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JP5223045B2 - ジホスフィン化合物の製造方法、この製造方法により製造されるジホスフィン化合物及び中間生成物 - Google Patents
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JP5223045B2 - ジホスフィン化合物の製造方法、この製造方法により製造されるジホスフィン化合物及び中間生成物 - Google Patents

ジホスフィン化合物の製造方法、この製造方法により製造されるジホスフィン化合物及び中間生成物 Download PDF

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Description

本発明は、種々の遷移金属触媒反応などに有効であるジホスフィン化合物、ジホスフィン化合物の製造方法、この製造方法により製造されるジホスフィン化合物及び中間生成物に関する。
立体的に込み合った構造を有するホスフィン配位子が、クロスカップリングをはじめとする種々の遷移金属触媒反応に有効であることが報告されており、ホスフィン化合物の合成に関する研究は、現在、国内外で最も重要な課題として取り組まれている分野となっており(例えば、特許文献1〜3)、実用性の高い触媒的有機変換工程の開発に対する重要なアプローチとして興味が寄せられている。
特開2001−253889号公報 特開2003−292498号公報 特開2003−313194号公報
しかしながら、近接位(特に、隣接位)に二つのホスフィノ基を配し、更に込み合った立体構造を有するジホスフィン化合物の合成については、現在に至るまで有効とされる合成方法は全くといっていいほど提案されていない。
この理由は、ジホスフィン化合物の込み合った立体構造に起因するものであり、即ち、近接位に二つのホスフィノ基を段階的に導入すると、二段階目のホスフィノ基の導入において立体障害が生じ、これにより反応が著しく阻害されるのである。
そこで、本発明者は、このような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩と、求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応により中間生成物を合成した後に、脱ボロニウム剤で処理することを特徴とする本発明のジホスフィン化合物の製造方法(以下、本発明方法と称する。)を完成するに至ったのである。
即ち、本発明者は、ジホスフィン化合物を製造するにあたり、二つのホスフィノ基をボロニウム架橋で結んでなるビス(ホスフィン)ボロニウム塩をビルディングブロックとして用い、これと求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とをカップリング反応させれば、二段階目のホスフィン導入反応が分子内反応となり比較的スムーズに反応が進行するといった知見を得たのである。
又、カップリング反応後の中間生成物におけるボロニウム架橋部位は、比較的酸化されやすいホスフィノ基の保護基としても機能し、しかも、簡単な操作で容易に除去することができるとの知見も得たのである。
更に、本発明方法によれば、様々な構造のビス(ホスフィン)ボロニウム塩と求電子剤を組合せることにより、様々な構造のジホスフィン化合物を簡単に得ることができるといった知見も得たのである。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、簡単な合成工程で様々な構造のジホスフィン化合物を得ることができる新規なジホスフィン化合物の製造方法、この製造方法により製造されるジホスフィン化合物及び中間生成物を提供することを目的とする。
以上の課題を解決する手段である本発明方法は、ジホスフィン化合物を製造する方法であって、この製造方法は、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩と、求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応により中間生成物を合成した後に、脱ボロニウム剤で処理することを特徴とする。
以下、本発明方法について詳細に説明する。
本発明方法によって製造されるジホスフィン化合物とは、下記一般式(1)
Figure 0005223045
に記す構造を有する化合物、即ち、ある骨格部位Yに二つのホスフィノ基が導入された構造を有する化合物である。
このジホスフィン化合物における骨格部位Yは、後述する求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤の構造によって決定されるものであり、その骨格構造については特に限定されるものではない。
又、このジホスフィン化合物における二つのリン原子上の置換基R、R、R及びRは、後述するビス(ホスフィン)ボロニウム塩における二つのリン原子上の置換基によって決定されるものであり、その種類や構造については特に限定されるものではない。
そして、本発明方法においては、前記ジホスフィン化合物の合成用のビルディングブロックとしてビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いた点に最も大きな特徴を有する。
即ち、ある骨格部位に二つのホスフィノ基を求核的に導入する場合、求核剤として大きな置換基を有するホスフィンボランやホスフィンオキシドを用いると、強い立体障害がおきるため反応が進行し難く、特に、ジアルキルホスフィンなどのアルキル置換された嵩高いホスフィノ基の導入については、全く反応が進行せず、その合成は極めて困難とされていた。
この点につき、本発明方法においては、ジホスフィン化合物の合成用のビルディングブロックとしてビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いているから、立体障害の問題を回避することができるのであり、そのため、従来なし得なかった多くのジホスフィン化合物の合成を実現することができるのである。
ここで本発明において用いられるビス(ホスフィン)ボロニウム塩とは、下記の一般式(2)
Figure 0005223045
に記す構造を有する化合物、即ち、二つのホスフィノ基が、ボロニウム部位により架橋された構造を有する化合物である。
なお、このビス(ホスフィン)ボロニウム塩の合成方法としては、特に限定されるものではないが、本発明者はその好ましい合成方法として、対称型合成経路と非対称型合成経路の2通りの合成経路を見出している。
前者の対称型合成経路は、最も単純なビス(ホスフィン)ボロニウム塩の合成方法であり、ホスフィン、モノアルキルホスフィン、ジアルキルホスフィン、モノアリールホスフィン、ジアリールホスフィン、アルキルアリールホスフィンなどのリン原子上に各種の置換基を配する各種ホスフィン化合物について、ボラン中のボラン上の水素をハロゲン、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などでモノ置換したモノ置換ボラン0.5等量で処理するものである(下記の一般反応式(4)参照)。
Figure 0005223045
しかしながら、前記対称型合成経路によっては、二つのリン原子が異なる置換パターンを有する非対称型のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を合成することはできない。
ここで、二つのリン原子が異なる置換パターンを有する非対称型のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を合成する場合、最も単純な解決策としては、二種類のホスフィン化合物をモノ置換ボランに対して段階的に1当量ずつ加えていく手段などを挙げることもできるが、本発明者は、より反応を明確に行うために後者の非対称型合成経路を見出したのである。
即ち、この非対称型合成経路は、ホスフィン化合物をホウ素原子上の水素基がモノ置換されたホスフィンボランで処理することを特徴とするものであり(下記の一般反応式(5)参照。)、更に詳しくは、ホスフィン化合物を過剰量のボランに加えることによりホスフィンボランを合成した後に単離し、当該ホスフィンボラン中のボラン上の水素をハロゲン、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などでモノ置換したものを用いて、別のホスフィン化合物を処理するものである。
Figure 0005223045
ところで、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩におけるリン原子上の置換基であるR、R、R及びRは、アルキル基、アリール基、水素基及びアルコキシ基その他の所望の種類・構造の置換基を適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、一般的には、アルキル基、アリール基及びアルコキシ基などが好適に選択される。
具体的に例えば、前記アルキル基としては、本発明のジホスフィン化合物の立体的性質を様々に変換する目的から、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基、アダマンチル基及びベンジル基などが適宜選択される。
又、立体的性質に加えて電子的影響も考慮した場合には、前記アリール基としてフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、p−アニシル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基などの他、前記アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基及びフェノキシ基などが適宜選択される。
もっとも、リン原子上に不斉中心を有するP−キラルホスフィン類を用いたロジウム触媒不斉水素化やパラジウム触媒不斉炭素‐炭素結合形成反応などにおいて、高い反応性と立体選択性が得られることが確認されていることから、本発明方法において製造されるジホスフィン化合物についても、リン原子が不斉中心を有することが好ましい。
そこで、本発明方法においては、その製造されるジホスフィン化合物について少なくとも一方(所望によっては両方)のリン原子が不斉中心を有するように、ビルディングブロックであるビス(ホスフィン)ボロニウム塩における少なくとも一方のリン原子が不斉中心を有するように、前記R〜Rの置換基を選択することが好ましい。
又、モノホスフィンを配位子とした各種遷移金属触媒カップリング反応においては、配位子の嵩高さ、即ち立体障害により触媒活性種が反応中に安定な二量体を形成することを防ぐために反応が速やかに進行すると考えられていることから、本発明方法において製造されるジホスフィン化合物についても、リン原子の置換基R〜Rの内の少なくとも一つ(好ましくは、少なくともR及びRの二つ)につき、嵩高い構造を有するもの、例えば、
t‐ブチル基などの分枝構造を有するアルキル基や、シクロヘキシル基及びアダマンチル基などの環状構造を有するアルキル基、或いはアリール基などを選択することが好ましい。
そこで、本発明方法においては、ビルディングブロックであるビス(ホスフィン)ボロニウム塩におけるリン原子の置換基R〜Rの内の少なくとも一つ(好ましくは、少なくともR及びRの二つ)につき、嵩高い構造を有するもの、例えば、t‐ブチル基などの分枝構造を有するアルキル基や、シクロヘキシル基及びアダマンチル基などの環状構造を有するアルキル基、或いはアリール基などを選択することが好ましい
なお、前記ビス(ホスフィン)ボロニウム塩におけるカウンターイオン「X」の種類や構造については、特に限定されるものではなく、種々のアニオンを適宜選択して用いることができるが、一般的には、F、Cl、Br、Iなどのハロゲンアニオンや、CFSO 、BF 、PF 及びSbF などが好適に用いられる。
そして、本発明方法においては、まず、(好ましくは塩基条件下、)前記ビス(ホスフィン)ボロニウム塩と、求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応を行い、環状の中間生成物を得た後に、脱ボロニウム剤で処理する。(下記一般反応式(6)参照)
Figure 0005223045
即ち、前記ビス(ホスフィン)ボロニウム塩中には二つのリン原子が求核部位として存在しているため、求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応は比較的速やかに進行するのであり、又、片方のリン原子と求電子部位とのカップリングが成立した後のもう片方(2段階目)のカップリングは分子内反応となり、立体障害により反応が阻害されることを回避することができるのである。
なお、カップリング反応後の中間生成物におけるボロニウム架橋部位は、後述する簡単な処理により容易に除去することができる。
ここで、本発明方法においては、前記求電子部位を2点有する求電子剤の構造により、製造されるジホスフィン化合物における骨格部位Yが決定されるのであり、当該求電子剤を適宜選択することにより様々な骨格部位を有するジホスフィン化合物を製造することができる。
例えば、求電子剤として光学活性ジオール誘導体などを用いた場合は、骨格不斉を導入することが可能となるのである(下記一般反応式(7)参照)。
Figure 0005223045
又、例えば、プロキラルな1,2‐ジカルボニル化合物を求電子剤として用いた場合は、立体選択的なジホスフィン化合物の合成も可能となるのである(下記一般反応式(8)参照)。
Figure 0005223045
更に、芳香族求核置換反応及び遷移金属触媒によるカップリング反応により、オルトフェニレン架橋型ジホスフィンの合成も可能となるのである(下記一般反応式(9)参照)。
Figure 0005223045
即ち、本発明方法においては、様々な構造の求電子剤が活用可能であり、前記ビス(ホスフィン)ボロニウム塩との組合せによって、あらゆる構造を持つジホスフィン化合物を得ることができるのである。
従って、本発明方法において用いられる求電子剤としては、特に限定されるものではないのであるが、具体的に例えば、α,α´‐ジハロアルカン、α,α´‐ジ(スルホニルオキシ)アルカン、アルキレンスルファート、α,α´‐ジアルキル‐α,α´‐ジハロキシレン、α,α´‐ジアルキル‐α,α´‐ジ(スルホニルオキシ)キシレン、α,α´‐ジアルキル‐α,α´‐キシリレンスルファート、ジケトン、ジアルデヒド、ジイミン、α,α´‐ジケトキシレン、α,α´‐ジホルミルキシレン、α,α´‐ジイミノキシレン、1,2‐ジハロベンゼン、η6‐1,2‐ジハロベンゼン金属錯体、2,2´‐ジハロ‐1,1´‐ビフェニル又は2,2´‐ジ(スルホニルオキシ)‐1,1´‐ビフェニルなどを好適な例として挙げることができる。
なお、モノホスフィンを配位子とした各種遷移金属触媒カップリング反応においては、配位子の立体障害により触媒活性種が反応中に安定な二量体を形成することを防ぐために、反応が速やかに進行すると考えられていることに加えて、配位子同士の空間的距離が近づくことにより、還元的脱離が促進されたり、強制的に触媒活性種が配位不飽和となったりして、各素反応が加速されると予想されていることから、本発明方法において製造されるジホスフィン化合物についても近接位(特に、隣接位)に二つのホスフィノ基が配されるのが好ましい。
そこで、本発明方法においては、求電子剤として、近接位に二つの求電子部位が配されているものを用いることが好ましく、特に、隣接位に二つの求電子部位が配されている求電子剤を用いることが一層好ましいのである。
最終段階として、本発明方法においては、前記ビス(ホスフィン)ボロニウム塩と、前記求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応により合成した中間生成物を、脱ボロニウム剤で処理することによりジホスフィン化合物を得る。
中間生成物におけるボロニウム架橋部位は、酸化されやすいホスフィノ基の保護基として機能するのであるが、このボロニウム架橋部位は、フッ化物アニオンを始めとする種々の脱ボロニウム剤で処理することにより比較的容易に除去することができるのである。
なお、前記脱ボロニウム剤としては、前記中間生成物におけるボロニウム架橋部位を除去し得るものであれば特に限定されるものではなく、一般的には、フッ化水素、フッ化金属塩、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化ピリジニウム、三フッ化N,N´‐ジエチルアミノ硫黄、重フッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロスズ、ジフルオロトリメチルシリルトリス(ジメチルアミノ)硫黄、水素化リチウムアルミニウム、水素化ビス(メトキシエトキシ)アルミニウムから選ばれた少なくとも1種以上を好適な例として挙げることができる。
本発明のジホスフィン化合物は、前記本発明方法によって製造されることを特徴とするものであり、二つのリン原子が近接する特異な立体的・電子的特徴を有することから、従来の触媒系では実現が困難とされていた有機変換工程の高効率的実施の実現、例えば、ハロゲン化アルキルなどの不活性基質を利用した遷移金属触媒クロスカップリング反応における基質適合性の拡張とその効率化、光学活性ジホスフィン配位子を適用することによる反応のエナンチオ選択的実施、遷移金属触媒によるオレフィン類のヒドロホルミル化反応の高立体選択的実施などが期待されるものであり、その応用範囲は非常に広いのである。
本発明の中間生成物は、本発明方法において生成する中間生成物であって、即ち、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩と求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応により製造されることを特徴とし、下記一般式(3)
Figure 0005223045
に記される環状構造を有するものである。
この中間生成物は、ジホスフィン化合物における酸化されやすいホスフィノ基がボロニウム架橋部位により保護されたものであるが、このボロニウム架橋部位は、脱ボロニウム剤で処理することにより比較的容易に除去することができるのであり、従って、この中間生成物は、例えば、ジホスフィン化合物の安定的保存・流通のための一形態などとして利用されるのである。
本発明方法は、前記構成を有し、簡単な合成工程で様々な構造のジホスフィン化合物を得ることができる新規なジホスフィン化合物の製造方法である。
即ち、本発明においては、ジホスフィン化合物を製造するにあたり、二つのホスフィノ基をボロニウム架橋で結んでなるビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いているから、二段階目のホスフィン導入反応が分子内反応となり比較的スムーズに反応が進行するのである。
又、カップリング反応後の中間生成物におけるボロニウム架橋部位は、比較的酸化されやすいホスフィノ基の保護基としても機能し、しかも、簡単な操作で容易に除去することができるのである。
更に、本発明方法によれば、様々な構造のビス(ホスフィン)ボロニウム塩と求電子剤を組合せることにより、様々な構造のジホスフィン化合物を簡単に得ることができるのであり、その組合せによってジホスフィン化合物ライブラリーを構築することも可能となるのである。
本発明のジホスフィン化合物は、前記本発明方法によって製造されることを特徴とするものであり、二つのリン原子が近接する特異な立体的・電子的特徴を有することから、従来の触媒系では実現が困難とされていた有機変換工程の高効率的実施の実現、例えば、ハロゲン化アルキルなどの不活性基質を利用した遷移金属触媒クロスカップリング反応における基質適合性の拡張とその効率化、光学活性ジホスフィン配位子を適用することによる反応のエナンチオ選択的実施、遷移金属触媒によるオレフィン類のヒドロホルミル化反応の高立体選択的実施などが期待されるものであり、その応用範囲は非常に広いのである。
本発明の中間生成物は、前記本発明方法において生成する中間生成物であって、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩と求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応により製造されることを特徴とするものであり、前記本発明のジホスフィン化合物の安定的保存・流通のための一形態などとして利用することができるのである。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
図1は、ホスフィンボラン(脱プロトン化体)5を用いて、ある骨格部位Yを有する求電子剤3に二つのホスフィノ基を求核的に導入する従来法をイラスト的に示したものであり、即ち、求核剤としてホスフィンボラン5を用いると、二段階目のホスフィノ基の導入の際に強い立体障害がおきるため反応が進行し難く、特に、ジアルキルホスフィンなどのアルキル置換された嵩高いホスフィノ基の導入については、全く反応が進行しないのである。
一方、図2は、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩(脱プロトン化体)2を用いて、ある骨格部位Yを有する求電子剤3に二つのホスフィノ基を求核的に導入する本発明方法をイラスト的に示したものであり、即ち、ジホスフィン化合物1の合成用のビルディングブロックとしてビス(ホスフィン)ボロニウム塩2を用いているから、二段階目のホスフィン導入反応が分子内反応となって立体障害の問題が回避されるのであり、そのため、従来では合成し得なかった多くのジホスフィン化合物1の合成を実現することができるのである。
表1は、各種構造の求電子剤とビス(ホスフィン)ボロニウム塩とをカップリング反応させた場合に製造される本発明の中間生成物及びジホスフィン化合物の各種構造を例示列挙する表である。
Figure 0005223045
即ち、本発明方法においては、様々な構造のビス(ホスフィン)ボロニウム塩と求電子剤を組合せることにより、様々な構造のジホスフィン化合物を簡単に得ることができるのであり、その組合せによってジホスフィン化合物ライブラリーを構築することができるのである。
<臭化[1,2‐ビス(t‐ブチル(メチル)ホスフィノ)ベンゼン‐κP,P´]ボロニウム(中間生成物)の製造>
10mL枝付き試験管に臭化ビス(t‐ブチル(メチル)ホスフィン)ボロニウム50mg及び回転撹拌子を入れて窒素置換し、テトラヒドロフラン1mL及びN,N,N´,N´‐テトラメチルエチレンジアミン50μLを加えた。
これを撹拌しながら−78℃に冷却し、n‐ブチルリチウムの1.6Mn‐ヘキサン溶液209μLを滴下し、これを室温で1時間撹拌した後、再び−78℃に冷却してo‐ジフルオロベンゼントリカルボニルクロム42mgの2mLテトラヒドロフラン溶液を加えた。
その後、室温で3時間撹拌した後、水5mL及びジクロロメタン7mLを加えて激しく撹拌し、有機層と水層を分離した後、水層をジクロロメタン7mLで二回抽出し、硫酸ナトリウムを加えて得られた有機層を脱水した。
これをろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1→10/1→3/1)にて精製し、濃縮後に黄色の残渣を得た。
得られた残渣をクロロホルム約3mLに溶解し、24時間日光照射した後、得られた緑色懸濁液をセライトろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮することで、臭化[1,2‐ビス(t‐ブチル(メチル)ホスフィノ)ベンゼン−κP,P´]ボロニウム58.8mgを白色半固体(収率94%)として得た。
<臭化[1,2‐ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィノ)ベンゼン‐κP,P´]ボロニウム(中間生成物)の製造>
リービッヒ冷却管を取り付けた10mL枝付き試験管に臭化ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィン)ボロニウム154mgおよび回転撹拌子を入れて窒素置換し、テトラヒドロフラン1mLおよびN,N,N´,N´,N´´,N´´‐ヘキサメチルリン酸トリアミド330μLを加えた。
これを撹拌しながら‐78℃に冷却し、n‐ブチルリチウムの1.6Mn‐ヘキサン溶液510μLを滴下し、これを室温で1時間撹拌した後、再び−78℃に冷却してo−ジフルオロベンゼントリカルボニルクロム50mgの2mLテトラヒドロフラン溶液を加えた。
その後、60℃まで昇温して24時間撹拌した後、室温まで冷却し、水5mLおよびジクロロメタン7mLを加えて激しく撹拌し、有機層と水層を分離した後、水層をジクロロメタン7mLで二回抽出し、硫酸ナトリウムを加えて得られた有機層を脱水した。
これをろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1→10/1→3/1)にて精製し、臭化[1,2‐ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィノ)ベンゼン‐κP,P´]ボロニウム57.4mgを白色固体(収率62%)として得た。
<1,2‐ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィノ)ベンゼン(ビスホスフィン化合物)の製造>
リービッヒ冷却管を取り付けた10mL枝付き試験管に、前記実施例2で得られた臭化[1,2‐ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィノ)ベンゼン‐κP,P´]ボロニウム100mg及び回転撹拌子を入れて窒素置換し、テトラヒドロフラン3mLを加えた。
これを室温で撹拌しながら、テトラ(n‐ブチル)アンモニウムの1.0Mテトラヒドロフラン溶液1.14mLを滴下した。
その後、70℃で48時間撹拌した後、室温まで放冷し、減圧下で濃縮し、得られた残渣を窒素気流下、塩基性アルミナ約3gを通してろ過し、ジエチルエーテル約10mLで溶出した。
ろ液を減圧下で濃縮し、1,2‐ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィノ)ベンゼン41mgを無色固体(収率64%)として得た。
<臭化[1,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン‐κP,P´]ボロニウム(中間生成物)の製造>
10ml枝付き試験管に臭化ビス(ジフェニルホスフィン)ボロニウム93mg及び磁気撹拌子を入れて窒素置換し、テトラヒドロフラン2ml及びN,N,N´,N´‐テトラメチルエチレンジアミン60μlを加えた。
これを撹拌しながら−78℃に冷却し、n‐ブチルリチウムの1.6Mn‐ヘキサン溶液250μlを滴下し、更に室温で30分間撹拌した後、再び−78℃に冷却してo‐ジフルオロベンゼントリカルボニルクロム50mgの1mlテトラヒドロフラン溶液を加えた。
これを室温で90分間撹拌した後、1Mの塩酸4ml及びクロロホルム4mlを加えて激しく撹拌し、有機相と水相とを分離した後、有機相に飽和食塩水を4ml加え激しく攪拌し、再び有機相と水相とを分離し、得られた有機相を硫酸ナトリウムで脱水した。
これをろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、得られた残渣をジエチルエーテルで洗い、減圧乾燥後に黄色の固体を得た。
これをクロロホルム約3mlに溶解し、3時間光照射することにより得られた緑色懸濁液をセライトろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1→10/1→5/1)にて精製し、臭化[1,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン‐κP,P´]ボロニウム72mgを白色固体(収率65%)として得た。
図1は、ホスフィンボランを用いて、ある骨格部位に二つのホスフィノ基を求核的に導入する従来法を示す模式図である。 図2は、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いて、ある骨格部位に二つのホスフィノ基を求核的に導入する本発明方法を示す模式図である。
符号の説明
1 ジホスフィン化合物
2 ビス(ホスフィン)ボロニウム塩
3 求電子剤
4 中間生成物
5 ホスフィンボラン

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)
    【化1】
    Figure 0005223045
    の構造を有するジホスフィン化合物を製造する方法であって、この製造方法は、下記一般式(2)
    【化2】
    Figure 0005223045
    の構造を有するビス(ホスフィン)ボロニウム塩と、求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応により下記一般式(3)
    【化3】
    Figure 0005223045
    の構造を有する中間生成物を合成した後に、脱ボロニウム剤で処理することを特徴とするジホスフィン化合物の製造方法(前記一般式(1)〜(3)中、R 、R 、R 、R は、アルキル基、アリール基、水素基、又はアルコキシ基から選択されたいずれか一種の置換基であり、前記一般式(2)、(3)中、X は、F 、Cl 、Br 、I 、CF SO 、BF 、PF 又はSbF から選択されたいずれか一種のアニオンであり、前記一般式(1)、(3)中、Yは、前記求電子剤の構造によって決定される骨格部位である。)。
  2. ビス(ホスフィン)ボロニウム塩における少なくとも一方のリン原子が不斉中心を有する請求項1に記載のジホスフィン化合物の製造方法。
  3. ビス(ホスフィン)ボロニウム塩における置換基R、R、R及びRのうちの少なくとも一つが、分枝構造を有するアルキル基、環状構造を有するアルキル基、又はアリール基である請求項1又は2に記載のジホスフィン化合物の製造方法。
  4. ビス(ホスフィン)ボロニウム塩における置換基R 、R 、R 及びR のうちの少なくとも一つが、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基、アダマンチル基、ベンジル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、p−アニシル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、又はフェノキシ基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のジホスフィン化合物の製造方法。
  5. 求電子剤が、α,α´‐ジハロアルカン、α,α´‐ジ(スルホニルオキシ)アルカン、アルキレンスルファート、α,α´‐ジアルキル‐α,α´‐ジハロキシレン、α,α´‐ジアルキル‐α,α´‐ジ(スルホニルオキシ)キシレン、α,α´‐ジアルキル‐α,α´‐キシリレンスルファート、ジケトン、ジアルデヒド、ジイミン、α,α´‐ジケトキシレン、α,α´‐ジホルミルキシレン、α,α´‐ジイミノキシレン、1,2‐ジハロベンゼン、η6‐1,2‐ジハロベンゼン金属錯体、2,2´‐ジハロ‐1,1´‐ビフェニル又は2,2´‐ジ(スルホニルオキシ)‐1,1´‐ビフェニルから選ばれる請求項1ないしのいずれか1項に記載のジホスフィン化合物の製造方法。
  6. 脱ボロニウム剤が、フッ化水素、フッ化金属塩、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化ピリジニウム、三フッ化N,N´‐ジエチルアミノ硫黄、重フッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロスズ、ジフルオロトリメチルシリルトリス(ジメチルアミノ)硫黄、水素化リチウムアルミニウム、水素化ビス(メトキシエトキシ)アルミニウムから選ばれた少なくとも1種以上である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のジホスフィン化合物の製造方法。
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