添付の図面を参照し、本発明に係る能動的消音システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、一例として示す能動的消音システム10Aの構成図であり、図2は、応答特性を説明する図である。図1では、長手方向を矢印Xで示し、幅方向を矢印Yで示す。このシステム10Aは、第1空調ダクト11および第2空調ダクト12と、参照マイクロフォン13(第1センサ)および誤差マイクロフォン14(第2センサ)と、消音用スピーカ15(第2音波発生装置)と、消音器16と、目標マイクロフォン17(第3センサ)と、コントローラ18とから構成されている。参照マイクロフォン13や誤差マイクロフォン14、消音用スピーカ15、目標マイクロフォン17は、インターフェイスを介してコントローラ18に接続されている。なお、このシステム10Aにおけるサンプリング周波数は、3kHz〜40kHzの範囲、好ましくは、10kHz〜40kHzの範囲にある。
第1空調ダクト11と第2空調ダクト12とは、互いに並行して長手方向へ延びている。それらダクト11,12は、その外形形状と幅方向の径とが略同一であり、単位長さ当たりの内部空間の容積が略同一である。ただし、それらダクト11,12は例示に過ぎず、ダクトの外形形状や幅方向の径が同一である必要はなく、さらに、単位長さ当たりの内部空間の容積が同一である必要はない。また、ダクトが並行して存在する必要はない。したがって、第1空調ダクト11と第2空調ダクト12とでそれぞれ異なる外形形状のそれらを使用することもでき、単位長さ当たりの内部空間の容積が異なるそれらを使用することもできる。第1および第2空調ダクト11,12が互いに交差して延びていてもよい。第1および第2空調ダクト11,12では、同一の騒音源19から発生する第1音波(騒音)が長手方向へ伝播する。
参照マイクロフォン13は、第1空調ダクト11の内部空間20(第1空間)に配置され、騒音源19から長手方向へ所定寸法離間した位置に設置されている。参照マイクロフォン13には、それが検出した音波を増幅するアンプ21が接続されている。コントローラ18とアンプ21との間には、図示はしていないが、A/D変換装置が接続されている。参照マイクロフォン13は、騒音源19から発生してダクト11の内部空間20を伝播するアナログの第1音波と消音用スピーカ15から発生する後記するアナログの第2音波との合成音波を検出し、検出した合成音波をアンプ21に出力する。ただし、システム10Aの起動時では、参照マイクロフォン13は第1音波のみを検出する。合成音波は、アンプ21において増幅された後、A/D変換装置においてデジタルの第1入力信号(第1信号)に変換される。第1入力信号は、A/D変換装置からコントローラ18に出力される。
消音用スピーカ15は、第1空調ダクト11の内部空間20に配置され、参照マイクロフォン13を挟んで騒音源19から長手方向へ所定寸法離間した位置に設置されている。消音用スピーカ15は、第1音波と干渉する第2音波をダクト11の内部空間20に発生する。消音用スピーカ15には、第2音波を増幅するアンプ22が接続されている。コントローラ18とアンプ22との間には、図示はしていないが、D/A変換装置が接続されている。
誤差マイクロフォン14は、第1空調ダクト11の内部空間20に配置され、消音用スピーカ15を挟んで参照マイクロフォン13から長手方向へ所定寸法離間した位置に設置されている。誤差マイクロフォン14には、検出した音波を増幅するアンプ23が接続されている。コントローラ18とアンプ23との間には、図示はしていないが、A/D変換装置が接続されている。誤差マイクロフォン14は、第1音波と第2音波との干渉によって生じた干渉音波(誤差音波)を検出し、検出した干渉音波をアンプ23に出力する。ただし、システム10Aの起動時では、誤差マイクロフォン14は第1音波のみを検出する。干渉音波は、アンプ23において増幅された後、A/D変換装置においてデジタルの第2入力信号(第2信号)に変換される。第2入力信号は、A/D変換装置からコントローラ18に出力される。
消音器16は、第2空調ダクト12の内部空間24(第2空間)に配置され、騒音源19と目標マイクロフォン17との間の略中間位置に設置されている。消音器16は、騒音源19から発生してダクト12の内部空間24を伝播する第1音波を減音する。第1音波は、消音器16によって減音されて減音音波になる。減音音波は、消音器16から目標マイクロフォン17に向かって長手方向へ伝播する。消音器16には、消音サイレンサーが使用されている。消音サイレンサーとしては、吸音材の間に空気を通過させることで、中高音域の騒音を減音する吸音型、または、内部における共鳴の設計によって特定の周波数の騒音を減音する膨張型の少なくとも一方を使用することができる。また、消音器16には、消音サイレンサーの他に、内部を吸音材で被覆した消音チャンバーやダクトの角部に取り付けられる直角消音エルボを使用することもできる。なお、ダクト12の騒音源19と目標マイクロフォン17との間にそれら消音器16の複数を取り付けることもできる。
目標マイクロフォン17は、第2空調ダクト12の内部空間24に配置され、消音器16を挟んで騒音源19から長手方向へ所定寸法離間した位置に設置されている。目標マイクロフォン17には、検出した音波を増幅するアンプ25が接続されている。コントローラ18とアンプ25との間には、図示はしていないが、A/D変換装置が接続されている。目標マイクロフォン17は、第1音波が消音器16によって減音された後の減音音波を検出し、検出した減音音波をアンプ25に出力する。減音音波は、アンプ25において増幅された後、A/D変換装置においてデジタルの第3入力信号(第3信号)に変換される。第3入力信号は、A/D変換装置からコントローラ18に出力される。騒音源19から目標マイクロフォン17までの距離M1は、騒音源19から誤差マイクロフォン14までの距離M2と略同一である。なお、騒音源19から目標マイクロフォン17までの距離M1が騒音源19から誤差マイクロフォン14までの距離M2より長くてもよい。
コントローラ18は、擬似フィードバック信号生成フィルタ26と第1減算装置27と干渉信号生成装置28と第2減算装置29とを備え、図示はしていないが、フィルタ26やそれら装置27,28,29に各種手段を実行させる中央処理部と各種複数のデータを格納するメモリとを有する。コントローラ18には、畳み込み演算を高速に処理するDSP(Digital Signal Processor)が使用されているが、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を使用することもできる。
コントローラ18は、フィルタ26やそれら装置27,28,29を介して所定の干渉信号を生成し、消音用スピーカ15を介して第2音波をダクト11の内部空間20に発生させる。コントローラ18は、第2音波から減音音波を除いた残余の音波を(0)とするための干渉音波と第2音波とを干渉させることで、干渉音波と減音音波とを同一にする。残余の音波を打ち消す。コントローラ18には、図示はしていないが、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイやプリンタ等の出力装置がインターフェイスを介して接続されている。
メモリの内部アドレスファイルには、中央処理部を介してフィルタ26や各装置27,28,29にこのシステム10Aの各手段を実行させるためのアプリケーションが格納されている。コントローラ18の中央処理部は、メモリに記憶されたオペレーティングシステムによる制御に基づいて、メモリからアプリケーションを起動し、起動したアプリケーションに従って、以下の各手段を実行する。中央処理部は、干渉信号生成装置28にデジタルの干渉信号を生成させ(干渉信号生成手段)、擬似フィードバック信号生成フィルタ26にデジタルの擬似フィードバック信号を生成させる(擬似フィードバック信号生成手段)。
コントローラ18の中央処理部は、干渉信号を干渉信号生成装置28から消音用スピーカ15に出力させ(干渉信号出力手段)、擬似フィードバック信号を擬似フィードバック信号生成フィルタ26から第2減算装置29に出力させる(擬似フィードバック信号出力手段)。干渉信号とは、騒音源19から発生してダクト11の空間内部20を伝播する第1音波(騒音)と消音用スピーカ15が発生する第2音波との干渉音波のうち、目標マイクロフォン17からの減音音波を除いた残余の音波と逆位相同音圧の第2音波となる信号である。擬似フィードバック信号とは、消音用スピーカ15から参照マイクロフォン13に達する第2音波と推定(同一視)し得る信号である。
コントローラ18の中央処理部は、第2減算装置29に第1入力信号から擬似フィードバック信号を減算させて第4入力信号(第4信号)を生成させ(第4信号生成手段)、第4入力信号を第2減算装置29から干渉信号生成装置28に出力させる(第4信号出力手段)。中央処理部は、第1減算装置27に第2入力信号から第3入力信号を減算させて誤差信号を生成させ(誤差信号生成手段)、誤差信号を第1減算装置27から干渉信号生成装置28に出力させる(誤差信号出力手段)。
擬似フィードバック信号生成フィルタ26は、消音用スピーカ15から参照マイクロフォン13までの時系列伝達特性(Hr)を模擬する。フィルタ26は、あらかじめ推定した消音用スピーカ15と参照マイクロフォン13との間の時系列伝達特性(Hr)(インパルス応答)を反映させた状態で第2減算装置29が第1入力信号から擬似フィードバック信号を減算し得るように、第2減算装置29に対してフィードフォワード制御を実行する。時系列伝達特性55は、図2に示すように、音源50から発生した音波51(パルス)が伝送経路52を伝播して受音点53に達したときのその受音点53における応答特性である。すなわち、時系列伝達特性(Hr)は、消音用スピーカ15から発生した第2音波がダクト11の内部空間20を伝播して参照マイクロフォン13に達したときのそのマイクロフォン13の位置における第2音波の応答特性を示している。
干渉信号生成装置28は、デジタルフィルタ30と、アダプティブデジタルフィルタ31(適応デジタルフィルタ)と、アダプティブデジタルフィルタ31を更新する適応制御演算装置32(Filterd−XLMSアルゴリズム)とから形成されている。デジタルフィルタ30は、消音用スピーカ15から誤差マイクロフォン14までの時系列伝達特性(C)を模擬する。フィルタ30は、あらかじめ推定した消音用スピーカ15と誤差マイクロフォン14との間の時系列伝達特性(C)(インパルス応答)を反映させた状態で適応制御演算装置32がアダプティブデジタルフィルタ31を更新し得るように、適応制御演算装置32に対してフィードフォワード制御を実行する。時系列伝達特性(C)は、消音用スピーカ15から発生した第2音波がダクト11の内部空間20を伝播して誤差マイクロフォン14に達したときのそのマイクロフォン14の位置における第2音波の応答特性を示している。
干渉信号生成装置28は、アダプティブデジタルフィルタ31を適応制御アルゴリズムに基づいて更新する。アダプティブデジタルフィルタ31は、ダクト11の内部空間20の環境の変化に応じ、誤差マイクロフォン14が検出する干渉音波の特性と目標マイクロフォン17が検出する減音音波の特性とを等しくするための干渉音波(誤差信号を最小にする信号)を生成する。
図1のシステム10Aの消音過程の一例を説明すると、以下のとおりである。空調機(図示せず)が始動すると、空調機の騒音源19から第1および第2空調ダクト11,12の内部空間20,24に第1音波(騒音)が伝播する。システム10Aを起動させると、コントローラ18は、メモリに格納されたアプリケーションに従って、フィルタ26や各装置27,28,29に各種手段を実行させる。第1音波は、矢印fで示すように、第1空調ダクト11の内部空間20を伝播しつつ、参照マイクロフォン13に達した後、消音用スピーカ15を通り、誤差マイクロフォン14に達する。また、第2空調ダクト12の内部空間24を伝播しつつ、消音器16に進入し、消音器16において減音されて減音音波となる。減音音波は、目標マイクロフォン17に達する。
システム10Aの起動時では、消音用スピーカ15から第2音波が発生しておらず、参照マイクロフォン13に検出された第1音波(騒音)がダクト11の内部空間20を伝播してそのまま誤差マイクロフォン14に達し、第1音波がマイクロフォン14に検出される。第1音波を検出した参照マイクロフォン13は、第1音波をアンプ21に出力する。アンプ21は、第1音波を増幅した後、その第1音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、第1音波をデジタルの第1入力信号に変換し、その第1入力信号を第2減算装置29に出力する。第1音波を検出した誤差マイクロフォン14は、第1音波をアンプ23に出力する。アンプ23は、第1音波を増幅した後、その第1音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、第1音波をデジタルの第2入力信号に変換し、その第2入力信号を第1減算装置27に出力する。減音音波を検出した目標マイクロフォン17は、減音音波をアンプ25に出力する。アンプ25は、減音音波を増幅した後、その減音音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、減音音波をデジタルの第3入力信号に変換し、その第3入力信号を第1減算装置27に出力する。
システム10Aの起動時では擬似フィードバック信号生成フィルタ26において擬似フィードバック信号は生成されていないから、擬似フィードバック信号生成フィルタ26から出力される擬似フィードバック信号の出力信号は(0)である。システム10Aの起動時において第2減算装置29は、第1入力信号から擬似フィードバック信号(0)を減算して第4入力信号(第1入力信号と同一の値の信号)を生成し(第4信号生成手段)、その第4入力信号を干渉信号生成装置28に出力する(第4信号出力手段)。
システム10Aの起動時において第1減算装置27は、第1音波を表す第2入力信号から第3入力信号を減算して誤差信号を算出し(誤差信号生成手段)、その誤差信号を干渉信号生成装置28に出力する(誤差信号出力手段)。システム10Aの起動時では、第2入力信号と第3入力信号との差分である誤差信号の値は最大となっている。干渉信号生成装置28を形成するデジタルフィルタ30は、あらかじめ推定した消音用スピーカ15から誤差マイクロフォン14までの応答特性を模擬した時系列伝達特性(C)を使用し、第4入力信号にその時系列伝達特性(C)を畳み込み演算し、その結果を干渉信号生成装置28を形成する適応制御演算装置32に出力する。
適応制御演算装置32は、二次経路の時系列伝達特性を考慮しつつ、誤差信号を用いてアダプティブデジタルフィルタ31を更新する。具体的に適応制御演算装置は、Δアダプティブデジタルフィルタ(ΔADF)をサンプリング周波数(3kHz〜40kHz)に合わせて所定の時間間隔で時系列に生成し、Δアダプティブデジタルフィルタを現在のアダプティブデジタルフィルタ(ADF)に加算することで現在から未来に向かってアダプティブデジタルフィルタを更新する。
干渉信号生成装置28は、第2減算装置29から出力された第4入力信号にアダプティブデジタルフィルタ31を畳み込み演算し、第2入力信号を最小にする干渉信号を時系列に生成する(干渉信号生成手段)。干渉信号生成装置28は、生成した干渉信号を擬似フィードバック信号生成フィルタ26とD/A変換装置とに出力する(干渉信号出力手段)。D/A変換装置は、デジタルの干渉信号をアナログの第2音波に変換し、その第2音波をアンプ22に出力する。アンプ22は、第2音波を増幅し、増幅した第2音波を消音用スピーカ15に出力する。
消音用スピーカ15は、第2音波をダクト11の内部空間20に発生させる。第2音波は、スピーカ15から参照マイクロフォン13に向かってダクト11の内部空間20を伝播するとともに、スピーカ15から誤差マイクロフォン14に向かって内部空間20を伝播する。第2音波は、第1音波と干渉しながら誤差マイクロフォン14に向かい、第1音波のうちの第2空調ダクト12の消音器16で減衰された周波数帯の音波と干渉し、当該帯域の音波を打ち消す。ただし、第2音波には、第2空調ダクト12の消音器16で減衰されない周波数帯の音波は含まれないから、当該帯域の音波を打ち消すことはなく、第2空調ダクト12の減音音波が持つ特性と同一の特性を持つ音波が第1空調ダクト11の内部空間20に残存する。システム10Aを継続稼動すると、誤差信号が次第に小さくなり、最後に誤差信号のレベルが(0)になって誤差が消滅する。誤差の消滅は、消音器16で減衰された周波数帯の音波を打ち消した状態を表す。
システム10Aの稼動中では、参照マイクロフォン13に向かう第2音波が第1音波と合成され、それらの合成音波が参照マイクロフォン13に検出される。また、誤差マイクロフォン14に向かう第2音波がマイクロフォン14の位置において第1音波と干渉し、それらの干渉音波が誤差マイクロフォン14に検出される。合成音波は、アンプ21で増幅された後、A/D変換装置でデジタルの第1入力信号に変換されて第2減算装置29に出力される。
擬似フィードバック信号生成フィルタ26は、あらかじめ推定した消音用スピーカ15から参照マイクロフォン13までの伝送経路(三次経路)を模擬した時系列伝達特性(Hr)を使用し、干渉信号にその時系列伝達特性(Hr)を畳み込み演算し、擬似フィードバック信号を生成する(擬似フィードバック信号生成手段)。擬似フィードバック信号生成フィルタ26は、生成した擬似フィードバック信号を第2減算装置29に出力する(擬似フィードバック信号出力手段)。第2減算装置29は、合成信号から干渉信号と推定し得る擬似フィードバック信号を減算して第4入力信号を生成し(第4信号生成手段)、その第4入力信号を干渉信号生成装置28に出力する(第4信号出力手段)。
システム10Aの稼動中において干渉音波を検出した誤差マイクロフォン14は、干渉音波をアンプ23に出力する。アンプ23は、干渉音波を増幅した後、その干渉音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、干渉音波を第2入力信号に変換し、その第2入力信号を第1減算装置27に出力する。第1減算装置27は、干渉音波を表す第2入力信号から第3入力信号を減算して誤差信号を算出し(誤差信号生成手段)、その誤差信号を干渉信号生成装置28に出力する(誤差信号出力手段)。このとき、第2入力信号と第3入力信号との差分である誤差信号の出力レベルはシステム10Aの起動時よりも小さくなっている。
干渉信号生成装置28では、適応制御演算装置32が二次経路の時間遅延と伝送周波数特性とを考慮しつつ、誤差信号を用いてアダプティブデジタルフィルタ31を更新する。干渉信号生成装置28は、第2減算装置27から出力された第4入力信号にアダプティブデジタルフィルタ31を畳み込み演算し、第2入力信号を最小にする干渉信号を生成する(干渉信号生成手段)。干渉信号生成装置28は、生成した干渉信号を擬似フィードバック信号生成フィルタ26とD/A変換装置とに出力する(干渉信号出力手段)。D/A変換装置は、デジタルの干渉信号をアナログの第2音波に変換し、その第2音波をアンプ22に出力する。アンプ22は、第2音波を増幅した後、その第2音波を消音用スピーカ15に出力する。消音用スピーカ15は、第2音波をダクト11の内部空間20に発生させる。
図3は、このシステム10Aによる消音効果(実験結果)の一例を示す図であり、図4は、消音効果の他の一例を示す図である。それら図では、システム10AのOFFにおける第1空調ダクト11の内部空間20の周波数特性を一点鎖線L1で示し、システム10AのONにおけるダクト11の内部空間20の周波数特性を実線L2で示すとともに、第2空調ダクト12の内部空間24の周波数特性を一点鎖線L3で示す。それら図において縦軸には音圧レベルが表示され、横軸には周波数が表示されている。システム10Aでは、ディスプレイを介してそれら図に示す各ダクト11,12の内部空間20,24の周波数特性を時系列にモニタリングすることができ、モニタリングした周波数特性をプリンタを介して出力することができる。また、モニタリングした周波数特性をメモリに時系列に格納することができる。
図3では、外形形状と幅方向の径とが略同一、かつ、単位長さ当たりの内部空間の容積が略同一の空調ダクト11,12を使用した場合のシステム10Aにおける消音効果を示す。第2空調ダクト12の内部空間24では、図3に点線L3で示すように、消音器16によって350(Hz)〜550(Hz)の周波数帯の音が減音されている。システム10AのOFFにおける第1空調ダクト11の内部空間20では、図3に一点鎖線L1で示すように、350(Hz)〜550(Hz)の周波数帯の音圧レベルに変化はない。なお、その他の周波数帯の音圧レベルの変化は、第1および第2空調ダクト11,12において略同一である。
システム10AをONすると、図3に実線L2で示すように、第1空調ダクト11の内部空間20において350(Hz)〜550(Hz)の周波数帯の音が減音され、第2空調ダクト12の内部空間24の周波数特性に第1空調ダクト11の内部空間20の周波数特性が近似した。図3に示すように、このシステム10Aを利用することで、第2空調ダクト12の内部空間24の音響環境を第1空調ダクト11の内部空間20に再現することができた。
図4では、図3とは異なる消音器を使用した場合のシステム10Aにおける消音効果を示す。その他の条件は、図3のそれと同一である。第2空調ダクト11の内部空間24では、図4に点線L3で示すように、消音器16によって150(Hz)〜160(Hz)の周波数帯の音が減音され、250(Hz)〜310(Hz)の周波数帯の音が減音されているとともに、360(Hz)〜690(Hz)の周波数帯の音が減音されている。さらに、790(Hz)〜870(Hz)の周波数帯の音が減音されている。システム10AのOFFにおける第1空調ダクト11の内部空間20では、図4に一点鎖線L1で示すように、それら周波数帯の音圧レベルに変化はない。
システム10AをONすると、図4に実線L2で示すように、第1空調ダクト11の内部空間20においてそれら周波数帯の音が減音され、第2空調ダクト12の内部空間24の周波数特性に第1空調ダクト11の内部空間20の周波数特性が近似した。図4に示すように、このシステム10Aを利用することで、第2空調ダクト12の内部空間24の音響環境を第1空調ダクト11の内部空間20に再現することができた。
この能動的消音システム10Aは、第1減算装置27が第2入力信号から第3入力信号を除いた誤差信号を生成し、干渉信号生成装置28が第2減算装置29から受信した第4入力信号と第1減算装置27から受信した誤差信号とを用いて干渉信号を生成するから、誤差信号に第2空調ダクト11の消音器16で減衰されない周波数帯の信号が含まれることはなく、当該周波数帯の音波を第1空調ダクト12内に残存させつつ、誤差信号が第2空調ダクト11の消音器16で減衰される周波数帯の信号を含むことで、当該周波数帯の音波を第1空調ダクト11内において打ち消すことができる。ゆえに、このシステム10Aは、第2空調ダクト12の内部空間20の音響環境を第1空調ダクト11の内部空間24に再現することができる。
この能動的消音システム10Aは、消音器16によって調整された第2空調ダクト12の内部空間24の良好な音響環境を第1空調ダクト11の内部空間20に適用することができるから、第1空調ダクト11において独自に音響環境を設定する必要はなく、そのための手間を省くことができる。このシステム10Aは、第2減算装置29が合成信号から第2音波と推定し得る擬似フィードバック信号を除いた第4信号を生成し、その第4信号を干渉信号生成装置28に出力するから、干渉信号生成装置28に出力される第4信号に擬似フィードバック信号が含まれることはなく、参照マイクロフォン13におけるハウリングを防ぐことができる。
このシステム10Aは、デジタルフィルタ30によって消音用スピーカ15から誤差マイクロフォン14に第2音波までの時系列伝達特性が利用されるから、適応制御演算装置32が消音用スピーカ15から誤差マイクロフォン14までの二次経路の時系列伝達特性を考慮しつつ誤差信号を用いてアダプティブデジタルフィルタ31を更新することができ、第1空調ダクト11の内部空間20における騒音の変化や目標信号の変化に追従しつつ、消音位置となる誤差マイクロフォン14の位置において干渉音波を確実に打ち消すことができる。システム10Aは、そのサンプリング周波数が3kHz〜40kHzの範囲にあるから、第2音波を干渉音波の逆位相同音圧の音波に限りなく近づけることができ、第2音波を使用して干渉音波を確実に打ち消すことができる。
このシステム10Aは、騒音源19から目標マイクロフォン17までの距離が騒音源19から誤差マイクロフォン14までの距離と略同一であるから、誤差マイクロフォン14から出力される第2入力信号と目標マイクロフォン17から出力される第3入力信号との間の因果性を保持することができ、第2空調ダクト11の内部空間20の減音音波を残存させつつ、誤差マイクロフォン14から第2入力信号として出力された第1空調ダクト11の内部空間20の干渉音波を第2音波によって確実に打ち消すことができる。
図5は、他の一例として示す能動的消音システム10Bの構成図である。図5に示すシステム10Bが図1のそれと異なるのは、第1空調ダクト11が2つ存在する点にある。なお、それら空調ダクト11,12は図1に示す空調ダクト11,12と同一であり、それら空調ダクト11,12に設置されたマイクロフォン13,14,17やスピーカ15、消音器16は図1に示す空調ダクト11,12に設置されたそれらと同一である。また、コントローラ18の構成は図1に示すコントローラ18のそれらと同一である。ゆえに、図1のシステム10Aと同一の符号を付すことで、このシステム10Bにおけるダクト11,12やマイクロフォン13,14,17、スピーカ15、消音器16、コントローラ18の説明は省略する。
図5では、2つの第1空調ダクト11を図示しているが、ダクト11の数を2つに限定するものではなく、2つを超えるダクト11が存在してもよく、それらダクト11にこのシステム10Bを利用することもできる。なお、このシステム10Bにおける消音過程は図1のシステム10Aのそれと同一であるから、図1のシステム10Aの消音過程を援用し、このシステム10Bにおける消音過程の説明は省略する。このシステム10Bにおけるサンプリング周波数は、図1のシステム10Aのそれと同一である。また、騒音源19から目標マイクロフォン17までの距離M1は、騒音源19から誤差マイクロフォン14までの距離M2と略同一である。
図5に示すシステム10Bは、図1に示すシステム10Aの効果に加え、消音器16によって調整された第2空調ダクト12の内部空間24の良好な音響環境をそれら第1空調ダクト11の内部空間24それぞれに再現することができ、第2空調ダクト12の内部空間20の音響環境をそれら第1空調ダクト11すべてに適用することができるという効果を奏する。
図6は、他の一例として示す能動的消音システム10Cの構成図である。図6に示すシステム10Cが図1のそれと異なるのは、騒音源19から目標マイクロフォン17までの距離M1が騒音源19から誤差マイクロフォン14までの距離M2よりも短く、騒音源19から目標マイクロフォン17に減音音波が伝播するまでの時間遅延を補正する時間遅延補正装置33がマイクロフォン14と第1減算装置27との間に接続されている点にあり、その他の構成は図1のシステム10Aのそれらと同一であるから、図1のシステム10Aと同一の符号を付すことで、このシステム10Cにおけるその他の構成の説明は省略する。
このシステム10Cでは、マイクロフォン14と第1減算装置27との間に時間遅延補正装置33が介在している。時間遅延補正装置33は、騒音源19から目標マイクロフォン17に減音音波が伝播するまでの時間遅延を補正する。なお、時間遅延補正装置33と第1減算装置27との間には、図示はしていないが、A/D変換装置が接続されている。このシステム10Bにおけるサンプリング周波数は、図1のシステム10Aのそれと同一である。
このシステム10Cにおける消音過程の一例を説明すると、以下のとおりである。システム10Cの起動時では、消音用スピーカ15から第2音波が発生しておらず、参照マイクロフォン13に検出された第1音波(騒音)がダクト11の内部空間20を伝播してそのまま誤差マイクロフォン14に達し、第1音波がマイクロフォン14に検出される。第1音波を検出した参照マイクロフォン13は、第1音波をアンプ21に出力する。アンプ21は、第1音波を増幅した後、その第1音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、第1音波をデジタルの第1入力信号に変換し、その第1入力信号を第2減算装置29に出力する。第1音波を検出した誤差マイクロフォン14は、第1音波をアンプ23に出力する。アンプ23は、第1音波を増幅した後、その第1音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、第1音波をデジタルの第2入力信号に変換し、その第2入力信号を第1減算装置27に出力する。減音音波を検出した目標マイクロフォン17は、減音音波をアンプ25に出力する。アンプ25は、減音音波を増幅した後、その減音音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、減音音波をデジタルの第3入力信号に変換し、その第3入力信号を第1減算装置27に出力する。
システム10Cの起動時では擬似フィードバック信号生成フィルタ26において擬似フィードバック信号は生成されていないから、擬似フィードバック信号生成フィルタ26から出力される擬似フィードバック信号の出力信号は(0)である。システム10Cの起動時において第2減算装置29は、第1入力信号から擬似フィードバック信号(0)を減算して第4入力信号(第1入力信号と同一の値の信号)を生成し(第4信号生成手段)、その第4入力信号を干渉信号生成装置28に出力する(第4信号出力手段)。
第1音波を検出した誤差マイクロフォン14は、第1音波をアンプ23に出力する。アンプ23は、第1音波を増幅した後、その第1音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、第1音波を第2入力信号に変換した後、その第2入力信号を第1減算装置27に出力する。減音音波を検出した目標マイクロフォン17は、減音音波をアンプ25に出力する。アンプ25は、減音音波を増幅した後、その減音音波を時間遅延補正装置33に出力する。時間遅延補正装置33は、騒音源19から目標マイクロフォン17に減音音波が伝播するまでの時間遅延を補正する。具体的には、騒音源19から目標マイクロフォン17に減音音波が伝播するまでの時間と騒音源19から誤差マイクロフォン14に第1音波が伝播するまでの時間とを一致させる。時間遅延補正装置33は、時間遅延を補正した減音音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、減音音波を第3入力信号に変換した後、その第3入力信号を第1減算装置27に出力する。システム10Cの起動時において第1減算装置27は、第2入力信号から第3入力信号を減算して誤差信号を算出し(誤差信号生成手段)、その誤差信号を干渉信号生成装置28に出力する(誤差信号出力手段)。
干渉信号生成装置28を形成するデジタルフィルタ30は、あらかじめ推定した消音用スピーカ15から誤差マイクロフォン14までの伝送経路の応答特性を模擬した時系列伝達特性(C)を使用し、第4入力信号にその時系列伝達特性(C)を畳み込み演算し、その結果を干渉信号生成装置28を形成する適応制御演算装置32に出力する。適応制御演算装置32は、二次経路の時系列伝達特性を考慮しつつ、誤差信号を用いてアダプティブデジタルフィルタ31を更新する。
干渉信号生成装置28は、第2減算装置29から出力された第4入力信号にアダプティブデジタルフィルタ31を畳み込み演算し、第2入力信号を最小にする干渉信号を生成する(干渉信号生成手段)。干渉信号生成装置28は、生成した干渉信号を擬似フィードバック信号生成フィルタ26とD/A変換装置とに出力する(干渉信号出力手段)。D/A変換装置は、デジタルの干渉信号をアナログの第2音波に変換し、その第2音波をアンプ22に出力する。アンプ22は、第2音波を増幅した後、その第2音波を消音用スピーカ15に出力する。
消音用スピーカ15は、第2音波をダクト11の内部空間20に発生させる。第2音波は、スピーカ15から参照マイクロフォン13に向かってダクト11の内部空間20を伝播するとともに、スピーカ15から誤差マイクロフォン14に向かって内部空間20を伝播する。第2音波は、第1音波と干渉しながら誤差マイクロフォン14に向かい、第1音波のうちの第2空調ダクト12の消音器16で減衰された周波数帯の音波と干渉し、当該帯域の音波を打ち消す。ただし、第2音波には、第2空調ダクト12の消音器16で減衰されない周波数帯の音波は含まれないから、当該帯域の音波を打ち消すことはなく、第2空調ダクト12の減音音波が持つ特性と同一の特性を持つ音波が第1空調ダクト11の内部空間20に残存する。システム10Cを継続稼動すると、誤差信号が次第に小さくなり、最後に誤差信号のレベルが(0)になって誤差が消滅する。誤差の消滅は、消音器16で減衰された周波数帯の音波を打ち消した状態を表す。
システム10Cの稼動中では、第1音波と第2音波との合成音波が参照マイクロフォン13に検出される。また、第1音波と第2音波との干渉音波が誤差マイクロフォン14に検出される。合成音波は、アンプ21で増幅された後、A/D変換装置でデジタルの第1入力信号に変換されて第2減算装置29に出力される。擬似フィードバック信号生成フィルタ26は、図1のシステム10Aと同様に、干渉信号に時系列伝達特性(Hr)を畳み込み演算し、擬似フィードバック信号を生成し(擬似フィードバック信号生成手段)、擬似フィードバック信号を第2減算装置29に出力する(擬似フィードバック信号出力手段)。第2減算装置29は、合成信号から擬似フィードバック信号を減算して第4入力信号を生成し(第4信号生成手段)、その第4入力信号を干渉信号生成装置28に出力する(第4信号出力手段)。
システム10Cの稼動中において干渉音波を検出した誤差マイクロフォン14は、干渉音波をアンプ23に出力する。アンプ23は、干渉音波を増幅した後、その干渉音波をA/D変換装置に出力する。A/D変換装置は、干渉音波を第2入力信号に変換し、その第2入力信号を第1減算装置27に出力する。第1減算装置27は、第2入力信号から第3入力信号を減算して誤差信号を算出し(誤差信号生成手段)、その誤差信号を干渉信号生成装置28に出力する(誤差信号出力手段)。
干渉信号生成装置28では、適応制御演算装置32が二次経路の時系列伝達特性を考慮しつつ、誤差信号を用いてアダプティブデジタルフィルタ31を更新する。干渉信号生成装置28は、第2減算装置29から出力された第4入力信号にアダプティブデジタルフィルタ31を畳み込み演算し、第2入力信号を最小にする干渉信号を時系列に生成する(干渉信号生成手段)。干渉信号生成装置28は、干渉信号を擬似フィードバック信号生成フィルタ26とD/A変換装置とに出力する(干渉信号出力手段)。D/A変換装置は、干渉信号を第2音波に変換し、その第2音波をアンプ22に出力する。アンプ22は、第2音波を増幅し、増幅した第2音波を消音用スピーカ15に出力する。消音用スピーカ15は、第2音波をダクト11の内部空間20に発生させる。
このシステム10Cは、時間遅延補正装置33によって騒音源19から目標マイクロフォン17に減音音波が伝播するまでの時間遅延が補正されるから、騒音源19から誤差マイクロフォン14に第1音波が伝播するまでの時間と騒音源19から目標マイクロフォン17に減音音波が伝播するまでの時間とを一致させることができ、誤差マイクロフォン14から出力される第2入力信号と目標マイクロフォン17から出力される第3入力信号との間の因果性を保持することができる。また、このシステム10Cは、第2空調ダクト12の長さ寸法が第1空調ダクト11のそれよりも短く、騒音源19から誤差マイクロフォン14までの距離よりも短い位置に目標マイクロフォン17を設置しなければならない場合に有効である。なお、このシステム10Cは、前記効果の他に図1のシステム10Aと同一の効果を奏するが、図1のシステム10Aの効果を援用し、このシステム10Cのその他の効果の説明は省略する。
それら図示のシステム10A,10B,10Cは、マイクロフォン13,14,17やスピーカ15が空調ダクト11,12の内部空間20,24に設置され、第2空調ダクト12の音響環境を第1空調ダクト11に再現する場合に利用されているが、それらシステム10A,10B,10Cの利用箇所をダクト11,12の内部空間20,24に限定するものではなく、それら図示のシステム10A,10B,10Cをダクト以外の空間において利用することもできる。