JP5174631B2 - リグナン類化合物含有乳化物及び飲料 - Google Patents
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Description
リグナン類化合物について、種々の生体内作用が報告されている。例えば、USP4427694には、セサミンがアルコール中毒やアルコールや喫煙の禁断症状の緩和に有効であること、また特開平2−138120号公報には、セサミノールやエピセサミノールが気管支喘息等のアレルギー症の治療・予防に有効であることが開示されている。本出願人らによっても、リグナン類化合物の用途が種々開発されており、現在までに血中コレステロール低下(特許3001589号)、Δ5 −不飽和化酵素阻害(特許3070611号)、肝機能改善(特許3075358号)、コレステロール降下(特許3075360号)、悪酔防止(特許3124062号)、コレステロール及び胆汁酸の代謝阻害、コレステロール低下(特許3283274号)、発癌抑制(特願平2−281839号)、乳癌抑制(特願平3−200757号)や、過酸化脂質生成抑制(特願平3−212295号)、活性酸素除去(特願平5−14884号)の効果が確認されている。
リグナン類化合物含有乳化組成物及びリグナン類化合物含有飲料
一方、高齢者や咽頭、喉頭に疾患を持つ人にとっては、錠剤やカプセル剤の服用が困難であるという問題が指摘されている。優れた生体内機能を有するリグナン類化合物について、上記の通りカプセル剤の健康食品は開発されているが、高齢者等を含めた誰もが容易に摂取しうる飲料の形態で服用しうるリグナン類化合物の飲食品の開発も望まれていた。しかし、リグナン類化合物は水に殆ど溶解せず、水に浮いてしまうため、そのまま飲料に配合することは困難であった。分散安定性を付与する目的で、界面張力低下能の高い乳化剤を多量に添加して乳化・分散させることも可能ではあるが、添加した乳化剤により官能的に好ましくない風味を呈するという問題があった。
特開2006−280276に、リグナン類化合物を油脂に溶解した後に乳飲料に混合することで、分散安定性が良好で、官能的にも良好なリグナン類化合物含有飲料の発明が開示されている。ただ、その対象が乳飲料に限定されており、消費者の多様なニーズや嗜好に応えられるまでには至っていない。WO2006/106926に、リグナン類化合物含有水中油滴型エマルション及びそれを含有する組成物の発明が開示されているが、香味上の特性や容器詰飲料における凝集や沈殿の長期間にわたる飲料としての安定性については触れられていない。
リグナン類化合物含有食品と油脂の摂取量
リグナン類化合物を含有する飲食品として、健康食品のカプセル剤が知られているが、カプセル剤は油脂を中心に構成されているため、リグナン類化合物と同時に油脂を摂取することが不可避であるという問題があった。ゴマ油脂中のセサミン含量は0.36%という報告事例があり(非特許文献1)、すなわちゴマ油脂でリグナン類化合物を摂取しようとした場合もまた同時に脂質を摂取することが避けられなかった。
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
1) (A)リグナン類化合物、(B)油脂、(C)親油性乳化剤、(D)親水性乳化剤、(E)乳化安定剤及び(F)水を含有することを特徴とする、リグナン類化合物含有乳化組成物。
2) (A)リグナン類化合物、(B)油脂及び(C)親油性乳化剤を含有する油相;及び
(D)親水性乳化剤、(E)乳化安定剤及び(F)水を含有する水相
からなる、1)に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
3) (A)リグナン類化合物1重量部に対し、(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を計1.8〜50重量部含む、1)又は2)に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
4) (A)リグナン類化合物1重量部に対し、(B)油脂及び(C)親油性乳化剤を計2〜13重量部含む、1)〜3)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
5) (B)油脂1重量部に対し、(C)親油性乳化剤を0.015〜0.07重量部含む、1)〜4)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
6) (A)リグナン類化合物1重量部に対し、(E)乳化安定剤を0.05〜2.5重量部含む、1)〜5)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
7) (A)リグナン類化合物がセサミン及び/又はエピセサミンである1)〜6)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
8) (E)乳化安定剤がメチルセルロースである1)〜7)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
9) (B)油脂が固体脂である1)〜8)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
10) 飲料の形態である、1)〜9)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
11) 下記の工程:
1) (F)水に、(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を溶解して水相を得る工程;
2) (B)油脂に、(C)親油性乳化剤及び(A)リグナン類化合物を溶解して油相を得る工程;及び
3) 得られた水相に油相を分散させ、リグナン類化合物含有乳化組成物を得る工程
を含む、1)〜10)の何れか1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物の製造方法。
12) (A)リグナン類化合物がセサミン及び/又はエピセサミンである、11)に記載の製造方法。
13) (E)乳化安定剤がメチルセルロースである11)又は12)記載の製造方法。
14) (B)油脂が固体脂である11)〜13)の何れか1に記載の製造方法。
リグナン類化合物
本発明で使用するリグナン類化合物としては、セサミン、セサミノール、エピセサミン、エピセサミノール、セサモリン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、2,6−ビス−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、又は2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェノキシ)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン等を挙げることができ、これらを単独で、又は混合して使用することができる。本発明においては、リグナン類化合物として、リグナン類化合物を主成分とするゴマ等の原料からの抽出物を使用してもよい。
油脂
本発明で使用する油脂は、トリアシルグリセロールを主成分とする油脂類を指す。植物油脂や動物油脂等、食品として許容可能な油脂類であれば特に限定されない。本発明には、1種、又は複数種を混合して用いることができる。リグナン類化合物及びリグナン類化合物を油脂へ溶解する際は、必要に応じ加熱することができる。
本発明に用いることのできる油脂の具体例としては、アーモンドオイル、サフラワー油(ベニバナ油)、アプリコットカーネルオイル、アボガドオイル、月見草オイル、小麦胚芽油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ウォールナッツオイル(クルミオイル)、オリーブ油、キャスターオイル(ひまし油)、ククイナッツオイル、グレープシードオイル、ココアバター、ココナッツオイル、大豆油、菜種油、落花生油、米油、胡麻油、パーム核油、パームオイル、ホホバオイル、マカダミアナッツオイル、シアバター、マンゴーバター、コクムバター、鯨油、イワシ油、イカ油等の天然油脂、マーガリン等の合成油脂を例示できる。
本発明においては、常温で液状である油脂だけでなく、固体脂、すなわち常温(25℃)で半固体状又は固体状の油脂を用いることもできる。固体脂の具体例としては、トリラウリン(グリセロールトリラウレート)、トリミリスチン(グリセロールトリミリステート)、トリパルミチン(グリセロールトリパルミテート)、トリステアリン(グリセロールトリステアレート)、牛脂硬化油、豚脂硬化油、水素添加魚油、菜種硬化油、大豆硬化油、パーム硬化油などを例示できる。
また、特に好ましい固体脂の例として、トリパルミチン、パーム硬化油、及びこれらの混合物等を例示できる。
乳化剤
乳化剤は、水と油等異なる性質の2つの物質が接する境界面(=界面)に吸着又は配列し、界面の性質を著しく変える働きを持つ。本発明においては、このような作用を有する食品上許容されるものであれば、種々の物質を乳化剤として用いうる。例えば、食品衛生法による食品添加物表示において「乳化剤」と用途名表示される対象となる物質を用いることができる。「乳化剤」の具体例として、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン及びこれらの混合物等を例示できる。
親油性乳化剤
本発明においては、油相に親油性乳化剤を含む。本発明における親油性乳化剤とは、前記の乳化剤のうちHLB(Hydrophile-lipophile Balance)として8.0未満、又はHLB8.0未満である親油性乳化剤と同等の性質を有するものをいう。ここで、同等の性質とは、W/0乳化に適することをいう。油脂に親油性乳化剤を添加することで、飲料での凝集・沈殿の発生を大幅に低減させることができる。
本発明に用いることのできる親油性乳化剤の好ましいHLBの範囲として、3.3〜8.0を例示でき、さらに好ましくは3.3〜6.0を例示できる。なお、多価アルコール型脂肪酸エステルのHLB値を示すときは、下式:
また、本発明において用いることのできる親油性乳化剤として、モノアシルグリセロール及び/又はジアシルグリセロールを例示でき、好ましい親油性乳化剤として、モノアシルグリセロールを例示できる。また、用いる親油性乳化剤がモノアシルグリセロール又はジアシルグリセロールである場合の好ましい構成脂肪酸として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸を例示でき、特に好ましいものとして、パルミチン酸を例示できる。本発明には、1種、又は複数種の親油性乳化剤を混合して用いることができる。
親水性乳化剤
本発明において、水相に親水性乳化剤を含む。本発明における親水性乳化剤とは、前記の乳化剤のうちHLBとして8.0以上、又はHLB8.0以上である親水性乳化剤と同等の性質を有するものをいう。ここで、同等の性質とは、O/W乳化に適することをいう。水に親水性乳化剤を添加することで、油相を乳化・分散させる基本的な環境ができる。添加しなければ乳化・分散のための攪拌終了直後に速やかに2層に分離する。
本発明に用いることのできる親水性乳化剤の好ましいHLBの範囲として、8.0〜18.0、さらに好ましくは12.0〜17.5を例示できる。
また、本発明に用いることのできる好ましい親水性乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを例示できる。この場合の好ましいグリセリンの平均重合度として、5〜15(より具体的には、6又は10)を例示でき、好ましい構成脂肪酸として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸を例示でき、特に好ましいものとして、パルミチン酸、ミリスチン酸を例示できる。本発明には、1種、又は複数種の親水性乳化剤を混合して用いることができる。
乳化安定剤
本発明において、水相に乳化安定剤を含む。本発明における乳化安定剤とは、水相の粘度増加、三次元網目構造による乳化粒子の捕捉、保護コロイド作用、保護コロイド作用、界面活性等により乳化安定作用を示す物質を指す。本発明においては、このような作用を有する食品として許容されるものであれば、種々の物質を乳化安定剤として用いうる。例えば、食品衛生法による食品添加物表示において糊料又は軟化剤と用途名表示される対象となる物質を用いることができる。糊料と用途名表示される対象となる物質としては具体的には、アウレオバシジウム培養液、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アゾトバクタービネランジーガム、アマシードガム、アーモンドガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アロエベラ抽出物、ウェランガム、エレミ樹脂、オリゴグルコサミン、カシアガム、ガティガム、カードラン、カラギナン、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カロブビーンガム、キサンタンガム、キダチアロエ抽出物、キチン、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、グルコサミン、酵母細胞壁、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、ジェランガム、スクレロガム、セスバニアガム、タマリンドシードガム、タラガム、ダンマル樹脂、デキストラン、デンブングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、トラガントガム、トリアカンソスガム、トロロアオイ、納豆菌ガム、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、マクロホモプシスガム、メチルセルロース、モモ樹脂、ラムザンガム、レバン等を例示できる。軟化剤と用途名表示される対象となる物質としては具体的には、グリセリン、D−ソルビトール、プロピレングリコール等を例示できる。
本発明に用いることのできる好ましい乳化安定剤として、メチルセルロース、又はメチルセルロース及びグリセリンの混合物を例示できる。乳化安定剤としてメチルセルロースを用いる場合、低粘度品が好ましく、好ましい粘度グレードとして、3〜120mm2/s(20℃、2%水溶液)を、水相中の好ましい添加量として、0.25〜1.8%を例示できる。高粘度品を用いた場合、また、添加しない場合もしくは添加量が少ない場合は、調製した乳化組成物全体が固まってしまう場合がある。一方、添加量が多い場合は水相を加温する際に水相がゲル化してしまい、油相との混和および乳化処理を施すことができない場合がある。
水
本発明において用いられる水は、食品加工に通常使用される水又は不純物が一切含まれていない純水が好ましい。必要に応じて、アルコールや塩類等を添加するのも良く、特に純水に限定されるものではない。
飲料
本発明における飲料とは、各種清涼飲料水、いわゆるジュース類を指すが、アルコール飲料であってもよく、特に限定されるものではない。清涼飲料水としては具体的には、スポーツ飲料、機能性飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料等を例示できる。
本発明において乳化とは、水と油のように相互に混和しない異なる性質の2つの物質の一方を他方中に微細に分散させる(懸濁させる場合も含む)ことを指す。本発明の乳化組成物は、分散相である油相と、連続相(分散媒)である水相とからなる。
本発明の乳化組成物は、飲料としての安定性(飲料安定性)に優れる。「安定性に優れる」とは、40℃で2週間静置した後、外観を目視検査した時に、飲料としての品質を保持していることをいう。
例えば、リグナン類化合物がセサミンである場合、1日の摂取量の目安である10mgを、1回量の飲料(約200〜1000ml)から摂取することができる。
本発明の水相は親水性乳化剤と乳化安定剤を含む。これらの配合比は適宜調整することができる。これらは、分散安定性及び微生物安定性の観点においては多く含まれる方が望ましい。一方、香味の観点においては少ない方が望ましい。雑味、苦味、ぬめり感、後口の悪さ、キレの悪さ等の要因であるためである。
以上を考慮しながら、飲料を試作して官能評価を実施し、親水性乳化剤及び乳化安定剤の目標値を設定し、その目標値に適合するリグナン類化合物含有乳化組成物及びリグナン類化合物含有飲料の実現を鋭意検討した。官能評価で得られる目標値は上限値であり、リグナン類化合物1重量部に対し、親水性乳化剤及び乳化安定剤の合計で50重量部以下、好ましくは40重量部以下との範囲を導いた。一方、分散安定性の観点から下限値としてリグナン類化合物1重量部に対し、親水性乳化剤及び乳化安定剤の合計で1.8重量部以上とする範囲を導いた。
リグナン類化合物に対する乳化安定剤の配合量
本発明の水相に含まれる乳化安定剤はリグナン類化合物一重量部に対して、0.05〜2.50重量部含むことが好ましく、0.10〜2.00重量部含むことがより好ましい。少なすぎると期待する乳化安定効果が得られず分離しやすくなることが懸念される。多すぎると香味上の影響がある他、乳化安定剤が糊料の場合は粘度が上がりすぎて適切な加工ができない、又は、分散性がかえって悪化する等の問題がある。
リグナン類化合物に対する油脂及び親油性乳化剤の配合量
本発明の油相は油脂と親油性乳化剤を含む。これらの配合比は適宜調整することができる。リグナン類化合物一重量部に対し、油脂、又は油脂及び親油性乳化剤は、2〜13重量部含まれることが好ましく、3〜10重量部含まれることがより好ましい。本発明においては、疎水性が極めて高いリグナン類化合物を油相で包むことで、より少量の乳化剤での乳化安定が可能になったと考えられる。油相が少なすぎると、リグナン類化合物を適切に内包することができず、乳化安定性が下がり、乳化組成物及び飲料での分離・凝集・沈殿の要因となる。油相が多すぎると、必然的に乳化剤の量も増えてしまい、香味の面でも好ましくない。
油脂に対する親油性乳化剤の配合量
前述の油脂と親油性乳化剤の割合については、油脂一重量部に対して親油性乳化剤を、0.015〜0.07重量部含むことが好ましく、0.02〜0.03%含むことがより好ましい。親油性乳化剤を適量加えることで、親水性乳化剤がより馴染みやすくなり、乳化安定性がさらに向上すると考えられる。親油性乳化剤が少なすぎると期待する乳化安定効果が得られず分離しやすくなることが懸念される。多すぎると粘度が上がりすぎてしまい乳化組成物全体が固まる、飲料での分散安定性が悪化するといったことが懸念される。
製造方法
本発明の組成物は、
1) (F)水に、(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を溶解して水相を得る工程、
2) (B)油脂に、(C)親油性乳化剤及び(A)リグナン類化合物を溶解して油相を得る工程、
3) 得られた水相に油相を分散させ、リグナン類化合物含有乳化組成物を得る工程
を含む方法により、製造することができる。
分散のための条件は、当業者であれば適宜設定することができ、また分散工程は従来技術の装置、例えば攪拌機、高速回転せん断攪拌機、コロイドミル、ホモジナイザー、フロージェットミキサー、超音波乳化機、又は真空乳化機を利用して実施することができる。
分散安定上、粒子径は小さい方が望ましい。本発明の方法により製造された粒子径の平均値(メジアン径)は約200〜500nmである。
本発明の飲料に添加するリグナン類化合物(リグナン類化合物を主成分とする抽出物を含む。)得る方法として、次の手順で行うことができる。まず、リグナン類化合物を主成分とする抽出物を胡麻油から得るには、胡麻油とは実質的に非混和性であり、かつリグナン類化合物を抽出・溶解することができる種々の有機溶剤を用いて抽出・濃縮することで得られる。このような有機溶剤として、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メタノール、エタノール等を挙げることができる。リグナン類化合物を主成分とする抽出物を得るには、例えば胡麻油と上記の溶剤のいずれかとを均一に混同した後、低温において静置し、遠心分離等の定法に従って相分離を行い、溶剤画分から溶剤を蒸発除去することにより得られる。さらに具体的には、胡麻油を2〜10倍、好ましくは6〜8倍容量のアセトンに溶かし、−80℃で一晩放置する。その結果、油成分が沈殿となり、濾過により得た濾液から有機溶剤を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が得られる。あるいは、胡麻油を熱メタノール又は熱エタノールで混合した後、室温において静置し、溶剤画分から溶剤を蒸発除去することにより得られる、さらに具体的には、胡麻油を2〜10倍、好ましくは5〜7倍容量の熱メタノール(50℃以上)又は熱エタノール(50℃以上)で混合し激しく抽出する。室温に静置又は遠心分離等の定法に従って相分離を行い、溶剤画分から溶剤を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が得られる。また、超臨界ガス抽出も利用できる。この抽出物より、各々のリグナン類化合物を得るためには、抽出物をカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留、液々交流分配クロマトグラフィー等の定法に従って処理することにより目的とする化合物を単離すればよい。さらに具体的には、逆相カラム、溶離液にメタノール/水(60:40)を使って、上記抽出物を高速液体クロマトグラフィーで分取し、溶媒を留去した後、得られた結晶をエタノールで再結晶化することで、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール等の各リグナン類化合物が得られる。用いる胡麻油は精製品でもよく、また胡麻油の製造過程で脱色工程前のいずれの粗製品でもよく、さらに、胡麻種子又は胡麻粕(脱脂胡麻種子、残油分8〜10%)であってもよい。この場合、胡麻種子又は胡麻粕を必要により破砕した後、任意の溶剤、例えば胡麻油からの抽出について前記した溶剤を用いて定法により抽出することができる。抽出残渣を分離した後、抽出液から蒸発等により溶剤を留去することにより抽出物が得られる。このように精製された胡麻種子抽出物、胡麻粕抽出物又は粗製品の胡麻油抽出物からは、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール以外に、セサモリン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、2,6−ビス−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、又は2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェノキシ)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタンの各リグナン類化合物が同様の手法で得られる。
なお、細辛から得られるセサミンも胡麻種子及び胡麻油より得られるセサミンと同等の効果を有し、これら光学活性体もリグナン類化合物に含まれる。さらに、胡麻油製造過程の副産物からもリグナン類化合物を得ることができる。なお、リグナン類化合物の精製法及び抽出物を得る方法はこれに限られるものではない。さらに、上記リグナン類化合物及びリグナン類化合物を主成分とする抽出物は胡麻油、胡麻粕、及び胡麻種子から得たものに限定したわけではなく、リグナン類化合物を含む天然物自体も使用することができる。このような天然物としては、例えば、五加皮、桐木、白果樹皮、ヒハツ、細辛等を挙げることができる。
また、合成によりリグナン類化合物を得る方法としては、以下のものがあげられる。例えば、セサミン、エピセサミンについては、Berozaらの方法(J. Am. Chem. Soc., 78, 1242(1956) )で合成できる他、ピノレシノールはFreundenbergらの方法(Chem. Ber., 86, 1157(1953))によって、シリンガレシノールはFreundenbergらの方法(Chem. Ber., 88, 16(1955))によって合成することができる。
さらに、リグナン類化合物は、配糖体の形で使用することもできる上、これらを単独で、又は適宜組み合わせて飲料に配合することもできる。
調製方法フロー
本実施例における調製方法フローを図1に示す。
配合
本実施例における基本的な配合の例を表1に示す。
実験材料
(A)リグナン類化合物 : セサミン及びエピセサミン(約1:1)混合物
(B)油脂 : 食用油脂(粉末)(ヨウ素価3.0以下、ケン化価190〜209;スプレーファットPM、理研ビタミン)
(C)親油性乳化剤 : 蒸留グリセリンモノパルミチン酸エステル(モノエステル含量95%以上、HLB 4.3;エマルジーP-100 理研ビタミン)
(D)親水性乳化剤 : ポリグリセリンパルミチン酸エステル(平均重合度10、HLB 16;リョートーポリグリエステルP-8D、三菱化学フーズ)
(E)乳化安定剤 :
・糊料 : メチルセルロース (粘度3.2〜4.8mm2/s(20℃、2%水溶液);メトローズSM-4、信越化学工業)
・軟化剤 :食品添加物グリセリン(キシダ化学 品番040-34535)
(F)水 : イオン交換水
乳化組成物の製造方法及び評価方法
親水性乳化剤及び乳化安定剤(メチルセルロース。なお、実施例中、特に示した場合を除き、「乳化安定剤」はメチルセルロースを指す。)を、それぞれ所定濃度になるように、イオン交換水に溶解させ、これを水相とした。水相を80℃に加温した。油脂及び親油性乳化剤を所定の比率に混和し、その混和物を80℃に加温し融解させたところにリグナン類化合物を溶解させ、これを油相とした。
油脂の融点以上に加温し融解させた油相に、80℃に加温した水相を投入した。80℃にて湯浴しながら、乳化・分散機(超高速マルチ攪拌システム T.K.ロボミックス プライミクス製)を用いて10,000rpmにて10分間攪拌した。攪拌終了後、容器ごと冷却し、氷水で10℃以下とした。
目視にて組成物全体が固まっていないかどうかを確認した。固まることなく調製できた試料を動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-550 堀場製作所製)にて粒径分布を測定した。
得られた乳化組成物を4週間冷蔵庫にて静置し、乳化組成物の安定性を目視にて評価した。乳化組成物0.2%の液を調合し殺菌しペットボトルに充填し、40℃で2週間静置し、外観を目視にて評価した。
官能評価
本発明の乳化組成物を用いて飲料を調合した。乳化組成物、親水性乳化剤、乳化安定剤(糊料、軟化剤)のみを用いて調合した。糖や甘味料、酸味料、香料等は添加せずに行った。乳化組成物及びその構成原料由来の香味をより明確に評価するためである。本発明により得られた乳化組成物を希釈して飲料2を調製した。飲料3〜8は、本発明の乳化組成物の他、親水性乳化剤、乳化安定剤(糊料、軟化剤)を添加したものである。イオン交換水(飲料1)を対照として、専門パネラー4名により、香味への影響を評価した。
4:水とは異なる香味を感じるが、気にならないレベル
3:水とは異なる香味を感じるが、許容できるレベル(限界点)
2:水とは異なる香味を感じ、気になるレベル
1:水とは全く異なる香味を感じ、不快に感じるレベル
を基準として、0.1点きざみで評価し、パネラー4人による評価点を相加平均した。
本実施例における官能評価結果を表2に示す。なお、各素材の配合量の単位はppmである。
ただ、呈味の観点においては少ない方が望ましいものの、少なすぎると乳化できなくなることから、下限値として、実施例に挙げた3倍量を提示できる。総合すると3〜50倍、好ましくは3〜40倍を提示できる。
油脂の必要性評価
先に示した油脂の必要性及びその最適範囲を評価した。本実施例における評価結果を表3に示す。
乳化組成物の調製
○:さらさらとした白色の均質な液状で、凝集物・沈殿物がない。
飲料の調合
○:調合液全体に均一に分散し、目視で粒が確認できない。
飲料安定性
○:対照との比較において、明らかな褐変がなく、手にとって見た時に気になるレベルの凝集・沈殿物がない。
本発明においては少量の乳化剤で乳化を実現することを期待しているが、油脂の配合により当該目標が達成されることが確認できる。同時に、油脂を含まない、又は、所定量以下であると安定的な乳化が実現しないことも確認できる。
本評価の結果から、リグナン類化合物の含有量に対する油脂と親油性乳化剤の含有量の和の比率は2〜13倍が望ましく、さらに好ましくは3〜10倍が望ましいとの条件を提示できる。
油脂への親油性乳化剤添加の必要性評価
先に示した油脂への親油性乳化剤添加の必要性及びその最適範囲を評価した。本実施例における評価結果を表4に示す。
乳化安定剤の必要性評価
先に示した水相への乳化安定剤添加の必要性及びその最適範囲を評価した。本実施例における評価結果を表5に示す。
飲料配合例
実施例で得た試料1の乳化組成物0.2%、砂糖7%、酸味料0.3%、香料0.1%を水に混合し、本発明の飲料を製造した。
Claims (20)
- (B)油脂に溶解した(A)リグナン類化合物及び(C)親油性乳化剤を含有する、分散相である油相と、(F)水に溶解した(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を含有する、連続相である水相とからなる、リグナン類化合物含有乳化組成物であって、(A)リグナン類化合物1重量部に対し、(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を計1.8〜50重量部含み、(A)リグナン類化合物1重量部に対し、(B)油脂及び(C)親油性乳化剤を計2〜13重量部含む、組成物。
- (B)油脂1重量部に対し、(C)親油性乳化剤を0.015〜0.07重量部含む、請求項1に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (A)リグナン類化合物1重量部に対し、(E)乳化安定剤を0.05〜2.5重量部含む、請求項1〜2の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (A)リグナン類化合物がセサミン及び/又はエピセサミンである請求項1〜3の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (E)乳化安定剤がメチルセルロースである請求項1〜4の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (B)油脂が固体脂である請求項1〜5の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- 飲料の形態である、請求項1〜6の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (F)水に(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を溶解させて水相を得る工程;(B)油脂に(C)親油性乳化剤及び(A)リグナン類化合物を溶解させて油相を得る工程;及び前記油相を前記水相に分散させる工程を含む方法により得られるリグナン類化合物含有乳化組成物であって、(A)リグナン類化合物1重量部に対し、(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を計1.8〜50重量部含み、(A)リグナン類化合物1重量部に対し、(B)油脂及び(C)親油性乳化剤を計2〜13重量部含む、組成物。
- (B)油脂1重量部に対し、(C)親油性乳化剤を0.015〜0.07重量部含む、請求項8に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (A)リグナン類化合物1重量部に対し、(E)乳化安定剤を0.05〜2.5重量部含む、請求項8〜9の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (A)リグナン類化合物がセサミン及び/又はエピセサミンである請求項8〜10の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (E)乳化安定剤がメチルセルロースである請求項8〜11の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- (B)油脂が固体脂である請求項8〜12の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- 飲料の形態である、請求項8〜13の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物。
- 下記の工程:
1) (F)水に、(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を溶解して水相を得る工程;
2) (B)油脂に、(C)親油性乳化剤及び(A)リグナン類化合物を溶解して油相を得る工程;及び
3) 得られた水相に油相を分散させ、リグナン類化合物含有乳化組成物を得る工程
を含む、請求項1〜14の何れか1項に記載のリグナン類化合物含有乳化組成物の製造方法であって、(A)リグナン類化合物1重量部に対し、(D)親水性乳化剤及び(E)乳化安定剤を計1.8〜50重量部使用し、(A)リグナン類化合物1重量部に対し、(B)油脂及び(C)親油性乳化剤を計2〜13重量部使用することを特徴とする方法。 - (A)リグナン類化合物がセサミン及び/又はエピセサミンである、請求項15に記載の製造方法。
- (E)乳化安定剤がメチルセルロースである請求項15〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
- (B)油脂が固体脂である請求項15〜17の何れか1項に記載の製造方法。
- (B)油脂1重量部に対し、(C)親油性乳化剤を0.015〜0.07重量部使用することを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
- (A)リグナン類化合物1重量部に対し、(E)乳化安定剤を0.05〜2.5重量部使用することを特徴とする、請求項15〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
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