以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による動力装置1を、これを適用した車両Vとともに概略的に示している。この車両Vは、駆動輪としての左右の前輪WFL,WFRと、従動輪としての左右の後輪WRL,WRRを有しており、車両Vでは、ハンドル(図示せず)の回転に伴い、左右の前輪WFL,WFRの向きが変化することによって、左右方向への旋回が行われる。
この動力装置1は、これらの左右の前輪WFL,WFRを駆動するためのものであり、図2および図4に示すように、駆動源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3、第1回転機11および第2回転機21と、第3回転機31と、動力を伝達するための第1遊星歯車装置PS1、第2遊星歯車装置PS2、第3遊星歯車装置PS3、および第4遊星歯車装置PS4と、エンジン3や第1〜第3の回転機11〜31の動作を制御するためのECU2を備えている。このエンジン3は、ガソリンエンジンであり、動力を出力するためのクランク軸3aを有している。なお、図2および後述する他の図面では、断面を示す部分のハッチングを適宜、省略するものとする。
上記の第1回転機11は、一般的な1ロータタイプの3相ブラシレスDCモータであり、複数の鉄芯やコイルなどで構成されたステータ12と、複数の磁石などで構成されたロータ13とを有している。このステータ12は、回転磁界を発生可能に構成されており、不動のケースCAに固定されている。上記のロータ13は、ステータ12に対向するように配置され、回転自在になっている。以上の構成の第1回転機11では、ステータ12に電力が供給されると、回転磁界が発生し、それに伴って、供給された電力は、動力に変換され、ロータ13に出力される。また、ロータ13に動力が入力されると、この動力は、電力に変換され(発電)、ステータ12に出力されるとともに、回転磁界が発生する。
また、ロータ13には、中空の回転軸14が同軸状に一体に設けられている。さらに、図3に示すように、ステータ12は、第1パワードライブユニット(以下「第1PDU」という)41を介して、充電・放電可能なバッテリ44に電気的に接続されている。この第1PDU41は、インバータなどの電気回路で構成されている。さらに、図4に示すように、第1PDU41には、ECU2が電気的に接続されている。ECU2は、第1PDU41を制御することによって、第1回転機11のステータ12に供給する電力と、ステータ12で発電する電力と、第1回転機11のロータ13の回転数(以下「第1回転機回転数」という)NM1を制御する。
また、第2および第3の回転機21,31も、第1回転機11と同様、一般的な1ロータタイプの3相ブラシレスDCモータであり、前者21はステータ22およびロータ23を、後者31はステータ32およびロータ33を、それぞれ有している。これらのステータ22、32およびロータ23、33は、第1回転機11のそれと同様に構成されている。さらに、第2回転機21は、第1回転機11と同様、ステータ22に供給された電力を動力に変換し、ロータ23に出力する機能と、ロータ23に入力された動力を電力に変換し、ステータ22に出力する機能を有している。また、第3回転機31も、第1回転機11と同様、ステータ32に供給された電力を動力に変換し、ロータ33に出力する機能と、ロータ33に入力された動力を電力に変換し、ステータ32に出力する機能を有している。
また、ロータ23は、第1回転機11のロータ13と同軸状に配置されており、ロータ23には、回転軸24が同軸状に一体に設けられている。ロータ33は、クランク軸3aと同軸状に配置されており、ロータ33には、中空の回転軸34が同軸状に一体に設けられている。さらに、ステータ22および32は、第2パワードライブユニット(以下「第2PDU」という)42および第3パワードライブユニット(以下「第3PDU」という)43をそれぞれ介して、バッテリ44に電気的に接続されている。これらの第2および第3のPDU42,43は、第1PDU41と同様、インバータなどの電気回路で構成されている。また、第2PDU42には、ECU2が電気的に接続されている。ECU2は、第2PDU42を制御することによって、第2回転機21のステータ22に供給する電力と、ステータ22で発電する電力と、第2回転機21のロータ23の回転数(以下「第2回転機回転数」という)NM2を制御する。
また、第3PDU43には、第1および第2のPDU41,42とECU2が電気的に接続されている。すなわち、第1回転機11のステータ12と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されており、第2回転機21のステータ22と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されている。ECU2は、第3PDU43を制御することによって、第3回転機31のステータ32に供給する電力と、ステータ32で発電する電力と、第3回転機31のロータ33の回転数(以下「第3回転機回転数」という)NM3を制御する。
前述した第1遊星歯車装置PS1は、一般的なシングルピニオンタイプのものであり、第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1の外周に設けられた第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う複数の第1プラネタリギヤP1と、これらの第1プラネタリギヤP1を回転自在に支持する第1キャリアC1を有している。第1サンギヤS1の歯数に対する第1リングギヤR1の歯数の比(第1リングギヤR1の歯数/第1サンギヤS1の歯数、以下「第1ギヤ比G1」という)は、所定値に設定されている。周知のように、これらの第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1は、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成されている。
また、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1および第1キャリアC1は、前述した回転軸14と同軸状に配置されている。第1サンギヤS1は、回転軸14に一体に設けられ、それにより、第1回転機11のロータ13に機械的に直結されており、ロータ13と一体に回転自在になっている。第1キャリアC1は、左駆動軸DSLに一体に設けられており、この左駆動軸DSLや減速ギヤ(図示せず)を介して、左前輪WFLに機械的に連結されている。さらに、左駆動軸DSLは、回転軸14と同軸状に配置されており、回転軸14に回転自在に嵌合している。なお、本明細書において、「直結」とは、ギヤなどの変速機構を用いずに各種の要素を連結することをいう。
第2遊星歯車装置PS2は、第1遊星歯車装置PS1と同様に構成されており、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う複数の第2プラネタリギヤP2と、これらの第2プラネタリギヤP2を回転自在に支持する第2キャリアC2を有している。また、第3遊星歯車装置PS3も、第1遊星歯車装置PS1と同様に構成されており、第3サンギヤS3と、第3リングギヤR3と、両ギヤS3,R3に噛み合う複数の第3プラネタリギヤP3と、これらの第3プラネタリギヤP3を回転自在に支持する第3キャリアC3を有している。さらに、第4遊星歯車装置PS4も、第1遊星歯車装置PS1と同様に構成されており、第4サンギヤS4と、第4リングギヤR4と、両ギヤS4,R4に噛み合う複数の第4プラネタリギヤP4と、これらの第4プラネタリギヤP4を回転自在に支持する第4キャリアC4を有している。
これらの第2〜第4の遊星歯車装置PS2〜PS4は、第1遊星歯車装置PS1と同じ機能を有している。また、第2サンギヤS2の歯数に対する第2リングギヤR2の歯数の比(第2リングギヤR2の歯数/第2サンギヤS2の歯数、以下「第2ギヤ比G2」という)は、第1遊星歯車装置PS1の第1ギヤ比G1と同様、所定値に設定されており、このことは、第3および第4の遊星歯車装置PS3,PS4についても同様である。以下、第3サンギヤS3の歯数に対する第3リングギヤR3の歯数の比(第3リングギヤR3の歯数/第3サンギヤS3の歯数)を、「第3ギヤ比G3」といい、第4サンギヤS4の歯数に対する第4リングギヤR4の歯数の比(第4リングギヤR4の歯数/第4サンギヤS4の歯数)を、「第4ギヤ比G4」という。
また、第2および第3のサンギヤS2,S3、第2および第3のリングギヤR2,R3、ならびに、第2および第3のキャリアC2,C3は、前述した回転軸24と同軸状に配置されている。第2サンギヤS2は、回転軸24に一体に設けられ、それにより、第2回転機21のロータ23に機械的に直結されており、ロータ23と一体に回転自在になっている。第2キャリアC2は、右駆動軸DSRに一体に設けられており、この右駆動軸DSRや減速ギヤ(図示せず)を介して、右前輪WFRに機械的に連結されている。さらに、右駆動軸DSRは、回転軸24と同軸状に配置されており、回転軸24に回転自在に嵌合している。
また、第2キャリアC2および第3サンギヤS3は、回転軸5に一体に設けられており、互いに一体に回転自在になっている。第1リングギヤR1および第3キャリアC3は、筒状の連結部6に一体に設けられており、第2リングギヤR2および第3キャリアC3は、筒状の連結部7に一体に設けられている。これにより、第1および第2のリングギヤR1,R2と第3キャリアC3は、一体に回転自在になっている。さらに、この連結部7の外周面には、ギヤ7aが形成されており、このギヤ7aは、回転自在のアイドラギヤ8に噛み合っている。第1キャリアC1および第3リングギヤR3は、筒状の連結部9に一体に設けられている。
また、第4サンギヤS4は、前述した回転軸34に同軸状に一体に設けられ、それにより、第3回転機31のロータ33に機械的に直結されており、ロータ33と一体に回転自在になっている。第4キャリアC4は、フライホイール(図示せず)を介して、エンジン3のクランク軸3aに同軸状に直結されており、クランク軸3aと一体に回転自在になっている。さらに、第4リングギヤR4の外周面には、ギヤRGが形成されており、このギヤRGは、上記のアイドラギヤ8に噛み合っている。以上のように、第4リングギヤR4は、第1および第2のリングギヤR1,R2と第3キャリアC3に機械的に連結されている。
また、図4に示すように、ECU2には、クランク角センサ51から、クランク軸3aのクランク角度位置を表す検出信号が出力される。ECU2は、このクランク角度位置に基づいて、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。さらに、ECU2には、第1回転角センサ52、第2回転角センサ53および第3回転角センサ54からそれぞれ、第1、第2および第3の回転機11,21,31のロータ13,23,33の回転角度位置を表す検出信号が出力される。ECU2は、検出されたロータ11,23,33の回転角度位置に基づいて、第1〜第3の回転機回転数NM1,NM2,NM3をそれぞれ算出する。
また、ECU2には、左前輪回転数センサ55および右前輪回転数センサ56からそれぞれ、左右の前輪WFL,WFRの回転数(以下、それぞれ「左前輪回転数NWFL」「右前輪回転数NWFR」という)を表す検出信号が、出力される。さらに、ECU2には、左後輪回転数センサ57および右後輪回転数センサ58からそれぞれ、左右の後輪WRL,WRRの回転数(以下、それぞれ「左後輪回転数NWRL」「右後輪回転数NWRR」という)を表す検出信号が、出力される。ECU2は、検出された左右の後輪回転数NWRL,NWRRに基づき、車両Vの速度(以下「車速」という)を算出する。
また、ECU2には、操舵角センサ59から車両Vのハンドルの操舵角θstを表す検出信号が、ヨーレートセンサ60から車両Vのヨーレートγを表す検出信号が、出力される。さらに、ECU2には、電流電圧センサ61から、バッテリ44に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が出力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ44の充電状態を算出する。また、ECU2には、アクセル開度センサ62から、車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度APを表す検出信号が、ブレーキセンサ63から、車両Vのブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量であるブレーキペダル踏込量BPを表す検出信号が、出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されており、上述した各種のセンサ51〜63からの検出信号に応じ、エンジン3および第1〜第3の回転機11〜31の動作を制御する。これにより、動力装置1の各種の動作が行われる。
図5(a)は、前述した第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1の間の回転数の関係の一例を、第3サンギヤS3、第3キャリアC3および第3リングギヤR3の間の回転数の関係の一例とともに示している。これらの回転要素の間の回転数の関係は、前述した第1および第3の遊星歯車装置PS1,PS3の間の連結関係から、例えば、図5(b)に示す1つの速度共線図で表される。同図に示すように、第1および第3の遊星歯車装置PS1、PS3の間の連結によって、互いに回転数が共線関係にある4つの回転要素が構成される。
また、図6(a)は、上記の4つの回転要素の間の回転数の関係の一例を、第2サンギヤS2、第2キャリアC2および第2リングギヤR2の間の回転数の関係の一例とともに示している。これらの回転要素の間の回転数の関係は、前述した第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3の間の連結関係から、例えば、図6(b)に示す1つの速度共線図で表される。同図に示すように、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3の間の連結によって、互いに回転数が共線関係にある5つの回転要素が構成される。以上の構成により、これらの5つの回転要素は、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転する。以下、これらの5つの回転要素のうち、第1サンギヤS1で構成される回転要素を「第1要素」、第1キャリアC1および第3リングギヤR3で構成される回転要素を「第2要素」といい、第1リングギヤR1、第2リングギヤR2および第3キャリアC3で構成される回転要素を「第3要素」という。また、第2キャリアC2および第3サンギヤS3で構成される回転要素を「第4要素」、第2サンギヤS2で構成される回転要素を「第5要素」という。
さらに、前述したように、第1サンギヤS1すなわち第1要素は、第1回転機11のロータ12に直結されており、第1要素の回転数と第1回転機回転数NM1は、互いに等しい。また、第1キャリアC1および第3リングギヤR3、すなわち第2要素は、左前輪WFLに連結されており、第2要素の回転数と左前輪回転数NWFLは、前述した減速ギヤによる変速を無視すれば、互いに等しい。さらに、第1リングギヤR1、第3キャリアC3および第2リングギヤR2、すなわち第3要素は、第4リングギヤR4に連結されており、第3要素の回転数と第4リングギヤR4の回転数は、前述したギヤRGおよび7aによる変速を無視すれば、互いに等しい。また、第2キャリアC2および第3サンギヤS3、すなわち第4要素は、右前輪WFRに連結されており、第4要素の回転数と右前輪回転数NWFRは、前述した減速ギヤによる変速を無視すれば、互いに等しい。さらに、第2サンギヤS2すなわち第5要素は、第2回転機21のロータ22に直結されており、第5要素の回転数と第2回転機回転数NM2は、互いに等しい。
また、第4サンギヤS4は、第3回転機31のロータ33に直結されており、第4サンギヤS4の回転数と第3回転機回転数NM3は、互いに等しい。さらに、第4キャリアC4は、クランク軸3aに直結されており、第4キャリアC4の回転数とエンジン回転数NEは、互いに等しい。以上のように、第3要素は、第4リングギヤR4および第4キャリアC4を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、第3回転機31のロータ33は、第4サンギヤS4および第4キャリアC4を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。
以上から、第1〜第5の要素の回転数と、第4サンギヤS4、第4キャリアC4および第4リングギヤR4の回転数と、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと、第1〜第3の回転機回転数NM1〜NM3と、エンジン回転数NEの関係は、例えば図7のように表される。以下、この図7に示すような速度共線図を用いて、動力装置1の動作について説明する。なお、同図および後述する他の速度共線図では、前述した図102に示す速度共線図と同様、値0を示す横線に交わる縦線は、各パラメータの回転数を表すためのものであり、この横線から縦線上の白丸までの距離が、各パラメータの回転数に相当する。同図および後述する他の速度共線図では、便宜上、この白丸の付近に各パラメータの回転数の符号を表記するとともに、正転方向を「+」で、逆転方向を「−」で、それぞれ表記している。また、以下の説明では、前述した減速ギヤ、ギヤRGおよび7aによる変速や、各ギヤにおける損失などはないものとする。
動力装置1の動作モードには、「停車中ENG始動モード」「ENG発進モード」「ENG直進モード」「ENG旋回モード」「ENG後進モード」「減速運転モード」「EV発進モード」「EV走行中ENG始動モード」および「EV後進モード」が含まれる。以下、これらの動作モードについて、停車中ENG始動モードから順に説明する。
・停車中ENG始動モード
この停車中ENG始動モードは、車両Vの停止中に、エンジン3を始動する動作モードである。停車中ENG始動モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図8のように表される。停車中ENG始動モードでは、エンジン3のクランク軸3aを正転させるために、バッテリ44から第3回転機31に電力を供給し、そのロータ33を第4サンギヤS4とともに正転させる。
この場合、図8から明らかなように、電力供給に伴って発生した第3回転機31の出力トルク(以下「第3回転機トルク」という)TM3は、第4キャリアC4に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第4リングギヤR4や、第1要素、第3要素、第5要素、左右の前輪WFL,WFRを逆転させるように作用する。このため、図8に示すように、そのような左右の前輪WFL,WFRの逆転を防止すべく、左右の前輪WFL,WFRを静止状態に保持するために、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給し、第1および第2の回転機11,21の出力トルク(以下、それぞれ「第1回転機トルク」「第2回転機トルク」という)TM1,TM2を、第1および第5の要素の逆転を阻止するように発生させる。
これにより、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、第1および第5の要素にそれぞれ伝達され、さらに、第3要素を介して第4リングギヤR4に伝達され、第4リングギヤR4の逆転を阻止するように作用する。第3回転機トルクTM3は、第4リングギヤR4に伝達されたトルク(以下「第4リングギヤ伝達トルク」という)TR4を反力として、クランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが正転する。図8において、T3Tは、第3要素に伝達されるトルク(以下「第3要素伝達トルク」という)であり、TCRKは、クランク軸3aに伝達されるトルクである。
また、停車中ENG始動モードでは、第3回転機回転数NM3は、エンジン回転数NEがエンジン3の始動に適した所定の始動時用回転数NSTになるように、制御される。具体的には、この場合、第4サンギヤS4の回転数が第3回転機回転数NM3と等しいことと、第4キャリアC4の回転数がエンジン回転数NEと等しいことと、第4リングギヤR4の回転数が値0になることから、第3回転機回転数NM3は、次式(3)が成立するように制御される。
NM3=(G4+1)NST ……(3)
以上により、停車中ENG始動モードでは、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが値0に、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTに、それぞれ制御される。その状態で、検出されたクランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグ(いずれも図示せず)の点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。このように、停車中ENG始動モードでは、エンジン回転数NEを始動に適した始動時用回転数NSTに制御した状態で、エンジン3を始動することができるので、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。また、エンジン3の始動に伴って、左右の前輪WFL,WFRを駆動することがなく、両者WFL,WFRを静止状態に保持することができる。
・ENG発進モード
このENG発進モードは、エンジン3の動力を用いて、停車中の車両Vを発進させる動作モードである。ENG発進モードでは、エンジン3のスロットル弁や燃料噴射弁を制御することにより、エンジン3に吸入される混合気を制御することによって、エンジン3の動力を増大させる。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行い、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、それらのロータ13,23を正転させる。ENG発進モードの開始時における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図9のように表される。同図において、TWLTおよびTWRTはそれぞれ、左右の前輪WFL,WFRに伝達されるトルク(以下、それぞれ「左前輪伝達トルクTWLT」「右前輪伝達トルクTWRT」という)である。
図9に示すように、ENG発進モードの開始時、左右の前輪WFL,WFRのフリクションが第3回転機31のフリクションよりも大きいため、第4リングギヤR4の回転数が左右の前輪回転数NWFL,NWFRとともに値0の状態になるとともに、第3回転機31のロータ33が正転する。このため、上記の第3回転機31での発電に伴って発生した第3回転機31の制動トルク(以下「第3回転機発電トルク」という)TG3は、ロータ33とともに正転する第4サンギヤS4の回転数を低下させるように作用する。
また、エンジン3から第4キャリアC4に伝達されたトルク(以下「第4キャリア伝達トルク」という)TC4は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第4リングギヤR4に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。換言すれば、第4キャリア伝達トルクTC4は、第3回転機31と第4リングギヤR4に分配される。また、第1および第2の回転機11,21への電力供給に伴い、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2が、第1および第5の要素にそれぞれ伝達される。さらに、エンジン3から第3要素に上記のように伝達された第3要素伝達トルクT3Tは、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機トルクTM1,TM2とともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
この場合、第3回転機31で発電する電力を制御することによって、第3回転機発電トルクTG3を漸増させるとともに、第3回転機回転数NM3を低下させる。第4遊星歯車装置PS4の機能から明らかなように、上記のように第3回転機発電トルクTG3を漸増させることによって、エンジン3から第4リングギヤR4を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTが、漸増する。また、上記のように第3回転機回転数NM3を低下させることによって、エンジン3から第3回転機31に伝達される動力が低下し、第4リングギヤR4を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力が増大する。
以上の結果、図10に示すように、左右の前輪WFL,WFRが駆動され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、車両Vが前方に発進する。以上のように、ENG発進モードでは、第3回転機31での発電電力を制御することによって、エンジン3から左右の前輪WFL,WFRに伝達されるトルクを漸増させることができるので、左右の前輪WFL,WFRからエンジン3に急激に大きな負荷が作用するのを防止でき、エンジンストールを発生させることなく、車両Vを発進させることができる。したがって、車両Vの発進用の発進クラッチが不要になる。
また、ENG発進モード中、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように制御されるとともに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御される。この要求トルクTREQは、車両Vに要求されるトルクであり、算出された車速と検出されたアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。以上により、ENG発進モード中、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、第3回転機回転数NM3は、エンジン回転数NEに応じて制御される。以下、この場合における第1〜第3の回転機11〜31の制御について、具体的に説明する。
上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、両者を代表して、左前輪回転数NWFLを用いると、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと共線関係にあるため、次式(4)が成立するように制御される。
NM1=NM2=NWFL ……(4)
また、図10から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、次式(5)で表される。
(G2・G3+G3+1+G1)TM1+(G2・G3+G3+1)TWLT
+(G2・G3+G3)T3T+G2・G3・TWRT=0 ……(5)
この場合、前述したように、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、次式(6)が得られる。
TWLT=TWRT=TREQ/2 ……(6)
また、第4リングギヤ伝達トルクTR4が第3要素に伝達されることと、第4サンギヤS4に第3回転機発電トルクTG3が伝達されることから、第3要素伝達トルクT3Tは次式(7)で表される。
T3T=−TR4=−G4・TG3 ……(7)
これらの式(5)〜(7)から、第1回転機トルクTM1は次式(8)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(8)が成立するように制御される。
TM1=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ/2-(G2・G3+G3)G4・TG3}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(8)
さらに、図10から明らかなように、第2回転機トルクTM2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、次式(9)で表される。
(G1+1+G3+G2・G3)TM2+(G1+1+G3)TWRT
+(G1+1)T3T+G1・TWLT=0 ……(9)
上記の式(6)、(7)および(9)から、第2回転機トルクTM2は次式(10)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(10)が成立するように制御される。
TM2=-{(2・G1+1+G3)TREQ/2-(G1+1)G4・TG3}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(10)
また、第4リングギヤR4の回転数が左前輪回転数NWFLと、第4キャリアC4の回転数がエンジン回転数NEと、第4サンギヤS4の回転数が第3回転機回転数NM3と、それぞれ等しいことから、第3回転機回転数NM3は次式(11)で表される。したがって、第3回転機回転数NM3は、この式(11)が成立するように制御される。
NM3=(G4+1)NE−G4・NWFL ……(11)
なお、ENG発進モード中、車両Vの緩発進時や下り坂での発進時には、要求トルクTREQが小さいため、第3回転機31で発電した電力の一部を第1および第2の回転機11,21に供給し、残りをバッテリ44に充電する。一方、車両Vの急発進時や上り坂での発進時には、要求トルクTREQが大きいため、第3回転機31で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する。
・ENG直進モード
このENG直進モードは、エンジン3の動力を用いて、車両Vを前方に直進させる動作モードであり、上述したENG発進モードや、後述するEV走行中ENG始動モードに続いて選択される。ENG直進モードでは、通常直進モード、充電直進モードおよびアシスト直進モードが、要求動力に応じて選択される。この要求動力は、前述した要求トルクTREQと車速によって定まるものである。以下、これらの運転モードについて、通常直進モードから順に説明する。
・通常直進モード
通常直進モードは、要求動力が所定の最良燃費範囲(エンジン3の最良な燃費が得られる動力の範囲)内にあるときに選択される。また、通常直進モードでは、エンジン3のスロットル弁や燃料噴射弁を制御することによって、エンジン3の動力を要求動力になるように制御する。さらに、ENG発進モードと同様、エンジン3から第3回転機31に伝達される動力の一部を用いて発電を行うとともに、発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。
通常直進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図11のように表される。同図から明らかなように、エンジン3の出力トルク(以下「エンジントルク」という)TENGは、第4キャリアC4にすべて伝達され、さらに、第4キャリアC4に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第4リングギヤR4に伝達される。換言すれば、エンジントルクTENGがすべて、第3回転機31と第4リングギヤR4に分配される。また、エンジン3から第4リングギヤR4に伝達された第4リングギヤ伝達トルクTR4は、第3要素に伝達される。さらに、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、ENG発進モードと同様、エンジン3から上記のように第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
また、通常直進モードでは、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。この目標エンジン回転数NEOBJは、算出された車速および要求トルクTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップでは、目標エンジン回転数NEOBJは、エンジン3の最良の燃費が得られるような値に設定されている。さらに、第1〜第3の回転機11〜31の制御によって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、車両Vの良好な直進性を得ることができる。また、左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和(以下「左右の前輪伝達動力」という)は、エンジン3の動力と等しくなる。
この場合、第1〜第3の回転機11〜31と第4遊星歯車装置PS4は、無段変速装置として機能し、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達する。以下、第1〜第3の回転機11〜31の制御について、具体的に説明する。
通常直進モードでは、ENG発進モードと同様、上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、両者を代表して、左前輪回転数NWFLを用いると、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、前記式(4)が成立するように制御される。
また、図11から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。さらに、ENG発進モードと同様、前述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(6)が得られる。また、第4リングギヤ伝達トルクTR4が第3要素に伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4に分配されることから、第3要素伝達トルクT3Tは次式(12)で表される。
T3T=−TR4=G4・TENG/(1+G4) ……(12)
さらに、エンジン3の動力と左右の前輪伝達動力が互いに等しいので、エンジントルクTENGおよび目標エンジン回転数NEOBJと、要求トルクTREQおよび左前輪回転数NWFLの関係は、次式(13)で表される。
TENG=−TREQ・NWFL/NEOBJ ……(13)
これらの式(5)、(6)、(12)および(13)から、第1回転機トルクTM1は次式(14)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(14)が成立するように制御される。
TM1=-TREQ{(2・G2・G3+G3+1)/2-(G2・G3+G3)G4・NWFL/(1+G4)NEOBJ}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(14)
また、図11から明らかなように、第2回転機トルクTM2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(9)で表される。上記の式(6)、(9)、(12)および(13)から、第2回転機トルクTM2は次式(15)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(15)が成立するように制御される。
TM2=-TREQ{(2・G1+1+G3)/2-(G1+1)G4・NWFL/(1+G4)NEOBJ}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(15)
さらに、第4リングギヤR4の回転数が左前輪回転数NWFLと、第4キャリアC4の回転数がエンジン回転数NEと、第4サンギヤS4の回転数が第3回転機回転数NM3と、それぞれ等しいことと、上述したようにエンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3回転機回転数NM3は次式(16)で表される。したがって、第3回転機回転数NM3は、この式(16)が成立するように制御される。
NM3=(G4+1)NEOBJ−G4・NWFL ……(16)
また、エンジントルクTENGがすべて、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4に分配されることから、第3回転機発電トルクTG3とエンジントルクTENGの関係は、次式(17)で表される。
TG3=−TENG/(1+G4) ……(17)
この式(17)と上記の式(13)から、第3回転機発電トルクTG3は次式(18)で表される。したがって、第3回転機31で発電する電力は、この式(18)が成立するように制御される。
TG3=TREQ・NWFL/(1+G4)NEOBJ ……(18)
以上の第1〜第3の回転機11〜31の制御により、左右の前輪回転数NWFL,NWFRに対して、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように制御され、ひいては、エンジン3の動力が無段階に変速され、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜31と第4遊星歯車装置PS4による増速度合が大きいほど、前記式(4)および(16)から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、より高速側に制御されるとともに、第3回転回転数NM3はより低速側に制御される。また、前記式(14)および(15)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、より小さな値に制御される。以上により、図11に一点鎖線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に上昇し、エンジン3の動力が無段階に増速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
上記とは逆に、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜31と第4遊星歯車装置PS4による減速度合が大きいほど、前記式(4)および(16)から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、より低速側に制御されるとともに、第3回転回転数NM3はより高速側に制御される。また、前記式(14)および(15)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、より大きな値に制御される。以上により、図11に破線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に低下し、エンジン3の動力が無段階に減速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
なお、上述した第1〜第3の回転機11〜31と第4遊星歯車装置PS4を用いた変速動作は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NM3=(G4+1)NEOBJ−G4・NWFL>0で、NEOBJ>G4・NWFL/(G4+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<G4・NWFL/(G4+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まるロータ33の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力を第3回転機31に供給し、ロータ33を逆転させる。この場合にも、第1および第2の回転機11,21で発電する電力や、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2、第3回転機回転数NM3を制御することによって、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。この場合、図11から明らかなように、エンジン3の動力を、より大きく増速した状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。
・充電直進モード
この充電直進モードは、次の条件(a)および(b)が成立しているときに選択される。
(a)算出されたバッテリ44の充電状態が第1所定値よりも小さいとき
(b)前述した要求動力が最良燃費範囲よりも小さい側にあるとき
これにより、充電直進モードは、バッテリ44の電力が比較的小さく、過充電にならないときで、かつ、要求動力が、エンジン3の最良な燃費が得られる動力(以下「最良燃費動力」という)よりも小さいときに選択される。以下、充電直進モードにおける動作について、通常直進モードと異なる点を中心に説明する。
充電直進モード中、エンジン3の動力を、要求動力よりも大きな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行い、発電した電力の一部をバッテリ44に充電するとともに、残りを第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電される。また、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、通常直進モードと同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。この目標エンジントルクTEOBJは、最良燃費動力を目標エンジン回転数NEOBJで除算した値である。
以上により、充電直進モード中、左右の前輪伝達動力(左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和)は、要求動力と等しくなるとともに、この左右の前輪伝達動力と、バッテリ44に充電される電力(エネルギ)との和は、エンジン3の動力と等しくなる。また、充電直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図11と同様である。
充電直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、通常直進モードと同様、エンジントルクTENGがすべて、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4に分配されることから、第3回転機発電トルクTG3とエンジントルクTENGの関係は、前記式(17)で表される。このことと、上述したようにエンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機発電トルクTG3は、次式(19)で表される。したがって、第3回転機31で発電する電力は、この式(19)が成立するように制御される。
TG3=−TEOBJ/(1+G4) ……(19)
また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3回転機回転数NM3は、前記式(16)が成立するように制御される。
さらに、バッテリ44の充電に用いられるトルクを充電トルクTGとすると、第3回転機31で発電した電力の一部を充電し、残りを第1および第2の回転機11,21に供給することから、次式(20)が得られる。
(TG3−TG)NM3=−(TM1+TM2)NWFL ……(20)
また、通常直進モードと同様、図11に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTを要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、次式(21)が成立する。
TM1+TM2=−TREQ−T3T ……(21)
さらに、この場合にも、第4リングギヤ伝達トルクTR4が第3要素に伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4に分配されることから、第3要素伝達トルクT3Tは前記式(12)で表される。このことと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3要素伝達トルクT3Tは、次式(22)で表される。
T3T=−TR4=G4・TEOBJ/(1+G4) ……(22)
これらの式(21)および(22)から、次式(23)が得られる。
TM1+TM2=−TREQ−G4・TEOBJ/(1+G4) ……(23)
また、以上の式(16)、(19)、(20)および(23)から、充電トルクTGは次式(24)で表される。したがって、バッテリ44に充電される電力は、この式(24)が成立するように制御される。
TG=−(TREQ・NWFL+TEOBJ・NEOBJ)
/{(G4+1)NEOBJ−G4・NWFL} ……(24)
また、この場合にも、図11に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することから、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。この式(5)と、第3要素伝達トルクT3Tに関する上記の式(22)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1回転機トルクTM1は、次式(25)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(25)が成立するように制御される。
TM1=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ/2+(G2・G3+G3)G4・TEOBJ/(1+G4)}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(25)
同様に、第2回転機トルクTM2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(9)で表される。この式(9)と、第3要素伝達トルクT3Tに関する式(22)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第2回転機トルクTM2は次式(26)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(26)が成立するように制御される。
TM2=-{(2・G1+1+G3)TREQ/2+(G1+1)G4・TEOBJ/(1+G4)}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(26)
また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。
なお、上述した充電直進モード中における第1〜第3の回転機11〜31の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NM3=(G4+1)NEOBJ−G4・NWFL>0で、NEOBJ>G4・NWFL/(G4+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<G4・NWFL/(G4+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まるロータ33の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部をバッテリ44に充電し、残りを第3回転機31に供給し、ロータ33を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電されるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・アシスト直進モード
このアシスト直進モードは、次の条件(c)および(d)が成立しているときに選択される。
(c)バッテリ44の充電状態が第2所定値(<第1所定値)よりも大きいとき
(d)要求動力が最良燃費範囲よりも大きい側にあるとき
これにより、アシスト直進モードは、バッテリ44の電力が十分にあり、過放電にならないときで、かつ、要求動力がエンジン3の最良燃費動力よりも大きいときに選択される。以下、アシスト直進モードにおける動作について、通常直進モードと異なる点を中心に説明する。
アシスト直進モード中、エンジン3の動力を、要求動力よりも小さな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力に加え、バッテリ44の電力を、第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給によって補われる。また、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、アシスト直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、バッテリ44からの電力(エネルギ)とエンジン3の動力の和と等しくなる。また、アシスト直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図11と同様である。
アシスト直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、充電直進モードと同様、第3回転機発電トルクTG3とエンジントルクTENGの関係が、前記式(17)で表されることと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機31で発電する電力は、前記式(19)が成立するように制御される。また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3回転機回転数NM3は、前記式(16)が成立するように制御される。
さらに、アシスト直進モード中、充電直進モードと同様、図11に示すようなトルクの関係が成立し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御する。以上から、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2に関する前記式(25)および(26)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。
さらに、要求トルクTREQのうち、バッテリ44からの電力供給によるアシストトルクに対応する分を、アシスト対応トルクTREQ_Aとし、エンジントルクTENGに対応する分を、エンジン対応トルクTREQ_0とすると、これらのトルクの間に、次式(27)が成立する。
TREQ=TREQ_0+TREQ_A ……(27)
また、第3回転機31で発電した電力を第1および第2の回転機11,12に供給することで第1および第2の回転機11,21で発生するトルクをそれぞれ、第1トルクTM1_0および第2トルクTM2_0とし、バッテリ44からの電力供給により第1および第2の回転機11,21で発生するトルクをそれぞれ、第1アシストトルクTA1および第2アシストトルクTA2とする。第1回転機トルクTM1、第1トルクTM1_0および第1アシストトルクTA1の間に、次式(28)が成立するとともに、第2回転機トルクTM2、第2トルクTM2_0および第2アシストトルクTA2の間に、次式(29)が成立する。
TM1=TM1_0+TA1 ……(28)
TM2=TM2_0+TA2 ……(29)
さらに、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(25)から明らかなように、第1トルクTM1_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(30)が成立する。また、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(26)から明らかなように、第2トルクTM2_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(31)が成立する。
TM1_0=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ_0/2+(G2・G3+G3)G4・TEOBJ/(1+G4)}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(30)
TM2_0=-{(2・G1+1+G3)TREQ_0/2+(G1+1)G4・TEOBJ/(1+G4)}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(31)
以上の式(25)、(27)、(28)および(30)から、次式(32)が得られるとともに、式(26)、(27)、(29)および(31)から、次式(33)が得られる。また、アシスト対応トルクTREQ_Aは、次式(34)で表される。
TA1=-(2・G2・G3+G3+1)TREQ_A/2(G2・G3+G3+1+G1) ……(32)
TA2=-(2・G1+1+G3)TREQ_A/2(G2・G3+G3+1+G1) ……(33)
TREQ_A=TREQ+TEOBJ・NEOBJ/NWFL ……(34)
上記の式(32)および(34)から、第1アシストトルクTA1は、次式(35)で表され、式(33)および(34)から、第2アシストトルクTA2は、次式(36)で表される。したがって、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、これらの式(35)および(36)がそれぞれ成立するように制御される。
TA1=-(2・G2・G3+G3+1)(TREQ+TEOBJ・NEOBJ/NWFL)/2(G2・G3+G3+1+G1)
……(35)
TA2=-(2・G1+1+G3)(TREQ+TEOBJ・NEOBJ/NWFL)/2(G2・G3+G3+1+G1)
……(36)
なお、上述したアシスト直進モード中における第1〜第3の回転機11〜31の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NM3=(G4+1)NEOBJ−G4・NWFL>0で、NEOBJ>G4・NWFL/(G4+1)が成立している場合に行われる。
一方、NEOBJ<G4・NWFL/(G4+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まるロータ33の回転方向が逆転方向の場合において、要求トルクTREQが小さいときには、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力とバッテリ44の電力の双方を、第3回転機31に供給し、ロータ33を逆転させる。また、要求トルクTREQが大きいときには、第1〜第3の回転機11〜31に電力を供給し、ロータ13,23を正転させるとともに、ロータ33を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44からの電力供給によって補われるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・ENG旋回モード
このENG旋回モードは、エンジン3の動力を用いた車両Vの旋回中に、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させることによって、旋回アシストを行う動作モードである。なお、車両Vの旋回中か否かの判定は、操舵角θstおよびヨーレートγに応じて行われる。ENG旋回モードには、左右の前輪WFL,WFRに、車両Vの右旋回中に小さな旋回アシスト力を作用させる第1右旋回アシストモードと、大きな旋回アシスト力を作用させる第2右旋回アシストモードが含まれる。まず、第1右旋回アシストモードについて説明する。
・第1右旋回アシストモード
この第1右旋回アシストモード中、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。このようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。また、これらの左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQは、車速、アクセル開度AP、操舵角θstおよびヨーレートγに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップでは、基本的には、左前輪要求トルクTLREQは、右前輪要求トルクTRREQよりも大きな値に設定されている。
以上により、第1右旋回アシストモード中、左前輪伝達トルクTWLTが右前輪伝達トルクTWRTよりも大きくなり、その結果、小さな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左右の前輪伝達動力が要求動力になり、この場合における要求動力は、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まるものである。
以下、第1右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図12のように表される。同図に示すように、通常、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的大きく、それにより、両者の関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的低いことと、第4リングギヤR4の回転数がエンジン回転数NEよりも高くなることによって、両者の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1および第3の回転機11,31に電力を供給し、ロータ13および33をそれぞれ、正転および逆転させる。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行うとともに、発電した電力を第1および第3の回転機11,31にさらに供給する。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図12のように表される。
図12から明らかなように、エンジントルクTENGは、第4キャリアC4に伝達され、第4キャリアC4に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機トルクTM3を反力として、第4リングギヤR4に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。すなわち、エンジン3の動力と第3回転機31の動力は、合成され、第3要素に伝達される。また、エンジン3および第3回転機31から第3要素に伝達された動力の一部と、電力の供給に伴って第1回転機11から第1要素に伝達された動力の一部は、第5要素を介して、第2回転機21に伝達され、その結果、第2回転機21のロータ23が逆転する。このため、上記の第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転機21の制動トルク(以下「第2回転機発電トルク」という)TG2は、ロータ23とともに逆転する第5要素の回転数を低下させるように作用する。
また、第1回転機11への電力供給に伴って第1要素に伝達された第1回転機トルクTM1と、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tと、第5要素に伝達された第2回転機発電トルクTG2は、第2および第4の要素をそれぞれ介して、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、図12から明らかなように、第1回転機回転数NM1と、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、次式(37)で表される。したがって、この式(37)が成立するように、第1回転機回転数NM1は制御される。
NM1={(G1+1+G3)NWFL−G1・NWFR}/(1+G3)
……(37)
また、図12から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。それに加え、この場合、充電直進モードと同様、第3要素伝達トルクT3Tが前記式(22)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御することから、第1回転機トルクTM1は次式(38)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(38)が成立するように制御される。
TM1=-{(G2・G3+G3+1)TLREQ+(G2・G3+G3)G4・TEOBJ/(1+G4)+G2・G3・TRREQ}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(38)
さらに、図12から明らかなように、第2回転機回転数NM2と左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、次式(39)で表される。したがって、第2回転機回転数NM2は、この式(39)が成立するように制御される。
NM2={(G2・G3+1+G3)NWFR−G2・G3・NWFL}
/(1+G3) ……(39)
また、図12から明らかなように、第2回転機発電トルクTG2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、次式(40)で表される。
(G1+1+G3+G2・G3)TG2+(G1+1+G3)TWRT
+(G1+1)T3T+G1・TWLT=0 ……(40)
この式(40)と、第3要素伝達トルクT3Tが式(22)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御することから、第2回転機発電トルクTG2は、次式(41)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(41)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)TRREQ+(G1+1)G4・TEOBJ/(1+G4)+G1・TLREQ}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(41)
さらに、図12から明らかなように、第3回転機トルクTM3とエンジントルクTENGの関係は、次式(42)で表される。
TM3=−TENG/(1+G4) ……(42)
この場合、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機トルクTM3は次式(43)で表される。したがって、第3回転機31に供給する電力は、この式(43)が成立するように制御される。
TM3=−TEOBJ/(1+G4) ……(43)
さらに、第3回転機回転数NM3は、通常直進モードと同様、前記式(16)が成立するように制御される。
また、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21に電力を供給し、そのロータ23を正転させるとともに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(37)において第2回転機発電トルクTG2を第2回転機トルクTM2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第1右旋回アシストモード中でかつ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に(第2回転機21のロータ23が正転する場合には、第1および第2の回転機11,21に)供給する。この場合、第3回転機31で発電する電力は、第3回転機発電トルクTG3に関する前記式(19)が成立するように制御される。
次に、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図13のように表される。同図に示すように、この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的小さいため、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的高いことによって、第4リングギヤR4の回転数とエンジン回転数NEの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、基本的には、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。さらに、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力が、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まる要求動力に対して余るときには、その余剰分は、第3回転機31での発電により電力としてバッテリ44に充電されることで、消費される。逆に、不足するときには、その不足分は、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給することで、補われる。以上により、左右の前輪伝達動力は、要求動力になるように制御される。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図13のように表される。また、この場合における各種の回転要素におけるトルク(動力)の伝達は、図13と前述した図11との比較から明らかなように、通常直進モードの場合と同様に行われ、それにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、図13と前述した低車速走行中の図12との比較から明らかなように、第1回転機回転数NM1は、前記式(37)が成立するように制御されるとともに、第1回転機11に供給する電力は、第1回転機トルクTM1に関する前記式(38)が成立するように制御される。
また、第2回転機回転数NM2は、前記式(39)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(41)における第2回転機発電トルクTG2を第2回転機トルクTM2に置き換えた次式(44)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)TRREQ+(G1+1)G4・TEOBJ/(1+G4)+G1・TLREQ}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(44)
また、第3回転機回転数NM3は、前記式(16)が成立するように制御されるとともに、第3回転機31で発電する電力は、第3回転機発電トルクTG3に関する前記式(19)が成立するように制御される。
以上の第1〜第3の回転機11〜31の制御において、エンジン3の動力の一部を用いて第3回転機31で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する場合には、エンジン3の動力が、第1〜第4の遊星歯車装置PS1〜PS4、および第1〜第3の回転機11〜31を介して、左右の前輪WFL,WFRに分配され、左前輪WFLに分配されるエンジン3の動力は、右前輪WFRのそれよりも大きくなる。
・第2右旋回アシストモード
この第2右旋回アシストモード中、左右の前輪WFL,WFRの間に大きなトルク差を発生させ、大きな旋回アシスト力を生じさせるために、第1右旋回アシストモードとは異なり、右前輪WFRには、駆動力を作用させずに、制動力を作用させる。また、基本的には、第1右旋回アシストモードと同様、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。
さらに、第2右旋回アシストモード中、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左前輪伝達トルクTWLTを前述した左前輪要求トルクTLREQになるように制御し、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。また、この右前輪要求制動トルクBRREQは、車速、アクセル開度AP、操舵角θstおよびヨーレートγに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。
以上により、第2右旋回アシストモード中、左前輪WFLには駆動力が、右前輪WFRには制動力が、それぞれ作用し、その結果、大きな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左前輪WFLに伝達される動力と、右前輪WFRに作用する制動力との差が、要求動力になる。
以下、第2右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図14のように表される。同図に示すように、前述した図12の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第4リングギヤR4の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1〜第3の回転機11〜31に電力を供給し、ロータ13を正転させるとともに、ロータ23,33をいずれも逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図14のように表される。同図において、TWRは、右前輪WFLから受けるトルク(以下「右前輪トルク」という)である。
図14から明らかなように、前述した図12の場合と同様、エンジントルクTENGは、第4キャリアC4に伝達され、第4キャリアC4に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機トルクTM3を反力として、第4リングギヤR4に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。すなわち、エンジン3の動力と第3回転機31の動力は、合成され、第3要素に伝達される。また、第1回転機11への電力供給に伴って発生した第1回転機トルクTM1は、第1要素に伝達され、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2回転機21への電力供給に伴って発生した第2回転機トルクTM2は、第5要素に伝達され、左前輪WFLに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、第1〜第3の回転機回転数NM1〜NM3は、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(37)、(39)および(16)がそれぞれ成立するように制御される。また、第3回転機31に供給する電力も、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(43)が成立するように制御される。
さらに、図14から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左前輪伝達トルクTWLTと、右前輪トルクTWRと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、次式(45)で表される。
(G2・G3+G3+1+G1)TM1+(G2・G3+G3+1)TWLT
+(G2・G3+G3)T3T+G2・G3・TWR=0 ……(45)
この場合、上述したように、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御するとともに、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御する。また、右前輪WFRから第4要素に右前輪トルクTWRが伝達されており、そのことは、第4要素から右前輪WFRに制動力が作用していることと同じである。さらに、第3要素伝達トルクT3Tは、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(22)で表される。以上のことと、上記の式(45)から、第1回転機トルクTM1は次式(46)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(46)が成立するように制御される。
TM1=-{(G2・G3+G3+1)TLREQ+G2・G3・BRREQ+(G2・G3+G3)G4・TEOBJ/(1+G4)}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(46)
同様に、第2回転機トルクTM2は次式(47)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、次式(47)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・TLREQ+(G1+1)G4・TEOBJ/(1+G4)}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(47)
また、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第3の回転機11,31に供給する。この場合、第2回転機21で発電する電力は、上記の式(47)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に(第2回転機21のロータ23が正転する場合には、第1回転機11のみに)供給する。この場合、第3回転機31で発電する電力は、前記式(19)が成立するように制御される。
次に、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図15のように表される。同図に示すように、高車速走行中における右旋回時、前述した図13の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第4リングギヤR4の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行う。さらに、第2および第3の回転機21,31で発電した電力を、基本的には、第1回転機11に供給し、そのロータ13を正転させる。また、この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図15のように表される。
図15から明らかなように、前述した図11に示す通常直進モードの場合と同様、エンジントルクTENGは、第4キャリアC4に伝達され、第4キャリアC4に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第4リングギヤR4に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。すなわち、エンジン3の動力は、第3回転機31と第3要素に分配される。また、エンジン3から第3要素に伝達された動力の一部は、第5要素を介して、第2回転機21に伝達され、その結果、第2回転機21のロータ23が正転する。このため、上記の第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転機発電トルクTG2は、ロータ23とともに正転する第5要素の回転数を低下させるように作用する。
また、第1回転機11への電力供給に伴って発生した第1回転機トルクTM1は、第1要素に伝達され、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2回転機発電トルクTG2は、第5要素に伝達され、左前輪WFLに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合、図15と前述した図14との比較から明らかなように、第1〜第3の回転機回転数NM1〜NM3は、前記式(37)、(39)および(16)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1回転機11に供給する電力は、第1回転機トルクTM1に関する前記式(46)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21で発電する電力は、前記式(47)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えた次式(48)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・TLREQ+(G1+1)G4・TEOBJ/(1+G4)}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(48)
また、第3回転機31で発電する電力は、前記式(19)が成立するように制御される。
さらに、前述したように、第2右旋回アシストモード中には、左前輪WFLに駆動力を作用させるとともに、右前輪WFRに制動力を作用させる。このため、左前輪要求トルクTLREQが比較的大きく、左前輪WFLに作用する駆動力が大きい場合には、車両Vがオーバーステア状態になるおそれがあり、これを回避するために、第2右旋回アシストモードは選択されない。
一方、車両Vの左旋回中には、左旋回アシスト力を生じさせる第1および第2の左旋回アシストモードが選択される。これらの第1および第2の左旋回アシストモードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、上述した第1および第2の右旋回アシストモードと同様に行われるので、その詳細な説明については省略する。なお、第1および第2の左右の旋回アシストモード中、バッテリ44の充電・放電が行われる場合があるため、各モードの選択の可否は、バッテリ44の過充電・過放電を防止するために、バッテリ44の充電状態に応じて決定される。
・ENG後進モード
このENG後進モードは、エンジン3の運転中に車両Vを後進させる動作モードである。ENG後進モード中、基本的には、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを後進させる。ENG後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図16のように表される。この場合、エンジン3の動力を増大させるとともに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、第3回転機31で発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、それらのロータ13,23を逆転させる。これにより、図16から明らかなように、電力の供給に伴って発生した第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、第1および第5の要素にそれぞれ伝達され、第1要素と第5要素に伝達されたトルクは、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。その結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが逆転方向に上昇し、ひいては、車両Vが後方に発進する。
また、ENG後進モード中、図16に示すように、第3回転機31のロータ33が正転するため、第4キャリアC4に伝達されたエンジントルクTENGの一部が、第3回転機31での発電に伴って発生した第3回転機発電トルクTG3を反力として、第4リングギヤR4に伝達され、さらに、第3要素に伝達され、ひいては、左右の前輪WFL,WFRを正転させるように作用する。このため、車両Vの後進を支障なく行うべく、第3回転機31で発電する電力は、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2が、第3回転機発電トルクTG3により定まる第3要素伝達トルクT3Tを上回るように、制御される。
さらに、この場合、第1および第2の回転機11,21は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように、制御される。具体的には、図16から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。また、上述した各種の要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第3要素伝達トルクT3Tは、前記式(7)で表される。
これらの式(5)および(7)と、上述したように、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1回転機トルクTM1は前記式(8)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(8)が成立するように制御される。同様に、第2回転機トルクTM2は前記式(10)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(10)が成立するように制御される。
また、ENG後進モード中、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、車両Vが直進しているときには、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御され、車両Vが旋回しているときには、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)がそれぞれ成立するように制御される。さらに、第3回転機回転数NM3は、前記式(11)が成立するように制御される。また、第3回転機31で発電した電力のみでは不足する場合には、バッテリ44の電力が、第1および第2の回転機11,21に供給される。
さらに、ENG後進モード中、第4遊星歯車装置PS4の機能から明らかなように、エンジン3に作用する負荷は、第3回転機発電トルクTG3が大きいほどより大きくなる。このため、停車中の車両Vを後方に発進させる場合には、エンジンストールを防止するために、第3回転機発電トルクTG3を漸増させる。
・減速運転モード
この減速運転モードは、車両Vの減速走行中、すなわち、アクセル開度APがほぼ値0で、車両Vが惰性で走行しているときに選択される動作モードである。減速運転モード中、エンジン3への燃料の供給を停止するフューエルカットが行われる。また、減速運転モード中には、車両Vの直進中に選択される「減速直進モード」と、車両Vの旋回中に選択される「減速旋回モード」が含まれる。まず、減速直進モードについて説明する。
・減速直進モード
この減速直進モード中、車両Vの慣性エネルギを用いて、第1〜第3の回転機11〜31で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。また、減速直進モードは、バッテリ44の過充電を防止するために、バッテリ44の充電状態が第1所定値よりも小さいときに選択される。減速直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図17のように表される。同図において、TWLは、左前輪WFLから受けるトルク(以下「左前輪トルク」という)であり、TG1は、第1回転機11での発電に伴って発生した第1回転機11の制動トルク(以下「第1回転機発電トルク」という)である。
図17から明らかなように、減速直進モード中、第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2はそれぞれ、第1および第5の要素に伝達され、第1および第5の要素の回転数を低下させるように作用する。また、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2は、第3要素に後述するように伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第3要素および第4遊星歯車装置PS4を介して、第3回転機31に伝達され、第4リングギヤR4の回転数とエンジン回転数NEの関係から、第3回転機31のロータ33は逆転する。このため、第3回転機発電トルクTG3は、第4キャリアC4に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第4リングギヤR4の回転数を低下させるように作用する。その結果、第3要素には、第4リングギヤR4を介して、第3回転機発電トルクTG3に基づく制動トルクが作用する。
また、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、要求制動トルクBREQになるように制御する。これにより、車両Vを、その良好な直進性を確保しながら、減速させることができる。この要求制動トルクBREQは、検出されたブレーキペダル踏込量BPに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。
さらに、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31の制御によって、エンジン回転数NEを非常に低い所定回転数NELになるように制御する。これにより、クランク軸3aを回転させることによる損失が抑えられるので、第1〜第3の回転機11〜31で発電し、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。また、減速走行中、エンジン回転数NEが高いと、エンジン3の吸気・排気動作によって、多量の新気がエンジン3の排気管に導入され、それにより、排気管に設けられた排ガス浄化用の触媒(いずれも図示せず)の温度が急激に低下し、触媒が不活性状態になり、ひいては、減速直後のエンジン3の運転の再開時、排ガスを触媒で十分に浄化できなくなってしまう。これに対して、本実施形態によれば、減速直進モード中、上述したようにエンジン回転数NEを所定回転数NELになるように制御するので、排気管への新気の導入を抑えることができ、それにより、触媒が活性状態に維持され、したがって、減速直後のエンジン3の運転の再開時、排ガスを触媒で十分に浄化することができる。
減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。また、図17から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、次式(49)で表される。
(G2・G3+G3+1+G1)TG1+(G2・G3+G3+1)TWL
+(G2・G3+G3)T3T+G2・G3・TWR=0 ……(49)
また、上述した各種の要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第3要素伝達トルクT3Tと第3回転機発電トルクTG3の間の関係は、前記式(7)で表される。これらの式(7)および(49)と、上述したように左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ要求制動トルクBREQになるように制御することから、第1回転機発電トルクTG1は次式(50)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(50)が成立するように制御される。
TG1=-{(2・G2・G3+G3+1)BREQ-(G2・G3+G3)G4・TG3}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(50)
同様に、第2回転機発電トルクTG2は次式(51)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(51)が成立するように制御される。
TG2=-{(2・G1+1+G3)BREQ-(G1+1)G4・TG3}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(51)
さらに、前述したようにエンジン回転数NEを所定回転数NELになるように制御することから、第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3は、次式(52)が成立するように制御される。
NM3=(G4+1)NEL−G4・NWFL ……(52)
・減速旋回モード
この減速旋回モードには、車両Vの減速走行中における右旋回時に選択される「減速右旋回モード」と、左旋回時に選択される「減速左旋回モード」が含まれる。これらのモードの動作は互いに同様に行われるので、以下、両者を代表して、減速右旋回モード中の動作についてのみ説明する。
・減速右旋回モード
この減速右旋回モード中、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに制動トルクを作用させるとともに、両者WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御する。この場合、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQはそれぞれ、車速、操舵角θst、ヨーレートγおよびブレーキペダル踏込量BPに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。これらのマップでは、同じ大きさの車速、操舵角θst、ヨーレートγおよびブレーキペダル踏込量BPに対し、左前輪要求制動トルクBLREQは、右前輪要求制動トルクBRREQよりも大きな値に設定されている。以上により、減速右旋回モード中、オーバーステアを抑制しながら、車両Vを安定的に旋回させることができる。
以下、減速右旋回モード中の動作について、まず、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図18のように表される。同図に示すように、この場合、前述した図12の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第4リングギヤR4の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、逆転方向になる。このような場合には、第1および第3の回転機11,31で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第2回転機21に供給するとともに、そのロータ23を逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図18のように表される。
図18から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1回転機発電トルクTG1は、第1要素に伝達され、第1要素の回転数を低下させるように作用し、第2回転機トルクTM2は、第5要素に伝達され、第5要素の回転数を逆転方向に上昇させるように作用する。また、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1回転機発電トルクTG1および第2回転機トルクTM2は、第3要素に後述するように伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、第2および第4要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、減速直進モードと同様、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、減速直進モードと同様、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第3回転機31に伝達され、第3回転機31のロータ33は逆転する。このため、第3回転機発電トルクTG3は、第4キャリアC4に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第4リングギヤR4の回転数を低下させるように作用する。その結果、第3要素には、第4リングギヤR4を介して、第3回転機発電トルクTG3に基づく制動トルクが作用する。
減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合、図18と図17の比較から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(49)で表される。また、この場合にも、第3要素伝達トルクT3Tと第3回転機発電トルクTG3の関係は、前記式(7)で表される。これらの式(7)および(49)と、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御することから、第1回転機発電トルクTG1は次式(53)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(53)が成立するように制御される。
TG1=-{(G2・G3+G3+1)BLREQ+G2・G3・BRREQ-(G2・G3+G3)G4・TG3}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(53)
同様に、第2回転機トルクTM2は次式(54)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(54)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ-(G2・G3+G3)G4・TG3}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(54)
また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
さらに、図18から明らかなように、第3回転機発電トルクTG3は、エンジン回転数NEを上昇させるように作用するので、第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3は、より大きな電力をバッテリ44に充電するとともに、触媒を活性状態に維持するために、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3を、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
次に、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図19のように表される。同図に示すように、この場合には、前述した図13の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第4リングギヤR4の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、正転方向になる。このような場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第3回転機31に供給するとともに、そのロータ33を正転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図19のように表される。
図19から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2はそれぞれ、第1および第5の要素に伝達され、第1および第5の要素の回転数を低下させるように作用する。また、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2は、第3要素に後述するように伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、第2および第4要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、この場合にも、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、第3回転機31のロータ33が正転するため、第3回転機トルクTM3は、第4キャリアC4に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第4リングギヤR4の回転数を低下させるように作用する。その結果、第3要素には、第4リングギヤR4を介して、第3回転機トルクTM3に基づく制動トルクが作用する。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、図19と図18の比較から明らかなように、第1回転機11で発電する電力は、前記式(53)において第3回転機発電トルクTG3を第3回転機トルクTM3に置き換えた次式(55)が成立するように制御される。
TG1=-{(G2・G3+G3+1)BLREQ+G2・G3・BRREQ-(G2・G3+G3)G4・TM3}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(55)
同様に、第2回転機21で発電する電力は、前記式(54)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えるとともに、第3回転機発電トルクTG3を第3回転機トルクTM3に置き換えた次式(56)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ-(G2・G3+G3)G4・TM3}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(56)
さらに、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
また、図19から明らかなように、第3回転機トルクTM3がエンジン回転数NEを上昇させるように作用することから、第3回転機31に供給する電力と、第3回転機回転数NM3は、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機31に供給する電力と、第3回転機回転数NM3を、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が、逆転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、バッテリ44に充電する。この場合における第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3の制御は、上述した手法によって行われ、その詳細な説明については省略する。
・EV発進モード
このEV発進モードは、エンジン3の停止中に、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを前方に発進させ、走行させる動作モードである。また、EV発進モードは、バッテリ44の充電状態が前述した第2所定値よりも大きく、バッテリ44が過放電にならないようなときに、選択される。また、EV発進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図20のように表される。EV発進モード中、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給するとともに、ロータ13,23を正転させる。この場合、図20から明らかなように、電力の供給に伴って発生した第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、第1および第5の要素にそれぞれ伝達され、第1要素と第5要素に伝達されたトルクは、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。
また、図20から明らかなように、EV発進モード中、第1および第2の回転機11,21の動力は、第3要素を介して、第4リングギヤR4に伝達され、さらに、第4プラネタリギヤP4を介して、第4サンギヤS4に伝達される。この場合、エンジン3のフリクションが第3回転機31のそれよりも大きいため、上記のような動力の伝達に伴って、第4サンギヤS4が、第3回転機31のロータ33とともに逆転する。それに伴い、第3回転機31で発電が行われていなくても、第3回転機31のステータ32において回転磁界が発生し、その場合には、それによる回転抵抗(以下「第3磁界回転抵抗」という)DM3が、ロータ33を介して第4サンギヤS4に作用する。この場合、この第3磁界回転抵抗DM3を反力として、第1および第2の回転機11,21から第4リングギヤR4に伝達された第4リングギヤ伝達トルクTR4が、第4キャリアC4を介してクランク軸3aに伝達され、エンジン回転数NEが上昇するおそれがある。
このため、EV発進モード中には、上記の第3磁界回転抵抗DM3を打ち消すように、第3回転機31に電力を供給し、ロータ33を逆転させる。この場合、第3回転機31に供給する電力は、第3回転機トルクTM3が第3磁界回転抵抗DM3と等しくなるように制御される。
また、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、車両Vの良好な直進性を得ることができる。この場合、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。
すなわち、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。また、図20から明らかなように、第1回転機トルクTM1と左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの関係は、次式(57)で表される。
(G2・G3+G3+1+G1)TM1+(G2・G3+G3+1)TWLT
+G2・G3・TWRT=0 ……(57)
上述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することと、この式(57)から、第1回転機トルクTM1は次式(58)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(58)が成立するように制御される。
TM1=−{(2・G2・G3+G3+1)TREQ/2}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(58)
同様に、第2回転機トルクTM2と左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの関係は、次式(59)で表される。
(G1+1+G3+G2・G3)TM2+(G1+1+G3)TWRT
+G1・TWLT=0 ……(59)
上述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することと、この式(59)から、第2回転機トルクTM2は次式(60)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(60)が成立するように制御される。
TM2=−{(2・G1+1+G3)TREQ/2}
/(G1+1+G3+G2・G3) ……(60)
また、EV発進モード中で且つ車両Vの旋回時、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力はそれぞれ、基本的には、上記の式(58)および(60)に基づいて制御される。この場合、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、ENG旋回モードと同様、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させてもよい。
・EV走行中ENG始動モード
このEV走行中ENG始動モードは、EV発進モード中で車両Vが走行しているときに、エンジン3を始動する動作モードであり、バッテリ44の充電状態が前述した第1所定値よりも小さくなったときに、選択される。EV走行中ENG始動モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図21のように表される。以下、EV走行中ENG始動モードにおける動作について、EV発進モードと異なる点を中心に説明する。
図21に示すように、EV走行中ENG始動モードでは、EV発進モードと同様、第1および第2の回転機11,21から第3回転機31に動力が伝達され、ロータ33が逆転する。この動力を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給し、両者11,21のロータ13,23を正転させる。これにより、第1および第2の回転機11,21から第4リングギヤR4に伝達された第4リングギヤ伝達トルクTR4は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第4キャリアC4に伝達され、さらに、クランク軸3aに伝達される。換言すれば、第4リングギヤR4に伝達された第1および第2の回転機11,21の動力が、クランク軸3aと第3回転機31に分配される。また、第3回転機回転数NM3を値0になるように制御し、それにより、第1および第2の回転機11,21から第3回転機31に分配される動力を減少させるとともに、クランク軸3aに分配される動力を増大させ、それにより、クランク軸3aが正転する。その状態で、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。
また、EV走行中ENG始動モードでは、前述した停車中ENG始動モードと同様、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTになるように、第3回転機回転数NM3を制御する。具体的には、第3回転機回転数NM3は、次式(61)が成立するように制御される。
NM3=(G4+1)NST−G4・NWFL ……(61)
この場合において、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが低いときには、第4リングギヤR4の回転数と始動時用回転数NSTの関係によって定まる第4サンギヤS4の回転方向が正転方向になる場合がある。その場合には、バッテリ44から第3回転機31に電力を供給するとともに、そのロータ33を正転させ、第3回転機回転数NM3を制御することによって、エンジン回転数NEを始動時用回転数NSTになるように制御する。したがって、EV走行中ENG始動モードでは、停車中ENG始動モードと同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
さらに、図21から明らかなように、第3回転機発電トルクTG3(または第3回転機トルクTM3)は、左右の前輪WFL,WFRに対し、制動トルクとして作用する。このため、EV走行中ENG始動モードでは、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの急減を防止し、良好なドライバビリティを確保するために、第3回転機31で発電する電力(第3回転機31に供給する電力)は、第3回転機発電トルクTG3(第3回転機トルクTM3)が漸増するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが直進しているときには、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。すなわち、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。
さらに、この場合、図21から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。また、第3要素伝達トルクT3Tと第3回転機発電トルクTG3の関係は、前記式(7)で表される。これらの式(5)および(7)と、EV発進モードと同様、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1回転機トルクTM1は前記式(8)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(8)が成立するように制御される。同様に、第2回転機トルクTM2は前記式(10)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(10)が成立するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが旋回しているときには、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(33)および(35)が成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力はそれぞれ、基本的には、上記の式(8)および(10)に基づいて制御される。この場合、ENG旋回モードと同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに左右の旋回アシスト力を作用させてもよい。
・EV後進モード
このEV後進モードは、エンジン3の停止中に、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを後方に発進させ、走行させる動作モードである。また、EV後進モードは、EV発進モードと同様、バッテリ44の充電状態が前述した第2所定値よりも大きく、バッテリ44が過放電にならないようなときに、選択される。また、EV後進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図22のように表される。同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したEV発進モードを示す図20における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、EV後進モード中、第1〜第3の回転機11〜31の制御は、ロータ13および23を逆転させるとともに、ロータ33を正転させる以外は、EV発進モードと同様に行われる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、車両Vおよび左右の前輪WFL,WFRが、本発明における輸送機関および左右の被駆動部にそれぞれ相当し、エンジン3およびクランク軸3aが、本発明における原動機および出力部にそれぞれ相当する。また、ロータ13,23,33が、本発明における第1〜第3のロータにそれぞれ相当する。さらに、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3が、本発明における差動装置に相当し、第1サンギヤS1が本発明における第1要素に、第1キャリアC1および第3リングギヤR3が、本発明における第2要素に、それぞれ相当する。また、第1リングギヤR1、第2リングギヤR2および第3キャリアC3が、本発明における第3要素に相当し、第2キャリアC2および第3サンギヤS3が、本発明における第4要素に、第2サンギヤS2が本発明における第5要素に、それぞれ相当する。
さらに、第1遊星歯車装置PS1が、本発明における第1差動装置に相当し、第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1が、本発明における第1〜第3のメンバに、それぞれ相当する。また、第3遊星歯車装置PS3が、本発明における第2差動装置に相当し、第3リングギヤR3、第3キャリアC3および第3サンギヤS3が、本発明における第4〜第6のメンバにそれぞれ相当する。さらに、第2遊星歯車装置PS2が、本発明における第3差動装置に相当し、第2リングギヤR2、第2キャリアC2および第2サンギヤS2が、本発明における第7〜第9のメンバにそれぞれ相当する。また、第4遊星歯車装置PS4が、本発明における第4差動装置に相当し、第4サンギヤS4、第4キャリアC4および第4リングギヤR4が、本発明における第10〜第12のメンバにそれぞれ相当する。さらに、バッテリ44が、本発明における蓄電装置に相当する。
以上のように、本実施形態によれば、第1〜第5の要素は、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成されている。また、第1要素が第1回転機11のロータ13に、第2要素が左前輪WFLに、それぞれ機械的に連結(直結)されている。さらに、第3要素が第4リングギヤR4および第4キャリアC4を介して、クランク軸3aに機械的に連結されており、第4要素が右前輪WFRに、第5要素が第2回転機21のロータ23に、それぞれ機械的に連結(直結)されている。また、第3回転機31のロータ33が、第4サンギヤS4および第4キャリアC4を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。さらに、第1回転機11のステータ12と第3回転機31のステータ32、および、第2回転機21のステータ22と第3回転機31のステータ32はそれぞれ、互いに電気的に接続されている。
さらに、図12〜図15を用いて説明したように、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させ、車両Vの左右の旋回アシストを行うことができる。この場合、左右の前輪WFL,WFRに連結された第2および第4の要素が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の前輪WFL,WFRの回転(回転数・トルク)を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。また、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3の間の連結によって、第1〜第5の要素を適切に構成することができる。さらに、図11などを用いて説明したように、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができ、エンジン回転数NEを、より良好な燃費が得られる目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するので、動力装置1の効率を高めることができる。
また、充電および放電可能なバッテリ44が、第1〜第3の回転機11〜31に電気的に接続されており、充電直進モードなどで説明したように、エンジン3の動力を最良燃費動力に制御するとともに、要求動力に対するエンジン3の動力の余剰分が、電力としてバッテリ44に充電される。さらに、アシスト直進モードなどで説明したように、要求動力に対するエンジン3の動力の不足分が、バッテリ44に充電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給することで補われる。以上により、エンジン3の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置1の効率をさらに高めることができる。
なお、上述した第1実施形態では、本発明における第10および第12のメンバはそれぞれ、第4リングギヤR4および第4サンギヤS4であるが、これとは逆に、第4サンギヤS4および第4リングギヤR4でもよい。すなわち、第4リングギヤR4を第3回転機31のロータ33に、第4サンギヤS4を第3要素(第1リングギヤR1、第2リングギヤR2、第3キャリアC3)に、それぞれ連結(直結)してもよい。
次に、図23を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置1Aについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Aは、第1実施形態と比較して、第4遊星歯車装置PS4に代えて、エンジン3の動力を変速して第3要素に伝達するための変速装置71を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Aについて、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図23に示す変速装置71は、ギヤ式の有段自動変速装置であり、入力軸(図示せず)および出力軸72と、これらの入力軸および出力軸72に設けられた複数の遊星歯車装置と、入力軸と出力軸72の間を接続・遮断する摩擦式のクラッチ(いずれも図示せず)を有している。変速装置71では、前進用の第1速、第2速および第3速と後進用の1つの変速段から成る計4つの変速段が設定されており、上記のクラッチの接続中、入力軸に入力された動力は、これらの4つの変速段の1つの変速比により変速された状態で、出力軸72に出力される。また、図24に示すように、変速装置71はECU2に接続されており、その変速段の変更やクラッチの接続・遮断動作は、ECU2によって制御される。
また、図23に示すように、動力装置1Aでは、第1実施形態と異なり、第3回転機31のロータ33は、フライホイールを介してクランク軸3aに機械的に直結されており、変速装置71の入力軸は、ロータ33と一体になっており、クランク軸3aに機械的に直結されている。また、変速装置71の出力軸72には、ギヤ73が一体に設けられており、このギヤ73は、前述したアイドラギヤ8に噛み合っている。以上のように、前述した第3要素、すなわち、第1および第2のリングギヤR1,R2と第3キャリアC3は、ギヤ7a、アイドラギヤ8、ギヤ73および変速装置71を介して、クランク軸3aに機械的に連結されており、第3回転機31のロータ33は、クランク軸3aに機械的に直結されている。
以上の構成の動力装置1Aでは、図23と前述した図2との比較から明らかなように、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3と、左右の前輪WFL,WFRと、第1および第2の回転機11,21の連結関係は、第1実施形態とまったく同じである。一方、第1実施形態と異なり、クランク軸3aおよび第3回転機31のロータ33は、互いに直結されており、エンジン回転数NEと第3回転機回転数NM3は、互いに等しい。また、変速装置71の出力軸72は、ギヤ73やアイドラギヤ8、ギヤ7aを介して、第3要素に連結されており、第3要素の回転数と変速装置71の出力軸72の回転数は、これらのギヤ73,7aによる変速を無視すれば、互いに等しい。以上から、動力装置1Aにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図25のように表される。以下、動力装置1Aの各種の動作について、同図に示すような速度共線図を参照しながら説明する。
動力装置1Aの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。これらの動作モードにおける各種の制御動作は、第1実施形態と同様、前述した各種のセンサ51〜63からの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。以下、これらの動作モードについて、停車中ENG始動モードから順に、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
・停車中ENG始動モード
停車中ENG始動モードでは、変速装置71のクラッチにより入力軸と出力軸72の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよび第3回転機31のロータ33と第3要素との間を遮断する。その状態で、第3回転機31に電力を供給し、ロータ33をクランク軸3aとともに正転させる。この場合、第3回転機回転数NM3を、エンジン回転数NEが前述した始動時用回転数NSTになるように制御し、その状態で、クランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、第1実施形態と同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
また、この場合、上述したクラッチによるロータ33と第3要素の間の遮断によって、第3回転機31の動力は、左右の前輪WFL,WFRには伝達されない。それに加え、第1および第2の回転機11,21を例えば相関短絡させることによって、両者11,21のロータ13,23に静止状態に保持するようなトルクを発生させ、それにより、左右の前輪WFL,WFRを静止状態に保持する。以上により、図25に示すように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが値0に保持され、車両Vが静止状態に保持される。なお、停車中、エンジン3が運転しているときには、変速装置71のクラッチによってクランク軸3aと左右の前輪WFL,WFRの間を遮断し、それにより、エンジン3の動力は、左右の前輪WFL,WFRに伝達されず、また、上述した第1および第2の回転機11,21の制御によって、左右の前輪WFL,WFRを静止状態に保持する。
・ENG発進モード
ENG発進モード中、エンジン3の動力を増大させるとともに、その一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、それらのロータ13,23を正転させる。さらに、停車中ENG始動モードで述べたようにそれまで遮断されていた変速装置71のクラッチを、徐々に接続することによって、クランク軸3aと第3要素の間を徐々に接続する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図26のように表される。
図26から明らかなように、ENG発進モード中、エンジン3から変速装置71を介して第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tと、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。この場合、上述したように、変速装置71のクラッチにより、クランク軸3aと第3要素の間を徐々に接続するので、エンジン3から左右の前輪WFL,WFRに伝達される左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTを漸増させることができる。したがって、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRからエンジン3に急激に大きな負荷が作用するのを防止でき、エンジンストールを発生させることなく、車両Vを発進させることができる。
また、ENG発進モード中、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2を、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように、前記式(4)が成立するように制御する。また、第1および第2の回転機11,21に供給する電力を、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御する。以上により、車両Vの良好な直進性を得ることができる。
以下、この場合における第1〜第3の回転機11〜31の制御について、具体的に説明する。図26と前述した図10との比較から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表されることから、第1回転機トルクTM1は次式(62)で表される。
TM1=-{TREQ(2・G2・G3+G3+1)/2+(G2・G3+G3)T3T}/(G2・G3+G3+1+G1) ……(62)
また、上述したように、変速装置71のクラッチにより、クランク軸3aと第3要素の間を徐々に接続することから、エンジン3から第3要素に伝達される第3要素伝達トルクT3Tは、漸増する。このため、第3要素伝達トルクT3Tを算出するとともに、算出した第3要素伝達トルクT3Tに応じ、上記の式(62)が成立するように、第1回転機11に供給する電力を制御する。第3要素伝達トルクT3Tは、エンジン3のスロットル弁の開度、変速装置71の変速比、およびクラッチの接続度合に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。
さらに、第2回転機トルクTM2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(9)で表されることから、第2回転機トルクTM2は次式(63)で表される。
TM2=-{TREQ(2・G1+1+G3)/2+(G1+1)T3T}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(63)
したがって、第2回転機21に供給する電力は、算出した第3要素伝達トルクT3Tに応じ、この式(63)が成立するように制御される。
・ENG直進モード
ENG直進モードでは、第1実施形態と同様、通常直進モード、充電直進モードおよびアシスト直進モードが、要求動力に応じて選択される。以下、これらの運転モードについて、通常直進モードから順に説明する。
・通常直進モード
通常直進モードでは、エンジン3の動力を要求動力になるように制御し、ENG発進モードと同様、エンジン3から第3回転機31に伝達される動力の一部を用いて発電を行うとともに、発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図26と同様に表される。この場合にも、ENG発進モードの場合と同様、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tは、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機トルクTM1,TM2とともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
また、通常直進モードでは、変速装置71の変速比を、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、制御する。この場合、目標エンジン回転数NEOBJは、車速および要求トルクTREQに応じ、第1実施形態とは異なる所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップは、変速装置71の変速比、目標エンジン回転数NEOBJ、車速、および要求トルクTREQの間の関係を、実験によりあらかじめ求め、マップ化したものである。さらに、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、左右の前輪伝達動力(左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和)は、エンジン3の動力と等しくなる。
・充電直進モード
充電直進モード中、第1実施形態と同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも大きな最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置71の変速比を、通常直進モードと同様に制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行い、発電した電力の一部をバッテリ44に充電するとともに、残りを第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電される。また、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、通常直進モードと同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。
以上により、充電直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、この左右の前輪伝達動力と、バッテリ44に充電される電力(エネルギ)との和は、エンジン3の動力と等しくなる。また、充電直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図26と同様である。
・アシスト直進モード
アシスト直進モード中、第1実施形態と同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも小さな最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置71の変速比を通常直進モードと同様に制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力に加え、バッテリ44の電力を、第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給によって補われる。また、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。
以上により、アシスト直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、バッテリ44からの電力(エネルギ)とエンジン3の動力の和と等しくなる。また、アシスト直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図26と同様である。
・ENG旋回モード
ENG旋回モードには、第1実施形態と同様、第1および第2の右旋回アシストモードが含まれる。まず、第1右旋回アシストモードについて説明する。
・第1右旋回アシストモード
第1右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置71の変速比を通常直進モードと同様に制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御する。前述したように、左前輪要求トルクTLREQは、右前輪要求トルクTRREQよりも大きな値に設定されている。
以上により、第1右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、左前輪伝達トルクTWLTが右前輪伝達トルクTWRTよりも大きくなり、その結果、小さな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左右の前輪伝達動力が要求動力になる。
以下、第1右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図27のように表される。同図に示すように、前述した図12の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。
このような場合には、基本的には、第2および第3の回転機21,31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に供給し、そのロータ13を正転させる。この場合、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力が、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まる要求動力に対して余るときには、その余剰分は、第2および第3の回転機21,31で発電した電力をバッテリ44に充電することで、消費される。逆に、不足するときには、その不足分は、バッテリ44から第1回転機11に電力をさらに供給することで、補われる。それでも不足する場合には、その不足分は、第3回転機31で発電を行わずに、バッテリ44からの電力供給により第3回転機31から動力を出力することで、補われる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図27のように表される。
図27から明らかなように、エンジン3(および第3回転機31)から第3要素に伝達された動力の一部と、電力の供給に伴って第1回転機11から第1要素に伝達された動力の一部は、第5要素を介して、第2回転機21に伝達され、その結果、第2回転機21のロータ23が逆転する。このため、第1実施形態と同様、上記の第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転機発電トルクTG2は、ロータ23とともに逆転する第5要素の回転数を低下させるように作用する。また、第1要素に伝達された第1回転機トルクTM1と、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tと、第5要素に伝達された第2回転機発電トルクTG2は、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
また、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21に電力を供給し、そのロータ23を正転させる。
次に、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図28のように表される。同図に示すように、この場合、前述した図13の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的小さいため、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。
このような場合には、基本的には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。さらに、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力が要求動力に対して余るときには、その余剰分は、第3回転機31で発電した電力をバッテリ44に充電することで、消費される。逆に、不足するときには、その不足分は、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給することで、補われる。それでも不足する場合には、その不足分は、第3回転機31で発電を行わずに、バッテリ44からの電力供給により第3回転機31から動力を出力することで、補われる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図28のように表される。
図28から明らかなように、エンジン3(および第3回転機31)から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tは、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機トルクTM1,TM2とともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、エンジン3の動力の一部を用いて第3回転機31で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する場合には、エンジン3の動力が、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3、および第1〜第3の回転機11〜31を介して、左右の前輪WFL,WFRに分配され、左前輪WFLに分配されるエンジン3の動力は、右前輪WFRのそれよりも大きくなる。
・第2右旋回アシストモード
第2右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置71の変速比を通常直進モードと同様に制御し、それにより、エンジン回転数NEを、目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御するとともに、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御する。
以上により、第2右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、左前輪WFLには駆動力が、右前輪WFRには制動力が、それぞれ作用し、その結果、大きな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左前輪WFLに伝達される動力と、右前輪WFRに作用する制動力との差が、要求動力になる。
以下、第2右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図29のように表される。同図に示すように、前述した図14の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。
このような場合には、基本的には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給し、ロータ13を正転させるとともに、ロータ23を逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図29のように表される。
図29から明らかなように、図14の場合と同様、第1回転機11への電力供給に伴って発生した第1回転機トルクTM1は、第1要素に伝達され、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2回転機21への電力供給に伴って発生した第2回転機トルクTM2は、第5要素に伝達され、左前輪WFLから第2要素に作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
また、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第3の回転機11,31に供給する。
次に、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図30のように表される。同図に示すように、高車速走行中における右旋回時、前述した図15の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。
このような場合には、基本的には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行う。さらに、第2および第3の回転機21,31で発電した電力を、第1回転機11に供給し、そのロータ13を正転させる。また、この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図30のように表される。
図30から明らかなように、第1実施形態と同様、エンジン3から第3要素に伝達された動力の一部は、第5要素を介して、第2回転機21に伝達され、その結果、第2回転機21のロータ23が正転する。このため、上記の第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転機発電トルクTG2は、ロータ23とともに正転する第5要素の回転数を低下させるように作用する。
また、第1回転機11への電力供給に伴って発生した第1回転機トルクTM1は、第1要素に伝達され、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2回転機発電トルクTG2は、第5要素に伝達され、左前輪WFLから第2要素に作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
また、前述したように、第2右旋回アシストモード中には、左前輪WFLに駆動力を作用させるとともに、右前輪WFRに制動力を作用させる。このため、左前輪要求トルクTLREQが比較的大きく、左前輪WFLに作用する駆動力が大きい場合には、車両Vがオーバーステア状態になるおそれがあり、これを回避するために、第2右旋回アシストモードは選択されない。
一方、車両Vの左旋回中には、左旋回アシスト力を生じさせる第1および第2の左旋回アシストモードが選択される。これらの第1および第2の左旋回アシストモードにおける動作は、上述した第1および第2の右旋回アシストモードと同様に行われるので、その詳細な説明については省略する。
・ENG後進モード
ENG後進モード中、変速装置71の変速段を、後進用の1つの変速段に設定し、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を逆転させる。ENG後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図31のように表される。
図31における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したENG発進モードを示す図26における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、ENG後進モード中、第1〜第3の回転機11〜31の制御は、ロータ13および23を逆転させる以外は、ENG直進モードやENG旋回モードと同様に行われる。また、車両Vの停止中から、ENG後進モードを開始する場合には、エンジンストールを防止するために、変速装置71のクラッチを徐々に接続する。
・減速運転モード
減速運転モードには、第1実施形態と同様、車両Vの直進中および旋回中にそれぞれ選択される「減速直進モード」および「減速旋回モード」が含まれる。まず、減速直進モードについて説明する。
・減速直進モード
減速直進モード中、変速装置71のクラッチによって、入力軸と出力軸72の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよびロータ33と第3要素との間を遮断する。その状態で、車両Vの慣性エネルギを用いて、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。減速直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図32のように表される。
図32から明らかなように、この場合、第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2はそれぞれ、第1および第5の要素に伝達され、第1および第5の要素の回転数を低下させるように作用する。また、第1要素に伝達された第1回転機発電トルクTG1と第5要素に伝達された第2回転機発電トルクTG2は、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、減速直進モード中、第1および第2の回転機11,21を以下のように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、要求制動トルクBREQになるように制御する。これにより、車両Vを、その良好な直進性を確保しながら、減速させることができる。また、上述したように変速装置71のクラッチでクランク軸3aおよびロータ33と第3要素との間を遮断状態に保持するので、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力がクランク軸3aやロータ33に伝達されるのを防止でき、それにより、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。
以下、減速直進モード中における第1および第2の回転機11,21の制御について、具体的に説明する。すなわち、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、第1実施形態と同様、前記式(4)が成立するように制御される。また、図32から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1と、左右の前輪トルクTWL,TWRの関係は、次式(64)で表される。
(G2・G3+G3+1+G1)TG1+(G2・G3+G3+1)TWL
+G2・G3・TWR=0 ……(64)
この場合、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ要求制動トルクBREQになるように制御することから、第1回転機発電トルクTG1は次式(65)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(65)が成立するように制御される。
TG1=−(2・G2・G3+G3+1)BREQ/(G2・G3+G3+1+G1) ……(65)
同様に、第2回転機発電トルクTG2は次式(66)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(66)が成立するように制御される。
TG2=−(2・G1+1+G3)BREQ/(G1+1+G3+G2・G3) ……(66)
・減速旋回モード
この減速旋回モードには、第1実施形態と同様、減速右旋回モードおよび減速左旋回モードが含まれる。これらのモード中の動作は互いに同様に行われるので、以下、両者を代表して、減速右旋回モード中の動作についてのみ説明する。
・減速右旋回モード
減速右旋回モード中、上述した減速直進モードと同様、変速装置71のクラッチによって、入力軸と出力軸72の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよびロータ33と第3要素との間を遮断する。その状態で、第1および第2の回転機11,21を後述するように制御することによって、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRに制動トルクを作用させるとともに、両者WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御する。これにより、減速右旋回モード中、オーバーステアを抑制しながら、車両Vを安定的に旋回させることができる。
以下、減速右旋回モード中の動作について、まず、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図33のように表される。同図に示すように、この場合、前述した図18の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。このような場合には、第1回転機11で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第2回転機21に供給するとともに、そのロータ23を逆転させる。この場合、上述したように、変速装置71のクラッチでクランク軸3aおよびロータ33と第3要素との間を遮断状態に保持するので、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力がクランク軸3aやロータ33に伝達されるのを防止でき、それにより、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。
また、図33から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1回転機発電トルクTG1は、第1要素に伝達され、第1要素の回転数を低下させるように作用し、第2回転機トルクTM2は、第5要素に伝達され、第5要素の回転数を逆転方向に上昇させるように作用する。また、第1要素に伝達された第1回転機発電トルクTG1と第5要素に伝達された第2回転機トルクTM2は、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、減速直進モードと同様、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合、図33と、前述した減速直進モードの場合を示す図32との比較から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1と、左右の前輪トルクTWL,TWRの関係は、前記式(64)で表される。また、この式(64)と、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御することから、第1回転機発電トルクTG1は次式(67)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(67)が成立するように制御される。
TG1=−{(G2・G3+G3+1)BLREQ+G2・G3・BRREQ}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(67)
同様に、第2回転機トルクTM2は次式(68)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(68)が成立するように制御される。
TM2=−{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ}
/(G1+1+G3+G2・G3) ……(68)
また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、第1実施形態と同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
次に、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図34のように表される。同図に示すように、この場合には、前述した図19の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。このような場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。
図34から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、減速直進モードと同様、第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2はそれぞれ、第1および第5の要素に伝達され、第1および第5の要素の回転数を低下させるように作用する。また、第1要素に伝達された第1回転機発電トルクTG1と第5要素に伝達された第2回転機発電トルクTG2は、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、この場合にも、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、図34と図33の比較から明らかなように、第1回転機11で発電する電力は、前記式(67)が成立するように制御される。同様に、第2回転機21で発電する電力は、前記式(68)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えた次式(69)が成立するように制御される。
TG2=−{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ}
/(G1+1+G3+G2・G3) ……(69)
さらに、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、第1実施形態と同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
なお、減速直進モードおよび減速旋回モード中、変速装置71のクラッチを接続状態に保持するとともに、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力を用いて、第3回転機31で発電を行ってもよい。
・EV発進モード
EV発進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図35のように表される。EV発進モード中、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給し、それらのロータ13,23を正転させる。また、変速装置71のクラッチによって、その入力軸と出力軸72の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよびロータ33と第3要素との間を遮断する。
EV発進モード中、図35から明らかなように、第1実施形態と同様、電力の供給に伴って発生した第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、第1および第5の要素にそれぞれ伝達され、第1要素と第5要素に伝達されたトルクは、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。
また、この場合、第1実施形態と異なり、上述したように、クラッチでクランク軸3aおよびロータ33と第3要素との間を遮断状態に保持するので、第1および第2の回転機11,21の動力がクランク軸3aやロータ33に伝達されるのを防止でき、したがって、それによる損失が発生するのを防止することができる。さらに、EV発進モード中、図35と、前述した図20との比較から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2や、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、第1実施形態と同様に制御される。
これにより、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように制御されるとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御される。その結果、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、車両Vの良好な直進性を得ることができる。また、EV発進モード中で且つ車両Vの旋回時、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させることが可能である。
・EV走行中ENG始動モード
EV走行中ENG始動モードでは、EV発進モード中に遮断していた変速装置71のクラッチを、引き続き遮断状態に保持し、その状態で、バッテリ44から第3回転機31に電力を供給し、そのロータ33をクランク軸3aとともに正転させる。この場合、停車中ENG始動モードの場合と同様、第3回転機回転数NM3を、エンジン回転数NEが前述した始動時用回転数NSTになるように制御し、その状態で、クランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、EV走行中ENG始動モードでは、第1実施形態と同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
そして、エンジン3が始動した後には、変速装置71のクラッチによって、その入力軸と出力軸72の間を接続し、ひいては、クランク軸3aと第3要素の間を接続する。それにより、第1および第5の要素に伝達された第1および第2の回転機11,21の動力に加え、第3要素に伝達されたエンジン3の動力が、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。なお、EV走行中ENG始動モードでは、上述したように、EV発進モードと同様、変速装置71のクラッチによりクランク軸3aと第3要素の間が遮断状態に保持されることから、第1および第2の回転機11,21は、上述したEV発進モードと同様に制御される。
・EV後進モード
EV後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図36のように表される。同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したEV発進モードを示す図35における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、EV後進モード中、第1および第2の回転機11,21の制御は、それらのロータ13,23を逆転させる以外は、EV発進モードと同様に行われる。なお、EV後進モード中、変速装置71のクラッチを接続状態に保持するとともに、クランク軸3aの逆転を防止するために、変速装置71の変速段を後進用の変速段に設定する。
以上のように、本実施形態によれば、第1〜第5の要素は、第1実施形態と同様に構成されている。また、第1要素が第1回転機11のロータ13に、第2要素が左前輪WFLに、それぞれ機械的に連結されている。さらに、第3要素が、変速装置71を介して、クランク軸3aに機械的に連結されており、第4要素が右前輪WFRに、第5要素が第2回転機21のロータ23に、それぞれ機械的に連結されている。また、第3回転機31のロータ33が、クランク軸3aに機械的に連結されている。さらに、第1実施形態と同様、第1回転機11のステータ12と第3回転機31のステータ32、および、第2回転機21のステータ22と第3回転機31のステータ32はそれぞれ、互いに電気的に接続されている。
また、図27〜図30を用いて説明したように、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させ、車両Vの左右の旋回アシストを行うことができる。この場合、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRに連結された第2および第4の要素が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の前輪WFL,WFRの回転(回転数・トルク)を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。また、通常直進モードなどにおいて説明したように、変速装置71の変速比を制御することによって、エンジン回転数NEを、より良好な燃費が得られる目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するので、動力装置1Aの効率を高めることができる。
また、第1実施形態と同様、充電および放電可能なバッテリ44が、第1〜第3の回転機11〜31に電気的に接続されており、充電直進モードなどで説明したように、エンジン3の動力を最良燃費動力に制御するとともに、要求動力に対するエンジン3の動力の余剰分が、電力としてバッテリ44に充電される。さらに、アシスト直進モードなどで説明したように、要求動力に対するエンジン3の動力の不足分が、上記のバッテリ44に充電した電力を第1回転機11や第2回転機21、第3回転機31に供給することで補われる。以上により、エンジン3の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置1Aの効率をさらに高めることができる。
なお、上述した第2実施形態では、変速装置71は、ギヤ式の有段自動変速装置であるが、エンジン3からの動力を変速して第3要素に伝達可能な任意の変速装置でもよい。例えば、ベルト式やトロイダル式の無段自動変速装置や油圧式の自動変速装置でもよい。また、変速装置71を省略してもよい。
さらに、第1および第2の実施形態では、本発明における第3要素に相当する第3キャリアC3、第1および第2のリングギヤR1,R2は、互いに一体に設けられているが、エンジン3に連結されていれば、必ずしも互いに一体に設けられていなくてもよい。また、第1および第2の実施形態では、本発明における第1および第3のメンバはそれぞれ、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1であるが、これとは逆に、第1リングギヤR1および第1サンギヤS1でもよい。すなわち、第1リングギヤR1を第1回転機11のロータ13に、第1サンギヤS1をクランク軸3aに、それぞれ連結(直結)してもよい。また、第1および第2の実施形態では、本発明における第7および第9のメンバはそれぞれ、第2リングギヤR2および第2サンギヤS2であるが、これとは逆に、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2でもよい。すなわち、第2サンギヤS2をクランク軸3aに、第2リングギヤR2を第2回転機21のロータ23に、それぞれ連結(直結)してもよい。
次に、図37を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置1Bについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Bは、第1実施形態と比較して、第4遊星歯車装置PS4および第3回転機31に代えて、第3回転機80を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Bについて、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図37および図40に示すように、この第3回転機80は、2ロータタイプのものであり、特開2008−067592号公報や特開2008−132971号公報に開示された回転機と同様に構成されている。以下、その構成および動作について、簡単に説明する。第3回転機80は、第1ロータ81と、第1ロータ81に対向するように配置されたステータ82と、両者81,82の間に所定の間隔を存した状態で設けられた第2ロータ83とを備えている。第1ロータ81、第2ロータ83およびステータ82は、径方向に、内側からこの順で並んでいる。以下、図37および図40の左側を「左」、右側を「右」として説明する。
第1ロータ81は、2n個の永久磁石81aを有しており、これらの永久磁石81aは、回転軸84の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んだ状態で、リング状の取付部81bの外周面に取り付けられている。この回転軸84は、クランク軸3aと同軸状に配置され、回転自在になっており、回転軸84には、ギヤ85が同軸状に一体に設けられている。このギヤ85は、前述したアイドラギヤ8に噛み合っている。上記の取付部81bは、軟磁性体、例えば鉄で構成されており、その内周面が、円板状のフランジ81cの外周面に取り付けられている。このフランジ81cは、回転軸84に一体に設けられている。以上により、永久磁石81aを含む第1ロータ81は、回転軸84と一体に回転自在になっており、ギヤ85やアイドラギヤ8を介して、前述した第3要素に機械的に連結されている。
また、図41に示すように、回転軸84を中心として、周方向に隣り合う各2つの永久磁石81aがなす中心角は、所定角度θである。また、永久磁石81aの極性は、周方向に隣り合う各2つについては互いに異なっている。以下、永久磁石81aの左側および右側の磁極をそれぞれ、「第1磁極」および「第2磁極」という。
ステータ82は、回転磁界を発生させるものであり、周方向に等間隔で並んだ3n個の電機子82aを有している。各電機子82aは、鉄芯82bと、鉄芯82bに集中巻きで巻回されたコイル82cなどで構成されている。鉄芯82bの内周面の軸線方向の中央部には、周方向に延びる溝82dが形成されている。3n個のコイル82cは、n組のU相、V相およびW相の3相コイルを構成している(図41参照)。また、電機子82aは、取付部82eを介して不動のケースCAに固定されている。
さらに、図38に示すように、ステータ82は、前述した第3PDU43を介してバッテリ44に電気的に接続されている。すなわち、第1回転機11のステータ12と第3回転機80のステータ82は、互いに電気的に接続されており、第2回転機21のステータ22と第3回転機80のステータ82は、互いに電気的に接続されている。また、ステータ82は、バッテリ44から電力が供給されたとき、または、後述するように発電したときに、鉄芯82bの左右の端部に、互いに異なる極性の磁極がそれぞれ発生するように構成されている。これらの磁極の発生に伴って、第1ロータ81の左側(第1磁極側)の部分との間および右側(第2磁極側)の部分との間に、第1および第2の回転磁界が周方向に回転するようにそれぞれ発生する。以下、鉄芯82bの左右の端部に発生する磁極をそれぞれ、「第1電機子磁極」「第2電機子磁極」という。また、これらの第1および第2の電機子磁極の数はそれぞれ、永久磁石81aの磁極の数と同じ、すなわち2nである。
第2ロータ83は、複数の第1コア83aおよび第2コア83bを有している。第1および第2のコア83a,83bはそれぞれ、周方向に等間隔で並んでおり、両者83a,83bの数はいずれも、永久磁石81aと同じ、すなわち2nに設定されている。各第1コア83aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したもので、軸線方向に永久磁石81aのほぼ半分の長さで延びている。各第2コア83bは、第1コア83aと同様に構成されている。
また、軸線方向において、第1コア83aは、第1ロータ81の左側(第1磁極側)の部分とステータ82の左側(第1電機子磁極側)の部分との間に配置され、第2コア83bは、第1ロータ81の右側(第2磁極側)の部分とステータ82の右側(第2電機子磁極側)の部分との間に配置されている。さらに、第2コア83bは、第1コア83aに対して周方向に互い違いに並んでおり、その中心が、第1コア83aの中心に対して、前述した所定角度θの1/2、ずれている(図41参照)。
また、第1および第2のコア83a,83bはそれぞれ、フランジ83cの外端部に、軸線方向に若干延びる棒状の連結部83dを介して取り付けられている。フランジ83cは、フライホイールを介して、クランク軸3aに直結されている。これにより、第1および第2のコア83a,83bを含む第2ロータ83は、クランク軸3aに機械的に直結されており、クランク軸3aと一体に回転自在になっている。
以上の構成の第3回転機80は、一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有する装置とみなすことができる。以下、この点に関し、第3回転機80の動作に基づいて簡単に説明する。図41の構成は、それと等価のものとして、図42のように示すことができるため、以下、第3回転機80の動作を、永久磁石81a、電機子82a、第1および第2のコア83a,83bが、図42に示すように配置されているものとして説明する。なお、図42では、便宜上、複数の構成要素の符号を省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
また、便宜上、第1および第2の回転磁界の動きを、それと等価の、永久磁石81aと同数の2n個の仮想の永久磁石(以下「仮想磁石」という)VMの物理的な動きに置き換えて、説明するものとする。さらに、仮想磁石VMの左側(第1磁極側)および右側(第2磁極側)の磁極をそれぞれ、第1および第2の電機子磁極として、第1ロータ81の左側(第1磁極側)の部分との間および右側(第2磁極側)の部分との間にそれぞれ発生する回転磁界を、第1および第2の回転磁界として、説明するものとする。さらに、以下、永久磁石81aの左側の部分および右側の部分をそれぞれ、「第1磁石部」「第2磁石部」という。
まず、第3回転機80の動作として、第1ロータ81を回転不能にした状態で、ステータ82への電力供給により第1および第2の回転磁界を発生させた場合の動作について説明する。
図43(a)に示すように、各第1コア83aが各第1磁石部に対向するとともに、各第2コア83bが隣り合う各2つの第2磁石部の間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を、同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1電機子磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2電機子磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。
第1コア83aは、第1磁極および第1電機子磁極によって磁化されるとともに、第1磁極、第1コア83aおよび第1電機子磁極の間に、磁力線(以下「第1磁力線」という)L1が発生する。同様に、第2コア83bは、第2電機子磁極および第2磁極によって磁化されるとともに、第2電機子磁極、第2コア83bおよび第2磁極の間に、磁力線(以下「第2磁力線」という)L2が発生する。
図43(a)〜図44(c)に示すように、仮想磁石VMが回転するのに伴い、これらの第1および第2の磁力線L1,L2による磁力によって、第1および第2のコア83a,83bがそれぞれ、仮想磁石VMの回転方向、すなわち第1および第2の回転磁界の回転方向(以下「磁界回転方向」という)に駆動され、その結果、第2ロータ83が磁界回転方向に回転する。図45(a)および図45(b)はそれぞれ、図43(a)および図43(b)に示す状態において形成される磁気回路を示している。また、図43(a)〜図44(c)に示すように第1および第2のコア83a,83bが駆動される場合、第1磁力線L1により第1コア83aに作用する磁力は、徐々に弱くなり、第1コア83aを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に小さくなる。また、第2磁力線L2により第2コア83bに作用する磁力は、徐々に強くなり、第2コア83bを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に大きくなる。
そして、図44(c)に示す状態から、仮想磁石VMがさらに回転すると、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力によって、第1および第2のコア83a,83bが磁界回転方向に駆動され、第2ロータ83が磁界回転方向に回転する。その際、仮想磁石VMが図43(a)に示す位置まで回転する間、以上とは逆に、第1磁力線L1により第1コア83aに作用する磁力は強くなり、第1コア83aに作用する駆動力が大きくなる。逆に、第2磁力線L2により第2コア83bに作用する磁力は弱くなり、第2コア83bに作用する駆動力が小さくなる。
以上のように、仮想磁石VMの回転、すなわち第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1および第2のコア83a,83bにそれぞれ作用する駆動力が、交互に大きくなったり、小さくなったりする状態を繰り返しながら、第2ロータ83が磁界回転方向に回転する。この場合、第1および第2のコア83a,83bを介して伝達されるトルクをT83a,T83bとすると、第2ロータ83に伝達されるトルク(以下「第2ロータ伝達トルク」という)TR2と、これら2つのトルクT83a,T83bとの関係は、概ね図46に示すものになる。同図に示すように、第2ロータ伝達トルクTR2は、上記のように変化する2つのトルクT83a,T83bを足し合わせたものとなり、ほぼ一定になる。
また、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力の作用によって、第1コア83aが、第1磁力線L1で結ばれた第1磁極と第1電機子磁極の中間に位置し、かつ、第2コア83bが、第2磁力線L2で結ばれた第2磁極と第2電機子磁極の中間に位置した状態を保ちながら、第2ロータ83が回転する。このため、第1および第2の回転磁界の回転数(以下「磁界回転数」という)NMFと、第1ロータ81の回転数(以下「第1ロータ回転数」という)NR1と、第2ロータ83の回転数(以下「第2ロータ回転数」という)NR2との間には一般に、次式(70)が成立する。
NR2=(NMF+NR1)/2 ……(70)
この式(70)から明らかなように、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2は、互いに共線関係にある。
以上から、上述した第1ロータ回転数NR1が値0のときには、NR2=NMF/2が成立し、このときの磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係を示す速度共線図は、例えば図47(a)のように表される。上記の式(70)から明らかなように、図47(a)に示す速度共線図において、磁界回転数NMFを表す縦線と第2ロータ回転数NR2を表す縦線との間の距離と、第1ロータ回転数NR1を表す縦線と第2ロータ回転数NR2を表す縦線との間の距離との比は、1:1である。このことは、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係を表す他の速度共線図についても同様である。
また、この場合、第2ロータ伝達トルクTR2は、ステータ82への供給電力および磁界回転数NMFと等価のトルクを駆動用等価トルクTSEとすると、この駆動用等価トルクTSEの2倍になる。すなわち、次式(71)が成立する。
TR2=−2・TSE ……(71)
以上のように、第1ロータ81を回転不能にした状態でステータ82に電力を供給した場合には、この電力はすべて、第2ロータ83に動力として伝達される。
次に、第2ロータ83を回転不能にした状態で、ステータ82への電力供給により第1および第2の回転磁界を発生させた場合の動作について説明する。
この場合にも、図49(a)に示すように、各第1コア83aが各第1磁石部に対向するとともに、各第2コア83bが隣り合う各2つの第2磁石部の間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1電機子磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2電機子磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。
図49(a)〜図50(c)に示すように、仮想磁石VMが回転するのに伴い、第1コア83aと第1磁極の間の第1磁力線L1による磁力と、第2コア83bと第2磁極の間の第2磁力線L2による磁力によって、第1および第2の磁石部がそれぞれ、仮想磁石VMの回転方向、すなわち磁界回転方向と逆方向(図49の上方)に駆動され、ひいては、第1ロータ81が磁界回転方向と逆方向に回転する。この場合、第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1磁極と第1コア83aの間の第1磁力線L1による磁力と、第2コア83bと第2磁極の間の第2磁力線L2による磁力と、これらの磁力の差分に相当する磁力とが、永久磁石81aに、すなわち第1ロータ81に交互に作用し、それにより、第1ロータ81が磁界回転方向と逆方向に回転する。また、そのように磁力すなわち駆動力が第1ロータ81に交互に作用することによって、第1ロータ81に伝達されるトルク(以下「第1ロータ伝達トルク」という)TR1は、ほぼ一定になる。
また、このときの磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係は、NR1=−NMFで表され、例えば図47(b)のように表される。このように、第1ロータ81は、第1および第2の回転磁界と同じ速度で逆方向に回転する。さらに、この場合、第1ロータ伝達トルクTR1は、駆動用等価トルクTSEと等しくなり、次式(72)が成立する。
TR1=TSE ……(72)
また、第3回転機80では、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2がいずれも値0でない場合、例えば、第1および/または第2のロータ81,83を動力により回転させた状態で、第1および第2の回転磁界を発生させた場合には、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間に、前述した一般式(70)がそのまま成立し、三者間の速度関係は、例えば図48(a)のように表される。
また、第2ロータ83を動力により回転させるとともに、例えばステータ82における相間短絡により磁界回転数NMFを値0に制御した場合には、第2ロータ83に入力された動力(エネルギ)は、ステータ82には伝達されず、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力を介して、第1ロータ81にすべて伝達される。同様に、第1ロータ81を動力により回転させるとともに、磁界回転数NMFを値0に制御した場合には、第1ロータ81に入力された動力(エネルギ)は、ステータ82には伝達されず、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力を介して、第2ロータ83にすべて伝達される。
また、このときの磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係は、NR1=2・NR2で表され、例えば図48(b)のように表される。また、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間に、次式(73)が成立する。
TR1=−TR2/2 ……(73)
さらに、第3回転機80では、ステータ82への電力供給が行われていない場合でも、ステータ82に対して、第1ロータ81への動力の入力により永久磁石81aが回転したり、第2ロータ83への動力の入力により第1および第2のコア83a,83bが回転したときには、ステータ82において、誘導起電力が発生し、発電が行われる。この発電に伴って、第1および第2の回転磁界が発生した場合にも、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間に、前記式(70)が成立する。また、発電した電力および磁界回転数NMFと等価のトルクを発電用等価トルクTGEとすると、この発電用等価トルクTGEと、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間に、上記の式(71)および(72)のような関係が成立する。
さらに、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間に、前記式(70)で表されるような関係が常に成立し、このような三者間の回転数の関係は、遊星歯車装置のリングギヤおよびサンギヤの一方、他方、およびプラネタリギヤを支持するキャリアの回転数の関係に相当する。また、そのような関係が、ステータ82への電力供給時だけでなく、発電時にも同様に得られることから、第3回転機80は、一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有する装置とみなすことができる。
さらに、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、ステータ82に供給する電力と、電力の供給に伴って発生する第1および第2の回転磁界の磁界回転数NMFを制御する。また、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、ステータ82で発電する電力と、発電に伴って発生する第1および第2の回転磁界の磁界回転数NMFを制御する。
さらに、図39に示すように、ECU2には、第3回転角センサ64が接続されており、第3回転角センサ64は、第1ロータ81の回転角度位置を検出するとともに、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、検出された第1ロータ81の回転角度位置に基づいて、第1ロータ回転数NR1を算出する。また、第2ロータ83がクランク軸3aに直結されているため、ECU2は、検出されたクランク角度位置に基づいて、第2ロータ83の回転角度位置を算出するとともに、第2ロータ回転数NR2を算出する。
以上の構成の動力装置1Bでは、図37と前述した図2との比較から明らかなように、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3と、左右の前輪WFL,WFRと、第1および第2の回転機11,21の連結関係は、第1実施形態と同様である。一方、第1実施形態と異なり、クランク軸3aおよび第2ロータ83は、互いに直結されており、エンジン回転数NEと第2ロータ回転数NR2は、互いに等しい。また、第1ロータ81は、ギヤ85やアイドラギヤ8、ギヤ7aを介して、第3要素に連結されており、これらのギヤ85,7aによる変速を無視すれば、第1ロータ回転数NR1と第3要素の回転数は互いに等しい。また、第3回転機80において、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2は、前記式(70)を用いて説明したように、共線関係にある。以上から、動力装置1Bにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図51のように表される。以下、動力装置1Bの各種の動作について、同図に示すような速度共線図を参照しながら説明する。
動力装置1Bの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。これらの動作モードにおける各種の制御動作は、前述した各種のセンサ51〜53および55〜64からの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。以下、これらの動作モードについて、停車中ENG始動モードから順に、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
・停車中ENG始動モード
停車中ENG始動モードでは、バッテリ44から第3回転機80のステータ82に電力を供給するとともに、第1および第2の回転磁界を正転させる。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図52のように表される。同図から明らかなように、ステータ82で発生した駆動用等価トルクTSEは、第2ロータ83に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第1ロータ81や、第1要素、第3要素、第5要素、左右の前輪WFL,WFRを逆転させるように作用する。このため、図52に示すように、そのような左右の前輪WFL,WFRの逆転を防止すべく、左右の前輪WFL,WFRを静止状態に保持するために、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給し、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2を、第1および第5の要素の逆転を阻止するように発生させる。
これにより、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、第1および第5の要素にそれぞれ伝達され、さらに、第3要素を介して第1ロータ81に伝達され、第1ロータ81の逆転を阻止するように作用する。駆動用等価トルクTSEは、第1ロータ伝達トルクTR1を反力として、クランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが正転する。
また、停車中ENG始動モードでは、磁界回転数NMFは、エンジン回転数NEがエンジン3の始動に適した所定の始動時用回転数NSTになるように、制御される。具体的には、この場合、第2ロータ回転数NR2がエンジン回転数NEと等しいことと、第1ロータ回転数NR1が値0になることと、前記式(70)から、磁界回転数NMFは、次式(74)が成立するように制御される。
NMF=2・NST ……(74)
以上により、停車中ENG始動モードでは、第1実施形態と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが値0に、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTに、それぞれ制御される。その状態で、検出されたクランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。また、エンジン3の始動に伴って、左右の前輪WFL,WFRを駆動することがなく、両者WFL,WFRを静止状態に保持することができる。
・ENG発進モード
ENG発進モード中、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機80で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。ENG発進モードの開始時における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図53のように表される。同図に示すように、ENG発進モードの開始時、第1ロータ回転数NR1が左右の前輪回転数NWFL,NWFRとともに値0の状態にあるため、両者の関係によって定まる回転磁界の回転方向は、正転方向になる。このため、エンジン3から第2ロータ83に伝達された第2ロータ伝達トルクTR2の一部は、上記の第3回転機80での発電に伴って発生した発電用等価トルクTGEを反力として、第1ロータ81に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。換言すれば、第2ロータ伝達トルクTR2は、ステータ82と第1ロータ81に分配される。
また、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機11,21への電力供給に伴い、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2が、第1および第5の要素にそれぞれ伝達される。さらに、エンジン3から第3要素に上記のように伝達された第3要素伝達トルクT3Tは、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機トルクTM1,TM2とともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
この場合、第3回転機80で発電する電力を制御することによって、発電用等価トルクTGEを漸増させるとともに、磁界回転数NMFを低下させる。前述した第3回転機80の機能から明らかなように、上記のように発電用等価トルクTGEを漸増させることによって、エンジン3から第1ロータ81を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTが漸増する。また、上記のように磁界回転数NMFを低下させることによって、エンジン3からステータ82に電力の形態で伝達される動力が低下し、第1ロータ81を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力が増大する。
以上の結果、図54に示すように、左右の前輪WFL,WFRが駆動され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。以上のように、ENG発進モードでは、第3回転機80での発電電力を制御することによって、エンジン3から左右の前輪WFL,WFRに伝達されるトルクを漸増させることができるので、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRからエンジン3に急激に大きな負荷が作用するのを防止でき、エンジンストールを発生させることなく、車両Vを発進させることができる。したがって、車両Vの発進用の発進クラッチが不要になる。
また、ENG発進モード中、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、第1実施形態と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように制御されるとともに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御される。以上により、ENG発進モード中、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、磁界回転数NMFは、エンジン回転数NEに応じて制御される。以下、この場合における第1〜第3の回転機11〜80の制御について、具体的に説明する。
上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、第1実施形態と同様、前記式(4)が成立するように制御される。
また、図54から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。この場合にも、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(6)が得られる。さらに、第1ロータ伝達トルクTR1が第3要素に伝達されることと、前述した第3回転機80の機能から、第3要素伝達トルクT3Tは次式(75)で表される。
T3T=−TR1=−TGE ……(75)
これらの式(5)、(6)および(75)から、第1回転機トルクTM1は次式(76)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(76)が成立するように制御される。
TM1=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ/2-(G2・G3+G3)TGE}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(76)
さらに、図54から明らかなように、第2回転機トルクTM2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(9)で表される。上記の式(6)、(9)および(75)から、第2回転機トルクTM2は次式(77)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(77)が成立するように制御される。
TM2=-{(2・G1+1+G3)TREQ/2-(G1+1)TGE}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(77)
また、第1ロータ回転数NR1が左前輪回転数NWFLと、第2ロータ回転数NR2がエンジン回転数NEと、それぞれ等しいことと、前記式(70)から、磁界回転数NMFは次式(78)で表される。したがって、磁界回転数NMFは、この式(78)が成立するように制御される。
NMF=2・NE−NWFL ……(78)
なお、ENG発進モード中、第1実施形態と同様、車両Vの緩発進時や下り坂での発進時には、要求トルクTREQが小さいため、第3回転機80で発電した電力の一部を第1および第2の回転機11,21に供給し、残りをバッテリ44に充電する。一方、車両Vの急発進時や上り坂での発進時には、要求トルクTREQが大きいため、第3回転機80で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する。
・ENG直進モード
ENG直進モードでは、第1実施形態と同様、通常直進モード、充電直進モードおよびアシスト直進モードが、要求動力に応じて選択される。以下、これらの運転モードについて、通常直進モードから順に説明する。
・通常直進モード
通常直進モードでは、ENG発進モードと同様、エンジン3から第2ロータ83に伝達される動力の一部を用いて、第3回転機80で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。
通常直進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図55のように表される。図55から明らかなように、エンジントルクTENGは、第2ロータ83にすべて伝達され、第2ロータ83に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、発電用等価トルクTGEを反力として、第1ロータ81に伝達される。換言すれば、エンジントルクTENGの一部が、ステータ82に電気エネルギとして分配され、残りが第1ロータ81に分配される。この場合のトルク分配比は、前述した第3回転機80の機能から明らかなように、1:1である。また、エンジン3から第1ロータ81に伝達された第1ロータ伝達トルクTR1は、第3要素に伝達される。さらに、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、ENG発進モードと同様、エンジン3から上記のように第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。以上の結果、第1実施形態と同様、通常直進モードでは、左右の前輪伝達動力(左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和)は、エンジン3の動力と等しくなる。
また、通常直進モードでは、第1実施形態と同様、第1〜第3の回転機11〜80を後述するように制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜80の制御によって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。したがって、車両Vの良好な直進性を得ることができる。
この場合、第1実施形態と同様、第1〜第3の回転機11〜80は、無段変速装置として機能し、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達する。以下、第1〜第3の回転機11〜80の制御について、具体的に説明する。
通常直進モードでは、ENG発進モードと同様、上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、両者を代表して、左前輪回転数NWFLを用いると、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、前記式(4)が成立するように制御される。
また、図55から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。さらに、ENG発進モードと同様、前述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(6)が成立する。また、第1ロータ伝達トルクTR1が第3要素に伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、ステータ82と第1ロータ81に1:1の分配比で分配されることから、第3要素伝達トルクT3Tは次式(79)で表される。
T3T=−TR1=TENG/2 ……(79)
また、エンジン3の動力と左右の前輪伝達動力が互いに等しいので、エンジントルクTENGおよび目標エンジン回転数NEOBJと、要求トルクTREQおよび左前輪回転数NWFLの関係は、前記式(13)で表される。
これらの式(5)、(6)、(13)および(79)から、第1回転機トルクTM1は次式(80)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(80)が成立するように制御される。
TM1=-TREQ{(2・G2・G3+G3+1)/2-(G2・G3+G3)NWFL/2・NEOBJ}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(80)
さらに、図55から明らかなように、第2回転機トルクTM2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(9)で表される。
上記の式(6)、(9)、(13)および(79)から、第2回転機トルクTM2は次式(81)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(81)が成立するように制御される。
TM2=-TREQ{(2・G1+1+G3)/2-(G1+1)NWFL/2・NEOBJ}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(81)
また、第1ロータ回転数NR1が左前輪回転数NWFLと、第2ロータ回転数NR2がエンジン回転数NEと、それぞれ等しいことと、上述したようにエンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することと、前記式(70)から、磁界回転数NMFは次式(82)で表される。したがって、磁界回転数NMFは、この式(82)が成立するように制御される。
NMF=2・NEOBJ−NWFL ……(82)
さらに、エンジントルクTENGが、第1ロータ81とステータ82に1:1の分配比で分配されることから、発電用等価トルクTGEとエンジントルクTENGの関係は、次式(83)で表される。
TGE=−TENG/2 ……(83)
この式(83)と上記の式(13)から、発電用等価トルクTGEは次式(84)で表される。したがって、第3回転機80で発電する電力は、この式(84)が成立するように制御される。
TGE=TREQ・NWFL/2・NEOBJ ……(84)
以上の第1〜第3の回転機11〜80の制御により、左右の前輪回転数NWFL,NWFRに対して、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように制御され、ひいては、エンジン3の動力が無段階に変速され、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜80による増速度合が大きいほど、前記式(4)および(82)から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、より高速側に制御されるとともに、磁界回転数NMFはより低速側に制御される。また、前記式(80)および(81)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、より小さな値に制御される。以上により、図55に一点鎖線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に上昇し、エンジン3の動力が無段階に増速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
上記とは逆に、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜80による減速度合が大きいほど、前記式(4)および(82)から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、より低速側に制御されるとともに、磁界回転数NMFはより高速側に制御される。また、前記式(80)および(81)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、より大きな値に制御される。以上により、図55に破線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に低下し、エンジン3の動力が無段階に減速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
なお、上述した第1〜第3の回転機11〜80を用いた変速動作は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NMF=2・NEOBJ−NWFL>0で、NEOBJ>NWFL/2が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<NWFL/2で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力を第3回転機80に供給し、第1および第2の回転磁界を逆転させる。この場合にも、第1および第2の回転機11,21で発電する電力や、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2、磁界回転数NMFを制御することによって、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。この場合、図55から明らかなように、エンジン3の動力を、より大きく増速した状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。
・充電直進モード
充電直進モード中、第1実施形態と同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも大きな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機80で発電を行い、発電した電力の一部をバッテリ44に充電するとともに、残りを第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電される。また、第1〜第3の回転機11〜80を後述するように制御することによって、通常直進モードと同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを、目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、充電直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、この左右の前輪伝達動力と、バッテリ44に充電される電力(エネルギ)との和は、エンジン3の動力と等しくなる。また、充電直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図55と同様である。
充電直進モード中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、通常直進モードと同様、エンジントルクTENGがすべて、ステータ82と第1ロータ81に分配されることから、発電用等価トルクTGEとエンジントルクTENGの関係は、前記式(83)で表される。このことと、上述したようにエンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、発電用等価トルクTGEは、次式(85)で表される。したがって、第3回転機80で発電する電力は、この式(85)が成立するように制御される。
TGE=−TEOBJ/2 ……(85)
また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、磁界回転数NMFは、前記式(82)が成立するように制御される。
さらに、バッテリ44の充電に用いられるトルクを充電トルクTGとすると、第3回転機80で発電した電力の一部を充電し、残りを第1および第2の回転機11,21に供給することから、次式(86)が成立する。
(TGE−TG)NMF=−(TM1+TM2)NWFL ……(86)
また、通常直進モードと同様、図55に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(21)が成立する。さらに、この場合にも、第1ロータ伝達トルクTR1が第3要素に伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、ステータ82と第1ロータ81に1:1の分配比で分配されることから、第3要素伝達トルクT3Tは前記式(79)で表される。このことと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3要素伝達トルクT3Tは、次式(87)で表される。
T3T=−TR1=TEOBJ/2 ……(87)
これらの式(21)および(87)から、次式(88)が得られる。
TM1+TM2=−TREQ−TEOBJ/2 ……(88)
また、以上の式(82)、(85)、(86)および(88)から、充電トルクTGは次式(89)で表される。したがって、バッテリ44に充電される電力は、この式(89)が成立するように制御される。
TG=−(TREQ・NWFL+TEOBJ・NEOBJ)
/{2・NEOBJ−NWFL} ……(89)
また、この場合にも、図55に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することから、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。この式(5)と、第3要素伝達トルクT3Tに関する上記の式(87)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1回転機トルクTM1は、次式(90)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(90)が成立するように制御される。
TM1=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ/2+(G2・G3+G3)TEOBJ/2}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(90)
同様に、第2回転機トルクTM2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(9)で表される。この式(9)と、第3要素伝達トルクT3Tに関する式(87)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第2回転機トルクTM2は次式(91)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(91)が成立するように制御される。
TM2=-{(2・G1+1+G3)TREQ/2+(G1+1)TEOBJ/2}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(91)
また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。
なお、上述した充電直進モード中における第1〜第3の回転機11〜80の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NMF=2・NEOBJ−NWFL>0で、NEOBJ>NWFL/2が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<NWFL/2で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部をバッテリ44に充電し、残りを第3回転機80に供給し、第1および第2の回転磁界を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電されるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・アシスト直進モード
アシスト直進モード中、充電直進モードと同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも小さな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機80で発電を行うとともに、発電した電力に加え、バッテリ44の電力を、第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給によって補われる。また、第1〜第3の回転機11,21、80を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、アシスト直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、バッテリ44からの電力(エネルギ)とエンジン3の動力の和と等しくなる。また、アシスト直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図55と同様である。
アシスト直進モード中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、充電直進モードと同様、発電用等価トルクTGEとエンジントルクTENGの関係が、前記式(83)で表されることと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機80で発電する電力は、前記式(85)が成立するように制御される。また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、磁界回転数NMFは、前記式(82)が成立するように制御される。
さらに、アシスト直進モード中、充電直進モードと同様、図55に示すようなトルクの関係が成立し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御する。以上から、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2に関する前記式(90)および(91)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。
さらに、第1実施形態と同様、要求トルクTREQのうち、バッテリ44からの電力供給によるアシストトルクに対応する分を、アシスト対応トルクTREQ_Aとし、エンジントルクTENGに対応する分を、エンジン対応トルクTREQ_0とすると、これらのトルクの間に、前記式(27)が成立する。また、第3回転機80で発電した電力を第1および第2の回転機11,12に供給することで第1および第2の回転機11,21で発生するトルクをそれぞれ、第1および第2のトルクTM1_0,TM2_0とし、バッテリ44からの電力供給により第1および第2の回転機11,21で発生するトルクをそれぞれ、第1および第2のアシストトルクTA1,TA2とする。第1回転機トルクTM1、第1トルクTM1_0および第1アシストトルクTA1の間に、前記式(28)が成立するとともに、第2回転機トルクTM2、第2トルクTM2_0および第2アシストトルクTA2の間に、前記式(29)が成立する。
さらに、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(90)から明らかなように、第1トルクTM1_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(92)が成立する。また、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(91)から明らかなように、第2トルクTM2_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(93)が成立する。
TM1_0=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ_0+(G2・G3+G3)TEOBJ}/2(G2・G3+G3+1+G1)
……(92)
TM2_0=-{(2・G1+1+G3)TREQ_0+(G1+1)TEOBJ}/2(G1+1+G3+G2・G3)
……(93)
以上の式(27)、(28)、(90)および(92)から、前記式(32)が得られるとともに、式(27)、(29)、(91)および(93)から、前記式(33)が得られる。また、アシスト対応トルクTREQ_Aは、前記式(34)で表される。これらの式(32)および(34)から、第1アシストトルクTA1は、前記式(35)で表され、式(33)および(34)から、第2アシストトルクTA2は、前記式(36)で表される。したがって、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、これらの式(35)および(36)がそれぞれ成立するように制御される。
なお、上述したアシスト直進モード中における第1〜第3の回転機11〜80の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NMF=2・NEOBJ−NWFL>0で、NEOBJ>NWFL/2が成立している場合に行われる。
一方、NEOBJ<NWFL/2で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向が逆転方向の場合において、要求トルクTREQが小さいときには、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力とバッテリ44の電力の双方を、第3回転機80に供給し、第1および第2の回転磁界を逆転させる。また、要求トルクTREQが大きいときには、第1〜第3の回転機11〜80に電力を供給し、ロータ13,23を正転させるとともに、第1および第2の回転磁界を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44からの電力供給によって補われるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・ENG旋回モード
ENG旋回モードには、第1実施形態と同様、第1および第2の右旋回アシストモードが含まれる。まず、第1右旋回アシストモードについて説明する。
・第1右旋回アシストモード
第1右旋回アシストモード中、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜80を後述するように制御することによって、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。このようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、第1実施形態と同様、第1右旋回アシストモード中、左前輪伝達トルクTWLTが右前輪伝達トルクTWRTよりも大きくなり、その結果、小さな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。
以下、第1右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図56のように表される。同図に示すように、低車速走行中における右旋回時、前述した図12の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的大きく、それにより、両者の関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的低いことと、第1ロータ回転数NR1がエンジン回転数NEよりも高くなることによって、両者の関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1および第3の回転機11,80に電力を供給し、ロータ13を正転させるとともに、第1および第2の回転磁界を逆転させる。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行うとともに、発電した電力を第1および第3の回転機11,80にさらに供給する。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図56のように表される。
図56から明らかなように、エンジントルクTENGは、第2ロータ83に伝達され、駆動用等価トルクTSEを反力として、第1ロータ81に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。すなわち、第3回転機80に供給された電力は、動力に変換された後、エンジン3の動力と合成され、第3要素に伝達される。また、エンジン3および第3回転機80から第3要素に伝達された動力の一部と、電力の供給に伴って第1回転機11から第1要素に伝達された動力の一部は、第5要素を介して、第2回転機21に伝達され、その結果、第2回転機21のロータ23が逆転する。このため、第1実施形態と同様、第2回転機発電トルクTG2は、ロータ23とともに逆転する第5要素の回転数を低下させるように作用する。
また、第1要素に伝達された第1回転機トルクTM1と、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tと、第5要素に伝達された第2回転機発電トルクTG2は、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。この場合、図56から明らかなように、第1回転機回転数NM1と、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、前記式(37)で表される。したがって、この式(37)が成立するように、第1回転機回転数NM1は制御される。
また、図56から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。それに加え、この場合、充電直進モードと同様、第3要素伝達トルクT3Tが前記式(87)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQに制御することから、第1回転機トルクTM1は次式(94)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(94)が成立するように制御される。
TM1=-{(G2・G3+G3+1)TLREQ+(G2・G3+G3)TEOBJ/2+G2・G3・TRREQ}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(94)
さらに、図56から明らかなように、第2回転機回転数NM2と左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、前記式(39)で表される。したがって、第2回転機回転数NM2は、この式(39)が成立するように制御される。
また、図56から明らかなように、第2回転機発電トルクTG2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(40)で表される。この式(40)と、第3要素伝達トルクT3Tが式(87)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御することから、第2回転機発電トルクTG2は、次式(95)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(95)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)TRREQ+(G1+1)TEOBJ/2+G1・TLREQ}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(95)
また、図56から明らかなように、駆動用等価トルクTSEとエンジントルクTENGの関係は、次式(96)で表される。
TSE=−TENG/2 ……(96)
この場合、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、駆動用等価トルクTSEは次式(97)で表される。したがって、第3回転機80に供給する電力は、この式(97)が成立するように制御される。
TSE=−TEOBJ/2 ……(97)
さらに、磁界回転数NMFは、通常直進モードと同様、前記式(82)が成立するように制御される。
また、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21に電力を供給し、そのロータ23を正転させるとともに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(95)において第2回転機発電トルクTG2を第2回転機トルクTM2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第1右旋回アシストモード中でかつ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機80で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に(第2回転機21のロータ23が正転する場合には、第1および第2の回転機11,21に)供給する。この場合、第3回転機80で発電する電力は、発電用等価トルクTGEに関する前記式(85)が成立するように制御される。
次に、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図57のように表される。同図に示すように、この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的小さいため、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的高いことによって、第1ロータ回転数NR1とエンジン回転数NEの関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機80で発電を行うとともに、基本的には、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。さらに、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まる要求動力が、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力よりも小さいときには、その余剰分が、第3回転機80での発電により電力としてバッテリ44に充電され、逆に、大きいときには、その不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給することによって補われる。以上により、左右の前輪伝達動力は、要求動力になるように制御される。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図57のように表される。また、この場合における各種の回転要素におけるトルク(動力)の伝達は、図57と前述した図55との比較から明らかなように、通常直進モードの場合と同様に行われ、それにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。すなわち、図57と前述した低車速走行中の図56との比較から明らかなように、第1回転機回転数NM1は、前記式(37)が成立するように制御されるとともに、第1回転機11に供給する電力は、第1回転機トルクTM1に関する前記式(94)が成立するように制御される。
また、第2回転機回転数NM2は、前記式(39)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(95)における第2回転機発電トルクTG2を第2回転機トルクTM2に置き換えた次式(98)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)TRREQ+(G1+1)TEOBJ/2+G1・TLREQ}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(98)
また、磁界回転数NMFは、前記式(82)が成立するように制御されるとともに、第3回転機80で発電する電力は、前記式(85)が成立するように制御される。
以上の第1〜第3の回転機11〜80の制御において、エンジン3の動力の一部を用いて第3回転機80で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する場合には、エンジン3の動力が、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3、および第1〜第3の回転機11〜80を介して、左右の前輪WFL,WFRに分配され、左前輪WFLに分配されるエンジン3の動力は、右前輪WFRのそれよりも大きくなる。
・第2右旋回アシストモード
この第2右旋回アシストモード中、基本的には、第1右旋回アシストモードと同様、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第2右旋回アシストモード中、第1〜第3の回転機11〜80を後述するように制御することによって、第1実施形態と同様、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御し、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力とエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、第2右旋回アシストモード中、左前輪WFLには駆動力が、右前輪WFRには制動力が、それぞれ作用し、その結果、大きな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左前輪WFLに伝達される動力と、右前輪WFRに作用する制動力との差が、要求動力になる。
以下、第2右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図58のように表される。同図に示すように、前述した図56の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数NR1の関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1〜第3の回転機11〜80に電力を供給し、ロータ13を正転させるとともに、ロータ23、第1および第2の回転磁界をいずれも逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図58のように表される。
図58から明らかなように、前述した図56の場合と同様、エンジントルクTENGは、第2ロータ83に伝達され、第2ロータ83に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、駆動用等価トルクTSEを反力として、第1ロータ81に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。すなわち、第3回転機80に供給された電力は、動力に変換された後、エンジン3の動力と合成され、第3要素に伝達される。また、第1回転機11への電力供給に伴って発生した第1回転機トルクTM1は、第1要素に伝達され、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2回転機21への電力供給に伴って発生した第2回転機トルクTM2は、第5要素に伝達され、左前輪WFLに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。この場合、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2と磁界回転数NMFは、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(37)、(39)および(82)がそれぞれ成立するように制御される。また、第3回転機80に供給する電力も、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(97)が成立するように制御される。
さらに、図58から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左前輪伝達トルクTWLTと、右前輪トルクTWRと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(45)で表される。
この場合、上述したように、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御するとともに、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御する。また、右前輪WFRから第4要素に右前輪トルクTWRが伝達されており、そのことは、第4要素から右前輪WFRに制動力が作用していることと同じである。さらに、第3要素伝達トルクT3Tは、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(87)で表される。以上のことと、上記の式(45)から、第1回転機トルクTM1は次式(99)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(99)が成立するように制御される。
TM1=-{(G2・G3+G3+1)TLREQ+G2・G3・BRREQ+(G2・G3+G3)TEOBJ/2}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(99)
同様に、第2回転機トルクTM2は次式(100)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(100)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・TLREQ+(G1+1)TEOBJ/2}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(100)
また、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第3の回転機11,80に供給する。この場合、第2回転機21で発電する電力は、上記の式(100)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機80で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に(第2回転機21のロータ23が正転する場合には、第1回転機11のみに)供給する。この場合、第3回転機80で発電する電力は、前記式(85)が成立するように制御される。
次に、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図59のように表される。同図に示すように、高車速走行中における右旋回時、前述した図57の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数NR1の関係によって定まる第3回転機80の第1および第2の回転磁界の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機80で発電を行う。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行う。さらに、第2および第3の回転機21,80で発電した電力を、基本的には、第1回転機11に供給し、そのロータ13を正転させる。また、この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図59のように表される。
図59から明らかなように、前述した図55に示す通常直進モードの場合と同様、エンジントルクTENGは、第2ロータ83に伝達され、第2ロータ83に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、発電用等価トルクTGEを反力として、第1ロータ81に伝達され、さらに、第3要素に伝達される。すなわち、エンジン3の動力は、第3回転機80と第3要素に分配される。また、エンジン3から第3要素に伝達された動力の一部は、第5要素を介して、第2回転機21に伝達され、その結果、第2回転機21のロータ23が正転する。このため、上記の第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転機発電トルクTG2は、ロータ23とともに正転する第5要素の回転数を低下させるように作用する。
さらに、第1回転機11への電力供給に伴って発生した第1回転機トルクTM1は、第1要素に伝達され、エンジン3から第3要素に伝達された第3要素伝達トルクT3Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。また、第2回転機発電トルクTG2は、第5要素に伝達され、左前輪WFLに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。この場合、図59と前述した図58との比較から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2と磁界回転数NMFは、前記式(37)、(39)および(82)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1回転機11に供給する電力は、第1回転機トルクTM1に関する前記式(99)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21で発電する電力は、前記式(100)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えた次式(101)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・TLREQ+(G1+1)TEOBJ/2}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(101)
また、第3回転機80で発電する電力は、前記式(85)が成立するように制御される。
一方、車両Vの左旋回中には、左旋回アシスト力を生じさせる第1および第2の左旋回アシストモードが選択される。これらの第1および第2の左旋回アシストモードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、上述した第1および第2の右旋回アシストモードと同様に行われるので、その詳細な説明については省略する。なお、第1実施形態と同様、第1および第2の左右の旋回アシストモード中、バッテリ44の充電・放電が行われる場合があるため、各モードの選択の可否は、バッテリ44の過充電・過放電を防止するために、バッテリ44の充電状態に応じて決定される。
・ENG後進モード
ENG後進モード中、第1実施形態と同様、基本的には、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを後進させる。ENG後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図60のように表される。この場合、エンジン3の動力を増大させるとともに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機80で発電を行う。また、第3回転機80で発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、それらのロータ13,23を逆転させる。これにより、図60から明らかなように、電力の供給に伴って発生した第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、第1および第5の要素にそれぞれ伝達され、第1要素と第5要素に伝達されたトルクは、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。その結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが逆転方向に上昇し、ひいては、車両Vが後方に発進する。
また、ENG後進モード中、図60に示すように、第1ロータ回転数NR1およびエンジン回転数NEの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向が正転方向になるため、第2ロータ82に伝達されたエンジントルクTENGの一部が、発電用等価トルクTGEを反力として、第1ロータ81に伝達され、さらに、第3要素に伝達され、ひいては、左右の前輪WFL,WFRを正転させるように作用する。このため、車両Vの後進を支障なく行うべく、第3回転機80で発電する電力は、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2が、発電用等価トルクTGEにより定まる第3要素伝達トルクT3Tを上回るように、制御される。
さらに、この場合、第1および第2の回転機11,21は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御される。具体的には、図60から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。また、上述した各種の要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第3要素伝達トルクT3Tは、前記式(75)で表される。
これらの式(5)および(75)と、上述したように、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1回転機トルクTM1は前記式(76)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(76)が成立するように制御される。同様に、第2回転機トルクTM2は前記式(77)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(77)が成立するように制御される。
また、ENG後進モード中、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、車両Vが直進しているときには、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御され、車両Vが旋回しているときには、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)がそれぞれ成立するように制御される。さらに、第3回転機80で発電した電力のみでは不足する場合には、バッテリ44の電力が、第1および第2の回転機11,21に供給される。
また、ENG後進モード中、第3回転機80の機能から明らかなように、エンジン3に作用する負荷は、発電用等価トルクTGEが大きいほどより大きくなる。このため、停車中の車両Vを後方に発進させる場合には、エンジンストールを防止するために、発電用等価トルクTGEを漸増させる。また、磁界回転数NMFは、前記式(78)が成立するように制御される。
・減速運転モード
この減速運転モードには、第1実施形態と同様、減速直進モードおよび減速旋回モードが含まれる。まず、減速直進モードについて説明する。
・減速直進モード
この減速直進モード中、車両Vの慣性エネルギを用いて、第1〜第3の回転機11〜80で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。また、減速直進モードは、バッテリ44の過充電を防止するために、バッテリ44の充電状態が第1所定値よりも小さいときに選択される。減速直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図61のように表される。
図61から明らかなように、減速直進モード中、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2はそれぞれ、第1および第5の要素の回転数を低下させるように作用する。また、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2は、第3要素に後述するように伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第3要素を介して、第1ロータ81に伝達され、第1ロータ回転数NR1とエンジン回転数NEの関係から、第1および第2の回転磁界の回転方向は逆転方向になる。このため、発電用等価トルクTGEは、第2ロータ83に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第1ロータ回転数NR1を低下させるように作用する。その結果、第3要素には、第1ロータ81を介して、発電用等価トルクTGEに基づく制動トルクが作用する。
さらに、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜80を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、要求制動トルクBREQになるように制御する。これにより、車両Vを、その良好な直進性を確保しながら、減速させることができる。
さらに、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜80の制御によって、エンジン回転数NEを非常に低い所定回転数NELになるように制御する。これにより、クランク軸3aを回転させることによる損失が抑えられるので、第1〜第3の回転機11〜80で発電し、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。それに加え、排気管への新気の導入を抑えることができ、それにより、触媒が活性状態に維持され、したがって、減速直後のエンジン3の運転の再開時、排ガスを触媒で十分に浄化することができる。
減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。すなわち、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。また、図61から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(49)で表される。
また、上述した各種の要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第3要素伝達トルクT3Tと発電用等価トルクTGEの間の関係は、前記式(75)で表される。これらの式(75)および(49)と、上述したように左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ要求制動トルクBREQになるように制御することから、第1回転機発電トルクTG1は次式(102)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(102)が成立するように制御される。
TG1=-{(2・G2・G3+G3+1)BREQ-(G2・G3+G3)TGE}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(102)
同様に、第2回転機発電トルクTG2は次式(103)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(103)が成立するように制御される。
TG2=-{(2・G1+1+G3)BREQ-(G1+1)TGE}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(103)
さらに、前述したようにエンジン回転数NEを所定回転数NELになるように制御することから、第3回転機80で発電する電力と、磁界回転数NMFは、次式(104)が成立するように制御される。
NMF=2・NEL−NWFL ……(104)
・減速旋回モード
減速旋回モードには、第1実施形態と同様、減速右旋回モードおよび減速左旋回モードが含まれる。これらのモードの動作は互いに同様に行われるので、以下、両者を代表して、減速右旋回モード中の動作についてのみ説明する。
・減速右旋回モード
この減速右旋回モード中、第1〜第3の回転機11〜80を後述するように制御することによって、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRに制動トルクを作用させるとともに、両者WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御する。以上により、減速右旋回モード中、オーバーステアを抑制しながら、車両Vを安定的に旋回させることができる。
以下、減速右旋回モード中の動作について、まず、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図62のように表される。同図に示すように、この場合、前述した図18の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数NR1の関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。このような場合には、第1および第3の回転機11,80で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第2回転機21に供給するとともに、そのロータ23を逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図62のように表される。
図62から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1実施形態と同様、第1回転機発電トルクTG1は、第1要素に伝達され、第1要素の回転数を低下させるように作用し、第2回転機トルクTM2は、第5要素に伝達され、第5要素の回転数を逆転方向に上昇させるように作用する。また、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1回転機発電トルクTG1および第2回転機トルクTM2は、第3要素に後述するように伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、減速直進モードと同様、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、減速直進モードと同様、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第1ロータ81に伝達され、第1ロータ回転数NR1とエンジン回転数NEの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。このため、発電用等価トルクTGEは、第2ロータ83に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第1ロータ回転数NR1を低下させるように作用する。その結果、第3要素には、第1ロータ81を介して、発電用等価トルクTGEに基づく制動トルクが作用する。
減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。この場合、図62と図61の比較から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(49)で表される。また、第3要素伝達トルクT3Tと発電用等価トルクTGEの関係は、前記式(75)で表される。これらの式(49)および(75)と、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御することから、第1回転機発電トルクTG1は次式(105)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(105)が成立するように制御される。
TG1=-{(G2・G3+G3+1)BLREQ+G2・G3・BRREQ-(G2・G3+G3)TGE}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(105)
同様に、第2回転機トルクTM2は次式(106)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(106)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ-(G2・G3+G3)TGE}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(106)
また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
さらに、図62から明らかなように、発電用等価トルクTGEは、エンジン回転数NEを上昇させるように作用するので、第3回転機80で発電する電力と、磁界回転数NMFは、より大きな電力をバッテリ44に充電するとともに、触媒を活性状態に維持するために、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機80で発電する電力と、磁界回転数NMFを、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
次に、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図63のように表される。同図に示すように、この場合には、前述した図19の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数NR1の関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向は、正転方向になる。このような場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第3回転機80に供給するとともに、その第1および第2の回転磁界を正転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図63のように表される。
図63から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2はそれぞれ、第1および第5の要素に伝達され、第1および第5の要素の回転数を低下させるように作用する。また、第1および第5の要素にそれぞれ伝達された第1および第2の回転機発電トルクTG1,TG2は、第3要素に後述するように伝達された第3要素伝達トルクT3Tとともに、第2および第4の要素をそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、この場合にも、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、第1および第2の回転磁界が正転するため、駆動用等価トルクTSEは、第2ロータ83に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第1ロータ回転数NR1を低下させるように作用する。その結果、第3要素には、第1ロータ83を介して、駆動用等価トルクTSEに基づく制動トルクが作用する。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜80は、具体的には、次のように制御される。すなわち、図63と図61の比較から明らかなように、第1回転機11で発電する電力は、前記式(105)において発電用等価トルクTGEを駆動用等価トルクTSEに置き換えた次式(107)が成立するように制御される。
TG1=-{(G2・G3+G3+1)BLREQ+G2・G3・BRREQ-(G2・G3+G3)TSE}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(107)
同様に、第2回転機21で発電する電力は、前記式(106)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えるとともに、発電用等価トルクTGEを駆動用等価トルクTSEに置き換えた次式(108)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ-(G2・G3+G3)TSE}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(108)
さらに、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
また、図63から明らかなように、駆動用等価トルクTSEがエンジン回転数NEを上昇させるように作用することから、第3回転機80に供給する電力と、磁界回転数NMFは、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機80に供給する電力と、磁界回転数NMFを、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向が、逆転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機80で発電を行うとともに、発電した電力を、バッテリ44に充電する。この場合における第3回転機80で発電する電力と、磁界回転数NMFの制御は、上述した手法によって行われ、その詳細な説明については省略する。
・EV発進モード
EV発進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図64のように表される。EV発進モード中、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給するとともに、ロータ13,23を正転させる。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。
また、図64から明らかなように、EV発進モード中、第1および第2の回転機11,21の動力は、第3要素を介して第1ロータ81に伝達され、それにより、第1ロータ81が第3要素とともに正転する。それに伴い、第3回転機80で発電が行われていなくても、第3回転機80において第1および第2の回転磁界が発生し、その場合には、それによる回転抵抗(以下「磁界回転抵抗」という)DMFが、第1ロータ81や第2ロータ83に作用する。この場合、この磁界回転抵抗DMFを反力として、第1および第2の回転機11,21から第1ロータ81に伝達された第1ロータ伝達トルクTR1が、第2ロータ83を介してクランク軸3aに伝達され、エンジン回転数NEが上昇するおそれがある。
このため、EV発進モード中には、上記の磁界回転抵抗DMFを打ち消すように、第3回転機80に電力を供給し、第1および第2の回転磁界を逆転させる。この場合、第3回転機80に供給する電力は、駆動用等価トルクTSEが磁界回転抵抗DMFと等しくなるように制御される。
また、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、車両Vの良好な直進性を得ることができる。この場合、第1および第2の回転機11,21は、第1実施形態と同様に制御される。また、EV発進モード中で且つ車両Vの旋回時、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させることが可能である。
・EV走行中ENG始動モード
EV走行中ENG始動モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図65のように表される。同図に示すように、EV走行中ENG始動モードでは、上述したEV発進モードと同様、第1および第2の回転機11,21から第3回転機80の第1ロータ81に動力が伝達され、第1ロータ81が正転する。この動力を用いて、第3回転機80で発電を行うとともに、発電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給し、両者11,21のロータ13,23を正転させる。これにより、第1および第2の回転機11,21から第1ロータ81に伝達された第1ロータ伝達トルクTR1は、発電用等価トルクTGEを反力として、第2ロータ83に伝達され、さらに、クランク軸3aに伝達される。換言すれば、第1ロータ81に伝達された第1および第2の回転機11,21の動力(エネルギ)が、クランク軸3aとステータ82に分配される。また、磁界回転数NMFを値0になるように制御し、それにより、第1および第2の回転機11,21からステータ82に分配されるエネルギを減少させるとともに、クランク軸3aに分配される動力を増大させ、それにより、クランク軸3aが正転する。その状態で、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。
また、EV走行中ENG始動モードでは、前述した停車中ENG始動モードと同様、磁界回転数NMFを、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTになるように制御する。具体的には、磁界回転数NMFは、次式(109)が成立するように制御される。
NMF=2・NST−NWFL ……(109)
この場合において、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが低いときには、第1ロータ回転数NR1と始動時用回転数NSTの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、バッテリ44から第3回転機80に電力を供給するとともに、第1および第2の回転磁界を正転させ、磁界回転数NMFを制御することによって、エンジン回転数NEを始動時用回転数NSTになるように制御する。したがって、EV走行中ENG始動モードでは、停車中ENG始動モードと同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
さらに、図65から明らかなように、発電用等価トルクTGE(または駆動用等価トルクTSE)は、左右の前輪WFL,WFRに対し、制動トルクとして作用する。このため、EV走行中ENG始動モードでは、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの急減を防止し、良好なドライバビリティを確保するために、第3回転機80で発電する電力(第3回転機80に供給する電力)は、発電用等価トルクTGE(駆動用等価トルクTSE)が漸増するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが直進しているときには、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。すなわち、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。
さらに、この場合、図65から明らかなように、第1回転機トルクTM1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第3要素伝達トルクT3Tの関係は、前記式(5)で表される。また、第3要素伝達トルクT3Tと発電用等価トルクTGEの関係は、前記式(75)で表される。これらの式(5)および(75)と、EV発進モードと同様、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1回転機トルクTM1は前記式(76)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(76)が成立するように制御される。同様に、第2回転機トルクTM2は前記式(77)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(77)が成立するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが旋回しているときには、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)がそれぞれ成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力はそれぞれ、基本的には、上記の式(76)および(77)が成立するように制御される。この場合、ENG旋回モードと同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに左右の旋回アシスト力を作用させてもよい。
・EV後進モード
EV後進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図66のように表される。同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したEV発進モードを示す図64における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、EV後進モード中、第1〜第3の回転機11〜80の制御は、ロータ13および23を逆転させるとともに、第1および第2の回転磁界を正転させる以外は、EV発進モードと同様に行われる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、第1および第2のロータ81,83が、本発明における第3および第4のロータにそれぞれ相当する。また、永久磁石81aが本発明における磁石に、第1および第2のコア83a,83bが本発明における軟磁性体に、それぞれ相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、本実施形態によれば、第1〜第5の要素は、第1実施形態と同様に構成されている。また、第1要素が第1回転機11のロータ13に、第2要素が左前輪WFLに、それぞれ機械的に連結されている。さらに、第3要素が第3回転機80の第1ロータ81に機械的に連結されており、第4要素が右前輪WFRに、第5要素が第2回転機21のロータ23に、それぞれ機械的に連結されている。また、第3回転機80の第2ロータ83が、クランク軸3aに機械的に連結されている。さらに、第1回転機11のステータ12と第3回転機80のステータ82、および、第2回転機21のステータ22と第3回転機80のステータ82はそれぞれ、互いに電気的に接続されている。
また、図56〜図59を用いて説明したように、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させ、車両Vの左右の旋回アシストを行うことができる。この場合、左右の前輪WFL,WFRに連結された第2および第4の要素が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の前輪WFL,WFRの回転(回転数・トルク)を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。さらに、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3の間の連結によって、第1〜第5の要素を適切に構成することができる。また、図55などを用いて説明したように、エンジン3の動力を無段階に減速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができ、エンジン回転数NEを、より良好な燃費が得られる目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するので、動力装置1Bの効率を高めることができる。
さらに、充電および放電可能なバッテリ44が、第1〜第3の回転機11〜80に電気的に接続されており、第1実施形態と同様、充電直進モードなどで説明したように、エンジン3の動力を最良燃費動力に制御するとともに、要求動力に対するエンジン3の動力の余剰分が、電力としてバッテリ44に充電される。また、アシスト直進モードなどで説明したように、要求動力に対するエンジン3の動力の不足分が、上記のバッテリ44に充電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給することで補われる。以上により、エンジン3の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置1Bの効率をさらに高めることができる。
さらに、第3回転機80が一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有しているので、第1実施形態で述べたエンジン3の動力を変速するための第4遊星歯車装置PS4は不要であり、その分、動力装置1Bの小型化を図ることができる。
なお、第3実施形態では、第1および第2のコア83a,83bを鋼板で構成しているが、他の軟磁性体で構成してもよい。また、第3実施形態では、ステータ82および第1ロータ81を、径方向の外側および内側にそれぞれ配置しているが、これとは逆に、径方向の内側および外側にそれぞれ配置してもよい。さらに、第3実施形態では、ステータ82、第1および第2のロータ81,83を径方向に並ぶように配置し、いわゆるラジアルタイプとして第3回転機80を構成しているが、ステータ82、第1および第2のロータ81,83を軸線方向に並ぶように配置し、いわゆるアキシャルタイプとして第3回転機80を構成してもよい。
また、第3実施形態における永久磁石81aに代えて、電磁石を用いてもよい。さらに、第3実施形態では、コイル82cを鉄芯82bに集中巻きで巻回しているが、これに限らず、分布巻き(波巻き)でもよい。また、第3実施形態では、コイル82cを、U相〜W相の3相コイルで構成しているが、第1および第2の回転磁界を発生できれば、このコイルの相数はこれに限らず、任意である。さらに、第3実施形態では、鉄芯82bや、永久磁石81a、第1および第2のコア83a,83bを等間隔に配置しているが、不等間隔に配置してもよい。
次に、図67を参照しながら、本発明の第4実施形態による動力装置1Cについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Cは、第3実施形態と比較して、第3回転機80に代えて、第3回転機91を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Cについて、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
図67および図70に示すように、第3回転機91は、第3実施形態の第3回転機80と同様、2ロータタイプのものであり、ステータ93と、ステータ93に対向するように設けられた第1ロータ94と、両者93,94の間に設けられた第2ロータ95を有している。これらのステータ93、第2ロータ95および第1ロータ94は、回転軸96の径方向(以下、単に「径方向」という)に、外側からこの順で並んでおり、同軸状に配置されている。この回転軸96は、クランク軸3aと同軸状に配置され、回転自在になっており、回転軸96には、ギヤ97が同軸状に一体に設けられている。このギヤ97は、前述したアイドラギヤ8に噛み合っている。
上記のステータ93は、回転磁界を発生させるものであり、図70および図71に示すように、鉄芯93aと、この鉄芯93aに設けられたU相、V相およびW相のコイル93c,93d,93eを有している。なお、図70では、便宜上、U相コイル93cのみを示している。鉄芯93aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、回転軸96の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に延びており、不動のケースCAに固定されている。また、鉄芯93aの内周面には、12個のスロット93bが形成されており、これらのスロット93bは、軸線方向に延びるとともに、回転軸96の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相のコイル93c〜93eは、スロット93bに分布巻き(波巻き)で巻回されるとともに、前述した第3PDU43を介して、バッテリ44に電気的に接続されている(図68参照)。すなわち、第1回転機11のステータ12と第3回転機91のステータ93は、互いに電気的に接続されており、第2回転機21のステータ22と第3回転機91のステータ93は、互いに電気的に接続されている。
以上の構成のステータ93では、バッテリ44から電力が供給され、U相〜W相のコイル93c〜93eに電流が流れたときに、または、後述するように発電が行われたときに、鉄芯93aの第1ロータ94側の端部に、4個の磁極が周方向に等間隔で発生する(図74参照)とともに、これらの磁極による回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯93aに発生する磁極を「電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの電機子磁極の極性は、互いに異なっている。なお、図74や後述する他の図面では、電機子磁極を、鉄芯93aやU相〜W相のコイル93c〜93eの上に、(N)および(S)で表記している。
図71に示すように、第1ロータ94は、8個の永久磁石94aから成る磁極列を有している。これらの永久磁石94aは、周方向に等間隔で並んでおり、この磁極列は、ステータ93の鉄芯93aに対向している。各永久磁石94aは、軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、ステータ93の鉄芯93aのそれと同じに設定されている。
また、永久磁石94aは、リング状の取付部94bの外周面に取り付けられている。この取付部94bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、円板状のフランジ94cの外周面に取り付けられている。このフランジ94cは、前述した回転軸96に一体に設けられている。以上により、永久磁石94aを含む第1ロータ94は、回転軸96と一体に回転自在になっており、回転軸96や、ギヤ97、アイドラギヤ8、ギヤ7aを介して、第3要素に機械的に連結されている。さらに、上記のように軟磁性体で構成された取付部94bの外周面に永久磁石94aが取り付けられているので、各永久磁石94aには、ステータ93側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。なお、図71や後述する他の図面では、永久磁石94aの磁極を(N)および(S)で表記している。また、周方向に隣り合う各2つの永久磁石94aの極性は、互いに異なっている。
第2ロータ95は、6個のコア95aから成る軟磁性体列を有している。これらのコア95aは、周方向に等間隔で並んでおり、この軟磁性体列は、ステータ93の鉄芯93aと第1ロータ94の磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア95aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、軸線方向に延びている。また、コア95aの軸線方向の長さは、永久磁石94aと同様、ステータ93の鉄芯93aのそれと同じに設定されている。さらに、コア95aは、円板状のフランジ95bの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部95cを介して取り付けられている。このフランジ95bは、フライホイールを介して、クランク軸3aに機械的に直結されている。これにより、コア95aを含む第2ロータ95は、クランク軸3aに機械的に直結されており、クランク軸3aと一体に回転自在になっている。なお、図71や図74では、便宜上、連結部95cおよびフランジ95bを省略している。
以上の構成の第3回転機91では、第1ロータ94とステータ93の間において、複数の電機子磁極による回転磁界が発生するとともにコア95aが配置されていることから、各コア95aは、永久磁石94aの磁極(以下「磁石磁極」という)と電機子磁極によって磁化される。このことと、上述したように隣り合う各2つのコア95aの間に間隔が空いていることによって、磁石磁極とコア95aと電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生する(図74参照)。このため、ステータ93への電力の供給により回転磁界を発生させると、この磁力線MLによる磁力の作用によって、ステータ93に供給された電力は動力に変換され、その動力が、第1ロータ94や第2ロータ95から出力される。
ここで、ステータ93に供給された電力および回転磁界の電気角速度ωmfと等価のトルクを「駆動用等価トルクTe」という。以下、この駆動用等価トルクTeと、第1および第2のロータ94,95に伝達されるトルク(以下、それぞれ「第1ロータ伝達トルクT1」「第2ロータ伝達トルクT2」という)の関係、および、回転磁界、第1および第2のロータ94,95の間の電気角速度の関係について説明する。
第3回転機91を次の条件(A)の下に構成した場合には、第3回転機91に相当する等価回路は図72のように表される。
(A)電機子磁極が2個、磁石磁極が4個、すなわち、電機子磁極のN極およびS極を1組とする極対数が値1、磁石磁極のN極およびS極を1組とする極対数が値2であり、コア95aが3個(第1〜第3のコア)である
なお、このように、本明細書で用いる「極対」は、N極およびS極の1組をいう。
この場合、コア95aのうちの第1コアを通過する磁石磁極の磁束Ψk1は、次式(110)で表される。
ここで、ψfは磁石磁極の磁束の最大値、θ1およびθ2はそれぞれ、U相コイル93cに対する磁石磁極の回転角度位置および第1コアの回転角度位置である。また、この場合、電機子磁極の極対数に対する磁石磁極の極対数の比が値2.0であるため、磁石磁極の磁束が回転磁界に対して2倍の周期で回転(変化)するので、上記の式(110)では、そのことを表すために、(θ2−θ1)に値2.0が乗算されている。
したがって、第1コアを介してU相コイル93cを通過する磁石磁極の磁束Ψu1は、式(110)にcosθ2を乗算することで得られた次式(111)で表される。
同様に、コア95aのうちの第2コアを通過する磁石磁極の磁束Ψk2は、次式(112)で表される。
この場合、ステータ93に対する第2コアの回転角度位置が、第1コアに対して2π/3だけ進んでいるため、上記の式(112)では、そのことを表すために、θ2に2π/3が加算されている。
したがって、第2コアを介してU相コイル93cを通過する磁石磁極の磁束Ψu2は、式(112)にcos(θ2+2π/3)を乗算することで得られた次式(113)で表される。
同様に、コア95aのうちの第3コアを介してU相コイル93cを通過する磁石磁極の磁束Ψu3は、次式(114)で表される。
図72に示すような第3回転機91では、コア95aを介してU相コイル93cを通過する磁石磁極の磁束Ψuは、上記の式(111)、(113)および(114)で表される磁束Ψu1〜Ψu3を足し合わせたものになるので、次式(115)で表される。
また、この式(115)を一般化すると、コア95aを介してU相コイル93cを通過する磁石磁極の磁束Ψuは、次式(116)で表される。
ここで、a、bおよびcはそれぞれ、磁石磁極の極対数、コア95aの数および電機子磁極の極対数である。また、この式(116)を、三角関数の和と積の公式に基づいて変形すると、次式(117)が得られる。
この式(117)において、b=a+cとするとともに、cos(θ+2π)=cosθに基づいて整理すると、次式(118)が得られる。
この式(118)を三角関数の加法定理に基づいて整理すると、次式(119)が得られる。
この式(119)の右辺の第2項は、a−c≠0を条件として、級数の総和やオイラーの公式に基づいて整理すると、次式(120)から明らかなように値0になる。
また、上記の式(119)の右辺の第3項も、a−c≠0を条件として、級数の総和やオイラーの公式に基づいて整理すると、次式(121)から明らかなように値0になる。
以上により、a−c≠0のときには、コア95aを介してU相コイル93cを通過する磁石磁極の磁束Ψuは、次式(122)で表される。
また、この式(122)において、a/c=αとすると、次式(123)が得られる。
さらに、この式(123)において、c・θ2=θe2とするとともに、c・θ1=θe1とすると、次式(124)が得られる。
ここで、θe2は、U相コイル93cに対する第1コアの回転角度位置θ2に電機子磁極の極対数cを乗算していることから明らかなように、U相コイル93cに対するコア95aの電気角度位置(以下「第2ロータ電気角」という)を表す。また、θe1は、U相コイル93cに対する磁石磁極の回転角度位置θ1に電機子磁極の極対数cを乗算していることから明らかなように、U相コイル93cに対する磁石磁極の電気角度位置(以下「第1ロータ電気角」という)を表す。
同様に、コア95aを介してV相コイル93dを通過する磁石磁極の磁束Ψvは、V相コイル93dの電気角度位置がU相コイル93cに対して電気角2π/3だけ進んでいることから、次式(125)で表される。また、コア95aを介してW相コイル93eを通過する磁極の磁束Ψwは、W相コイル93eの電気角度位置がU相コイル93cに対して電気角2π/3だけ遅れていることから、次式(126)で表される。
また、上記の式(124)〜(126)でそれぞれ表される磁束Ψu〜Ψwを時間微分すると、次式(127)〜(129)がそれぞれ得られる。
ここで、ωe1は、第1ロータ電気角速度であり、θe1の時間微分値、すなわち、ステータ93に対する第1ロータ94の角速度を電気角速度に換算した値である。また、ωe2は、第2ロータ電気角速度であり、θe2の時間微分値、すなわち、ステータ93に対する第2ロータ95の角速度を電気角速度に換算した値である。
さらに、コア95aを介さずにU相〜W相のコイル93c〜93eを直接、通過する磁石磁極の磁束は、極めて小さく、その影響は無視できる。このため、コア95aを介してU相〜W相のコイル93c〜93eをそれぞれ通過する磁石磁極の磁束Ψu〜Ψwの時間微分値dΨu/dt〜dΨw/dt(式(127)〜(129))は、ステータ93に対して磁石磁極やコア95aが回転するのに伴ってU相〜W相のコイル93c〜93eに発生する逆起電圧(誘導起電圧)(以下、それぞれ「U相逆起電圧Vcu」「V相逆起電圧Vcv」「W相逆起電圧Vcw」という)をそれぞれ表す。
このことから、U相、V相およびW相のコイル93c〜93eをそれぞれ流れる電流Iu、IvおよびIwは、次式(130)、(131)および(132)で表される。
ここで、Iは、U相〜W相のコイル93c〜93eをそれぞれ流れる電流Iu〜Iwの振幅(最大値)である。
また、これらの式(130)〜(132)より、U相コイル93cに対する回転磁界のベクトルの電気角度位置θmfは、次式(133)で表されるとともに、U相コイル93cに対する回転磁界の電気角速度(以下「磁界電気角速度」という)ωmfは、次式(134)で表される。
このため、磁界電気角速度ωmf、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2の間の関係をいわゆる共線図で表すと、例えば図73のように表される。
さらに、U相〜W相のコイル93c〜93eに電流Iu〜Iwがそれぞれ流れることで第1および第2のロータ94,95に出力される機械的出力(動力)Wは、リラクタンス分を除くと、次式(135)で表される。
この式(135)に上記の式(127)〜(132)を代入し、整理すると、次式(136)が得られる。
また、この機械的出力Wと、前述した第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2と、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2との関係は、次式(137)で表される。
これらの式(136)および(137)から明らかなように、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2は、次式(138)および(139)でそれぞれ表される。
さらに、ステータ93に供給された電力と機械的出力Wが互いに等しい(ただし、損失は無視)ことと、式(134)および(136)から、前述した駆動用等価トルクTe(ステータ93に供給された電力および回転磁界の電気角速度ωmfと等価のトルク)は、次式(140)で表される。
また、これらの式(138)〜(140)より、次式(141)が得られる。
この式(141)で表されるトルクの関係、および式(134)で表される電気角速度の関係は、遊星歯車装置のサンギヤとリングギヤとキャリアにおけるトルクおよび回転数の関係とまったく同じである。
さらに、前述したように、式(134)の電気角速度の関係および式(141)のトルクの関係は、b=a+cおよびa−c≠0を条件として成立する。この条件b=a+cは、磁石磁極の数をp、電機子磁極の数をqとすると、b=(p+q)/2、すなわち、b/q=(1+p/q)/2で表される。ここで、p/q=mとすると、b/q=(1+m)/2が得られることから明らかなように、上記のb=a+cという条件が成立していることは、電機子磁極の数と磁石磁極の数とコア95aの数との比が、1:m:(1+m)/2であることを表す。また、上記のa−c≠0という条件が成立していることは、m≠1.0であることを表す。
以上から明らかなように、第3回転機91は、その電機子磁極の数と磁石磁極の数とコア95aの数との比が、1:m:(1+m)/2(m≠1.0)に設定されていれば、適正に作動するとともに、式(134)に示す電気角速度の関係と、式(141)に示すトルクの関係が成立する。本実施形態では、前述したように、電機子磁極が4個、磁石磁極が8個、コア95aが6個であり、すなわち、電機子磁極の数と、磁石磁極の数と、コア95aの数との比は、1:2:(1+2)/2であり、したがって、第3回転機91は、適正に作動するとともに、式(134)に示す電気角速度の関係と、式(141)に示すトルクの関係が成立する。
次に、ステータ93に供給された電力が、具体的にどのようにして動力に変換され、第1ロータ94や第2ロータ95から出力されるかについて説明する。まず、図74〜図76を参照しながら、第1ロータ94を回転不能に保持した状態でステータ93に電力を供給した場合について説明する。なお、図74〜図76では、理解の容易化のために、同じ1つの電機子磁極およびコア95aに、ハッチングを付している。
まず、図74(a)に示すように、ある1つのコア95aの中心と、ある1つの永久磁石94aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア95aから3つ目のコア95aの中心と、その永久磁石94aから4つ目の永久磁石94aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの電機子磁極の位置を、中心がコア95aと一致している各永久磁石94aの中心と周方向に一致させるとともに、この電機子磁極の極性をこの永久磁石94aの磁石磁極の極性と異ならせる。
前述したようにステータ93による回転磁界が第1ロータ94との間に発生することと、コア95aを有する第2ロータ95がステータ93と第1ロータ94の間に配置されていることから、電機子磁極および磁石磁極により、各コア95aは磁化される。このことと、隣り合う各コア95aの間に間隔が空いていることから、電機子磁極とコア95aと磁石磁極を結ぶような磁力線MLが発生する。なお、図74〜図76では、便宜上、鉄芯93aや取付部94bにおける磁力線MLを省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
図74(a)に示す状態では、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極を結び、かつ、これらの電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、コア95aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
そして、回転磁界の回転に伴って電機子磁極が図74(a)に示す位置から図74(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、コア95aに磁力が作用する。この場合、磁力線MLで互いに結ばれた電機子磁極および磁石磁極を結ぶ直線に対して、磁力線MLが、このコア95aにおいて回転磁界の回転方向(以下「磁界回転方向」という)と逆方向に凸に曲がった状態になるため、上記の磁力は、コア95aを磁界回転方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、コア95aは、磁界回転方向に駆動され、図74(c)に示す位置に回転し、コア95aが設けられた第2ロータ95も、磁界回転方向に回転する。なお、図74(b)および(c)における破線は、磁力線MLの磁束量が極めて小さく、電機子磁極とコア95aと磁石磁極の間の磁気的なつながりが弱いことを表している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
また、回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLがコア95aにおいて磁界回転方向と逆方向に凸に曲がる→磁力線MLが直線状になるようにコア95aに磁力が作用する→コア95aおよび第2ロータ95が、磁界回転方向に回転する」という動作が、図75(a)〜(d)、図76(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第1ロータ94を回転不能に保持した状態で、ステータ93に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、ステータ93に供給された電力は動力に変換され、その動力が第2ロータ95から出力される。
また、図77は、図74(a)の状態から電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図77と図74(a)の比較から明らかなように、コア95aは、電機子磁極に対して1/3の回転角度だけ、同方向に回転していることが分かる。この結果は、前記式(134)において、ωe1=0とすることによって、ωe2=ωmf/3が得られることと合致する。
次に、図78〜図80を参照しながら、第2ロータ95を回転不能に保持した状態で、ステータ93に電力を供給した場合の動作について説明する。なお、図78〜図80では、理解の容易化のために、同じ1つの電機子磁極および永久磁石94aに、ハッチングを付している。まず、図78(a)に示すように、前述した図74(a)の場合と同様、ある1つのコア95aの中心と、ある1つの永久磁石94aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア95aから3つ目のコア95aの中心と、その永久磁石94aから4つ目の永久磁石94aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの電機子磁極の位置を、中心がコア95aと一致している各永久磁石94aの中心と周方向に一致させるとともに、この電機子磁極の極性をこの永久磁石94aの磁石磁極の極性と異ならせる。
図78(a)に示す状態では、図74(a)の場合と同様、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極を結び、かつ、これらの電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、永久磁石94aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
そして、回転磁界の回転に伴って電機子磁極が図78(a)に示す位置から図78(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、永久磁石94aに磁力が作用する。この場合、この永久磁石94aが、磁力線MLで互いに結ばれた電機子磁極およびコア95aの延長線上よりも磁界回転方向に進んだ位置にあるため、上記の磁力は、この延長線上に永久磁石94aを位置させるように、すなわち、永久磁石94aを磁界回転方向と逆方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、永久磁石94aは、磁界回転方向と逆方向に駆動され、図78(c)に示す位置に回転し、永久磁石94aが設けられた第1ロータ94も、磁界回転方向と逆方向に回転する。
また、回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLが曲がり、磁力線MLで互いに結ばれた電機子磁極およびコア95aの延長線上よりも、永久磁石94aが磁界回転方向に進んだ位置に位置する→磁力線MLが直線状になるように永久磁石94aに磁力が作用する→永久磁石94aおよび第1ロータ94が、磁界回転方向と逆方向に回転する」という動作が、図79(a)〜(d)、図80(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第2ロータ95を回転不能に保持した状態で、ステータ93に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、ステータ93に供給された電力は動力に変換され、その動力が第1ロータ94から出力される。
また、図80(b)は、図78(a)の状態から電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図80(b)と図78(a)の比較から明らかなように、永久磁石94aは、電機子磁極に対して1/2の回転角度だけ、逆方向に回転していることが分かる。この結果は、前記式(134)において、ωe2=0とすることによって、−ωe1=ωmf/2が得られることと合致する。
また、図81および図82は、電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極の数を、値16、値18および値20にそれぞれ設定し、第1ロータ94を回転不能に保持するとともに、ステータ93への電力の供給により第2ロータ95から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図81は、第2ロータ電気角θe2が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
この場合、第1ロータ94が回転不能に保持されていることと、電機子磁極および磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(134)から、磁界電気角速度ωmf、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2の間の関係は、ωmf=2.25・ωe2で表される。図81に示すように、第2ロータ電気角θe2が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ2.25周期分、発生している。また、図81は、第2ロータ95から見たU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第2ロータ電気角θe2を横軸として、W相逆起電圧Vcw、V相逆起電圧VcvおよびU相逆起電圧Vcuの順に並んでおり、このことは、第2ロータ95が磁界回転方向に回転していることを表す。以上のような図81に示すシミュレーション結果は、上述した式(134)に基づくωmf=2.25・ωe2の関係と合致する。
さらに、図82は、駆動用等価トルクTe、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の推移の一例を示している。この場合、電機子磁極および磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(141)から、駆動用等価トルクTe、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の間の関係は、Te=T1/1.25=−T2/2.25で表される。図82に示すように、駆動用等価トルクTeは、ほぼ−TREFに、第1ロータ伝達トルクT1は、ほぼ1.25・(−TREF)に、第2ロータ伝達トルクT2は、ほぼ2.25・TREFになっている。このTREFは所定のトルク値(例えば200Nm)である。このような図82に示すシミュレーション結果は、上述した式(141)に基づくTe=T1/1.25=−T2/2.25の関係と合致する。
また、図83および図84は、電機子磁極、コア95aおよび磁石磁極の数を図81および図82の場合と同様に設定し、第1ロータ94に代えて第2ロータ95を回転不能に保持するとともに、ステータ93への電力の供給により第1ロータ94から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図83は、第1ロータ電気角θe1が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
この場合、第2ロータ95が回転不能に保持されていることと、電機子磁極および磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(134)から、磁界電気角速度ωmf、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2の間の関係は、ωmf=−1.25・ωe1で表される。図83に示すように、第1ロータ電気角θe1が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ1.25周期分、発生している。また、図83は、第1ロータ94から見たU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第1ロータ電気角θe1を横軸として、U相逆起電圧Vcu、V相逆起電圧VcvおよびW相逆起電圧Vcwの順に並んでおり、このことは、第1ロータ94が磁界回転方向と逆方向に回転していることを表す。以上のような図83に示すシミュレーション結果は、上述した式(134)に基づくωmf=−1.25・ωe1の関係と合致する。
さらに、図84は、駆動用等価トルクTe、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の推移の一例を示している。この場合にも、図82の場合と同様、式(141)から、駆動用等価トルクTe、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の間の関係は、Te=T1/1.25=−T2/2.25で表される。図84に示すように、駆動用等価トルクTeは、ほぼTREFに、第1ロータ伝達トルクT1は、ほぼ1.25・TREFに、第2ロータ伝達トルクT2は、ほぼ−2.25・TREFになっている。このような図84に示すシミュレーション結果は、上述した式(141)に基づくTe=T1/1.25=−T2/2.25の関係と合致する。
以上のように、第3回転機91では、ステータ93への電力供給により回転磁界を発生させると、前述した磁石磁極とコア95aと電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生し、この磁力線MLによる磁力の作用によって、ステータ93に供給された電力は動力に変換され、その動力が、第1ロータ94や第2ロータ95から出力されるとともに、上述したような電気角速度やトルクの関係が成立する。このため、ステータ93に電力を供給していない状態で、第1および第2のロータ94,95の少なくとも一方に動力を入力することにより、この少なくとも一方のロータをステータ93に対して回転させると、ステータ93において、発電が行われるとともに、回転磁界が発生し、この場合にも、磁石磁極とコア95aと電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生するとともに、この磁力線MLによる磁力の作用によって、上述した式(134)に示す電気角速度の関係と式(141)に示すトルクの関係が成立する。
すなわち、発電した電力および磁界電気角速度ωmfと等価のトルクを発電用等価トルクTgとすると、この発電用等価トルクTg、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の間にも、式(141)のような関係が成立する。以上から明らかなように、本実施形態における第3回転機91は、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた装置と同じ機能を有する。すなわち、第3回転機91は、第3実施形態による第3回転機80と同じ機能を有している。
ただし、前述したように、第3実施形態の第3回転機80では、磁界回転数NMF、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係は、磁界回転数NMFと第2ロータ回転数NR2の差、および第2ロータ回転数NR2と第1ロータ回転数NR1の差が互いに等しいという関係においてのみ成立する。また、駆動用等価トルクTSE(発電用等価トルクTGE)、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE(TGE):TR1:TR2=1:1:2という関係においてのみ成立する。
これに対して、前述したように、本実施形態による第3回転機91では、回転磁界の回転数(以下「磁界回転数」という)Nmfと、第1ロータ94の回転数(以下「第1ロータ回転数」という)N1と、第2ロータ95の回転数(以下「第2ロータ回転数」という)N2の関係は、m=(磁石磁極の数p/電機子磁極の数q)≠1.0であれば、前記式(134)を満たす限り、成立する。また、駆動用等価トルクTe(発電用等価トルクTg)、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の間の関係は、m≠1.0であれば、前記式(141)を満たす限り、成立する。
したがって、これらの式(134)および(141)におけるα(=a/c)、すなわち、電機子磁極の極対数cに対する磁石磁極の極対数aの比(以下「極対数比」という)を設定することによって、磁界回転数Nmf、第1および第2のロータ回転数N1,N2の間の関係と、駆動用等価トルクTe(発電用等価トルクTg)、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の間の関係を自由に設定でき、第3回転機91の設計の自由度を高めることができる。以上の効果は、ステータ93のコイル93c〜93eの相数が前述した値3以外の場合にも同様に得られる。なお、本実施形態では、極対数比α=2.0であるので、磁界回転数Nmf、第1および第2のロータ回転数N1,N2の間の関係は、Nmf=3・N2−2・N1で表され、駆動用等価トルクTe(発電用等価トルクTg)、第1および第2のロータ伝達トルクT1,T2の間の関係は、Te(Tg)=T1/2=−T2/3で表される。
また、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、ステータ93に供給する電力と、電力の供給に伴って発生する回転磁界の磁界回転数Nmfを制御する。さらに、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、ステータ93で発電する電力と、発電に伴って発生する回転磁界の磁界回転数Nmfを制御する。
また、図69に示すように、ECU2には、第3回転角センサ65が接続されており、第3回転角センサ65は、第1ロータ94の回転角度位置を検出するとともに、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、検出された第1ロータ94の回転角度位置に基づいて、第1ロータ回転数N1を算出する。さらに、第2ロータ95がクランク軸3aに直結されているため、ECU2は、検出されたクランク角度位置に基づいて、第2ロータ95の回転角度位置を算出するとともに、第2ロータ回転数N2を算出する。
以上の構成の動力装置1Cでは、図67と前述した図2との比較から明らかなように、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3と、左右の前輪WFL,WFRと、第1および第2の回転機11,21の連結関係は、第3実施形態と同様である。また、クランク軸3aおよび第2ロータ95は、互いに直結されており、エンジン回転数NEと第2ロータ回転数N2は、互いに等しい。さらに、第1ロータ94は、ギヤ97やアイドラギヤ8、ギヤ7aを介して、第3要素に連結されており、これらのギヤ97,7aによる変速を無視すれば、第1ロータ回転数N1と第3要素の回転数は、互いに等しい。また、第3回転機91において、磁界回転数Nmf、第1および第2のロータ回転数N1,N2の間の関係は、前記式(134)で表される。以上から、動力装置1Cにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図85のように表される。以下、動力装置1Cの各種の動作について、同図に示すような速度共線図を参照しながら説明する。
動力装置1Cの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。これらの動作モードにおける各種の制御動作は、前述した各種のセンサ51〜53、55〜63および65からの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。この場合、これらの動作モードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、これまでに述べた動力装置1Cの構成から明らかなように、第3実施形態とほぼ同様に行われる。したがって、以下、これらの動作モードについて、停車中ENG始動モードから順に、簡単に説明する。なお、各動作モードにおいて、左右の前輪WFL,WFRを含む各種の回転要素の間でのトルクの伝達は、第3実施形態と同様に行われるため、その説明については省略するものとする。
・停車中ENG始動モード
停車中ENG始動モードでは、クランク軸3aを正転させるために、バッテリ44から第3回転機91のステータ93に電力を供給するとともに、回転磁界を正転させる。また、磁界回転数Nmfを、エンジン回転数NEがエンジン3の始動に適した所定の始動時用回転数NSTになるように、制御する。さらに、左右の前輪WFL,WFRを静止状態に保持するために、第3実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給し、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2を、第1および第5の要素の逆転を阻止するように発生させる。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図86のように表される。
同図と前述した図52との比較から明らかなように、停車中ENG始動モードでは、磁界回転数Nmfは、次式(142)が成立するように制御される。
Nmf=(α+1)NST ……(142)
以上により、停車中ENG始動モードでは、第3実施形態と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが値0に、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTに、それぞれ制御される。その状態で、検出されたクランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。また、エンジン3の始動に伴って、左右の前輪WFL,WFRを駆動することがなく、両者WFL,WFRを静止状態に保持することができる。
・ENG発進モード
ENG発進モード中、エンジン3から第2ロータ95に伝達される動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。また、第3回転機91で発電する電力を制御することによって、発電用等価トルクTgを漸増させるとともに、磁界回転数Nmfを低下させる。前述した第3回転機91の機能から明らかなように、上記のように発電用等価トルクTgを漸増させることによって、エンジン3から第1ロータ93を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTが漸増する。また、上記のように磁界回転数Nmfを低下させることによって、エンジン3からステータ93に電力として伝達される動力が低下し、第1ロータ93を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力が増大する。
以上の結果、図87に示すように、左右の前輪WFL,WFRが駆動され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。以上のように、ENG発進モードでは、第3回転機91での発電電力を制御することによって、第3実施形態と同様、エンジン3から左右の前輪WFL,WFRに伝達されるトルクを漸増させることができるので、左右の前輪WFL,WFRからエンジン3に急激に大きな負荷が作用するのを防止でき、エンジンストールを発生させることなく、車両Vを発進させることができる。したがって、車両Vの発進用の発進クラッチが不要になる。
また、ENG発進モード中、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2を、第3実施形態と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように、すなわち、前記式(4)が成立するように制御する。また、第1および第2の回転機11,21に供給する電力を、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御する。以上により、ENG発進モード中、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、磁界回転数Nmfを、エンジン回転数NEに応じて制御する。
この場合、図87と前述した図53との比較から明らかなように、第1回転機トルクTM1は、次式(143)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(143)が成立するように制御される。
TM1=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ/2-(G2・G3+G3)α・Tg}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(143)
また、第2回転機トルクTM2は次式(144)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(144)が成立するように制御される。さらに、磁界回転数Nmfは、次式(145)が成立するように制御される。
TM2=-{(2・G1+1+G3)TREQ/2-(G1+1)α・Tg}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(144)
Nmf=(α+1)NE−α・NWFL ……(145)
・ENG直進モード
ENG直進モードでは、第3実施形態と同様、通常直進モード、充電直進モードおよびアシスト直進モードが、要求動力に応じて選択される。以下、これらの運転モードについて、通常直進モードから順に説明する。
・通常直進モード
通常直進モードでは、ENG発進モードと同様、エンジン3から第2ロータ95に伝達される動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。
通常直進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図88のように表される。同図と前述した図55との比較から明らかなように、第1回転機トルクTM1は次式(146)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(146)が成立するように制御される。
TM1=-TREQ{(2・G2・G3+G3+1)/2-(G2・G3+G3)α・NWFL/(1+α)NEOBJ}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(146)
同様に、第2回転機トルクTM2は次式(147)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(147)が成立するように制御される。
TM2=-TREQ{(2・G1+1+G3)/2-(G1+1)α・NWFL/(1+α)NEOBJ}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(147)
さらに、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、前記式(4)が成立するように制御される。
また、磁界回転数Nmfは、次式(148)が成立するように制御される。
Nmf=(α+1)NEOBJ−α・NWFL ……(148)
さらに、発電用等価トルクTgは次式(149)で表される。したがって、第3回転機91で発電する電力は、この式(149)が成立するように制御される。
Tg=TREQ・NWFL/(1+α)NEOBJ ……(149)
以上の第1〜第3の回転機11〜91の制御によって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRは、互いに等しくなるように制御されるとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTはそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御される。したがって、第3実施形態と同様、車両Vの良好な直進性を得ることができる。また、左右の前輪回転数NWFL,NWFRに対して、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように制御され、ひいては、エンジン3の動力が無段階に変速され、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。その結果、左右の前輪伝達動力(左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和)は、エンジン3の動力と等しくなる。
この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜91による増速度合が大きいほど、前記式(4)および(148)から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、より高速側に制御されるとともに、磁界回転数Nmfはより低速側に制御される。また、前記式(146)および(147)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、より小さな値に制御される。以上により、図88に一点鎖線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に上昇し、エンジン3の動力が無段階に増速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
上記とは逆に、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜91による減速度合が大きいほど、前記式(4)および(148)から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、より低速側に制御されるとともに、磁界回転数Nmfはより高速側に制御される。また、前記式(146)および(147)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2は、より大きな値に制御される。以上により、図88に破線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に低下し、エンジン3の動力が無段階に減速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
なお、上述した第1〜第3の回転機11〜91を用いた変速動作は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、Nmf=(α+1)NEOBJ−α・NWFL>0で(ただしα=2)、NEOBJ>α・NWFL/(α+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<α・NWFL/(α+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力を第3回転機91に供給し、回転磁界を逆転させる。この場合にも、第1および第2の回転機11,21で発電する電力や、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2、磁界回転数Nmfを制御することによって、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。この場合、図88から明らかなように、エンジン3の動力を、より大きく増速した状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。
・充電直進モード
充電直進モード中、第3実施形態と同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも大きな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行い、発電した電力の一部をバッテリ44に充電するとともに、残りを第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電される。また、第1〜第3の回転機11〜91を制御することによって、通常直進モードと同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、充電直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、この左右の前輪伝達動力と、バッテリ44に充電される電力(エネルギ)との和は、エンジン3の動力と等しくなる。また、充電直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、上述した図88と同様である。
この場合、図88と前述した図55との比較から明らかなように、第3回転機91で発電する電力は、次式(150)が成立するように制御される。また、磁界回転数Nmfは、前記式(148)が成立するように制御される。
Tg=−TEOBJ/(1+α) ……(150)
さらに、第1回転機トルクTM1は次式(151)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(151)が成立するように制御される。
TM1=-{(2・G2・G3+G3+1)TREQ/2+(G2・G3+G3)α・TEOBJ/(1+α)}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(151)
また、第2回転機トルクTM2は次式(152)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(152)が成立するように制御される。
TM2=-{(2・G1+1+G3)TREQ/2+(G1+1)α・TEOBJ/(1+α)}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(152)
さらに、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、前記式(4)が成立するように制御される。
また、バッテリ44の充電に用いられるトルクを充電トルクTGとすると、充電トルクTGは次式(153)で表される。したがって、バッテリ44に充電される電力は、この式(153)が成立するように制御される。
TG=−(TREQ・NWFL+TEOBJ・NEOBJ)
/{(α+1)NEOBJ−α・NWFL} ……(153)
なお、上述した充電直進モード中における第1〜第3の回転機11〜91の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、Nmf=(α+1)NEOBJ−α・NWFL>0で、NEOBJ>α・NWFL/(α+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<α・NWFL/(α+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部をバッテリ44に充電し、残りを第3回転機91に供給し、回転磁界を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電されるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・アシスト直進モード
アシスト直進モード中、エンジン3の動力を、要求動力よりも小さな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力に加え、バッテリ44の電力を、第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給によって補われる。また、第1〜第3の回転機11〜91を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、アシスト直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、バッテリ44からの電力(エネルギ)とエンジン3の動力の和と等しくなる。また、アシスト直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、上述した図88と同様である。
この場合、第3回転機91で発電する電力は、前記式(150)が成立するように制御される。また、磁界回転数Nmfは、前記式(148)が成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2に関する前記式(151)および(152)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、前記式(4)が成立するように制御される。さらに、第3実施形態と同様、第1および第2のアシストトルクTA1,TA2はそれぞれ、前記式(35)および(36)で表される。したがって、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、これらの式(35)および(36)がそれぞれ成立するように制御される。
なお、上述したアシスト直進モード中における第1〜第3の回転機11〜91の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、Nmf=(α+1)NEOBJ−α・NWFL>0で、NEOBJ>α・NWFL/(α+1)が成立している場合に行われる。
一方、NEOBJ<α・NWFL/(α+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる回転磁界の回転方向が逆転方向の場合において、要求トルクTREQが小さいときには、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力とバッテリ44の電力の双方を、第3回転機91に供給し、回転磁界を逆転させる。また、要求トルクTREQが大きいときには、第1〜第3の回転機11〜91に電力を供給し、ロータ13,23を正転させるとともに、回転磁界を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44からの電力供給によって補われるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・ENG旋回モード
ENG旋回モードには、第1実施形態と同様、第1および第2の右旋回アシストモードが含まれる。まず、第1右旋回アシストモードについて説明する。
・第1右旋回アシストモード
第1右旋回アシストモード中、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜91を制御することによって、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。このようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、第3実施形態と同様、第1右旋回アシストモード中、左前輪伝達トルクTWLTが右前輪伝達トルクTWRTよりも大きくなり、その結果、小さな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。
以下、第1右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図89のように表される。同図に示すように、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数N1の関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1および第3の回転機11,91に電力を供給し、ロータ13を正転させるとともに、回転磁界を逆転させる。また、第2回転機21において、発電を行うとともに、発電した電力を第1および第3の回転機11,91にさらに供給する。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図89のように表される。
第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、図89と前述した図56との比較から明らかなように、第1回転機回転数NM1と、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、前記式(37)で表される。したがって、この式(37)が成立するように、第1回転機回転数NM1は制御される。また、第1回転機トルクTM1は次式(154)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(154)が成立するように制御される。
TM1=-{(G2・G3+G3+1)TLREQ+(G2・G3+G3)α・TEOBJ/(1+α)+G2・G3・TRREQ}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(154)
さらに、図89から明らかなように、第2回転機回転数NM2と左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、前記式(39)で表される。したがって、第2回転機回転数NM2は、この式(39)が成立するように制御される。また、図89から明らかなように、第2回転機発電トルクTG2は、次式(155)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(155)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)TRREQ+(G1+1)α・TEOBJ/(1+α)+G1・TLREQ}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(155)
さらに、駆動用等価トルクTeは次式(156)で表される。したがって、第3回転機91に供給する電力は、この式(156)が成立するように制御される。
Te=−TEOBJ/(1+α) ……(156)
また、磁界回転数Nmfは、前記式(148)が成立するように制御される。
さらに、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21に電力を供給し、そのロータ23を正転させるとともに、第2回転機21に供給する電力は、上記式(155)において第2回転機発電トルクTG2を第2回転機トルクTM2に置き換えた式が成立するように、制御される。
また、第1右旋回アシストモード中でかつ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に(第2回転機21のロータ23が正転する場合には、第1および第2の回転機11,21に)供給する。この場合、第3回転機91で発電する電力は、発電用等価トルクTgに関する前記式(150)が成立するように制御される。
次に、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図90のように表される。同図に示すように、この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、第1ロータ回転数N1とエンジン回転数NEの関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、基本的には、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、それらのロータ13,23を正転させる。さらに、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる要求動力が、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力よりも小さいときには、その余剰分が、第3回転機91での発電により電力としてバッテリ44に充電され、逆に大きいときには、その不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給することによって補われる。以上により、左右の前輪伝達動力は、要求動力になるように制御される。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図90のように表される。
第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、図90と図89との比較から明らかなように、第1回転機回転数NM1は、前記式(37)が成立するように制御されるとともに、第1回転機11に供給する電力は、第1回転機トルクTM1に関する前記式(154)が成立するように制御される。
また、第2回転機回転数NM2は、前記式(39)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(155)における第2回転機発電トルクTG2を第2回転機トルクTM2に置き換えた次式(157)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)TRREQ+(G1+1)α・TEOBJ/(1+α)+G1・TLREQ}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(157)
また、磁界回転数Nmfは、前記式(148)が成立するように制御されるとともに、第3回転機91で発電する電力は、前記式(150)が成立するように制御される。
以上の第1〜第3の回転機11〜91の制御において、エンジン3の動力の一部を用いて第3回転機91で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する場合には、エンジン3の動力が、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3、および第1〜第3の回転機11〜91を介して、左右の前輪WFL,WFRに分配され、左前輪WFLに分配されるエンジン3の動力は、右前輪WFRのそれよりも大きくなる。
・第2右旋回アシストモード
この第2右旋回アシストモード中、基本的には、第1右旋回アシストモードと同様、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜91を制御することによって、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御し、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力とエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、第2右旋回アシストモード中、左前輪WFLには駆動力が、右前輪WFRには制動力が、それぞれ作用し、その結果、大きな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左前輪WFLに伝達される動力と、右前輪WFRに作用する制動力との差が、要求動力になる。
以下、第2右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図91のように表される。同図に示すように、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係の関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数N1の関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1〜第3の回転機11〜91に電力を供給し、ロータ13を正転させるとともに、ロータ23および回転磁界をいずれも逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図91のように表される。また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2と磁界回転数Nmfをそれぞれ、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(37)、(39)および(148)が成立するように制御する。また、第3回転機91に供給する電力は、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(156)が成立するように制御される。
図91から明らかなように、第1回転機トルクTM1は次式(158)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(158)が成立するように制御される。
TM1=-{(G2・G3+G3+1)TLREQ+G2・G3・BRREQ+(G2・G3+G3)α・TEOBJ/(1+α)}
/(G2・G3+G3+1+G1) ……(158)
さらに、第2回転機トルクTM2は次式(159)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(159)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・TLREQ+(G1+1)α・TEOBJ/(1+α)}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(159)
また、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第3の回転機11,91に供給する。この場合、上記の式(159)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えた式が成立するように、第2回転機21で発電する電力は制御される。
さらに、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に(第2回転機21のロータ23が正転する場合には、第1回転機11のみに)供給する。この場合、第3回転機91で発電する電力は、前記式(150)が成立するように制御される。
次に、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図92のように表される。同図に示すように、高車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数NR1の関係によって定まる第3回転機91の回転磁界の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行う。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行う。さらに、第2および第3の回転機21,91で発電した電力を、基本的には、第1回転機11に供給し、そのロータ13を正転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図92のように表される。また、図92と前述した図91との比較から明らかなように、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2と磁界回転数Nmfはそれぞれ、前記式(37)、(39)および(148)が成立するように制御される。
さらに、第1回転機11に供給する電力を、第1回転機トルクTM1に関する前記式(158)が成立するように制御する。また、第2回転機21で発電する電力を、前記式(159)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えた次式(160)が成立するように制御する。
TG2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・TLREQ+(G1+1)α・TEOBJ/(1+α)}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(160)
また、第3回転機91で発電する電力は、前記式(150)が成立するように制御される。
一方、車両Vの左旋回中には、左旋回アシスト力を生じさせる第1および第2の左旋回アシストモードによる運転が選択される。これらの第1および第2の左旋回アシストモードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、上述した第1および第2の右旋回アシストモードと同様に行われるので、その詳細な説明については省略する。なお、第1および第2の左右の旋回アシストモード中、バッテリ44の充電・放電が行われる場合があるため、各モードの選択の可否は、バッテリ44の過充電・過放電を防止するために、バッテリ44の充電状態に応じて決定される。
・ENG後進モード
ENG後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図93のように表される。この場合、エンジン3の動力を増大させるとともに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行う。また、第3回転機91で発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、それらのロータ13,23を逆転させる。これにより、図93から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが逆転方向に上昇し、ひいては、車両Vが後方に発進する。
また、ENG後進モード中、第3実施形態と同様、車両Vの後進を支障なく行うべく、第3回転機91で発電する電力を、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2が、発電用等価トルクTgにより定まる第3要素伝達トルクT3Tを上回るように、制御する。さらに、この場合、第1回転機トルクTM1は前記式(143)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力を、この式(143)が成立するように制御する。また、第2回転機トルクTM2は前記式(144)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(144)が成立するように制御される。
さらに、ENG後進モード中、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、車両Vが直進しているときには、前記式(4)が成立するように制御され、車両Vが旋回しているときには、前記式(37)および(39)がそれぞれ成立するように制御される。さらに、第3回転機91で発電した電力のみでは不足する場合には、バッテリ44の電力が、第1および第2の回転機11,21に供給される。また、ENG後進モード中、第3回転機91の機能から明らかなように、エンジン3に作用する負荷は、発電用等価トルクTgが大きいほどより大きくなる。このため、停車中の車両Vを後方に発進させる場合には、エンジンストールを防止するために、発電用等価トルクTgを漸増させる。また、磁界回転数Nmfは、前記式(145)が成立するように制御される。
・減速運転モード
この減速運転モードには、第3実施形態と同様、減速直進モードおよび減速旋回モードが含まれる。まず、減速直進モードについて説明する。
・減速直進モード
この減速直進モード中、車両Vの慣性エネルギを用いて、第1〜第3の回転機11〜91で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。減速直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図94のように表される。この場合、第1〜第3の回転機11〜91を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、要求制動トルクBREQになるように制御する。これにより、車両Vを、その良好な直進性を確保しながら、減速させることができる。
さらに、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜91の制御によって、エンジン回転数NEを非常に低い所定回転数NELになるように制御する。これにより、クランク軸3aを回転させることによる損失が抑えられるので、第1〜第3の回転機11〜91で発電し、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。それに加え、排気管への新気の導入を抑えることができ、それにより、触媒が活性状態に維持され、したがって、減速直後のエンジン3の運転の再開時、排ガスを触媒で十分に浄化することができる。
この場合、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。また、図94から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1は次式(161)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(161)が成立するように制御される。
TG1=-{(2・G2・G3+G3+1)BREQ-(G2・G3+G3)α・Tg}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(161)
さらに、第2回転機発電トルクTG2は次式(162)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(162)が成立するように制御される。
TG2=-{(2・G1+1+G3)BREQ-(G1+1)α・Tg}/(G1+1+G3+G2・G3) ……(162)
また、第3回転機91で発電する電力と、磁界回転数Nmfは、次式(163)が成立するように制御される。
Nmf=(α+1)NEL−α・NWFL ……(163)
・減速旋回モード
減速旋回モードには、第3実施形態と同様、減速右旋回モードおよび減速左旋回モードが含まれる。これらのモードの動作は互いに同様に行われるので、以下、両者を代表して、減速右旋回モード中の動作についてのみ説明する。
・減速右旋回モード
この減速右旋回モード中、第1〜第3の回転機11〜91を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに制動トルクを作用させるとともに、両者WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御する。以上により、減速右旋回モード中、オーバーステアを抑制しながら、車両Vを安定的に旋回させることができる。
以下、減速右旋回モード中の動作について、まず、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図95のように表される。同図に示すように、この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数N1の関係によって定まる回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、第1および第3の回転機11,91で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第2回転機21に供給するとともに、そのロータ23を逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図95のように表される。また、図95と図94の比較から明らかなように、第1回転機発電トルクTG1は次式(164)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(164)が成立するように制御される。
TG1=-{(G2・G3+G3+1)BLREQ+G2・G3・BRREQ-(G2・G3+G3)α・Tg}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(164)
さらに、第2回転機トルクTM2は次式(165)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(165)が成立するように制御される。
TM2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ-(G2・G3+G3)α・Tg}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(165)
また、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
さらに、第3回転機91で発電する電力と磁界回転数Nmfは、より大きな電力をバッテリ44に充電するとともに、触媒を活性状態に維持するために、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機91で発電する電力と、磁界回転数Nmfを、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
次に、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図96のように表される。同図に示すように、この場合には、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転機11,21のロータ13,23の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第1ロータ回転数N1の関係によって定まる回転磁界の回転方向は、正転方向になる。このような場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第3回転機91に供給するとともに、その回転磁界を正転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図96のように表される。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、図96と図95の比較から明らかなように、第1回転機11で発電する電力は、前記式(164)において発電用等価トルクTgを駆動用等価トルクTeに置き換えた次式(166)が成立するように制御される。
TG1=-{(G2・G3+G3+1)BLREQ+G2・G3・BRREQ-(G2・G3+G3)α・Te}/(G2・G3+G3+1+G1)
……(166)
また、第2回転機21で発電する電力は、前記式(165)における第2回転機トルクTM2を第2回転機発電トルクTG2に置き換えるとともに、発電用等価トルクTgを駆動用等価トルクTeに置き換えた次式(167)が成立するように制御される。
TG2=-{(G1+1+G3)BRREQ+G1・BLREQ-(G2・G3+G3)α・Te}/(G1+1+G3+G2・G3)
……(167)
さらに、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。
また、第3回転機91に供給する電力と、磁界回転数Nmfは、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機91に供給する電力と、磁界回転数Nmfを、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる回転磁界の回転方向が、逆転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、バッテリ44に充電する。この場合における第3回転機91で発電する電力と、磁界回転数Nmfの制御は、上述した手法によって行われ、その詳細な説明については省略する。
・EV発進モード
EV発進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図97のように表される。EV発進モード中、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給するとともに、ロータ13,23を正転させる。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。
また、図97から明らかなように、EV発進モード中、第1および第2の回転機11,21の動力は、第3要素を介して、第1ロータ93に伝達され、それにより、第1ロータ93が第3要素とともに正転する。それに伴い、第3回転機91において、発電が行われていなくても、回転磁界が発生し、その場合には、それによる回転抵抗(以下「磁界回転抵抗」という)Dmfが、第1ロータ94や第2ロータ95に作用する。この場合、この磁界回転抵抗Dmfを反力として、第1および第2の回転機11,21から第1ロータ94に伝達された第1ロータ伝達トルクT1が、第2ロータ95を介してクランク軸3aに伝達され、エンジン回転数NEが上昇するおそれがある。
このため、EV発進モード中には、上記の磁界回転抵抗Dmfを打ち消すように、第3回転機91に電力を供給し、回転磁界を逆転させる。この場合、第3回転機91に供給する電力は、駆動用等価トルクTeが磁界回転抵抗Dmfと等しくなるように制御される。
また、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、車両Vの良好な直進性を得ることができる。この場合、第1および第2の回転機11,21は、第3実施形態と同様に制御される。また、EV発進モード中で且つ車両Vの旋回時、第3実施形態と同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させることが可能である。
・EV走行中ENG始動モード
EV走行中ENG始動モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図98のように表される。EV走行中ENG始動モードでは、第1および第2の回転機11,21から第1ロータ94に伝達される動力を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給し、両者11,21のロータ13,23を正転させる。これにより、第1および第2の回転機11,21から第1ロータ94に伝達された第1ロータ伝達トルクT1は、発電用等価トルクTgを反力として、第2ロータ95に伝達され、さらに、クランク軸3aに伝達される。換言すれば、第1ロータ94に伝達された第1および第2の回転機11,21の動力(エネルギ)が、クランク軸3aとステータ93に分配される。また、磁界回転数Nmfを値0になるように制御し、それにより、第1および第2の回転機11,21からステータ93に分配されるエネルギを減少させるとともに、クランク軸3aに分配される動力を増大させ、それにより、クランク軸3aが正転する。その状態で、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。
また、EV走行中ENG始動モードでは、磁界回転数Nmfを次式(168)が成立するように制御することによって、エンジン回転数NEを始動時用回転数NSTになるように制御する。
Nmf=(α+1)NST−α・NWFL ……(168)
この場合において、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが低いときには、第1ロータ回転数NR1と始動時用回転数NSTの関係によって定まる回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、バッテリ44から第3回転機91に電力を供給するとともに、回転磁界を正転させ、磁界回転数Nmfを制御することによって、エンジン回転数NEを始動時用回転数NSTになるように制御する。したがって、EV走行中ENG始動モードでは、停車中ENG始動モードと同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
さらに、図98から明らかなように、発電用等価トルクTg(または駆動用等価トルクTe)は、左右の前輪WFL,WFRに対し、制動トルクとして作用する。このため、EV走行中ENG始動モードでは、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの急減を防止し、良好なドライバビリティを確保するために、第3回転機91で発電する電力(第3回転機91に供給する電力)は、発電用等価トルクTg(駆動用等価トルクTe)が漸増するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが直進しているときには、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2は、通常直進モードと同様、前記式(4)が成立するように制御される。さらに、この場合、第1回転機トルクTM1は前記式(143)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(143)が成立するように制御される。また、第2回転機トルクTM2は前記式(144)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(144)が成立するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが旋回しているときには、第1および第2の回転機回転数NM1,NM2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(37)および(39)が成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力はそれぞれ、基本的には、上記の式(143)および(144)が成立するように制御される。この場合、ENG旋回モードと同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに左右の旋回アシスト力を作用させてもよい。
・EV後進モード
EV後進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図99のように表される。同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したEV発進モードを示す図97における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、EV後進モード中、第1〜第3の回転機11〜91の制御は、ロータ13および23を逆転させるとともに、回転磁界を正転させる以外は、EV発進モードと同様に行われる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、第1および第2のロータ94,95が、本発明における第3および第4のロータにそれぞれ相当する。また、永久磁石94aが本発明における磁石に、コア95aが本発明における軟磁性体に、それぞれ相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、本実施形態によれば、第1〜第5の要素は、第1実施形態と同様に構成されている。また、第1要素が第1回転機11のロータ13に、第2要素が左前輪WFLに、それぞれ機械的に連結されている。さらに、第3要素が第3回転機91の第1ロータ94に機械的に連結されており、第4要素が右前輪WFRに、第5要素が第2回転機21のロータ23に、それぞれ機械的に連結されている。また、第3回転機91の第2ロータ95が、クランク軸3aに機械的に連結されている。さらに、第1回転機11のステータ12と第3回転機91のステータ93、および、第2回転機21のステータ22と第3回転機91のステータ93はそれぞれ、互いに電気的に接続されている。
さらに、図89〜図92を用いて説明したように、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させ、車両Vの左右の旋回アシストを行うことができる。この場合、左右の前輪WFL,WFRに連結された第2および第4の要素が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の前輪WFL,WFRの回転(回転数・トルク)を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。また、第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3の間の連結によって、第1〜第5の要素を適切に構成することができる。さらに、図88などを用いて説明したように、エンジン3の動力を無段階に減速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができ、エンジン回転数NEを、より良好な燃費が得られる目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するので、動力装置1Cの効率を高めることができる。
また、充電および放電可能なバッテリ44が、第1〜第3の回転機11〜91に電気的に接続されており、充電直進モードなどで説明したように、エンジン3の動力を最良燃費動力に制御するとともに、要求動力に対するエンジン3の動力の余剰分が、電力としてバッテリ44に充電される。さらに、アシスト直進モードなどで説明したように、要求動力に対するエンジン3の動力の不足分が、上記のバッテリ44に充電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給することで補われる。以上により、エンジン3の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置1Cの効率をさらに高めることができる。
また、第3実施形態と同様、第3回転機91が一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有しているので、第1実施形態で述べたエンジン3の動力を変速するための第4遊星歯車装置PS4は不要であり、その分、動力装置1Cの小型化を図ることができる。さらに、第3実施形態の第3回転機80を作動させるには、第1および第2のコア83a,83bから成る2つの軟磁性体列を用いなければならないのに対し、本実施形態の第3回転機91を作動させるには、コア95aから成る単一の軟磁性体列を用いればよいので、第3回転機91の構成を単純化でき、ひいては、動力装置1Cの構成の単純化とコストの削減を図ることができる。
また、第3回転機91において、極対数比αが値2.0に設定されている。これにより、前記式(141)から明らかなように、エンジントルクTENGを伝達するためには、発電用等価トルクTg(駆動用等価トルクTe)を、エンジントルクTENGの1/3の大きさに制御すれば足りる。一方、第3実施形態の第3回転機80では、エンジントルクTENGを伝達するためには、前述した機能から明らかなように、発電用等価トルクTGE(駆動用等価トルクTSE)を、エンジントルクTENGの1/2の大きさに制御しなければならない。以上のように、第3実施形態と比較して、発電用等価トルクTgおよび駆動用等価トルクTeを低減できるので、ステータ93や第3PDU43の小型化を図ることができ、ひいては、動力装置1Cのさらなる小型化およびコストの削減を図ることができる。
さらに、図88から明らかなように、極対数比αが値1.0よりも大きい場合において、エンジン回転数NEが第1ロータ回転数N1よりも高いときには、磁界回転数Nmfが過大になり、第3回転機91の駆動・発電効率が低下する場合がある。このため、極対数比αを値1.0よりも小さな値に設定することによって、図88から明らかなように、値1.0よりも大きな値に設定した場合よりも磁界回転数Nmfを低下させることができ、それにより、上述した磁界回転数Nmfの過大化による第3回転機91の駆動・発電効率の低下を防止することができる。
なお、第4実施形態は、第3回転機91における電機子磁極が4個、磁石磁極が8個、コア95aが6個であり、すなわち、電機子磁極の数と磁石磁極の数とコア95aの数との比が、1:2:1.5の例であるが、これらの数の比が1:m:(1+m)/2(m≠1.0)を満たすものであれば、電機子磁極、磁石磁極およびコア95aの数として、任意の数を採用可能である。また、第4実施形態では、コア95aを鋼板で構成しているが、他の軟磁性体で構成してもよい。さらに、第4実施形態では、ステータ93および第1ロータ94を、径方向の外側および内側にそれぞれ配置しているが、これとは逆に、径方向の内側および外側にそれぞれ配置してもよい。また、第4実施形態では、ステータ93、第1および第2のロータ94,95を径方向に並ぶように配置し、いわゆるラジアルタイプとして第3回転機91を構成しているが、ステータ93、第1および第2のロータ94,95を軸線方向に並ぶように配置し、いわゆるアキシャルタイプとして第3回転機91を構成してもよい。
さらに、第4実施形態では、1つの磁石磁極を、単一の永久磁石94aの磁極で構成しているが、複数の永久磁石の磁極で構成してもよい。例えば、2つの永久磁石の磁極がステータ93側で近づき合うように、これらの2つの永久磁石を逆V字状に並べることにより、1つの磁石磁極を構成することによって、前述した磁力線MLの指向性を高めることができる。また、第4実施形態における永久磁石94aに代えて、電磁石を用いてもよい。さらに、第4実施形態では、コイル93c〜93eを、U相〜W相の3相コイルで構成しているが、回転磁界を発生できれば、このコイルの相数はこれに限らず、任意である。また、スロット93bの数として、第4実施形態で示した以外の任意の数を採用してもよいことはもちろんである。さらに、第4実施形態では、U相〜W相のコイル93c〜93eをスロット93bに分布巻きで巻回しているが、これに限らず、集中巻きでもよい。また、第4実施形態では、スロット93bや、永久磁石94a、コア95aを等間隔に配置しているが、不等間隔に配置してもよい。
さらに、第3および第4の実施形態では、本発明における第3要素に相当する第3キャリアC3、第1および第2のリングギヤR1,R2は、互いに一体に設けられているが、第1ロータ81、94に連結されていれば、必ずしも互いに一体に設けられていなくてもよい。また、第3および第4の実施形態では、本発明における第1および第3のメンバはそれぞれ、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1であるが、これとは逆に、第1リングギヤR1および第1サンギヤS1でもよい。すなわち、第1リングギヤR1を第1回転機11のロータ13に、第1サンギヤS1を第3回転機80、91の第1ロータ81、94に、それぞれ連結(直結)してもよい。さらに、第3および第4の実施形態では、本発明における第7および第9のメンバはそれぞれ、第2リングギヤR2および第2サンギヤS2であるが、これとは逆に、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2でもよい。すなわち、第2サンギヤS2を第1ロータ81、94に、第2リングギヤR2を第2回転機21のロータ23に、それぞれ連結(直結)してもよい。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、差動装置の第1〜第5の要素を、いずれもシングルピニオンタイプの第1〜第3の遊星歯車装置PS1〜PS3の組み合わせで構成しているが、シングルピニオンタイプおよびダブルピニオンタイプの遊星歯車装置においてキャリアとリングギヤが共用化された、いわゆるラビニオタイプの遊星歯車装置(以下「ラビニオ式遊星歯車装置」という)PSRと、第2遊星歯車装置PS2を用いて構成してもよい。図100は、この場合における動力装置1Dを、左右の前輪WFL,WFRとともに概略的に示している。
図100に示すように、ラビニオ式遊星歯車装置PSRは、サンギヤSAおよびSBと、両ギヤSA,SBの外周に設けられたリングギヤRと、サンギヤSAおよびリングギヤRに噛み合う複数のプラネタリギヤPAと、サンギヤSBおよびリングギヤRにそれぞれ噛み合うとともに、互いに噛み合う、いずれも複数のプラネタリギヤPBおよびPCと、これらのプラネタリギヤPA〜PCを回転自在に支持するキャリアCを有している。サンギヤSAは、前述した回転軸14に一体に設けられており、第1回転機11のロータ13に機械的に直結され、ロータ13と一体に回転自在になっている。キャリアCは、前述した左駆動軸DSLに一体に設けられており、左前輪WFLに機械的に連結されている。サンギヤSBは、前述した回転軸5に一体に設けられており、第2キャリアC2と一体に回転自在になっている。リングギヤRは、前述した連結部7に一体に設けられており、第2リングギヤR2と一体に回転自在になっている。
図101は、動力装置1Dの各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示している。同図に示すように、この場合にも、ラビニオ式遊星歯車装置PSRおよび第2遊星歯車装置PS2の間の連結によって、第1〜第5の要素が構成される。したがって、第1実施形態による効果を、同様に得ることができる。また、図100から明らかなように、この動力装置1Dでは、キャリアCおよびリングギヤRが共用化されているので、その分、動力装置1Dの小型化を図ることができる。さらに、リングギヤRと第2リングギヤR2の共用化を図ることが可能であり、それにより、ラビニオ式遊星歯車装置PSRおよび第2遊星歯車装置PS2が一体化された単一の差動装置によって、第1〜第5の要素を構成することができるとともに、動力装置1Dのさらなる小型化を図ることができる。
なお、図100に示す動力装置1Dは、第1実施形態の動力装置1にラビニオ式遊星歯車装置PSRを適用したタイプのものであるが、第2〜第4の実施形態の動力装置1A〜1Cにラビニオ式遊星歯車装置PSRを適用してもよいことは、もちろんである。この場合、動力装置1Dでは、本発明における第3要素に相当する第2リングギヤR2およびリングギヤRは、互いに一体に設けられているが、エンジン3に連結されていれば、必ずしも互いに一体に設けられていなくてもよい。このことは、動力装置1Aにラビニオ式遊星歯車装置PSRを適用した場合についても、同様に当てはまる。さらに、動力装置1Bおよび1Cにラビニオ式遊星歯車装置PSRを適用した場合には、第2リングギヤR2およびリングギヤRは、第1ロータ81、94に連結されていれば、必ずしも互いに一体に設けられていなくてもよい。また、動力装置1Dでは、本発明における第4要素に相当する第2キャリアC2およびサンギヤSBは、互いに一体に設けられているが、右前輪WFRに連結されていれば、必ずしも互いに一体に設けられていなくてもよい。
さらに、動力装置1Dでは、本発明における第2要素に相当するキャリアCを左前輪WFLに、第4要素に相当する第2キャリアC2およびサンギヤSBを右前輪WFRに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、第4要素を左前輪WFLに、第2要素を右前輪WFRに、それぞれ連結してもよい。また、動力装置1Dでは、本発明における第1および第2の要素がそれぞれ、サンギヤSAおよびキャリアCで構成され、第3要素が、リングギヤRおよび第2リングギヤR2で、第4要素が、サンギヤSBおよび第2キャリアC2で、第5要素が第2サンギヤS2で、それぞれ構成されているが、第1〜第5の要素は、このようなラビニオ式遊星歯車装置PSRおよび第2遊星歯車装置PS2の組み合わせに限らず、他の適当な組み合わせによって、自由に構成することができる。例えば、第1および第2の要素をそれぞれ、サンギヤSBおよびリングギヤRで構成し、第3要素を、キャリアCおよび第2リングギヤR2で、第4要素を、サンギヤSAおよび第2キャリアC2で、第5要素を第2サンギヤS2で、それぞれ構成してもよい。
さらに、実施形態では、本発明における第2要素に相当する第1キャリアC1および第3リングギヤR3は、互いに一体に設けられているが、左前輪WFLに連結されていれば、必ずしも互いに一体に設けられていなくてもよい。また、実施形態では、本発明における第4要素に相当する第2キャリアC2および第3サンギヤS3は、互いに一体に設けられているが、右前輪WFRに連結されていれば、必ずしも互いに一体に設けられていなくてもよい。さらに、実施形態では、本発明における第2要素に相当する第1キャリアC1および第3リングギヤR3を左前輪WFLに、第4要素に相当する第2キャリアC2および第3サンギヤS3を右前輪WFRに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、第4要素を左前輪WFLに、第2要素を右前輪WFRに、それぞれ連結してもよい。
また、実施形態では、本発明における第4および第6のメンバはそれぞれ、第3リングギヤR3および第3サンギヤS3であるが、これとは逆に、第3サンギヤS3および第3リングギヤR3でもよい。すなわち、第3サンギヤS3を左前輪WFLに、第3リングギヤR3を右前輪WFRに、それぞれ連結してもよい。さらに、実施形態における各種の回転要素の間を連結する手段は、本発明における条件を満たす限り、任意に採用でき、例えば実施形態で述べたギヤに代えて、プーリなどを用いてもよい。
また、実施形態では、本発明における第1〜第4の差動装置は、第1〜第4の遊星歯車装置PS1〜PS4であるが、各請求項で述べたような機能を有するものであれば、任意の装置で構成することが可能である。例えば、遊星歯車装置のギヤに代えて、表面間の摩擦によって動力を伝達する複数のローラを有し、遊星歯車装置と同等の機能を有するような装置でもよい。さらに、詳細な説明は省略するが、特開2008−39045に開示されるような複数の磁石や軟磁性体の組み合わせで構成された装置でもよい。また、第1〜第4の遊星歯車装置PS1〜PS4に代えて、歯数が互いに等しい第1および第2のサイドギヤと、両ギヤに噛み合う複数のピニオンギヤと、これらのピニオンギヤを回転自在に支持するデフケースを有するディファレンシャルギヤを用いてもよい。その場合には、第2実施形態において、エンジン3の動力を、第1〜第3の回転機11〜31を用いることなく、左右の前輪WFL,WFRに1:1の分配比で分配できるので、前述したENG発進モードや通常直進モードにおける第1〜第3の回転機11〜31に関する制御が不要になり、したがって、ECU2の演算負荷を軽減することができる。さらに、第1〜第4の遊星歯車装置PS1〜PS4に代えて、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置を用いてもよい。
また、実施形態では、本発明における蓄電装置は、バッテリ44であるが、キャパシタでもよい。さらに、バッテリ44を省略してもよい。また、実施形態では、エンジン3や第1〜第3の回転機11、21、31、80、91を制御する制御装置を、ECU2および第1〜第3のPDU41〜43で構成しているが、マイクロコンピュータと電気回路の組み合わせで構成してもよい。
さらに、実施形態では、第1〜第3の回転機11,21,31は、DCモータであるが、各請求項で述べた機能を有するものであれば、これに限らず、例えばACモータでもよい。また、実施形態では、本発明の原動機としてのエンジン3は、ガソリンエンジンであるが、動力を出力可能な出力部を有する任意の原動機でもよい。例えば、ディーゼルエンジンや、クランク軸が鉛直方向に配置された船外機などのような船舶推進機用エンジンを含む様々な産業用の内燃機関でもよく、あるいは、外燃機関や、電動機、水車、風車、人力により駆動されるペダルなどでもよい。さらに、実施形態では、本発明における左右の被駆動部は、左右の前輪WFL,WFRであるが、左右の後輪WRL,WRRでもよい。また、実施形態では、本発明における輸送機関は、車両Vであるが、例えば船舶や航空機でもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。