JP5227566B2 - アクチュエータ - Google Patents
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Description
静電力により駆動されるMEMSアクチュエータ(特許文献1)は、例えば、可動梁に形成された可動電極と、基板上に固定された固定電極と、可動電極と固定電極の間に設けられた誘電膜からなる静電駆動機構を有している。この誘電膜には、通常の半導体プロセスで多用される窒化シリコンや酸化シリコンの他、各種の膜を使用することができるが、その膜の配向性に関しては配慮されていない。
可動電極と固定電極の間に駆動電圧を印加することにより、両電極を静電力により吸引し可動梁を動かし、駆動する。駆動時には、0.1μm〜1μm程度以下の厚さの誘電膜に数十ボルトの駆動電圧が印加されるため、誘電膜は高電界にさらされる。この高電界によって、駆動時間に応じて誘電膜界面や内部に電荷が注入・トラップされる。
この注入された電荷は、外部から印加される駆動電圧と同様の作用を静電駆動機構に及ぼすため、可動電極を固定電極に吸着する閾値電圧(プルイン電圧)や、開放するための閾値電圧(プルアウト電圧)を著しくシフトさせる。さらに著しい場合には、駆動電圧を0にしても電極間が固着したまま動作しなくなる、いわゆるスティッキングと呼ばれる現象が生じる。これらの駆動電圧のシフトやスティッキング現象は、実用上の大きな問題となる。
しかしながら、圧電駆動方式のMEMSアクチュエータを使用した可変キャパシタ素子においても、基板上に形成されたRF信号用固定電極と、可動梁に設けられた可動電極(圧電駆動用電極と兼用する場合もある)の間に可変キャパシタの容量を形成する誘電膜が形成され、通常の半導体プロセスで多用される窒化シリコンや酸化シリコンが使用されている。そして、RF信号用固定電極と可動電極が誘電膜を介して接触している時にこれら電極間に大振幅のRF電圧が印加されると、誘電膜への電荷の注入・トラップが生じ、著しい場合には圧電駆動電圧を0にしても、電極間が固着したまま動作しなくなるスティッキング現象が生じ、実用上の大きな問題となっている。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータの構成を例示する断面模式図である。
図1に表したように、本発明の第1の実施形態のアクチュエータ101は、基板110を有している。基板110の主面には下地膜130が設けられ、下地膜130の上には固定電極140が設けられ、さらに固定電極140の上に誘電膜150が設けられている。下地膜130は、例えば、アルミニウム/タンタル(Al/Ta)の非晶質合金や窒化アルミニウム(AlN)からなる膜を用いることができる。また、固定電極140としては、アルミニウムからなる膜を用いることができる。また、誘電膜150は、窒化アルミニウム膜からなり、配向半値全幅が小さくc軸配向したものを用いることができる。
図1に表したアクチュエータは、下地膜130として、アルミニウム/タンタルの非晶質合金または窒化アルミニウムからなる膜を用いており、その上に設けられた固定電極140の配向性を高くすることができる。具体的には、配向半値全幅が5度以下のc軸配向が得られる。また、固定電極140の上に設けられた誘電膜150も、配向性が高くなり、配向半値全幅が5度以下のc軸配向が得られる。
図2(a)に表したように、非晶質(アモルファス)の窒化シリコン(α−SiN)膜330には、トラップとなるダングリングボンドが多数存在する。このα−SiN膜を上電極310、下電極320に挟み電圧を印加すると、多量の電荷360が注入され、トラップされる。一方、図2(b)に表したように、多結晶(ポリ)の窒化アルミニウム(ポリAlN)膜340では、結晶サイズが比較的大きくなり、粒界が減少し、電荷360の注入量は減少する。さらに、図2(c)に表したように、高配向した窒化アルミニウム膜350の場合、さらに粒界が減少し、注入される電荷360の量を極めて少なくすることができる。このように、誘電膜への電荷の注入を減少させるためには、誘電膜中の粒界を減らし、トラップを減少させることが有効である。すなわち、誘電膜の配向半値全幅を小さくすることで電荷の注入が抑制できる。
この時、実用的な動作安定性を確保するためには、AlNからなる誘電膜150の配向半値全幅は、5度以下が望ましい。
なお、本願明細書において、「アクチュエータ」は、可動分部だけではなく、可動部分を含んで構成される各種のスイッチや各種のキャパシタも含む。
以下、実施例1により、詳細に説明する。
本発明の実施例1のアクチュエータは、図1に表した構造を有している。すなわち、基板110の主面に、下地膜130、固定電極140、誘電膜150が積層して設けられ、また、基板110の主面に対向して、基板110と間隙をあけて可動梁170が、アンカー部120によって保持されている。
まず、図3(a)に表すように、表面が絶縁性の基板110の主面に、LP‐CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により窒化シリコン膜を成膜し、アンカー部120を形成した。
また、基板110の主面の他の一部に、下地膜130、固定電極140、誘電膜150をこの順に形成した。すなわち、下地膜130として、Al/Taからなる厚さ30nmの非晶質合金膜をスパッタ法により成膜し、その後、固定電極140として、厚さ500nmのAl膜をスパッタ法により成膜し、その後、誘電膜150として、厚さ500nmのAlN膜をスパッタ法により成膜した。そして、上記のアンカー部120、下地膜130、固定電極140、誘電膜150の所定形状への成形には、リソグラフィーと反応性イオンエッチング(RIE: Reactive Ion Etching)を用いた。なお、上記の成膜及び成形の方法としては、上記で説明した方法に限らず、各種の方法を用いることができる。
このようにして、図1に表した構造のアクチュエータが作製された。
次に実施例2〜4について説明する。
実施例2〜4は、実施例1に対して、下地膜130としてAlNを用いたことが異なっており、その他の条件は実施例1と同じである。そして、実施例2〜4の下地膜130の厚さは、それぞれ、1000nm、500nm、200nmとした。これら実施例2〜4のアクチュエータは、下地膜130として厚さ200〜1000nmのAlN膜を使用することにより、高い配向性を持つ固定電極140及び誘電膜150を設けることができる。
図4は、本発明の実施例のアクチュエータの動作試験条件を例示する説明図である。
図4に表したように、動作試験の方法は以下である。
(1)まず、固定電極140と可動電極171(可動梁170)の間に徐々に電圧を印加し、静電容量−印加電圧特性を測定し(C−V測定)、可動梁170が誘電膜150に接触するプルイン電圧の初期値を測定する。
(2)その後、負荷として、15Vの駆動電圧を1000秒間印加し、駆動電圧を除去する。
(3)その後、再び電圧を徐々に印加し、C−V測定を行い、負荷試験後のプルイン電圧を測定する。
このようにして、負荷試験前後のプルイン電圧の変化(シフト量ΔV)を求めた。
図5は、本発明の実施例1〜4のアクチュエータの動作試験結果を示すグラフ図である。
図5に表したように、実施例1〜4のアクチュエータは、いずれも誘電膜150の配向半値全幅は5度以下であり、また、プルイン電圧のシフト量ΔVは0.5V以下であった。このように、実施例1〜4のアクチュエータは、動作安定性が優れていることが確かめられた。
(比較例1〜2)
比較例1のアクチュエータは、図1に表したアクチュエータにおいて、下地膜130として、厚さが100nmのAlNを用いたものである。また、比較例2は、下地膜を設けない構造である。
比較例1及び比較例2のアクチュエータの下地膜130の種類と厚さ、及び、固定電極140及び誘電膜150の配向半値全幅の値を表2に示す。
比較例3のアクチュエータは、実施例1のアクチュエータにおいて、誘電膜150としてLP―CVD法で成膜した窒化シリコン膜を使用したものであり、それ以外は実施例1と同様である。
次に、本発明の第5の実施例のアクチュエータについて説明する。第5の実施例のアクチュエータは、静電駆動MEMSスイッチの一例であり、スイッチ用接点電極を別途設けた例である。
図6は、本発明の第5の実施例のアクチュエータの構造を例示する模式断面図である。 本実施例のアクチュエータ102においては、可動梁170の先端に、可動接点電極190が設けられている。そして、可動接点電極190に対向した固定接点電極180が、基板110上に設けられている。可動接点電極190と固定接点電極180とが、スイッチの接点を構成する。これら以外の構成は、実施例1と同様であり、同じ部品には同じ符号を付してある。可動接点電極190及び固定接点電極180は、例えばスパッタ法により作製したAu層であり、周知のリソグラフィー法及びリフトオフ法によりパターニングし、形成される。
次に本発明の第6の実施例のアクチュエータについて説明する。本実施例のアクチュエータは、圧電駆動MEMS可変容量キャパシタの一例である。
図7は、本発明の第6の実施例のアクチュエータの構造を例示する模式断面図である。
図7に表したように、実施例6のアクチュエータ103は、実施例1における可動梁170の代わりに、バイモルフ型圧電駆動アクチュエータからなる可動梁200を用いている。すなわち、基板110上に対向してバイモルフ型の圧電可動梁200が設けられている。バイモルフ型可動梁200は、下部電極210、下部圧電膜220、中間電極230、上部圧電膜240、及び上部電極250が積層された構造を有している。そして、バイモルフ型可動梁200は、アンカー部120によって、基板110と間隙をあけて保持されている。下部電極210、中間電極230、上部電極250には、Alを用い、また、下部圧電膜220と上部圧電膜240にはAlNを使用し、リソグラフィー及びエッチング技術により、所定形状に形成される。バイモルフ型可動梁200以外の構成は、実施例1と同様であり、固定電極140及び誘電膜150は、高配向したAl膜及びAlN膜である。
なお、下部電極210が、固定電極140に対向する可動電極171の機能を果たす。
なお、本実施例では、可動梁は、2つの圧電膜が3つの電極によって積層された構造を有しているが、これに限らず、1つの圧電膜が2つの電極に挟持された構造や、3つ以上の圧電膜がそれぞれ電極によって挟まれた構造など、各種の構造の可動梁を用いることができる。
次に本発明の第7の実施例のアクチュエータについて説明する。
図8は、本発明の第7の実施例のアクチュエータの構造を例示する模式断面図である。
図8に表したように、実施例7のアクチュエータ104は、図1に表した実施例1における可動梁170の代わりに、DC駆動用下部電極410と、圧電膜420と、DC駆動用上部電極430と、が積層された構成の可動梁400を用いたものである。そして、基板110の主面には、RF信号用固定電極141が下地層130を介して設けられ、RF信号用固定電極141と可動梁400との間に誘電膜150が設けられている。下地層130、RF信号用固定電極141、誘電膜150は、図1に例示した、下地層130、固定電極140、誘電膜150と同様のものを用いることができる。
アクチュエータ104において、DC駆動用下部電極410とDC駆動用上部電極430の間に駆動電圧を与え、圧電膜420に電圧を印加することにより、可動梁400が屈曲する。これにより、DC駆動用下部電極410と誘電膜150が接し、誘電膜150を介して、DC駆動用下部電極410とRF信号用固定電極141との間でキャパシタが形成される。
本実施例においては、誘電膜150として、高配向した(配向半値全幅が4.6度以下のc軸配向した)AlN膜を用いるので、誘電膜150への電荷の注入やトラップを抑制し、安定した駆動特性を有するアクチュエータを実現できる。
次に本発明の第8の実施例のアクチュエータについて説明する。
図9は、本発明の第8の実施例のアクチュエータの構造を例示する模式断面図である。 図9に表したように、実施例8のアクチュエータ105は、図7に表した実施例6のアクチュエータにおいて、固定電極140のそれぞれ下と上に設けられていた下地膜130と誘電膜150を設けず、また、下部電極210を固定電極140と対向する部分を除いて形成した点が異なっている。この構成において、固定電極140と対向する下部圧電膜220が、実施例1〜7における誘電膜の機能を果たす。また、中間電極230が可動電極231となる。
下部圧電膜220は、高配向した(配向半値全幅が4.6度以下のc軸配向した)AlN膜によって形成することができる。図9に例示したアクチュエータは、高配向したAlN膜からなる誘電膜を、固定電極140と可動電極231の間に設けているので、誘電膜への電荷の注入やトラップを抑制し、安定した駆動特性を有するアクチュエータを実現できる。
図10は、本発明の実施形態のアクチュエータを利用した電子回路と電子機器を例示する模式図である。
図10に表したように、本発明の実施形態のアクチュエータ105により作製された容量可変キャパシタを組み込んで、周波数が可変のフィルタを内蔵する電子回路500を作製できる。また、この電子回路500は、例えば、携帯電話等の各種電子機器600に用いることができる。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
110 基板
120 アンカー部
130 下地膜
140 固定電極
141 RF信号用固定電極
150 誘電膜
160 犠牲層
170、200、400 可動梁
171、231 可動電極
210 下部電極
220 下部圧電膜
230 中間電極
240 上部圧電膜
250 上部電極
310 上電極
320 下電極
410 DC駆動用下部電極
420 圧電膜
430 DC駆動用上部電極
500 電子回路
600 電子機器
Claims (6)
- 基板と、
前記基板の主面の上に設けられた固定電極と、
前記主面に対向し、前記基板の上方に間隙をあけて保持された可動梁と、
前記固定電極と前記可動梁との間に設けられ、配向半値全幅が4.6度以下でc軸配向した窒化アルミニウムからなる誘電膜と、
前記主面の上において前記固定電極の下に設けられアルミニウム化合物からなる下地膜と、
を備えたことを特徴とするアクチュエータ。 - 前記固定電極は、配向半値全幅が3.8度以下でc軸配向したアルミニウム膜からなることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
- 基板と、
前記基板の主面の上に設けられたRF信号用固定電極と、
前記主面に対向し、前記基板の上方に間隙をあけて保持され、DC駆動用下部電極と、圧電膜と、DC駆動用上部電極と、を含む可動梁と、
前記RF信号用固定電極と前記可動梁との間に設けられ、配向半値全幅が4.6度以下でc軸配向した窒化アルミニウムからなる誘電膜と、
前記主面の上において前記RF信号用固定電極の下に設けられアルミニウム化合物からなる下地膜と、
を備えたことを特徴とするアクチュエータ。 - 前記RF信号用固定電極は、配向半値全幅が3.8度以下でc軸配向したアルミニウム膜からなることを特徴とする請求項3記載のアクチュエータ。
- 前記アルミニウム化合物は、AlN、Al−Ta非晶質合金、及びそれらの混合物から選択されたいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つ記載のアクチュエータ。
- 前記下地膜は、厚さが200nm以上のAlNからなる膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のアクチュエータ。
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