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JP5212413B2 - 微粒子の磁力選別方法および磁力選別用マイクロウェル - Google Patents
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微粒子の磁力選別方法および磁力選別用マイクロウェル Download PDF

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Description

本発明は、磁気物性を評価する対象となる微粒子を磁力選別するための磁力選別方法およびこれに用いる磁力選別用マイクロウェルに関する。
微粒子群からなる試料を、着磁性の粒子群(以下、「着磁性粒子群」とも称する。)と非着磁性の粒子群(以下、「非着磁性粒子群」とも称する。)とに分離して、それぞれの粒子群を回収する方法は、生体試料の分析を初め、広く産業的に実施されている。また、このときに、試料に揮発性の液体を添加して磁力選別(湿式分離)を行うことにより、試料における静電気の影響を取り除くことができ、また、揮発性の液体を添加することから、磁力選別が行われた後の試料を単に放置しておけば、添加した液体は自然に揮発して除去されるため、作業が容易となる、という利点もある。そのため、着磁性粒子群と非着磁性粒子群との分離に湿式分離が用いられている。
このように、湿式分離により着磁性粒子群と非着磁性粒子群とを分離する方法としては、例えば、特許文献1に、試料粒子を含む液を保持したマイクロウェルにおいて、マイクロウェルの構造材を磁化して、試料粒子のうち、着磁性のもの(着磁性粒子)をマイクロウェル中に残留させ、非着磁性の粒子を周囲の液とともにピペット等で吸い出して、着磁性粒子と非着磁性粒子を分離する方法が開示されている。
また、特許文献2には、マイクロウェル中の粒子を磁力選別する際、マイクロウェルから粒子を液とともに吸い出すピペットの外側に磁石を設け、ピペット中に吸引した粒子にピペットの外部から磁力を作用させた状態で、ピペット中の非着磁性の粒子を液とともに排出した後、ピペットへの磁力を消去し、次に、粒子を含まない新鮮な液をピペットで再吸引し、着磁性粒子を液とともにピペット外に排出する方法が開示されている。
また、特許文献3には、マイクロウェル中の粒子を磁力選別する際、マイクロウェルから粒子を液とともに吸い出すピペット自身を磁化して、磁性粒子のみをピペット内に残留させ、その後、ピペットの磁性を消去して、着磁性粒子を排出する方法が開示されている。
また、特許文献4には、特許文献3のようにピペットを磁化する代わりに、ピペット中にピンを装入し、これを磁化、または、消磁することにより粒子の磁力選別を行う方法が開示されている。
なお、例えば、特許文献5には、マイクロウェルの代わりに、多数の試験管状の「チューブ」を連結して配置し、マイクロウェルの個々のウェルと同様の機能を発揮する粒子の磁力選別用抽出装置が開示されている。
さらに、例えば、特許文献6には、水溶液を対象とし、マイクロウェルの個々のウェルと同様の機能を発揮する生化学反応セルが開示されている。
特開平10―332567号公報 特開平11−132934号公報 特開2006−126061号公報 特開2007−108624号公報 特開2003−93918号公報 特開平11−146784号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載した技術では、着磁性粒子群と非着磁性粒子群の分離に際して、ピペットで液とともに粒子を吸い出す工程が必要となる。このような工程では、試料粒子を粒子と比べて大量の液中に懸濁させる必要がある。従って、液に溶解性のある試料粒子では、作業中に試料粒子が液に溶解するため、試料の物理的および化学的性質を損ない、分離後の分析精度に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、上記の技術では、マイクロウェルに残留した着磁性の粒子を別途回収する工程が必要となる。特に、粒径が50μm以下程度の粒子では、粒子の比表面積が粗大粒子に比べて著しく大きく、マイクロウェルやピペット壁への粒子の付着が生じ易く、かつ、マイクロウェル中の粒子の完全な除去にも多大な労力を必要とする。そのため、着磁性粒子群と非着磁性粒子群とを分離する際の工程や設備が複雑となり、分離作業の効率が低い。例えば、マイクロウェルを再利用するためには洗浄工程が必要となり、着磁性粒子を回収するためには、マイクロウェルの磁化を除去する設備や工程が一般に必要となる。
また、特許文献2〜4の技術では、磁石の配置とピペットの構造が幾何学的に不規則であり、同一の粒子であっても、ピペット内の位置によって、粒子に加わる種種の力(磁力、重力、液体からの粘性力、ピペット壁の接触時の反力等)の向きと大きさが異なるため、着磁したりしなかったりする。この場合、著しく強力な磁石を用いれば着磁性の粒子を全て着磁することも原理的には可能であるが、反強磁性以外の粒子では磁場中では何らかの磁化を生じるので、本来、非着磁性粒子として着磁性粒子から分離したい粒子でも磁石に着磁することがありえるため、好ましくない。
さらに、特許文献2〜4の技術では、ピペットの洗浄工程を省略するためにピペットを使い捨て方式とする場合には、着磁性の粒子の一部がピペットに付着したまま廃棄され、着磁性粒子の試料の回収量が減少するので好ましくない。
なお、特許文献5,6の技術でも、特許文献1〜4と同様の問題が生ずる。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、着磁性微粒子と非着磁性微粒子との分離後の分析精度や分離作業の効率を向上させ、かつ、所望の磁性の範囲で微粒子群を磁力選別可能な微粒子の磁力選別方法およびこれに用いる磁力選別用マイクロウェルを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、揮発性の液体を添加して磁力により着磁性微粒子と非着磁性微粒子とに分離(湿式分離)する際に、揮発性の液体を保持するためのマイクロウェルと、先端にスペーサが装着された磁石とを用い、さらに、マイクロウェル内に保持された揮発性の液体の深さを所定深さに制御することにより、着磁性微粒子と非着磁性微粒子との分離後の分析精度や分離作業の効率を向上させ、かつ、所望の磁性の範囲で微粒子群を磁力選別できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、平坦な底面を有する窪みが設けられたマイクロウェルの前記窪み内に、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とからなる微粒子群を含んだ揮発性の液体を保持し、前記微粒子群を前記着磁性微粒子と前記非着磁性微粒子とに選別する磁力選別方法であって、磁石の先端に装着された非磁性材料製で平板状のスペーサを前記揮発性の液体に浸漬させ、前記スペーサと前記窪みの底面との間に前記微粒子群を挟み込んだ状態で、前記窪み内の前記揮発性の液体の深さを、前記スペーサが前記揮発性の液体に浸漬され、かつ、前記磁石が前記揮発性の液体に浸漬されない所定深さとする条件で、前記着磁性微粒子を前記スペーサを介して前記磁石に吸着させる着磁工程と、前記磁石を前記マイクロウェルから離隔させ、前記スペーサを介して前記磁石に吸着された前記着磁性微粒子と、前記窪み内に残留した前記非着磁性微粒子とに分離する磁力分離工程と、を含む、磁力選別方法が提供される。
前記磁力選別方法において、前記着磁工程は、前記窪みの底部に前記微粒子群を散布する第1の工程と、前記揮発性の液体が前記窪み内で前記所定深さとなるように、前記揮発性の液体を前記窪みに注入する第2の工程と、前記スペーサを前記窪み内の前記揮発性の液体に浸漬させることにより前記磁石を前記微粒子群に接近させ、前記スペーサを介して前記着磁性微粒子を前記磁石に吸着させる第3の工程と、を含み、前記磁力分離工程は、前記磁石を前記窪みの底面から離隔させ、前記スペーサに付着した前記着磁性微粒子を前記マイクロウェルの外部の着磁性微粒子用の基板上に載置する第4の工程と、前記磁石を前記着磁性微粒子用の基板から離隔させ、少なくとも前記着磁性微粒子を前記着磁性微粒子用の基板上に留置する第5の工程と、を含んでいてもよい。
前記磁力選別方法において、前記マイクロウェルとして、前記窪みの底面を構成する非着磁性微粒子用の基板を含む複数の部材からなる組み立て式の磁力選別用マイクロウェルを用い、前記第5の工程の後に、前記磁力選別用マイクロウェルを解体して前記非着磁性微粒子用の基板を取り出す第6の工程と、前記非着磁性微粒子用の基板を放置または加熱することにより、前記揮発性の液体を除去する第7の工程と、をさらに含んでいてもよい。
前記第5の工程において、前記着磁性微粒子用の基板上で前記磁石を前記スペーサから離脱させ、前記スペーサに付着した前記着磁性微粒子を前記スペーサとともに前記非着磁性微粒子用の基板上に留置するようにしてもよい。
前記第3の工程の際の前記スペーサの前記微粒子群側の面における平均磁束密度が0.1T以上0.4T以下であることが好ましい。
前記磁力選別方法において、前記微粒子群は、高炉法による製鉄プラントから発生した降下煤塵からなっていてもよい。
また、本発明によれば、上述した磁力選別方法に用いる磁力選別用マイクロウェルであって、透明かつ非着磁性の材料で形成された平板状の非着磁性微粒子用の基板と、前記非着磁性微粒子用の基板を支持し、非着磁性の材料で形成された平板状の支持板と、前記揮発性の液体に溶解せず、かつ、デュロメータで測定した硬度がA30以上A65以下である弾性体で形成され、1または複数の貫通孔を有するガスケットと、非着磁性の材料で形成され、1または複数の貫通孔を有する平板状の押さえ板と、を備え、前記支持板と、前記非着磁性微粒子用の基板と、前記ガスケットと、前記押さえ板とが下方から順に積み重ねられて締結された状態で、前記ガスケットの貫通孔と前記押さえ板の貫通孔とにより、前記揮発性の液体を保持するための窪みが形成される、磁力選別用マイクロウェルが提供される。
前記磁力選別用マイクロウェルにおいて、前記揮発性の液体としては、メタノール、エタノールおよびプロパノールからなる群より選択された少なくとも1種以上のアルコールが挙げられる。
前記磁力選別用マイクロウェルにおいて、前記弾性体は、ブチルゴム、EPMまたはEPDMのいずれか1種であることが好ましい。
前記磁力選別用マイクロウェルにおいて、前記締結の方法が、バンド締結であることが好ましい。
前記磁力選別用マイクロウェルにおいて、前記非着磁性微粒子用の基板は、ガラス板であってもよい。
本発明によれば、揮発性の液体を保持するための窪みを有するマイクロウェルを用いて湿式分離を行う際に、微粒子群を窪みの底面とスペーサとの間に挟みこんだ状態で、揮発性の液体の深さを、磁石が浸漬されずにスペーサのみが浸漬されるような深さとすることにより、着磁性微粒子と非着磁性微粒子との分離後の分析精度や分離作業の効率を向上させることができ、かつ、所望の磁性の範囲で微粒子群を磁力選別することが可能となる。
本発明の好適な実施の形態に係る微粒子の磁力選別方法の具体例を示す説明図である。 高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の各煤塵種における着磁性と明度との概略的な関係を示す説明図である。 同実施形態に係る磁力選別方法における処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の好適な実施の形態に係る微粒子の磁力選別方法の具体例を示す説明図である。 本発明の好適な実施形態に係る組み立て式の磁力選別用マイクロウェルの全体構成を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)に示した磁力選別用マイクロウェルのA−A断面図である。 種々のゴムやエラストマーの硬度とSP値(溶解度パラメータ)との関係の一例を示すグラフである。 平坦な基板上で湿式分離を行った際の粒子の着磁状態の一例を示す説明図である。 過剰量の揮発性の液体を用いて湿式分離を行った際の粒子の着磁状態の一例を示す説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[本発明の概要および優位性]
本発明は、各種の産業的な分析に用いられる検体を分析するための予備処理に関するものである。具体的には、本発明は、揮発性の液体に浸漬された微粒子群を、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とに選別する磁力選別方法、および、この方法に用いる磁力選別用マイクロウェルである。このような本発明の好適な実施の形態について説明する前に、まず、湿式分離における問題点、この問題点を解決するための本発明において基本となる技術思想、および、本発明の優位性について説明する。
(湿式分離の問題点)
上述したように、特許文献1〜4に記載した技術では、試料粒子を粒子と比べて大量の液中に懸濁させる必要がある。従って、液に溶解性のある試料粒子では、作業中に試料粒子が液に溶解するため、試料の物理的および化学的性質を損ない、分離後の分析精度に悪影響を及ぼすおそれがある、という問題が生じる。
また、特許文献1〜4の技術では、磁力分離対象の微粒子は、液中で自由に動き得ることから、磁石との間の位置関係、特に、磁石との距離が粒子ごとに大きく異なることになる。一般に、磁石表面からの距離が増大するにつれて空間の磁束密度は急激に低下するので、特許文献1〜4の技術では、同一の磁気特性を有する粒子であっても、液中の位置に応じて着磁するものと着磁しないものが生じる可能性があり、磁力分離の精度が高くない(着磁性粒子と非着磁性粒子とを峻別できない)、という問題がある。
(基本となる技術思想および本発明の優位性)
この問題を解決するために、本発明者は、微粒子群を保持するマイクロウェル等を用いて、マイクロウェルの微粒子群を保持する部分の底部の平面と平板状のスペーサとの間に微粒子群を挟み込み、さらに、スペーサの背面側に磁石の先端部の平面を配置することによって、磁石の表面と微粒子との間の距離の粒子ごとの差異を、分離対象の微粒子群中で最大径の粒子の粒子径以下に保持する方法を考案した。
この点を、図1を参照しながら、より詳細に説明する。図1は、本発明の好適な実施の形態に係る微粒子の磁力選別方法の具体例を示す説明図である。
図1に示すように、本発明に係る磁力選別方法においては、揮発性の液体Lを添加して微粒子群を磁石11に着磁する着磁性微粒子Pmと着磁しない非着磁性微粒子Pnとに分離する湿式分離を行う。この際、揮発性の液体Lを保持するための窪み105が設けられたマイクロウェル100等を使用する。このマイクロウェル100としては、一般に市販されているものを使用することができるが、本発明では、窪み105の底部が平坦面となっているものを使用する。窪み105の形状としては特に限定されないが、磁力選別に用いる磁石11およびスペーサ13の窪み105内への挿出入が容易であることから、略円形であることが好ましい。ただし、窪み105の加工上の便宜等の理由があれば、窪み105の形状が、正多角形、長方形、楕円等であってもよい。また、本発明に係る磁力選別方法では、先端に平板状のスペーサ13が装着された磁石を用いて、微粒子群に磁力を付与する。この磁石11やスペーサ13の詳細については後述する。
以上のようなマイクロウェル100や磁石11等を用いて、まず、図1(a)に示すように、マイクロウェル100の窪み105内に、着磁性粒子Pmと非着磁性粒子Pnとからなる微粒子群を含んだ揮発性の液体Lを保持し、この状態で、スペーサ13を揮発性の液体L中に浸漬させ、スペーサ13の下面と窪み105の底面との間に、微粒子群を挟みこむ。このとき、微粒子群のうち、最大の粒径を有する粒子が、スペーサ13の下面と窪み105の底面の双方に接触し、他の粒子は、スペーサ13の下面と窪み105の底面との間の液体L中に存在している。
また、本発明では、このとき、スペーサ13のみが揮発性の液体Lに浸漬され、磁石11は、液体L中には浸漬されない。すなわち、窪み105中に保持された揮発性の液体Lの液面は、スペーサ13の下面と上面との間に位置している。
次に、図1(b)に示すように、スペーサ13を介して磁石11に吸着された着磁性粒子Pmを、磁石11およびスペーサ13とともに液体Lから引き上げる。このとき、揮発性の液体L中には、非着磁性粒子Pnが残留する。
さらに、図1(c)に示すように、スペーサ13に付着した着磁性粒子Pmを、マイクロウェル100の外部の基板(着磁性粒子用基板)10上に載置し、磁石11を離隔させることにより、着磁性粒子Pmと非着磁性粒子Pnとを磁力選別することができる。
また、磁力選別の際、磁石11の直径(円柱状の磁石の場合)を、分離対象の微粒子群中で最大の大きさを有する粒子の粒子径の少なくとも10倍以上、より好ましくは100倍以上とすることによって、スペーサ13と窪み105の底面との間(すなわち、分離対象の微粒子群中で最大の粒子の粒子径相当の距離の範囲)で、磁石11からの距離の違いによる磁束密度差が無視可能なレベルになることを本発明者は見出した。例えば、円柱磁石の端面に直径0.3mmの球形粒子を着磁させることを想定した場合の磁石近傍での磁束密度を考える。磁石直径が1mm(即ち、測定対象粒子の約3.33倍)の場合、粒子の磁石への最遠点での磁束密度は、最近点での値の約48%(磁石表面に粒子が接する場合)に大きく低下し、着磁性に対する粒子径の影響は無視しえない。一方、磁石直径が3mm(即ち、測定対象粒子の約10倍)の場合、粒子の磁石への最遠点での磁束密度は、最近点での値の約80%に大幅に改善する。さらに、磁石直径が30mm(即ち、測定対象粒子の約100倍)の場合、粒子の磁石への最遠点での磁束密度は、最近点での値の約98%となり、着磁性に対する粒子径の影響はほとんど消失する。この原理に基づいて、分離対象の微粒子群中で最大の粒子の粒子径の少なくとも10倍以上の直径を有する磁石11を、上記図1に示す方法で適用することにより、スペーサ13と窪み105の底面との間に粒子が存在する限り、どの粒子にもほぼ一定の磁力を及ぼすことができ、同一の磁気特性を有する粒子を着磁、または、非着磁に峻別することが可能になった。
また、湿式で磁力選別(湿式分離)を行う場合には、磁石11をマイクロウェル100に添加した液体Lに浸漬させると、着磁性粒子Pmに液体Lが直接付着して、着磁性粒子Pmを磁石11から脱離させるのに労力を要することになるため好ましくない。従って、本発明に係る磁力選別方法では、上述したマイクロウェル100と、先端に非着磁性材質のスペーサ13が装着された磁石11とを用いて、スペーサ13のみがマイクロウェル100の窪み105内の液体Lに浸漬し、磁石11が液体Lに浸漬しない深さに、分析対象の微粒子群を含んだ揮発性の液体Lの深さを設定している。
ここで、もし、湿式で磁力分離を行うための液体をマイクロウェル中に少量しか供給しない場合、前述のようなスペーサ(分離板)上に液体が溢れる危険性を回避することはできる。しかし、このような状態では、粗大な粒子は液面から露頭し、露頭した粗大粒子の頂部に阻まれてスペーサが液体に接触できなくなる。これは、図7に示す、マイクロウェルを用いずに湿式分離を行った場合の粒子とスペーサと液体との位置関係と同様の状態である。マイクロウェルを用いずに、基板1上に散布された微粒子群に直接揮発性の液体Lを添加した場合、供給液量とは無関係に液体Lが周囲に広がって液膜が薄くなることが避けられないので、比較的粗大な粒子を湿式で磁力分離しようとした場合には、必然的に図7に示す状態となる。この場合、着磁性粒子Pmのうち、スペーサ13と接触する粗大な粒子は着磁しうるが、液面下に存在する小径の着磁性粒子Pmがスペーサ13まで到達して着磁することは困難である。なぜならば、小径の粒子がスペーサ13に到達する際には、必ず、液面(気液界面)を通過しなければならない。粒子が親液性の高い(すなわち、濡れ性の高い)粒子の場合、液面から離脱するためには、液面で粒子周囲に働く強い表面張力に対して磁石11による磁力が打ち克つ必要があるため、着磁性の粒子であっても容易には液体Lから離脱することはできないからである。このように、スペーサ13が液体Lに接触していない場合には、着磁性粒子Pmの着磁率が低下する、という問題を生じる。これに対して、スペーサ13が液体Lに接していれば、前述のような表面張力は粒子には付与されないので、着磁性粒子Pmは容易にスペーサ13に到達して着磁することができる。
また、磁力分離のために着磁した粒子をスペーサ13から持ちあげる際には液体L自身が分離して一部がスペーサ13に残留し(親液性の材質のスペーサ13を用いる場合)、この残留液中に着磁した着磁性粒子Pmが留まるので、この際にも、着磁性粒子Pmが液体L中から離脱する必要はなく、着磁性粒子Pmの着磁が維持される。従って、スペーサ13が液体Lに接することは、湿式の磁力分離においては必須の条件である。本発明に係る磁力選別方法では、マイクロウェル100中に液体Lを保持するので、液面を上昇させることは、図7のようにマイクロウェルを使用しない場合に比べればはるかに容易であり、スペーサ13と液体Lとの接触に関して有利となる。
一方、マイクロウェル中に供給する液量が過大であれば、前述のように、スペーサの上に液体が溢れるため好適でない。すなわち、図8(a)に示すように、マイクロウェル100’に設けられた窪み105’の底面とスペーサ13との距離を、分離対象の微粒子群中で最大の粒子の粒子径よりも大きく設定すれば、スペーサ13の上に液体Lが溢れることを回避することはできる。しかし、このような状況は、先に述べたように、液体L中での磁束密度の分布を生じるため、磁力分離の精度上好ましくない。例えば、図8では、微粒子群として、同一の着磁性の磁気特性をもち、密度と粒径のみ異なる3種類の粒子種、具体的には、粗大で液体Lより低密度の着磁性粒子、粗大で液体Lより高密度の着磁性粒子、並びに、液体L中を懸濁しうるレベルの微小粒子を含む例を示している。このような微粒子群に対して磁力分離を行うと、図8(b)に示すように、磁束密度の高いスペーサ13の近傍に位置していた粗大で低密度の着磁性粒子の全量および一部の微小粒子のみが着磁して液体L中から分離除去され、残りの粒子は液体L中に残留している。本来であれば、同一の磁気特性の粒子を用いているので全粒子が着磁すべきである。従って、図8の例に示す磁力分離方法のように、マイクロウェル中に供給する液量が過大である場合には、分離精度が低いと評価することができる。
従って、本発明に係る磁力選別方法によれば、マイクロウェルを用い、マイクロウェルに供給する揮発性の液体の量を、マイクロウェルに設けられた窪みの底面とスペーサとの間に微粒子群を挟み込こんだ状態で、スペーサが液体に接触するとともに、液体がスペーサ上に溢れない条件とすることで、粒子径に係らず着磁性粒子を高い確率で着磁させることができ、非着磁性粒子から峻別することができる。
さらに、本発明に係る磁力選別方法では、湿式の磁力選別後の粒子分析の便宜も考えて、マイクロウェルを組み立て式の構造とし、湿式の磁力選別後にマイクロウェルを分解し、分解後の窪み部分の底面をそのまま分析用の粒子サンプルとして使用できるような磁力選別用のマイクロウェルを使用することが好ましい。このような組み立て式のマイクロウェルを使用することで、一体型のマイクロウェルを使用した場合に必要な、窪みの底面に残留した試料を別途回収した上で、新たに分析用の粒子サンプルを製造するといった手間を省略することができる。
そこで、本発明の好適な実施の形態においては、湿式分離に用いる磁力選別用マイクロウェルを組み立て式として、このマイクロウェルを構成する部品の一つとして、磁力選別後の各種分析(例えば、粒子画像処理計測等)時に非着磁性微粒子用の基板としてそのまま使用可能な基板を設けてもよいこととした。より詳細には、本発明の好適な実施の形態に係る磁力選別用マイクロウェルは、非着磁性微粒子用の基板を下方(微粒子が載置される面と反対側)から支持する支持板と、非着磁性微粒子用の基板と、ウェル(窪み)を構成するための貫通孔を有するガスケットと、ウェルを構成するための貫通孔を有して上方からガスケットを押さえる押さえ板と、を下方から順に積み重ねて締結したものである。このような構造を有するマイクロウェルを用いれば、マイクロウェルを用いて磁力選別を行った後に、このマイクロウェルを解体して、非着磁性微粒子用の基板を取り出して、微粒子に添加された液体を揮発除去すれば、この基板をそのまま分析用の検体として用いることができる。
<マイクロウェルを組み立て式にした場合に生じる問題>
ところで、マイクロウェルを組み立て式とするためには、従来は、以下に説明するような大きな問題があった。
1)確実なシールをしようとする際の問題
第1に、確実なシールをしようとする際の問題がある。マイクロウェルを組み立て式とした場合には、微粒子群に添加する揮発性の液体をマイクロウェルに保持するためのシールが必要となる。ここで、微粒子群に添加する揮発性の液体は、微粒子との濡れ性が要求されるため、一般に、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールのような表面張力および粘度が低いものが選択される。このような低級アルコールは、表面張力や粘度が極めて低いため、水や油などと比較してシールが困難となる。このような低級アルコールのような揮発性の液体のシールは、シール材(ガスケット)としてゴム等の弾性材料を使用し、このシール材を他の部品と強く締結すれば、一応は可能である。
しかし、このように強く締結するためには、設定機械力によるボルト締結等のような強い締結力が必要であるが、このような強い締結力により支持板や押さえ板が変形すると、間に挟まれる非着磁性微粒子用の基板(主に、ガラス板等が使用される。)が破損するおそれがあるため、支持板や押さえ板を極端に厚くするなどしてマイクロウェル自体の剛性を確保する必要がある。従って、マイクロウェルが大型化するとともに組み立てや解体が簡易ではなくなる、という問題がある。
2)シール材からの成分溶出(ブリード)の問題
第2に、シール材からの成分溶出(ブリード)の問題がある。微粒子群に添加される揮発性の液体として使用される低級アルコール等は、これに接触するシール材(ゴム等の弾性材料)中の架橋構造を破壊するとともに、弾性材料中に通常含有されている軟化剤成分を溶出させる。このようにして溶出した成分には不揮発性のものが多く含まれ、磁力選別後に、この不揮発性の溶出成分が、非着磁性微粒子とともに非着磁粒子用の基板上に残留してしまう。残留した溶出成分は、分析用検体を汚染し、例えば、粒子画像処理計測時に粒子画像への外乱要因となるなど、磁力選別後の分析の妨げになるため、好ましくない。
また、シール材によるシール性を高めるためにマイクロウェルを強力な締結力で締結すると、この締結力によりシール材として使用した弾性材料の変形量が大きくなるため、マイクロウェルにおいて低級アルコール等の液体に接する部分に相当する弾性材料の端面では微小な亀裂が発生しやすくなる。このようにして発生した微小な亀裂に低級アルコールが浸潤すると、ブリードが促進されるとともに、亀裂の進展や増大を招き、弾性材料の耐用性が著しく低下する、という問題がある。従って、マイクロウェルを強力な締結力で締結することは、ブリードの促進を防止する観点から好ましくない。
このように、確実なシールをしようとする際の問題と、弾性体からのブリードによる検体汚染の問題とはトレードオフの関係にあり、両者の問題を解決する方法が知られていなかったため、従来は、組み立て式のマイクロウェルは実用化されていなかった。
そこで、本発明者は、上記の問題を解決する手段について鋭意検討した結果、弱い締結力でも確実なシールをすることができ、かつ、耐ブリード性(ブリード抑制効果)の高いシール材及びシール方法を見出した。その結果、簡易に組み立てや解体が可能な、磁力選別用のマイクロウェルを完成させることができた。
以上のような本発明に係る磁力選別用マイクロウェルを用いることにより、湿式での磁力選別の自由度が向上する、すなわち、マイクロウェルを用いて湿式分離を行うことができるため、上述した平坦な基板上に揮発性の液体を添加した場合の問題を回避することができる。
(製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種の特定への適用)
また、本発明の磁力選別用マイクロウェルを用いた磁力選別の対象となる粒子群として、例えば、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵も含めることができる。このような降下煤塵によって引き起こされる、製鉄プラント構内に乗り入れる車両を汚損する等の問題への対策として、捕集された降下煤塵の煤塵種を特定することが有力であると考えられる。
降下煤塵の定義や煤塵種の具体例の詳細については後述するが、製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を特定するためには、異なる煤塵種ごとに分離する必要があるが、この分離の方法として、本発明の磁力選別用マイクロウェルを用いた磁力選別方法が有効である。製鉄プラント由来の降下煤塵に含まれる煤塵種のうち、鉄鉱石等由来の煤塵や転炉スラグ等由来の煤塵などは、強磁性または強い常磁性を有する微粒子である。本発明は、このような強磁性または強い常磁性を有する微粒子の磁力選別に適用することができ、本発明によれば、強磁性または強い常磁性を有する微粒子(着磁性微粒子)と、強磁性または強い常磁性を有しない微粒子(非着磁性微粒子)とを容易に選別することができる。従って、本発明に係る磁力選別用マイクロウェルや磁力選別方法を適用すれば、製鉄プラント由来の降下煤塵のうち、少なくとも、鉄鉱石等由来の煤塵や転炉スラグ等由来の煤塵などからなる微粒子群と、それ以外(例えば、石炭やコークス由来の煤塵や高炉スラグ由来の煤塵など)からなる微粒子群とに分離することができる。
ここで、図2を参照しながら、本発明を製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種の特定に適用した場合の利点について説明する。図2は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の各煤塵種における着磁性と明度との概略的な関係を示す説明図である。
一般に、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵は、主に、石炭やコークス等を含む石炭系煤塵、鉄鉱石、焼結鉱、酸化鉄粉等を含む鉄系煤塵、高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ等を含む高炉スラグ系煤塵、及び、転炉スラグ、溶銑予備処理スラグ等を含む製鋼スラグ系煤塵の4種類の煤塵種に分類される。
これら4種類の煤塵種のうち、通常は、高炉スラグ系煤塵や製鋼スラグ系煤塵は白色系の明度の高い粒子(明色粒子)であり、石炭系煤塵や鉄系煤塵は黒色系の明度の低い粒子(暗色粒子)であることから、従来のように、低倍率の光学顕微鏡を用いて撮影した画像に画像処理を施し、個々の煤塵粒子の明度の高低を識別することにより、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵とからなる煤塵種と、石炭系煤塵及び鉄系煤塵からなる煤塵種とに判別することができる。
しかし、このような明色粒子と暗色粒子との分類のみでは、同程度の明度の粒子の判別、例えば、高炉スラグ系煤塵と製鋼スラグ系煤塵との判別をすることができない。すなわち、上記のように、単に撮影画像に画像処理を施して明度の高低のみによる分類では、包括的過ぎて、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種(ひいては降下煤塵の発生源)を特定することができないため、実用性が低いものである。
そこで、本発明者は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵(以降、「製鉄由来降下煤塵」と称する場合がある。)の煤塵種を特定するために、煤塵粒子の明度の高低のみではなく、着磁性の有無に着目した。その結果、本発明者は、明度の高低と着磁性の有無との組み合わせにより煤塵特性を規定することができ、この煤塵特性に基づいて、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種を特定できることを見出した。より詳細には、本発明者は、低倍率の光学顕微鏡撮影画像を単に画像処理しただけでは判別できない製鉄由来降下煤塵の煤塵種を、図2に示すように、明度の高低と着磁性の有無の組み合わせにより、石炭系煤塵、鉄系煤塵、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵の4種類に判別することができることを見出した。
なお、本発明における着磁性とは、対象とする煤塵粒子に所定の磁力を付与することにより、着磁する(磁性を有するようになり、磁石に吸着される)性質を意味し、本発明では、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵を、磁力の付与により着磁する着磁性降下煤塵と、磁力を付与しても着磁しない非着磁性降下煤塵とに分類し、さらに、この着磁性降下煤塵と非着磁性降下煤塵のそれぞれを、明度の高低により明色粒子と暗色粒子とに分類している。
具体的には、石炭系煤塵は、明度が低く(暗色で)非着磁性の非着磁性暗色粒子、鉄系煤塵は、明度が低く(暗色で)着磁性の着磁性暗色粒子、高炉スラグ系煤塵は、明度が高く(明色で)非着磁性の非着磁性明色粒子、製鋼スラグ系煤塵は、明度が高く(明色で)着磁性の着磁性明色粒子、というように分類することができる。
以上のように、本発明者によって見出された知見によれば、煤塵特性に応じて、製鉄由来降下煤塵の煤塵種を特定することが可能となるが、この際、明度を判別する方法としては、別途、目視による分類、または、画像処理粒子計測などによって実施することができる。
[本発明の好適な実施形態に係る磁力選別方法]
以上、本発明の概要および先行技術に対する優位性について説明したが、続いて、図1、図3及び図4を参照しながら、本実施形態に係る磁力選別方法について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る磁力選別方法における処理の流れを示すフローチャートである。図4は、本実施形態に係る磁力選別方法の具体例を示す説明図である。
本実施形態に係る磁力選別方法は、平坦な底面を有する窪みが設けられたマイクロウェルの窪み内に、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とからなる微粒子群を含んだ揮発性の液体を保持し、保持された微粒子群を着磁性微粒子と非着磁性微粒子とに選別する磁力選別方法であり、着磁工程と、磁力分離工程とを含む。
第1に、磁力分離工程は、磁石の先端に装着された非磁性材料製で平板状のスペーサを揮発性の液体に浸漬させ、スペーサと窪みの底面との間に微粒子群を挟み込んだ状態で、窪み内の揮発性の液体の深さを、スペーサが揮発性の液体に浸漬され、かつ、磁石が揮発性の液体に浸漬されない所定深さとする条件で、着磁性微粒子をスペーサを介して磁石に吸着させる工程であり、具体的には、以下に説明する第1〜第3の工程を含む。
第2に、磁力分離工程は、磁石をマイクロウェルから離隔させ、スペーサを介して磁石に吸着された着磁性微粒子と、窪み内に残留した非着磁性微粒子とに分離する工程であり、具体的には、以下に説明する第4及び第5の工程を含む。
(第1の工程)
まず、第1の工程では、図3および図1(a)に示すように、磁力選別用マイクロウェル100の窪み105の底部の平坦面に、分析用の検体となる微粒子群(例えば、製鉄所内の特定の場所で捕集された降下煤塵粒子)を散布する(S101)。この際、各粒子同士がなるべく接触しないように、散布量を調整し、さらに、適宜、ヘラ等により散布された微粒子群をならす。なお、窪み105の底部に散布する微粒子の個数は特に限定されないが、試料のばらつきの影響を評価するためには、少なくとも100個以上の微粒子を分析用サンプルとして供用することが好ましい。
また、検体として、製鉄プラント由来の降下煤塵を用いる場合には、降下煤塵は、通常φ10μm以上の粗大な粒子であるので、降下煤塵粒子を散布する際には、降下煤塵粒子の大気中での自由落下を利用することができる。具体的には、例えば、捕集された降下煤塵を匙ですくって基板上に上方から落下させることにより、降下煤塵粒子を基板上に散布することができる。
(第2の工程)
次に、第2の工程では、図3および図1(a)に示すように、揮発性の液体Lが窪み105内で所定深さとなるように、揮発性の液体Lを窪み105に注入する(S103)。
<揮発性の液体Lの種類>
微粒子群に添加する揮発性の液体Lとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールや、アセトン等のケトンや、灯油、ガソリン等の石油や、トルエン、ヘキサン等の環状炭化水素や、水などを用いることができる。ここで、分析対象の粒子種の範囲が予め判明している場合には、この粒子種と親和性の高い液体Lを用いればよい。例えば、分析対象の微粒子が親水性の高い粒子であれば、極性の高い液体(例えば、メタノール等)が親和性の高い液体Lとなり、分析対象の微粒子が親油性の高い粒子であれば、極性の低い液体(例えば、ヘキサン等)が親和性の高い液体Lとなる。
一方、分析対象の粒子種が不明な場合や極性の大きく異なる複数の粒子種を対象とする場合には、親水性および親油性をともに示す、エタノールやプロパノールなどを揮発性の液体Lとして使用すればよい。
ただし、分析対象の微粒子の揮発性の液体Lへの溶解度が極端に大きい場合には、微粒子の物性や形状等を保持するために、液体Lと微粒子との混和性を若干犠牲にして、微粒子の極性とやや異なる液体Lを用いてもよい。
また、液体Lと微粒子との混和性は、一般的には、粘性と表面張力の大きさで決まり、粘性と表面張力が小さな液体Lを使用することが、分析対象の微粒子と液体Lとの混和の観点から好ましい。
特に、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵を分析対象とする場合には、エタノールまたはプロパノールが好適である。例えば、安価で安全な液種である水を液体Lとして用いる場合、製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種の一つであるスラグ粒子が水に溶解するという問題を生じ、また、水は表面張力が大きいので、粒子を液中に分散させることは、水よりもエタノールやプロパノールの方が容易である。また、エタノールやプロパノールは、親水性と親油性をともに有するので、広い極性範囲の微粒子と混和しやすい点でも有利である。
<揮発性の液体Lの添加量>
上記の所定深さ、すなわち、窪み105内における液体Lの深さは、微粒子群に含まれると想定される微粒子のうち、最大粒径の微粒子が揮発性の液体Lに浸漬する深さよりも深くなければならない(液深さ条件1)。好ましくは、液体Lの深さを、想定される微粒子の最大粒径の1.2倍以上の深さとする。
このときの微粒子の最大粒径の推測方法としては、例えば、以下の3通りの方法が挙げられる。第1に、事前に粒径分布(特に、粗大粒子側)のみをレーザ粒子計測等により調査しておく方法がある。第2に、試料となる微粒子群を予め篩い分けして、所定寸法以上の粗大粒子を除去しておく方法がある。第3に、類似条件で採取した過去の試料の調査結果からの知見を用いる方法がある。
また、窪み105内における液体Lの深さは、スペーサ13が微粒子のうち最大粒径の粒子に接触するまでスペーサ13を窪み105内の揮発性の液体Lに浸漬させた場合に、磁石11が揮発性の液体Lに接触しない深さであることが必要である(液深さ条件2)。言い換えると、液体Lの液面の高さは、スペーサ13の下面(微粒子群と接触する側の面)が窪み105の底部の平坦面上の微粒子の表面に接触するまで、スペーサ13を液体Lに浸漬させた場合に、スペーサ13の上面(磁石11の先端面との接面)の位置よりも低い必要がある。
なお、この液体Lの最大深さに関しては、事前に、微粒子群を含まない状態で、窪み105内に液体Lを注入して試験することにより、確認することができる。また、磁石11の先端のスペーサ13として、磁石に固定された固定式のスペーサが設けられており、この固定式のスペーサの先端に、さらに着脱式のスペーサが設けられている場合には、固定式スペーサと着脱式スペーサの双方の厚みを、上述したスペーサ13の厚みとして考えてよい。
上述した液深さ条件1と液深さ条件2を両立させるためには、スペーサ13を揮発性の液体Lに浸漬させ、スペーサ13と窪み105の底部の平坦面との間に微粒子群を挟み込んだ状態で、窪み105内の揮発性の液体Lの深さを、スペーサ13が揮発性の液体Lに浸漬され、かつ、磁石11が揮発性の液体Lに浸漬されない深さとなるようにすればよい。具体的には、スペーサ13の厚み、および、スペーサ13と窪み105との直径(円以外の形状の場合には、円相当直径)比を適宜設定すればよい。スペーサ13の厚みが十分に厚ければ、液体Lはスペーサ13の上面まで到達しない。また、窪み105の直径の方がスペーサ13の直径よりも十分に大きければ、液体Lはスペーサ13の上面まで到達しにくい。ただし、いずれの条件も極端な設定であれば、磁力選別の精度を悪化させるので、必要十分なスペーサ13の厚み、および、スペーサ13と窪み105との直径比とすべきである。
なお、本実施形態では、第1の工程と第2の工程とを別の工程としているが、これらを同時に実施してもよい。すなわち、微粒子群を窪み105の底部に散布する際に、直接散布するのではなく、微粒子群を揮発性の液体L中に懸濁させた後に、微粒子群を含む液体L(懸濁液)を窪み105に注入してもよい。
(第3の工程)
次に、第3の工程では、図3および図1(a)に示すように、スペーサ13を窪み105内の揮発性の液体Lに浸漬させることにより、磁石11を微粒子群(着磁性微粒子Pmおよび非着磁性微粒子Pnが含まれた粒子群)に接近させ、スペーサ13を介して着磁性微粒子Pmを磁石11に吸着(着磁)させる(S105)。従って、着磁性微粒子Pmは、スペーサ13の下面(磁石11がある側と反対側の面)に付着することになる。なお、磁石11が電磁石である場合には、磁石11を微粒子群に接近させる前に、磁石11を磁化させる必要がある。
ここで、磁石11を微粒子群に接近させる際には、着磁性微粒子Pm同士の接触や重なりを極力少なくするために、磁石11の先端の平坦面を窪み105の底面(マイクロウェルを組み立て型とする場合には、後述する非着磁性微粒子用基板210の表面)と平行な状態にすることが好ましい。また、着磁性微粒子Pmを磁石11に吸着させる際の着磁性微粒子Pmとスペーサ13との接触時間は、例えば1秒以上とすればよい。
<磁石11の形状・寸法>
本実施形態で使用する磁石11は、先端(微粒子群と接触する側)にスペーサ13が設けられている。磁石11は、先端が平坦な形状を有していればよく、磁石11としては、例えば、円柱型や角柱型等のものを使用できる。また、窪み105の底部に散布された微粒子との接触性と各微粒子に付与する磁力の均一性を確保するため、磁石11の先端部の断面積は、0.1cm以上であることが好ましい。
<磁石11の種類>
磁石11の種類としては、永久磁石と電磁石のいずれでもよいが、永久磁石であれば、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石等を使用することができる。このうち、ネオジウム磁石やサマリウムコバルト磁石は、分析対象の微粒子として、強磁性材料だけでなく比較的強い常磁性材料まで含む場合に有効であり、フェライト磁石は、分析対象の微粒子として強常磁性材料のみを含む場合に有効である。また、磁石11として電磁石を使用した場合には、永久磁石では実現できない磁力を用いて、比較的弱い常磁性材料までを分離対象の微粒子として含む場合に電磁石を使用することが有効である。
また、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を特定するために本実施形態に係る磁力選別方法を利用する場合には、磁石11は、スペーサ13の微粒子群側の面における平均磁束密度が0.1T以上0.4T以下であることが好ましい。すなわち、製鉄プラント由来の降下煤塵の代表的煤塵種の1つである鉄系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵を磁石11に吸着させるための条件として、降下煤塵に磁力を付与する際の磁束密度が、少なくともスペーサ13の微粒子群側の面において0.1T以上であることが好適である。一方、降下煤塵に付与する磁力が強力過ぎても、代表的煤塵種の1つである石炭系煤塵中に微量に含まれる鉄分によって、石炭系煤塵が鉄系煤塵等と同様に磁石に吸着してしまう場合があるため、このような現象を避けるための条件として、降下煤塵に磁力を付与する際の磁束密度が、スペーサ13の微粒子群側の面において0.4T以下であることが好適である。
以上のような好適な範囲の磁束密度の範囲を実現できる磁石11の具体例としては、例えば、磁束密度が0.1T以上0.4T以下の範囲を実現できる電磁石がある。また、永久磁石では、磁束密度が0.1T以上0.4T以下の範囲の磁力を有するネオジウム磁石やサマリウムコバルト磁石等を使用できる。なお、代表的な永久磁石であるフェライト磁石は、磁力が弱いので、製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種の特定の際の磁力分離で使用する磁石としては好適でない。
<スペーサ13>
スペーサ13の主な役割としては、スペーサ13の表面における磁力を均一化する役割がある。例えば、リング状の磁石を用いる場合、リング中央の孔に対応する、磁石11の中心部の近傍における磁力は一般に小さい一方で、磁石11の周縁部の近傍の磁力は一般に大きいため、水平面内における磁束密度の勾配が大きくなり、着磁性微粒子を磁石11に均一に付着させることが困難になる。これに対して、窪み105の底面に散布された微粒子群が、磁石11から一定距離下方に離れると、磁石11の中心部の下方の磁力は水平面上の周囲と同程度の磁力になる。特に、磁石11として、先端部の断面積が小さな細い磁石を使用する場合には、磁石11の先端から離れるに従って水平面内における磁束密度の勾配が小さくなり、磁力が均一化する。従って、磁石11の先端にスペーサ13を設けることにより、微粒子が必要以上に磁石11の先端に近接しないようにすることができる。
このようなスペーサ13の材質としては、非着磁性のものであれば特に限定はされないが、例えば、プラスチック板(ゴムや塩化ビニル等の弾性を有する合成樹脂)やガラス板等を使用することができる。また、スペーサ15の形状も特に限定はされないが、例えば、略リング状の形状のものを使用することができる。また、スペーサ13の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると上述した水平面内における磁力を均一化する効果が十分に得られなくなるおそれがあり、厚すぎるとスペーサ13の下面での磁力が弱くなることから、0.3mm〜3mm程度であることが好ましい。
また、本実施形態では、スペーサ13として、固定式のスペーサと着脱式のスペーサの2種類を使用してもよい。この場合、例えば、固定式のスペーサとしては、プラスチック板(ゴムや塩化ビニル等の弾性を有する合成樹脂)を使用し、着脱式のスペーサとしては、ガラス板を使用することができる。また、各スペーサの固定方法としては、例えば、固定式のスペーサを磁石11の先端部に接着固定し、着脱式のスペーサを真空ポンプ等による吸引力により固定式のスペーサの下面に吸着固定させてもよい。
(第4の工程)
次に、第4の工程では、図3および図1(b),(c)に示すように、磁石11を窪み105の底面(マイクロウェルを組み立て型とする場合には、後述する非着磁性微粒子用基板210)から離隔させ、スペーサ13に付着した着磁性微粒子Pmをマイクロウェル100の外部の基板(着磁性粒子用基板10)上に載置する(S107)。ここで、磁石11を窪み105の底面から離隔させる際、スペーサ13を磁石11の先端に装着したままの状態で、磁石11を窪み105の上方に引き上げる。このとき、窪み105の底面に残留した微粒子が、非着磁性微粒子Pnのサンプルである(図1(b)を参照)。また、着磁性微粒子Pmを着磁性微粒子用基板10上に載置する際には、着磁性微粒子Pmが吸着した磁石11を着磁性微粒子用基板10に向けて下降させ、着磁性微粒子Pmと着磁性微粒子用基板10とを接触させればよい。
(第5の工程)
次に、第5の工程では、図3および図1(c)に示すように、磁石11を着磁性粒子用基板10から離隔させ、少なくとも着磁性微粒子Pmを着磁性粒子用基板10上に留置する(S109)。すなわち、この第5の工程では、磁石11を着磁性微粒子Pmから引き離す。具体的に、磁石11がネオジウム磁石等の永久磁石の場合には、スペーサ13を基板2上に固定し、磁石11をスペーサ13から離脱させて磁石11のみを引き上げ、スペーサ13の下に着磁性微粒子Pmを残留させる。こうすることで、着磁性微粒子Pmをスペーサ13の重力によって上方から押さえ、着磁性微粒子Pmを永久磁石である磁石11から引き離すことができる。スペーサ13を固定するためには、スペーサ13の重力を利用して、単に、スペーサ13を着磁性粒子用基板10上に静置すればよい。一方、磁石11が電磁石の場合には、電磁石に流していた電流を切り(消磁機能のある装置では、消磁電量を供給した後に電流を切り)、そのまま、磁石11を引き上げて、着磁性微粒子Pmを基板2上に残留させる。磁石11が電磁石の場合には、磁石11を引き上げる際に、スペーサ13を装着したまま引き上げてもよく、永久磁石の場合と同様に、磁石11をスペーサ13から離脱させて磁石11のみを引き上げてもよい。
(第6の工程)
本実施形態に係る磁力選別方法では、マイクロウェルとして、窪みの底面を構成する非着磁性微粒子用の基板を含む複数の部材からなる組み立て式の磁力選別用マイクロウェル(例えば、後述するマイクロウェル200)を用い、第5の工程の後に、図3および図4(a)に示すように、磁力選別用マイクロウェル200を解体して非着磁性粒子用基板210を取り出す第6の工程をさらに実施してもよい(S111)。このときの磁力選別用マイクロウェル200の解体方法としては、例えば、マイクロウェル200の各部品の締結方法がボルト締結の場合には、ボルトを緩めればよく、バンド締結の場合には、締結バンドを切断すればよい。
(第7の工程)
本実施形態に係る磁力選別方法では、第5の工程の後に、図3および図4(b)に示すように、非着磁性粒子用基板110を放置または加熱することにより、非着磁性粒子用基板110および非着磁性粒子Pnに付着している揮発性の液体Lを除去する第7の工程をさらに実施してもよい(S113)。この第7の工程を経た後は、非着磁性粒子用基板110上には、非着磁性粒子Pn(および、場合によってスペーサ13)のみが残留することとなる。
<揮発性の液体Lの除去方法>
揮発性の液体Lの除去方法としては、非着磁性粒子用基板110を放置することにより揮発性の液体Lを揮発除去させる方法も適用可能である。しかし、液体Lの揮発に時間がかかると後述するブリードが生じやすくなることから、本実施形態においては、第7の工程は、第6の工程と並行して、あるいは、第6の工程よりも前に行ってもよい。この場合、非着磁性粒子用基板110を加熱して、揮発性の液体Lを短時間で乾燥除去させることが好ましい。このときの非着磁性粒子用基板110の加熱には、例えば、ヒータを用いればよい。また、加熱温度は、ゴムの劣化を生じないようにするために、60℃程度までとすることが好ましい。
(分析対象について)
本実施形態に係る磁力選別方法の対象となる微粒子(検体)の第1の例としては、ステンレス鋼(SUS304等)製のボールミル等の破砕機で破砕することにより製造した高純度セラミックス粒が挙げられる。このセラミックス粒中には、通常、破砕作業時に破砕機から剥離するなどしてステンレス鋼粒を主体として不純物粒子が含まれる。また、例えば、ネオジウム磁石等の強力な磁石に対しては、SUS304等のステンレス鋼は着磁するが、セラミックス粒は着磁しない。従って、高純度セラミックス粒を分析対象とした場合には、磁力選別に用いる磁石として、ネオジウム磁石等を使用すれば、セラミックス粒と、当該セラミック粒中のステンレス鋼粒を主体とした不純物粒子とを磁力選別することができる。これを利用すれば、セラミックス粒中の不純物粒子の濃度の測定を行うことができる。
また、本実施形態に係る磁力選別方法の対象となる微粒子の第2の例としては、上述したように、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵がある。このような降下煤塵は、製鉄プラント構内に乗り入れる車両を汚損する等の問題があり、このような問題への対策が必要となる。そのためには、特定の地点で捕集された降下煤塵の発生源を特定する技術が必要であり、降下煤塵の発生源を特定するための手法として、捕集された降下煤塵の煤塵種を特定することが有力であると考えられる。
ここで、降下煤塵とは、大気中を浮遊する固体粒子のうち、大気中を平均的に沈降し得る比較的大径(概ねφ10μm以上)の粒子のことをいう。また、本発明における「煤塵種」とは、特に限定はされないが、上述した降下煤塵の発生源や構成成分等によって分類される煤塵の種類をいう。例えば、発生源によって分類する場合には、煤塵種は、鉄鉱石の原料ヤードから発生する鉄鉱石由来の煤塵、石炭の原料ヤードから発生する石炭由来の煤塵、高炉から発生する高炉スラグ由来の煤塵、転炉から発生する転炉スラグ由来の煤塵等に分類される。
このような分類によると、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種としては、主として、(1)主成分が炭素で共通する石炭やコークス等の石炭系煤塵や、(2)主成分が酸化鉄で共通する鉄鉱石と焼結鉱、酸化鉄粉(例えば、製鋼ダスト)等の鉄系煤塵や、(3)主成分が酸化ケイ素及び酸化カルシウムで共通し、かつ、溶融した原料から不純物を液体または固体として分離する点で工程が共通する高炉水砕スラグや高炉徐冷スラグ等の高炉スラグ系煤塵や、(4)主成分が酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化鉄で共通し、かつ、溶融した原料から不純物を液体または固体として分離する点で工程が共通する転炉スラグや溶銑予備処理スラグ等の製鋼スラグ系煤塵がある。現代の高炉法による製鉄プラントにおける降下煤塵となり得る煤塵種は、上述した石炭系煤塵、鉄系煤塵、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵でほぼ網羅することができる。
以上のような製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を特定するためには、異なる煤塵種ごとに分離する必要があるが、この分離の方法として、本発明の磁力選別装置や磁力選別方法が有効である。上述した4種類の煤塵のうち、鉄系煤塵や製鋼スラグ系煤塵は、強磁性または強い常磁性(例えば、0.1T〜0.4T程度の磁束密度を有する磁石に着磁する。)を有する微粒子である。本実施形態に係る磁力選別方法は、このような強磁性または強い常磁性を有する微粒子の磁力選別に適用することができ、本実施形態によれば、強磁性または強い常磁性を有する微粒子(着磁性微粒子)と、強磁性または強い常磁性を有しない微粒子(非着磁性微粒子)とを容易に選別することができる。従って、本実施形態に係る磁力選別方法を適用すれば、製鉄プラント由来の降下煤塵のうち、少なくとも、鉄系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵からなる微粒子群と、石炭系煤塵及び高炉スラグ系煤塵からなる微粒子群とに分離することができる。
なお、一般に、高炉スラグ系煤塵や製鋼スラグ系煤塵は白色系の明度の高い粒子(明色粒子)であり、石炭系煤塵や鉄系煤塵は黒色系の明度の低い粒子(暗色粒子)であることから、低倍率の光学顕微鏡を用いて撮影した画像に画像処理を施し、個々の煤塵粒子の明度の高低を識別することにより、鉄系煤塵と製鋼スラグ系煤塵との判別や、石炭系煤塵と高炉スラグ系煤塵との判別をすることができる。
ただし、本実施形態に係る磁力選別方法の対象となる微粒子としては、以上に挙げた2つの例には限られず、所定の磁石を用いて、この磁石に着磁する微粒子と着磁しない微粒子とに分離される微粒子群であれば、任意の微粒子群が対象となり得る。
[本発明の好適な実施形態に係る磁力選別用マイクロウェル]
以上、本発明に係る磁力選別方法について説明したが、続いて、図5を参照しながら、上述した第6及び第7の工程を含む微粒子の磁力選別方法に用いる組み立て式の磁力選別用マイクロウェルについて詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る組み立て式の磁力選別用マイクロウェルの全体構成を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は、(a)に示した磁力選別用マイクロウェルのA−A断面図である。
本実施形態に係る組み立て式磁力選別用マイクロウェル200は、揮発性の液体に浸漬された微粒子群を、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とに選別する磁力選別用のマイクロウェルである。具体的には、磁力選別用マイクロウェル200は、図5に示すように、非着磁性微粒子用基板210と、支持板220と、ガスケット230と、押さえ板240と、締結バンド250と、を主に備える。
(非着磁性微粒子用基板210)
非着磁性微粒子用基板210は、本実施形態に係る第1の基板の一例である。非着磁性微粒子用基板210の材質としては、透明かつ非着磁性の材料であれば特に限定されないが、硬質で平滑であり、かつ、薬液による溶出が少ない物質が好適である。具体的には、非着磁性微粒子用基板210の材質として、ガラス、アクリル、塩化ビニル等の硬質の合成樹脂を用いることができ、また、粒子分析時に裏面からの観察を必要としない場合には不透明な材料、例えば、非金属材料を加工したものを用いてもよい。この中でも、透明、非着磁性、硬質、平坦で平滑な板状への加工しやすさ、薬液による溶出の少なさ等の観点から、非着磁性微粒子用基板210は、ガラス製のものが最も好ましい。
また、非着磁性微粒子用基板210の形状は、平板状の形状を有していれば特に限定はされないが、例えば、水平面における形状としては、長方形、円、楕円、多角形等とすることができる。また、非着磁性微粒子用基板210の厚みは、1mm以上20mm以下であることが好ましい。非着磁性微粒子用基板210の厚みが1mm未満の場合には、分析用検体(微粒子群)を保持するための剛性を確保できなくなる可能性がある。一方、非着磁性微粒子用基板210がガラス製等であった場合には、色味がついて視認されるため、非着磁性微粒子用基板210の厚みが極端に厚い場合には、磁力選別後の画像処理計測等において粒子の色を誤認するおそれがあるため、非着磁性微粒子用基板210の厚みは20mm以下であることが好ましい。
(支持板220)
支持板220は、非着磁性微粒子用基板210を下方(微粒子が載置される面と反対側)から支持する。支持板220の材質は、非着磁性の材料でなければならず、強靭で永久歪みの小さい材料が好ましい。また、支持板220の材質は、少なくとも非着磁性微粒子用基板210に接する側の表面は、平坦で平滑であり、表面から非着磁性微粒子用基板210を汚染(錆等の剥離による汚染)しにくい材料であることが好ましい。以上の観点から、非着磁性微粒子用基板210の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、黄銅、青銅、チタン等を用いることができる。
また、支持板220の形状は、平板状の形状を有していれば特に限定はされないが、例えば、水平面における形状としては、長方形、円、楕円、多角形等とすることができる。支持板220の大きさとしては、水平面の面積が小さいほど、支持板220の剛性を確保しやすいため好ましい。ただし、複数の試料(微粒子群)を同時に磁力選別するような場合には、水平面の面積が大きな板を用いることができる。以上のような観点から、具体的には、支持板220の水平面の面積は、1cm以上1m以下が好ましい。さらに、支持板220の厚みは、支持板220の剛性を確保する観点から1mm以上であることが好ましいが、支持板220が極端に厚すぎると、磁力選別用マイクロウェル200が大型化するとともに組み立てや解体が簡易ではなくなる。そのため、支持板220の厚みは、100mm以下であることが好ましい。
(ガスケット230)
ガスケット230は、ゴムまたはエラストマーといった弾性体で形成されている。具体的には、本実施形態では、ガスケット230の材質として、微粒子群に添加される揮発性の液体に溶解せず、かつ、デュロメータで測定した硬度がA30以上A65以下である弾性体を使用する。
ここで、本実施形態において、「揮発性の液体に溶解しない」とは、ガスケット230を形成する弾性体が、揮発性の液体に全く溶解してはいけないわけではなく、軟化剤等の溶出成分が、その後の分析(例えば、粒子画像処理計測)に悪影響(油が主体の溶出成分等により粒子の色が判別できなくなる等)を与えない範囲の溶解度であれば問題はない。なお、本実施形態における揮発性の液体としては、例えば、メタノール、エタノールおよびプロパノールからなる群より選択された少なくとも1種以上のアルコール(低級アルコール)を使用することができる。
また、本実施形態に係る弾性体の硬度としては、JIS K6253で規定されているデュロメータ硬さを用いる。このデュロメータ硬さの測定において用いるデュロメータとしては、中硬さ(A20〜A90)用のタイプAのデュロメータを用いればよい。
<ガスケット230の材質>
以下、図6を参照しながら、ガスケット230の材質として好適な材料について詳細に説明する。図6は、種々のゴムやエラストマーの硬度(デュロメータ硬さ)とSP値(溶解度パラメータ)との関係の一例を示すグラフである。なお、図6には、参考として、本実施形態に係る揮発性の液体の一例として、エタノールのSP値を示している。
図6には、各種のゴムやエラストマーが記載されているが、このうち、耐ブリード性の観点からは、低級アルコールのSP値が高いことを考慮すると、SP値の小さな材料が低級アルコールに対する耐ブリード性に優れる。すなわち、低級アルコールのSP値との差が大きなSP値を有する材料であれば、低級アルコールへの溶解度が小さいことから、弾性体中の軟化剤等の成分のブリードを抑制できる可能性がある。このようなSP値の低い材料としては、図6に示した材料では、例えば、ブチルゴム、EPM、EPDM、シリコンゴム、フッ素ゴム等が存在する。
しかし、これらの材料のうち、シリコンゴムは、低級アルコールへの溶解度は小さいものの、高分子中の架橋構造が破壊され易く劣化が激しく、結果的にブリード性に劣ることになるため好適ではない。また、フッ素ゴムは、単元系のものでは低級アルコールに対する耐薬品性が低いため好適ではない。
また、ブチルゴム、EPM,EPDMであっても、発泡性の素材は、たとえ独立気泡型のものであっても好適でない。発泡性の素材中の気泡壁は、磁力選別用マイクロウェル200の各部品を締結する際の締結力や、磁力選別時の治具との接触によって損傷しやすく、シール性及びブリード性が良好ではないためである。
また、シール性の観点からは、弾性係数の低い材料が弱い締結力でもシール性を確保しやすく、かつ、一般に大変形しても端面に亀裂を生じにくいため好適である。ここで、締結力は、例えば、締結方法としてバンド締結を採用した場合の換算で3kgf以上30kgf以下が好ましい。この締結力の範囲であれば、手動、または、小型の電動工具等で簡易に締結できるためである。また、上述のように、締結力が強すぎると、ガスケット230を損傷させてブリード性を悪化させるが、後述のように、この範囲の締結力であれば、シール性と耐ブリード性を両立できるガスケット230の材質が存在するためである。
上記の範囲の締結力で低級アルコールのシール性を満足させるためのガスケット230の材質の弾性条件は、硬度換算でA65以下である。弾性体の硬度がA65を超えると、弾性体の変形量が小さくなるのでシール性が低下し、逆にシール性を確保しようとすると締結力が大きくなり過ぎるため、好ましくない。また、硬度が低いほどシール性が向上するが、低硬度の弾性体を得るためには、一般に、大量の軟化剤(油脂等)を弾性体材料に混和する必要がある。そのため、軟化剤が低級アルコール等の揮発性の液体に溶出しやすくなり、ブリード性が悪化する。このような観点から、ガスケット230の材質としては、硬度換算でA30以上のものを使用する。例えば、二元系以上のフッ素ゴムには、低級アルコールに対する耐性の高いものも存在するが、硬度が一般にA80以上と高くなるため、シール性の観点から好適でない。これに対して、フッ素ゴムの硬度を低下させるためには、多量の軟化剤(油脂等)をゴム材料中に混入しなければならないので、低硬度のフッ素ゴムは、耐ブリード性が悪化し、ガスケット230の材質としては好適でない。
以上のような検討の結果、ブチルゴム、EPM、および、EPDMが、SP値が低く、低級アルコール等の揮発性の液体に対する耐ブリード性に優れるとともに、硬度30A以上65A以下の条件を満たし、優れたシール性と優れた耐ブリード性を両立できることが判明した。すなわち、ガスケット230の材質としては、ブチルゴム、EPMまたはEPDMのいずれか1種が特に好ましい。
なお、EPMとEPDMはともに、エチレンプロピレンゴムと呼ばれるエチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(EPDMは、さらに第3成分としてジエンを含む三元共重合体)であり、詳細はJIS K6397に規定されている。
<ガスケット230の形状および寸法>
また、ガスケット230には、貫通孔231が形成されている。この貫通孔231は、締結されたときに磁力選別用マイクロウェル200に形成される窪み(ウェル)に相当する部分となる。この貫通孔231の形成方法としては、例えば、外形が非着磁性粒子用基板210と略同一形状の弾性体の板に、窪みに相当する部分を穿孔する方法が挙げられる。また、環状の弾性体の板をガスケット230として用いて、環状の板の中心の開口部(貫通孔231に相当)と中心の開口部内で露出する非着磁性粒子用基板210の表面とで窪みを構成するようにしてもよい。
なお、貫通孔231の数は、1つであっても複数であってもよい。貫通孔231が複数あれば、窪みが複数形成され、同時に複数の試料の磁力選別を行うことができ、処理の生産性が高い。
貫通孔231の形状としては、磁力選別に用いる磁石およびスペーサの窪み内への挿出入が容易であることから、略円形であることが好ましい。ただし、貫通孔231の加工上の便宜等の理由があれば、貫通孔231の形状を、正多角形、長方形、楕円等としてもよい。
また、ガスケット230の厚みは、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。ガスケット230の厚みが0.1mm未満であるとシール性を確保することができないおそれがある。一方、ガスケット230の厚みが10mmを超えると、磁力選別に用いる磁石やスペーサの窪み内への挿出入が困難になる可能性がある。
(押さえ板240)
押さえ板240の材質としては、支持板220に用いることのできる材質が好ましい。すなわち、押さえ板240の材質は、非着磁性の材料でなければならず、強靭で永久歪みの小さい材料が好ましい。また、押さえ板240の材質は、少なくともガスケット230に接する側の表面は、平坦で平滑であり、表面からガスケット230を汚染(錆等の剥離による汚染)しにくい材料であることが好ましい。以上の観点から、押さえ板240の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、黄銅、青銅、チタン等を用いることができる。
また、押さえ板240には、貫通孔241が形成されている。この貫通孔241は、締結されたときに、ガスケット230の貫通孔231とともに、磁力選別用マイクロウェル200に形成される窪み(ウェル)に相当する部分となる。この貫通孔241の形成方法としては、例えば、外形が支持板220と略同一形状の板に、窪みに相当する部分を穿孔する方法が挙げられる。
なお、貫通孔241の数は、1つであっても複数であってもよい。貫通孔241が複数あれば、窪みが複数形成され、同時に複数の試料の磁力選別を行うことができ、処理の生産性が高い。ただし、処理の生産性を高める観点からは、締結時において、貫通孔231と貫通孔241とが連通される位置に、貫通孔231および貫通孔241が形成されることが好ましい。
貫通孔241の形状としては、ガスケット230の貫通孔231と略同一形状であることが好ましく、磁力選別に用いる磁石およびスペーサの窪み内への挿出入が容易であり、また、ガスケット230のシール性の点でも好適であることから、略円形であることが好ましい。ただし、貫通孔241の加工上の便宜等の理由があれば、貫通孔241の形状を、正多角形、長方形、楕円等としてもよい。
また、押さえ板240の厚みは、支持板220の厚みと同程度か、あるいは、貫通孔241を有している分、支持板220よりも剛性が低下しやすいため、支持板220の厚みよりも厚い方が好ましい。
(窪み)
また、本実施形態に係る磁力選別用マイクロウェル200では、上述した支持板220と、非着磁性微粒子用基板210と、ガスケット230と、押さえ板240とが下方から順に積み重ねられて締結された状態で、ガスケット230の貫通孔231と押さえ板240の貫通孔241とにより、揮発性の液体を保持するための窪み205が形成される。この窪みの形状や寸法は、貫通孔231および貫通孔241の形状および寸法や、ガスケット230および押さえ板240の寸法等により決まる。
この窪み205の底面は、非着磁性微粒子用基板210の表面のうち、貫通孔231および貫通孔241により開放されている部分として構成される。この窪み205に、微粒子群を含む揮発性の液体を注入することにより、磁力選別後に、非着磁性微粒子がそのまま窪み205の底面、すなわち、非着磁性粒子用基板210の表面に留置されることになる。従って、磁力選別後に磁力選別用マイクロウェル200を解体することにより、非着磁性微粒子が留置された非着磁性粒子用基板210をそのまま、以後の分析(例えば、粒子画像処理計測等)に使用することができる。
(締結方法)
また、支持板220と、非着磁性微粒子用基板210と、ガスケット230と、押さえ板240とを締結する方法としては特に限定されないが、例えば、以下のようなボルト締結やバンド締結等が挙げられる。ただし、上述したように、締結力が強すぎると、マイクロウェルが大型化するとともに組み立てや解体が簡易ではなくなるという問題や、ガスケット230として使用した弾性体の変形量が大きくなるため、弾性体の端面における微小な亀裂が発生しやすくなる、といった問題がある。従って、本実施形態における締結方法としては、適度な締結力を付与することができるバンド締結の方が好ましい。以下、それぞれの締結方法について説明する。
<ボルト締結>
ボルト締結の場合は、例えば、支持板220および押さえ板240を非着磁性粒子用基板210およびガスケット230よりも一周り大きく設定し、この支持板220および押さえ板240の周囲の余白部分に、ボルト孔を複数穿孔して支持板220と押さえ板240とを通しボルトとナットで締結する。この方法は、確実にシールすることができるが、マイクロウェルの構造が複雑となり、組み立てや解体が容易ではない。
<バンド締結>
バンド締結の場合は、ナイロン等の合成樹脂製の締結バンド250で支持板220、非着磁性粒子用基板210、ガスケット230および押さえ板240をこの順で積層したものの外周部を締結する。締結バンド250としては、市販の電線用ケーブルタイを用いてもよい。
また、締結場所は、締結後に形成される窪み205を塞がないように、貫通孔231や貫通孔241が形成されている箇所を避けた位置、例えば、磁力選別用マイクロウェル200の両端部や、貫通孔231と貫通孔241との間の任意の位置とする。
また、締結方法については、簡易に締結する方法として、電線用ケーブルタイを用いるか、溶着方式の(半)自動締結機を用いることが好ましい。上述のように、極端に強い締結力は必要ないので、自動締結機を用いる場合でも、例えば、締結力が10kgf程度の卓上型のような小規模なものが好適である。これにより、上述した締結力の範囲(3kgf以上30kgf以下)とすることができる。一方、解体方法としては、締結バンド250を刃物等で切断すればよい。このように、本実施形態に係る磁力選別用マイクロウェル200は、バンド締結することにより、組み立ておよび解体が簡易であり、構造も単純なものとすることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
次に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1として、SUS製のボールミルで破砕して製造したアルミナ微粒子中の不純物粒子の分離(磁力選別)を行い、各種分析を行った。
<磁力選別装置>
1)磁石、スペーサ
着磁性微粒子と非着磁性微粒子とを磁力選別するための磁力選別装置としては、磁石の先端に着脱式のスペーサが装着されたものを用いた。磁石としては、直径25mmの円柱型の電磁石を使用した。この磁石によるスペーサ(着脱式のスペーサ)の下面における磁束密度は0.5Tであった。また、スペーサとしては、直径30mmで厚み2mmのガラス製の円形板を使用し、これを磁石の下面に、真空ポンプにより真空引きしたときの吸引力を利用して吸着させて固定した。
2)磁力選別用マイクロウェル
磁力選別用マイクロウェルとしては、一体型のマイクロウェルを使用し、このマイクロウェルは、ガラス製で、円形断面の直径が40mm、ウェル(窪み)の底部は平坦な形状で、ウェルの数は1個であった。
3)着磁性粒子用基板
着磁性粒子用基板としては、60mm角で厚み3mmのガラス製の板を使用した。
<試料>
分析用の試料としては、SUS304製ボールミルで粉砕した高純度アルミナ粒子1mgを使用した。このアルミナ粒子の最大粒径は50μmであった。
<磁力選別方法>
次に、上述した実施形態に係る磁力選別方法における第3〜第5の工程を実施して(図1、図3及び図4を参照)、着磁性微粒子と非着磁性微粒子とに分離した。なお、揮発性の液体としては、エタノール0.5mlを用いた。
<粒子画像処理計測>
次に、市販の三眼式実体顕微鏡(対物レンズ倍率:0.5倍)に、市販のリング状光源(白色光)をレンズ鏡筒に、市販のモノクロディジタルカメラ(CCD600万画素、画素寸法は3μm角)をカメラ装着口に、それぞれ装着した。次いで、顕微鏡のステージに、着磁性粒子のサンプルのみを載置し、所定の照明条件、カメラの絞り及び露出条件として撮影し、着磁性粒子の撮像画像を得た。
このとき、顕微鏡の倍率は、測定対象の粒子の実寸法がカメラのCCD素子上で同一の寸法に結像するように調整した。また、顕微鏡で認識する対象の粒子は、アルミナ粒子が粗大であることから、φ10μm以上の大きさの粒子とした。なお、本実施例において、当該粒子の大きさは、CCDの9画素以上に対応するものである。
上述したようにして得られた着磁性粒子の撮像画像に対し、市販の粒子画像処理ソフトであるIMAGRPRO PLUS VER.5を用いて粒子画像処理計測を行った。このとき、計測の対象としては、各粒子の中心位置、各粒子の円等価直径及び各粒子の平均明度(粒子として認識される画素領域に存在する各画素の明度の平均値)とした。
具体的には、予め定めたおいた明度しきい値T1を用いて、この明度しきい値T1未満の明度である画素領域を粒子が存在する領域として特定し、当該画素領域に存在する各画素の位置等に基づいて、着磁性粒子の撮像画像中に存在する各粒子の中心位置、円等価直径および体積を算出し、算出結果を記録した。
以上の操作の結果、磁力選別の対象粒子全体に対する体積比で、0.8%相当の粒子が着磁性粒子であることが判明した。この着磁性粒子の試料をさらに、ICP発光分析装置で成分分析した結果、主成分は、Fe、Cr、Niであり、ボールミルからの剥離粒が不純物の主成分であることがわかった。
この結果から、本発明に係る磁力選別方法を用いれば、高純度アルミナ粒子中の不純物を、本発明に係る磁力選別方法により効率的に分離できることがわかった。
(実施例2)
実施例2として、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種ごとの分離(磁力選別)を行い、各種分析を行った。
<磁力選別装置>
1)磁石、スペーサ
着磁性微粒子と非着磁性微粒子とを磁力選別するための磁力選別装置としては、磁石の先端に固定式のスペーサと着脱式のスペーサとが装着されたものを用いた。磁石としては、外径13mm、内径4mm、高さ10mmの円筒型のネオジウム磁石を使用した。この磁石によるスペーサ(着脱式のスペーサ)の下面における磁束密度は0.4Tであった。また、固定式のスペーサとしては、外径15mm、内径10mm、厚み2mmのブチルゴム製のスペーサを使用し、これを磁石の先端部に接着して固定した。また、着脱式のスペーサとしては、直径15mmで厚み0.2mmのガラス製のスペーサを使用し、これを固定式のスペーサの下面に、真空ポンプにより真空引きしたときの吸引力を利用して吸着させて固定した。
2)磁力選別用マイクロウェル
磁力選別用マイクロウェルとしては、組み立て型のものを使用した。各部品については、支持板としては、40mm角で厚み5mmのジュラルミン製の板を使用し、非着磁粒子用基板としては、40mm角で厚み3mmのフロートガラス製の板を使用し、ガスケットとしては、外形40mm角で厚み2mmで、かつ、中心に直径20mmの貫通孔が形成されたブチルゴム製のものを使用し、押さえ板としては、外形40mm角で厚み5mmで、かつ、中心に直径20mmの貫通孔が形成されたジュラルミン製のものを使用した。また、これらの部品の締結方法としては、長さ250mmのナイロン製ケーブルタイで、マイクロウェルの両端部2箇所を手動工具(市販のケーブルタイ締結工具)で締結した(締結力は10kgf)。
3)着磁性粒子用基板
着磁性粒子用基板としては、非着磁性粒子用基板と同一の形状・寸法・材質のものを使用した。
<試料の捕集方法>
まず、分析用の試料として、高炉法による製鉄プラントの敷地内で降下煤塵を市販のデポジットゲージで1週間捕集し、100mgの降下煤塵(平均直径20μm)を得た。この降下煤塵を屋内で3日間自然乾燥した後、降下煤塵の全量のうちの300μg(最大粒子径:150μm)を0.2mlのエタノール中に懸濁させ、マイクロピペットで懸濁溶液の全てを基板上に滴下した。
<磁力選別方法>
次に、上述した実施形態に係る磁力選別方法における第3〜第7の工程を実施して(図4〜図6を参照)、着磁性微粒子と非着磁性微粒子とに分離した。なお、第6の工程におけるマイクロウェルの解体は、ケーブルタイを切断することにより行った。また、第7の工程における揮発性液体の除去方法としては、非着磁性粒子用基板を電熱ヒータで加熱し、10分で基板上に残留したエタノールを蒸発除去した。
<粒子画像処理計測>
次に、市販の三眼式実体顕微鏡(対物レンズ倍率:0.5倍)に、市販のリング状光源(白色光)をレンズ鏡筒に、市販のモノクロディジタルカメラ(CCD600万画素、画素寸法は3μm角)をカメラ装着口に、それぞれ装着した。次いで、顕微鏡のステージに、着磁性降下煤塵のサンプルと非着磁降下煤塵のサンプルをそれぞれ載置し、照明条件を同一にするとともに、カメラの絞り及び露出を同一条件として順に撮影し、着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像を得た。
このとき、顕微鏡の倍率は、測定対象の粒子の実寸法がカメラのCCD素子上で同一の寸法に結像するように調整した。また、顕微鏡で認識する対象の粒子は、降下煤塵であり粒子が粗大であることから、φ10μm以上の大きさの粒子とした。なお、本実施例において、当該粒子の大きさは、CCDの9画素以上に対応するものである。
上述したようにして得られた着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像に対し、市販の粒子画像処理ソフトであるIMAGRPRO PLUS VER.5を用いて粒子画像処理計測を行った。このとき、計測の対象としては、各粒子の中心位置、各粒子の円等価直径及び各粒子の平均明度(粒子として認識される画素領域に存在する各画素の明度の平均値)とした。
具体的には、予め定めたおいた明度しきい値T1を用いて、この明度しきい値T1未満の明度である画素領域を粒子が存在する領域として特定し、当該画素領域に存在する各画素の位置や明度に基づいて、着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像のそれぞれの画像中に存在する各粒子の中心位置、平均明度及び円等価直径を算出し、算出結果を記録した。
次に、上述のようにして算出した各粒子の平均明度を、予め定めておいた明度しきい値T2(>T1)と比較し、画像中の各粒子を暗色粒子と明色粒子とに区分した。
さらに、上述のようにして算出した各粒子の円等価直径を用いて、予め境界値を定めた粒度区分別に各粒子を分類し、粒度区分ごとの粒子構成率を明度区分(暗色粒子と明色粒子)ごとに求めた。
以上の操作の結果、捕集した降下煤塵全体の70体積%が着磁性微粒子であり、この着磁性微粒子は、主として鉄系降下煤塵であることが判明した。また、捕集した降下煤塵全体の30体積%が非着磁性微粒子であり、この非着磁性微粒子は、主として高炉スラグ系降下煤塵であることが判明した。
この結果から、本発明に係る磁力選別用マイクロウェルおよび磁力選別方法を用いれば、本実施例で試料として採取した製鉄プラント由来の降下煤塵は、鉄系降下煤塵(鉄鉱石や焼結鉱等)のものが大半であることがわかった。併せて、鉄系降下煤塵と高炉スラグ系降下煤塵(高炉水砕スラグや高炉徐冷スラグ等)の降下煤塵を、本発明に係る磁力選別装置および磁力選別方法により効率的に分離できることがわかった。
10 着磁性粒子用基板
11 磁石
13 スペーサ
100 磁力選別用マイクロウェル
105 窪み(ウェル)
110 非着磁性粒子用基板
120 支持板
130 ガスケット
140 押さえ板
150 締結バンド
Pm 着磁性微粒子
Pn 非着磁性微粒子
L 揮発性の液体

Claims (11)

  1. 平坦な底面を有する窪みが設けられたマイクロウェルの前記窪み内に、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とからなる微粒子群を含んだ揮発性の液体を保持し、前記微粒子群を前記着磁性微粒子と前記非着磁性微粒子とに選別する磁力選別方法であって、
    磁石の先端に装着された非磁性材料製で平板状のスペーサを前記揮発性の液体に浸漬させ、前記スペーサと前記窪みの底面との間に前記微粒子群を挟み込んだ状態で、前記窪み内の前記揮発性の液体の深さを、前記スペーサが前記揮発性の液体に浸漬され、かつ、前記磁石が前記揮発性の液体に浸漬されない所定深さとする条件で、前記着磁性微粒子を前記スペーサを介して前記磁石に吸着させる着磁工程と、
    前記磁石を前記マイクロウェルから離隔させ、前記スペーサを介して前記磁石に吸着された前記着磁性微粒子と、前記窪み内に残留した前記非着磁性微粒子とに分離する磁力分離工程と、
    を含むことを特徴とする、磁力選別方法。
  2. 前記着磁工程は、
    前記窪みの底部に前記微粒子群を散布する第1の工程と、
    前記揮発性の液体が前記窪み内で前記所定深さとなるように、前記揮発性の液体を前記窪みに注入する第2の工程と、
    前記スペーサを前記窪み内の前記揮発性の液体に浸漬させることにより前記磁石を前記微粒子群に接近させ、前記スペーサを介して前記着磁性微粒子を前記磁石に吸着させる第3の工程と、
    を含み、
    前記磁力分離工程は、
    前記磁石を前記窪みの底面から離隔させ、前記スペーサに付着した前記着磁性微粒子を前記マイクロウェルの外部の着磁性微粒子用の基板上に載置する第4の工程と、
    前記磁石を前記着磁性微粒子用の基板から離隔させ、少なくとも前記着磁性微粒子を前記着磁性微粒子用の基板上に留置する第5の工程と、
    を含むことを特徴とする、請求項1に記載の磁力選別方法。
  3. 前記マイクロウェルとして、前記窪みの底面を構成する非着磁性微粒子用の基板を含む複数の部材からなる組み立て式の磁力選別用マイクロウェルを用い、
    前記第5の工程の後に、
    前記磁力選別用マイクロウェルを解体して前記非着磁性微粒子用の基板を取り出す第6の工程と、
    前記非着磁性微粒子用の基板を放置または加熱することにより、前記揮発性の液体を除去する第7の工程と、
    をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の磁力選別方法。
  4. 前記第5の工程において、前記着磁性微粒子用の基板上で前記磁石を前記スペーサから離脱させ、前記スペーサに付着した前記着磁性微粒子を前記スペーサとともに前記非着磁性微粒子用の基板上に留置することを特徴とする、請求項2または3に記載の磁力選別方法。
  5. 前記第3の工程の際の前記スペーサの前記微粒子群側の面における平均磁束密度が0.1T以上0.4T以下であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の磁力選別方法。
  6. 前記微粒子群は、高炉法による製鉄プラントから発生した降下煤塵からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁力選別方法。
  7. 前記揮発性の液体は、メタノール、エタノールおよびプロパノールからなる群より選択された少なくとも1種以上のアルコールであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁力選別方法。
  8. 請求項3〜7のいずれか1項に記載の磁力選別方法に用いる磁力選別用マイクロウェルであって、
    透明かつ非着磁性の材料で形成された平板状の非着磁性微粒子用の基板と、
    前記非着磁性微粒子用の基板を支持し、非着磁性の材料で形成された平板状の支持板と、
    前記揮発性の液体に溶解せず、かつ、デュロメータで測定した硬度がA30以上A65以下である弾性体で形成され、1または複数の貫通孔を有するガスケットと、
    非着磁性の材料で形成され、1または複数の貫通孔を有する平板状の押さえ板と、
    を備え、
    前記支持板と、前記非着磁性微粒子用の基板と、前記ガスケットと、前記押さえ板とが下方から順に積み重ねられて締結された状態で、前記ガスケットの貫通孔と前記押さえ板の貫通孔とにより、前記揮発性の液体を保持するための窪みが形成されることを特徴とする、磁力選別用マイクロウェル。
  9. 前記弾性体は、ブチルゴム、EPMまたはEPDMのいずれか1種であることを特徴とする、請求項8に記載の磁力選別用マイクロウェル。
  10. 前記締結の方法が、バンド締結であることを特徴とする、請求項8または9に記載の磁力選別用マイクロウェル。
  11. 前記非着磁性微粒子用の基板は、ガラス板であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の磁力選別用マイクロウェル。

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