本発明の実施形態において、前記移相回路は、前記橋絡容量を通じて出力される信号の位相と、前記移相回路および前記フィルタを通じて出力される信号の位相とが前記フィルタ部の前記通過帯域外において逆位相となるように、移相角が設定されることが好ましい。
これにより、フィルタ部の通過帯域外において、橋絡容量を通過した信号とフィルタ部を通過した信号は互いに逆位相となり、打ち消し合う。そのため、通過帯域外(抑圧帯域)における出力信号が小さくなる。すなわち、抑圧帯域に減衰極が生じる。その結果、フィルタの抑圧度が高くなる。
本発明の実施形態において、フィルタは、共通端子と、当該共通端子から入力した信号を、互いに逆移相の2つの信号に分けてそれぞれ出力する2つの出力端子を有する平衡―不平衡変換器を備え、前記フィルタ部は、前記平衡−不平衡変換器の出力される2つの出力端子にそれぞれ接続され、前記平衡−不平衡変換器の一部が前記移相回路となり、前記橋絡容量は、前記共通端子と前記2つ出力端子に接続されたフィルタ部のいずれか一方の出力側とを橋渡しするように設けられる態様とすることができる。
上記構成において、共通端子から入力された信号は、平衡―不平衡変換器により、互いに逆移相になるように移相調整されて、2つ出力端子それぞれから出力され、フィルタ部を通過する。2つの出力端子のうち一方から出力されフィルタ部を通過した信号は、共通端子から橋絡容量を通過してきた信号と合流する。そのため、上記構成は、橋絡容量値を適切に設定することにより、橋絡容量を通過した信号の位相と、いずれかのフィルタ部を通過した信号の位相とが互いに逆移相になって打ち消しあうように調整することが可能な構成となっている。
本発明の実施形態において、前記移相回路および前記フィルタ部はパッケージ内または基板上に形成されており、前記橋絡は、前記パッケージまたは前記基板に形成される態様とすることができる。
これにより、フィルタのサイズを小型に保ちながら抑圧度の向上が実現される。
本発明の実施形態において、前記移相回路は、前記移相回路より前記共通端子または前記送信端子に至る線路の前記一部から、前記リアクタンスを介した結合を通じて前記受信端子に到達した信号と、前記移相回路を通じて前記受信端子に到達した信号との位相の差が略180度になるように位相調整することが好ましい。
移相回路により、移相回路を通じて受信端子へ到達した送信信号と、リアクタンスを介した結合を通じて受信端子へ到達した送信信号との位相差は、略180度に調整される。そのため、受信端子において、リアクタンスを介した結合によって取り出された送信信号と、受信フィルタおよび移相回路を通過して位相調整された送信信号とが互いに打ち消し合う効果が高くなる。
本発明の実施形態において、前記移相回路は、前記受信フィルタより受信端子側に設けられ、前記受信フィルタより前記送信フィルタまたは前記共通端子へ至る線路の一部と、前記移相回路より受信端子側の線路の一部とがリアクタンスを介して結合される態様とすることができる。この構成により、より簡単な構成で、アイソレーションを向上させた分波器が得られる。
本発明の実施形態において、前記移相回路より前記共通端子または前記送信フィルタへ至る線路の一部と、前記移相回路より受信端子へ至る線路の一部とがリアクタンスを介して結合され、さらに、前記送信フィルタより前記送信端子へ至る線路の一部と、前記移相回路より受信端子へ至る線路の一部とがリアクタンスを介して結合されている態様とすることができる。
送信端子から入力された送信信号は、送信フィルタを通る前と後で若干位相がずれる傾向にある。この場合、位相のずれ幅は送信信号の周波数によって異なる。通常、送信フィルタを通過した送信信号は、送信フィルタの通過周波数帯域内の様々な周波数の成分を含んでいるので、送信信号には、様々なずれ幅でずれた位相の成分が含まれることになる。上記構成により、送信端子から入力され、送信フィルタに入る前の送信信号と、送信フィルタを通った後の送信信号が、リアクタンスを介した結合によって取り出され、受信端子へ到達する。これにより、位相が若干異なる送信信号がそれぞれ取り出され、受信端子に到達する。そのため、これらの位相が若干異なる送信信号が、受信フィルタおよび移相回路を通って受信端子へ到達した送信信号と打ち消しあうことになる。その結果、打ち消される送信信号の位相の範囲が広がることになる。
本発明の実施形態においては、前記リアクタンスを介した結合は容量結合である態様とすることができる。これにより、分波器の性能劣化の抑制、およびアイソレーションの向上が可能になる。
本発明の実施形態において、前記移相回路の少なくとも一部が、集中定数型の回路で構成される態様とすることができる。集中定数型の回路によって移相回路を構成することで、分波器のサイズを小型に保ちながら抑圧度の向上もしくはアイソレーション向上を実現できる。
本発明の実施形態において、少なくとも一部が集中定数型の回路で構成された前記移相回路は、インダクタとキャパシタを備え、インダクタは信号線に対して並列に接続される態様とすることができる。
移相回路において、キャパシタよりも相対的にQが低いインダクタを信号線に対して並列に接続にすることで、その移相回路を追加したことによる分波器の損失劣化が抑制される。そのため、低損失を保ちながら分波器におけるアイソレーション向上もしくはフィルタの抑圧度の向上を実現できる。
本発明の実施形態において、前記送信フィルタおよび前記受信フィルタはパッケージに収容されており、前記リアクタンスを介した結合は、前記パッケージの配線により形成される態様とすることができる。上記構成により、分波器のサイズを小型に保ちながらアイソレーションの向上が実現される。
前記分波器を含むモジュールであって、前記分波器の前記受信フィルタおよび前記送信フィルタは、前記モジュールが備える基板に搭載され、前記リアクタンスを介した結合は、前記基板における配線により形成されるモジュールも本発明の実施形態に含まれる。上記構成により、サイズを小型に保ちながらも、アイソレーションが向上した分波器を備えるモジュールが得られる。また、このようなモジュールを備えた通信機器も本発明の実施形態に含まれる。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態にかかるアンテナ分波器の概略構成を示す図である。アンテナ分波器10は、共通端子Antに、通過周波数帯域が互いに異なる送信フィルタ1と受信フィルタ2とが並列に接続された構成になっている。共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ1が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ2および移相回路3が直列に接続されている。そして、送信フィルタ1から共通端子Antに至るまでの線路上の一点と、移相回路3と受信端子Rxとの間の線路上の一点とがコンデンサ4を介して結合されている。
アンテナ分波器10は、例えば、携帯電話に代表される無線通信機器のアンテナ分波器に用いられる。この場合、アンテナ分波器10の共通端子Antは、無線通信機器のアンテナに接続され、送信端子Txはアンテナから送出する送信信号を処理する送信回路に、受信端子Rxはアンテナで受信した受信信号を処理する受信回路に接続される。
送信回路から送信端子Txに入力された送信信号は、送信フィルタ1を通って共通端子Antからアンテナへ出力される。また、アンテナから共通端子Antへ入力された受信信号は、受信フィルタ2および移相回路3を通って受信端子Rxから受信回路へ出力される。このとき、送信フィルタ1の通過周波数帯域(送信周波数帯域)と、受信フィルタ2の通過周波数帯域(受信周波数帯域)とは異なるため、送信フィルタ1を通った送信信号は、受信フィルタ2へは流れず、共通端子Antの方へ流れる。
しかし、実際には、送信信号の一部は、受信フィルタ2に流れ込んで受信端子Rxに到達し、ノイズを発生させる。このように受信フィルタ2へ漏れた送信信号は、受信フィルタ2および移相回路3を通ることにより、位相がシフトした状態で受信端子Rxへ到達する。
一方で、送信フィルタ1を通って共通端子Antへ向う送信信号の一部は、共通端子Antに至るまでの線路上の一点で取り出され、コンデンサ4を通って受信端子Rxへ到達する。これにより、受信フィルタおよび移相回路3を通った送信信号と、受信フィルタおよび移相回路3を通っていない送信信号とが受信端子Rxへ到達することになる。
これら双方の送信信号の位相差が略180度になるように、移相回路3の移相角が設定されることが好ましい。すなわち、受信フィルタ2および移相回路3を通って受信端子Rxに到達した送信信号の位相と、送信フィルタ1から共通端子Antに至る線路上の一点(以下、「共通端子Ant側」と称する)からコンデンサ4を通って受信端子Rxに到達した送信信号の位相差が180度になるように、移相回路3の移相角が設定される。これにより、双方の送信信号が互いに打ち消し合う効果が大きくなり、送信フィルタ1から受信フィルタ2へ漏れてきた送信信号は根本的に減滅する。
このような効果を得るための移相回路3における移相角の適切な値は、アンテナ分波器10の回路構成に依存する。例えば、受信フィルタ2自体が移相機能を有する場合、受信フィルタ2を通った信号の位相はシフトする。そのため、共通端子Ant−受信端子Rx間に受信フィルタ2および移相回路3が接続される場合には、受信フィルタ2による位相シフト分と移相回路3による位相シフト分とが合わせたシフト量と、共通端子Ant側からコンデンサ4を介して受信端子Rxへ到達した送信信号のシフト量との位相差が180度になるように、移相回路3の移相角が設定されることが好ましい。なお、上記位相差は、正確に180度になる必要はなく、120度〜240度の範囲内であれば、送信信号の打ち消し効果が得られる。
また、上記の受信フィルタ2および移相回路3の移相機能以外の他の様々な要素も考慮して上記移相角が決定されることが好ましい。そのため、アンテナ分波器10の回路構成が決定した後、例えば、市販の回路シミュレータを使用することにより、上記位相差が得られる移相回路3の移相角を計算することもできる。具体的には、回路シミュレータの最適化機能を用いることで、最適移相角を探索することができる。また、あらかじめ受信フィルタ2およびコンデンサ4による移相分を測定することにより、移相回路3に必要な移相角を計算することもできる。なお、アンテナ分波器10の回路構成の具体例については後述する。
また、コンデンサ4の容量結合により、共通端子Ant側から取り出されて受信端子Rxの方へ送られる送信信号のパワーは、受信フィルタ2へ漏れていく送信信号と同じ程度の大きさであることが望ましい。なぜなら、共通端子Ant側からコンデンサ4の方へ取り出される送信信号のパワーが大きすぎると、アンテナ分波器10の本来の性能を低下させる可能性があり、逆に小さすぎると、Rx端子に到達した送信信号を完全には打ち消すことができないからである。
このように漏れ送信信号と同程度のパワーの信号を取り出すことを可能にする静電容量Cの小さなコンデンサ4を、実際に実装するのは困難な場合もある。そのような場合にとり得る、共通端子Ant側と受信端子Rxとのリアクタンスを介した結合の構成例を図2に示す。
図2では、共通端子Ant側と受信端子Rxを結合する線路上に直列に設けられた2つのコンデンサ4a、4bと、前記線路とグランドとの間に接続されたコイル5とで共通端子Ant側と受信端子Rxが結合されている。図2に示すように2つのコンデンサ4a、4bとコイル5で、図1に示すコンデンサ4のみによるリアクタンスと同程度のリアクタンスを得ようとすると、コンデンサ4a、4bの静電容量Cは、コンデンサ4の静電容量より大きくなる。そのため、図1のように1つの静電容量Cの小さいコンデンサ4を実装するのが困難な場合は、図2に示すように、比較的静電容量Cの大きなコンデンサ4a、4bを用いて同程度のリアクタンスによる結合を実現することができる。
ところで、上記図1および図2に示す回路構成では、共通端子Ant側と受信端子Rxがコンデンサ4またはコンデンサ4a、4bとコイル5の組み合わせによるリアクタンスを介して結合されるが、このリアクタンスを介した結合の位置はこれに限られない。この結合は、移相回路3よりも共通端子Ant側または送信端子Tx側の線路上と、移相回路3よりも受信端子Rx側の線路上とを結合するものであればよい。例えば、図3に示すアンテナ分波器10bのように、受信端子Rxと送信端子Txが、コンデンサ4を介して結合されてもよい。
次に、図1に示す移相回路3の回路構成の例を説明する。図4A〜図4Dは、移相回路3の具体例を示す回路図である。図4Aに示す移相回路では、入力端子Inと出力端子Outとの間にコイル6が接続され、コイル6の両側の線路は、コンデンサ7a、7bを介して接地されている。図4Aに示す移相回路は、例えば、入力端子Inから入った信号の位相を遅らせて出力端子Outから出力する遅れ移相型の移相回路として用いることができる。
図4Bに示す移相回路は、図4Aに示す移相回路を多段縦続接続した構成であり、この移相回路も遅れ移相型の移相回路として用いることができる。図4Bに示す構成では、入力端子Inと出力端子Outとの間に複数のコイル6a、6bが接続され、入力端子Inとコイル6aとの間、コイル6aとコイル6bとの間、およびコイル6bと出力端子Outとの間の線路には、他方の端子が接地されたコンデンサ7a、7bおよび7cがそれぞれ接続されている。すなわち、コイル6a、6bは入力端子Inおよび出力端子Outを結ぶ信号線に対して直列に接続され、コンデンサ7a、7bおよび7cは信号線に対して並列に接続されている。
図4Aに示す移相回路は、位相の遅れ(遅れ移相角)が90度までの場合に適しており、図4Bに示す移相回路は、移相の遅れが90度以上の場合に適している。
図4Cおよび図4Dに示す移相回路は、入力端子Inから入った信号の位相を進ませて出力端子Outから出力する進み移相型の移相回路として用いることができる。図4Cに示す構成では、入力端子Inと出力端子Outを結ぶ信号線にはコンデンサ7が接続され、コンデンサ7の両側の線路はコイル6c、6dを介して接地されている。図4Dに示す構成は、図4Cに示す移相回路を多段縦続接続した構成である。図4Dに示す構成では、入力端子Inと出力端子Outとの間に複数のコンデンサ7f、7gが接続され、入力端子Inとコンデンサ7fとの間、コンデンサ7fとコンデンサ7gとの間、およびコンデンサ7gと出力端子Outとの間の線路は、それぞれ、コイル6e、6fおよび6gを介して接地されている。すなわち、コンデンサ7fおよび7gが入力端子Inと出力端子Outを結ぶ信号線に直列に接続され、コイル6e、6fおよび6gは、信号線に対して並列に接続されている。
図4Cに示す移相回路は、位相の進み(進み移相角)が−90度までの場合に適しており、図4Dに示す移相回路は、移相の進みが−90度程度以下の場合に適している。
図4A〜図4Dに示した移相回路は、例えば、集中定数型の素子(コンデンサやコイル等)により構成することができる。この場合、図4Cおよび図4Dに示すように、入力端子Inと出力端子Outとを結ぶ信号線に対して直列にコンデンサを接続し、信号線に対して並列にコイルを接続する方が、図4Aおよび図4Bに示すように、信号線に対して直列にコイル、並列にコンデンサを接続するよりも、入力端子Inと出力端子Outとの間の信号の損失が少なくなる傾向にある。これは、コイルの方がコンデンサよりもQ値が低いからである。
なお、移相回路の具体的構成は、図4A〜図4Dに限定されず、その他、公知の移相回路の構成であってもよい。また、図4A〜図4Dに示す移相回路は、コイル、コンデンサ等の集中定数型素子により構成されてもよいし、集中定数型素子と、ストリップ線路や、マイクロストリップ線路等の分布定数型の素子と組み合わせにより構成されてもよい。また、図4A〜図4Dに示す移相回路は、チップコンデンサとチップコイルにより構成されてもよいし、IPD(Integrated Passive Device)を用いて構成されてもよい。
次に、図1に示したアンテナ分波器10の具体的な回路構成の例を、図5を用いて説明する。図5に示す例では、アンテナ分波器10の送信フィルタ1は、6段接続のラダー型フィルタの構成をとっている。すなわち、送信フィルタ1は、共通端子Antと送信端子Txとを結ぶ線路(直列腕)に接続された直列共振器11と、前記線路とグランド間を結ぶ線路上(並列腕)に接続された並列共振器12とで構成されるフィルタが多段に接続されたものである。受信フィルタ2も、同様に、直列共振器21と並列共振器22とで構成される6段接続のラダー型フィルタである。
直列共振器11、21および並列共振器12、22には、例えば、圧電薄膜共振器(Film Bulk Acoustic wave Resonator:FBAR)、SMR(Solidly Mounted Resonator)あるいは弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)共振器を用いることができる。
また、送信フィルタ1および受信フィルタ2より共通端子Ant側の線路上には、整合回路8が設けられる。整合回路8は、共通端子Antから送信フィルタ1および受信フィルタ2へ至る線路上とグランド間に接続されたコイル81により構成されている。なお、移相回路3は、図4Bに示した回路構成を採用したものである。
図5に示すアンテナ分波器10の用途として、例えば、W−CDMA方式(Band I)の携帯電話を想定すると、送信周波数帯域は1920〜1980MHz、受信周波数帯域は2110〜2170MHzとされる。ここで、このような周波数帯域を達成するように送信フィルタ1、受信フィルタ2における共振器11、12、21、22それぞれの共振周波数を設定した場合のアンテナ分波器10の周波数特性について説明する。
図6Aおよび図6Bは、一例として、コンデンサ4の値を15fF、移相回路の移相角を191度とした場合の、アンテナ分波器10の周波数特性を示す図である。図6A、図6Bに示すグラフにおいて縦軸は挿入損失、横軸は周波数を示す。また、図7は、上記アンテナ分波器10において、送信端子Txから入力される送信信号のうち受信フィルタ2へ漏れて受信端子Rxへ到達する送信信号がどの程度抑えられているかを示すアイソレーションを示すグラフである。図6Aおよび図6Bに示す周波数特性、および図7に示すアイソレーションは、回路シミュレータにより得られたものである。
図6Aは、アンテナ分波器10における受信フィルタ2の周波数特性R1を示すグラフである。図6Bは、アンテナ分波器10における送信フィルタ1の周波数特性T1を示すグラフである。図6A、図6Bに示すグラフ中に、図5に示す回路構成から、移相回路3およびコンデンサ4による容量結合を取り除いた従来の構成のアンテナ分波器(以下、従来のアンテナ分波器と称する)についての、受信フィルタの周波数特性R0および送信フィルタの周波数特性T0がそれぞれ点線で示されている。
図6Bに示すように、送信フィルタ1の周波数特性T1は、従来のアンテナ分波器の送信フィルタの周波数特性T0と略同じである。これに対して、図6Aに示す受信フィルタ2の周波数特性R1では、非通過周波数帯域において、従来のアンテナ分波器における受信フィルタより挿入損失が低くなっている。そのため、図7に示すように、特に送信周波数帯域(1920〜1980MHz)において、アイソレーションTR1が従来のアンテナ分波器のアイソレーションTR0に比べて、約25dB以上改善されている。なお、図7に示すアイソレーションは、送信端子Txに入力された送信信号のパワーAと、受信フィルタ2側に漏れて受信端子Rxに到達した送信信号のパワーBを用いて、下記式1のように計算される値X(単位はdB)である。
X=(10)×log(B/A) ・・・(式1)
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、上記第1の実施形態にかかるアンテナ分波器10の回路構成を変形した例である。図8は、本実施形態にかかるアンテナ分波器100の回路構成を示す図である。図8において、図5と同じ部分には同じ番号を付している。
図8に示すアンテナ分波器100においては、送信フィルタ1aは、4段接続のラダー型フィルタ、受信フィルタ2aは、5段接続のラダー型フィルタである。整合回路8aは、送信フィルタ1aおよび受信フィルタ2aそれぞれにおいて、線路上に直列接続されたコイル6fと、線路とグランド間に配置されたコンデンサ7f、7gで構成されている。
図8に示すアンテナ分波器100においては、共通端子Antと受信端子Rxはコンデンサ4を介して結合されている。さらに、送信端子Txと受信端子Rxとの間が、コンデンサ4c、コンデンサ4dおよびコイル5aを含む回路によって結合されている。この回路は、送信端子Txと受信端子Rxとを結ぶ線路上に2つのコンデンサ4c、4dが直列に接続され、それらのコンデンサ4c、4d間の線路とグランドとの間にコイル5aが配置された構成となっている。
これにより、アンテナ分波器100においては、送信端子Txおよび共通端子Antそれぞれから送信信号が取り出され、受信端子Rxへ到達する。そのため、送信端子Txおよび共通端子Antの双方から取り出された送信信号が、受信フィルタ2aへ漏れ、移相回路3を通って受信端子Rxへ到達した送信信号と打ち消しあうことになる。送信フィルタ1aを通過した後に共通端子Antから取り出される送信信号は、送信端子Txから取り出される送信信号に対して位相が若干ずれている。そのため、若干ずれた2つの位相を含む送信信号と、受信フィルタ2aへ漏れてきた送信信号と打ち消しあうことになる。その結果、打ち消される送信信号の位相の幅が広がることになる。
例えば、送信フィルタ1aから受信フィルタ2a側へ漏れる送信信号は、送信フィルタ1a、整合回路8aおよび受信フィルタ2aを通るうちに、位相がずれる場合がある。そのずれ幅は、送信信号の周波数によって異なる傾向がある。そのため、受信フィルタ2aへ漏れてきた送信信号は、様々なずれ幅でずれた位相の成分を含んだ状態で受信端子Rxへ到達する場合がある。このような漏れ送信信号と、送信端子Txと共通端子Antの双方から取り出された送信信号とが、打ち消しあうことで、打ち消される信号の位相の幅が広がることになる。そのため、図8に示す回路構成において移相回路の移相角を適切に設定することにより、例えば、送信周波数帯域全体において漏れ送信信号を打ち消すことが可能になる。
図9Aおよび図9Bは、一例として、アンテナ分波器100の送信周波数帯域を1920〜1980MHz、受信周波数帯域を2110〜2170MHzとし、コンデンサ4cおよびコンデンサ4dの静電容量を0.37pF、コンデンサ4の静電容量を0.8fF、コイル5aのインダクタンスを0.14nH、移相回路の移相角を158度とした場合の、アンテナ分波器100の周波数特性を示す図である。図9A、図9Bに示すグラフにおいて縦軸は挿入損失、横軸は周波数を示す。また、図10は、上記アンテナ分波器10において、送信端子Txと受信端子Rxとのアイソレーションを示すグラフである。図9Aおよび図9Bに示す周波数特性、および図10に示すアイソレーションは、回路シミュレータにより得られたものである。
図9Aは、アンテナ分波器100における受信フィルタ2aの周波数特性R2を示すグラフである。図9Bは、アンテナ分波器100における送信フィルタ2bの周波数特性T2を示すグラフである。図9A、図9Bに示すグラフ中に、図8に示す回路構成から、移相回路3、コンデンサ4による共通端子Ant−受信端子Rx間の容量結合、および送信端子Tx−受信端子Rx間の結合を取り除いた構成、すなわち従来構成のアンテナ分波器についての、受信フィルタの周波数特性R0aおよび送信フィルタの周波数特性T0aがそれぞれ点線で示されている。
図9Bに示すように、送信フィルタ1aの周波数特性T2は、従来のアンテナ分波器の送信フィルタの周波数特性T0aと略同じである。これに対して、図9Aに示す受信フィルタ2aの周波数特性R2では、送信周波数帯域(1920〜1980MHz)において、従来のアンテナ分波器における受信フィルタより挿入損失が低くなっている。さらに、図10に示すように、送信周波数帯域(1920〜1980MHz)において、アイソレーションTR1が従来のアンテナ分波器のアイソレーションTR0aに比べて、約10dB以上改善されている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用可能な範囲は、上記実施形態に限られない。例えば、アンテナ分波器の受信フィルタおよび/または送信フィルタとして、誘電体フィルタを用いても同様の効果が得られる。また、第1の実施形態における容量結合に用いるコンデンサ4や、第2の実施形態におけるコンデンサ4、4c、4dおよびコイル5は、IPDを用いて構成することができる。
また、上記実施形態では、移相回路3が、受信フィルタ2、2aより受信端子Rx側の線路上の設けられる例を説明したが、移相回路3の位置はこれに限られない。例えば、受信端子Rxより共通端子Ant側に設けられてもよいし、整合回路8または8aの一部として設けられてもよい。
また、リアクタンスを介した結合の例として、第1の実施形態では、共通端子Ant側−受信端子Rx間の結合、第2の実施形態では、共通端子Ant−受信端子Rx間の結合および、送信端子Tx−受信端子Rx間の結合の組み合わせを説明したが、結合位置は、これに限られない。移相回路3よりも共通端子Antまたは送信端子Txの側の線路上と、移相回路3より受信端子Rx側の線路上とを結合するものであればよい。
また、例えば、送信フィルタおよび受信フィルタをパッケージに収納してアンテナ分波器を構成する場合、上述の共通端子Ant−受信端子Rx間や送信端子Tx−受信端子Rx間の結合に使用されるコンデンサ4、4a〜4d、およびコイル5、5aの少なくとも一部をパッケージに内蔵することができる。
図11は、送信フィルタおよび受信フィルタが収納されたパッケージで構成されたアンテナ分波器の概略構造を示す図である。図11に示すアンテナ分波器10bは、図3に示す回路構成のアンテナ分波器10bをパッケージで構成したものである。図11に示す構成要素において、図3に示す回路の構成要素と対応する部分には、同じ番号を付す。
図11に示すように、パッケージ20の底面上に送信フィルタ1、受信フィルタ2、移相回路3が設けられている。また、パッケージ20の底面には配線パターンが形成される。この配線パターンにより、送信フィルタ1および受信フィルタ2と共通端子Antとの接続、送信フィルタ1と送信端子Txとの接続、および受信フィルタ2と受信端子Rxとの移相回路3を介した接続がなされている。さらに、送信端子Txおよび受信端子Rxとのコンデンサ4を介した結合(容量結合)も、パッケージの底面における配線パターンにより形成されている。なお、この容量結合は、パッケージの底面における配線パターンにより形成される場合に限られず、例えば、上部電極と下部電極の間に誘電体を挟んだ構造の集中定数型コンデンサとワイヤにより形成されてもよい。
また、上記の実施形態で示したアンテナ分波器10、10a、10bまたは100を備える通信機器も本発明の実施形態に含まれる。
図12は、図3に示す回路構成のアンテナ分波器10bを含む通信機器30の概略構成を示す図である。図12に示す構成要素において、図3に示す回路の構成要素と対応する部分には、同じ番号を付す。図12に示す通信機器30においては、モジュール基板31上に、送信フィルタ1、受信フィルタ2、移相回路3、パワーアンプ32、RFIC33、ベースバンドICが設けられている。
モジュール基板31に形成された配線パターンにより、送信フィルタ1および受信フィルタ2と共通端子Antとの接続、送信フィルタ1と送信端子Txとの移相回路3を介した接続、および受信フィルタ2と受信端子Rxとの接続がなされている。さらに、送信端子Txおよび受信端子Rxとのコンデンサ4を介した結合(容量結合)も、パッケージの底面における配線パターンにより形成されている。なお、共通端子Antは通信機器30が備えるアンテナ(図示せず)に接続される。
送信端子Txはパワーアンプ32を介してRFIC33に接続され、受信端子RxもRFIC33に接続されている。RFIC33はベースバンドIC34に接続されている。RFIC33は、半導体チップおよびその他の部品により構成されている。RFIC33には、受信端子から入力された受信信号を処理するための受信回路および、パワーアンプ32を介して共通端子Antに出力する送信信号を処理するための送信回路を含む回路を集積している。なお、パワーアンプ32は、RFIC33の送信回路から出力された送信信号を増幅して送信フィルタ1の送信端子Txへ入力する回路である。
また、ベースバンドIC34も半導体チップおよびその他の部品により構成されている。ベースバンドIC34には、RFIC33に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC33に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
図示しないが、ベースバンドIC34には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC34で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器30のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器30が備える入力機器もベースバンドIC34に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC34が送信信号に変換することができる構成になっている。
なお、通信機器30の構成は、図12に示す例に限られない。また、通信機器30の一部に用いられる部品の集合であるモジュールであって、上記実施形態のアンテナ分波器10、10a、10bまたは100を含むモジュールも本発明の実施形態に含まれる。
図13は、図3に示す回路構成のアンテナ分波器10bを含むモジュールの一例を示す図である。図13に示す例では、モジュール基板31a上に、送信フィルタ1、受信フィルタ2、移相回路3、整合回路35、パワーアンプ32が設けられている。共通端子Ant、送信フィルタ1、受信フィルタ2、移相回路3、コンデンサ4、受信端子Rxおよび送信端子Txの接続関係は図12に示す通信機器と同様である。送信端子Txには、整合回路35を介してパワーアンプ32が接続されている。なお、どの部品または回路を1つのモジュールにするかは任意であり、図13に示す例に限られない。
上記実施形態のアンテナ分波器10、10a、10b、100に示すように、本発明によれば、受信回路に漏れる送信信号を、アンテナ分波器内部からとりだした別の送信信号を用いて打ち消すことで、アイソレーションが大幅に向上するという効果が得られる。さらには、小型・低損失を保った状態でアイソレーションを向上することができ、高性能なアンテナ分波器を提供することも可能となる。
本発明は、アイソレーションが向上したアンテナ分波器、またはそれを用いた通信機器およびモジュールとして有用である。
[第3の実施形態]
(本実施形態の構成)
図15は、第3の実施形態におけるフィルタの回路構成図である。図15に示すフィルタ15の入力端子In側と出力端子Outの間には、移相回路16およびフィルタ部17が接続されている。また、フィルタ15には、入力端子In−移相回路16間のノードと、フィルタ部17−出力端子Out間のノードとを、橋渡しにより連結する橋絡容量CBが設けられている。
移相回路16は、直列に接続されたコイルL1と並列に接続されたコンデンサC1とを含んでいる。フィルタ部17は、4段のフィルタ素子D1〜D4が接続されて構成されるラダー型フィルタである。各フィルタ素子D1〜D4は、直列共振器S1〜4および並列共振器P1〜P4を備えている。
(本実施形態の原理)
フィルタ15のようにフィルタを構成することにより、抑圧帯域における抑圧度の向上が可能になり、良好なフィルタ特性が得ることが可能になる。以下、その原理について説明する。
図16Aは、容量CBを、入力端子Inと出力端子Outとの間に直列に接続した場合の回路構成を示す図である。図16Bは、フィルタ部17(ラダー型フィルタ)を、入力端子Inと出力端子Outとの間に直列に接続した場合の回路構成を示す図である。図16Cは、図16Aに示す容量CBの通過特性および位相特性と、図16Bに示すフィルタ部の通過特性および位相特性とを示すグラフである。
図16Cに示すグラフにおいて、横軸の目盛りは周波数を表し、左側の縦軸の目盛りは減衰量[dB]を、右側の縦軸の目盛りは位相[°]をそれぞれ表す。図16Cにおいて、実線g1は図16Bに示すフィルタ部17の通過特性を、実線h1はフィルタ部17の位相特性をそれぞれ示す。破線iは、図16Aに示す容量CBの通過特性を、破線jは容量CBの位相特性をそれぞれ示す。図16Cに示す例では、通過帯域低周波側の抑圧帯域(約1700MHz〜約1920MHz)に注目すると、フィルタ部17の位相は約−20°〜−50°くらいになっていることがわかる。一方、容量CBの位相は、約85°である。
図17Aは、図16Aの容量CBを、図16Bのフィルタ部17の入力端子Inと出力端子Out間に橋絡した場合の回路構成を示す図である。すなわち、図17Aは、ラダー型フィルタの入出力端子間に、静電容量=0.05pFの橋絡容量CBを付加した場合の回路構成を示している。
図17Bは、図17Aに示す回路の通過特性と位相特性を示すグラフである。図17Bにおいては、実線g2が通過特性を、実線h2が位相特性をそれぞれ示す。参考のため、図16Aの容量CBの位相容量も破線jで示されている。図17Bでは、橋絡容量CBを通過した電流と、フィルタ部17を通過した電流の位相差は、通過帯域低周波側の抑圧帯域で105°〜135°くらいとなっている。
ここで、この抑圧帯域における前記位相差を180°にすれば、これら橋絡容量CBの電流とフィルタ部17の電流とが互いに打ち消し合い、抑圧帯域での抑圧度が改善されると予想される。そこで、フィルタ部17を通過する電流の位相を、橋絡容量CBを通過する電流の位相と逆位相になるように変化させることを考える。
例えば、図18Aに示すような移相回路(位相遅延回路)16をフィルタ部17に接続すれば、出力位相を変化させることができる。移相回路16は、入力端子Inと出力端子Outとの間に直列に接続されたコイルL1(直列インダクタ)と、並列に接続されたコンデンサC1(並列キャパシタ)を備える。ここで、図18Bは、コイルL1のインダクタンスが5.74nH、コンデンサC1の静電容量が1.15pFの場合の、移相回路16の通過特性(実線k)および位相特性(実線m)を示すグラフである。位相特性は、約−60°である。この移相回路16をフィルタ部17に接続すれば、フィルタ部17を通過する電流の位相を−60°くらい変化できると予想できる。
図19Aは、フィルタ部17の入力側に移相回路16を付加した回路の構成を示す図である。図19Bは、図19Aの回路の通過特性(実線g3)および位相特性(実線h3)を示すグラフである。なお、図19Bにおける破線jは、図16Aの容量CBの位相特性を示す。図19Bから、移相回路16がフィルタ部17に付加されることにより、位相は約−60°変化し、通過帯域低周波側の抑圧帯域の位相は−80°〜−110°くらいとなっていることがわかる。
図19Bのグラフの1790MHz付近において、実線g3で示される移相回路16およびフィルタ部17の位相と、破線jで示される橋絡容量CBの位相との差Dは、略180°になっている。すなわち、通過帯域低周波側の抑圧帯域での両者の位相差Dは略180°(逆位相)となっている。
この結果から、図19Aに示す回路に、入力端子Inと出力端子Outとの間を橋渡しする橋絡容量CBを付加して図15に示す構成とすることによって、抑圧帯域における出力信号が小さくなることが予想される。すなわち、抑圧帯域おいて、橋絡容量CBを通過した電流と移相回路16およびフィルタ部17を通過した電流とが、互いに逆位相となって打ち消し合い、出力信号が小さくなる(減衰極となる)ことが予想できる。
図20は、図19Aに示す回路に橋絡容量CBを付加して図15と同様に構成した回路の通過特性(実線g4)を示すグラフである。図20に示すグラフでは、予想どおり、1790MHz付近に減衰極が発生し、通過帯域低周波側のフィルタの抑圧度が改善することが示されている。このように、図15に示すように回路を構成することで、抑圧帯域に減衰極を発生させ、高い抑圧度を持つフィルタを実現することができる。
なお、橋絡容量CBの静電容量の値を変化させると、橋絡容量CBを通過する電流の位相が変化する。そのため、橋絡容量CBの静電容量の値を変化させることで、減衰極の周波数を任意に制御することができる。
(移相回路の変形例)
本実施形態で用いる移相回路(位相変化素子)16は、図18Aに示した回路構成以外に、例えば、図21A〜21Cに示す回路構成とすることができる。図21Aおよび21Bに示す移相回路は、いずれも直列にコイルL、並列にコンデンサCを接続した構成である。図21Bの回路は、いわゆるLCL―T型回路である。コイルLやコンデンサCは、例えば、チップ部品や集積受動素子(IPD)などで実現できる。また、図21Cに示すように、分布定数型のストリップ線路やマイクロストリップ線路等の伝送線路(Transmission line)18により移相回路が構成されてもよい。
フィルタの抑圧帯域における初期位相によっては、移相回路は、位相を遅らせる場合も、位相を進ませる場合もあり得る。位相を進ませる場合は、例えば、図22A〜22Dに示す移相回路を用いることができる。図22A〜22Cの移相回路は、いずれも、直列にコンデンサC、並列にコイルLが接続された構成である。図22Dの移相回路は、伝送線路18により構成されている。
なお、上記の移相回路の変形例は、他の実施形態に適用することもできるし、図4A〜図4Dに示す移相回路を本実施形態の移相回路として採用することもできる。
(フィルタ部17の変形例)
橋絡容量CBは、移相回路16とフィルタ部17の最も外側に付加しなくても、例えば図23に示すように、移相回路16の入力端子In側とフィルタ部17の中間部とを橋渡しするように、橋絡容量CBが付加されてもよい。図23の例では、ラダー型フィルタを構成する多段のフィルタ素子の一部と、移相回路16とをまたぐように橋絡容量CBが設けられる。このように、移相回路16と、フィルタ部17の一部とをまたいで設けられても、前述と同様の原理により、フィルタの抑圧度を高めることができる。
本実施形態では、フィルタ部17は、一例として、ラダー型フィルタで構成されているが、フィルタ部17は、他のいかなる種類のフィルタであってもよい。例えば、ダブルモード型弾性表面波フィルタを用いることができる。図24は、ダブルモード型弾性表面波フィルタの構成例を示す図である。図24のダブルモード型弾性表面波フィルタは、入力端子Inが接続された入力IDT19と、その両側に設けられた出力IDT21a、21bと、出力IDT21a、21bの外側に設けられた反射器22a、22bを備える。出力IDT21a、21bには出力端子Outが接続されている。
なお、橋絡容量CBは、チップ部品やIPDで実現されてもよいし、フィルタチップ上に作製されてもよい。また、後述するように、フィルタを実装するパッケージや基板に橋絡容量CBを形成することもできる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、上記第3の実施形態におけるフィルタを、バランスフィルタに適用した形態である。
図25Aは、橋絡容量CBが付加されていないバランスフィルタの構成を示す図である。当該バランスフィルタは、バラン23およびフィルタ部(ラダー型フィルタ)17a、17bを用いて構成される。ここで、バラン23は、共通端子(入力端子In)と、共通端子に入力した信号の位相を約90°遅らせて出力する出力端子24aと、共通端子に入力した信号の位相を約90°進ませて出力する出力端子24bとを有する平衡−不平衡変換器である。図25Aに示す例では、バラン23は、コイルL2、L3とコンデンサC2、C3を用いて構成される。バランの2つの出力端子24a、24bに、それぞれ、ラダー型フィルタであるフィルタ部17a、17bが接続され、不平衡入力−平衡出力のバランスフィルタが構成される。フィルタ部17a、17bは、上記第3の実施形態におけるフィルタ部17と同様である。
図25Aに示すタイプのバランスフィルタにおいて、入力端子Inと一方の出力端子Out1間の経路、および、入力端子Inと他方の出力端子Out2間の経路それぞれは、移相回路に、フィルタ部17aまたは17bが接続された構成になっている。そのため、第3の実施形態の橋絡容量CBをいずれかの経路に付加することで、抑圧度改善効果を得ることができると考えられる。
図25Bは、図25Aのバランスフィルタの入力端子In−出力端子Out1間の位相特性(実線h41)と、入力端子In−出力端子Out2間の位相特性(実線h42)を示すグラフである。図25Bのグラフは、バラン23のコイルL2、L3のインダクタンスが5.74nH、コンデンサC2、C3の静電容量が1.15pFである場合の計算結果である。また、図16Aに示した容量CB(静電容量=0.05pF)の位相特性(破線j)も上記グラフに示している。通過帯域より低周波側の位相特性に注目すると、1790MHz辺りで容量CBの位相と、入力端子In−出力端子Out1間の位相の差Dが略180°(逆位相)になっている。したがって、入力端子Inと出力端子Out1間に、0.05pF程度の橋絡容量CBを付加した構成(図26に示す構成)にすることで、入力端子In−出力端子Out1間の抑圧特性に減衰極を発生することができ、抑圧度を改善できると考えられる。
すなわち、図26は、本実施形態におけるバランスフィルタの構成を示す図である。図27Aは、図26に示す構成のバランスフィルタにおける入力端子In−出力端子Out1間の通過特性(実線g51)を計算した結果を示すグラフである。このグラフには、橋絡容量CBを付加しない構成(図25Aに示す構成)のバランスフィルタの通過特性(実線g41)も示されている。このグラフによれば、橋絡容量CBを付加することで、入力端子In−出力端子Out1間の通過特性において、1790MHz辺りに減衰極が発生していることがわかる。この結果、通過帯域よりも低周波側の抑圧度が向上している。一方、図27Bは、入力端子In−出力端子Out2間の通過特性(実線g52)を示すグラフである。実線g52は、橋絡容量CBを設けない場合の通過特性(実線g42)と重なっている。すなわち、橋絡容量CBを付加する場合もしない場合も同じ通過特性となっている。図28は、図26のバランスフィルタをバランス合成し、シングルエンドフィルタとして解析した場合の通過特性(実線g4)の計算結果を示すグラフである。バランス合成すると減衰極が高周波側に移動し、1860MHz辺りに減衰極が発生することがわかる。このように、バランス合成した解析からも、橋絡容量CBを付加することで通過帯域より低周波側の抑圧度を高めることができることがわかる。
図29は、本実施形態のバランスフィルタの変形例を示す図である。当該変形例においては、バランスフィルタは、バラン23aと、バラン23aの出力端子24a、24bに接続されたバランス入力−バランス出力型のラダー型フィルタ17cとを備える。ラダー型フィルタ17cは、直列共振器S1〜4がそれぞれ接続された二つの経路間を繋ぐように、並列共振器P1〜P4が接続された構成になっている。また、バラン23aでは、一例として、CLCのπ型回路とLCLのπ型回路が用いられている。
(デュプレクサの構成例)
図30は、図26に示すバランスフィルタを備えるデュプレクサの構成例を示す図である。当該デュプレクサにおいては、アンテナ端子Antに、受信フィルタ25および送信フィルタ26が接続されている。受信フィルタ25の出力側の端子が受信端子Rx1、Rx2であり、送信フィルタ26の入力側の端子が送信端子Txである。すなわち、当該デュプレクサは、図26に示すバランスフィルタを、受信フィルタ(Rxフィルタ)25として用いている。そのため、受信端子Rx1、Rx2はバランス出力端子である。送信フィルタ26はラダー型フィルタで構成されている。
図31Aは、図30に示したバランスデュプレクサの特性(バランス合成後)の計算結果を示すグラフである。グラフにおいて、実線g6Rxは受信フィルタ25の特性を、実線g6Txは送信フィルタ26の特性をそれぞれ示す。また、破線g7Rx、g7Txは、橋絡容量CBがない構成(図25Aに示す構成)のバランスフィルタを受信フィルタに用いたバランスデュプレクサの、受信フィルタおよび送信フィルタそれぞれの特性を示す。(実線g6Txと破線g7Txとは略重なっている。)図31Aから、橋絡容量CBを付加することで、受信端子Rxの一方において出力信号が相殺され、受信フィルタの通過帯域よりも低周波側の抑圧度が改善していることがわかる。
図31Bは、図30に示したバランスデュプレクサの送信端子Tx−受信端子Rx間のアイソレーション特性(実線f6)を示すグラフである。なお、実線f7は、橋絡容量CBがない構成(図25Aに示す構成)のバランスフィルタを用いたバランスデュプレクサのアイソレーション特性を示す。図31Bから、送信端子Tx−受信端子Rx間のアイソレーション特性も、受信フィルタ25の抑圧特性を反映して大幅に改善していることが確認できる。なお、第3の実施形態のフィルタを用いてデュプレクサを構成しても、同様に効果を得ることができる。
(デュプレクサの実装例)
図32は、図30に示したバランスデュプレクサの実装形態を示す図である。図32に示す例では、キャビティ29を有するセラミックパッケージ36に、バランチップ28、送信フィルタチップ33、および受信フィルタチップ34がフリップチップ実装される。バランチップ32は、図30におけるバラン23を形成するIPDチップである。送信フィルタチップ33は送信フィルタ26を形成するチップであり、受信フィルタチップ34はフィルタ部17a、17bを形成するチップである。これらの各チップとセラミックパッケージ36とは、例えば、Auバンプにより導通される。これらのチップが実装されたセラミックパッケージ36の上部には、メタルリッド27がキャップとして設けられる。これにより、キャビティ29は気密封止される。
セラミックパッケージ36は、例えば、チップが実装されるダイアタッチ層、およびその下の中間層を含む積層パッケージとすることができる。この場合、中間層の裏側にはフットパットが設けられ、フットパット層が形成される。なお、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1間を橋渡しする橋絡容量CBは、例えば、後述するようにセラミックパッケージ36に形成することができる。
図33は、バランチップ28の構成を示す平面図である。図33に示す例では、石英の基板37上のアンテナ端子Antと出力端子24aとの間にコイルL2、出力端子24bとGND端子との間にコイルL3が形成される。コイルL2、L3は、例えば、銅等の金属膜を用いたスパイラルコイルにより形成することができる。また、アンテナ端子Antと出力端子24bとの間にコンデンサC3、出力端子24aとGND端子との間にコンデンサC2が形成される。コンデンサC2、C3は、例えば、MIMキャパシタで形成される。
図34は、送信フィルタチップ33の構成を示す平面図である。図34に示す例では、圧電基板38上に設けられた弾性表面波素子により、ラダー型フィルタの直列共振器および並列共振器が形成されている。弾性表面波素子は、線路パターンを介して、アンテナ端子Ant、送信端子Txまたはグランド端子GNDに接続される。
図35は、受信フィルタチップ34の構成を示す平面図である。図35に示す例では、圧電基板39上に設けられた弾性表面波素子により、ラダー型フィルタの直列共振器S1〜S4および並列共振器P1〜P4が形成されている。弾性表面波素子は、線路パターンを介して、出力端子24a、24b、受信端子Rx1、Rx2またはグランド端子GNDに接続される。なお、図33〜図25において示される各部の符号は、図30に示す各部の符号の対応している。
次に、セラミックパッケージ36において、橋絡容量CBが形成される場合の構成例を説明する。図36Aは、セラミックパッケージ36のダイアタッチ層の表面における配線レイアウトの一例を示す図である。図36Bは、ダイアタッチ層の下層である中間層の、表面における配線レイアウトの一例および、X―X線に沿う断面を示す図である。図36Cは、ダイアタッチ層の下層であるフットパット層におけるフットパットの配置を示す図である。
図36A〜図36Cにおいては、白抜きの長方形または正方形は、チップとセラミックパッケージ36とをつなぐバンプを示している。また、白抜きの丸は、他の層と導通するビアを示している。線路パターンは、バンプ間、ビア間またはバンプ−ビア間を繋いでいる。なお、図36A〜図36Cにおける線路パターンの符号は、その符号によって示される線路パターンが接続される各端子の符号である。各端子の符号は、図30に示す符号に対応している。また、図36A〜図36Cにおいては、橋絡容量CBに関係する線路および端子のレイアウトを少なくとも示し、その他のレイアウトは省略している。
例えば、図36Aに示すダイアタッチ層では、バランチップ28のアンテナ端子Antは線路パターンによりビアに接続され、送信フィルタ33のアンテナ端子Antも線路パターンによりビアに接続されている。これらのビアは、図36Bに示す中間層に導通しており、中間層において、線路パターン(Ant端子に接続される線路パターン)により互いに接続されている。なお、図36Bに示す例では、中間層の裏側に設けられたフットパットを点線で示している。この中間層のAnt端子に接続される線路パターンの一方の端部が、受信端子Rx1のフットパットの上方に配置されている。このように、アンテナ端子Antに繋がる線路パターン(配線)が、受信端子Rx1のフットパッドの直上まで伸びる構成とすることにより、この線路パターンと受信端子Rx1のフットパッドとが、セラミックを誘電帯層とする平行平板型のキャパシタを形成することになる(図36Bの断面図参照)。そのため、線路パターンとフットパッドの重なり部分Wを調整することで所望のキャパシタンス値を得ることができる。ひいては、線路パターンにより減衰極周波数を任意に制御することが可能になる。
このように、橋絡容量CBは、簡単な構成により実現することができる。そのため、例えば、パッケージの大型化や、配線構造の複雑化による干渉等の問題を引き起こすことなく、容易に、所望のフィルタ抑圧特性を得ることが可能になる。