本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、窒化物半導体発光素子の一例である窒化物半導体レーザ素子に本発明を適用した場合について説明する。また、以下の実施形態において、「窒化物半導体」とは、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=1)からなる半導体を意味する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体ウェハを模式的に示した断面図である。図2は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体ウェハに用いられる基板の平面図である。図3は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体ウェハに用いられる基板の断面斜視図である。図4〜図8は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体ウェハの構造を説明するための図である。なお、図2は、成長抑制膜を省略した状態の図を示している。まず、図1〜図8を参照して、窒化物半導体レーザ素子を含む、本発明の第1実施形態による窒化物半導体ウェハ100について説明する。
第1実施形態による窒化物半導体ウェハ100は、図1に示すように、無極性面であるm面({1−100}面)を結晶成長面1aとするn型GaN基板1を備えている。なお、n型GaN基板1は、本発明の「窒化物半導体基板」の一例である。このn型GaN基板1は、結晶成長面1aから厚み方向に掘り込まれることによって形成された複数の凹部2を有している。これらの凹部2は、図2および図3に示すように、それぞれ、[0001]方向(c軸方向)に延びるように形成されているとともに、[0001]方向と直交する[11−20]方向(a軸方向)に約150μm〜約600μm(たとえば、約400μm)の周期T(図2参照)で等間隔に配列されている。すなわち、上記複数の凹部2は、n型GaN基板1にストライプ状に形成されている。また、図1および図4に示すように、上記n型GaN基板1において、凹部2が形成されている領域(掘り込まれた領域)が掘り込み領域3となっている。一方、結晶成長面1aにおける凹部2が形成されていない領域(掘り込まれていない領域)が非掘り込み領域4となっている。
また、上記複数の凹部2は、図5に示すように、それぞれ、底面部2aと一対の側面部2bとを含んで構成されている。一対の側面部2bは、その傾斜角γが90度より大きくなるように設定されている。具体的には、一対の側面部2bの傾斜角γは、たとえば、約100度に設定されている。このため、凹部2の側面部2bは、傾斜面となっている。これにより、開口幅が上方に向かって(底面部2aから開口端に向かって)徐々に大きくなるように、凹部2が形成されている。
また、上記凹部2は、[11−20]方向に約10μmの開口幅g1(開口端の幅)を有しているとともに、n型GaN基板1の厚み方向に約5μmの深さfを有している。すなわち、上記複数の凹部2は、それぞれ、開口幅g1が深さfより大きくなるように構成されている。
ここで、第1実施形態による窒化物半導体ウェハ100では、図1、図3および図5に示すように、掘り込み領域3(凹部2の内側の領域)に、窒化物半導体の結晶成長を抑制する成長抑制膜5が形成されている。この成長抑制膜5は、窒化物膜であるAlN膜からなり、凹部2内を埋め込まない厚みに形成されている。具体的には、成長抑制膜5は、厚みt(図5参照)が約100nmとなるように形成されている。なお、成長抑制膜5の厚みtは、凹部2の深さfの半分以下であるのが好ましい。このように構成されていれば、凹部2内が成長抑制膜5で埋め込まれてしまうのを抑制することが可能となり、クラックの抑制効果を容易に得ることが可能となる。また、後述するn型クラッド層に組成変動が生じるのを容易に抑制することも可能となる。
また、第1実施形態では、上記成長抑制膜5は、凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されている。具体的には、図3および図5に示すように、第1実施形態では、上記成長抑制膜5は、凹部2の底面部2aの一部に、[0001]方向(c軸方向)に延びるように形成されている。なお、成長抑制膜5の[11−20]方向の幅w1(図5参照)は、凹部2の底面部2aの幅g2(図5参照)より小さい、たとえば、約4μmに構成されている。
また、第1実施形態による窒化物半導体ウェハ100は、図1に示すように、上記n型GaN基板1の結晶成長面1a上に、窒化物半導体からなる半導体素子層10が形成された構造を有している。この半導体素子層10は、図6に示すように、活性層13を含む複数の半導体層から構成されており、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などのエピタキシャル成長法によって、n型GaN基板1の結晶成長面1a上に順次形成されている。具体的には、n型GaN基板1の結晶成長面1a上に、n型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層11(層厚:約2.2μm)、n型GaNからなるn型ガイド層12(層厚:約0.1μm)、活性層13、p型Al0.15Ga0.85Nからなる蒸発防止層14(層厚:約20nm)、p型GaNからなるp型ガイド層15(層厚:約0.05μm)、p型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層16(層厚:約0.5μm)およびp型GaNからなるp型コンタクト層17(層厚:約0.1μm)が順次形成されている。また、半導体素子層10を構成するn型の半導体層には、n型不純物として、たとえば、Siがドープされており、p型の半導体層には、p型不純物として、たとえば、Mgがドープされている。なお、n型クラッド層11は、本発明の「窒化物半導体層」の一例である。
ここで、上記半導体素子層10に含まれるAlとGaとNとを含有する層において、Alが多量に含有されていると、n型GaN基板1との格子不整合が大きくなるため、クラックが発生し易くなる。特に、n型クラッド層11は、光閉じ込めを良好に行うためにAlの組成比が高く設定されていることから、n型GaN基板1との格子不整合が大きくなっており、また、その層厚も約2.2μmと大きいため、このn型クラッド層11でクラックが発生し易い。
一方、第1実施形態による窒化物半導体ウェハ100では、図1に示すように、凹部2内(掘り込み領域3)に成長抑制膜5が形成されていることにより、凹部2内が半導体素子層10で埋め込まれるのが抑制されている。このため、凹部2(掘り込み領域3)上の半導体素子層10の表面(半導体素子層10を構成する各層の表面)に窪み25が形成された状態となっている。そして、この窪み25によって、n型GaN基板1との格子不整合などに起因して生じるn型クラッド層11(図6参照)の歪みが緩和されている。これにより、非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11(図6参照)において、クラックの発生が抑制されている。なお、第1実施形態では、n型クラッド層11以外の他の半導体層においても、クラックの発生が抑制されている。
また、第1実施形態では、凹部2内に成長抑制膜5が形成されていることにより、非掘り込み領域4上に形成された半導体素子層10において、厚み方向の組成変動が抑制されている。特に、組成変動が生じやすいn型クラッド層11(図6参照)においても、厚み方向の組成変動が抑制されている。
さらに、第1実施形態では、上記成長抑制膜5が凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されることによって、図8に示すように、半導体素子層10(半導体素子層10を構成する各層)のエッジグロース部26を凹部2内に発生させることが可能な構造となっている。
また、図1に示すように、半導体素子層10の所定領域(非掘り込み領域4上の所定領域)には、電流通路部となる凸状のリッジ部18が形成されている。このリッジ部18は、図7に示すように、凹部2に沿って(凹部2の延びる方向と平行に)形成されている。具体的には、上記リッジ部18は、[0001]方向(c軸方向)に延びるとともに、[11−20]方向に約150μm〜約600μm(たとえば、約400μm)の距離W1(図1参照)を隔てて配列されることによってストライプ状に形成されている。そして、このリッジ部18の形成によって、半導体素子層10にストライプ状の光導波路19が形成されている。なお、図1に示すように、上記リッジ部18は、凹部2から所定の距離以上(たとえば、5μm以上)隔てた、非掘り込み領域4上の領域に形成されている。また、半導体素子層10の上面上であるとともにリッジ部18の両脇には、電流狭窄を行うための絶縁層20が形成されている。
また、半導体素子層10上には、光導波路19(図7参照)に電流を供給するためのp側電極21が形成されている。一方、n型GaN基板1の裏面上には、n側電極22が形成されている。
また、図7に示すように、上記窒化物半導体ウェハ100には、窒化物半導体レーザ素子に個片化するための分割予定線P1およびP2が設定されている。分割予定線P1は、[11−20]方向に延びるように設定されており、分割予定線P2は、[0001]方向に延びるように設定されている。また、分割予定線P2は、分割後の窒化物半導体レーザ素子に、1つの凹部2が含まれるように設定されている。
このように構成された第1実施形態による窒化物半導体ウェハ100は、分割予定線P1およびP2で分割されることによって、個々の窒化物半導体レーザ素子に個片化される。
図9は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子の平面図であり、図10は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子を模式的に示した断面図である。図11は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子の一部を示した断面図であり、図12は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子の活性層の構造を説明するための断面図である。図13は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子が搭載された窒化物半導体レーザ装置の斜視図である。なお、図10は、図9のa−a線に沿った断面に対応する図を示している。次に、図9〜図13を参照して、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150について説明する。なお、第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150は、上記した第1実施形態による窒化物半導体ウェハ100から得ることができるため、以下の説明では、上記窒化物半導体ウェハ100から得られる窒化物半導体レーザ素子150を例にして説明する。
第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150は、図9に示すように、レーザ光が出射される光出射面30aと、光出射面30aと対向する光反射面30bとを含む一対の共振器面30を有している。また、上記窒化物半導体レーザ素子150は、共振器面30と直交する方向([0001]方向)に、約300μm〜約1800μm(たとえば、約600μm)の長さL(チップ長L(共振器長))を有しているとともに、共振器面30に沿った方向([11−20]方向)に、約150μm〜約600μm(たとえば、約400μm)の幅W(チップ幅W)を有している。
また、第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150は、図10および図11に示すように、m面({1−100}面)を結晶成長面1aとするn型GaN基板1を備えており、このn型GaN基板1の結晶成長面1a(m面)上に、窒化物半導体からなる半導体素子層10が積層されることによって形成されている。具体的には、窒化物半導体レーザ素子150は、図11に示すように、n型GaN基板1上に、約2.2μmの厚みを有するn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層11が形成されている。n型クラッド層11上には、約0.1μmの厚みを有するn型GaNからなるn型ガイド層12が形成されている。n型ガイド層12上には、活性層13が形成されている。
上記活性層13は、図12に示すように、Inx1Ga1-x1Nからなる2つの井戸層13aと、Inx2Ga1-x2Nからなる3つの障壁層13b(但しx1>x2)とが交互に積層された量子井戸(DQW;Double Quantum Well)構造を有している。具体的には、活性層13は、n型ガイド層12側から、第1障壁層131b、第1井戸層131a、第2障壁層132b、第2井戸層132aおよび第3障壁層133bが順次積層されることによって形成されている。なお、2つの井戸層13a(第1井戸層131a、第2井戸層132a)は、それぞれ、約3nm〜約4nmの厚みに形成されている。また、第1障壁層131bは、約30nmの厚みに形成されており、第2障壁層132bは、約16nmの厚みに形成されており、第3障壁層133bは、約60nmの厚みに形成されている。すなわち、3つの障壁層13bは、それぞれ、異なる厚みに形成されている。また、井戸層13aのIn組成比x1は、0.15以上0.45以下(たとえば、0.2〜0.25)に構成されている。一方、上記障壁層13bは、光閉じ込めを効率よく行うために、InGaNから構成されており、そのIn組成比x2は、たとえば、0.04〜0.05とされている。
また、図11に示すように、上記活性層13上には、約20nmの厚みを有するp型Al0.15Ga0.85Nからなる蒸発防止層14が形成されている。蒸発防止層14上には、凸部と、凸部以外の平坦部とを有するp型GaNからなるp型ガイド層15が形成されている。p型ガイド層15の凸部上には、約0.5μmの厚みを有するp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層16が形成されている。p型クラッド層16上には、約0.1μmの厚みを有するp型GaNからなるp型コンタクト層17が形成されている。そして、p型ガイド層15の凸部とp型クラッド層16とp型コンタクト層17とによって、約1μm〜約3μm(たとえば約1.5μm)の幅を有するストライプ状(細長状)のリッジ部18が構成されている。このリッジ部18は、[0001]方向に延びるように形成されており、リッジ部18の下方に位置するストライプ状(細長状)の活性層13の部分が光導波路19となっている。なお、n型クラッド層11、n型ガイド層12、活性層13、蒸発防止層14、p型ガイド層15、p型クラッド層16およびp型コンタクト層17によって、上記半導体素子層10が構成されている。
ここで、第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150では、図10に示すように、n型GaN基板1の所定領域に上記した凹部2が形成されている。この凹部2は、リッジ部18(光導波路19(図11参照))と平行([0001]方向)に延びるように形成されている。また、上記凹部2は、窒化物半導体レーザ素子150の一方の側面側に配されている。そして、この凹部2から所定の距離以上(たとえば、5μm以上)隔てた、非掘り込み領域4上の領域に、上記リッジ部18が形成されている。
また、第1実施形態では、凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に、窒化物半導体の結晶成長を抑制する上記成長抑制膜5が形成されている。この成長抑制膜5は、上述したように、窒化物膜であるAlN膜からなり、凹部2内を埋め込まない厚みである約100nmの厚みに形成されている。また、上記成長抑制膜5は、凹部2の底面部2aの一部に、[0001]方向(c軸方向)に延びるように形成されている。そして、この成長抑制膜5によって凹部2の内側の領域における窒化物半導体の結晶成長が抑制され、これによって、半導体素子層10を構成する各層の表面に窪み25が形成されている。このため、凹部2(掘り込み領域3)上の半導体素子層10の表面に窪み25が形成された状態となっている。なお、上述したように、この窪み25によって、n型クラッド層11を含む半導体素子層10に、クラックが発生するのが抑制されている。
また、第1実施形態では、非掘り込み領域4上に形成された半導体素子層10において、厚み方向の組成変動が抑制されている。
さらに、第1実施形態では、上記成長抑制膜5が凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されていることにより、半導体素子層10(半導体素子層10を構成する各層)のエッジグロース部26が凹部2内に発生している。
また、図11に示すように、リッジ部18の両脇には、電流狭窄を行うための絶縁層20が形成されている。具体的には、p型ガイド層15上、p型クラッド層16の側面上およびp型コンタクト層17の側面上に、約0.1μm〜約0.3μm(たとえば約0.15μm)の厚みを有するSiO2からなる絶縁層20が形成されている。
絶縁層20およびp型コンタクト層17の上面上には、p型コンタクト層17の一部を覆うように、p側電極21が形成されている。このp側電極21は、p型コンタクト層17を覆っている部分において、p型コンタクト層17と直接接触している。また、p側電極21は、絶縁層20(p型コンタクト層17)側から約15nmの厚みを有するPd層(図示せず)、約15nmの厚みを有するPt層(図示せず)および約200nmの厚みを有するAu層(図示せず)が順次積層された多層構造からなる。
また、n型GaN基板1の裏面上には、n型GaN基板1の裏面側から順に、約5nmの厚みを有するHf層(図示せず)、約150nmの厚みを有するAl層(図示せず)、約36nmの厚みを有するMo層(図示せず)、約18nmの厚みを有するPt層(図示せず)および約200nmの厚みを有するAu層(図示せず)が順次積層された多層構造からなるn側電極22が形成されている。
また、窒化物半導体レーザ素子150における光出射面30a(図9参照)には、たとえば、反射率5%〜80%の出射側コーティング膜(図示せず)が形成されている。一方、光反射面30b(図9参照)には、たとえば、反射率95%の反射側コーティング膜(図示せず)が形成されている。なお、出射側コーティング膜の反射率は、発振出力により所望の値に調整されている。また、出射側コーティング膜は、たとえば、半導体の出射端面から順に、アルミニウムの酸窒化物膜または窒化物膜であるAlOxN1-x(0≦x≦1):膜厚30nm/Al2O3(膜厚:215nm)で構成されており、反射側コーティング膜は、たとえば、SiO2、TiO2などの多層膜から構成されている。上記以外の材料として、たとえば、SiN、ZrO2、Ta2O5、MgF2などの誘電体膜を用いてもよい。
光出射面側の膜構成として、AlOxN1-x(0≦x≦1):膜厚12nm/シリコンの窒化物膜であるSiN(膜厚:100nm)を用いてもよい。上記のように、m面の窒化物半導体基板の劈開端面(第1実施形態ではc面)、もしくは気相エッチング、液相エッチングによりエッチングされたエッチング端面に、アルミニウムの酸窒化物膜または窒化物膜であるAlOxN1-x(0≦x≦1)を形成することで、半導体、出射側コーティング膜の界面での非発光再結合の割合を大幅に低減でき、COD(Catastrophic Optical Damage)レベルを格段に向上させることができる。さらにアルミニウムの酸窒化物膜または窒化物膜であるAlOxN1-x(0≦x≦1)は、窒化物半導体と同じ六方晶の結晶であると、より好ましい。さらには、窒化物半導体と結晶軸が揃った状態で結晶化していると、非発光再結合の割合がさらに低減し、CODレベルがさらに向上するため、より好ましい。また、光出射面側の反射率を大きくするために、上記コーティング膜の上にシリコンの酸化物膜、アルミニウムの酸化物膜、チタニウムの酸化物膜、タンタルの酸化物膜、ジルコニウムの酸化物膜、シリコン窒化物膜、などを積層した積層膜を形成してもよい。
上記のように構成された第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150は、図13に示すように、サブマウント161を介してステム162上にマウントされ、ワイヤ163によってリードピンと電気的に接続される。そして、キャップ164がステム162上に溶接されることにより、キャンパッケージ型の半導体レーザ装置160に組み立てられる。
次に、上記した第1実施形態の作用について説明する。なお、第1実施形態の作用を説明するに際して、先に、凹部内に成長抑制膜が形成されていない場合の窒化物半導体の結晶成長形態について説明する。
図14〜図17は、凹部内に成長抑制膜が形成されていない場合の窒化物半導体の結晶成長形態を説明するための断面図である。図14〜図17を参照して、本願発明者らが本発明に至るに際して、成長抑制膜が形成されていない場合の窒化物半導体の結晶成長形態を調べることによって得た知見について説明する。
まず、図14に示すように、本願発明者らがクラックの抑制を目的として、上記第1実施形態と同様の掘り込み領域3(凹部2)を形成した無極性面および半極性面を結晶成長面とする窒化物半導体基板1000上に、上記第1実施形態のn型クラッド層と同様のAlGaN層1001を成長させたところ、非掘り込み領域4上に形成されたAlGaN層1001のAl組成比が厚み方向に分布を持つことを見出した。すなわち、AlGaN層1001に厚み方向の組成変動が生じることを見出した。また、AlGaN層1001のAl組成比を0.05とする条件で上記窒化物半導体基板1000上にAlGaN層1001を成長させたところ、最大でAl組成比が0.15程度の高Al組成の領域ができることが分かった。なお、このような厚み方向の組成変動は、極性面を結晶成長面とする基板を用いた場合に比べて、無極性面または半極性面を結晶成長面とする基板を用いた場合により強く見られることを確認した。なお、本願発明者らは、無極性面または半極性面を結晶成長面とする基板を用いた場合に、極性面を結晶成長面とする基板を用いた場合に比べて、凹部2内(掘り込み領域3)がAlGaN層1001(半導体層)で埋まり易いという不都合があることも見出した。
そこで、本願発明者らが、上記のようなAl組成の組成変動を引き起こす原因について詳細に調べた。その結果、以下の原因により、組成変動が引き起こされることを明らかにした。以下、厚み方向の組成変動が引き起こされる原因について説明する。
MOCVD装置を用いて、たとえば、約1100℃の基板温度で窒化物半導体基板1000の結晶成長面上にn型Al0.05Ga0.95Nからなる半導体層1001を所定の厚み(たとえば、約2.2μm)で成長させる場合、図15に示すように、成長をはじめて初期の段階では、凹部2内に形成される半導体層1001aの成長速度は、非掘り込み領域4上に形成される半導体層1001bの成長速度に比べて非常に速い。また、Alの拡散定数は、Gaの拡散定数に比べて小さいため、成長速度が速い凹部2内にはGaが優先的に流れ込む。このため、非掘り込み領域4上の半導体層1001bは、AlGaN層となっているが、Alの供給が少ない凹部2内(掘り込み領域3)の半導体層1001aは、GaN層または、非掘り込み領域4上の半導体層1001bよりAl組成比の小さいAlGaN層となる。ここまでの成長では、凹部2内にGaが優先的に供給されるため、非掘り込み領域4上の半導体層1001bのAl組成比は、設計値よりも高い値となってしまう。
結晶成長の進行に伴い凹部2内が半導体層で満たされてくると、凹部2内に形成される半導体層1001の成長速度が遅くなってくる。これにより、Gaに比べてゆっくりと拡散するAlも凹部2内に供給されるようになる。したがって、図16に示すように、非掘り込み領域4上の半導体層にAl組成比の小さい領域1001cが形成される。特に、凹部2内が完全に埋め込まれる直前は、凹部2内に形成される半導体層1001の成長速度が遅くなるため、非掘り込み領域4上の半導体層にAl組成比の小さい領域が形成され易くなる。
そして、凹部2内が完全に埋まってしまうと、凹部2内にGaだけが優先的に流れ込むことがなくなるため、図17に示すように、非掘り込み領域4上に形成される半導体層1001d(1001)のAl組成比は低い値となる。
このように、凹部(掘り込み領域)を形成した窒化物半導体基板上に、窒化物半導体からなる半導体層を結晶成長させる際に、凹部内における半導体層の成長速度が変化する。そして、この成長速度の変化が非掘り込み領域上に形成される半導体層の組成に影響を与え、これによって、非掘り込み領域上の半導体層に厚み方向の組成変動が生じる。
図18および図19は、第1実施形態の作用を説明するための断面図である。次に、図18および図19を参照して、第1実施形態の作用について説明する。
第1実施形態では、図18に示すように、n型GaN基板1の結晶成長面1a上にn型クラッド層11を成長させる際に、n型GaN基板1の凹部2内に形成された成長抑制膜5によって、凹部2内におけるn型クラッド層11の結晶成長が抑制される。このため、凹部2内に形成されるn型クラッド層11の成長速度が、非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11の成長速度より速くなるのが抑制される。これにより、凹部2内にGaが優先的に流れ込むのが抑制される。また、図19に示すように、n型クラッド層11の結晶成長が進行した場合でも、凹部2内におけるn型クラッド層11の結晶成長が抑制されるため、凹部2内におけるn型クラッド層11の成長速度が一定に保たれる。すなわち、凹部2内におけるn型クラッド層11の成長速度の変化が抑制される。このため、非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11に厚み方向の組成変動が生じるのが抑制される。
また、凹部2内に成長抑制膜5が形成されることによって、凹部2内が埋まり易い、m面を結晶成長面1aとするn型GaN基板1を用いた場合でも、凹部2内がn型クラッド層11で埋まってしまうのが抑制される。このため、n型クラッド層11の表面に、窪み25が形成された状態にすることができる。そして、n型クラッド層11の表面に形成された窪み25によって、n型クラッド層11にクラックが発生するのが抑制される。
さらに、上記成長抑制膜5が凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されているため、n型クラッド層11のエッジグロース部26を凹部2内に発生させることが可能となる。このため、n型クラッド層11の表面(非掘り込み領域4上のn型クラッド層11の表面)を平坦に保つことが可能となる。また、層厚のバラツキも抑制される。
第1実施形態では、上記のように、掘り込み領域3(凹部2内)に成長抑制膜5を形成することによって、結晶成長面1a上に形成されるn型クラッド層11に、厚み方向の組成変動が生じるのを抑制することができる。このため、n型クラッド層11の組成を均一にすることができるので、窒化物半導体レーザ素子の光閉じ込めが設計からはずれ、期待した光閉じ込めが行われなくなるという不都合が生じるのを抑制することができる。これにより、窒化物半導体レーザ素子の素子特性を向上させることができる。また、素子特性のバラツキが生じるのを抑制することができるので、規格の範囲内の特性を有する素子の数が減少するのを抑制することができる。これにより、高い歩留まりで窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
また、第1実施形態では、成長抑制膜5を凹部2内における結晶成長面1aより低い位置に形成することによって、n型クラッド層11のエッジグロース部26を、凹部2内で生じさせることができる。すなわち、非掘り込み領域4上のn型クラッド層11にエッジグロース部26が形成されるのを抑制することができる。これにより、非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11の層厚の変動を抑制することができる。したがって、上記のように構成することにより、層厚の変動に起因する素子特性の低下を抑制することができる。また、素子毎に層厚のバラツキが生じるのを抑制することができるので、歩留まりをより向上させることができる。
また、第1実施形態では、凹部2内に成長抑制膜5を形成することによって、凹部2内がn型クラッド層11で埋め込まれてしまうのを抑制することができる。このため、掘り込み領域3上(凹部2上)のn型クラッド層11表面(半導体素子層10表面)に窪み25が形成された状態にすることができるので、n型GaN基板1とn型クラッド層11との格子不整合などに起因してn型クラッド層11に歪みが生じた場合でも、n型クラッド層11(非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11)の歪みを、掘り込み領域3上(凹部2上)のn型クラッド層11表面に形成された上記窪み部分で緩和することができる。これにより、n型クラッド層11にクラックが発生するのを容易に抑制することができる。その結果、素子特性および歩留まりをさらに向上させることができる。なお、ウェハ(基板)の一部に異常箇所があって、それが原因となり層厚変動が生じたとしても、凹部2上の半導体素子層表面の窪み25によって[11−20]方向への成長が分断されるため、異常箇所に起因する層厚変動の拡散が抑制される。また、凹部2内がn型クラッド層11で埋め込まれてしまうのを抑制することによって、表面モフォロジーの悪化を抑制することもできる。このため、これによっても、素子特性を向上させることができる。
また、第1実施形態では、成長抑制膜5を、凹部2の内部を埋め込まない厚みに形成することによって、容易に、掘り込み領域3上(凹部2上)のn型クラッド層11表面に窪み25が形成された状態にすることができるので、n型クラッド層11にクラックが発生するのをより容易に抑制することができる。
また、第1実施形態では、成長抑制膜5を、アルミニウムの窒化物膜であるAlN膜から構成することによって、クラックの抑制効果、表面モフォロジーの改善効果およびn型クラッド層11のAl組成変動の抑制効果の全てにおいて高い効果を得ることができる。また、AlNは、窒化物半導体と同様の結晶構造をとることができるため、成長抑制膜5と成長抑制膜5がないところとで、結晶構造を連続的にすることができる。このため、AlNは成長抑制膜の材料として好適であるといえる。
また、第1実施形態では、結晶成長面1aを無極性面であるm面({1−100}面)とするn型GaN基板1を用いることによって、活性層13に及ぼす自発分極やピエゾ分極の影響を低減することができるので、窒化物半導体レーザ素子の発光効率を向上させることができる。なお、m面は、安定な無極性面であるため、結晶成長を極めて安定に行うことができ、c面を結晶成長面とする場合に比べて、結晶性を向上させることができる。このため、素子特性の優れた高性能な窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
また、第1実施形態では、凹部2の開口幅g1を、凹部2の深さfより大きく構成することによって、凹部2の底面部2aに形成される成長抑制膜5の厚みが小さくなり過ぎるのを抑制することができる。すなわち、凹部2の開口幅g1を凹部2の深さf以下の大きさにした場合、凹部2の底面部2aに形成される成長抑制膜5の厚みが小さくなり過ぎるという不都合が生じる場合がある一方、凹部2の開口幅g1を凹部2の深さfより大きくすることによって、上記不都合が生じるのを抑制することができる。
図20〜図35は、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。次に、図1、図7、図10〜図12および図20〜図35を参照して、本発明の第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150の製造方法について説明する。
まず、m面({1−100}面)を結晶成長面1aとするn型GaN基板1を準備する。このn型GaN基板1は、たとえば、c面((0001)面)を主面とするGaN単結晶から切り出して作製することができる。切り出された基板のm面は、たとえば、化学的機械的研磨処理によって所定の表面粗さに調整される。
次に、図20に示すように、n型GaN基板1の上面(結晶成長面1a)全面に、スパッタ法などを用いて、約1μmの厚みを有するSiO2層40を形成する。次に、図21に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、SiO2層40上に、レジストパターンとしての開口部41aを有するレジスト層41を形成する。そして、図22に示すように、RIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチング技術を用いて、レジスト層41をマスクとしてSiO2層40をエッチングすることにより、SiO2層40の所定領域を選択的に除去する。その後、レジスト剥離液や有機溶剤(たとえば、アセトン、エタノールなど)を用いてレジスト層41を除去する。なお、レジスト層41を除去せずに、そのまま、次の工程を行ってもよい。
続いて、図23に示すように、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)法、または、RIE法などを用いて、SiO2層40をマスクとして、n型GaN基板1をエッチングすることにより、n型GaN基板1の所定領域を選択的に除去する。このとき、n型GaN基板1のエッチング深さfが、約5μmとなるように、エッチング条件を調節する。これにより、n型GaN基板1に上記した凹部2が形成される。なお、凹部2の側面部2bは、エッチング条件等を調節することにより、その傾斜角γが90度より大きくなるように形成する。具体的には、側面部2bの傾斜角γが約100度となるように、凹部2を形成する。
その後、図24に示すように、HF(フッ化水素)などのエッチャントを用いて、SiO2層40(図23参照)を除去する。
次に、図25に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、レジストパターンとしての開口部42aを有するレジスト層42を形成する。このとき、レジスト層42の開口部42aは、凹部2の底面部2aの一部を露出させるように形成する。なお、開口部42aの開口幅j1は、凹部2の底面部2aの幅g2より小さい、たとえば、約4μmとする。
次に、図26に示すように、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ装置を用いたスパッタ法により、成長抑制膜としてのAlN膜5aを約100nmの厚みで全面に形成する。そして、図27に示すように、レジスト剥離液や有機溶剤(たとえば、アセトン、エタノールなど)を用いてレジスト層42(図26参照)を除去する。これにより、リフトオフによって、凹部2の底面部2aの一部にAlN膜からなる上記成長抑制膜5が形成される。
次に、図28に示すように、上記のように加工されたn型GaN基板1(加工基板)の結晶成長面1a上に、MOCVD法などのエピタキシャル成長法を用いて、半導体素子層10を形成する。具体的には、n型GaN基板1の結晶成長面1a上に、約2.2μmの厚みを有するn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層11、約0.1μmの厚みを有するn型GaNからなるn型ガイド層12、および活性層13を順次成長させる。なお、活性層13を成長させる際には、図12に示したように、Inx1Ga1-x1Nからなる2つの井戸層13aと、Inx2Ga1-x2Nからなる3つの障壁層13b(但しx1>x2)とを交互に成長させる。具体的には、n型ガイド層12上に、下層から上層に向かって、約30nmの厚みを有する第1障壁層131b、約3nm〜約4nmの厚みを有する第1井戸層131a、約16nmの厚みを有する第2障壁層132b、約3nm〜約4nmの厚みを有する第2井戸層132aおよび約60nmの厚みを有する第3障壁層133bを順次成長させる。これにより、n型ガイド層12上に、2つの井戸層13aと3つの障壁層13bとからなるDQW構造を有する活性層13が形成される。このとき、井戸層13aは、そのIn組成比x1が0.15以上0.45以下(たとえば、0.2〜0.25)となるように構成する。一方、障壁層13bは、そのIn組成比x2が、たとえば、0.04〜0.05となるように構成する。
次に、図28に示すように、活性層13上に、約20nmの厚みを有するp型Al0.15Ga0.85Nからなる蒸発防止層14、約0.05μmの厚みを有するp型GaNからなるp型ガイド層15、約0.5μmの厚みを有するp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層16および約0.1μmの厚みを有するp型GaNからなるp型コンタクト層17を順次成長させる。
なお、これらの窒化物半導体の成長原料としては、たとえば、Gaの原料としてトリメチルガリウム((CH3)3Ga:TMGa)を、Alの原料としてトリメチルアルミニウム((CH3)3Al:TMAl)を、Inの原料としてトリメチルインジウム((CH3)3In:TMIn)を、Nの原料としてNH3を用いることができる。また、キャリアガスとしては、たとえば、H2を用いることができる。ドーパントについては、n型ドーパント(n型不純物)としては、たとえば、モノシラン(SiH4)を用いることができ、p型ドーパント(p型不純物)としては、たとえば、シクロペンタジエニルマグネシウム(CP2Mg)を用いることができる。
ここで、第1実施形態では、図29に示すように、凹部2内に成長抑制膜5を形成することによって、凹部2内が半導体素子層10で埋め込まれるのが抑制される。このため、凹部2上の半導体素子層10の表面(半導体素子層10を構成する各層の表面)に窪み25が形成された状態となる。そして、この窪み25によって、n型GaN基板1との格子不整合などに起因して生じるn型クラッド層11(図28参照)の歪みが緩和される。また、凹部2内に成長抑制膜5を形成することによって、非掘り込み領域4(図1参照)上に形成された半導体素子層10において、厚み方向の組成変動が抑制される。特に、組成変動が生じやすいn型クラッド層11(図28参照)においても、厚み方向の組成変動が抑制される。さらに、上記成長抑制膜5を凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成することによって、半導体素子層10(半導体素子層10を構成する各層)のエッジグロース部26が凹部2内に形成される。
続いて、図30に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、p型コンタクト層17上に、約1μm〜約3μm(たとえば約1.5μm)の幅を有するとともに、[0001]方向に平行に延びるストライプ状(細長状)のレジスト43を形成する。そして、図31に示すように、SiCl4、Cl2などの塩素系ガスや、ArガスなどによるRIE法またはICPドライエッチング法などを用いて、レジスト43をマスクとしてp型ガイド層15の途中の深さまでエッチングを行う。これにより、p型ガイド層15の凸部とp型クラッド層16とp型コンタクト層17とによって構成されるとともに、[0001]方向に互いに平行に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部18(図7および図10参照)が形成される。
次に、図32に示すように、リッジ部18上にレジスト43を残した状態で、スパッタ法などにより、約0.1μm〜約0.3μm(たとえば約0.15μm)の厚みを有するSiO2からなる絶縁層20を形成し、リッジ部18を埋め込む。そして、リフトオフによりレジスト43を除去することによって、リッジ部18の上部のp型コンタクト層17を露出させる。これにより、リッジ部18の両脇に、図33に示すような絶縁層20が形成される。
次に、図34に示すように、真空蒸着法などを用いて、基板側(絶縁層20側)から、約15μmの厚みを有するPd層(図示せず)および約200nmの厚みを有するAu層(図示せず)を順次形成することにより、絶縁層20(p型コンタクト層17)上に、多層構造からなるp側電極21を形成する。
次に、基板を分割し易くするために、n型GaN基板1の裏面を研削または研磨することにより、n型GaN基板1を100μm程度の厚みまで薄くする。そして、図1、図10および図11に示したように、n型GaN基板1の裏面上に、真空蒸着法などを用いて、n型GaN基板1の裏面側から約5nmの厚みを有するHf層(図示せず)、約150nmの厚みを有するAl層(図示せず)、約36nmの厚みを有するMo層(図示せず)、約18nmの厚みを有するPt層(図示せず)および約200nmの厚みを有するAu層(図示せず)を順次形成することにより、多層構造からなるn側電極22を形成する。
このようにして上記した第1実施形態による窒化物半導体ウェハが形成される。
その後、図35に示すように、スクライブ/ブレーク法やレーザスクライブ、またはドライエッチングなどの手法を用いて、基板をバー状に分割する。これにより、その端面を共振器面30とするバー状の素子が得られる。次に、蒸着法やスパッタ法などの手法を用いて、バー状の素子の端面(共振器面30)にコーティングを施す。具体的には、光出射面となる片側の端面に、たとえば、アルミニウムの酸窒化物膜などからなる出射側コーティング膜(図示せず)を形成する。また、光反射面となるその反対側の端面に、たとえば、SiO2、TiO2などの多層膜からなる反射側コーティング膜(図示せず)を形成する。
最後に、c軸[0001]方向に沿った分割予定線P2に沿ってバー状の素子を分割することにより、個々の窒化物半導体レーザ素子に個片化する。このようにして、本発明の一実施形態による窒化物半導体レーザ素子150が製造される。
第1実施形態による窒化物半導体レーザ素子150の製造方法では、上記のように、エッチングにより形成した凹部2内に成長抑制膜5を形成することによって、結晶成長面1a上に形成されるn型クラッド層11に、厚み方向の組成変動が生じるのを抑制することができる。このため、窒化物半導体レーザ素子の光閉じ込めが設計からはずれ、期待した光閉じ込めが行われなくなるという不都合が生じるのを抑制することができる。これにより、窒化物半導体レーザ素子の素子特性を向上させることができる。また、素子特性のバラツキが生じるのを抑制することができるので、規格の範囲内の特性を有する素子の数が減少するのを抑制することができる。これにより、高い歩留まりで窒化物半導体レーザ素子を製造することができる。
また、第1実施形態では、凹部2内における結晶成長面1aより低い位置にAlN膜からなる成長抑制膜5を配設することによって、n型クラッド層11のエッジグロース部26を、凹部2内で生じさせることができる。すなわち、非掘り込み領域4上のn型クラッド層11にエッジグロース部26が形成されるのを抑制することができる。これにより、非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11の層厚の変動を抑制することができる。したがって、上記のように構成することにより、層厚の変動に起因する素子特性の低下を抑制することができる。また、素子毎に層厚のバラツキが生じるのを抑制することができるので、歩留まりをより向上させることができる。
さらに、第1実施形態では、凹部2内に成長抑制膜5を配設することによって、凹部2内がn型クラッド層11(半導体素子層10)で埋め込まれてしまうのを抑制することができる。このため、凹部2上のn型クラッド層11表面に窪み25が形成された状態にすることができるので、n型GaN基板1とn型クラッド層11との格子不整合などに起因してn型クラッド層11に歪みが生じた場合でも、n型クラッド層11(非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11)の歪みを、凹部2上(掘り込み領域3上)のn型クラッド層11に形成された上記窪み部分で緩和することができる。これにより、n型クラッド層11にクラックが発生するのを容易に抑制することができる。その結果、素子特性および歩留まりをさらに向上させることができる。なお、凹部2内がn型クラッド層11で埋め込まれてしまうのを抑制することによって、表面モフォロジーの悪化を抑制することもできる。このため、これによっても、素子特性を向上させることができる。
また、第1実施形態では、成長抑制膜5の厚みtを、凹部2の深さfの半分以下とすることによって、凹部2が成長抑制膜5で完全に埋まってしまうのを容易に抑制することができる。
また、第1実施形態では、成長抑制膜5を、凹部2における底面部2aの一部に形成することによって、容易に、凹部2内に所定形状を有する成長抑制膜5を形成することができる。このため、素子特性および歩留まりを向上させることが可能な窒化物半導体レーザ素子を容易に得ることができる。なお、凹部2における底面部2aの一部に成長抑制膜5を形成することによって、非掘り込み領域4上のn型クラッド層11(半導体素子層10)にエッジグロース部26が形成されるのを容易に抑制することができる。このため、容易に、非掘り込み領域4上に形成されるn型クラッド層11(半導体素子層10)の層厚が変動するのを抑制することができる。
次に、上記第1実施形態の効果を確認するために行った実験について説明する。
この実験では、まず、成長抑制膜による組成変動の抑制効果を確認するために、X線による薄膜評価およびSEM(Scanning Electron Microscope)による断面観察を行った。なお、上記第1実施形態で示したn型GaN基板と同様の基板を用いて第1実施形態と同様の半導体素子層を形成した試料を実施例とし、凹部内に成長抑制膜が形成されていない基板を用いて第1実施形態と同様の半導体素子層を形成した試料を比較例1とした。比較例1による試料は、凹部内に成長抑制膜が形成されていない点を除き、実施例による試料と同じ構成とした。
X線による薄膜評価では、実施例による試料および比較例1による試料をX線回折装置にセットし、2θ/ωスキャンを行うことによってプロファイルを得た。得られたプロファイルを図36および図37に示す。図36は、比較例1による試料のX線回折プロファイルを示す図であり、図37は、実施例による試料のX線回折プロファイルを示す図である。図36および図37において、横軸は2θ/ω[°]を示しており、縦軸は強度(Intensity)[cps]を示している。
また、図36および図37に示したX線回折プロファイルにおいて、Aのピーク(ピークA)がGaN基板からの信号であり、Bのピーク(ピークB)がn型クラッド層からの信号である。
比較例1による試料では、図36に示すように、X線回折プロファイルのピークBが3つにピーク分離している。ピークBにおけるピークの横軸方向の位置はAlの組成を反映しており、ピークBが3つにピーク分離していることから、比較例1では、n型クラッド層において、Alの組成比が大きく変動していることが読み取れる。これに対し、実施例による試料では、図37に示すように、X線回折プロファイルのピークBが単一のピークを示している。これより、実施例では、n型クラッド層において、Alの組成比が変動していないことが読み取れる。また、実施例による試料および比較例1による試料を用いて、断面SEM観察を行ったところ、比較例1の試料では、n型クラッド層において、暗い領域(色が濃い領域)と明るい領域(色が薄い領域)とが層状に観察された。ここで、Al組成比の大きな領域は暗く見え、Al組成比の小さな領域は明るく見える。このため、比較例1では、Alの組成変動を示す像が、コントラストの差(明暗の差)として観察された。これより、凹部内に成長抑制膜が形成されていない比較例1では、n型クラッド層に厚み方向の組成変動が生じることが確認された。一方、実施例による試料では、n型クラッド層にコントラストの差が見られなかった。このように、X線による薄膜評価および断面SEM観察の結果、実施例では、n型クラッド層における厚み方向の組成変動が大幅に抑制されていることが判明した。これより、凹部内に成長抑制膜を形成することによって、n型クラッド層(半導体素子層)における厚み方向の組成変動を抑制することが可能であることが確認された。なお、n型クラッド層の組成変動を抑制することにより、窒化物半導体レーザ素子を形成した際にFFP(遠視野像)のバラツキが大幅に改善され、歩留まり改善の効果が認められた。
次に、成長抑制膜による表面モフォロジーの改善効果等を確認するために、断面SEM観察を行った。なお、断面SEM観察を行うに際して、凹部内(底面部および側面部)の全面に成長抑制膜を形成した基板を用いて第1実施形態と同様の半導体素子層を形成した比較例2による試料を追加で作製した。比較例2による試料は、結晶成長面と同じ高さまで成長抑制膜を形成した点を除き、実施例による試料と同じ構成とした。そして、実施例による試料および比較例1による試料に加えて、比較例2による試料も断面SEM観察に供した。
図38は、比較例1による試料の断面模式図であり、図39は、比較例2による試料の断面模式図である。図40は、実施例による試料の断面模式図であり、図41は、実施例による試料の断面SEM写真である。
断面SEM観察の結果、凹部2内に成長抑制膜が形成されていない比較例1による試料では、図38に示すように、凹部2内(掘り込み領域)が半導体素子層10で完全に埋まりきっており、凹部2上(掘り込み領域上)の半導体素子層10の表面に窪みが見られない。また、[11−20]方向と平行に波状の凹凸が強く現れ、表面モフォロジーが悪化している。この表面モフォロジーの悪化は、半導体素子層10の厚みが変動しているものである。これより、比較例1による試料では、ウェハ面内において層厚分布があることが観察された。また、層厚の面内分布は、凹部2(掘り込み領域)が完全に埋まりきって、凹部2上(掘り込み領域上)の半導体素子層の表面に窪みが無くなった後に顕著に現れる傾向があることが認められた。
また、比較例2による試料では、図39に示すように、凹部2の側面部および底面部に成長抑制膜1005を形成することで、凹部2上(掘り込み領域上)の半導体素子層10の表面に窪みが形成された状態となっている。また、比較例1で見られた[11−20]方向と平行に現れる波状の凹凸が大幅に抑制されており、層厚の面内分布も改善されていることが観察された。しかしながら、比較例2による試料では、非掘り込み領域上における成長抑制膜1005の周辺にエッジグロース部26が形成されていることが観察された。そして、このエッジグロース部26によって、非掘り込み領域上において半導体素子層10の層厚の変動が生じていることが認められた。
これに対し、実施例による試料では、図40および図41に示すように、エッジグロース部26が凹部2内に発生していることが観察された。これにより、非掘り込み領域上において、半導体素子層10の層厚変動が抑制されていることが認められた。また、実施例による試料では、上記比較例2と同様、凹部2上(掘り込み領域上)の半導体素子層10の表面に窪みが形成された状態となっている。また、比較例1で見られた[11−20]方向と平行に現れる波状の凹凸が大幅に抑制されており、層厚の面内分布も改善されていることが観察された。なお、比較例1による試料では、成膜後に60〜120本/cm2程度のクラックの発生が観察されたが、実施例による試料では、成膜後のクラックの発生は観察されなかった(クラックは0本)。
以上より、凹部内に成長抑制膜を形成することによって、クラックの発生が抑制されることが確認された。また、凹部内に成長抑制膜を形成することによって、表面モフォロジーの改善効果も得られることが確認された。さらに、凹部内における結晶成長面より低い位置に成長抑制膜を形成することによって、エッジグロース部が凹部内で生じ、非掘り込み領域上における半導体素子層の層厚変動を抑制することが可能であることが確認された。したがって、上記した第1実施形態の構成により、優れた素子特性を有する窒化物半導体レーザ素子を高い歩留まりで製造することが可能であることが確認された。
(第2実施形態)
図42は、本発明の第2実施形態による窒化物半導体ウェハを模式的に示した断面図である。図43および図44は、本発明の第2実施形態による窒化物半導体ウェハの構造を説明するための断面図である。次に、図42〜図44を参照して、窒化物半導体レーザ素子を含む、本発明の第2実施形態による窒化物半導体ウェハ200について説明する。なお、成長抑制膜205以外の構成については、上記した第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
この第2実施形態による窒化物半導体ウェハ200では、図42および図43に示すように、酸化物膜であるSiO2膜(酸化シリコン膜)からなる成長抑制膜205が凹部2内(掘り込み領域3)に形成されている。この成長抑制膜205は、図43に示すように、凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されている。具体的には、上記成長抑制膜205は、凹部2の側面部2bの一部と底面部2aとに、断面略コの字状(略凹状)に形成されている。
また、上記成長抑制膜205は、凹部2内を埋め込まない厚みに形成されている。また、第2実施形態では、上記成長抑制膜205は、側面部2bに形成された部分の厚みt2が底面部2aに形成された部分の厚みt1よりも小さくなるように形成されている。具体的には、上記成長抑制膜205は、凹部2の底面部2aに形成された部分の厚みt1が約100nmとなるように形成されているとともに、凹部2の側面部2bに形成された部分の厚みt2が約80nmとなるように形成されている。このような構成により、成長抑制膜205の剥がれなどの不良を効果的に抑制することが可能となる。
なお、成長抑制膜205の厚みt1は、凹部2の深さfの半分以下であるのが好ましい。また、成長抑制膜205の厚みt2は、凹部2の開口幅g1の半分以下であるのが好ましい。このように構成されていれば、凹部2内が成長抑制膜205で埋め込まれてしまうのを抑制することが可能となり、クラックの抑制効果を容易に得ることが可能となる。また、n型クラッド層に組成変動が生じるのを容易に抑制することも可能となる。
また、上記成長抑制膜205は、約7μmの幅w2([11−20]方向の幅)を有しており、上記第1実施形態と同様、[0001]方向(c軸方向)に延びるように形成されている。
また、第2実施形態では、結晶成長面1a(非掘り込み領域4の表面)から成長抑制膜205までの距離t3が、約1.5μmとなるように設定されている。なお、この距離t3が小さくなり過ぎると、成長抑制膜205の形成が困難になるため、上記距離t3は、0.5μm以上に設定されているのが好ましい。
さらに、第2実施形態では、上記成長抑制膜205が凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されていることにより、図44に示すように、半導体素子層10(半導体素子層10を構成する各層)のエッジグロース部26が凹部2内に発生している。
図45は、本発明の第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子を模式的に示した断面図である。次に、図42および図45を参照して、本発明の第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子250の構造について説明する。
第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子250は、上記した第2実施形態による窒化物半導体ウェハ200(図42参照)を分割することによって得られる。このため、第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子250は、凹部2内に、SiO2膜(酸化シリコン膜)からなる上記成長抑制膜205が形成されている。
なお、第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子250のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。また、第2実施形態の作用および効果は、上記第1実施形態と同様である。
図46〜図49は、本発明の第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。次に、図46〜図49を参照して、本発明の第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子250の製造方法について説明する。なお、第2実施形態における成長抑制膜205の形成工程以外の工程は、上記第1実施形態と同様であるため、以下、成長抑制膜205の形成工程についてのみ説明する。
まず、図46に示すように、凹部2(掘り込み領域3)が形成された第1実施形態と同様のn型GaN基板1を準備する。このn型GaN基板1の凹部2は、上述したように、側面部2bの傾斜角γが90度より大きい角度(たとえば、約100度)に設定されている。このため、凹部2は、上方に向かって開口幅が徐々に大きくなるように構成されている。
次に、図47に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、n型GaN基板1の結晶成長面1a上に、レジストパターンとしての開口部242aを有するレジスト層242を形成する。このとき、レジスト層242の開口部242aは、凹部2の側面部2bの一部および凹部2の底面部2aを露出させるように形成する。なお、レジスト層242は、開口部242aの開口幅j2が約7μmとなるように形成する。
続いて、図48に示すように、ECRスパッタ装置を用いたスパッタ法により、成長抑制膜としてのSiO2膜205aを約100nmの厚みで全面に形成する。このとき、スパッタ条件などを調節することにより、凹部2の側面部2bに形成されるSiO2膜205aの厚みが約80nmとなるようにSiO2膜205aを形成する。
そして、図48に示すように、レジスト剥離液や有機溶剤(たとえば、アセトン、エタノールなど)を用いてレジスト層242(図47参照)を除去する。これにより、リフトオフによって、凹部2の側面部2bの一部および底面部2aにSiO2膜からなる上記成長抑制膜205が形成される。
第2実施形態による窒化物半導体レーザ素子250の製造方法では、上記のように、凹部2の側面部2bを傾斜面にするとともに、凹部2を、上方に向かって開口幅が徐々に大きくなるように形成することによって、凹部2の側面部2bに容易にレジスト層242を形成することできる。このため、凹部2の側面部2bに成長抑制膜205を容易に形成することができる。また、上記のように構成することによって、凹部2の側面部2bに成長抑制膜205を形成する際に、側面部2bに効率よく成長抑制膜205を形成することができる。これにより、側面部2bの成長抑制膜205の厚みが極端に薄くなり膜状に形成されなくなったり、側面部2bに成長抑制膜205が全く形成されなくなったりするという不都合が生じるのを抑制することができる。
第2実施形態の製造方法のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図50は、本発明の第3実施形態による窒化物半導体ウェハおよび窒化物半導体レーザ素子を説明するための断面図である。次に、図50を参照して、本発明の第3実施形態による窒化物半導体ウェハおよび窒化物半導体レーザ素子について説明する。
この第3実施形態による窒化物半導体ウェハおよび窒化物半導体レーザ素子では、図50に示すように、凹部2の底面部2aの一部および凹部2の側面部2bの一部に、略L字状に成長抑制膜305が形成されている。この成長抑制膜305は、酸化物膜であるSiO2膜または窒化物膜であるAlN膜から構成されており、凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されている。
また、上記成長抑制膜305は、上記第1および第2実施形態と同様、凹部2内を埋め込まない厚みに形成されている。なお、成長抑制膜305のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
また、第3実施形態の成長抑制膜305以外の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
また、成長抑制膜305を上記のように形成した場合でも、エッジグロース部を凹部2内で発生させることが可能である。このため、非掘り込み領域上に形成される半導体素子層(n型クラッド層)の層厚が変動するのを抑制することができる。
なお、第3実施形態の作用および効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
また、第3実施形態の成長抑制膜305は、リフトオフにより成長抑制膜を形成する際に、レジスト層の開口パターンを変えることにより形成することができる。
(第4実施形態)
図51は、本発明の第4実施形態による窒化物半導体ウェハおよび窒化物半導体レーザ素子を説明するための断面図である。次に、図51を参照して、本発明の第4実施形態による窒化物半導体ウェハおよび窒化物半導体レーザ素子について説明する。
この第4実施形態による窒化物半導体ウェハおよび窒化物半導体レーザ素子では、図51に示すように、凹部2の側面部2bの一部に成長抑制膜405が形成されている。この成長抑制膜405は、酸化物膜であるSiO2膜または窒化物膜であるAlN膜から構成されており、凹部2の内側における結晶成長面1aより低い領域(位置)に形成されている。
また、上記成長抑制膜405は、上記第1〜第3実施形態と同様、凹部2内を埋め込まない厚みに形成されている。なお、成長抑制膜405のその他の構成は、上記第2および第3実施形態と同様である。
また、第4実施形態の成長抑制膜405以外の構成は、上記第1〜第3実施形態と同様である。
また、成長抑制膜405を上記のように形成した場合でも、エッジグロース部を凹部2内で発生させることが可能である。このため、非掘り込み領域上に形成される半導体素子層(n型クラッド層)の層厚が変動するのを抑制することができる。
なお、第4実施形態の作用および効果は、上記第1〜第3実施形態と同様である。
また、第4実施形態の成長抑制膜405は、リフトオフにより成長抑制膜を形成する際に、レジスト層の開口パターンを変えることによって形成することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、窒化物半導体発光素子の一例である窒化物半導体レーザ素子に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、発光ダイオード素子に本発明を適用してもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、m面({1−100}面)を結晶成長面とする窒化物半導体基板を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、m面以外の無極性面または半極性面を結晶成長面とする基板を用いてもよい。結晶成長面の具体的な面方位としては、たとえば、a面{1−101}、r面{1−102}、m面{1−100}、{1−101}面および{11−22}面などを挙げることができる。また、基板の結晶成長面は、これらの結晶面方位から15度以内のオフ角度を有する面であってもよい。このような結晶成長面を有する基板であれば、本発明の効果は非常に高い。なお、極性面であるc面({0001}面)を結晶成長面とする基板を用いた場合でも、本発明の効果は得られる。
また、上記第1〜第4実施形態では、窒化物半導体基板としてのGaN基板を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、GaN基板以外の窒化物半導体基板を用いてもよい。なお、窒化物半導体基板としては、GaN、AlN、InN、BN、TlNなどの窒化物半導体、または、これらの混晶からなる基板を用いることができる。また、窒化物半導体の基板上または窒化物半導体以外の基板上に、掘り込み領域および非掘り込み領域を有する窒化物半導体の層が形成された基板を用いることもできる。たとえば、GaN基板、サファイア基板またはSiC基板などの下地基板上に窒化物半導体の下地層を形成し、この下地層に凹部を形成することによって得られた基板を用いることもできる。なお、本発明の「窒化物半導体基板」とは、このような基板をも含む概念である。
また、上記第1〜第4実施形態では、AlNまたはSiO2からなる成長抑制膜を凹部内に形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、窒化物半導体の結晶成長を抑制することが可能な材料であれば、AlNおよびSiO2以外の材料からなる成長抑制膜を凹部内に形成してもよい。なお、成長抑制膜としては、アルミニウム(Al)の窒化物膜、アルミニウム(Al)の酸窒化物膜、アルミニウム(Al)とガリウム(Ga)の窒化物膜が好ましい。このような材料は、クラックの抑制効果、表面モフォロジーの改善効果、および窒化物半導体層の組成変動の抑制効果の全てにおいて高い効果を得ることができる。また、このような材料は、窒化物半導体と同様の結晶構造をとることができるため、成長抑制膜と成長抑制膜のないところとで、結晶構造が連続的になる。このため、成長抑制膜の材料として好適である。成長抑制膜の材料として次に好ましい材料は、シリコン(Si)の酸化物、窒化物および酸窒化物、アルミニウム(Al)の酸化物、チタン(Ti)の酸化物、ジルコニア(Zr)の酸化物、イットリア(Y)の酸化物、ニオビウム(Nb)の酸化物、ハフニウム(Hf)の酸化物、タンタル(Ta)の酸化物、および上記材料の酸窒化物、もしくは窒化物である。その次に好ましい材料は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)などの高融点金属である。なお、窒化物半導体の成長抑制効果としては、酸化物膜がもっとも強く、酸窒化物膜、窒化物膜の順に弱くなる。このため、酸化物膜からなる成長抑制膜を凹部内に形成するのがより好ましい。
また、上記第1〜第4実施形態において、凹部の開口幅および凹部の深さは、適宜変更することができる。なお、凹部の開口幅は、1μm以上50μm以下であるのが好ましい。凹部の開口幅を1μmより小さくした場合には、クラックの抑制効果などが得られにくくなる。一方、凹部の開口幅を50μmより大きくした場合には、ウェハ面内に占める凹部(掘り込み領域)の比率が大きくなり過ぎてしまう。凹部(掘り込み領域)上にリッジ部を形成することは好ましくないため、この場合には、1枚のウェハからの素子の取れ数が減少する。また、凹部の深さは、0.1μm以上15μm以下であるのが好ましい。凹部の深さを0.1μmより小さくした場合には、エッジグロース部の厚みより凹部の深さが小さくなってしまう。このため、エッジグロース部が凹部内から突出してしまい、表面モフォロジーの改善効果やクラックの抑制効果などが得られにくくなる。一方、凹部の深さを15μmより大きくした場合には、凹部を形成するための時間が長く掛かってしまう。
また、上記第1〜第4実施形態において、凹部の断面形状は、適宜変更することができる。たとえば、図52に示すように、断面形状が矩形状になるように、凹部を形成してもよい。この場合、凹部502のように、開口幅gが深さfより大きくなるように形成してもよいし、凹部512のように、開口幅gと深さfとが略等しくなるように形成してもよい。また、凹部522や凹部532のように、開口幅gより深さfの方が大きくなるように形成してもよい。また、図53に示すように、側面部が傾斜面となるように凹部を形成してもよい。この場合、凹部542のように、断面形状がV字状(逆三角形状)となるように形成してもよい。また、凹部552および凹部562のように、断面形状が台形形状となるように形成してもよい。この場合、凹部552のように、開口幅gと深さfとが略等しくなるように形成してもよいし、凹部562のように、開口幅gが深さfより大きくなるように形成してもよい。すなわち、基板に形成する凹部(掘り込み領域)は、凹凸の段差を生じさせるものであればよい。なお、凹部の開口幅と凹部の深さとの関係については、開口幅が深さより大きく形成されているのが好ましい。開口幅が深さ以下の大きさに形成されていた場合、成長抑制膜を形成する際に、凹部の底面部に成膜される膜厚が薄くなることがある。その一方、開口幅を深さより大きく形成することにより、安定した膜厚で成長抑制膜を成膜することができる。
また、上記第1〜第4実施形態では、凹部(掘り込み領域)をストライプ状に形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、凹部(掘り込み領域)をストライプ状以外の形状に形成してもよい。たとえば、図54〜図56に示すような格子状に凹部(掘り込み領域)を形成してもよい。むろん、図54〜図56に示した形状以外の形状に凹部(掘り込み領域)を形成することもできる。なお、図55において、互いに交差する凹部(掘り込み領域)の交差角度αを、たとえば、約60度とすることができる。また、図56において、互いに交差する凹部(掘り込み領域)の交差角度αおよびβを、それぞれ、約60度とすることができる。
また、上記第1〜第4実施形態では、リッジ部(光導波路)に沿うように凹部(掘り込み領域)を形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、リッジ部(光導波路)と交差する方向に延びるように凹部(掘り込み領域)を形成してもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、複数の凹部を等間隔で形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、隣り合う凹部の間隔が異なる間隔となるように、複数の凹部を形成してもよい。また、1つの基板に、断面形状が異なる凹部を形成するようにしてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、凹部の周期を約400μmに設定した例を示したが、凹部の周期は、窒化物半導体レーザ素子のチップ幅(素子幅)によって決めることができ、チップ幅(素子幅)を、たとえば、約200μmとする場合には、凹部の周期は、約200μmとすることができる。なお、凹部(掘り込み領域)の周期(間隔)は、1mm以下が好ましく、400μm以下であればより好ましい。このように構成すれば、ウェハ(基板)の一部に異常箇所があって、それが原因となり層厚変動が生じたとしても、凹部上の半導体素子層表面の窪みによって横方向の成長が分断され、異常箇所に起因する層厚変動の拡散が抑制される。また、凹部(掘り込み領域)の周期(間隔)が5μm以下となると、リッジ部の形成が困難になるため、凹部(掘り込み領域)の周期(間隔)は、5μmより大きくするのが好ましい。
なお、凹部内に形成される成長抑制膜は、凹部内における結晶成長面より低い位置に形成されていれば、上記第1〜第4実施形態で示した形状以外の形状で形成されていてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、ECRスパッタ装置を用いたスパッタ法で成長抑制膜を形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、上記以外の方法で成長抑制膜を形成することもできる。たとえば、マグネトロンスパッタ装置を用いたスパッタ法や、EB(Electron Beem)蒸着法、プラズマCVD法などを用いて、成長抑制膜を形成することもできる。
また、上記第1〜第4実施形態では、凹部の側面部の傾斜角を約100度とした例を示したが、本発明はこれに限らず、凹部の側面部の傾斜角を約100度より大きい角度とすることもできる。このように構成した場合、凹部の側面部に効率よく成長抑制膜を形成することができる。なお、第1実施形態では、凹部の側面部に成長抑制膜が形成されないため、この場合には、凹部の側面部の傾斜角を90度にすることもできる。
なお、上記第1〜第4実施形態において、基板上に結晶成長される窒化物半導体各層については、その厚みや組成等は、所望の特性に合うものに適宜組み合わせたり、変更したりすることが可能である。たとえば、半導体層を追加または削除したり、半導体層の順序を一部入れ替えたりしてもよい。また、たとえば、GaN基板とn型クラッド層との間に、GaNからなるバッファ層などの層を形成してもよい。さらに、導電型を一部の半導体層について変更してもよい。すなわち、窒化物半導体レーザ素子としての基本特性が得られる限り自由に変更可能である。
また、上記第1〜第4実施形態において、凹部(掘り込み領域)の形成は、基板上に一度、GaN、InGaN、AlGaN、InAlGaN、InAlNなどの窒化物半導体の層を成長させた後に行ってもよい。すなわち、一度成長を行い、次に凹部(掘り込み領域)を形成した場合であっても、本明細書の内容を適用することができる。
また、上記第1〜第4実施形態において、窒化物半導体レーザ素子の製造工程で用いるエッチング方法は、気相エッチングであってもよいし、液相エッチングであってもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、窒化物半導体レーザ素子に1つの凹部(掘り込み領域)を含むように、窒化物半導体ウェハを分割した例を示したが、本発明はこれに限らず、窒化物半導体レーザ素子に凹部(掘り込み領域)を含まないように、窒化物半導体ウェハを分割してもよい。また、窒化物半導体レーザ素子に複数の凹部(掘り込み領域)を含むように、窒化物半導体ウェハを分割してもよいし、窒化物半導体レーザ素子に凹部(掘り込み領域)の一部を含むように、窒化物半導体ウェハを分割してもよい。このように構成した場合でも、素子特性の優れた窒化物半導体レーザ素子を歩留まりよく得ることができる。
また、上記第1〜第4実施形態では、活性層の量子井戸構造を、DQW構造に構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、DQW構造以外の量子井戸構造に活性層を構成してもよい。たとえば、活性層の量子井戸構造を、SQW(Single Quantum Well)構造に構成してもよいし、MQW(Multiple Quantum Well)構造に構成してもよい。また、活性層(井戸層、障壁層)の組成、厚み等は適宜変更することができる。
また、上記第1〜第4実施形態では、n型半導体層のn型不純物としてSiを用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、n型不純物として、Si以外に、たとえば、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgまたはBeを用いてもよい。なお、n型不純物としては、Si、OおよびClが特に好ましい。
なお、エピタキシャル成長法としては、MOCVD法以外に、たとえば、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法や、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。