本発明は、
(1)溶鋼が接触する内孔面の全部又は一部の領域が、内孔面から順に内孔側層、中間層、外周側層の複数層構造であり、かつ、前記内孔側層の熱膨脹が、その内孔側層に対応する領域の外周側層の熱膨脹より大きい連続鋳造用ノズルにおいて、
前記中間層は、粒の平均半径Rと前記粒の平均の壁の厚みtの比がR/t≧10を満たす中空耐火骨材を10体積%以上75体積%以下含み、かつ当該中空耐火骨材以外の残部に占める割合として、Al、Mg、Siの単体金属若しくは合金の1種又は複数種(以下「特定金属」という。)を、それらの金属成分のみに換算して合計で0.5質量%以上15質量%以下、炭素を2質量%以上99.5質量%以下含み、
前記内孔側層が、CaO成分とMgO成分をその合量で80質量%以上含み、CaOとMgOとの質量比(CaO/MgO)が0.2〜1.5であって、
前記内孔側層中のCaO含有量の当該内孔側層における質量割合を、前記中間層中のAl2O3、SiO2及びアルカリ金属酸化物の合量の当該中間層における質量割合で除した値が10以上である連続鋳造用ノズル(請求項1)、
(2)前記中間層の耐火物内の中空耐火骨材が、SiO2を70質量%以上、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を合計で1質量%以上10質量%以下を含むガラス質の組織を含む請求項1に記載の連続鋳造用ノズル(請求項2)、
(3)前記中間層の耐火物の2.5MPaの加圧下の可縮率が10%以上80%以下であり、 かつ、下記の式1を満たし、
前記中間層の耐火物は、1000℃以上1500℃以下の非酸化性雰囲気の熱間において、当該耐火物以外の連続鋳造用ノズルに使用する耐火物と0.01MPa以上1.5MPa以下の接着強度を備える請求項1又は請求項2に記載の連続鋳造用ノズル(請求項3)
K ≧ [(Di×αi−Do×αo)/(2×Tm)]×100 … 式1
ここで、
K(%)は中間層の可縮率
Diは内孔側層の外径(mm)
Doは外周側層の内径(mm)
Tmは中間層の室温における(初期)厚み(mm)、
αiは内孔側層の耐火物の室温から1500℃までの範囲における最大の熱膨脹率(%)
αoは外周側層の耐火物の通鋼開始時の温度における熱膨脹率(%)
である。
以下、詳細に述べる。
内孔側層による外周側層の亀裂や押し割りに起因する連続鋳造用ノズルの破壊は、内孔側層の熱膨脹が外周側層の熱膨脹よりも大きい場合、とくに内孔側層の耐火物の熱膨脹特性(本発明では温度上昇に伴う線膨脹率と同義)が外周側層の耐火物の熱膨脹特性よりも大きい場合に顕著に生じる。
内孔側層の熱膨脹による応力は、連続鋳造用ノズルの水平方向断面における半径方向の圧縮応力として作用し、さらに連続鋳造用ノズルが長尺側軸方向の端部にも外周側層を有する構造の場合には、その軸方向の圧縮応力としても外周側層に作用する。そしてこれらの圧縮応力は外周側層内にて、半径方向の圧縮応力は円周方向の、軸方向の圧縮応力は同じ軸方向の引張り応力に転化し、外周側層の引張り強度を超えたところで、前者の場合は軸(縦)方向の、後者の場合は水平(横)方向の亀裂を生じて、外周側層を損傷させる。
このような関係にある内孔側層と外周側層との間に、応力を緩和する機能を付与する手段として、本発明では、予熱終了時以降、少なくとも溶鋼の通鋼開始(本発明においては浸漬ノズル内の鋳造開始、ロングノズルのタンディッシュへの溶鋼注入開始も同義。以下同じ。)時点の状態で可縮性を有する中間層を設置する。
このような中間層を設置することで、内孔側層の熱膨脹は外周側層に直接作用することなく中間層への圧縮応力として作用する。この際、中間層自体が圧縮応力に応じて半径方向の厚み、あるいは軸方向の厚みを小さくする、言い換えるとその体積を縮小することで、内孔側層の膨脹による応力を緩和させることが可能となる。本発明において、このような厚みや体積を縮小することができる性質を可縮性という。
本発明において、この中間層を構成する耐火物の可縮性は主として、耐火物の構成原料の一つである中空耐火骨材により得る。
この中空耐火骨材により可縮性が得られ、熱膨脹による応力が緩和される主なメカニズムは次の2点である。
(1)内孔側層の熱膨脹により中空耐火骨材がその破壊強度以上の応力で加圧され、中空耐火骨材の壁面が破壊して体積が縮小し、その破壊によって生じた空間容積が内孔側層の熱膨脹の吸収代となる。この過程は主に中空骨材粒子の軟化前に荷重を受けた場合に発生する。
(2)1000℃を超える高温域では、中空耐火骨材の壁が軟化し(温度により軟化の程度は異なる)、その軟化した中空耐火骨材が加圧されると容易に変形して体積が縮小し、その軟化変形〜縮小によって生じた空間容積が内孔側層の熱膨脹の吸収代となる。
中間層によって得ようとする可縮性の目標範囲について以下に説明する。
浸漬ノズルの一般的な外周側層の材質であるAl2O3−C質を主とする材料系の耐火物の場合、一般的には外周側層の内壁面に数MPaの圧力を加えると破断する。例えば、最大引張り強度が6MPaのAl2O3−黒鉛材質の外周側層を持ち一般的な連続鋳造用ノズル形状の円筒状で、かつ実用上ほぼ最小の径方向の構造を有する耐火物(外周側層の内径φ80mm、外周側層の外径φ135mm)の場合、管内壁面から圧力を負荷していくと、肉圧円筒の式から計算により内壁面に約2.5MPaの圧力を負荷すると破断に至ることになる。
予熱や鋳造開始ないし途中で、この外周側層の内孔側に中間層と内孔側層とを配した場合で内孔側層の熱膨脹に伴う外周側層にかかる応力を緩和するためには、中間層自体が変形挙動を示す必要がある。即ち内孔側層から外周側層にかかる応力は、中間層の変形(縮小)によって2.5MPa以下に止める必要があるということになる。
以上のことから、内孔側層の加熱ないし通鋼過程で、外周側層内に発生する引張り応力を2.5MPa以下、安全性をより高めるためにはさらにできるだけ小さい引張り応力に抑制することが好ましく、このような引張り応力値になるような圧縮応力値の下で、中間層自体が変形挙動を示す必要がある。
そして2.5MPaの加圧力下における中間層に必要な可縮性は、次式の可縮率K(%)で表すことができる。
K ≧ [(Di×αi−Do×αo)/(2×Tm)]×100 … 式1
ここで、
Kは中間層の可縮率(%)
Diは内孔側層の外径(mm)
Doは外周側層の内径(mm)
Tmは中間層の室温における(初期)厚み(mm)
αiは内孔側層の耐火物の室温から1500℃までの範囲における最大の熱膨脹率(%)
αoは外周側層の耐火物の通鋼開始時の温度における熱膨脹率(%)
Di及びDoは、軸方向の全域において対象となる部分の、軸方向に水平な方向の断面上の内孔側層及び外周側層の平面形状につき、それぞれ内孔側層の外周側面の位置、外周側層の内孔側面の位置の直径を意味する。またこれらの平面形状が円形ではない場合は、当該平面上の内孔側層の平面形状の中心から放射状に延びる同一直線上において、内孔側層の外周側面の位置をDi、外周側層の内孔側面の位置をDoとして、当該形状全体につき、前記式1を満たせばよい。
なお、軸方向端部における可縮性は、軸方向(垂直な方向)の軸の中心を通過する断面上の内孔側層及び外周側層の平面形状につき、上記式1において、Diを内孔側層の軸方向外側面位置を一端部とする他の端部までの軸方向の長さ、Doを外周側層の軸方向内孔側面位置を一端部とする他の端部までの外周側層の軸方向の長さに置き換えればよい。
ここでαiは内孔側層の耐火物の室温から1500℃までの範囲における最大の熱膨脹率(%)であるということは、実質的に溶鋼温度までにおける内孔側層の耐火物の最大の熱膨脹率を意味し、αoは外周側層の耐火物の通鋼開始時の温度における熱膨脹率(%)であるということは、予熱条件等の操業条件に応じて溶鋼の通鋼開始時に外周側層が曝される温度であって、その条件は各現場ごとに個別に決定するべきものである。なお、温度上昇に伴う熱膨脹率の測定は、JIS R 2207−1又はこれに準じた方法(但し、非酸化雰囲気内)により行うことができる。
連続鋳造用ノズルを予熱無しで使用する場合には、外周側層は室温(周囲の環境の温度)と同じであって、このときαoは熱膨脹率測定の基準点である室温における膨脹率、即ちほぼ「ゼロ」とみなすことができ、前記の式1は式2となる。
K ≧ [Di×αi/(2×Tm)] … 式2
この式2を満足する可縮率Kは最も厳しい条件、即ち内孔側層と外周側層との間の熱膨脹差が最大になる場合を考慮した可縮率となり、この式2を満足する可縮率以上であれば外周側層が破壊することはないが、より破壊しにくい安全性を確保するためには、全ての操業条件においてこの式2を満足する可縮率Kとすることが好ましい。
なお、この式1及び式2のKは、いずれも還元性ガスや不活性ガス雰囲気内の非酸化雰囲気又は表面に酸化防止材を塗布して空気等の酸化性のガス雰囲気内等の、対象の耐火物が酸化しない条件での値とする。実際の連続鋳造用ノズルの使用時の中間層は非酸化雰囲気である。また、前記Kの測定において対象の試料が酸化すると正確な性状を把握することができない。
本発明において、前述の中間層用の耐火物の可縮率は、10%以上80%以下を基準とすることが好ましい。
中間層の可縮率に応じてその中間層厚さを調整することにより、内孔側層の膨脹代を緩和することができるが、10%未満であると内孔側層と外周側層の熱膨脹率差から中間層の厚さを厚くせざるを得ず、連続鋳造用ノズルの肉厚に制限があるため、結果として本体材質の肉厚が薄くなり構造体としての強度に問題が生じる。また、80%より大きいと中間層の厚さは薄く設計できるため前述したような問題は生じにくいが、薄い中間層を形成する上での製造上の問題や内孔側層と外周側層との接着の強度低下問題が生じ易くなる。例えば、一般的に使用されている連続鋳造用ノズルの最小サイズ付近である外周側層の内径が約φ80mm、内孔側層の熱膨脹率が2.0%、外周側層の熱膨脹率が0.8%の条件を想定した場合、中間層の厚みが約4mmで中間層の耐火物に必要な可縮率は10%となり、最大サイズ付近である外周側層の内径が約φ150mm、内孔側層の熱膨脹率が2.0%、外周側層の熱膨脹率が0.8%の条件を想定した場合、中間層の厚みが約1.2mmで中間層の耐火物に必要な可縮率は約78%となる。
ここで、可縮率の下限値は1000℃、上限値は1500℃(いずれも非酸化雰囲気中)における測定値を基準とすることができる。可縮率の下限の基準を1000℃とできるのは、1000℃では、中空耐火骨材を含む耐火物の可縮性は殆ど中空耐火骨材の破壊によってもたらされ(厳密には耐火物のマトリクス組織の可縮性も若干加わる)、この破壊の特性は室温から1000℃程度以下の温度域ではほとんど同じであること、結合材成分中の揮発質成分が十分に飛散し炭素質結合組織が完成し、その耐火物のマトリクスの基本となる結合組織が形成されていること等で可縮率はほぼ下限値を示すと考えられること、そのためばらつきの少ない評価が可能であること、また1000℃から1500℃(溶鋼温度)の高温度域では、中空耐火骨材の破壊に中空耐火骨材の軟化特性等が加わり、1000℃における可縮率よりも高い傾向となること等の理由による。可縮率の上限の基準を1500℃とできるのは、内孔面が最高温度である溶鋼の温度に対し、中間層の温度が約1500℃程度であるからである。
前記の可縮率は、次のような方法により測定することができ、この測定値を前記の可縮率と同視することができる。
予め、成形圧力と同じ圧力で成形され熱処理後に可縮性を示す特性をもつ混合物からなる円柱状耐火物(φ20×5mmt)を、円柱状耐火物と同じ形状のカーボン質の拘束空間内に入れて、非酸化雰囲気下で所定の昇温パターンで熱処理を加え可燃性成分を消失させ円柱状サンプル(約φ20×約5mmt)を得る。この熱処理後の円柱状サンプルをφ20×40mmLの形状をもつ2本の耐火物製治具の端面間に配置する。さらに、挟み込まれた円柱状サンプルを長手方向から加圧する際に、その側面からのサンプルの剥落を防止するために、内径φ20mm/外径φ50mm高さ78mmの耐火物製で円筒状のサンプル用ガイドを当該サンプルに外挿して測定用サンプルとしてもよい。なお、溶媒を含むモルタルの可縮率を測定する場合、耐火物試験片端面の開孔気孔部に溶媒が浸入し可縮率が変化する恐れがあるため予め溶媒をしみ込ませたり、ワックス処理などをして浸透し難い耐火物試験片を用いる方が好ましい。
この測定用サンプルを温度、雰囲気、加圧速度が制御できる材料試験機の炉内に設置して、非酸化雰囲気で所定の温度まで昇温して、温度が均一になるまで保持した後、加圧を開始して測定を行う。まず、無加圧の状態での円筒状サンプルの初期厚みt0(mm)を測定する。次に、測定用サンプルを所定の温度に保持した後に、クロスヘッド移動速度0.001〜0.01mm/secの範囲で円筒状サンプルを上下方向から圧縮して、2.5MPaまで加圧した後、その変位量h1(mm)を測定する。また円筒状サンプルを挟み込む耐火物製治具の同荷重、同温度でのブランク値を測定するために、円筒状サンプルを挟まない状態で、同条件で加圧し変位量h2を測定する。これらの測定値を次式にて計算することで各温度での可縮率K(%)を得ることができる。
K = (h1−h2)/t0 ×100 (%) … 式3
また、内孔側層が中間層により外周側層に成形時に一体化され連続した構造の実際の鋳造用ノズルからも測定することが可能である。外周側層より耐火物中心軸に対して直角に中心軸に向かってφ20mmのコアボーリングを行い、内孔側層、中間層及び外周側層を含む一体化した約φ20mmの、内孔及び外周側面に曲率をもったコアサンプルを得る。中間層の可縮率は、均一に加圧できるようにコアサンプルの上下面を水平に加工し耐火物製治具に接着するか、コアサンプル上下面と同じ曲率をもった耐火物製治具に接着するなどして、内孔側層、中間層及び外周側層を含む所定のφ20×80〜100mmLの測定用サンプルに加工する(ボーリングサンプルの上下面を均一に加圧できるようにする)。(測定用サンプルが前記大きさより小さい場合は、単位面積、単位長さ等の条件を計算により前記と同程度にして測定し、換算することも可能である。)上述した方法と同じく、無加圧の状態での中間層の初期厚みt0(mm)を正確に計測し、また、所定の温度で非酸化雰囲気中で中間層の変位量h1を測定すると共に中間層の無い状態でのブランク値での変位量h2を計測し可縮率Kを算出する。実際のノズルからサンプリングすることにより、中間層の可縮性を正確に測定することが可能となる。
本発明において応力緩和のための可縮性は、前述のとおり主として中間層内の中空耐火骨材によって得ることができる。この可縮性の大きさは、中間層用の耐火物内の中空耐火骨材の体積割合にほぼ一致する。即ち中間層が中空耐火骨材を10体積%以上75体積%以下含むことで、可縮率が前記の1000℃において10%以上80%以下の要件を満たすことができる。なお、中空耐火骨材以外のマトリクス部分も若干の可縮性を有するが、中空耐火骨材を10体積%以上75体積%以下含むことで、マトリクス部分の可縮性の大小に異存せずに安定的な設計上の可縮性を得ることが可能となる。
ここで、中空耐火骨材の体積%は、その平均の粒子密度とその添加重量から算出した体積(即ち、中空耐火骨材自身の体積、骨材内の閉気孔の体積及び骨材表面の凹凸部の空間の体積)を中空耐火骨材の占める体積及びその他残部のマトリックス部の占める体積の和で除した値の百分率をいう。中空耐火骨材の体積%の算出方法は、配合中に使用している原料密度から算出する方法が最も正確であるが、顕微鏡組織写真などからによる中空耐火骨材の2次元的な情報を元に、線分法などの画像解析により、中空耐火骨材の体積分率の数値を代用することもできる。
本発明で使用する中空耐火骨材は、内部に空間を有し、外郭が壁によって形成されたものである。その耐圧強度は、1000℃未満の温度下(室温までの変化は殆どないので室温下での評価とすることができる。)では、骨材粒子1個当たりを2つの平面間で圧縮した場合に、連続鋳造用ノズルを前提とする設定最大加圧、即ち2.5MPa以下の圧縮応力で破壊するものであることが好ましい。
この耐圧強度を満足するためには、中空耐火骨材の平均半径Rとの平均の壁の厚みtとの比(R/t)が10以上であることが必要である。R/tが10未満であると2.5MPaの圧力下での破壊率が少なく、必要な可縮率を確保することができないことがある。
またこのR/tは60以下が好ましい。60を超えると、本発明の中間層の施工時やこの中間層を設置した連続鋳造用ノズルのハンドリング等の機械的な衝撃でも中空耐火骨材が破壊して中間層の安定性を損なう可能性が大きくなるからである。
ここで平均半径とは、中空耐火骨材粒子単体について、投影又は中央付近の断面の、最大寸法と最小寸法を単純平均した値、又は任意の複数の点の加重平均値等をいう。
前記のR/t比を満足する中空耐火骨材の大きさ(粒の平均半径R)は、中間層の中に均一に分散させて中間層内の可縮性挙動を均一化するためにも、微細である方がよい。このような中空耐火骨材粒子の大きさの上限は、設置する当該耐火物による層(中間層)の厚みやその設置(施工)方法等によっても異なる相対的なものなので、絶対値で特定することは適当ではない。しかし、本発明の耐火物を適用する連続鋳造用ノズルの産業上の現実的な大きさから、その中間層の厚みを考慮すると、中間層の下限厚みは約1mm程度(一般的には設置時の作業性、品質等、さらには連続鋳造用ノズルの合理的な構造等を考慮して数mm程度である。また上限は可縮率の要素もあって広範囲に及ぶ。)であることから、このような厚みの層内に中空耐火骨材を均一に分散させることはその径が大きくなるにしたがい困難になる。例えば内孔側層と外周側層との間に中間層となる耐火物を充填する(目地モルタルと同様な方法や流し込みの方法で充填する)際には、粗大な中空耐火骨材粒子はその施工時から既に分離傾向となって偏析しやすく、さらには平均半径Rが大きいほど割れやすくもなる。これらの結果として中間層内の部分ごとの可縮性にもばらつきが生じる。このような理由から、中空耐火骨材粒子の最大半径は250μm以下であることが好ましい。
また、中空耐火骨材の最小半径は2.5μm以上が好ましい。最小半径が2.5μm未満であると、均一性の面では好ましいものの、耐圧強度が高くなる傾向となって2.5MPa以下の圧縮応力では破壊しない割合が大きくなり、可縮量が減少する傾向になるので好ましくない。
なお、本発明において最大半径とは、升目の1辺が設定の半径粒子の直径の大きさを有する網目を通過したもの、又はこれに相当する方法で分級されたものをいい、最小半径とは、升目の1辺が設定の半径粒子の直径の大きさを有する網目を通過しないもの、又はこれに相当する方法で分級されたものをいう。
また、中空耐火骨材は、その外郭形状が球状あるいは丸みを帯びていることが好ましい。中空耐火骨材が球状あるいは丸みを帯びていることで、骨材粒子相互が点接触となって、接触部が広い面等の場合に比較してばらつきの小さい応力(ここでは2.5MPa以下)で中空耐火骨材の壁が破壊し、安定的な耐圧強度を得やすい。また、内孔側層と外周側層(連続鋳造用ノズル本体部)との間隙に、モルタル状にした中間層を充填又は塗布して配置する場合に、その間隙での中間層の流動性が改善されて溶液を過剰に使用する必要がなく、また偏析を少なくすることもできる。充填時の作業性を得るために必要とする流動性付与を目的とする揮発分を多く含む液を多量に使用する場合は、中間層の耐火物の接着性や強度の低下を招くおそれがある。
このような中空耐火骨材としては、とくにガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーンなどの呼称で知られるガラス質を含む中空耐火骨材が好ましい。さらに、このガラス質を含む中空耐火骨材の化学組成は、SiO2を70質量%以上、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を合計で1質量%以上10質量%以下を含むガラス質の組織を含み、残部(SiO2、アルカリ金属及びアルカリ土類金属酸化物以外の部分)が中性酸化物やSiO2以外の酸性酸化物成分からなるものが好適であり、具体的には残部がAl2O3からなる、アルミノ珪酸塩系が最もよい。
このような組成、とくに残部がAl2O3からなるアルミノ珪酸塩系では、軟化点が1000〜1400℃(ここで「軟化」とは、2.5MPa以下の加圧下で、破壊とは別に外形状に変形を生じる状態をいう。)となり、中間層が高温域で軟化変形を起こしやすくなるため熱間での可縮量の増大をもたらす。
また、このような中空耐火骨材は、軟化以前の低温域即ち約1000℃未満では2.5MPa以下の加圧時に脆性破壊により可縮性を発現するが、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属を合計で1質量%以上10質量%以下を含むガラス質の組成にすることにより、約1000℃以上1500℃(溶鋼温度)以下の高温度域で軟化変形しやすくなることで、その体積を縮小して応力吸収機能や熱間強度の発現に寄与することができる。
SiO2が70質量%未満、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の合計が10質量%より多い場合や、SiO2が70質量%以上、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物が合計で10質量%より多い場合は、溶融ガラスの粘性から中空原料を製造する上での問題が生じたり、高温粘性が低いために内孔側層を保持するための接着力で問題が生じやすい。一方、SiO2が70質量%未満で、アルカリ金属酸化物の合計が1質量%未満の場合や、SiO2が70質量%以上でアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物が合計で1質量%未満の場合は、ガラス組成の粘性が高すぎる傾向があり、中空原料製造上の問題が生じたり、高温域での軟化変形挙動や内孔側耐火物層を保持するための粘着力が低下する問題がある。
なお、本発明における中空耐火骨材の組成の特定にあたっては、非酸化雰囲気における揮発分や可燃物は含まないものとする。具体的には約600℃以上の非酸化雰囲気での熱処理後の試料を基準にする。
そして、このような中空耐火骨材は、応力によって破壊や軟化して体積を縮小する以前には、耐火物組織中では体積を有する骨材として存在するので、当初から空間を配置した通常のモルタル等と比較して、中間層としての高い強度の発現や維持、高い応力分散機能、溶融金属や空気等の外部からの流体の侵入ないし通過を大幅に減少させることができる。即ち、後述の層自体の安定性、連続鋳造用ノズルの層構造の安定性等にも寄与することができる。
このような中間層は、連続鋳造用ノズルの搬送や設置、予熱、通鋼の各々の段階において、それらの各段階で受ける外力によっても内孔側層のずれ、剥離、破壊等を生じさせないことが必要である。
単に耐火物のマトリクス組織内に空間を多量に存在させたモルタルは、収縮後に組織を破壊するので、中間層自体の脆弱化や接着強度の低下を招き、層自体の崩壊を来すことになる。ひいては内孔側層の剥離や破壊、層間への溶鋼等の侵入等を惹き起こす危険性が極めて高くなる。
多くの鋳造中の内孔側層に関係するトラブルは、このような中間層の接着性が不足する場合があることが原因であったことが判明した。したがって、とくに内孔側層の熱膨脹により中間層自体が収縮した後の、高温度での溶鋼の通過中に、中間層を介して一定の強度を保持しながら内孔側層が外周側層と安定した接着性を維持しておく必要がある。
本発明の中間層の耐火物の可縮性は前述のとおり、主として中空耐火骨材の破壊、変形等により実現するので、マトリクス組織部分は従来技術のモルタルと比較して高強度、緻密質である。したがって、強度の脆弱化や接着強度の低下を大幅に抑制する。
また、中空耐火骨材は中間層の耐火物組織中で一定の応力が加わった場合に、その可縮性を必要とする部分のみが破壊するか、1000℃以上1500℃(溶鋼温度)以下の非酸化雰囲気の熱間においては軟化により変形し、それらによって応力を緩和して連続鋳造用ノズルの破壊等を防止する。同時に応力緩和を必要としない部分では、中間層の耐火物の骨格をなす骨材としての形状を維持する。
中空耐火骨材が破壊や軟化変形を生じる場合には、中空耐火骨材はその周囲のマトリクス等から圧縮応力を受けた部分のみの壁を骨材粒子内部に向かって破壊又は変形させながら外形の体積を縮小する。また、中空耐火骨材の破壊又は軟化による変形は、小さな粒の中空耐火骨材が組織内に分散していることからマトリクス組織に局部的な大きい変形をもたらすことはなく、従来の高気孔率のモルタルのように、保形性を維持できない程度のマトリクス組織の破壊を来すことはない。
その結果、中空耐火骨材はその周囲の組織との密着性を保った状態のまま、即ち中空耐火骨材の周囲の組織に空隙を生じることなく、破壊のない耐火物組織中で骨材としての形態を維持したまま存在することができる。このことにより、中間層は内孔側層及び外周側層との接触面に気孔や空間が生じることが殆どなく、健全な緻密組織を維持しつつ、内孔側層の膨脹による外力を受けながら、常時、内孔側層及び外周側層との間で密着性を保つことができる。
しかし、中間層と内孔側層及び外周側層との接触面間にはさらに積極的な接着性を付与することが好ましい。
そこで、本発明では中間層の接着性を強化する手段として、金属の高温度での反応による炭化物等の生成を利用する。即ち、本発明の中間層用の耐火物は、10体積%以上75体積%以下の中空耐火骨材以外の残部として、当該残部の総量に占める割合で、Al、Si、Mgの単体金属若しくは合金の1種又は複数種(特定金属)を、それらの金属成分のみに換算して合計で0.5質量%以上15質量%以下、炭素を2質量%以上99.5質量%以下含む。なお、本発明における中空耐火骨材の組成の特定にあたっては、非酸化雰囲気における揮発分や可燃物は含まないものとする。具体的には約600℃以上800℃以下程度の非酸化雰囲気での熱処理後の試料を基準にする。
このように前記残部中に特定金属と炭素を分散させて併存させることで、通常の耐火物の構成原料間の結合や保形等の目的で使用される樹脂等に由来する炭素結合等に加えて、約800℃以上、とくに約1000℃以上の熱間において中間層の接着強度及び耐火物組織自体の結合強度を強化することが可能となる。
この作用は次のように考えられる。これらの特定金属は炭素との共存によって鋳造途中に還元雰囲気に曝されることになるので、特定金属成分であるMg系ガスやAl系ガスなどが蒸発し、一部が金属炭化物や金属酸化物として耐火物組織中の酸素分圧の比較的高いと思われる気孔部分等に析出し接着(以下単に「デポジット」という。)する。またそのような当該耐火物内部の気孔部分以外にも、当該耐火物の隣接部分等、とくに酸素成分を含有する溶鋼と中間層との接触界面近傍の気孔や空隙部分等には、これら特定金属の酸化物が集中してデポジットする。
約800℃よりも低い温度における中間層の耐火物としての強度、接着性は、第一次的には樹脂等に由来する炭素結合により担う。約800℃以上、とくに約1000℃以上の高温度においては、特定金属と炭素の反応により生成する炭化物、前述のデポジットにより生成する酸化物等による結合組織が樹脂等に由来する炭素結合等に加わって結合を強化する。
これにより、中間層の耐火物組織内強度が強化され、内孔側層や外周側層との接着力も強化される。さらに中間層中への溶鋼等の浸透を防止する顕著な効果が得られる。(以下これらデポジットによる結合組織を「再結合組織」ともいう。)
本発明の耐火物では、中空耐火骨材が破壊や変形して縮小しても、中空耐火骨材以外のマトリクス組織の構造が大きく損傷することはない。また、結合組織及びマトリクス組織に部分的な損傷が生じた場合にも、前記の再結合組織が形成され、中間層自体のマトリクスの結合組織を再生又は強化すると共に、当該中間層と内孔側層及び外周側層との間の接着強度向上にも寄与する。この結果、約1000℃以上の高温度において接着強度は低下せず向上する。
このような中空耐火骨材と特定金属及び炭素による本発明の作用等は、受鋼開始前から多量又は大きいサイズの空間を存在させ、初期の樹脂等に由来する結合のみしか備えない、しかも可縮と共にその組織の破壊を進行させる形態のモルタル等の従来技術と決定的に異なる利点である。
接着性を接着強度により定量的に示すと、中間層は内孔側層と外周側層のそれぞれと、1000℃以上1500℃(溶鋼温度)以下の非酸化雰囲気の熱間において、0.01MPa以上1.5MPa以下の接着強度を備えることが必要である。なお、接着強度を備える前提として、中間層自体は接着強度と同程度以上の強度を有していることになるので、以下、接着強度のみについて述べる。
接着強度が0.01MPa未満の場合、内孔側層を保持する能力が小さいため、通鋼開始時の衝撃や溶鋼流速の変化などにより、また、内孔側層に局所的な溶損が発生した場合に剥落する可能性がある。また、接着強度が1.5MPaを超える場合は、中間層内部組織においても接着強度と同レベルの高強度の状態となって、中間層の可縮性を損なうことになり、内孔側層の熱膨脹が緩和されることなく外周側層に伝播されやすくなって、とくに外周側層の割れを惹き起しやすくなる。
この接着強度は、圧縮剪断強度Sとして評価することができる。圧縮剪断強度Sは図2に示すように外周側層3(4)に中間層1を介して内孔側層2が内装された3層構造を持つ管状サンプルを台8に載せて所定の熱間にて均一に加熱保持したのち、クロスヘッド9の移動速度0.001〜0.1mm/secの範囲で内孔側層2の上面部のみを圧縮して、その最大荷重P(N)と変位を測定し、次の式4により求められる。
S(Pa)=P/A … 式4
ここで、Aは内孔側層の中間層への接着面積(m2)を表す。
サンプルの形状については管状であればとくに限定はなく、実ノズルから切り出して測定することも可能である。ただし、接着面積Aが大きくなると最大荷重Pも大きくなるため、サンプルの高さは100mm以内が好ましい。測定時の最低温度は1000℃とし、雰囲気は非酸化性雰囲気とする。1000℃が、有機質結合材成分中の揮発質成分が十分に飛散し炭素質結合組織が完成し、安定した可縮性及び接着状態を示す温度であり、さらに特定金属の反応〜デポジット等が始まる温度であるためである。
前記特定金属の含有量が前記残部中で15質量%を超えると、中間層の強度と接着性に関しては強化されることになるが、反面、金属炭化物結合による結合部分の組織が耐火物としての組織全体の中間層強度を高めることになるため、可縮性が損なわれて必要な可縮性を得ることが困難になる。また、特定金属が昇温過程から溶融し、マトリクス中の元の存在場所から流失する危険が生じ、層全体に均一な強度や接着力を得ることが困難になる。さらに、部分的なマトリクス組織の崩壊、層間の隙間等の形成をも招来して、それにより生じた空間等に溶鋼等の侵入も生じやすくなる。一方、特定金属の含有量が前記残部中で0.5%未満では、中間層自体の強度の向上や1000℃非酸化雰囲気中での0.01MPa以上の接着強度の向上が得られなかったり偏析を生じやすく、中間層の破壊や内孔側層の剥離、さらには溶鋼の浸入等を招来しやすくなる。
前記特定金属をAl、Si、Mgの成分に限定するのは、これらの特定金属成分のうちAl、Mgは酸素との親和性が高く、酸素を捕捉してAl2O3やMgO等の耐食性に優れるデポジット物を形成すること等の理由により、Siは約1300℃以上の高温度域で中間層内の炭素と反応して強度、耐食性に優れるSiCを形成する等の理由による。またこれらの特定金属の純度は、できるだけ高い方が反応性、分散性の点から好ましいが、反応性を阻害しない限り、純度が低いものでもよい。
特定金属の粒径は、できるだけ小さい方が反応性、分散性の点から好ましい。しかし、粒径が小さくなるほど取り扱い上の危険性が増し、また空気中での酸化等も生じやすくなるので、粒径の下限値は約5μm、上限値は約300μmが好適であり、粒径が20μm以下で急激に表面積が大きくなって反応性が高まり、また分散性もさらに高まるので20μm以下がさらに好ましい。
前記特定金属と反応させるための炭素成分は、中間層の前記残部の総量に占める割合として、15質量%以上99.5質量%以下であることが必要である。
炭素源としては、昇温時に炭素を残留するフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂をはじめ、各種ピッチ、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維等を使用することができ、これら複数種を組み合わせることもできる。なかでも、特定金属との反応性を高め、また均一性を高めるために、炭素源にはカーボンブラック等の粒径ができる限り小さい炭素や結合組織に由来する無定形の炭素等(以下単に「微細炭素」という。)が含まれていることが好ましい。なお、室温から数百℃程度までの強度を付与する目的で、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の有機系接着材や樹脂を使用することもできる。
中間層の耐火物のマトリクス組織には、基本的な強度、接着力を担う前述の微細炭素に加え、さらに、連続的な結合組織やマトリクス組織の骨格を形成する基材となる黒鉛、炭素繊維等(以下単に「骨格基材炭素」という。)を含ませることが好ましい。とくに黒鉛はその層状の結晶構造に加え、扁平状の粒子形状であることもあって、フレキシブルで連続的な3次元構造を得ることができ、また炭素繊維も同様な3次元構造を得ることができるので、より好ましい。
このようなフレキシブルで連続的な3次元構造をマトリクスに形成することで、特定金属と反応した後の炭化物の介在する結合組織にも靱性を付与することが可能となり、応力により中空耐火骨材が変形又は破壊した際の、その周囲のマトリクスの崩壊を抑制し、層としての健全性をより高めることができる。
前記微細炭素と骨格基材炭素の具体的な割合は、前記の15質量%以上99.5質量%以下の全炭素中に占める割合として、アスペクト比が大きく3次元的な連続性を高める効果のある黒鉛やカーボンファイバーなどの骨格基材炭素の割合が70質量%から95質量%以下であることが好ましい。70質量%より少ないと3次元的な連続性が低下し柔軟性が損なわれるおそれがある。また、95質量%より多いと、低い接着強度にとどまることで、局部的な損壊が生じるおそれがある。
前述した、特定金属と炭素の共存により特定金属の稼働面でのデポジット効果による耐食性改善を補助的に改善する方法として、前記残部の構成物として耐食性に優れる耐火材料を併存させる方法がある。ただし、このような特定金属及び炭素以外の残部に他の成分からなる耐火材料を含む場合のその成分(以下単に、「他の成分」ともいう。)としては、内孔側層や外周側層と鋳造温度で低融化現象や揮発消失現象を起こさない成分を主とする耐火骨材の選定が必要である。鋳造温度で中間層が内孔側層や外周側層との接触により液相を生成すると、熱間接着強度が低下したり、過度な焼結等により可縮性を損なう程度に耐火物の強度が上昇したりするので好ましくない。また、当該耐火物の内部は強い還元雰囲気に曝されることから、例えば他の成分と安定な鉱物を形成していないSiO2成分等の揮発性に富む成分では、炭素成分の消失をもたらしながらその成分自体も揮発して消失するので、好ましくない。
選択可能な骨材としては、Al2O3、MgO、ZrO2、Al2O3・MgO系スピネルなどがあり、中間層と内孔側層との接触部分が低融物等を生成しないように、これら成分を内孔側層の材質に合わせて適宜選択する。例えば、内孔側層がCaOを含む系の耐火物である場合、MgO質の耐火骨材が好適であるし、内孔側層の材質がAl2O3質やMgO質を主とする場合は、Al2O3、MgO、Al2O3−MgO系スピネルなどが好適である。また、このような前記他の成分中の耐火骨材のMgO純度が90%以上である場合は、内孔側層がAl2O3系の場合やZrO2系の場合にも好適であり、多様な内孔側層の成分に広く対応することができるので、好ましい。
このような他の成分を構成する耐火骨材の粒径は、分散性と中間層における上述の諸機能の均一性を高めるために、中間層の下限厚みを1mmとする場合は0.5mm以下であることが好ましい。
ここで、中間層の耐食性が必要となる場合とは、操業中の諸作用により内孔側層の欠損部分が生じた場合に耐食性に劣る外周側層に溶鋼等が直接接触することを抑制ないしは防止すること、及びそのような場合に中間層自体にも耐食性、耐摩耗性等を確保するためである。
連続鋳造用ノズルには、内孔側層自体の損傷による欠損部分、内孔側層とノズル本体(外周側層)との境界部分、ガス吹き込み用ガスプール部分や層間接合部分等の脆弱な部分の局部的な損傷部分のほか、例えば浸漬ノズルの吐出孔部分等の連続鋳造用ノズルの製造時における加工工程において連続鋳造用ノズルの製品としての状態で既に溶鋼に直接曝される部分が存在する又は存在する可能性がある。このような溶鋼に直接曝される部分の耐食性、耐摩耗性等が弱い場合、その部分の選択的な消失等により、内孔側層と外周側層との間に溶鋼が侵入する等の、連続鋳造の操業上致命的な連続鋳造用ノズルの破壊等を惹き起こすこととなる。
本発明の中間層用の耐火物は、浸漬ノズル、オープンノズル、取鍋ロングノズル、スライディングノズル(以下「SN」という。)、SN上部ノズル、SN下部ノズル(コレクターともいう)等の、内孔を溶鋼が通過する機能、構造を有する連続鋳造用ノズルに好適である。
このような連続鋳造用ノズルの内孔側層の材質はとくに制限する必要がなく、それぞれの連続鋳造の操業に応じてその連続鋳造用ノズルに求められる特性、具体的には例えば湯当部の耐摩耗性、内孔の耐食性、内孔へのAl2O3等介在物付着防止等の、それぞれの目的に適う特性を有するAl2O3質、MgO質、ZrO2質等を含む耐火物(黒鉛その他の成分を含有していても構わない)を適宜使用することができる。外周側層についても同様にとくに制限する必要がなく、外周側層は通常連続鋳造用ノズルの本体部を構成する部分であることから、一般的なAl2O3−黒鉛質や、モールドパウダー部分に高耐食性のZrO2質等を含む耐火物を一部又は全部に使用していても構わない。
本発明の中間層用の耐火物の使用は、このような内孔側層、外周側層の耐火物材質の中でも、とくに内孔側層の耐火物の熱膨脹率が外周側層の耐火物の熱膨脹率より大きい組み合わせの場合に好適である。内孔側層と外周側層が同一の材質等で同一の熱膨脹特性を有するが温度勾配や熱衝撃が、それら耐火物が構成する連続鋳造用ノズルを破壊する程度に大きい場合にも、当然、使用できる。
以上の中間層に関する知見を基礎として、さらに内孔側層としてCaO−MgO系耐火物を配置する場合について特異な条件が存在することを本発明者らは見出した。
例えば特開2003-320444号公報に開示されているように、連続鋳造用ノズルにおいて内孔側層にCaO−MgO系耐火物を配置することで、とくに内孔面へのアルミナを主とする付着と閉塞の問題を解決できる。しかし、CaO−MgO系耐火物を内孔側層に採用することにより、とくに外周側層の押し割りによる破壊、内孔側層の溶損、破壊、剥離、それら層間への地金侵入ないしノズル諸部位の破壊等が新たな問題となった。
そこで、本発明では、内孔側層がMgO−CaO系耐火物からなる連続鋳造用ノズルにおいて、内孔側層と外周側層との固定を維持し、かつ内孔側層と外周側層との間に溶融金属が侵入するような空間を生じさせることなく、内孔側層の熱膨脹による外周側層の損傷を防止する手段を講じた。
まず、本発明では、内孔側層として配置するCaO−MgO系耐火物の組成を特定した。即ち、内孔側層として、CaO成分とMgO成分をその合量で80質量%以上含み、CaOとMgOとの質量比(CaO/MgO)が0.2〜1.5であるCaO−MgO系耐火物を配置する。
このようにCaO成分による難付着性の維持機能とMgO成分による耐食性維持機能とをバランスさせた内孔側層を配置することでアルミナ閉塞防止機能が十分に発揮される。
CaO成分は溶鋼流により内孔面に接触した鋼中アルミナ系脱酸生成物と反応することで、接触界面にCaO−Al2O3系低溶融物を生成するため、スラグ化した反応物は溶鋼流により容易にモールド内へ流下することが可能となり、ノズル内でのアルミナ閉塞現象を防止することができる。反面、CaO成分を増加させると、耐火物から溶鋼へのCaO成分の継続的な供給が行われるため、耐火物側の溶損量が増加すると共に、鋼中介在物量が増加して鋼品質を低下させる。
一方、MgO成分はアルミナ成分と低融物を生成しないため耐溶損性の面では有利になるが、MgO成分の増加はアルミナ閉塞現象に対しては不利となる。
したがって、CaO/MgOの質量比とその成分の合計量(CaO+MgO)が溶損性とアルミナ難付着性に影響を及ぼす重要なパラメータとなる。また、耐溶損性と閉塞防止効果に対して、操業面では溶鋼流速や鋼中アルミナ含有量が影響を及ぼす。一般的には、溶鋼流速が速くなると付着が少なくなり、溶損傾向となり、鋼中アルミナ濃度が高いほど一定条件ではアルミナが付着しやすくなる。要するに、このような操業条件や溶鋼種類も考慮して付着と溶損のバランスの取れた組成範囲での材料設計が必要となる。
これらのことを踏まえ、本発明では内孔側層の組成を上述のように特定した。即ち、CaO成分量とMgO成分量の質量比(CaO/MgO)が0.2より低いと、溶鋼流速が5t/min以下での一般的な鋳造条件では、内孔側物層からの継続的なCaO成分の供給ができなくなり、難付着性の維持ができなくなる。また、CaO/MgOが1.5より大きいと、内孔側層中からのCaOの供給が激しく内孔側層自体の溶損量が増加する結果、鋼中介在物量が増加する。さらに、CaO成分とMgO成分の合量を80質量%以上とすることで、耐食性と溶損性のバランスを取ることが可能となる。
CaO成分とMgO成分以外の残部は、CaO成分とMgO成分以外の耐火材料、とくに炭素質の耐火材料で構成することが前述の耐食性と溶損性(付着防止)のバランスを維持するために好ましい。なお、残部に炭素質の耐火材料を使用した場合、CaO成分とMgO成分の合量が80%未満では、残部の炭素成分量が増加するため溶鋼中への炭素の溶解現象が顕著となり、内孔側層の溶損が大きくなりすぎて寿命が短くなり、鋼中介在物量も増大するという問題が生じる。
内孔側層の耐火物のCaO成分源やMgO成分源としては、ドロマイトクリンカーや、合成ドロマ原料、マグネシア原料、カルシア原料などを使用できる。とくに焼成ドロマイトクリンカー中のCaO成分は、クリンカー中に連続的に存在しており、CaOの継続供給の観点から好ましい。
その粒径は、0.1mmから3mm以下が好適である。0.1mmより細かいMgO−CaO質微粉末などを多量に使用すると、消化現象が発生しやすく、品質安定性や容積安定性の面で問題となる。3mmより大きいと成形体の成分的、粒度的な偏析現象が発生しやすくなり均質性の観点から好ましくない。
このようなCaO−MgO系の内孔側層に対して適用する中間層としては、上述のとおり、600℃非酸化雰囲気の熱処理後において、中空耐火骨材を10体積%以上75体積%以下含み、その残部が、当該残部の総量を100質量%とするときに、Al、Ca、Mgの単体金属若しくは合金の1種又は複数種を、それらの金属成分のみに換算して合計で0.5質量%以上15質量%以下、炭素を2質量%以上99.5質量%以下含むものであって、かつ、前記内孔側層中のCaO含有量の当該内孔側層における質量割合を、前記中間層中のAl2O3、SiO2及びアルカリ金属酸化物の合量の当該中間層における質量割合で除した値が10以上であるものを使用する。
その理由は、CaO成分とMgO成分をその合量で80質量%以上含み、CaOとMgOとの質量比(CaO/MgO)が0.2〜1.5である内孔側層の中のCaO成分と、大量のAl2O3、SiO2の成分が接触すると、とくに長時間の操業においてCaO−Al2O3−SiO2系の反応物を生成して、その反応に内孔側層の中のCaO成分が消費され、溶鋼中のAl2O3介在物を捕捉する機能が低下し、またそのような中間層との接着部分が必要以上に強固となり、かつその部分が収縮等を伴って変形することで内孔側層に不均一な引張り応力を生じ、内孔側層の破壊(亀裂)等を招来する可能性が高まるからである。
さらにAl2O3−SiO2系にアルカリ金属酸化物が加わるとそのような現象が促進され、内孔側層中のCaO含有量の当該内孔側層における質量割合を、当該中間層中のAl2O3、SiO2及びアルカリ金属酸化物の合量の当該中間層における質量割合で除した値が10未満であると、そのような現象が顕著になる。
また、CaO−MgO系の内孔側層に対して適用する中間層の溶鋼への耐食性を向上させるためには、前述の中空耐火骨材、炭素、特定金属を除くその他の構成物としての耐火骨材粒子は、MgO、Al2O3−MgO系スピネル骨材を使用することが好ましく、その他の構成物の中に占める含有量としては、50質量%以上(100質量%を含む)になるように調整することが好ましい。
その第1の理由は、内孔側層と中間層の境界部分において過度な焼結、溶融等の相互の反応が生じ難い材質の組み合わせとするためである。CaOとMgOとの質量比(CaO/MgO)が0.2〜1.5、CaO成分とMgO成分をその合量で80質量%以上含有した内孔側層に対しては、MgOの含有量の合量が80質量%以上(100質量%を含む)になるように調整したマグネシア又はスピネル(Al2O3とMgOを成分とするスピネル)質の耐火骨材の単体又は混合物が、前記内孔側層の耐火物との相互の反応を生じ難く、最適である。
第2の理由は、外周側層として一般的に使用されるAl2O3−SiO2−C系、Al2O3−C系、ZrO2−C系、又はMgO−C系耐火物との相互の反応も生じ難いことからである。
第3の理由は、中空耐火骨材の中のガラス成分、シリカ成分等に対し、MgOが他の、例えばアルミナ−シリカ系の耐火骨材微粒子よりも相対的に相互の反応を生じ難いからである。
なお、この場合の外周側層(本体部分)は、Al2O3−C系、ZrO2−C系、又はMgO−C系等いずれの耐火物であっても、またその中のAl2O3、ZrO2、MgOとCの、それぞれの構成比率や存在形態等に制限はない。