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JP5232717B2 - 圧粉磁心及びその製造方法 - Google Patents
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JP5232717B2 - 圧粉磁心及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、軟磁性粉末からなる圧粉磁心およびその製造方法に関するものである。
OA機器、太陽光発電システム、自動車、無停電電源などの制御用電源には電子機器としてチョークコイルが用いられており、そのコアとして、フェライト磁心や圧粉磁心が使用されている。これらの中で、フェライト磁心は飽和磁束密度が小さいと言う欠点を有している。これに対して、金属粉末を成形して作製される圧粉磁心は、軟磁性フェライトに比べて高い飽和磁束密度を持つため、直流重畳特性に優れている。
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、小さな印加磁界で、大きな磁束密度を得ることが出来る磁気特性と、磁束密度変化におけるエネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損(Pc)と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、下記[式1]の関係で表すことができる。この中で鉄損は、ヒステリシス損失(Ph)、渦電流損失(Pe)の和で表される。また、ヒステリシス損失は動作周波数に比例し、渦電流損失は動作周波数の2乗に比例する。そのため、ヒステリシス損失は低周波側領域で支配的になり、渦電流損失は高周波領域で支配的になる。圧粉磁心は、この鉄損の発生を小さくする磁気特性が求められている。
[数1]
Pc=Ph+Pe 、Ph=Kh×f、Pe=Ke×f2 … 式1
Kh:ヒステリシス損係数、Ke:渦電流損係数、f:周波数
圧粉磁心のヒステリシス損失を低減するためには、磁壁の移動を容易にすればよく、そのためには軟磁性粉末粒子の保磁力を低下させればよい。なお、この保磁力を低下させることで、初透磁率の向上とヒステリシス損失の低減が図れる。渦電流損失は[式2]で示されるように、コアの比抵抗に反比例する。
[数2]
Ke=k1Bm2t2/ρ … 式2
k1:係数、Bm:磁束密度、t:粒子径(板材の場合厚さ)、ρ:比抵抗
このような、高密度成形された圧粉磁心の製造方法としては、リン酸塩処理を施した鉄粉を基材とする方法(例えば、特許文献1参照)や、鉄を主成分とする磁性粉末に絶縁被膜としてリン酸塩系の第1絶縁層とその上にシリコーン樹脂からなる第2絶縁層を設ける方法(例えば、特許文献2参照)や、軟磁性粉末の表面を樹脂を含有しない無機物の絶縁層で表面を絶縁被覆処理する方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
特開2000−504785号公報 特開2006−5173号公報 特開2003−332116号公報
しかしながら、高密度成形された圧粉磁心は、高い磁束密度を有するが、成形時に多くの歪みが軟磁性粉末の粒子内に発生する。この歪みは圧粉磁心の保磁力を高めて、ヒステリシス損失を増加させる。そのため、歪み除去を目的とした焼鈍作業を行う。鉄を主成分とする軟磁性粉末では、この歪みを除去するには、500℃以上の高い焼鈍温度が必要となる。ところが、焼鈍温度を高くすると、粉末粒子間の絶縁破壊が発生しコアの比抵抗が大きくなり、渦電流損失が増加して十分な効果が得られない。
例えば、特許文献1に記載の発明では、リン酸塩系の絶縁処理において、焼鈍温度を500℃以上と高くすると、絶縁破壊をおこしてしまうため、渦電流損失が増加して十分な効果が得られない問題点があった。
また、特許文献2の発明では、耐熱温度を500℃以上としているものの、粉末間の絶縁を評価するのに比抵抗で評価している。耐熱温度が500℃以上とは、圧粉磁心に500℃で30分間の焼鈍を施した後に、比抵抗が100μΩm以上であること。耐熱温度が600℃以上とは、圧粉磁心に600℃で30分間の焼鈍を施した後に比抵抗が10μΩm以上であることとしている。600℃で計算上10倍大きな渦電流損となっている。文献2では、400Hz,800Hzのような低い周波数では大きな問題とならないが、本特許で検討しているような20kHzという高い周波数では、600℃での比抵抗が10μΩm以上とは絶縁破壊をおこしているという評価となる。
さらに、特許文献3の発明では、絶縁層と絶縁粉末を指定しており、絶縁粉末の平均粒径で0.1〜10μmとなっている。この効果として成形後の熱処理温度を500〜900℃にしても絶縁層を破壊することなく、軟磁性粉末に残留する圧縮成形歪を開放することができるとしている。
この結果を詳細に調べると、表1のように渦電流損を15kHz,50mTで評価しており400℃〜900℃まで変化の無いデータとなっている。一方、比抵抗は特許文献3の発明である混合法では500℃で941μΩm,600℃で640μΩm,700℃で310μΩm,800で150μΩm,900℃で100μΩmと500℃と比較し600℃で68%,700℃で,800で33%,900で11%と激減している。渦電流損失は[式2]により磁束密度の二乗に比例している。すなわち、特許文献3で述べているような50mTの場合、あまり影響がでてこないが150mTのような高磁束密度の場合には、鉄損に占める割合が大きくなり、この比抵抗の減少が大きな影響を及ぼす。
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軟磁性粉末の表面に均一に無機絶縁粉末を被覆すると同時に、平坦化処理を行うことで、粉末内部の歪みを取る熱処理おいて粉末が融着しない方法を提供することである。さらに、粉末を成形した後の焼鈍処理にて、高温焼鈍においても絶縁破壊を防止する。これにより、ヒステリシス損失(Ph)を低減すると共に、渦電流損失(Pe)を抑制することにより低鉄損化な圧粉磁心とその製造方法を提供することである。また、軟磁性粉末に対して平坦化処理を行なうことにより、アスペクト比の改善を行うことでき、高い直流重畳特性を有する。
上記目的をふまえ、鉄を主成分とする軟磁性粉末と無機絶縁粉末とを混合し、前記軟磁性粉末の表面を前記無機絶縁粉末で覆い、前記無機絶縁粉末に覆われた前記軟磁性粉末に対して平坦化処理した後に、前記平坦化された表面を無機絶縁被膜で覆ったものを熱処理し、熱処理を施した粉末に対して、結着性絶縁樹脂を被覆することで造粒粉を作成し、結着性絶縁樹脂を被覆した造粒粉と潤滑性樹脂とを混合することで成形粉を作成し、前記成形粉を加圧成形して成形体を作成し、前記成形体を焼鈍してなる圧粉磁心において、前記無機絶縁粉末の融点が1500℃以上であり、前記熱処理の温度が、1000℃以上且つ軟磁性粉末の融点以下の温度の還元雰囲気中であり、前記成形体が、600℃以上且つ軟磁性粉末の表面の絶縁層が破壊ない温度以下の非酸化性雰囲気中で焼鈍されたものであることを特徴とする
なお、前記軟磁性粉末の平均粒経を10〜106μmとしたり、前記軟磁性粉末の平坦化処理後の円形度を0.70より高く若しくは凹凸度が0.93より高くしたり、前記軟磁性粉末の珪素成分を0.0〜7.0wt%としたり、前記無機絶縁微粉末の平均粒経が7〜50nmとしたり、前記無機絶縁被膜を形成する金属酸化物の融点を1500℃以上としたり、前記無機絶縁被膜がアルコキシドから作成されたりする圧粉磁心も本発明の一形態である。
以上のような本発明によれば、鉄を主成分とする軟磁性粉末と無機絶縁粉末を混合すると共に、平坦化処理を行い、その混合物の表面を無機絶縁被膜で覆うことにより、軟磁性粉末の表面に無機絶縁粉末と無機絶縁被膜による絶縁層を形成する。この絶縁層では、表面を無機絶縁粉末で覆った軟磁性粉末をの表面を平坦化処理する。この処理により、表面の無機絶縁粉末が、軟磁性粉末を強固に覆うことができる。
この絶縁層により、軟磁性粉末の歪みを除去するために、高温で熱処理を行っても粉末同士が融着することを防止することができる。さらに、この粉末は、500℃以上の焼鈍温度で焼鈍しても、粉末粒子間の絶縁層が保たれるため、ヒステリシス損失の低減と渦電流損失を抑制することができ、圧粉磁心の低鉄損化を図ることができる。さらに、軟磁性粉末に対して平坦化処理を行なうことにより、軟磁性粉末のアスペクト比の改善を行うことができ、高い直流重畳特性を有する圧粉磁心とその製造方法を提供することができる。
本発明の圧粉磁心の製造方法を示すフローチャート。 本実施例の複合化処理(条件1)を行った軟磁性粉末のSEM写真。 本実施例の複合化処理(条件2,3)を行った軟磁性粉末のSEM写真。 本実施例の複合化処理(条件4)を行った軟磁性粉末の拡大したSEM写真。 本発明で使用した無機絶縁粉末の比表面積と粒子の形状との関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第2の特性比較における無機絶縁被膜の添加量と密度の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第2の特性比較における、無機絶縁被膜の添加量と損失の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第3の特性比較における粉末の熱処理温度と損失の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第4の特性比較における焼鈍温度と鉄損の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第4の特性比較における焼鈍温度とヒステリシス損失の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第4の特性比較における焼鈍温度と渦電量損失の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第5の特性比較におけるBH特性を示したグラフ。
[製造工程]
本実施形態の圧粉磁心の製造方法は、次のような各工程を有する。
(1)軟磁性粉末と無機絶縁粉末を混合し、軟磁性粉末の表面を無機絶縁粉末で均一に覆う第1の混合工程(ステップ1)。
(2)無機絶縁粉末で表面を覆った軟磁性粉末に対して、平坦化処理を行う平坦化工程(ステップ2)。
(3)平坦化処理を行った粉末の表面に無機絶縁被膜を形成する第1の絶縁工程(ステップ3)。
(4)第1の絶縁工程で絶縁処理を施した粉末に対して熱処理を施す熱処理工程(ステップ4)。
(5)熱処理工程を経た粉末を結着性絶縁樹脂で被覆する第2の絶縁工程(ステップ5)。
(6)第2の絶縁工程で絶縁処理を施した粉末に対して、潤滑剤を混合する第2の混合工程(ステップ6)。
(7)混合工程を経た混合物を、加圧成形処理して成形体を作製する成形工程(ステップ7)。
(8)成形工程を経た成形体を焼鈍処理する焼鈍工程(ステップ8)。
以下、各工程を具体的に説明する。
(1)第1の混合工程
第1の混合工程では、軟磁性粉末と無機絶縁粉末(比表面積が100〜300m/gが好ましい)とを混合し、軟磁性粉末の表面を無機絶縁粉末で均一に覆う。軟磁性粉末としては、平均粒径が10〜106μmの純鉄を主成分とする純鉄をアトマイズ粉を使用することができる。混合は、ポットミル等を使用して行い、この時、粉末に内部歪が入らないように混合する。
アトマイズ法では、平均粒径が10μm以下になると、比較的に表面が平坦で球に近い粉末が得られる。そのために、絶縁性の改善のために、軟磁性粉末の平坦化処理を行う必要がない。逆に10μm以上では、表面に突起等の凹凸が発生する。この凹凸により、軟磁性粉末の表面に均一な絶縁層を作成することが難しくなる。また、成形時凸部に応力が集中し絶縁破壊しやすい。絶縁性の改善には、これを取り除く必要があるので、この粒径の範囲が本発明に適している。また、平均粒径が106μm以上では、粒径が大きくなることにより、渦電流損失が増加してまう。
軟磁性粉末の珪素成分が、この軟磁性粉末に対して0.0〜7.0wt%の軟磁性粉末を使用する。軟磁性粉末の珪素成分は、前記軟磁性粉末に対して7.0wt%以下が良く、これより多いと成形性が悪く、圧粉磁心の密度が低下して磁気特性が低下するという問題が発生する。また、軟磁性粉末のアトマイズ粉の作製方法としては、水アトマイズ製法、ガスアトマイズ製法、水ガスアトマイズ製法などの製法を利用することができる。
一方、無機絶縁粉末の粒子の平均粒経は、7〜50nmとする。これよりも小さい粒径の無機絶縁粉末は、製造が困難であり、これよりも大きいと軟磁性粉末同士に隙間が生じて、密度が低下して透磁率、鉄損(コアロス)及び直流重畳特性が劣化する。無機絶縁粉末の添加量は、0.10〜2.0wt%が好ましい。0.10wt%未満であると後述する熱処理工程において、凝固が起こり粉末同士がくっついてしまう。融点が高い無機絶縁粉末を使用し凝固が起こらなかった場合でも、絶縁性能が十分発揮できず、高い焼鈍温度では渦電流損失が著しく増加する。また、2.0wt%を超えると絶縁性能は発揮されるが、成形密度が7.24g/cm未満となり渦電流損失以外の磁気特性が低下してしまう。無機絶縁粉末としては、融点が1500℃以上であるMgO粉末(融点2800℃)、Al粉末(融点2046℃)、TiO粉末(融点1640℃)、CaO粉末(融点2572℃)の少なくとも1種以上であることが望ましい。
(2)平坦化工程
平坦化工程では、表面を無機絶縁粉末で覆った純鉄のアトマイズ粉の表面に対して、平坦化処理を行う。この処理により、粉末の表面を球状にすることができ、絶縁性の改善をすることができる。さらに、直流重畳特性は、軟磁性粉末の形状に依存しているために、軟磁性粉末の形状を球状とすることで、直流重畳特性を優れたものとする。
このときの軟磁性粉末のアスペクト比の値が1.0〜1.5の範囲内或いは円形度を0.70がより大きな値或いは凹凸度が0.93より大きい値のいずれか1つの範囲となるようにする。ここで、円形度とは、粒子を顕微鏡観察において計測し、粒子の面積と等しい円を仮定した値を粒子周囲長で割った値と定義する。また、凹凸度とは、包絡周囲長での面積を粒子の実面積で割った値と定義する。直流重畳特性は、軟磁性粉末の形状に依存しているために、粉末のアスペクト比、円形度或いは凹凸度をこれらの値とすることで、直流重畳特性を優れたものとすることができる。この平坦化処理の方法は、表面を機械的に塑性変形させて行なう。その一例としてはメカニカルアロイング、ボールミル、アトライター等がある。
また、第1の混合工程と平坦化工程とを、複合化工程として同時に行うこともできる。すなわち、軟磁性粉末の表面に無機絶縁粉末を均一に被覆する工程と、粉末表面の凹凸を除去し粉末の表面を平坦にする平坦化工程との2つの工程を同時に行うことができる。これにより、工程を少なくすることができるので、使用する装置の種類を削減することが可能になる。
(3)第1の絶縁工程
第1の絶縁工程では、無機絶縁粉末で覆い平坦化処理を施した軟磁性粉末の表面を、無機絶縁被膜で覆うことにより第1の絶縁層を形成する。無機絶縁被膜は、アルコキシド溶液を用いたゾル−ゲル法などにより作製することができる。この作製法では、無機絶縁粉末で覆われた軟磁性粉末の表面に、金属のアルコキシド溶液を均一に塗布し、その後、空気中の水分と反応(加水分解)させ、それを乾燥させることにより無機絶縁被膜を形成することができる。無機絶縁被膜は、前記軟磁性粉末の0.08〜0.40wt%が好ましい。0.08wt%未満であると、効果が十分に発揮できず、渦電流損失が増加する。また、添加量が0.40wt%を超えても、絶縁性能は発揮され成形密度は低下することはないが、添加量を増やしても絶縁性能の向上は見られない。無機絶縁被膜としては、融点が1500℃超であるMgO(融点2800℃)、Al(融点2046℃)、TiO(融点1640℃)、CaO(融点2572℃)の少なくとも1種以上であることが望ましい。
また、表面を無機絶縁粉末覆われた軟磁性粉末の表面に、金属のアルコキシド溶液を混合することにより第1の絶縁層を作成したが、軟磁性粉末の表面に、無機絶縁粉末と金属のアルコキシド溶液とを同時に混合することにより、第1の絶縁層を形成することも可能である。無機絶縁粉末と金属のアルコキシド溶液を同時に混合することにより、製造工程を短くすることができる。
(4)熱処理工程
熱処理工程では、前記絶縁工程を経た粉末を1000℃以上且つ軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下の還元雰囲気中で熱処理を行う。
メカニカルアロイングで粉末表面の平坦化を行う場合、粒子表面がアモルファス化及びナノ結晶化する。一方、ボールミルで平坦化を行う場合は、粉末の表面に非常に硬いナノ結晶領域が生成する。この粉末の表面のナノ結晶領域の直下では、加工による硬化状態となり、大きな内部歪が生成する。軟磁性粉末内に存在するこれらの歪みを、1000℃以上の温度で熱処理を行うことで除去すると共に、結晶粒界などの欠陥の除去や、軟磁性粉末粒子中の結晶粒子の成長(拡大)をさせることができる。これにより、磁壁移動が容易となり、保磁力を小さくし、ヒステリシス損失(Ph)を低減すると共に、成形後の焼鈍温度を高くすることもできる。
一方、この熱処理温度が1000℃未満であると、焼鈍温度を高くしても圧粉磁心のヒステリシス損失(Ph)があまり低下せず鉄損の低減には寄与しない。このとき、第1の第1の絶縁層は、粉末同士が融着することを防止するが、軟磁性粉末が焼結してしまう温度で熱処理を行うと、軟磁性粉末が焼結し固まってしまい圧粉磁心の材料として使用できなくなるという問題点がある。
(5)第2の絶縁工程
前記熱処理工程で熱処理を施した粉末の表面に、第2の絶縁層を形成する第2の絶縁工程では、2種類の結着性絶縁樹脂を2度に分けて被覆することにより2層構造の第2の絶縁層を形成する。まず、2層構造の1層目の絶縁層として、前記熱処理工程を経た粉末とシランカップリング剤とを混合し、加熱乾燥を行うことにより絶縁層を形成する。その外側に2層目の絶縁層として、1層目の絶縁層を形成した粉末とシリコーンレジンを混合し、加熱乾燥を行うことにより絶縁層を形成する。これを乾燥後、目開き300μmの篩いで解砕をおこない造粒粉を作成する。
シランカップリング剤による第1層目の絶縁層では、前記無機絶縁粉末を均一に分散させると共に、無機絶縁粉末と軟磁性粉末との密着力を高めることができる。この時のシランカップリング剤の添加量は、0.1〜0.5wt%が最適である。これより少ないと、無機絶縁粉末と軟磁性粉末とを十分に密着させることができなくなり、効果が十分に発揮されない。また、適量より多いと、成形密度の低下を引き起こすため、焼鈍後の磁気特性を劣化させる問題が発生する。
シリコーンレジンによる第2層目の絶縁層では、絶縁性能を向上させると共に、成形時に金型と粉末との接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することができる。また、シリコーンレジンの添加量は、0.3〜0.5wt%が最適である。これより少ないと、絶縁性能の低下、成形時コア壁面への縦筋が発生する。これより多いと、成形密度の低下を引き起こし焼鈍後の磁気特性を劣化させる問題が発生する。
(6)第2の混合工程
前記第2の絶縁工程を経た造粒粉に潤滑剤を混合し、成形粉を作成する第2の混合工程では、第2の絶縁層を形成した粉末と、前記軟磁性粉末に対して0.2〜0.8wt%の潤滑剤とを混合する。ここで潤滑剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸石鹸、エチレンビスステアラマイドなどのワックスが使用できる。これらを混合することにより、粉末同士の滑りを良くすることができるので、混合時の密度を向上することができ成形密度を高くすることができる。さらに、成形時の上パンチの抜き圧低減、金型と粉末の接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することが可能である。
混合する潤滑樹脂の量は、前記軟磁性粉末に対して0.2〜0.8wt%とする。これよりも少なければ十分な効果を得ることができず、成形時コア壁面への縦筋の発生、抜き圧が高く最悪上パンチが抜けなくなる。また、これより多いと、密度低下による最大磁束密度の低下、ヒステリシス損失(Ph)の増加による磁気特性が低下する問題が発生する。
(7)成形工程
成形工程では、前記混合工程で作成した成形粉を、金型に投入しダイ・フローティング法による1軸成形を行うことにより成形体を形成する。この時、結着性絶縁樹脂は、成形時のバインダーとして作用する。成形時の圧力は、本発明において1500MPa前後が好ましい。
(8)焼鈍工程
焼鈍工程では、前記成形体に対して、NガスやN+Hガスなどの非酸化性雰囲気中にて、600℃以上且つ軟磁性粉末に被覆した絶縁膜が破壊される温度以下で、焼鈍処理を行うことで圧粉磁心が作製される。600℃以上で焼鈍処理を行うのは、成形時に軟磁性粉末の粒子内に発生する歪みを除去するためである。鉄を主成分とする軟磁性粉末では、この歪みを除去するには、高い焼鈍温度が必要であり、600℃で焼鈍することにより、効果的に歪みを除去することができる。また、絶縁膜が破壊される温度以下で焼鈍処理を行うのは、成形工程での歪みを開放すると共に、焼鈍処理時の熱により軟磁性粉末の表面に被覆した絶縁膜が破れることを防止するためである。すなわち、焼鈍温度を上げ過ぎると、この軟磁性粉末に被覆した絶縁膜が破れ、絶縁性能の劣化から渦電流損失(Pe)が大きく増加してしまう。それにより、磁気特性が低下するという問題が発生する。
熱処理が行われると、昇温時の温度が350℃程度になるとSi基に直結しているメチル基が熱分解する。その後、シリカ(SiO)層として、軟磁性粉末表面に残り、これが強固なバインダーかつ絶縁膜となる。圧粉磁心の熱処理を行うことで、緻密で強固なシリカ層となるため、高温で熱処理をおこなっても絶縁性が劣化しないで、酸化などによるヒステリシス損失(Ph)の増加が起きない。また、熱処理を行うことにより、熱分解してメチル基が炭素として残ることがないので、機械的強度が改善出来る。
[1.測定項目]
測定項目として、透磁率と最大磁束密度と直流重畳特性を次のような手法により測定する。透磁率は、作製された圧粉磁心に1次巻線(20ターン)を施し、インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー:4294A)を使用することで、20kHz、0.5Vにおけるインダクタンスから算出した。
鉄損(コアロス)は、圧粉磁心に1次巻線(20ターン)及び2次巻線(3ターン)を施し、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8232)を用いて、周波数20kHz、最大磁束密度Bm=0.15Tの条件下で鉄損(Pc)を測定した。そして、鉄損からヒステリシス損失(Ph)と渦電流損失(Pe)を算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を式1で最小2乗法により、ヒステリシス損係数(Kh)、渦電流損係数(Ke)を算出することで行った。
[2.軟磁性粉末の平坦化処理]
本実施例における軟磁性粉末に対する平坦化処理としては、粉末に対してメカノケミカル効果を発現する装置が用いることにより粉末の表面を改質する。このような装置としては、圧縮力やせん断力の機械的エネルギーを粒子に与えるタイプや、衝撃力主体となる機械的エネルギーを粒子に与えるタイプなどが知られている。
圧縮せん断型の装置では、高速で回転する表面処理用ロータと、容器側面に設置されている表面処理用ステータとの間に粒子を通す。これにより、回転ロータの遠心力によって、ステータに押し付けてられた粒子は、ロータとステータの間で、強力な圧縮・せん断作用を受ける。この圧縮・せん断作用により、粉末の表面を改質する。この時、表面改質条件は、ロータの回転速度、原料供給量など決められる。表2は、圧縮せん断型の装置を用いて、表面平坦化処理を行う場合のロータの回転速度及び供給量を示した表である。
高速気流中衝撃型の装置では、粒子を気相中に分散しながら衝撃力主体となる機械的熱エネルギーを粒子に与える。具体的には、高速で回転するロータより、粉末に衝撃を与えてメカノケミカル効果を発現させる。この衝撃により、粉末の表面を改質する。表3は、高速気流中衝撃型の装置を用いて、表面平坦化処理を行う場合のロータの回転速度及び処理時間を示した表である。また、表4は、軟磁性粉末に対して、平坦化処理を施さなかった場合と、高速気流中衝撃型の装置で平坦化処理(条件4)を施した場合の粉末の形状、円形度及び凹凸度を示した表である。
図2は、粒径106μmの純鉄の水アトマイズ粉に複合化処理を施さなかった場合と、圧縮せん断型の装置で複合化処理(条件1)を行ったSEM写真を示した図である。図3は、粒径106μmの純鉄の水アトマイズ粉に対して、圧縮せん断型の装置で平坦化処理(条件2,3)を行ったSEM写真を示した図である。図2,3からは、粉末に複合化処理を施すことにより、表面の凹凸が無くなり形状が球に近づいていることが判る。
図4は、粒径106μmの純鉄の水アトマイズ粉に複合化処理を施さなかった場合と、
無機絶縁粉末を混合した粒径106μmの純鉄の水アトマイズ粉に対して、圧縮せん断型の装置で複合化処理(条件1)を行ったSEM写真を示した図である。図4からは、平坦化処理を施すことにより、表面の凹凸が無くなり形状が球に近づいていることが判る。それだけではなく、無機絶縁粉末が水アトマイズ粉の表面に押圧されることにより、均一に分布していることも判る。
[3.無機絶縁粉末の形状]
本実施形態の圧粉磁心の製造方法に使用する無機絶縁粉末は比表面積が100〜300m/gのものを使用する。この比表面積とは、粉末の形状を示す指標であり、比表面積(S)と粒子形状(D)の関係は、粒子を球状と仮定した場合に、式[3]で表すことができる。図5は、本発明に使用する無機絶縁粉末の比表面積(S)と粒子形状(D)の関係をグラフを示したものである。
[式3]
S=6/(Dρ) … [式3]
ρ:密度
図5では、比表面積が100〜300m/gの時、無機絶縁粉末が球形だと仮定した場合の計算値と、実測値とが異なっていることが判る。計算値と実測値が異なるのは、無機絶縁粉末の表面に凹凸があるためである。特に、160m/gの場合は、計算値と、実測値とが大きく異なっていることが判る。これは、比表面積が160m/gの場合は、無機絶縁粉末の内部が多孔質状になっているからであり、内部に空洞があるために比表面積が大きくなる。また、無機絶縁粉末の組成としては、融点が1000℃以上であるマグネシア粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、チタニア粉末、ジルコニア粉末のうち少なくとも1種類以上であることが望ましい。これにより、熱処理工程時の熱処理温度を高くした場合にでも、絶縁性能が低下せず渦電流損失が低下するのを防ぐことができる。
[4.第1の特性比較(無機絶縁粉末の添加量の比較)]
第1の特性比較では、熱処理工程における熱処理において、添加する無機絶縁粉末の添加量と軟磁性粉末の凝固の具合を評価した。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉を使用し、下記の処理を行うことにより作製した。この処理の中の平坦化処理及び複合化処理では、表2の条件2の条件で行った。
純鉄の水アトマイズ粉に対して、SiO粉末またはAl粉末を0〜0.5wt%添加し複合化処理を行った後、SiOまたはMgO被膜0〜0.5wt%形成した。これらの試料を、900℃〜1100℃の水素25%(残り75%は、窒素)の還元雰囲気で熱処理を行って凝固の度合いを評価した。表5は、この時の凝固の度合を表した表である。表の中の◎は焼結せずそのままで使用可能、○は軽くほぐすだけで使用可能、△は、粉砕が必要、×は粉砕が不可能を示している。
表5からは、軟磁性粉末にSiO粉末を添加した場合は、SiO被膜の有無に係わらず、1000℃以上で熱処理を行うと、凝固してしまうことがわかる。軟磁性粉末にAl粉末を添加し、MgO被膜の有無に係わらず、粉末の添加量が0.10wt%以上であるば、融着せず粉砕作業を必要とせずに使用することができることがわかる。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉と0.10〜0.5wt%の無機絶縁粉末とを混合し平坦化処理を施し、その表面に無機絶縁被膜を形成することにより、1000℃以上の温度で熱処理を行っても、軟磁性粉末同士の融着を防止することができる。これにより、焼鈍温度が高い場合においても、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。
[5.第2の特性比較(無機絶縁被膜の有無の比較)]
第2の特性比較では、純鉄の水アトマイズ粉に添加する無機絶縁被膜の有無の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉を使用し、下記の処理を行うことにより作製した。この処理の中の平坦化処理及び複合化処理では、表2の条件2の条件で行った。
項目Aでは比較例1及び実施例1〜4として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAl粉末を、水アトマイズ粉に対して0.5wt%添加して複合化処理を行った。その後、MgO被膜を0〜0.4wt%形成した。1100℃の水素25%(残り75%は、窒素)の還元雰囲気で熱処理を行った。
次に、項目Aの試料に対して、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.4wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.25wt%を混合した。これを、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、650℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表6は、この項目Aについて、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類、比表面積及び添加量、無機絶縁被膜の添加量、熱処理温度及び磁気特性を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。図6は、無機絶縁被膜の量と密度の関係を示した図である。図7は、無機絶縁被膜の量と各損失の関係を示した図である。
表6から判るように、比較例1及び実施例1〜4を比較すると、無機絶縁粉末のみを添加した比較例1より、無機絶縁粉末を添加し無機絶縁被膜を形成した実施例1〜4の方が、渦電流損失(Pe)が低下している。これにより、全体での鉄損(Pc)も低下していることが判る。
また、無機絶縁被膜の添加量と密度の関係を示した図6からは、無機絶縁被膜の添加量を増やすにしたがって、密度が低下していくことがわかる。特に、無機絶縁被膜を0.4wt%とすると、密度が7.44g/cmとなる。また、無機絶縁被膜の添加量と損失の関係を示した図7からは、無機絶縁被膜を0.08wt%添加することで、ヒステリシス損失(Ph)及び鉄損(Pc)は、減少することが判る。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉と無機絶縁粉末とを混合し平坦化処理を施し、その表面に無機絶縁被膜を0.08〜0.40wt%形成することにより、焼鈍温度が高い場合においても、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。
[6.第3の特性比較(粉末の熱処理温度の比較)]
第3の特性比較では、純鉄の水アトマイズ粉に添加する熱処理温度の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉を使用し、下記の処理を行うことにより作製した。この処理の中の平坦化処理及び複合化処理では、表2の条件2の条件で行った。
項目Bでは比較例2及び実施例5〜7として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAl粉末を、水アトマイズ粉に対して0.5wt%添加して複合化処理を行った。その後、MgO被膜を0.24wt%形成した。950〜1100℃の水素25%(残り75%は、窒素)の還元雰囲気で熱処理を行った。
次に、項目Bの試料に対して、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.4wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.25wt%を混合した。これを、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、650℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表7は、この項目Bについて、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類、比表面積及び添加量、無機絶縁被膜の添加量、第2の絶縁層、熱処理温度及び磁気特性を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。図8は、焼鈍温度と各損出の関係を示した図である。
表7から判るように、比較例2及び実施例5〜7を比較すると、1000℃以上の温度で熱処理を行うと、ヒステリシス損失(Ph)が低下する。これにより、全体での鉄損(Pc)も低下していることが判る。また、粉末の熱処理温度と損失の関係を示した図8からも同様なことが判る。すなわち、軟磁性粉末に対して1000℃以上で熱処理を行うと、平坦化処理ときの加工歪による応力を取り除くことが可能になる。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉と無機絶縁粉末とを混合し平坦化処理を施し、その表面に無機絶縁被膜を形成した粉末を、1000℃以上の温度で熱処理することにより、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。
[7.第4の特性比較(焼鈍温度の比較)]
第4の特性比較では、純鉄の水アトマイズ粉に添加する熱処理温度の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径63μm以下の純鉄の水アトマイズ粉を使用し、下記の処理を行うことにより作製した。この処理の中の平坦化処理及び複合化処理では、表2の条件2の条件で行った。
項目Cでは比較例8〜11として、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した。
項目Dでは実施例8〜16として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末としてAl粉末を、水アトマイズ粉に対して0.5wt%添加して複合化処理を行った。その後、MgO被膜を0.24wt%形成した。1100℃の水素25%(残り75%は、窒素)の還元雰囲気で熱処理を行った。
次に、項目C,Dの試料に対して、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.4wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。これを、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、500〜750℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表8は、この項目C,Dについて、熱処理温度及び磁気特性を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。図9は、焼鈍温度と鉄損(Pc)の関係を示した図であり、図10は焼鈍温度とヒステリシス損失(Ph)の関係を示した図であり、図11は焼鈍温度と渦電量損失(Pe)の関係を示した図である。
表8及び図9〜11から判るように、項目Cと項目Dとを比較すると、項目Cの焼鈍温度が500〜550℃の時と、項目Dの焼鈍温度が550〜725℃の時とでは、渦電流損失(Pe)の値は、殆ど変わらないことが判る。一方、項目Cの焼鈍温度が500〜550℃の時と、項目Dの焼鈍温度が550〜725℃の時とでは、項目Cの方がヒステリシス損失(Ph)が高くなっていることが判る。
一方、項目Cでは、焼鈍温度が550℃を超えると、ヒステリシス損失(Ph)及び渦電流損失(Pe)が急激に増加している。これにより、鉄損(Pc)が急激に増加する。これに対して、項目Fでは、焼鈍温度が725℃を超えると、渦電流損失(Pe)が著しく増加する。また、渦電流損失(Pe)ほど急激ではないが、ヒステリシス損失(Ph)も増加している。これにより、鉄損(Pc)が急激に増加する。これは、焼鈍温度を高くすることで、軟磁性粉末の表面に設けた絶縁層が破壊され、軟磁性粉末同士が接触することにより、渦電流損失(Pe)を抑制する効果が低減するためである。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉と無機絶縁粉末とを混合し平坦化処理を施し、その表面に無機絶縁被膜を形成した粉末を、1100℃以上の温度で熱処理した粉末を使用することにより、550℃〜725℃の温度で焼鈍しても、軟磁性粉末の表面に設けた絶縁層が破壊されない圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。この圧粉磁心は、磁性粉末の表面に設けた絶縁層が破壊されないため、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することができる。
[8.第5の特性比較(平面処理の条件の比較)]
第5の特性比較では、水アトマイズ粉に対する平面処理の条件の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉を使用し、下記の処理を行うことにより作製した。この処理の中の複合化処理では、表2,3の条件1〜4の条件で行った。
項目Eでは、比較例12として、円形度0.70,凹凸度0.93の純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末としてAl粉末を、水アトマイズ粉に対して0.25wt%添加して、ポットミルで24時間混合した。
項目Fでは実施例17として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末としてAl粉末を、水アトマイズ粉に対して0.25wt%添加して複合化処理(条件1)を行い、円形度0.79,凹凸度0.95に処理した。実施例18として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末としてAl粉末を、水アトマイズ粉に対して0.25wt%添加して複合化処理(条件2)を行い、円形度0.83,凹凸度0.96に処理した。
項目Gでは実施例19として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末としてAl粉末を、水アトマイズ粉に対して0.5wt%添加して複合化処理(条件4)を行い、円形度0.76,凹凸度0.94に処理した。
項目E〜Gの試料に対して、それぞれの粉末にMgO被膜を0.24wt%形成した。その後、1000〜1100℃の水素25%(残り75%は、窒素)の還元雰囲気で熱処理を行った。その後、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.4wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.25wt%を混合した。これを、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、600〜700℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表9は、この項目E〜Gについて、純鉄の水アトマイズ粉末の円形度、凹凸度、表面処理条件、第2の絶縁層、焼鈍温度、磁気特性及び直流BH特性を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。一方、凹凸度は、CCDカメラで粉末を3000個の画像を撮り、画像処理にて求めた物である。図12は、比較例12、実施例18、実施例19のBH特性を示した図である。
表9の直流BH特性は、まず、図12の直流BH曲線から、磁束密度Bが0T、1Tにおける透磁率を傾き(ΔB/ΔH)から求めた。次に、透磁率μ(1T)/透磁率μ(0T)を求めるとこにより、直流BH特性を評価した。この値が100%に近いほどBH曲線が直線に近づき、直流重畳特性が良くなることがわかる。表9では、円形度が0.70または凹凸度が0.93より大きくなると、直流BH特性が高くなることが判る。すなわち、直流重畳特性が良くなる。
以上により、円形度が0.70または凹凸度が0.93より大きくなるように、複合化処理を施した純鉄の水アトマイズ粉を使用することにより、直流重畳特性が高い低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。

Claims (16)

  1. 鉄を主成分とする軟磁性粉末と無機絶縁粉末とを混合し、前記軟磁性粉末の表面を前記無機絶縁粉末で覆い、前記無機絶縁粉末に覆われた前記軟磁性粉末に対して平坦化処理した後に、前記平坦化された表面を無機絶縁被膜で覆ったものを熱処理し、
    熱処理を施した粉末に対して、結着性絶縁樹脂を被覆することで造粒粉を作成し、
    結着性絶縁樹脂を被覆した造粒粉と潤滑性樹脂とを混合することで成形粉を作成し、
    前記成形粉を加圧成形して成形体を作成し、前記成形体を焼鈍してなる圧粉磁心において、
    前記無機絶縁粉末の融点が1500℃以上であり、
    前記熱処理の温度が、1000℃以上且つ軟磁性粉末の融点以下の温度の還元雰囲気中であり、
    前記成形体が、600℃以上且つ軟磁性粉末の表面の絶縁層が破壊ない温度以下の非酸化性雰囲気中で焼鈍されたものであることを特徴とする圧粉磁心。
  2. 前記軟磁性粉末の平均粒経が10〜106μmであることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記軟磁性粉末の平坦化処理後の円形度が0.70より高く、若しくは凹凸度が0.93より高いことを特徴とする請求項1また請求項2に記載の圧粉磁心。
  4. 前記軟磁性粉末の珪素成分が0.0〜7.0wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  5. 前記無機絶縁粉末の平均粒経が7〜50nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  6. 前記無機絶縁被膜を形成する金属酸化物の融点が1500℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  7. 前記無機絶縁被膜が、アルコキシドから作成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  8. 前記結着性絶縁樹脂が、軟磁性粉末に対して0.1〜0.5wt%の添加量のシランカップリング剤と、軟磁性粉末に対して0.3〜0.5wt%の添加量のシリコーンレジンから形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  9. 軟磁性粉末と無機絶縁粉末を混合し、軟磁性粉末の表面を無機絶縁粉末で均一に覆う第1の混合工程と、
    無機絶縁粉末で表面を覆った軟磁性粉末に対して、平坦化処理を行う平坦化処理工程と、
    平坦化処理を行った粉末の表面に無機絶縁被膜を形成する第1の絶縁工程と、
    第1の絶縁工程経た粉末に対して熱処理を施す熱処理工程と、
    熱処理工程を経た粉末を結着性絶縁樹脂で被覆し造粒粉を作成する第2の絶縁工程と、
    結着性絶縁樹脂で被覆した造粒粉に対して、潤滑剤を混合し成形粉を作成する第2混合工程と、
    第2混合工程を経た成形粉を、加圧成形処理して成形体を作製する成形工程と、
    成形工程を経た成形体を焼鈍処理する焼鈍工程とを有する圧粉磁心の製造方法において、
    前記無機絶縁粉末の融点が1500℃以上であり、
    熱処理工程において、1000℃以上且つ軟磁性粉末の融点以下の温度の還元雰囲気中で熱処理が行われ、
    前記焼鈍工程において、600℃以上且つ前記軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下の非酸化性雰囲気中で焼鈍されることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  10. 前記軟磁性粉末の平均粒経が10〜106μmであることを特徴とする請求項9に記載の圧粉磁心の製造方法。
  11. 前記軟磁性粉末の平坦化処理後の円形度が0.70より高く、若しくは凹凸度が0.93より高いことを特徴とする請求項9また請求項10に記載の圧粉磁心の製造方法。
  12. 前記軟磁性粉末の珪素成分が0.0〜7.0wt%であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  13. 前記無機絶縁粉末の平均粒経が7〜50nmであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  14. 前記無機絶縁被膜を形成する金属酸化物の融点が1500℃以上であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  15. 前記無機絶縁被膜が、アルコキシドから作成されることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  16. 前記結着性絶縁樹脂が、軟磁性粉末に対して0.1〜0.5wt%の添加量のシランカップリング剤と、軟磁性粉末に対して0.3〜0.5wt%の添加量のシリコーンレジンから形成されていることを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
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