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JP5133718B2 - 時計の表示機構、巻印残量表示機構及び該機構を備えた時計 - Google Patents
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JP5133718B2 - 時計の表示機構、巻印残量表示機構及び該機構を備えた時計 - Google Patents

時計の表示機構、巻印残量表示機構及び該機構を備えた時計 Download PDF

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Description

本発明は、巻印残量表示機構として用いられるに適した表示機構及びこれを備えた時計に係る。
駆動源の少なくとも一部がぜんまいである時計において、巻印残量ないしパワーリザーブ量(ぜんまい巻上げ残量ないしぜんまい残量)の表示に趣向をこらす試みは提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
特許文献1は、セグメントないしセクタ歯車部(扇形歯車部)を複数個一体的に備えた歯車(ここでは、セグメント歯車という)を用いて、ぜんまいの巻上げ残量の変化に応じて回転する出力歯車から離れたところで、巻印表示車を駆動してぜんまい残量を表示させるようにした巻印残量表示機構について開示している。
これによって、表示領域を選択し得るものの、表示自体は、従来の円弧状ないし扇形の表示に変わりはなく、また、該表示における円弧ないし扇の中心は時計の拡がりの範囲内にあることから、外観だけが見えるユーザに対して変化(趣向)を感じさせ難い。
特許文献2は、直線状表示が行われる点では表示に斬新さがあるものの、該直線状表示のために雄ねじと雌ねじとを組合わせたものであり、直線以外の形態の表示は実際上できない。
特開2005−214655号公報 特開2006−234432号公報
本発明は前記諸点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、基本構造を変えることなく種々の軌跡の表示を行い得る時計の表示機構、巻印残量表示機構及び該機構を備えた時計を提供することにある。
本発明の時計の表示機構は、前記目的を達成すべく、第一の伝え車本体部及び該第一の伝え車本体部と一体的な第一の歯車部を備えた第一の伝え車と、第二の伝え車本体部及び該第二の伝え車本体部と一体的で前記第一の歯車部に噛合された第二の歯車部を備えた第二の伝え車と、一端側の第一の連結部において第一の伝え車本体部に回転自在に連結され他端側に第二の連結部を備えた第一のリンク部材と、一端側の第三の連結部において第二の伝え車本体部に回転自在に連結され、他端側の第四の連結部で前記第一のリンク部材の第二の連結部に回動自在に連結された第二のリンク部材と、第一のリンク部材の前記他端側に設けられた表示部とを有する。
本発明の時計の表示機構では、「上述のような相互に噛合する第一及び第二の歯車部、該第一及び第二の伝え車本体部に夫々の一端で連結され他端側が相互に連結された第一及び第二のリンク部材、並びに第一のリンク部材の前記他端側に設けられた表示部を有する」ので、比較的少数の可動要素の連結であるにもかかわらず、条件を変更するだけで、表示部に数限りなくバリエーションのある所望の形状の軌跡を描かせ得る。
本発明の時計の表示機構において、表示部の表示のパターンの変更は、主に、
(1)第一及び第二の歯車部の歯数比(又は、例えば、第一の伝え車の回転中心から第一の連結部までの径と第二の伝え車の回転中心から第三の連結部までの径との比)、
(2)第一及び第二の連結部間の距離と第三及び第四の連結部間の距離との比、
(3)表示部が取付けられているリンク部材が、第一及び第二のリンク部材のうちの長い方か短い方かの別、
(4)表示部が取付けられている第一のリンク部材が、運動の伝達について、上流側の伝え車に取付けられたリンク部材であるか下流側の伝え車に取付けられたリンク部材であるかの別、並びに
(5)初期位置において、第一及び第三の連結部が対応する第一及び第二の伝え車本体部に対して位置する位相(角度位置)
等に依存する。ここで、表示部がその軌跡として、単純な直線から、S字状の如き複雑な曲線状まで種々の線を採り得るだけでなく、蛇行状その他のより複雑な線を採ることも可能である。ここで、(3)や(5)はリンク機構の条件である。
本発明の時計の表示機構は、典型的には、巻印残量表示機構からなり、該巻印残量表示機構では、前記第一の伝え車が第一の巻印伝え車であり、前記第二の伝え車が第二の巻印伝え車であり、表示部が巻印残量表示部である。
その場合、文字板の空き領域を利用して、ぜんまいの巻印残量(パワーリザーブ(量))を、所望のユニークで目立ち得る軌跡で表示することが可能になる。但し、所望ならば、本発明の時計の表示機構は、巻印残量以外の量の表示に用いられてもよい。
本発明の時計の巻印残量表示機構では、典型的には、第一の伝え車が回転の伝達に関して第二の伝え車よりも上流側に位置する。
その場合、第一の伝え車に一端側でつながった第一のリンク部材の他端側に設けられた表示部は、典型的には、第一の伝え車よりも第二の伝え車に近い側において軌跡を描く。従って、第一の伝え車に対して運動の伝達を行う機構(典型的には、例えば、遊星ユニット等)から離れた側で表示を行い得るので、時計のスペースを有効に利用し易く、且つ大きな軌跡を描かせることが可能になるから、所望の大きさで所望の形状(パターン)の表示を行い得る。但し、所望ならば、第一の伝え車が回転の伝達に関して第二の伝え車よりも下流側に位置していてもよい。
本発明の時計の巻印残量表示機構では、典型的には、巻印残量表示部が第一のリンク部材のうち第一の連結部から第二の連結部よりも離れたところに形成されている。
その場合、変位が拡大され易いので、大きな軌跡を描かせることが可能になるから、所望の大きさで所望の形状(パターン)の表示を行い易い。
本発明の時計の巻印残量表示機構では、典型的には、第一の歯車部の歯数が第二の歯車部の歯数よりも多い。
その場合、表示部の軌跡を細かく変化させ易い。但し、所望ならば、第一の歯車部の歯数が第二の歯車部の歯数よりも少なくてもよい。
本発明の時計の巻印残量表示機構では、典型的には、第一の歯車部と第二の歯車部との歯数比が2対1である。
その場合、大きく変化する曲線状の軌跡を描き易い。但し、2対1は、厳密な数ではなく、凡その割合であり、1.5対1〜2.5対1程度の範囲内の割合であればよい。勿論、所望の特定のパターンのためには、3対1程度又はそれよりもはるかに異なる割合であっても、その逆に、1〜1.5対1程度と同程度の歯数であってもよい。なお、ここで、歯数比は、前述のように、径の比で代替され得る。
本発明の時計の巻印残量表示機構では、典型的には、第一のリンク部材の第一及び第二の連結部間の腕の長さが、第二のリンク部材の第三及び第四の連結部間の腕の長さ以上である。
その場合、歯車部の歯数の条件と同様に、表示部の軌跡を細かく変化させ易い。但し、所望ならば、第一のリンク部材の連結部間の腕の長さが第二のリンク部材の連結部間の腕の長さよりも短くてもよい。
本発明の時計の巻印残量表示機構では、典型的には、第一の歯車部と第二の歯車部との歯数比が1対1であり、第一のリンク部材の第一及び第二の連結部間の腕の長さが、第二のリンク部材の第三及び第四の連結部間の腕の長さと同じであり、巻印残量表示部が第一及び第二のリンク部材を回動自在に連結する連結部に設けられている。
その場合、鏡映対称の中心線に沿って直線状軌跡が得られる。なお、この軌跡も、単に一方向に移動する直線状軌跡であるだけでなく、少なくとも一部において往復移動する直線状軌跡になり得る。
以上においては、二次元平面における平面図形として捉えた軌跡に注目したけれども、ぜんまいの一定時間分の巻上げや巻き戻しに対する前記軌跡に沿った移動量(変位量)の変化の仕方に注目することもできる。
この観点で見た場合、本発明の時計の巻印残量表示機構では、表示部の移動量が巻印残量の変化に対して非線形に依存する。
例えば、ぜんまいが完全巻上げに近い状態におけるぜんまいの一定時間分の巻上げや巻き戻しに対する前記軌跡に沿った移動量(変位量)が、ぜんまいが完全巻戻し(ほどけ)に近い状態におけるぜんまいの一定時間分の巻上げや巻き戻しに対する前記軌跡に沿った移動量(変位量)よりも大きくするか小さくするかによって、完全巻上げ状態の近傍におけるぜんまい残量を正確に表示できるようにしたり、その反対に、完全巻戻し(ほどけ)状態の近傍におけるぜんまい残量を正確に表示できるようにしたりすることが可能になる。勿論、中間の状態をより正確に表示させることも可能になる。
本発明の時計の巻印残量表示機構では、表示部の軌跡を所望に応じて大幅に変更し得るので、所望の領域の拡大表示が容易に行われ得る。
本発明の時計は、上述のような表示機構を備える。
本発明の好ましい一実施の形態のいくつかを添付図面に示した好ましい実施例に基づいて説明する。
図1及び図2には、本発明の好ましい一実施例の巻印残量表示機構1を備えた機械式時計2の本体部ないしムーブメント3が示され、図5には、機械式時計2を文字板側からみた外観が示されている。
時計2のムーブメント3は、図2に示したように、香箱10を備え、巻印残量表示機構1は、図1からわかるように、遊星車機構ないし遊星ユニット100及び巻印残量表示機構本体部5を有する。この例では、図2からわかるように、ムーブメント3は、静置支持体として、地板21、香箱受22、第二地板23及び第二輪列受24等を含む。
香箱10はぜんまい11を内部に備え、ぜんまい11は、角穴ねじ12で香箱真13に固定された角穴車14の回転に応じて巻上げられる。ぜんまい11の巻上げの際には、香箱真13に取付けられた香箱真かな15がA方向に回転され、ぜんまい11の巻戻しの際には香箱かな16が香箱歯車17と共にA方向に回転される。
遊星ユニット100は、香箱かな16に噛合した第一太陽歯車111及び第一太陽かな112を備えた第一太陽車110、第二太陽歯車121及び第二太陽かな122を備え第一太陽車110と同心の第二太陽車120、遊星中間歯車131及びスペーサ132,132(図1)を備え第一及び第二太陽車110,120と同心の遊星中間車130、第一太陽かな112に噛合され遊星中間車130に回転自在に支持された第一遊星歯車141及び第二太陽かな122に噛合され第一遊星歯車141と同軸でかつこれより小径の第二遊星歯車142からなる遊星車140を有する。遊星中間歯車131は、遊星伝え車150を介して香箱真かな15に噛合されている。遊星伝え車150は、遊星中間歯車131に噛合された遊星伝え歯車151及びこれと一体で香箱真かな15に噛合された遊星伝えかな152からなる。
従って、ぜんまい11の巻上げに伴う香箱真かな15のA方向回転に応じて、遊星ユニット100の第二太陽歯車121がB2方向に回転され、ぜんまい11の巻戻しに伴う香箱かな16のA方向回転に応じて、遊星ユニット100の第二太陽歯車121がB1方向に回転される。ここで、遊星ユニット100の第二太陽歯車121が巻印残量表示機構1の出力歯車として働く。巻印残量表示機構1の出力歯車は、ぜんまい11の巻上げ及び巻戻しに応じて、典型的には大きく減速された状態で、逆向きに回転される限り、遊星ユニット100の第二太陽車121の代わりに他のどのようなものでもよい。
なお、機械式時計2は、図5に示したように、時針34、分針35及び秒針36を備え、ぜんまい11の巻戻しに伴う時計輪列(図示せず)の回転に応じて、文字板7の前面において回転する時針34、分針35及び秒針36により時刻が表示される。
巻印残量表示機構本体部5は、例えば、図1及び図2からわかるように、巻印第一伝え車40と、巻印第二伝え車50と、巻印第一伝えリンク60と、巻印第二伝えリンク70と、巻印残量表示体80とを有する。
巻印第一伝え車40は、第二地板23に支持された軸状部41に回転自在に支持された第一の伝え車本体部としての第一円板状部42と、該円板状部42と一体的な第一歯車部44とを有する。巻印第一伝え車40は、第一歯車部44で、遊星ユニット100の出力歯車をなす第二太陽歯車121に噛合され、第二太陽歯車121のB1,B2方向回転に応じて、軸状部41の中心軸線DのまわりでD1,D2方向に回転される。
巻印第二伝え車50は、第二地板23に支持された軸状部51に回転自在に支持された第二の伝え車本体部としての第二円板状部52と、該円板状部52と一体的な第二歯車部54とを有する。巻印第二伝え車50は、第二歯車部54で、巻印第一伝え車40の第一歯車部44に噛合され、第二太陽歯車121のB1,B2方向回転に応じて、巻印第一伝え車40を介して、軸状部51の中心軸線EのまわりでE1,E2方向に回転される。
巻印第一伝えリンク60は、この例では、二つの腕部61,62が接続部63で相互に角度をなしてつながり、全体として「へ」の字状の形状(L字状であって脚部が鈍角のもの)を有する。この巻印第一伝えリンク60は、一方の腕部61の先端部64で連結ピン構造体65を介して巻印第一伝え車40の第一円板状部42の第一リンク接続部45に回転自在に接続されている。
巻印第二伝えリンク70は、この例では、直線状腕部71からなり、該直線状腕部71の一端部72で連結ピン構造体73を介して巻印第二伝え車50の第二円板状部52の第二リンク接続部55に回転自在に接続されている。
巻印第一伝えリンク60は、更に、腕部61,62の接続部となっている曲折部63において、第二伝えリンク70をなす直線状腕部71の他端部74に、リンク結節手段として働くリンク連結ピン構造体88を介して回転自在に接続されている。
巻印残量表示体80は、巻印第一伝えリンク60の腕部62の他端部66に基端部81で取付けられ、軸部82が文字板7の溝状間隙83を介して突出し、表示部84が文字板7の前面側の位置する。
この巻印残量表示機構1では、香箱10のぜんまい11の巻上げによる香箱真かな15のA方向回転に伴う遊星ユニット100の第二太陽歯車121のB2方向回転に応じて、巻印第一伝え車40がD2方向に回転され、該巻印第一伝え車40の歯車部44に歯車部54で噛合した巻印第二伝え車50がE2方向に回転される。この巻印第一及び第二伝え車40,50のD2,E2方向回転に応じた第一及び第二伝えリンク60,70の揺動によって、第一伝えリンク60の先端部66に固定された表示部80が、溝83に沿って、F2方向にS字状の軌跡Fを描く。
一方、香箱10のぜんまい11の巻戻し(ほどけ)に伴う通常運針状態では、香箱かな16のA方向回転に伴う遊星ユニット100の第二太陽歯車121のB1方向回転に応じて、巻印第一伝え車40がD1方向に回転され、巻印第二伝え車50がE1方向に回転される。この巻印第一及び第二伝え車40,50のD1,E1方向回転に応じた第一及び第二伝えリンク60,70の揺動によって、表示部80が、溝83に沿って、F1方向にS字状の軌跡Fを描く。
ここで、軌跡Fは、次に詳細に説明するように、関連する各種のパラメータに依存してS字状であったりそれ以外であったり、種々の形態を採り得る。
すなわち、巻印残量表示機構1の本体部5は、図6の(a)及び(b)に示したような各種のパラメータに依存し得る。但し、図6の(a)及び(b)は、単に各種変数やパラメータの説明のための図であって、図1や図5の表示には対応していない。図5の機械式時計2においてS字状表示を行わせる巻印残量表示機構1は、例えば、図1、図3及び図4並びに図2に示した通りであり、この巻印残量表示機構1についての図6の(a)及び(b)と同様な模式的表示は、図7に示す通りである。
まず、軌跡Fの一般的表記について、図6の(a)及び(b)に基づいて、具体的に説明する。以下の説明において、巻印第一伝えリンク60の腕部61と巻印第二伝えリンク70の長さとが同一であると仮定している点を除いては、一般性がある。軌跡Fとして大きな動きを与えるためには、通常は、両者の長さが同程度であることが好ましいけれども、所望ならば両者の長さが大きく異なっていてもよい。
表示体80の表示部84の位置Hを、図6の(a)及び(b)に示したように、巻印第一伝え車40の回転中心Dと巻印第二伝え車50の回転中心Eとを結ぶ方向をX軸としこれに直角な方向をY軸とするX−Y直交座標系に基づいて、H(x,y)と表す。ぜんまい11が完全に巻戻された状態に対応する完全巻戻し位置ないし初期位置H0(x0,y0)にあった表示体80の表示部84の位置H(x,y)は、ぜんまい11の巻上げに伴う巻印第一及び第二伝え車40,50の歯車44,54のD2,E2方向回転に応じて、次の(式1)及び(式2)で示す通り変化する。但し、以下において、角度θ1及びθ2について、X軸の正及び負方向を基準としてD1方向(−D2方向)及びE1方向(−E2方向)に角度を採る。
x=(a・cosθ1+L1・cosβ)+L2・cos(β-ξ) (式1)
y=(a・sinθ1+L1・sinβ)+L2・sin(β-ξ) (式2)
ここで、
「a」は、巻印第一伝え車40の回転中心Dから巻印第一伝えリンク60の(基端側腕部61の)回転中心65(接続部45)までの長さ、
「L1」は、巻印第一伝えリンク60の基端側腕部61の長さ、
「L2」は、巻印第一伝えリンク60の先端側腕部62の長さ、
「θ1」は、巻印第一伝え車40の回転中心Dと巻印第一伝えリンク60の基端側腕部61の回転中心65とを結ぶ線がX軸に対して成す角度、
「β」は、巻印第一伝えリンク60の基端側腕部61がX軸に対して成す角度、
「ξ」は、巻印第一伝えリンク60の先端側腕部62が基端側腕部61に対して成す角度
である。
また、巻印第一伝えリンク60の基端側回動中心65(巻印第一伝え車40との回動連結部45)と巻印第二伝えリンク70の基端側回動中心73(巻印第二伝え車50との回動連結部55)とを結ぶ線分KがX軸に対して成す角度を「α」とすると、角度β,α,γが、次の条件(式3)、(式4)及び(式5)を満たす。但し、前述のように、ここでは、巻印第二伝えリンク70の長さが、巻印第一伝えリンク60の腕部61と同じ長さL1であると想定している。一般的には、巻印第二伝えリンク70の長さが、巻印第一伝えリンク60の腕部61よりも長くても短くてもよいことも前述の通りである。
β=(π-γ/2)-α (式3)
α=arctan[(a・sinθ1-b・sinθ2)/[J-(a・cosθ1-b・cosθ2)]] (式4)
γ=arccos[[2・L12-[J-(a・cosθ1+b・cosθ2)2-(a・sinθ1-b・sinθ2)2]]/(2・L12)] (式5)
ここで、
「b」は、巻印第二伝え車50の回転中心Eから巻印第二伝えリンク70の回動中心73までの長さ、
「J」は、巻印第一伝え車40の回転中心Dと巻印第二伝え車50の回転中心Eとの距離、
「θ2」は、巻印第二伝え車50の回転中心Eと巻印第二伝えリンク70の回動中心73とを結ぶ線がX軸(負方向)に対して成す角度である。
なお、巻印第一及び第二伝え車40,50の歯車44,54が噛合していることから、次の条件(式6)、(式7)及び(式8)が満たされる。
θ2=θ02+ω・(θ1-θ01) (式6)
r1=ω・r2 (式7)
J=R1+R2 (式8)
ここで、
「θ01」は、完全巻戻し位置ないし初期位置H0(x0,y0)において、巻印第一伝え車40の回転中心Dと基端側回動中心65(接続部45)とを結ぶ線がX軸に対して成す角度(角度θ1の初期値)、
「θ02」は、完全巻戻し位置ないし初期位置H0(x0,y0)において、巻印第二伝え車50の回転中心Eと回動中心73(接続部55)とを結ぶ線がX軸に対して成す角度(角度θ2の初期値)、
「ω」は、巻印第一及び第二伝え車40,50の歯車44,54の歯数比(増速比)、
「r1」は、巻印第一伝え車40の歯車44の歯数、
「r2」は、巻印第二伝え車50の歯車54の歯数、
「R1」は、巻印第一伝え車40の歯車44の半径、
「R2」は、巻印第二伝え車50の歯車54の半径
である。
図6の(a)及び(b)において角度θ1,θ2の増大する方向は、前述の通り、ぜんまい11の巻上げの際に巻印第一及び第二伝え車40,50が回転する方向D2,E2である。
以上の(式1)〜(式8)からわかるように、この巻印残量表示機構1では、リンク60の腕部61及び直線状リンク70が同一の長さ(L1)であるとしても、表示体80の表示部84による表示パターンないし表示の軌跡FすなわちH(x,y)は、多くのパラメータに依存して変化され得る。
その主なものは、
(1)巻印第一及び第二伝えリンク60,70の初期位置(θ0102)
(2)歯数比ないし増速比(ω)、巻印伝え車の回転中心から対応するリンク接続部(リンクの回動中心)までの距離の比(r1/r2)又は巻印第一及び第二伝え車40,50の歯車44,54の半径(R1,R2)(典型的には、半径比R1/R2)
(3)巻印第一伝えリンク60の基端側腕部61の長さ(L1)に対する巻印第一及び第二伝え車40,50の回転中心D,E間の距離(R1+R2)の相対的な大きさ[(R1+R2)/L1]
(4)巻印第一伝えリンク60の先端側腕部62の基端側腕部61に対する相対的な長さ(L2/L1)及び角度(ξ)
である。
図7には、巻印残量表示機構1の一実施例が、示されている。この一実施例の巻印残量表示機構1では、
(1)巻印第一及び第二伝えリンク60,70の初期位置θ01=70度,θ02=140度、
(2)歯数比ないし増速比ω=2で、巻印伝え車40,50の半径R1=300, R2=150、巻印第一伝え車40の回転中心Dから巻印第一伝えリンク60の腕部61の回動中心65までの長さa=240, 巻印第二伝え車50の回転中心Eから巻印第二伝えリンク70の回動中心73までの長さb=100、
(3)巻印第一伝えリンク60の基端側及び先端側腕部61,62の長さL1=450, L2=250、
(4)巻印第一伝えリンク60の先端側腕部62の基端側腕部61に対する角度ξ=45度
である。
この場合、図7において、実線で示したように、第一伝えリンク60の基端側回動中心65が完全巻戻し位置Q10にあり、第二伝えリンク70の基端側回動中心73が初期位置U10にある場合、表示体80の表示部84は、完全巻戻し位置P10を採る。この位置及び状態は、図1で示した状態(完全巻戻し状態)S10に対応する。
一方、ぜんまい11の巻上げに応じて、巻印第一伝え車40がD2方向に回転し巻印第二伝え車50がE2方向に回転して、図7において想像線で示したように、第一伝えリンク60の基端側回動中心65が中間位置Q1にあり、第二伝えリンク70の基端側回動中心73が中間位置U1にある場合、表示体80の表示部84は、線Fに沿って完全巻戻し位置P10からF2方向に移動した中間位置P1を採る。この位置P1及び状態S1は、図3で示した状態(中間状態)S1に対応する。
ぜんまい11の更なる巻上げに応じた巻印第一及び第二伝え車40,50のD2,E2方向回転により、図7において想像線で示したように、第一伝えリンク60の基端側回動中心65がフル巻上位置Q1fに達し、第二伝えリンク70の基端側回動中心73がフル巻上位置U1fに達した場合、表示体80の表示部84は、S字状の線Fに沿って更にF2方向に移動してフル巻上位置P1fないし状態S1fを採る。この位置P1f及び状態S1fは、図4で示した状態(フル巻上状態)S1fに対応する。
その結果、巻印残量表示機構1では、表示体80の表示部84は、ぜんまい11の巻上に応じて、図7において実線及び想像線で示し図1、図3及び図4において実線で示したように、S字状の軌跡Fに沿ってF2方向に移動して、完全巻戻し位置P10から中間位置P1を通ってフル巻上位置P1fに達する。
一方、巻印残量表示機構1では、表示体80の表示部84は、ぜんまい11の完全巻上げ(フル巻上げ)状態S1fから完全巻戻し状態S10への巻戻し(ほどけ)に応じて、図7において想像線及び実線で示し図4、図3及び図1において実線で示したように、S字状の軌跡Fに沿ってF1方向に移動して、フル巻上位置P1fから中間位置P1を通って完全巻戻し位置P10に達する。
すなわち、この巻印残量表示機構1では、表示体80の表示部84は、文字板7のS字状の溝83に沿って、フル巻上位置P1fと完全巻戻し位置P10との間をF1方向に(通常運針を伴う巻戻しの場合)又はF2方向に(ぜんまい11の巻上げの場合)にS字状に移動する。すなわち、巻印残量が、文字板7のS字状の目盛に沿った表示体80の表示部84の位置で表示され得る。
なお、この軌跡Fは、より詳しくは、図7において、想像線部分Fiを含む全体として変則的な「8」の字状ないし筆記体の「S」字状の形状を有する。従って、例えば、完全巻戻し位置P10及びフル巻上位置P1fとして異なる位置を採れば、全くといって良いほど異なる形状の軌跡を与えることも可能である。
軌跡Fは、交差部を有していても良いけれど、文字板の溝83によって軌跡を表す場合には、文字板7のような軌跡Fの背景部分を形成する便宜上は、閉曲線でない方が好ましい。
全体の軌跡が、より複雑な形状を与える一変形例の巻印残量表示機構1Aを、図8に示す。
この図8に示した巻印残量表示機構1Aでは、
(1)巻印第一及び第二伝えリンク60,70の初期位置θ01=150度,θ02=0度
(2)歯数比ないし増速比ω=3で、巻印伝え車40,50の半径R1=300, R2=100、巻印第一伝え車40の回転中心Dから巻印第一伝えリンク60の回動中心65までの長さa=240, 巻印第二伝え車50の回転中心Eから巻印第二伝えリンク70の回動中心73までの長さb=80、
(3)巻印第一伝えリンク60の基端側及び先端側腕部61,62の長さL1=600, L2=50、
(4)巻印第一伝えリンク60の先端側腕部62の基端側腕部61に対する角度ξ=30度
である。
この図8に示した巻印残量表示機構1Aでは、ぜんまい11の巻上に伴う巻印第一及び第二伝え車40,50のD2,E2方向回転に応じて、巻印第一伝えリンク60の回動中心65が完全巻戻し位置QA0から中間位置QA1,QA2を通ってフル巻上位置QAfに達し、巻印第二伝えリンク70の回動中心73が完全巻戻し位置UA0から中間位置UA1,UA2を通ってフル巻上位置UAfに達する際に、表示体80の表示部84が、ν字状の軌跡FAに沿って、完全巻戻し位置PA0から中間位置PA1,PA2を通ってフル巻上位置PAfまでFA2方向に移動する。
この図8に示した巻印残量表示機構1Aでは、一方、ぜんまい11の巻戻しに伴う巻印第一及び第二伝え車40,50のD1,E1方向回転に応じて、巻印第一伝えリンク60の回動中心65がフル巻上位置QAfから中間位置QA2,QA1を通って完全巻戻し位置QA0に達し、巻印第二伝えリンク70の回動中心73がフル巻上位置UAfから中間位置UA2,UA1を通って完全巻戻し位置UA0に達する際に、表示体80の表示部84が、ν字状の軌跡FAに沿って、フル巻上位置PAfから中間位置PA2,PA1を通って完全巻戻し位置PA0までFA1方向に移動する。
すなわち、この巻印残量表示機構1Aでは、表示体80の表示部84は、文字板7のν字状の溝に沿って、フル巻上位置PAfと完全巻戻し位置PA0との間をFA1方向に(通常運針を伴う巻戻しの場合)又はFA2方向に(ぜんまい11の巻上げの場合)にν字状に移動する。すなわち、巻印残量が、文字板7のν字状の目盛に沿った表示体80の表示部84の位置で表示され得る。
この軌跡FAは、より詳しくは、図8において、想像線部分FAiを含む複雑な形状の一部である。従って、例えば、完全巻戻し位置PA10及びフル巻上位置PAfとして異なる位置を採れば全く異なる形状の軌跡を与え得る。
一方、表示体80の表示部84を直線的に変位させるようにした別の変形例を図9に示す。
この図9に示した巻印残量表示機構1Bでは、
(1)巻印第一及び第二伝えリンク60,70の初期位置θ0102
(2)歯数比ないし増速比ω=1で、巻印伝え車40,50の半径R1=R2、巻印第一及び第二伝え車40,50の回転中心D,Eから対応する巻印第一及び第二伝えリンク60,70の回動中心65,73までの長さa=b、
(3)巻印第一伝えリンク60の腕部62がなくその長さ L2=0、であって、巻印第一伝えリンク60の先端側腕部62の基端側腕部61に対する角度ξ=0度
である。
この場合、巻印第一及び第二伝え車40,50並びに巻印第一及び第二伝えリンク60,70が、その鏡映対称線Nに関して対称に動作するので、表示体80の表示部84は、鏡映対象線Nに沿って、直線的に変位する。
より具体的には、この図9に示した巻印残量表示機構1Bでは、ぜんまい11の巻上に伴う巻印第一及び第二伝え車40,50のD2,E2方向回転に応じて、巻印第一伝えリンク60の回動中心65が完全巻戻し位置QB0から中間位置QB1,QB2を通ってフル巻上位置QBfに達し、巻印第二伝えリンク70の回動中心73が完全巻戻し位置UB0から中間位置UB1,UB2を通ってフル巻上位置UBfに達する際に、表示体80の表示部84が、直線状の軌跡FBに沿って、完全巻戻し位置PB0から中間位置PB1,PB2を通ってフル巻上位置PBfまでFB2方向に移動する。
この図9に示した巻印残量表示機構1Aでは、一方、ぜんまい11の巻戻しに伴う巻印第一及び第二伝え車40,50のD1,E1方向回転に応じて、巻印第一伝えリンク60の回動中心65がフル巻上位置QBfから中間位置QB2,QB1を通って完全巻戻し位置QB0に達し、巻印第二伝えリンク70の回動中心73がフル巻上位置UBfから中間位置UB2,UB1を通って完全巻戻し位置UB0に達する際に、表示体80の表示部84が、直線状の軌跡FBに沿って、フル巻上位置PBfから中間位置PB2,PB1を通って完全巻戻し位置PB0までFB1方向に移動する。
すなわち、この巻印残量表示機構1Bでは、表示体80の表示部84は、文字板7の直線状の溝に沿って、フル巻上位置PBfと完全巻戻し位置PB0との間をFB1方向に(通常運針を伴う巻戻しの場合)又はFB2方向に(ぜんまい11の巻上げの場合)に直線状に移動する。すなわち、巻印残量が、文字板7の直線状の目盛に沿った表示体80の表示部84の位置で表示され得る。なお、この例では、完全巻戻し位置PB0とこれに近い中間位置PB1との間では、表示体80の表示部84は殆ど移動しない。従って、ある程度まで巻印残量が低下した場合、完全巻戻し状態と実際上区別し難いことから、早急な巻上を促すことになる。

図1は本発明の好ましい一実施例の巻印残量表示機構を備えた本発明の好ましい一実施例の機械式時計について、巻印残量表示機構が完全巻戻し状態にある場合の該巻印残量表示機構の部分の平面説明図。 図1の機械式時計のうち図1の巻印残量表示機構の部分の断面説明図。 図1の機械式時計について、巻印残量表示機構が完全巻戻し状態と完全巻上状態との中間の状態にある場合の該巻印残量表示機構の部分の平面説明図。 図1の機械式時計について、巻印残量表示機構が完全巻上状態にある場合の該巻印残量表示機構の部分の平面説明図。 図1の機械式時計の文字板側外観を示した平面説明図。 図1の機械式時計の巻印残量表示機構の表示部の軌跡の決定の仕方をっ説明するための該機構の模式的な説明図で、主として初期条件を示した説明図。 図1の機械式時計の巻印残量表示機構の表示部の軌跡の決定の仕方をっ説明するための該機構の模式的な説明図で、各種パラメータ及び変数を説明するための模式的な説明図。 図1の機械式時計の巻印残量表示機構を、図6の模式的表示で示した本発明の好ましい一実施例の巻印残量表示機構の模式的な説明図。 本発明の一変形例の巻印残量表示機構についての図7と同様な模式的な説明図。 本発明の別の一変形例の巻印残量表示機構についての図7と同様な模式的な説明図。
符号の説明
1,1A,1B 巻印残量表示機構
2 機械式時計
3 ムーブメント
5 巻印残量表示機構本体部
7 文字板
10 香箱
11 ぜんまい
12 角穴ねじ
13 香箱真
14 角穴車
15 香箱真かな
16 香箱かな
17 香箱歯車
21 地板
22 香箱受
23 第二地板
24 第二輪列受
34 時針
35 分針
36 秒針
40 巻印第一伝え車
41 軸状部
42 第一円板状部
44 第一歯車部
45 第一リンク接続部
50 巻印第二伝え車
51 軸状部
52 第二円板状部
54 第二歯車部
55 第二リンク接続部
60 巻印第一伝えリンク
61 基端側腕部
62 先端側腕部
63 接続部(曲折部)
64,66 端部
65 連結ピン構造体(回動中心)
68 リンク連結ピン構造体(リンク結節手段)
70 巻印第二伝えリンク
71 直線状腕部
72,74 端部
73 連結ピン構造体(回動中心)
80 巻印残量表示体
81 基端部
82 軸部
83 溝状間隙
84 表示部
88 連結ピン構造体(リンク結節手段)
100 遊星ユニット
110 第一太陽車
111 第一太陽歯車
112 第一太陽かな
120 第二太陽車
121 第二太陽歯車
122 第二太陽かな
130 遊星中間車
131 遊星中間歯車
132 スペーサ
140 遊星車
141 第一遊星歯車
142 第二遊星歯車
150 遊星伝え車
151 遊星伝え歯車
152 遊星伝えかな
A 回転方向
B1,B2,D1,D2,E1,E2 回転方向
D,E 中心軸線
F 軌跡
Fi,FAi 原理的には移動可能性のある部分
F1,F2,FA1,FA2,FB1,FB2 移動方向
P10,Q10,U10,PA0,QA0,UA0,PB0,QB0,UB0 完全巻戻し位置
P1,P2,PA1,PA2,Q1,Q2,QA1,QA2,U1,U2,UA1,UA2 中間位置
P1f,Q1f,U1f,PAf,QAf,UAf,PBf,QBf,UBf, フル巻上位置
S10 完全巻戻し状態
S1f フル巻上状態

Claims (10)

  1. 第一の伝え車本体部及び該第一の伝え車本体部と一体的な第一の歯車部を備えた第一の伝え車と、
    第二の伝え車本体部及び該第二の伝え車本体部と一体的で前記第一の歯車部に噛合された第二の歯車部を備えた第二の伝え車と、
    一端側の第一の連結部において第一の伝え車本体部に回転自在に連結され他端側に第二の連結部を備えた第一のリンク部材と、
    一端側の第三の連結部において第二の伝え車本体部に回転自在に連結され、他端側の第四の連結部で前記第一のリンク部材の第二の連結部に回動自在に連結された第二のリンク部材と、
    第一のリンク部材の前記他端側に設けられた表示部と
    を有する時計の表示機構。
  2. 前記第一の伝え車が第一の巻印伝え車であり、前記第二の伝え車が第二の巻印伝え車であり、前記表示部が巻印残量表示部である請求項1に記載の巻印残量表示機構。
  3. 第一の伝え車が回転の伝達に関して第二の伝え車よりも上流側に位置する請求項2に記載の巻印残量表示機構。
  4. 巻印残量表示部が第一のリンク部材のうち第一の連結部から第二の連結部よりも離れたところに形成されている請求項2又は3に記載の巻印残量表示機構。
  5. 第一の歯車部の歯数が第二の歯車部の歯数よりも多い請求項2から4までのいずれか一つの項に記載の巻印残量表示機構。
  6. 第一の歯車部と第二の歯車部との歯数比が2対1である請求項5に記載の巻印残量表示機構。
  7. 第一のリンク部材の第一及び第二の連結部間の腕の長さが、第二のリンク部材の第三及び第四の連結部間の腕の長さ以上である請求項3から6までのいずれか一つの項に記載の巻印残量表示機構。
  8. 第一の歯車部と第二の歯車部との歯数比が1対1であり、第一のリンク部材の第一及び第二の連結部間の腕の長さが、第二のリンク部材の第三及び第四の連結部間の腕の長さと同じであり、巻印残量表示部が第一及び第二のリンク部材を回動自在に連結する連結部に設けられている請求項2に記載の巻印残量表示機構。
  9. 表示部の移動量が巻印残量の変化に対して非線形に依存する請求項2から8までのいずれか一つの項に記載の巻印残量表示機構。
  10. 請求項1から9までのいずれか一つの項に記載の表示機構を備えた時計。
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