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JP5200734B2 - 車両のクラッチ制御装置 - Google Patents
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Description

本発明は、ハイブリッド車両や電気自動車に適用され、モータと駆動輪の間にクラッチを設定した駆動系を備える車両のクラッチ制御装置に関する。
従来、第1指令手段の指令により、第1,第2クラッチのうち、対象外のクラッチを開放状態に維持し、第2指令手段の指令により、モータを回転駆動するとともに対象クラッチを係合させていき、対象クラッチの係合動作時に回転変動を検出したら、この時の係合指令値を学習値として記憶手段に記憶しておき、記憶した学習値を所定量だけ非係合側に減少補正した基準指令値に基づき対象クラッチの非係合時の制御を行なうハイブリッド車のクラッチ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001-113971号公報
しかしながら、従来のハイブリッド車のクラッチ制御装置にあっては、モータ回転数を一定とし、クラッチ油圧を上げながらクラッチの回転変動が生じたところで学習していたため、停車時、あるいは、モータ回転数が一定回転数に維持される時にのみ学習が可能であり、走行中に学習させるのが困難である、という問題があった。
すなわち、モータと駆動輪の間に介装されたクラッチを一旦開放し、クラッチ開放後に締結するような制御(クラッチの回転変動を検出し、補正する)であるため、駆動輪へのモータトルクの伝達がクラッチの開放により遮断されてしまう。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、走行中にトルク推定環境を作ることを可能としながら、モータと駆動輪の間に介装されたクラッチの伝達トルクを精度良く推定することができる車両のクラッチ制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の車両のクラッチ制御装置は、モータと駆動輪の間にクラッチを介装した駆動系と、前記クラッチの締結開放を制御するクラッチ制御手段と、を備えている。
前記モータのトルク値を検出するモータトルク値検出手段を設ける。
そして、前記クラッチ制御手段は、前記クラッチを滑りが無い締結状態とするモータ走行から、徐々にクラッチ締結力を下げてスリップ締結状態へ移行するとき、前記クラッチがスリップ中であり、かつ、前記クラッチの差回転を維持しながらの走行中であるというスリップ維持条件の成立によりスリップ締結状態が安定化するとクラッチ伝達トルク推定値の演算を許可する推定値演算許可判定部と、前記推定値演算許可判定部によりクラッチ伝達トルク推定値の演算を許可された際に検出されたモータトルク値に基づき、前記クラッチのクラッチ伝達トルク推定値を演算するクラッチ伝達トルク推定値演算部を有する。
よって、本発明の車両のクラッチ制御装置にあっては、クラッチを滑りが無い締結状態とするモータ走行から、徐々にクラッチ締結力を下げてスリップ締結状態へ移行するとき、推定値演算許可判定部において、クラッチがスリップ中であり、かつ、クラッチの差回転を維持しながらの走行中であるというスリップ維持条件の成立によりスリップ締結状態が安定化するとクラッチ伝達トルク推定値の演算が許可される。クラッチ伝達トルク推定値の演算が許可されると、クラッチ伝達トルク推定値演算部において、演算が許可された際に検出されたモータトルク値に基づき、クラッチのクラッチ伝達トルク推定値が演算される。
すなわち、クラッチ伝達トルク推定値を演算するに際し、モータ走行状態からクラッチをスリップ締結状態とし、クラッチ伝達トルクを駆動力として走行する状態に移行するだけである。このため、車両走行を維持したままでクラッチ伝達トルク推定値の演算環境を作ることができる。
また、モータのみを動力源とし、クラッチ伝達トルクを駆動力として走行するクラッチのスリップ締結状態で検出されるモータトルク値は、イナーシャやフリクション等の影響を無視すると、クラッチ伝達トルクに相当する値となる。
この結果、走行中にトルク推定環境を作ることを可能としながら、モータと駆動輪の間に介装されたクラッチの伝達トルクを精度良く推定することができる。
以下、本発明の車両のクラッチ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のクラッチ制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(車両の一例)を示す全体システム図である。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMG(モータ)と、第2クラッチCL2(クラッチ)と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。
前記モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータジェネレータMGのロータは、ダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
前記第2クラッチCL2は、前記モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択している。そして、前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
前記第1クラッチCL1としては、例えば、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14により締結・開放が制御される乾式単板クラッチが用いられる。前記第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。このハイブリッド駆動系は、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)とハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)の2つの走行モードを有する。「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、エンジンEngとモータジェネレータMGの動力で走行するモードである。
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
前記モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いられると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、第2クラッチ油圧センサ18からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。なお、シフトマップとは、アクセル開度と車速に応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。
上記自動変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。
さらに、走行モード切り替え制御時等において、統合コントローラ10から目標変速段指令を入力した場合、通常の自動変速制御での変速指令に優先し、目標変速段への変速制御や目標変速段を維持する変速段固定制御を行う。
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22等からの情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令および目標変速段指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
図2は、実施例1のクラッチ制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。図3は、FRハイブリッド車両の統合コントローラ10でのモード選択処理を行う際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。以下、図2及び図3に基づき、実施例1の統合コントローラ10にて実行される演算処理を説明する。
前記統合コントローラ10は、図2に示すように、目標駆動力演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400とを有する。
前記目標駆動力演算部100では、目標駆動力マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、目標駆動力tFoOを演算する。
前記モード選択部200では、図3に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、「EVモード」または「HEVモード」を目標走行モードとして選択する。但し、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
前記目標充放電演算部300では、目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと、目標駆動力tFoOと、目標走行モードと、車速VSPと、目標充放電電力tP等の入力情報に基づき、動作点到達目標として、目標エンジントルクと目標MGトルクと目標MG回転数と目標CL1トルクと目標CL2トルクと目標変速段を演算する。そして、目標エンジントルク指令と目標MGトルク指令と目標MG回転数指令と目標CL1トルク指令と目標CL2トルク指令と目標変速段指令を、CAN通信線11を介して各コントローラ1,2,5,7に出力する。
図4は、実施例1のクラッチ制御装置が適用されたATコントローラ7にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。
前記ATコントローラ7(クラッチ制御手段)は、図4に示すように、学習許可判定ブロック71(推定値演算許可判定部)と、学習値演算ブロック72(クラッチ伝達トルク推定値演算部)と、マップ学習補正ブロック73(マップ学習補正部)と、CL2トルク-指示油圧マップ設定ブロック74と、CL2トルク-指示油圧変換ブロック75と、指示油圧-指示電流変換ブロック76と、を備えている。
前記学習許可判定ブロック71は、モード情報(EVモードからHEVモードへの走行モード切り替えによるエンジン始動シーン抽出)と、エンジン回転数情報と、目標MG回転数情報と、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報と、CL2差回転情報を入力する。そして、これらの情報に基づいて、エンジン始動指令が出されてから複数の学習許可判定条件が共に成立するか否かを判断する。そして、複数の学習許可判定条件が共に成立すると学習許可フラグを立てる。
前記学習値演算ブロック72は、学習許可判定ブロック71からの学習許可フラグと、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報を入力する。そして、実施例1では、学習許可フラグが入力された時点での第2クラッチ油圧センサ18(クラッチ油圧検出手段)からの第2クラッチ油圧情報を入力する。そして、必要演算情報に基づいて第2クラッチCL2の伝達トルクを推定演算し、この対応関係にある第2クラッチ油圧値PCL2と第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2をクラッチトルク学習値として出力する。
前記マップ学習補正ブロック73は、前記学習値演算ブロック72により取得された第2クラッチ油圧値PCL2と第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2をクラッチトルク学習値とし、クラッチトルク学習値データが所定量蓄積されると、前記CL2トルク-指示油圧マップ設定ブロック74に設定されているCL2トルク-指示油圧マップの特性の傾き変化やオフセットに補正を加える学習補正指令を出力する。
前記CL2トルク-指示油圧マップ設定ブロック74は、第2クラッチトルク(CL2トルク)と第2クラッチCL2への指示油圧の関係を特性化したCL2トルク-指示油圧マップが設定されていて、マップ学習補正ブロック73から学習補正指令を入力すると、そのときに設定されているCL2トルク-指示油圧マップの傾き変化やオフセットに補正が加え、補正後の新たなCL2トルク-指示油圧マップに更新する。
前記CL2トルク-指示油圧変換ブロック75は、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令が入力されると、そのとき設定されているCL2トルク-指示油圧マップを検索することにより、目標CL2トルク指令に対応する指示油圧に変換する。
前記指示油圧-指示電流変換ブロック76は、CL2トルク-指示油圧変換ブロック75から指示油圧を入力し、指示油圧に対応する指示電流に変換する。そして、この変換により得られた指示電流による制御指令を第2クラッチ油圧ユニット8に対し出力する。
図5は、実施例1のATコントローラ7の学習許可判定ブロック71と学習値演算ブロック72とマップ学習補正ブロック73にて実行される第2クラッチ学習補正制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。なお、この第2クラッチ学習補正制御処理は、第2クラッチCL2を滑りのない完全締結状態としている「EVモード」での走行中に開始される。
ステップS101では、「EVモード」から「HEVモード」への走行モード切り替え判断に基づき、エンジン始動指令が出されたか否かを判断し、YES(エンジン始動指令の出力有り)の場合はステップS102へ移行し、No(エンジン始動指令の出力無し)の場合はステップS101での判断を繰り返す。
ステップS102では、ステップS101でのエンジン始動指令の出力有りとの判断に続き、第2クラッチCL2へのクラッチ油圧を徐々に減圧し、第2クラッチCL2に微小スリップを生成し、ステップS103へ移行する。
ステップS103では、ステップS102での微小スリップの生成、あついは、ステップS104での駆動系学習許可条件の不成立判断、あるいは、ステップS105での車両状態学習許可条件の不成立判断に続き、第2クラッチCL2がスリップ中であり、かつ、モータジェネレータMGによる差回転フィードバック制御により、第2クラッチCL2の差回転を維持しながらの走行中であるか否かを判断し、YES(スリップ維持条件成立)の場合ステップS104へ移行し、NO(スリップ維持条件不成立)の場合はエンドへ移行する。
ステップS104では、ステップS103でのスリップ維持条件が成立であるとの判断に続き、第2クラッチCL2のスリップが安定化し、かつ、第2クラッチCL2の差回転が規定幅以内で、かつ、ドライバーもしくはシステムによる過渡駆動力の変化が一定幅以内であるか否かを判断し、YES(駆動系学習許可条件の成立)の場合はステップS105へ移行し、NO(駆動系学習許可条件の不成立)の場合はステップS103へ戻る。
ステップS105では、ステップS104での駆動系学習許可条件が成立であるとの判断に続き、車両状態(車両外部環境・車両内部状況・各コントローラの制御状態・フェイル状態等)が学習に適した車両状態であるか否かを判断し、OK(車両状態学習許可条件の成立)の場合は学習許可フラグを出しながらステップS106へ移行し、NG(車両状態学習許可条件の不成立)の場合はステップS103へ戻る。
ステップS106では、ステップS105での車両状態学習許可条件が成立であるとの判断に続き、学習値である第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2と第2クラッチ油圧値PCL2を演算し、ステップS107へ移行する。
ここで、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2は、モータジェネレータMGのMGトルク値に基づいて推定演算される。第2クラッチ油圧値PCL2は、第2クラッチ油圧センサ18からのセンサ値に基づき演算される。
ステップS107では、ステップS106での学習値(TCL2,PCL2)の演算に続き、学習値のうち、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2に対し、イナーシャとモータフリクションの影響を反映した補正演算を行い、ステップS108へ移行する。
なお、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の詳しい演算手法については、後述する。
ステップS108では、ステップS107での第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の補正演算に続き、学習許可条件の成立を経験する毎に取得された学習値(TCL2,PCL2)を格納し、学習値(TCL2,PCL2)の格納データ量が所定量に達すると、CL2トルク-指示油圧マップの特性における傾き変化やオフセットに反映させて学習補正し、ステップS103へ戻る。
次に、作用を説明する。
実施例1のFR車両のクラッチ制御装置における作用を、「第2クラッチCL2のクラッチ容量学習補正について」、「エンジン始動シーンでの駆動系構成要素の状態変遷作用」、「学習許可判定作用」、「第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の演算手法」、「学習補正制御作用」に分けて説明する。
[第2クラッチCL2のクラッチ容量学習補正について]
図6は、ハイブリッド車両の駆動系に有する第2クラッチの指示油圧とクラッチ伝達トルクの関係特性の劣化によるオフセット変化および傾き変化を示す図である。図7は、ハイブリッド車両の駆動系に有する第2クラッチをスリップ締結させての駆動力コントロール走行から完全締結による駆動力コントロール走行へと移行する際の駆動力段差を示す駆動力特性図である。図8は、ハイブリッド車両の駆動系に有する第2クラッチのクラッチ伝達トルクと駆動力段差による前後Gの許容範囲とバラツキ範囲を含めた関係特性を示す図である。
まず、第2クラッチCL2の変速機作動油が劣化(ATF劣化)した場合、および、第2クラッチCL2のスプリング特性が劣化した場合、図6に示すように、指示油圧とクラッチ伝達トルクの関係特性は、傾きが変化せずに上下のスライド方向に特性が移動するというオフセット変化をする。なお、スプリング特性に劣化には、ソレノイドスプリングやバルブスプリングによるソレノイドバルブによる油圧絶対値変動と、クラッチスプリングの劣化を含む。また、第2クラッチCL2のクラッチ摩擦係数μが劣化(摩擦材のμ劣化)した場合、図6に示すように、指示油圧とクラッチ伝達トルクの関係特性は、オフセット変化ではなく、傾きが変化する。
次に、クラッチ容量を直接測定できない第2クラッチCL2のクラッチ容量学習補正を行わないで劣化(オフセット変化や傾きが変化)を放置した場合には、図7に示すように、ハイブリッド車両の駆動系に有する第2クラッチCL2をスリップ締結させての駆動力コントロール走行から完全締結による駆動力コントロール走行へと移行する際に駆動力段差が生じる。なお、第2クラッチCL2をスリップ締結させて第2クラッチCL2により駆動力をコントロールする駆動力コントロール走行は、WSC(Wet Start Clutchの略)走行という。
すなわち、駆動力段差によるG特性は、図8に示すように、例えば、組み付け段階で許容範囲のA点に存在していたにもかかわらず劣化を放置した場合、B点に移動して許容範囲から外れてしまうことになり、駆動力段差が拡大する。また、第2クラッチCL2が、組み付け段階でバラツキ範囲の限界領域(許容範囲とバラツキ範囲の間の領域)にある場合には、既に許容範囲から外れていることになる。
このように、駆動力段差を抑制するために第2クラッチCL2のクラッチ容量学習補正を行う必要がある。しかし、例えば、従来技術のように、計測可能なポイントが特定のポイントに限られている場合には、オフセット変化のみに対応することが可能であっても、傾き変化に対し対応することができない。
これに対し、図6に示すように、40Nmクリープから120Nmまでをデータ取得可能領域とし、複数のポイントでの測定情報を得ることで、オフセット変化と傾きが変化に対応する「μスリップによるCL2容量学習制御」を行うことを目的とする。
この目的を達成するため、下記の(μスリップ)・(μスリップCL2容量学習)・(学習値補正場所)・(補正対象のハード)を採用した。なお、学習許可条件については下記の「学習許可判定作用」にて述べる。また、学習作用については下記の「学習補正制御作用」にて述べる。
・μスリップ
EV走行中のガクガク振動吸収・スリップイン早期化によるエンジン始動時間の短縮を狙い、EV走行中に第2クラッチCL2の油圧を徐徐に下げ、微小スリップを生成し、それを維持する制御を行う。
・μスリップCL2容量学習
μスリップを行う際、モータジェネレータMGでトルクをコントロールし、第2クラッチCL2で微小スリップを生成する制御を行う。この制御により、モータジェネレータトルクとクラッチ伝達トルクの平衡点を確認できる効果も持つ。そして、モータジェネレータトルクを正とすることで、ATコントローラ7内の計算を制御できるため、μスリップ中、かつ、学習許可の環境となったところで、モータジェネレータトルクとクラッチ伝達トルクの差異を埋める学習補正を行う。
・学習値補正場所
学習値補正場所としては、信頼性の高い、線形に近い部分に対し補正をかける。そして、ロバスト性を確保するため、トルク→油圧変換を行う部分に対して補正をかける。
・補正対象のハード
補正対象のハードは、摩擦材のμ変化、ATF劣化、ソレノイドバルブによる油圧絶対値変動(ソレノイドスプリング、バルブスプリング)、クラッチスプリングの劣化である。
[エンジン始動シーンでの駆動系構成要素の状態変遷作用]
図9は、実施例1のFR車両のクラッチ制御装置においてエンジン始動シーンでのモード選択特性・学習許可フラグ特性・Eng回転特性・MG目標回転特性・MG回転特性・MGトルク特性・変速段特性・CL1ストローク特性(CL1トルク特性)・CL2トルク特性・CL2差回転特性の一例を示すタイムチャートである。
図9において、t1はエンジン始動指令が出された時点を示し、t2はMGトルク立ち上がりポイントを示し、t3はEng回転立ち上がりポイントを示し、t4はEng回転一定値ポイント(火入れ前)を示し、t5はHEV移行指令が出された時点を示す。以下、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、エンジンEng、モータジェネレータMGの各状態変遷について説明する。
(第1クラッチCL1の状態変遷)
第1クラッチCL1は、時刻t1までの「EVモード」では開放、時刻t1〜t2間は開放(ストローク中)、時刻t2〜t3間は中間容量、時刻t3〜t4間は中間容量、時刻t4〜t5間は中間容量、時刻t5以降は完全締結へ移行し、「HEVモード」で締結される。
(第2クラッチCL2の状態変遷)
第2クラッチCL2は、時刻t1までの「EVモード」では締結、時刻t1〜t2間はスリップ締結、時刻t2〜t3間はスリップ締結、時刻t3〜t4間はスリップ締結、時刻t4〜t5間はスリップ締結、時刻t5以降は締結へ移行し、「HEVモード」で締結される。
(エンジンEngの状態変遷)
エンジンEngは、時刻t1までの「EVモード」では停止、時刻t1〜t2間は停止、時刻t2〜t3間は停止であるが第1クラッチCL1からトルク受け取り中、時刻t3〜t4間はクランキング中、時刻t4〜t5間は運転へ移行、時刻t5以降は「HEVモード」を含めて運転状態とされる。
(モータジェネレータMGの状態変遷)
モータジェネレータMGは、時刻t1までの「EVモード」では目標トルクを得るトルク制御、時刻t1〜t2間は目標回転数を得る回転数制御、時刻t2〜t3間は回転数制御、時刻t3〜t4間は回転数制御、時刻t4〜t5間は回転数制御、時刻t5以降は回転数制御から「HEVモード」での目標トルクを得るトルク制御に移行する。
上記のように、走行中に走行モードを「EVモード」から「HEVモード」に切り替えるエンジン始動シーンでは、エンジンEngを停止し第1クラッチCL1を開放している「EVモード」から、過渡期モードとしての「エンジン始動中モード」を経過し、エンジンEngを運転し第1クラッチCL1を締結している「HEVモード」へと切り替えられる。
このエンジン始動シーンでは、「エンジン始動中モード」において、第2クラッチCL2をスリップ締結状態とし、モード切り替えに伴い変動するトルクが駆動輪へ伝達されることでのモード切り替えショックを抑えている。
一方、エンジン始動シーンでは、「エンジン始動中モード」において、第1クラッチCL1を開放状態から中間容量を保つ半クラッチ状態とし、モータジェネレータMGをトルク制御から回転数制御に切り替えている。これによって、第1クラッチCL1を介してモータジェネレータMGからトルクを受け取ることでエンジンEngを始動しながら、自動変速機ATの入力軸回転を一定に保つようにしている。つまり、「エンジン始動中モード」においては、モータジェネレータMGのトルクを上昇させつつ、回転数を目標回転数に一致させる回転数制御を行っている。
そして、「EVモード」から「HEVモード」に切り替えるエンジン始動シーンでは、エンジンEngを停止し第1クラッチCL1を開放している「EVモード」から、第1クラッチCL1を開放としたままで、第2クラッチCL2をスリップ締結する。このため、時刻t1から時刻t2までの間は、MGトルク値に基づき、スリップ締結される第2クラッチCL2の第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2を演算するのに好適なシーンとなる。
[学習許可判定作用]
図5のフローチャートにおいて、ステップS105で学習許可判断がOKとならない限り、ステップS106に進むことが無い。つまり、図4の学習許可判定ブロック71から学習許可フラグが出ない限り、学習値演算ブロック72にて第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の演算等が行われることがない。以下、学習許可判定ブロック71での学習許可判定作用について説明する。
ステップS101では、エンジン始動指令が出されたか否かが判断され、エンジン始動指令の出力有りの場合は、ステップS102へ進む。そして、ステップS102では、第2クラッチCL2へのクラッチ油圧が徐々に減圧され、第2クラッチCL2に微小スリップが生成される。そして、ステップS103では、第2クラッチCL2がスリップ中であり、かつ、モータジェネレータMGによる差回転フィードバック制御により、第2クラッチCL2の差回転を維持しながらの走行中であるか否かというスリップ維持条件が判断され、スリップ維持条件が成立すると、ステップS104へ進む。そして、ステップS104では、第2クラッチCL2のスリップが安定化し、かつ、第2クラッチCL2の差回転が規定幅以内で、かつ、ドライバーもしくはシステムによる過渡駆動力の変化が一定幅以内であるか否かによる駆動系学習許可条件が判断され、駆動系学習許可条件が成立すると、ステップS105へ進む。ステップS105では、車両状態(車両外部環境・車両内部状況・各コントローラの制御状態・フェイル状態等)が学習に適した車両状態であるか否かにより車両状態学習許可条件が判断され、車両状態学習許可条件が成立すると、学習許可フラグを出しながらステップS106へ進む。
このように、エンジン始動指令が出された時刻t1から、
・第2クラッチCL2がスリップ中であり、かつ、第2クラッチCL2の差回転を維持しながらの走行中(スリップ維持条件)。
・第2クラッチCL2のスリップが安定化し、かつ、第2クラッチCL2の差回転が規定幅以内(図9のC)で、かつ、ドライバーもしくはシステムによる過渡駆動力の変化が一定幅以内(図9のD)である(駆動系学習許可条件)。
・車両外部環境・車両内部状況・各コントローラの制御状態・フェイル状態等が学習に適した車両状態(車両状態学習許可条件)。
という3つの条件が判断され、図5のフローチャートにおいて、ステップS103→ステップS104→ステップS105へと進み、例えば、図9の時刻t1'にてスリップ維持条件と駆動系学習許可条件と車両状態学習許可条件の全てが成立すると、学習許可フラグが立てられることになる。
ここで、スリップ維持条件が成立しない領域で学習許可を出さないのは、第2クラッチCL2の伝達トルクにより駆動力をコントロールし、モータジェネレータトルクTMGと第2クラッチ伝達トルクが平衡関係を持つWSC走行でないためである。また、駆動系学習許可条件が成立しない過渡領域で学習許可を出さないのは、計測誤差が大きいためである。
[第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の演算手法]
図5のフローチャートにおいて、ステップS105で学習許可フラグが立てられると、ステップS106→ステップS107へと進み、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の演算が実行される。つまり、図4の学習許可判定ブロック71から学習許可フラグが出たことで、学習値演算ブロック72にて第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の演算が行われる。以下、学習値演算ブロック72での第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の演算手法について説明する。
まず、時刻t1〜t2の時間領域での運動方程式は、
TMG=TCL2+I・ω'MG+FMG …(1)
但し、TMG:MGトルク値、TCL2:第2クラッチ伝達トルク推定値、I:変速段毎のイナーシャ、ω'MG:モータジェネレータMGの回転角加速度、FMG:モータフリクション
であらわされる。
したがって、上記(1)式は、
TCL2=TMG−I・ω'MG−FMG …(1')
であらわされる。
なお、モータフリクションは微小なので、(FMG)の項を無視した場合、上記(1')式は、
TCL2=TMG−I・ω'MG …(1")
であらわされる。
ここで、TMG(MGトルク値)は、時刻t1'〜時刻t2の学習補正時間で得られたMGトルクであり、また、変速段毎のイナーシャIは、変速段情報が分かれば既知であり、ω'MGは、MGトルク値前後でのモータジェネレータMGの回転差により演算できる。
ちなみに、時刻t2〜t4の時間領域での運動方程式は、
TMG=TCL1+TCL2+I・ω'MG+FMG …(2)
であらわされ、時刻t1〜時刻t2とは異なり、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を求める必要があり、CL2容量学習制御の対象外領域となる。
このように、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2は、MGトルク値(TMG)とイナーシャ項(I・ω'MG)を用いた上記(1')式または(1")式を用いて求めることができる。
すなわち、モータジェネレータMGのみを動力源とし、第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを駆動力としてWSC走行する際の第2クラッチCL2のスリップ締結状態で検出されるモータトルク値は、イナーシャやフリクション等の影響を無視すると、第2クラッチ伝達トルクに相当する値となる。
したがって、WSC走行を維持したままでトルク推定環境を作ることができる。そして、走行領域を使用しての推定であるため、MGトルク値からイナーシャIによる損失部分を減算する上記(1')式または(1")式を用いることで、走行によるイナーシャ影響を考慮し、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2を正確に推定することができる。
[学習補正制御作用]
現状のハイブリッド車両は、第2クラッチの伝達駆動トルクをコントロールすることにより、ドライバーのアクセル操作の応答をする領域(ウェット・スタート・クラッチ制御領域:WSC制御領域)がある。このWSC制御領域が存在するために、車両の駆動モードとしては、「モータジェネレータのみによる電気自動車走行モード」、「エンジンとモータジェネレータを駆動力とするハイブリッド車走行モード」、そして「第2クラッチをスリップさせながらクラッチで駆動力をコントロールするWSC走行モード」が存在する。このそれぞれの制御のドライバーからの応答を同一のものとするためには、第2クラッチのクラッチ伝達駆動トルクを、使用領域でモータトルクをベースに統一することが必要となる。
既存の学習制御では、第2クラッチでアクセルの応答をする必要性を考慮しておらず、常用領域での学習補正精度に問題がある。また、実用走行領域での学習補正機会が少ない。そして、クラッチμ劣化に対する補正を行うことができない。
これに対し、実施例1では、図5のフローチャートにおいて、ステップS105で学習許可フラグが立てられると、ステップS106→ステップS107→ステップS108へと進み、ステップS108にて、学習値をCL2トルク-指示油圧マップに反映させて学習補正される。
すなわち、ステップS108において、対応関係にある第2クラッチ油圧値PCL2と第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2をクラッチトルク学習値とし、学習許可条件の成立を経験する毎に取得された学習値(TCL2,PCL2)を格納し、学習値(TCL2,PCL2)の格納データ量が所定量に達すると、CL2トルク-指示油圧マップの特性における傾き変化やオフセットに反映させて学習補正される。以下、実施例1の学習補正制御のメリットを述べる。
第一に、実用走行領域で学習補正機会を作ることができる。
すなわち、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2を演算するに際し、電気自動車走行モードによるモータ走行状態から第2クラッチCL2をスリップ締結状態とし、第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを駆動力として走行するWSC走行状態に移行するだけである。このため、従来技術の「一定回転数」というしばりが外され、車両走行を維持したままの多くの領域で第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2の演算し、学習を許可できる環境を作ることができる。
第二に、第2クラッチCL2でアクセルの応答をする必要性を考慮し、常用領域で高い学習補正精度を得ることができる。
すなわち、上記のように、走行中に環境が作ることができること、かつ、イナーシャ補正を加えることによって、駆動力の過渡変化が大きすぎる領域を除いて学習が可能となり、学習機会を大幅に上げることができると共に、走行領域を使用することを考慮し、イナーシャによるロスの部分を補正値から減算することで、学習結果の精度向上を図ることができる。
第三に、第2クラッチCL2のμ劣化に対する補正を行うことができる。
すなわち、学習環境が、スリップ締結状態の第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを駆動力として走行するWSC走行状態であり、図6に示すように、計測可能なポイントが大きく広がる。このため、計測結果より、「CL2トルク→指示油圧マップ」の線形特性に対して、オフセット変化に対する補正ばかりでなく、傾き変化の補正を加えることができ、第2クラッチCL2のμ劣化への補正も可能となる。
次に、効果を説明する。
実施例1のFRハイブリッド車両のクラッチ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) モータ(モータジェネレータMG)と駆動輪(左後輪RLと右後輪RR)の間にクラッチ(第2クラッチCL2)を介装した駆動系と、前記クラッチの締結開放を制御するクラッチ制御手段(ATコントローラ7)と、を備えた車両(FRハイブリッド車両)のクラッチ制御装置において、前記モータのトルク値を検出するモータトルク値検出手段を設け、前記クラッチ制御手段は、前記クラッチを滑りが無い締結状態とするモータ走行から、徐々にクラッチ締結力を下げてスリップ締結状態とし、このスリップ締結状態の安定化条件が成立した際に検出されたモータトルク値(モータジェネレータトルク値TMG)に基づき、前記クラッチのクラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)を演算するクラッチ伝達トルク推定値演算部(学習値演算ブロック72)を有する。このため、走行中にトルク推定環境を作ることを可能としながら、クラッチ伝達トルク(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)を精度良く推定することができる。
(2) 前記クラッチ(第2クラッチCL2)は、締結・開放制御を行う油圧アクチュエータを備え、前記クラッチの締結制御油圧系に、クラッチ油圧を検出するクラッチ油圧検出手段(第2クラッチ油圧センサ18)を設け、前記クラッチ伝達トルク推定値演算部(学習値演算ブロック72)は、前記モータトルク値(モータジェネレータトルク値TMG)を検出する時、同時タイミングでクラッチ油圧値(第2クラッチ油圧値PCL2)を検出し、クラッチ油圧値と対応させてクラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)を演算する。このため、クラッチ油圧値(第2クラッチ油圧値PCL2)と対応させたクラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)が得られ、クラッチ制御系でクラッチ油圧値により代用してクラッチ伝達トルクを制御することができる。
(3) 前記クラッチ制御手段(ATコントローラ7)は、前記クラッチ(第2クラッチCL2)のクラッチトルクと指示油圧の関係を特性化したトルク-指示油圧マップ(CL2トルク-指示油圧マップ)を設定すると共に、前記クラッチ伝達トルク推定値演算部(学習値演算ブロック72)により取得された情報を学習値(第2クラッチ油圧値PCL2と第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)とし、前記トルク-指示油圧マップに反映させるトルク-指示油圧マップ学習補正部(マップ学習補正ブロック73)を有する。このため、トルク(CL2トルク)と指示油圧により決まる数多くのポイントでの学習補正により、クラッチ(第2クラッチCL2)のμ劣化を原因としてトルク-指示油圧特性の傾きが変化するのに対しμ劣化補正を達成することができる。
(4) 前記クラッチ伝達トルク推定値演算部(学習値演算ブロック72)は、検出されたモータトルク値(TMG)から、イナーシャによる損失分(I・ω'MG)を減算し、前記クラッチ(第2クラッチCL2)のクラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)を演算する。このため、駆動系に回転慣性を持つ走行中におけるクラッチ伝達トルク推定値の演算であることが考慮され、精度良くクラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)を演算することができる。
(5) 前記クラッチ制御手段(ATコントローラ7)は、スリップ締結状態が安定化しているスリップ安定化条件に加え、前記クラッチの入出力差回転が一定幅回転域に収束安定している差回転安定条件と、ドライバーもしくはシステムによる過渡駆動力の変化が一定幅以内であるという過渡駆動力安定条件が共に成立すると(ステップS104でYES)、前記クラッチ伝達トルク推定値演算部(学習値演算ブロック72)によるクラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)の演算を許可する推定値演算許可判定部(学習許可判定ブロック71)を有する。このため、クラッチ伝達トルクの推定誤差が大きくなるクラッチ(第2クラッチCL2)の差回転の不安定領域や過渡駆動力の不安定領域が排除され、クラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)を精度良く演算することができる。
(6) 前記車両は、エンジンEngとモータ(モータジェネレータMG)の間に第1クラッチCL1を介装し、前記モータと駆動輪(左後輪RLと右後輪RR)の間に第2クラッチCL2を介装した駆動系を有し、走行モードとして、前記第1クラッチCL1を開放した「電気自動車走行モード」と、前記第1クラッチCL1を締結した「ハイブリッド車走行モード」を有するハイブリッド車両(FRハイブリッド車両)であり、前記推定値演算許可判定部(学習許可判定ブロック71)は、前記電気自動車走行モードから前記ハイブリッド車走行モードへの切り替え過渡期であって、前記第1クラッチCL1を開放し、前記第2クラッチCL2をスリップ締結し、停止状態の前記エンジンEngに始動指令が出力されるエンジン始動中モードのとき、前記クラッチ伝達トルク推定値演算部(学習値演算ブロック72)によるクラッチ伝達トルク推定値(第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)の演算許可判定を行う。このため、学習補正を行うために意図的に第2クラッチCL2のスリップ締結制御を加えることなく、ハイブリッド車両での走行中に経験する電気自動車走行モードからハイブリッド車走行モードへの切り替えを有効に利用し、高い頻度で学習値(第2クラッチ油圧値PCL2と第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2)を取得することができる。
以上、本発明の車両のクラッチ制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、クラッチ油圧値と対応させてクラッチ伝達トルク推定値を演算する例を示した。しかし、クラッチ油圧値に代え、クラッチ伝達トルクと対応関係にある他の要素(例えば、クラッチストローク量、クラッチ締結指令、等)と対応させてクラッチ伝達トルク推定値を演算するようにしても良い。
実施例1では、第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2を演算するにあたり、イナーシャの影響を考慮し、イナーシャ項(I・ω'MG)を減算する例を示した。しかし、駆動系の回転数変化が小さいような場合、イナーシャ項を無視し、モータジェネレータトルク値TMGのみにより第2クラッチ伝達トルク推定値TCL2を演算するような例としても良い。
実施例1では、伝達トルク演算や学習補正の対象であるクラッチ(第2クラッチCL2)として、自動変速機ATに内蔵された摩擦締結要素とする駆動系を持つFRハイブリッド車両への適用例を示した。しかし、FFハイブリッド車両へも勿論適用できる。さらに、モータと変速機構(ATやCVT等)の間にクラッチ2を追加した駆動系を持つFRハイブリッド車両やFFハイブリッド車両(図10)や、変速機構(ATやCVT等)と駆動輪の間にクラッチ2を追加した駆動系を持つFRハイブリッド車両やFFハイブリッド車両(図11)にも適用することができる。さらに、このトルク推定や学習補正は、モータとクラッチの関係で成立するため、適用範囲を拡大し、例えば、モータとクラッチ(独立タイプと変速機構内蔵タイプを含む)を用いた駆動系を持つ電気自動車や燃料電池車(図12)へも適用することができる。要するに、モータと駆動輪の間にクラッチを介装した駆動系を備えた車両のクラッチ制御装置であれば適用できる。
実施例1のクラッチ制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。 実施例1のクラッチ制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。 FRハイブリッド車両の統合コントローラ10でのモード選択処理を行う際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。 実施例1のクラッチ制御装置が適用されたATコントローラ7にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。 実施例1のATコントローラ7の学習許可判定ブロック71と学習値演算ブロック72とトルク-指示油圧マップ学習補正ブロック73にて実行される第2クラッチ学習補正制御処理の流れを示すフローチャートである。 ハイブリッド車両の駆動系に有する第2クラッチの指示油圧とクラッチ伝達トルクの関係特性の劣化によるオフセット変化および傾き変化を示す図である。 ハイブリッド車両の駆動系に有する第2クラッチをスリップ締結させての駆動力コントロール走行から完全締結による駆動力コントロール走行へと移行する際の駆動力段差を示す駆動力特性図である。 ハイブリッド車両の駆動系に有する第2クラッチのクラッチ伝達トルクと駆動力段差による前後Gの許容範囲とバラツキ範囲を含めた関係特性を示す図である。 実施例1のFRハイブリット車両のクラッチ制御装置においてエンジン始動シーンでのモード選択特性・学習許可フラグ特性・Eng回転特性・MG目標回転特性・MG回転特性・MGトルク特性・変速段特性・CL1ストローク特性(CL1トルク特性)・CL2トルク特性・CL2差回転特性の一例を示すタイムチャートである。 本発明のクラッチ制御装置が適用可能なモータと変速機構(ATやCVT等)の間にクラッチ2を追加した駆動系を持つハイブリッド車両を示す概略図である。 本発明のクラッチ制御装置が適用可能な変速機構(ATやCVT等)と駆動輪の間にクラッチ2を追加した駆動系を持つハイブリッド車両を示す概略図である。 本発明のクラッチ制御装置が適用可能なモータとクラッチ(独立タイプと変速機構内蔵タイプを含む)を用いた駆動系を持つ電気自動車や燃料電池車を示す概略図である。
符号の説明
Eng エンジン
FW フライホイール
CL1 第1クラッチ
MG モータジェネレータ
CL2 第2クラッチ(クラッチ)
AT 自動変速機
PS プロペラシャフト
DF ディファレンシャル
DSL 左ドライブシャフト
DSR 右ドライブシャフト
RL 左後輪
RR 右後輪
FL 左前輪
FR 右前輪
7 ATコントローラ(クラッチ制御手段)
71 学習許可判定ブロック(推定値演算許可判定部)
72 学習値演算ブロック(クラッチ伝達トルク推定値演算部)
73 マップ学習補正ブロック(トルク-指示油圧マップ学習補正部)
18 第2クラッチ油圧センサ(クラッチ油圧検出手段)
PCL2 第2クラッチ油圧値(クラッチ油圧値)
TCL2 第2クラッチ伝達トルク推定値(クラッチ伝達トルク推定値)

Claims (6)

  1. モータと駆動輪の間にクラッチを介装した駆動系と、前記クラッチの締結開放を制御するクラッチ制御手段と、を備えた車両のクラッチ制御装置において、
    前記モータのトルク値を検出するモータトルク値検出手段を設け、
    前記クラッチ制御手段は、前記クラッチを滑りが無い締結状態とするモータ走行から、徐々にクラッチ締結力を下げてスリップ締結状態へ移行するとき、前記クラッチがスリップ中であり、かつ、前記クラッチの差回転を維持しながらの走行中であるというスリップ維持条件の成立によりスリップ締結状態が安定化するとクラッチ伝達トルク推定値の演算を許可する推定値演算許可判定部と、
    前記推定値演算許可判定部によりクラッチ伝達トルク推定値の演算を許可された際に検出されたモータトルク値に基づき、前記クラッチのクラッチ伝達トルク推定値を演算するクラッチ伝達トルク推定値演算部を有することを特徴とする車両のクラッチ制御装置。
  2. 請求項1に記載された車両のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチは、締結・開放制御を行う油圧アクチュエータを備え、
    前記クラッチの締結制御油圧系に、クラッチ油圧を検出するクラッチ油圧検出手段を設け、
    前記クラッチ伝達トルク推定値演算部は、前記モータトルク値を検出する時、同時タイミングでクラッチ油圧値を検出し、クラッチ油圧値と対応させてクラッチ伝達トルク推定値を演算することを特徴とする車両のクラッチ制御装置。
  3. 請求項2に記載された車両のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチ制御手段は、前記クラッチのクラッチトルクと指示油圧の関係を特性化したトルク-指示油圧マップを設定すると共に、前記クラッチ伝達トルク推定値演算部により取得された情報を学習値とし、前記トルク-指示油圧マップに反映させるトルク-指示油圧マップ学習補正部を有することを特徴とする車両のクラッチ制御装置。
  4. 請求項1から3までの何れか1項に記載された車両のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチ伝達トルク推定値演算部は、検出されたモータトルク値から、イナーシャによる損失分を減算し、前記クラッチのクラッチ伝達トルク推定値を演算することを特徴とする車両のクラッチ制御装置。
  5. 請求項1から4までの何れか1項に記載された車両のクラッチ制御装置において、
    前記推定値演算許可判定部は、前記スリップ維持条件の成立に加え、前記クラッチの入出力差回転が一定幅回転域に収束安定している差回転安定条件と、ドライバーもしくはシステムによる過渡駆動力の変化が一定幅以内であるという過渡駆動力安定条件が共に成立すると、前記クラッチ伝達トルク推定値演算部によるクラッチ伝達トルク推定値の演算を許可することを特徴とする車両のクラッチ制御装置。
  6. 請求項1から5までの何れか1項に記載された車両のクラッチ制御装置において、
    前記車両は、エンジンとモータの間に第1クラッチを介装し、前記モータと駆動輪の間に第2クラッチを介装した駆動系を有し、走行モードとして、前記第1クラッチを開放した電気自動車走行モードと、前記第1クラッチを締結したハイブリッド車走行モードを有するハイブリッド車両であり、
    前記推定値演算許可判定部は、前記電気自動車走行モードから前記ハイブリッド車走行モードへの切り替え過渡期であって、前記第1クラッチを開放し、前記第2クラッチをスリップ締結し、停止状態の前記エンジンに始動指令が出力されるエンジン始動中モードのとき、前記クラッチ伝達トルク推定値演算部によるクラッチ伝達トルク推定値の演算許可判定を行うことを特徴とする車両のクラッチ制御装置。
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