膜の垂直方向に通電するための電極である。下電極11と上電極20との間に電圧が印加されることで、スピンバルブ膜内部をその膜垂直方向に沿って電流が流れる。
(ダンピングファクタ(DF)調整層21の詳細)
ダンピングファクタ調整層21はSTIノイズを低減するための層である。前述したように、磁化方向を動かそうとするトルクによって、STIノイズが発生する。スピントルクを持った電子(簡易的な言い方をすると、磁性層の磁化情報をもった電子)がピン層14からフリー層18もしくはその逆向きに流れることで、磁化情報を互いに平行に揃える方向、もしくは反平行の向きに揃えるトルクが発生し、このトルクがノイズの原因となる。このような磁化方向を動かそうとするトルクを抑制すること(電流通電による磁化トルクを安定させること)がSTIノイズの低減に有効である。このトルクへのダンピングを表すパラメータがダンピングファクタである。
本実施形態では、ダンピングファクタを増大させて、STIノイズを低減し、しかもMR変化率を高い値に維持することが可能である。具体的な手法として、CCP−CPPスピンバルブ膜の磁性層中に、ダンピングファクタ調整層21として、例えば、0.5nm程度の極薄のPt層を挿入する。これによりスピントランスファートルク現象、ひいてはSTIノイズが抑制される。
ここで、ダンピングファクタ調整層21として、原子番号が大きな材料、または非磁性3d遷移金属の極薄層を用いることが、ダンピングファクタを上昇させるために有効である。ダンピングファクタ調整層21は、ピン層14、またはフリー層18に挿入される。
しかしながら、通常のメタルCPPスピンバルブ膜の磁性層に大きな原子番号の材料を混入させることは、弊害をもたらす危険性がある。具体的には、大きな原子番号を有する材料を磁性層に混入させると、スピン軌道相互作用によってGMR効果が減少する。特に、メタルCPPスピンバルブ膜においては、GMR効果への影響が顕著である。これは、CPP−GMRでは、スピン依存界面散乱効果とスピン依存バルク散乱効果の二つがあるが、通常のメタルCPPスピンバルブ膜ではスピン依存バルク散乱効果の方が顕著であることに起因する。
スピン依存界面散乱効果は、スペーサ層16と、ピン層14、もしくはフリー層18の界面におけるGMR効果であり、界面近傍のみで生じる現象である。それに対し、スピン依存バルク散乱効果は、ピン層14、もしくはフリー層18の磁性層内部で生じるGMR効果である。スピン依存バルク散乱効果は磁性層内での現象であるため、磁性層の膜厚が厚いほうが、スピン依存バルク散乱効果が大きくなり、MR変化率が大きくなる。
通常のメタルCPPスピンバルブ膜においては、スピン依存界面散乱効果によるGMR現象は小さく、GMR現象のほとんどがスピン依存バルク散乱効果に起因する(非特許文献3:H. Yuasa et al., J. Appl. Phys. 92 (5), 2646 (2002))。この非特許文献3のFig5で、磁性層膜厚がゼロの極限でのAdR(面積抵抗変化量)に比べて(この値がスピン依存界面散乱効果に相当)、磁性層膜厚が厚いところでのAdRのほうがはるかに大きいこと(磁性層膜厚が厚いところではスピン依存界面散乱効果とスピン依存バルク散乱効果の和をみていることになる)から、この事実を理解することができる。
つまり、通常のメタルCPPスピンバルブ膜においては、スピンバルク散乱効果の寄与が非常に大きい。このため、スピン依存バルク散乱効果を低下させる大きな原子番号の材料を磁性層に挿入することは、MR変化率の低下、ひいてはヘッド出力の低下、という観点において好ましくない。即ち、低STIノイズと高出力の両立が困難である。このように、通常のメタルスペーサ層16を有するメタルCPPスピンバルブ膜において、大きな原子番号の元素をピン層14もしくはフリー層18の磁性層に挿入するのは好ましい手法とは言いにくい。
一方、CCP−CPPスピンバルブ膜においては、スピン依存バルク散乱効果よりも、スピン依存界面散乱効果の影響のほうがはるかに大きい(非特許文献4:H. Fukuzawa et al., Appl. Phys. Lett. 87, 082507 (2005))。これは、スピンバルブ膜のトータル抵抗に占める、CCP部分の寄与が非常に大きいため、CCP近傍での界面効果の影響が大きいことに起因する。つまり、CCP−CPPスピンバルブ膜においては、多少のスピン依存バルク散乱効果の低下があったとしても、スピン依存界面散乱効果の低下が起こらなければ、MR変化率およびヘッド出力の低下は生じにくい。このため、低STIノイズと高いMR変化率の両立を図ることが容易となる。
上記の理由によって、CCP−CPP素子において、ダンピングファクタ調整層21によって、MRを事実上低下させることなく、STIノイズを抑制することが可能となる。
ダンピングファクタ調整層21としては、Pt以外にもZr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,La,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Auなどの原子番号が比較的大きな材料や、非磁性のTi、V、Cr、Mnなどの3d遷移金属も用いることができる。
非磁性材料を挿入することで、ピン層14、またはフリー層18内(即ち、ダンピングファクタ調整層21を介した上下磁性層間)での磁気結合が分断される可能性がある。ダンピングファクタ調整層21を介した磁気結合を十分大きな値として保つためには、ダンピングファクタ調整層21の膜厚として、0.1〜1nm、さらに好ましくは0.1nm〜0.7nmが好ましい。
ダンピングファクタ調整層21はピン層14、フリー層18のいずれか一方のみに挿入されていても差し支えない。
スペーサ層16の近傍にダンピングファクタ調整層21を挿入すると、MR変化率の減少を招き好ましくない。スペーサ層16から少なくとも1nm以上離れた位置に、ダンピングファクタ調整層21を挿入することが好ましい。即ち、MR変化率への影響を考慮し、スペーサ層16からある程度離れた位置にダンピングファクタ調整層21を配置する。
このように、スペーサ層16との界面近傍から1nm程度離れた位置にダンピングファクタ調整層21が配置されることによって、スピン依存界面散乱効果には悪影響を与えることなく、ダンピングファクタを抑制することができる。つまり、CCP−CPPの場合にはMR変化率を犠牲にすることなく、効率的にSTIノイズを抑制することが可能となる。
材料によっては、スペーサ層16との界面近傍から1nm以下の領域にダンピングファクタ調整層21を挿入することも可能である。具体的には、Ti、Zr、PdやNbなどをダンピングファクタ調整層21として用いたときには、比較的スピン依存界面散乱効果の影響を乱すことがないので、スペーサ層16との界面から1nm以下の領域にダンピングファクタ調整層21を挿入しても構わない。より具体的には、スペーサ層16との界面(つまり界面から0nmの距離)から1nmまでの距離における挿入位置でも用いることができる。当然のことながら、これらの材料は、それよりも離れた距離など、任意の位置に挿入することが可能ある。
MR変化率への影響が少ない、という観点において、これらTi、Zr、Pd、Nbなどの材料はダンピングファクタ調整層21として用いやすい材料である。
ダンピングファクタ調整層21はピン層14、もしくはフリー層18といった磁性層に複数層挿入しても構わない。この場合には、上記Ti、Zr、Nbなどの材料を用いるときはスペーサ層16からの距離が1nm以下のところに第一層を挿入し、Pt等他の元素のときにはスペーサ層16からの距離が1nmよりも離れたところに第一層を挿入する。
そして、第2層、第3層といった積層膜を前記第1層よりもスペーサ層16から離れた位置に挿入することになる。これら第1層と第2層、もしくは第2層と第3層との間の距離は、1nmから2nm程度が好ましい範囲である。しかし、厚い磁性層を用いる場合にはこの範囲よりも厚い間隔で用いることも可能である。
フリー層18、もしくはピン層14内でダンピングファクタ調整層21を複数層用いることのメリットとして、ダンピングファクタ調整の効果、ひいてはノイズ低減の効果がより増大する点がある。ダンピングファクタ調整層21を複数層挿入するのは、フリー層18だけの場合でもよいし、ピン層14だけの場合でもよく、またピン層14、フリー層18両方を積層構成にしても構わない。
複数層のダンピングファクタ調整層21を用いるデメリットとして、MR変化率が低減したり、ダンピングファクタ調整層21を介した磁性層間の磁気結合が弱まったりすることで、磁気特性が悪くなる可能性がある。磁気特性を防止するため、フリー層18、もしくはピン層14内でのダンピングファクタ調整層21の膜厚の総量が、一層の場合と同様の膜厚範囲であることが好ましい。また、一つの磁性層内での複数のダンピングファクタ調整層21間の距離としては、上述したように、1〜2nmが好ましい範囲となる。
ここで、本実施形態のような、ダンピングファクタ調整層21を用いる代わりに、磁性層(ピン層14、フリー層18)の構成材料自体に、ST効果が抑制されるような材料(例えば、合金材料)を選択することが考えられる。
しかし、この場合にはMR変化率が低下してしまう。CCP構造をもつCPPスピンバルブ膜ではスペーサ層16の界面近傍でのMR効果が大きく、この界面近傍にMR変化率を低下させるような添加元素が存在することは好ましくない。
スペーサ層16との界面近傍では高MR化を損なわない磁性材料を用い、磁性層(ピン層14、フリー層18)の内部に極薄の層(ダンピングファクタ調整層21)を挿入することでST効果を抑制できる。このようにすることで、ST効果の抑制と、MR変化率の維持とを両立することが容易となる。
以下、本実施形態を比較例と対比して説明する。
A.Ptを磁性層全体に添加する場合との比較 比較例として、Ptを磁性層全体に添加元素として用いた場合を考える。フリー層18として用いる、CoFe/NiFeのような積層磁性層に、Ptを全体的に添加すると、CoFePt/NiFePtのフリー層18となる。この場合、ダンピングファクタが上昇し、STIノイズを抑制することができる。しかし、その一方では、MR変化率が低下するため、ヘッド出力の低下を招くことになる。具体的には、Pt添加しないフリー層においては、9%であったMR変化率が、Ptを添加したフリー層においては、4%となり、MR変化率が大幅に低下してしまう。
一方、本実施形態では、Ptの極薄層をCCPの界面から少し遠ざかったところに挿入することで、大きなスピン依存界面散乱効果を維持したままで、ダンピングファクタ調整する効果が発揮される。具体的には、0.5nmの極薄Pt層をNiFe層中に挿入することで、MR変化率は8.5%と若干低下するが、さほど大きな低下ではなく、かつSTIノイズを大幅に抑制することが可能となる。即ち、本実施形態では、MR変化率が微減して信号出力が微減する影響よりも、ノイズが低減することでS/N比が向上するメリットの方が大きく、結果的にBER(Bit Error Rate)が低下し、良好な特性を得ることが可能となる。
B.メタルCPPスピンバルブ膜の場合との比較
CCP構造を有しないメタルCPPスピンバルブ膜の場合には、スピン依存界面散乱効果が主ではなく、スピン依存バルク散乱効果が非常に大きな寄与となっている。このため、スペーサ層16の界面から遠ざかったところに極薄のPt層を挿入したとしても、MR変化率は低下してしまい、ダンピングファクタ調整層21としての機能を発揮することができない。
具体的な例を挙げると、CCPスペーサ層を有しない、5nmのCuスペーサ層を有する通常のメタルCPPスピンバルブ膜で、標準的なCoFe/NiFeフリー層の場合には、MR変化率は2%である。このとき、NiFe層中に0.5nmの極薄Pt層等を挿入すると、MR変化率は1%になってしまう。単純なメタルCPPスピンバルブ膜の場合には、もともとのMR変化率が1〜3%とただでさえ小さい値で、磁気ヘッドとして十分な出力を取りにくい。そして、このメタルCPPスピンバルブ膜にダンピングファクタ調整層21を挿入することによるMR変化率の劣化量は、CCP−CPPの場合よりも大きい。このため、トータルパフォーマンスとしては、メタルCPPスピンバルブ膜のダンピングファクタ調整層21として、極薄Pt層を用いることは困難である。
このように、CCPスピンバルブ膜とダンピングファクタ調整層21とを組み合わせることで、大きな効果が発揮される。
C.ダンピングファクタ調整層21を変更することによる影響
基本となるCCP−CPPスピンバルブ膜を固定し、ダンピングファクタ調整層21を変えたときのMR変化率への影響を検討する。
MR変化率に大きな影響を与えるピン層14、スペーサ層16、フリー層18の構成としては以下のような構成を用いて検討した。まず、ピン層143として、2〜3nmのFe50Co50に、0.2nmの極薄Cuを1nmのFeCoごとに積層したものを用いた。スペーサ層16は、CCP構造を有するAlを絶縁層として用い、Cuをメタルパスとして用いた1.5〜2nmのスペーサ層16とした。フリー層18としては、CoFe 1nm/NiFe 3.5nmを基本膜構成とした。
このようなCCP−CPPスピンバルブ膜において、ダンピングファクタ調整層21を用いたときの、ダンピングファクタ調整層21の材料、および挿入位置依存性を示したものを以下の表1に示す。
Figure 0005118766

この表1は、ダンピングファクタ調整層21をフリー層18のみに挿入した場合の、材料、および挿入位置(距離:CCP界面からの距離)へのMR変化率の依存性を表す。なお、比較例0は、ダンピングファクタ調整層21を有しない場合である。
表1から判るように、Ptのような標準的なダンピングファクタ調整層21をスペーサ層16の界面に挿入した場合には、MR変化率は大きく減少し、有効とはいえない。通常は、スペーサ層16の界面から1nm以上離れた位置にダンピングファクタ調整層21を挿入することが望ましい。
一方、ダンピングファクタ調整層21がTi,Zr,PdやHfの場合には、これをスペーサ層16の界面近傍に挿入してもMR変化率の減少の程度は比較的小さく、界面近傍においても用いることができる。しかしながら、界面よりも磁性層内部に挿入した場合のほうが、MR変化率減少への影響が少なくなるので、MR変化率の観点からは望ましい。
具体的なSTIノイズの状況に応じて、界面近傍に設けるか、それとも磁性層内部に設けるかが最適化される。媒体の磁界に対する磁化応答はフリー層18が担い、ピン層14は媒体磁界の向きによらず磁化固着されているため、フリー層18にダンピングファクタ調整層21を挿入することがSTIノイズ低減に有効である。よって、実施例1〜11のようにフリー層18に挿入することが、MR変化率と、STIノイズ低減とが両立する構成として好ましい。
ピン層14のみにダンピングファクタ調整層21を挿入した場合の実施例21〜31を表2に示す。この場合も材料への依存性は定性的には実施例1〜11と同様である。しかしながら、ピン層14の場合にはスピン依存界面散乱効果が大きなbcc−FeCoを用いていることで、スピン依存界面散乱効果の上昇程度が大きい。このため、ダンピングファクタ調整層21を挿入することによるMR変化率の減少へのダメージはフリー層18の場合よりも大きくなる。
Figure 0005118766

ピン層14、フリー層18ともに挿入した場合の実施例41〜51を表3に示す。傾向はこれまでと同様であり、ピン層14のみ、フリー層18のみに挿入した場合と比較すると、MR変化率の減少度合いは大きくなるが、STIノイズ抑制効果は大きくなる。
Figure 0005118766

(磁気抵抗効果素子の製造方法)
以下、本実施の形態における磁気抵抗効果素子の製造方法についてより詳細に説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の製造工程を表すフロー図である。
図3は、磁気抵抗効果素子の製造に用いられる成膜装置の概略を示す模式図である。また、図4は、この成膜装置中の酸化チャンバー60を表す模式図である。
図3に示すように、搬送チャンバー(TC)50を中心として、ロードロックチャンバー51、プレクリーニングチャンバー52、第1の金属成膜チャンバー(MC1)53、第2の金属成膜チャンバー(MC2)54、酸化チャンバー(OC)60がそれぞれゲートバルブを介して設けられている。この成膜装置では、ゲートバルブを介して接続された各チャンバーの間で、真空中において基板を搬送することができるので、基板の表面は清浄に保たれる。
金属成膜チャンバー53,54は多元(5〜10元)のターゲットを有する。成膜方式は、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ等のスパッタ法や、イオンビームスパッタ法、蒸着法などが挙げられる。
図4に示すように、酸化チャンバー60は真空ポンプ61によって真空引きされ、酸化チャンバー60にはマスフローコントローラー(MFC)63により流量制御された酸素ガスが酸素供給管62から導入される。
酸化チャンバー60内にはイオンソース70が設けられている。イオンソースの形式は、ICP(Inductive coupled plasma)型、Capacitive coupled plasma型、ECR(Electron-cyclotron resonance)型、カウフマン型などが挙げられる。
イオンソース70に対向するように基板ホルダー80および基板1が配置される。イオンソース70からのイオン放出口には、イオン加速度を調整する3枚のグリッド71、72、73が設けられている。イオンソース70の外側にはイオンを中和するニュートラライザ74が設けられている。基板ホルダー80は傾斜可能に支持されている。基板1へのイオンの入射角度は広い範囲で変えることができるが、典型的な入射角度の値は15°〜60°である。
以下、磁気抵抗効果素子の製造工程を説明する。
基板(図示せず)上に、下電極11、下地層12、ピニング層13、ピン層14、下部金属層15、スペーサ層16、上部金属層17、フリー層18、キャップ層19、上電極20を順に形成する。なお、形成の順序をこの逆とすることも可能である。
基板をロードロックチャンバー51にセットし、金属の成膜を金属成膜チャンバー53、54で、酸化を酸化チャンバー60でそれぞれ行う。金属成膜チャンバーの到達真空度は1×10−8Torr以下とすることが好ましく、5×10−10Torr〜5×10−9Torr程度が一般的である。搬送チャンバー50の到達真空度は10−9Torrオーダーである。酸化チャンバー60の到達真空度は8×10−8Torr以下である。
(1)下電極11、下地層12、ピニング層13の形成(ステップS11) 基板(図示せず)上に、下電極11を形成する。
下電極11上に、下地層12として、例えば、Ta[5nm]/Ru[2nm]を成膜する。既述のように、Taは下電極の荒れを緩和したりするためのバッファ層12aである。Ruはその上に成膜されるスピンバルブ膜の結晶配向および結晶粒径を制御するシード層12bである。
下地層12上にピニング層13を成膜する。ピニング層13の材料としては、PtMn、PdPtMn、IrMn、RuRhMnなどの反強磁性材料を用いることができる。
(2)ピン層14(およびダンピングファクタ調整層21)の形成(ステップS12) ピニング層13上にピン層14を形成する。ピン層14は、例えば、下部ピン層141(Co90Fe10)、磁気結合層142(Ru)、および上部ピン層143(Co90Fe10[4nm])からなるシンセティックピン層とすることができる。
上部ピン層143の成膜の途中で、成膜する材料を切り換えることでダンピングファクタ調整層21を挿入することができる。具体的には、成膜材料をCo90Fe10からPtに切り換えて、またCo90Fe10に戻すことで、上部ピン層143中にPtからなるダンピングファクタ調整層21が挿入される。
(3)スペーサ層16の形成(ステップS13)
次に、電流狭窄構造(CCP構造)を有するスペーサ層16を形成する。スペーサ層16を形成するには、酸化チャンバー60を用いる。
スペーサ層16を形成するには、以下のような方法を用いる。ここでは、アモルファス構造を有するAl23からなる絶縁層161中に金属結晶構造を有するCuからなる電流パス162を含むスペーサ層16を形成する場合を例に説明する。
1)上部ピン層143上に、電流パスの供給源となる下部金属層15(例えばCu)を成膜した後、下部金属層15上に絶縁層に変換される被酸化金属層(例えばAlCuやAl)を成膜する。
被酸化金属層に希ガス(例えばAr)のイオンビームを照射して前処理を行う。この前処理をPIT(Pre-ion treatmentという)。このPITの結果、被酸化金属層中に下部金属層の一部が吸い上げられて侵入した状態になる。
2)酸化ガス(例えば酸素)を供給して被酸化金属層を酸化する。この酸化により、被酸化金属層をAl23からなる絶縁層161に変換するとともに、絶縁層161を貫通する電流パス162を形成して、スペーサ層16を形成する。
例えば、希ガス(Ar、Xe、Kr、Heなど)のイオンビームを照射しながら酸化ガス(例えば酸素)を供給して被酸化金属層を酸化する(イオンビームアシスト酸化(IAO:Ion beam-assisted Oxidation))。この酸化処理により、絶縁層161であるAl23と電流パス162であるCuとが分離した形態のスペーサ層16が形成される。Alが酸化されやすく、Cuが酸化されにくいという、酸化エネルギーの差を利用した処理である。
(4)上部金属層17、フリー層18(およびダンピングファクタ調整層21)の形成(ステップS14)
スペーサ層16の上に、上部金属層17として、例えば、Cu[0.25nm]を成膜する。
上部金属層17の上に、フリー層18、例えば、Co90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]を形成する。
フリー層18の成膜の途中で、成膜する材料を切り換えることでダンピングファクタ調整層21を挿入することができる。具体的には、成膜材料をNi83Fe17からPtに切り換えて、またNi83Fe17に戻すことで、フリー層18のNi83Fe17中にPtからなるダンピングファクタ調整層21が挿入される。
(5)キャップ層19、および上電極20の形成(ステップS15)
フリー層18の上に、キャップ層19として例えば、Cu[1nm]/Ru[10nm]を積層する。キャップ層19の上にスピンバルブ膜へ垂直通電するための上電極20を形成する。
(実施例)
本発明の実施例の一例として、以下のような構成を挙げることができる。この実施例では、上部ピン層143中、およびフリー層18のFe50Co50層中に、ダンピングファクタ調整層21として、0.5nmのPt層を配置している。ダンピングファクタ調整層21を用いることで、RAが300〜1000mmで、MR変化率が8〜15%という高い値を保持しつつ、STIノイズを抑制することが可能となる。
・下電極11
・下地層12:Ta[5nm]/Ru[2nm]
・ピニング層13:Pt50Mn50[15nm]
・ピン層14:Co90Fe10[4nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50
2nm]/Pt0.5nm/Fe50Co50[2nm]
・下部金属層15:Cu[0.5nm]
・スペーサ層(CCP−NOL)16:Alからなる絶縁層161およびCuからなる電流パス162(Al90Cu10[0.9nm]を成膜した後、酸化処理)
・上部金属層17:Cu[0.25nm]
・フリー層18:Co90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[1nm]/Pt[0
.5nm]/Ni83Fe17[1nm]
・キャップ層19:Cu[1nm]/Ru[10nm]
・ 上電極20
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)を表す斜視図である。
図5に示すように本実施の形態に係る磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果膜10a、およびこれを上下から夾む下電極11および上電極20を有し、図示しない基板上に構成される。
磁気抵抗効果膜10aは、下地層12、ピニング層13、ピン層14a、下部金属層15、スペーサ層(CCP−NOL)16、上部金属層17、フリー層18a、キャップ層19が順に積層されて構成される。磁気抵抗効果膜10aは、本質的に磁気抵抗効果膜10と異なる訳ではないので、これら下地層12〜キャップ層19の詳細な説明は省略する。
本実施形態では、フリー層18a上の界面(フリー層18aとキャップ層19の境界)に電子乱反射層(Diffusive Electron Scattering Layer: DESL)22を配置することで、STIノイズの低減を図っている。第1の実施形態と異なり、ピン層14aには電子乱反射層22は配置していない。
電子乱反射層22は、キャップ層19の下に配置され、電子を乱反射させる層である。電子乱反射層22で電子を乱反射させることで、強磁性層(フリー層18a)の外側界面(スペーサ層16とは反対側の界面)での電子反射を制限し、ST効果、ひいてはSTIノイズを抑制することができる。なお、電子乱反射層22をキャップ層19に含めて考えることも可能である。
(1)非磁性アモルファス材料によって、電子乱反射層22を構成できる。非磁性アモルファス材料のアモルファス構造によって、電子を乱反射させ、STIノイズが抑制される。
非磁性アモルファス材料として、Ta、Ti、Zr、Hf、Nb、B、Si、Wなどの単体金属、またはこれらの元素を少なくとも50%以上含む合金材料を用いることができる。非磁性アモルファス材料として、AlBや、AlSiB、AlSiなどの合金組成によるアモルファス材料を用いても良い。
非磁性アモルファス材料のアモルファス構造による電子の乱反射を利用してSTIノイズを抑制するため、電子乱反射層22が結晶構造を有することは好ましくない。電子乱反射層22内の結晶化を抑制するために、電子乱反射層22がある程度薄い方が好ましい。
また、狭ギャップという観点からも、電子乱反射層22がある程度薄い方が好ましい。具体的には、電子乱反射層22の厚さとして0.5〜5nmが好ましく、1〜3nmがより好ましい。
(2)また、ミキシング層によって、電子乱反射層22を構成できる。ミキシング層によって、電子の乱反射を発生させ、STIノイズを抑制できる。
2つの層を積層し、その界面にミキシング層を形成できる。即ち、相互に固溶な関係にある少なくとも二種以上の合金材料を2層にわけて積層し、その界面に固溶なミキシング層を形成できる。相互に固溶な材料の組み合わせとして、CuとAl(CuAl合金を形成)、CuとNi(CuNi合金を形成)などが挙げられる。
(磁気抵抗効果素子の製造方法)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の製造工程を表すフロー図である。
図6は、ダンピングファクタ調整層21に換えて電子乱反射層22を形成する点が図2と異なる。これ以外の点では、図6は図2と本質的に異なる訳ではないので、以下、電子乱反射層22の形成のみを説明する。
図6のステップS25での電子乱反射層22の形成には次の手法(1)〜(3)のいずれかを適用できる。
(1)アモルファス層の形成
既述のTaなどの単体金属、これらの元素を少なくとも50%以上含む合金材料、AlBなどの合金材料を成膜することで、非磁性アモルファス材料の層が形成される。この成膜にDCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ等のスパッタ法や、イオンビームスパッタ法、蒸着法を用いることができる。
なお、これらの材料はアモルファス化し易いことから、冷却等のアモルファス化を促進する手段を成膜時に適用しなくても差し支えない。
(2)ミキシング層の形成
1)既述のように、相互に固溶な関係にある少なくとも二種以上の合金材料を第1層、第2層にわけて積層することで、その界面に固溶なミキシング層を形成できる。この積層にDCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ等のスパッタ法や、イオンビームスパッタ法、蒸着法を用いることができる。
例えば、フリー層18a上に、第1層としてAlを0.5nm、第2層としてCuを0.5nm、順に積層する。AlとCuは互いに固溶な関係にあるため、その界面においてミキシング層が形成され、このミキシング層で電子が乱反射される。
なお、Al[0.5nm]/Cu[0.5nm]に引き続いて、Ruを10nm積層し、キャップ層19とすることができる(図6のステップS26)。
2)第1層、第2層の界面に表面処理を施して、ミキシング層の形成を促進することも可能である。
例えば、フリー層18a上に、第1層としてAlを0.5nm成膜し、その後、第2層としてCuを0.5nm成膜後、プラズマやイオンビーム等の処理をその表面に施す。表面処理を施すことで、Al層とCu層の界面でのミキシング層の形成をエンハンス(促進)できる。イオン等の入射エネルギーにより、Al層とCu層の界面の原子が移動し、入り交じることで、ミキシング層の形成が促進される。
この表面処理は、第1、第2層の成膜後のみならず、成膜中に行っても良い。例えば、第1層の成膜後、第2層の成膜中に、表面処理を施すことができる。
この表面処理には、Ar,Ne等の不活性ガスをプラズマ化、イオン化して用いることができる。このとき、希ガスのイオンの他に、中性原子も、この表面処理に寄与し得る。界面に入射した際に、ある程度のエネルギーを有していれば、そのイオン化の有無を問わず、界面の原子を移動させることができる。
表面処理によるミキシング層の形成促進は、AlとCuの組み合わせ以外に、他の材料の組み合わせの場合(例えば、NiとCu)でも有効である。
(実施例)
本発明の実施例の一例として、以下のような構成を挙げることができる。ここではキャップ層19内のTa層が電子乱反射層22として機能する。即ち、ここでは電子乱反射層22をキャップ層19に含めて考えている。フリー層18の内部にある非磁性層や、スペーサ層16との界面にある非磁性層はダンピングファクタ調整層21として考えるが、フリー層18の最上部に積層された非磁性層はキャップ層19の一部とみなすことができる。
ここでは、(Fe50Co50/Cu)を2回繰り返し積層して、上部ピン層143aを形成している。非特許文献3で示したように、FeCoはスピン依存界面散乱効果が大きいため用いており、Cuを積層するのはスピン依存バルク散乱効果を向上させるためである。
なお、上部ピン層143aをFe50Co50のみから形成しても差し支えない。
・下電極11
・下地層12:Ta[5nm]/Ru[2nm]
・ピニング層13:Pt50Mn50[15nm]
・ピン層14:Co90Fe10[4nm]/Ru[0.9nm]/(Fe50Co50
[1nm]/Cu[0.25nm])×2/Fe50Co50[1nm]
・下部金属層15:Cu[0.5nm]
・スペーサ層(CCP−NOL)16
・上部金属層17:Cu[0.25nm]
・フリー層18:Co90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]
・キャップ層19:Ta[1nm]/Cu[10nm]
・上電極20
(磁気ヘッド)
図7および図8は、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに組み込んだ状態を示している。図7は、磁気記録媒体(図示せず)に対向する媒体対向面に対してほぼ平行な方向に磁気抵抗効果素子を切断した断面図である。図8は、この磁気抵抗効果素子を媒体対向面ABSに対して垂直な方向に切断した断面図である。
図7および図8に例示した磁気ヘッドは、いわゆるハード・アバッテッド(hard abutted)構造を有する。磁気抵抗効果膜10は上述したCCP−CPP膜である。磁気抵抗効果膜10の上下には、下電極11と上電極20とがそれぞれ設けられている。図7において、磁気抵抗効果膜10の両側面には、バイアス磁界印加膜41と絶縁膜42とが積層して設けられている。図8に示すように、磁気抵抗効果膜10の媒体対向面には保護層43が設けられている。
磁気抵抗効果膜10に対するセンス電流は、その上下に配置された電極11、20によって矢印Aで示したように、膜面に対してほぼ垂直方向に通電される。また、左右に設けられた一対のバイアス磁界印加膜41、41により、磁気抵抗効果膜10にはバイアス磁界が印加される。このバイアス磁界により、磁気抵抗効果膜10のフリー層18の磁気異方性を制御して単磁区化することによりその磁区構造が安定化し、磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズ(Barkhausen noise)を抑制することができる。
磁気抵抗効果膜10のS/N比が向上しているので、磁気ヘッドに応用した場合に高感度の磁気再生が可能となる。
(ハードディスクおよびヘッドジンバルアセンブリー)
図7および図8に示した磁気ヘッドは、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込んで、磁気記録再生装置に搭載することができる。
図9は、このような磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。すなわち、本発明の磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、磁気ディスク200は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本発明の磁気記録再生装置150は、複数の磁気ディスク200を備えたものとしてもよい。
磁気ディスク200に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ヘッドスライダ153は、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
磁気ディスク200が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は磁気ディスク200の表面から所定の浮上量をもって保持される。あるいはスライダが磁気ディスク200と接触するいわゆる「接触走行型」であってもよい。
サスペンション154はアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、ボビン部に巻かれた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
アクチュエータアーム155は、スピンドル157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
図10は、アクチュエータアーム155から先のヘッドジンバルアセンブリーをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、アセンブリ160は、アクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。サスペンション154の先端には、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165はアセンブリ160の電極パッドである。
本実施形態によれば、上述の磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具備することにより、高い記録密度で磁気ディスク200に磁気的に記録された情報を確実に読み取ることが可能となる。
(磁気メモリ)
次に、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を搭載した磁気メモリについて説明する。すなわち、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を用いて、例えばメモリセルがマトリクス状に配置されたランダムアクセス磁気メモリ(MRAM: magnetic random access memory)などの磁気メモリを実現できる。
図11は、本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の一例を示す図である。この図は、メモリセルをアレイ状に配置した場合の回路構成を示す。アレイ中の1ビットを選択するために、列デコーダ350、行デコーダ351が備えられており、ビット線334とワード線332によりスイッチングトランジスタ330がオンになり一意に選択され、センスアンプ352で検出することにより磁気抵抗効果膜10中の磁気記録層(フリー層)に記録されたビット情報を読み出すことができる。ビット情報を書き込むときは、特定の書き込みワード線323とビット線322に書き込み電流を流して発生する磁場を印加する。
図12は、本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の他の例を示す図である。この場合、マトリクス状に配線されたビット線322とワード線334とが、それぞれデコーダ360、361により選択されて、アレイ中の特定のメモリセルが選択される。それぞれのメモリセルは、磁気抵抗効果素子10とダイオードDとが直列に接続された構造を有する。ここで、ダイオードDは、選択された磁気抵抗効果素子10以外のメモリセルにおいてセンス電流が迂回することを防止する役割を有する。書き込みは、特定のビット線322と書き込みワード線323とにそれぞれに書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
図13は、本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図である。図14は、図13のA−A’線に沿う断面図である。これらの図に示した構造は、図11または図12に示した磁気メモリに含まれる1ビット分のメモリセルに対応する。このメモリセルは、記憶素子部分311とアドレス選択用トランジスタ部分312とを有する。
記憶素子部分311は、磁気抵抗効果素子10と、これに接続された一対の配線322、324とを有する。磁気抵抗効果素子10は、上述した実施形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)である。
一方、選択用トランジスタ部分312には、ビア326および埋め込み配線328を介して接続されたトランジスタ330が設けられている。このトランジスタ330は、ゲート332に印加される電圧に応じてスイッチング動作をし、磁気抵抗効果素子10と配線334との電流経路の開閉を制御する。
また、磁気抵抗効果素子10の下方には、書き込み配線323が、配線322とほぼ直交する方向に設けられている。これら書き込み配線322、323は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)あるいはこれらいずれかを含む合金により形成することができる。
このような構成のメモリセルにおいて、ビット情報を磁気抵抗効果素子10に書き込むときは、配線322、323に書き込みパルス電流を流し、それら電流により誘起される合成磁場を印加することにより磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を適宜反転させる。
また、ビット情報を読み出すときは、配線322と、磁気記録層を含む磁気抵抗効果素子10と、下電極324とを通してセンス電流を流し、磁気抵抗効果素子10の抵抗値または抵抗値の変化を測定する。
本発明の実施形態に係る磁気メモリは、上述した実施形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)を用いることにより、セルサイズを微細化しても、記録層の磁区を確実に制御して確実な書き込みを確保でき、且つ、読み出しも確実に行うことができる。
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張、変更可能であり、拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
磁気抵抗効果膜の具体的な構造や、その他、電極、バイアス印加膜、絶縁膜などの形状や材質に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる。
例えば、磁気抵抗効果素子を再生用磁気ヘッドに適用する際に、素子の上下に磁気シールドを付与することにより、磁気ヘッドの検出分解能を規定することができる。
また、本発明の実施形態は、長手磁気記録方式のみならず、垂直磁気記録方式の磁気ヘッドあるいは磁気再生装置についても適用できる。
さらに、本発明の磁気再生装置は、特定の記録媒体を定常的に備えたいわゆる固定式のものでも良く、一方、記録媒体が差し替え可能ないわゆる「リムーバブル」方式のものでも良い。
その他、本発明の実施形態として上述した磁気ヘッドおよび磁気記憶再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記憶再生装置および磁気メモリも同様に本発明の範囲に属する。
10…磁気抵抗効果膜(磁気抵抗効果素子)、11…下電極、12…下地層、13…ピニング層、14…ピン層、141…下部ピン層、142…磁気結合層、143…上部ピン層、15…下部金属層、16…スペーサ層、161…絶縁層、162…電流パス、17…上部金属層、18…フリー層、19…キャップ層、20…上電極、21…ダンピングファクタ調整層、22…電子乱反射層

Claims (6)

  1. ピニング層を有する磁化固着層と、前記磁化固着層上に配置され、絶縁層と、この絶縁層の層方向に電流を通過させる導電体と、を有する非磁性層と、前記非磁性層上に配置され、前記非磁性層との界面にCoFe層が挿入されたNiFe層を有する磁化自由層とを有するスピンバルブ膜と、
    前記磁化自由層の内部に配置され、Ti又はPdを含み、前記非磁性層から1nm以上離れて一層あるいは複数層配置され、かつ厚さが0.1nm以上で1nm以下(1nmを除く)の所定の層と、
    前記スピンバルブ膜の上下に設けられ前記スピンバルブ膜の膜面に垂直に通電する1対の電極と、
    を具備し、
    前記スピンバルブ膜のfcc(111)ピーク、前記ピニング層のfct(111)ピークまたはbcc(110)でのロッキングカーブの半値幅が3.5〜6度である磁気抵抗効果素子。
  2. 前記所定の層が、前記磁化自由層に配置され、かつTi、およびPdのいずれかを含む請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記スピンバルブ膜の結晶粒径が10〜40nmである請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子を具備する磁気抵抗効果ヘッド。
  5. 請求項4記載の磁気抵抗効果ヘッドを具備する磁気記憶装置。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子を具備する磁気メモリ。
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