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JP5132012B2 - ガラスシート製造装置、ガラスシート製造方法および成形体 - Google Patents
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JP5132012B2 - ガラスシート製造装置、ガラスシート製造方法および成形体 - Google Patents

ガラスシート製造装置、ガラスシート製造方法および成形体 Download PDF

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Description

本発明は、ガラスシート製造装置、ガラスシート製造方法および成形体に関する。
従来、ガラスシート製造方法の一つとして、オーバーフロー・ダウンドロー法が用いられている。オーバーフロー・ダウンドロー法では、成形体からオーバーフローさせて分流させた溶融ガラスを、成形体の下端で合流させることによって、ガラスシートが連続的に製造される。
一般的に、オーバーフロー・ダウンドロー法によるガラスシートの製造工程において、成形体は、オーバーフローした溶融ガラスが流下する一対の傾斜面を有する。これらの傾斜面は、成形体の下端で互いに接続する。理想的には、傾斜面を流下する一対の溶融ガラスは、成形体の表面から離れることなく、成形体の下端で合流して融着することが望ましい。しかし、成形体の下端におけるガラス粘度によっては、傾斜面を流下する溶融ガラスは、成形体の下端に到達する前に成形体の表面から離れてしまうことがある。一旦成形体の表面から離れた一対の溶融ガラスは、成形体の下端の下方に位置する合流ポイントにおいて、合流面が融着するために必要な粘度が保たれていれば、再び貼り合わされて、ガラスシートが成形される。
オーバーフロー・ダウンドロー法によるガラスシートの製造工程において、成形体から離れた溶融ガラスは、低温の空気に触れるので短時間に粘度が上昇する。溶融ガラスの粘度が上昇し過ぎると、合流ポイントにおいて溶融ガラスがうまく融着せず、成形されたガラスシートにひび割れ等が発生することで、安定稼動できなくなる。特に、成形体の端部では、外部空気と接触する面積が大きいことや、下方に設置された冷却装置からの低温の上昇気流のため、溶融ガラスの粘度が上昇する。そのため、成形体の表面を流下する溶融ガラスは、成形体の端部において、粘度が上昇しやすく、成形体の表面から離れやすい。溶融ガラスが成形体のより上方で離れるほど、成形体から離れた溶融ガラスの温度がより低下して粘度がより上昇するので、合流ポイントにおける溶融ガラスの貼り合わせが悪化する。その結果、成形されたガラスシートにひび割れ等が発生するおそれがある。
特許文献1(特開2009−518275号公報)には、下端部が尖っており、かつ、導電性部材が埋め込まれた成形体が開示されている。この成形体は、下端部が尖っているので、下端部が部分欠損しやすい。部分欠損した成形体は、その程度にもよるが、ガラスの形状不良の原因となるので基本的に実用に供することはできない。
また、特許文献1に開示されている成形体では、埋め込まれた導電性部材を加熱することによって、成形体の表面を流下する溶融ガラスの温度を制御して、溶融ガラスが成形体の表面から離れることを防ぐことができる。しかし、耐火物製の成形体の場合、導電性部材を成形体の下端に接合すること自体が、技術的に難しい。
本発明は、部分欠損のリスクが低い成形体を備え、かつ、端部の形状不良が発生しにくいガラスシートを製造することができるガラスシート製造装置、部分欠損のリスクが低い成形体を用い、かつ、端部の形状不良が発生しにくいガラスシートを製造することができるガラスシート製造方法および部分欠損のリスクが低く、端部の形状不良が発生しにくいガラスシートを製造することができる成形体を提供することを目的とする。
本発明に係るガラスシート製造装置は、溶融ガラスを分流させて流下させた後、下端部の近傍で融着させてガラスシートを成形するための成形体を備えるガラスシート製造装置である。成形体は、第1傾斜面と、第2傾斜面と、第3傾斜面と、第1円弧面と、第2円弧面とを有する。第1傾斜面は、成形体の長手方向における中央部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第2傾斜面は、成形体の長手方向における両端部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第2傾斜面は、第1傾斜面と同じ角度で傾斜している。第3傾斜面は、成形体の長手方向における両端部において、第2傾斜面のそれぞれの下端と接続し、かつ、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第3傾斜面は、第2傾斜面と比べてより水平に近い角度で傾斜している。第1円弧面は、成形体の長手方向における中央部において、第1傾斜面の下端と接続し、短手方向における断面形状が垂直下向きの円弧である。第2円弧面は、成形体の長手方向における両端部において、第3傾斜面の下端と接続し、短手方向における断面形状が垂直下向きの円弧である。第2円弧面の短手方向の長さは、第1円弧面の短手方向の長さよりも短い。
オーバーフロー・ダウンドロー法を用いるガラスシート製造装置は、溶融ガラスをオーバーフローさせて分流させた後に融着させてガラスシートを成形するための成形体を備える。一般的に、成形体の長手方向の両端部では、外部空気と接触する面積が大きいことや、下方に設置された冷却装置からの低温の上昇気流のため、粘度が上昇しやすい。そのため、成形体の長手方向の両端部を流下する溶融ガラスは、成形体の表面から離れやすい。
本発明に係るガラスシート製造装置は、溶融ガラスが離れやすい成形体の長手方向の両端部において、溶融ガラスが離れるポイントをできるだけ鉛直方向下方に移動させる。これにより、一対の流下する溶融ガラスが合流する成形体の下端の近傍において、溶融ガラスの融着をスムーズに行うことができる。この効果は、成形体の形状のみによって実現される。従って、本発明に係るガラスシート製造装置は、新たな装置を追加することなく、ガラスシートの形状不良を防止することができる。
なお、溶融ガラスが成形体の表面から離れるポイントは、成形体の表面を流下する溶融ガラスの粘度(または、当該粘度において、溶融ガラスと成形体の表面との間で作用する界面張力)、融着した溶融ガラスを垂直下方に引っ張る力の大きさ、および、第1円弧面および第2円弧面の断面の円弧上のポイントにおける接線が垂線と成す角度、の三要素で決定されると考えられる。
本発明に係るガラスシート製造装置では、冷却ローラをさらに備えることが好ましい。冷却ローラは、成形体によって成形されたガラスシートの幅方向の両端部を保持する。冷却ローラは、成形体の長手方向における中央部と両端部との境界線の垂直下方に配置される。この場合、成形体の長手方向における中央部と両端部との境界線を流下した溶融ガラスは、成形体の表面から離れた後、ガラスシートの幅方向の両端部になる。ガラスシートの幅方向の両端部は、後に切断されて取り除かれる。
本発明に係るガラスシート製造装置では、成形体の短手方向における第2円弧面の断面の円弧の半径は、成形体の短手方向における第1円弧面の断面の円弧の半径以下であることが好ましい。
本発明に係るガラスシート製造装置では、成形体は、耐火物であることが好ましい。
本発明に係るガラスシート製造方法は、溶融ガラスを分流させて流下させた後、下端部の近傍で融着させてガラスシートを成形するための成形体を用いるガラスシート製造方法である。成形体は、第1傾斜面と、第2傾斜面と、第3傾斜面と、第1円弧面と、第2円弧面とを有する。第1傾斜面は、成形体の長手方向における中央部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第2傾斜面は、成形体の長手方向における両端部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第2傾斜面は、第1傾斜面と同じ角度で傾斜している。第3傾斜面は、成形体の長手方向における両端部において、第2傾斜面のそれぞれの下端と接続し、かつ、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第3傾斜面は、第2傾斜面と比べてより水平に近い角度で傾斜している。第1円弧面は、成形体の長手方向における中央部において、第1傾斜面の下端と接続し、短手方向における断面形状が垂直下向きの円弧である。第2円弧面は、成形体の長手方向における両端部において、第3傾斜面の下端と接続し、短手方向における断面形状が垂直下向きの円弧である。第2円弧面の短手方向の長さは、第1円弧面の短手方向の長さよりも短い。
本発明に係る成形体は、第1傾斜面と、第2傾斜面と、第3傾斜面と、第1円弧面と、第2円弧面とを有する。第1傾斜面は、成形体の長手方向における中央部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第2傾斜面は、成形体の長手方向における両端部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第2傾斜面は、第1傾斜面と同じ角度で傾斜している。第3傾斜面は、成形体の長手方向における両端部において、第2傾斜面のそれぞれの下端と接続し、かつ、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である。第3傾斜面は、第2傾斜面と比べてより水平に近い角度で傾斜している。第1円弧面は、成形体の長手方向における中央部において、第1傾斜面の下端と接続し、短手方向における断面形状が垂直下向きの円弧である。第2円弧面は、成形体の長手方向における両端部において、第3傾斜面の下端と接続し、短手方向における断面形状が垂直下向きの円弧である。第2円弧面の短手方向の長さは、第1円弧面の短手方向の長さよりも短い。
本発明に係るガラスシート製造装置、ガラスシート製造方法および成形体は、成形体の部分欠損のリスクが低く、かつ、端部の形状不良が発生しにくいガラスシートを製造することができる。
本実施形態に係るガラスシート製造装置の全体構成図である。 本実施形態に係る成形装置の側面図である。 本実施形態に係る成形装置の断面図である。 本実施形態に係る成形体の側面図である。 本実施形態に係る成形体の中央部における断面図である。 本実施形態に係る成形体の両端部における断面図である。 本実施形態に係る成形体の、中央部における断面図と、両端部における断面図とを重ねた図である。 本実施形態において、溶融ガラスと円弧面との間の界面張力と、溶融ガラスの引っ張り力との関係を表す図である。 図7に示される成形体の断面図の拡大図である。 本実施形態に係る成形体の、中央部における拡大断面図である。 本実施形態に係る成形体の、両端部における拡大断面図である。 本実施形態の変形例に係る成形体の、中央部における拡大断面図と、両端部における拡大断面図とを重ねた図である。
(1)ガラスシート製造装置の構成
本発明の実施形態に係るガラスシート製造装置100の全体構成について、図1を参照しながら説明する。ガラスシート製造装置100は、溶解槽200と、清澄槽300と、成形装置400とから構成される。溶解槽200では、ガラスの原料が溶解されて、溶融ガラスが生成される。溶解槽200で生成された溶融ガラスは、清澄槽300へ送られる。清澄槽300では、溶融ガラスに含まれる気泡の除去が行われる。清澄槽300で気泡が除去された溶融ガラスは、成形装置400へ送られる。成形装置400では、オーバーフロー・ダウンドロー法によって、溶融ガラスからガラスリボンが連続的に成形される。成形装置400で成形されたガラスリボンは、所定の大きさのガラスシートに切断される。ガラスシートは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板として用いられる。
(2)成形装置の構成
成形装置400の詳細な構成について、図2および図3を参照しながら説明する。成形装置400は、成形体10と、仕切り板20と、冷却ローラ30と、複数の送りローラ50と、炉壁90とから構成される。炉壁90は、耐火煉瓦で作られ、成形体10と、仕切り板20と、冷却ローラ30と、送りローラ50とを収容する。炉壁90の内部の空間は、鉛直方向上方から下方に向かって、成形体収容ゾーン410と、成形徐冷ゾーン420とに区画される。成形体収容ゾーン410と成形徐冷ゾーン420は、仕切り板20によって仕切られる。以下、炉壁90の内部に収容される各構成要素について説明する。
(2−1)成形体
成形体10は、短手方向の断面が楔形状である耐火物である。図3に示されるように、成形体10は、断面の楔形状の尖端が鉛直方向下方を指すように、成形体収容ゾーン410に配置される。成形体10は、オーバーフロー・ダウンドロー法によって溶融ガラスからガラスリボンGを連続的に成形する。
成形体10の詳細な構成について図4から図7を参照しながら説明する。成形体10は、上端面12と、一対の垂直側面14と、一対の傾斜側面16と、円弧面18とを有する。上端面12は、長手方向LDに形成される溝12aを有する。溝12aの一方の端部は、ガラス供給管80に接続されている。垂直側面14は、その上端が、長手方向LDに沿って上端面12の両端と接続する。傾斜側面16は、その上端が、長手方向LDに沿って垂直側面14の下端と接続する。一対の傾斜側面16は、鉛直方向下方に向かって互いに接近するように傾斜している。円弧面18は、その上端が、長手方向LDに沿って傾斜側面16の下端と接続する。円弧面18は、短手方向SDにおける断面形状が垂直下向きの円弧である。
成形体10は、短手方向SDの断面形状が、長手方向LDのポイントによって異なる形状を有する。具体的には、図4に示されるように、成形体10を長手方向LDに直交する方向から見た場合、傾斜側面16は、成形体10の長手方向LDの両端から所定の範囲を占める一対の端上部傾斜側面16a1および一対の端下部傾斜側面16a2と、一対の端上部傾斜側面16a1に挟まれた中央傾斜側面16bから成る。端上部傾斜側面16a1の下端は、端下部傾斜側面16a2の上端と接続する。また、円弧面18は、一対の端下部傾斜側面16a2と接続する一対の端円弧面18aと、中央傾斜側面16bと滑らかに接続する中央円弧面18bとから成る。
図4において、線分V−Vにおける成形体10の断面は図5で示され、線分VI−VIにおける成形体10の断面は図6で示される。図7は、図5および図6の断面形状を重ねて下部を拡大した図である。図7に示されるように、端上部傾斜側面16a1と中央傾斜側面16bは、同一の角度で傾斜している。また、端下部傾斜側面16a2は、端上部傾斜側面16a1よりも、より水平に近い角度で傾斜している。端円弧面18aは、中央円弧面18bの断面形状の下端部の一部と同じ断面形状を有している。本実施形態に係る成形体10は、図5に示される断面形状を長手方向LDの全域に亘って有する成形体から、長手方向LDの両端部を機械加工によって削ることによって得られる。具体的には、成形体10の長手方向LDの両端部において、傾斜面および円弧面の一部を削ることにより、削る前の傾斜面である中央傾斜側面16bと異なる傾斜角度を有する端下部傾斜側面16a2を形成し、同時に、削る前の円弧面である中央円弧面18bよりも短手方向SDの長さが短く、かつ、鉛直方向の高さも低い端円弧面18aを形成する。
(2−2)仕切り板
仕切り板20は、成形体10の下端の近傍に配置される断熱材である。仕切り板20は、短手方向SDのガラスリボンGの両側に水平に配置される。仕切り板20は、成形体収容ゾーン410と成形徐冷ゾーン420との間の熱移動を抑制する。
(2−3)冷却ローラ
冷却ローラ30は、成形徐冷ゾーン420において、仕切り板20の近傍に配置されるローラである。冷却ローラ30は、図2に示されるように、成形体10の中央傾斜側面16bと端上部傾斜側面16a1との境界線BLの鉛直方向下方に位置する。冷却ローラ30は、長手方向LDのガラスリボンGの両側において、短手方向SDのガラスリボンGの両側に配置される。冷却ローラ30は、成形体収容ゾーン410で成形されたガラスリボンGを冷却する。
(2−4)送りローラ
送りローラ50は、成形徐冷ゾーン420において、冷却ローラ30の下方に配置されるローラである。送りローラ50は、長手方向LDのガラスリボンGの両側において、短手方向SDのガラスリボンGの両側に配置される。送りローラ50aは、冷却ローラ30によって搬送されたガラスリボンGを下方に搬送する。
(3)動作
(3−1)ガラスリボンの成形工程
成形装置400でガラスリボンGが成形される過程について、図2および図3を参照しながら説明する。溶解槽200で生成され、清澄槽300で気泡が除去された溶融ガラスは、成形装置400に送られる。成形装置400の成形体収容ゾーン410で、溶融ガラスは、ガラス供給管80を介して成形体10の溝12aに供給される。溝12aに貯留された溶融ガラスは、上端面12からオーバーフローして、成形体10の短手方向SDに分流する。分流した一対の溶融ガラスは、垂直側面14および傾斜側面16を伝って流下する。成形体10の両側面を流下した一対の溶融ガラスは、円弧面18において成形体10から離れて、成形体10の下端の下方で合流する。合流した一対の溶融ガラスは、互いに貼り合わされることによって、ガラスリボンGに連続的に成形される。成形体収容ゾーン410におけるガラスリボンGの温度は、約1150℃である。
成形体収容ゾーン410で成形されたガラスリボンGは、成形徐冷ゾーン420に到達する。成形徐冷ゾーン420では、ガラスリボンGの幅方向中央部は、何物にも触れることなく流下する。一方、ガラスリボンGの幅方向両端部は、冷却ローラ30によって選択的に800〜900℃まで冷却される。次に、ガラスリボンGは、送りローラ50によって鉛直方向下方に搬送される。ガラスリボンGは、送りローラ50によって搬送される過程で徐冷され、その後、成形装置400の外部に出される。
(3−2)溶融ガラスの融着過程
成形体収容ゾーン410において、一対の溶融ガラスが成形体10の表面から離れて合流する過程について、図8を参照しながら説明する。円弧面18の短手方向SDの接線は、鉛直方向下方に進むに従って、徐々に水平方向に近づく。そのため、溶融ガラスが円弧面18を伝って流下する際に、溶融ガラスと円弧面18との間の界面張力F2に、所要速度でのガラスリボンGの成形に必要な、溶融ガラスに係る鉛直方向下方への連続した引っ張り力F1が打ち克つことによって、溶融ガラスが円弧面18から離れる。ここで、引っ張り力F1は、送りローラ50がガラスリボンGの幅方向の両端部を鉛直方向下方に引っ張ることによって溶融ガラスに作用する力と、溶融ガラス自体の重力との合力である。一旦、円弧面18から離れた一対の溶融ガラスは、成形体10の下端の下方に位置する合流ポイントCPで、融着に必要な粘度以下に未だ保たれていれば、再び融着して貼り合わされる。
溶融ガラスと円弧面18との間の界面張力F2と、溶融ガラスの引っ張り力F1との関係を、図8を参照しながら詳細に説明する。溶融ガラスの引っ張り力F1が界面張力F2に打ち克つためには、引っ張り力F1の法線成分F1nが、界面張力F2より大きい条件(F1n>F2)を満たす必要がある。ここで、「法線成分F1n」は、引っ張り力F1の力点APを通る、円弧面18の断面の円弧の接線(図8において示される破線)に垂直な方向の成分を意味する。以下、図8に示されるように、当該接線と垂線(図8において示される一点鎖線)とのなす角度θを「傾斜角」と呼ぶ。界面張力F2は、引っ張り力F1の力点Aから、引っ張り力F1の法線成分F1nの反対方向に働く力である。引っ張り力F1の法線成分F1nは、引っ張り力F1と傾斜角θの正弦(sinθ)とを乗じることで算出される。円弧面18の断面形状は垂直下向きの円弧であるので、下方に行くほど、当該接線が水平に近づき、傾斜角θが大きくなる。このため、下方に行くほど、溶融ガラスに係る引っ張り力F1の法線成分F1nが大きくなる。そして、引っ張り力F1の法線成分F1nが界面張力F2を超えたポイントにおいて、溶融ガラスが成形体10の表面から離れる。従って、溶融ガラスは、成形体10の円弧面18の下端に近づくにつれて、成形体10の表面から離れ易くなる。
なお、本実施形態では、成形体10の中央傾斜側面16bと端上部傾斜側面16a1との境界線BLを流下した溶融ガラスは、成形体10の表面を離れて貼り合わされた後、ガラスリボンGの幅方向の両端部となる。成形体10の境界線BLを流下して、冷却ローラ30および送りローラ50に接触したガラスリボンGの幅方向の両端部は、後に切断され、製品としては使用されない。
(4)特徴
(4−1)
本実施形態における成形体10では、冷却ローラ30によってガラスリボンGの幅方向両端部が選択的に冷却されて、冷却ローラ30から低温の上昇気流が生じる。そして、当該上昇気流が成形体収容ゾーン410に侵入することにより、成形体10の表面を流下する溶融ガラスが冷却される。冷却ローラ30は、成形体10の中央傾斜側面16bと端上部傾斜側面16a1との境界線BLの鉛直方向下方に位置するので、成形体10の長手方向LDの両端部を流下する溶融ガラスは、中央部を流下する溶融ガラスよりも強く冷却されて、より低温になる。そのため、成形体10の長手方向LDの両端部を流下する溶融ガラスの粘度は、中央部を流下する溶融ガラスの粘度よりも高い。従って、成形体10の長手方向LDの両端部の表面と溶融ガラスとの間に作用する界面張力は、中央部の表面と溶融ガラスとの間に作用する界面張力も小さい。
ここで、成形体10が、長手方向LDの全域に亘って、図5に示される断面形状を有していると仮定する。この場合、成形体10の長手方向LDの両端部を流下する溶融ガラスは、成形体10の長手方向LDの中央部を流下する溶融ガラスに比べて、界面張力が小さいので、鉛直方向下方に行くほど傾斜角が大きくなる円弧面において、より上方において離れる。溶融ガラスが成形体10の表面のより上方において離れるほど、溶融ガラスが成形体10から離れる時点から、合流ポイントCPにおいて合流する時点までの間隔が長くなる。溶融ガラスが成形体10から離れている間、溶融ガラスは低温の空気に触れるので短時間に粘度が上昇する。そして、溶融ガラスの粘度が上昇し過ぎると、合流ポイントCPにおいて溶融ガラスがうまく融着せず、成形されたガラスリボンGにひび割れ等が発生するおそれがある。
本実施形態では、上述の課題を解決するために、成形体10の長手方向LDの両端部において、傾斜面および円弧面の一部を削ることにより、端上部傾斜側面16a1と異なる傾斜角を有する端下部傾斜側面16a2を形成し、同時に、中央円弧面18bよりも短手方向SDの長さが短く、かつ、鉛直方向の高さも低い端円弧面18aを形成する。図7に示される成形体10の断面図の拡大図を図9に示す。以下、端下部傾斜側面16a2の傾斜角をθ1とし、端上部傾斜側面16a1および中央傾斜側面16bの傾斜角をθ2とする。端下部傾斜側面16a2と端円弧面18aとの接続点をBP1とし、中央傾斜側面16bと中央円弧面18bとの接続点をBP2とし、端上部傾斜側面16a1と端下部傾斜側面16a2との接続点をBP3とする。
成形体10の長手方向LDの中央部の傾斜角は、接続点BP2の高さ位置におけるθ2から、下方に進むにつれて、接続点BP1の高さ位置におけるθ3まで徐々に増加する。
成形体10の長手方向LDの両端部の傾斜角は、接続点BP3の高さ位置においてθ2からθ1に増加し、接続点BP3の高さ位置から接続点BP1の高さ位置までθ1の一定値を保持し、接続点BP1の高さ位置においてθ1からθ3に不連続に増加する。本実施形態において、傾斜角θ1は傾斜角θ2より大きく、傾斜角θ3は傾斜角θ1より大きい(θ3>θ1>θ2)。
ここで、再度、成形体10が、長手方向LDの全域に亘って、図5に示される断面形状を有していると仮定する。そして、この成形体10の長手方向LDの両端部を流下する溶融ガラスが、傾斜角がα(ただし、θ2<α<θ3)となる円弧面上のポイントにおいて、成形体10の表面から離れる場合を考える。この場合、成形体10の長手方向LDの両端部において、傾斜面および円弧面を削ることによって、傾斜角αより小さい傾斜角を有する傾斜面を形成する。本実施形態において、傾斜角αより小さい傾斜角を有する傾斜面は、傾斜角θ1を有する端下部傾斜側面16a2に相当する。本実施形態において、成形体10の長手方向LDの両端部を流下する溶融ガラスは、成形体10の表面から離れるために必要な傾斜角αよりも小さい傾斜角θ1を有する端下部傾斜側面16a2を流下するので、成形体10の表面から離れることなく、中央円弧面18bにおいて傾斜角がαとなる高さ位置よりも鉛直方向下方の高さ位置まで流下することができる。
本実施形態における成形体10では、図10に示されるように、中央円弧面18bにおいて溶融ガラスが離れるポイントである中央離間ポイントDP2は、中央円弧面18bに位置する。また、図11に示されるように、端円弧面18aにおいて溶融ガラスが離れるポイントである端離間ポイントDP1は、中央離間ポイントDP2の下方であって、端下部傾斜側面16a2と端円弧面18aとの接続点の近傍に位置する。すなわち、端離間ポイントDP1から成形体10の下端までの距離は、中央離間ポイントDP2から成形体10の下端までの距離よりも短い。言い換えると、端離間ポイントDP1から合流ポイントCPまでの距離は、中央離間ポイントDP2から合流ポイントCPまでの距離よりも短い。従って、本実施形態における成形体10では、長手方向LDの中央部を流下する溶融ガラスよりも、長手方向LDの両端部を流下する溶融ガラスの方が、成形体10の表面から離れた時点から合流ポイントCPで合流する時点までの間隔が短い。これにより、本実施形態に係る成形体10は、長手方向LDの両端部を流下して成形体10の表面から離れた溶融ガラスの粘度が上昇することを抑制することができる。
従って、本実施形態に係る成形体10は、ガラスリボンGの幅方向の両端部における貼り合わせが悪化することを抑制することができる。本実施形態に係る成形体10を用いることによって、端部の形状不良が発生しにくいガラスシートを製造することができる。
(4−2)
本実施形態に係る成形体10は、図5に示される断面形状を長手方向LDの全域に亘って有する成形体を、機械加工することによって得ることができる。本実施形態では、成形体10の長手方向LDの両端部を流下する溶融ガラスの温度が低下することを抑制するために、成形体10の内部および外部に特別な装置や機構を設ける必要がない。従って、本実施形態に係る成形体10を用いることによって、ガラスリボンGの形状不良の防止のためのコストの削減を図ることができる。
(4−3)
一般的に、オーバーフロー・ダウンドロー法では、成形体の両側面を流下した一対の溶融ガラスは、成形体から離れることなく、成形体の下端において合流してガラスリボンに成形されることが望ましい。そのためには、成形体は、下端が完全に尖っている形状を有することが最も望ましい形態である。しかし、通常、成形体は、強度が低く、脆い材質である耐火物で作られる。従って、完全に尖っている下端を有する成形体は、加工開始から設置を経て稼動終了までのライフサイクルの中で部分欠損するリスクが高いので、実用には不向きである。
本実施形態に係る成形体10は、円弧面18を下端に有する。従って、本実施形態に係る成形体10は、完全に尖っている下端を有する成形体に比べて、部分欠損するリスクが低いので、製造装置として実用に供することに向いている。
(5)変形例
本実施形態では、成形体10の端円弧面18aは、中央円弧面18bの下端部の一部と同じ断面形状を有するが、異なる断面形状を有してもよい。例えば、図12に示されるように、端下部傾斜側面116a2と接続する端円弧面118aの断面の円弧形状の半径Raが、中央傾斜側面116bと接続する中央円弧面118bの断面の円弧形状の半径Rbよりも小さくてもよい。端下部傾斜側面116a2の上端は、端上部傾斜側面116a1の下端と接続されている。
本実施形態における成形体10では、図7に示されるように、中央円弧面18bは中央傾斜側面16bと滑らかに接続するが、端円弧面18aは端下部傾斜側面16a2と不連続に接続する。そのため、端下部傾斜側面16a2の下端に到達した溶融ガラスは、端円弧面18aを流下せずに、端下部傾斜側面16a2と端円弧面18aとの間の不連続ポイントにおいて成形体10から離れる場合がある。
本変形例における成形体110は、端円弧面118aが端下部傾斜側面116a2と滑らかに接続するように、端円弧面118aが加工されている。これにより、成形体110の端下部傾斜側面116a2を流下した溶融ガラスは、端円弧面118aを流下することができる。本変形例においても、成形体110を用いることによって、端部の形状不良が発生しにくいガラスシートを製造することができる。
本発明に係るガラスシート製造装置、ガラスシート製造方法および成形体は、成形体の部分欠損のリスクが低く、かつ、端部の形状不良が発生しにくいガラスシートを製造することができる。
10 成形体
12 上端面
12a 溝
14 垂直側面
16 傾斜側面
16a1 第2傾斜面(端上部傾斜側面)
16a2 第3傾斜面(端下部傾斜側面)
16b 第1傾斜面(中央傾斜側面)
18 円弧面
18a 第2円弧面(端円弧面)
18b 第1円弧面(中央円弧面)
20 仕切り板
30 冷却ローラ
50 送りローラ
80 ガラス供給管
90 炉壁
100 ガラスシート製造装置
200 溶解槽
300 清澄槽
400 成形装置
410 成形体収容ゾーン
420 成形徐冷ゾーン
G ガラスリボン
CP 合流ポイント
DP1 端離間ポイント
DP2 中央離間ポイント
特開2009−518275号公報

Claims (6)

  1. 溶融ガラスを分流させて流下させた後、下端部の近傍で融着させてガラスシートを成形するための成形体を備えるガラスシート製造装置であって、
    前記成形体は、
    長手方向における中央部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である第1傾斜面と、
    長手方向における両端部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面であって、前記第1傾斜面と同じ角度で傾斜している第2傾斜面と、
    前記両端部において、前記第2傾斜面のそれぞれの下端と接続し、かつ、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面であって、前記第2傾斜面と比べてより水平に近い角度で傾斜している第3傾斜面と、
    前記中央部において、前記第1傾斜面の下端と接続し、かつ、短手方向における断面の形状が垂直下向きの円弧である第1円弧面と、
    前記両端部において、前記第3傾斜面の下端と接続し、かつ、短手方向における断面の形状が垂直下向きの円弧である第2円弧面と、
    を有し、
    前記第2円弧面の短手方向の長さは、前記第1円弧面の短手方向の長さよりも短い、
    ガラスシート製造装置。
  2. 前記成形体によって成形されたガラスシートの幅方向の両端部を保持する冷却ローラをさらに備え、
    前記冷却ローラは、前記中央部と前記両端部との境界線の垂直下方に配置される、
    請求項1に記載のガラスシート製造装置。
  3. 前記成形体の短手方向における前記第2円弧面の断面の円弧の半径は、前記成形体の短手方向における前記第1円弧面の断面の円弧の半径以下である、
    請求項1または2に記載のガラスシート製造装置。
  4. 前記成形体は耐火物である、
    請求項1から3のいずれか1項に記載のガラスシート製造装置。
  5. 溶融ガラスを分流させて流下させた後、合流させてガラスシートを成形するための成形体を用いるガラスシート製造方法であって、
    前記成形体は、
    長手方向における中央部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である第1傾斜面と、
    長手方向における両端部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面であって、前記第1傾斜面と同じ角度で傾斜している第2傾斜面と、
    前記両端部において、前記第2傾斜面のそれぞれの下端と接続し、かつ、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面であって、前記第2傾斜面と比べてより水平に近い角度で傾斜している第3傾斜面と、
    前記中央部において、前記第1傾斜面の下端と接続し、かつ、短手方向における断面の形状が垂直下向きの円弧である第1円弧面と、
    前記両端部において、前記第3傾斜面の下端と接続し、かつ、短手方向における断面の形状が垂直下向きの円弧である第2円弧面と、
    を有し、
    前記第2円弧面の短手方向の長さは、前記第1円弧面の短手方向の長さよりも短い、
    ガラスシート製造方法。
  6. 溶融ガラスを分流させて流下させた後、合流させてガラスシートを成形するための成形体であって、
    長手方向における中央部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面である第1傾斜面と、
    長手方向における両端部において、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面であって、前記第1傾斜面と同じ角度で傾斜している第2傾斜面と、
    前記両端部において、前記第2傾斜面のそれぞれの下端と接続し、かつ、下方に向かって互いに接近するように傾斜している一対の傾斜面であって、前記第2傾斜面と比べてより水平に近い角度で傾斜している第3傾斜面と、
    前記中央部において、前記第1傾斜面の下端と接続し、かつ、短手方向における断面の形状が垂直下向きの円弧である第1円弧面と、
    前記両端部において、前記第3傾斜面の下端と接続し、かつ、短手方向における断面の形状が垂直下向きの円弧である第2円弧面と、
    を備え、
    前記第2円弧面の短手方向の長さは、前記第1円弧面の短手方向の長さよりも短い、
    成形体。
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