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JP5245269B2 - 複合電解質及び固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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JP5245269B2 - 複合電解質及び固体高分子型燃料電池 - Google Patents

複合電解質及び固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、複合電解質及び固体高分子型燃料電池に関し、さらに詳しくは、固体高分子型燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、電極材料等として好適な複合電解質、及びこれを用いた固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子電解質は、高分子鎖中にスルホン酸基等の酸基を有する固体高分子材料である。固体高分子電解質は、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維、あるいは膜状に成形され、電気透析、拡散透析、電池隔膜等、各種の用途に利用されている。
例えば、固体高分子型燃料電池や水電解装置などの各種電気化学デバイスにおいて、固体高分子電解質は、膜状に成形され、その両面に電極を接合した膜電極接合体(MEA)の状態で使用される。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボン繊維、カーボンペーパー等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質との複合体からなる。
このような用途に用いられる固体高分子電解質として、従来から種々の材料が知られている。例えば、過酷な条件下で使用される電気化学デバイスに用いられる電解質膜及び触媒層内電解質には、耐酸化性に優れた全フッ素系電解質膜(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)を用いるのが一般的である。また、電気化学デバイスの低コスト化を図るために、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホンなどの炭化水素系電解質の使用も検討されている。
燃料電池に使用されるこれらの電解質膜の性能を上げるための改良指針として、電解質のプロトン伝導性を上げることがある。このためには、膜中のスルホン酸基量を増やすことが一般的な方法である。しかしながら、スルホン酸基の単純な増大は、親水性の増大となる。その結果、電解質膜の含水による膨潤が大きくなる、膜が水溶性になる等、電池としての耐久性を低下させる弊害を持つ。
膨潤抑制・水溶性抑制の方策の1つとして、塩基性ポリマーとの混合が知られている。これは、電解質中のスルホン酸基などの酸基を、塩基性ポリマーにより架橋することによって、膨潤を抑制しようとするものである。例えば、非特許文献1には、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンとポリベンズイミダゾール(塩基性ポリマー)との混合物が開示されている。
K.D.kreuer, Journal of Membrane Science 185(2001)29-39
しかしながら、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンと、ポリベンズイミダゾールを混合することにより得られる電解質は、架橋点が親水性であるため、十分な架橋効果を得るためには、多量の塩基性ポリマーを複合化する必要がある。一方、塩基性ポリマーの含有量が多くなる程、プロトン伝導を担っているスルホン酸基が架橋に使われるため、電解質膜のプロトン伝導性が低下するという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、高い電気伝導性と、耐水性や耐膨潤性とを両立させた複合電解質、及びこれを用いた固体高分子型燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る複合電解質の1番目は、
酸基を有する電解質ポリマーと、
4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基のうちのいずれか2つ以上の官能基を有する架橋剤分子とを備え、
前記官能基の解離により生成したカチオン基と前記酸基の解離により生成したアニオン基とが疎水性の酸/塩基架橋を形成していることを要旨とする。
また、本発明に係る複合電解質の2番目は、
分子内に酸基と、4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基の内のいずれか1以上の官能基を有する電解質ポリマーを含み、
前記電解質ポリマー分子間又は前記電解質ポリマー分子内において、前記官能基の解離により生成したカチオン基と前記酸基の解離により生成したアニオン基とが疎水性の酸/塩基架橋を形成していることを要旨とする。
また、本発明に係る固体高分子型燃料電池は、本発明に係る複合電解質を電解質膜及び/又は触媒層内電解質に用いたことを要旨とする。
電解質ポリマーの酸基と、架橋剤分子又は電解質ポリマーの4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基とを反応させ、複合電解質内に酸/塩基架橋を形成すると、相対的に高い電気伝導度を維持したまま、耐水性や耐膨潤性を向上させることができる。これは、4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基の立体障害が大きく、架橋点に水分子が接近しにくい(すなわち、架橋点が疎水性となる)ために、水による架橋点の解離が抑制されるためと考えられる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る複合電解質は、電解質ポリマーと、架橋剤分子とを備えている。
[1. 電解質ポリマー]
本発明において、電解質ポリマーは、特に限定されるものではなく、炭化フッ素系電解質又は炭化水素系電解質のいずれであっても良い。
ここで、「炭化フッ素系電解質」とは、全フッ素系電解質又は部分フッ素系電解質をいう。
「全フッ素系電解質」とは、ポリマ骨格中にC−F結合を含み、C−H結合を含まないものをいう。本発明において、「全フッ素系電解質」というときは、ポリマ骨格中に、C−F結合以外の構造(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等。但し、「R」は、アルキル基。)を有するものも含まれる。
「部分フッ素系電解質」とは、ポリマ骨格中にC−F結合とC−H結合の双方を含むものをいう。
「炭化水素系電解質」とは、ポリマ骨格中にC−H結合を含み、C−F結合を含まないものをいう。
本発明に係る複合電解質には、これらのいずれか1種の電解質ポリマーのみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
これらの中でも、電解質ポリマーは、
(イ) 全フッ素系電解質ポリマー、
(ロ) 主鎖イミド(−[(CF2)m−(SO2NH)n−SO2]X−、m=0〜20、n=1〜20、X=2以上)、
(ハ) 芳香環及び複素環の少なくとも一方を有する重合体からなり、芳香環及び複素環のいずれか1以上ににプロトン酸基が結合しているもの、又は、
(ニ) ビニル系重合体を含み、ビニル系重合体のいずれか1以上にプロトン酸基が導入されたもの、
が好ましい。
芳香環及び/又は複素環を有す得る電解質ポリマーとしては、
(1) ポリアリーレン系重合体(例えば、ポリエーテル系、ポリケトン系、ポリスルホン系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルエーテルスルホン系、ポリフェニレンオキシド系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリフェニレンスルホキシド系、ポリエーテルケトンケトン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系)を含み、重合体に含まれる芳香環及び複素環のいずれか1以上にプロトン酸基が結合しているもの、
(2) ポリアゾール系重合体(例えば、ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾチアゾール系、ポリベンゾオキサゾール系)を含み、重合体に含まれる芳香環及び複素環のいずれか1以上にプロトン酸基が結合しているもの、
が挙げられる。
また、プロトン酸基としては、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸が挙げられ、これらの中でもスルホン酸が最も好ましい。
ポリアリーレン系構造の繰り返し構成単位を含む重合体(ポリアリーレン系重合体)を含む電解質ポリマーは、具体的には、式(1)に示すものが好ましい。
Figure 0005245269
式(1)中、X1、X2、及びX3は、それぞれ、単結合、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基などからなる。これらの基の内、フェニル基、ナフチル基が好ましい。また、ポリマーユニット全体の20〜100%のユニットに含まれるX1、X2、X3の1種以上には、プロトン酸基が結合している。
A、B及びCは、2価の単結合又は有機基を示す。具体的には、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)−、−C(CF2)2−、−(CH2)−、−C(CH2)2−、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−などが挙げられる。
nは、10〜10000の整数を示す。
ポリアゾール系構造の繰り返し構成単位を含む重合体(ポリアゾール系重合体)を含む電解質ポリマーは、具体的には、式(2)に示すものが好ましい。
Figure 0005245269
式(2)中、X4は、O、S、N原子のいずれかを表す。また、X5は、単結合、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基を表す。また、ポリマーユニット全体の20〜100%のユニットに含まれるX5又はベンズアゾール基中の芳香環及び/又は複素環には、プロトン酸基が結合している。
また、ビニル系重合体を含む電解質ポリマーとしては、次の(3)式に示す構造を含むものが好ましい。
−(CX12−CX34)n− ・・・(3)
但し、X1、X2、X4は、それぞれ、H又はR
Rは、−(CH2)m−CH3、m=0〜20
X3は、 −(CH2)a−SO3H、
−(CH2)a−CO−(CH2)b−SO3H、
−(CH2)a−CONH−(CH2)b−SO3H、
−(CH2)a−S−(CH2)b−SO3H、
−(CH2)a−SO2−(CH2)b−SO3H、又は、
−(CH2)a−O−(CH2)b−SO3
a=0〜20、b=0〜20
電解質ポリマー中の酸基量は、特に限定されるものではない。一般に、酸基量が多くなる程、電気伝導度は高くなるが、水に溶解又は膨潤しやすくなる。特に、電解質ポリマー単独では、水中(室温〜100℃)で溶解又は大きく膨潤するものに対して、本発明を適用すると、高い効果が得られる。
電解質ポリマー単独のイオン交換容量は、具体的には、1.0mmol酸基当量/g以上が好ましく、さらに好ましくは、2.0mmol酸基当量/g以上である。
なお、電解質ポリマー単独の膨潤率は、30%以上となる場合が多い。ここで、「電解質ポリマー単独の膨潤率」とは、電解質ポリマー単独での乾燥時膜サイズに対する含水時(室温水中一晩放置後)の膜サイズの増加割合をいう。
電解質ポリマーの分子量は、特に限定されるものではないが、強度の観点から1万以上が好ましい。
[2. 架橋剤分子]
架橋剤分子とは、4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基のうちのいずれか2つ以上の官能基を有する化合物をいう。4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基の解離により生成したカチオン基は、電解質ポリマーに含まれる酸基の解離により形成したアニオン基と疎水性の酸/塩基架橋を形成する。
ここで、「オニウム基」とは、基準結合数よりも1大きい結合を持つカチオンの塩からなる官能基をいう。基準結合数とは、結合数のうち幾つかの元素に基準となる価を設定したものをいう。例えば、F、Cl、Br、I、Atでは1、O、S、Se、Te、Poでは2、N、P、As、Sb、Bi、Bでは3、C、Si、Ge、Sn、Pbでは4である。4級オニウム基としては、具体的には、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基などがある。これらの中でも、4級アンモニウム基は、架橋点を形成するための4級オニウム基として特に好適である。
4級オニウム基としては、テトラアルキルアンモニウム基などがある。
4級ホスホニウム基としては、テトラアルキルホスホニウム基などがある。
含窒素複素環アルキルカチオン基としては、アルキルイミダゾリウム基、アルキルピリジニウム基、アルキルピリダジニウム基、アルキルピリミジニウム基、アルキルピラジニウム基、アルキルキノリウム基、含窒素複素環化合物の4級窒素化物などがある。
架橋剤分子には、上述したいずれか1種の4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。また、架橋剤分子には、1種又は2種以上の4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基を含む1種類の化合物を用いても良く、あるいは、1種又は2種以上の4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基を含む2種以上の化合物を組み合わせて用いても良い。
架橋剤分子の4級オニウム基等の官能基以外の部分の分子構造や4級オニウム基等の官能基の結合部位は、特に限定されるものではない。例えば、炭化水素構造又はフルオロカーボン構造を有する主鎖の末端に4級オニウム基等の官能基が結合していても良く、あるいは、炭化水素構造又はフルオロカーボン構造を有する主鎖の中間に4級オニウム基等の官能基が結合していても良い。さらに、炭化水素構造又はフルオロカーボン構造を有する側鎖の中間又は末端に4級オニウム基等の官能基が結合していても良い。
架橋剤分子としては、具体的には、
(1) ポリ(アルキレン)−トリアルキルアンモニウムクロリド末端((a)式)、
(2) ポリ(N,N−ジアルキル−ベンズイミダゾリウム)((b)式)、
(3) ポリビニル(1−アルキル−ピリジニウム)((c)式)、
(4) ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド((d)式)、
などがある。
Figure 0005245269
[3. 架橋剤分子の添加量]
架橋剤分子の添加量は、電解質ポリマー及び架橋剤分子の種類、要求される特性等に応じて最適な添加量を選択する。一般に、架橋剤分子の添加量が多くなる程、架橋点の数が多くなり、耐水性及び耐膨潤性が向上する。相対的に高い耐水性及び耐膨潤性を得るためには、架橋剤分子の添加量は、4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基の量が酸基量の0.01%に相当する量以上が好ましい。
一方、架橋剤分子の添加量が過剰になると、電解質ポリマーの酸基が架橋反応に消費され、電気伝導度が低下する。高い電気伝導度を得るためには、架橋剤分子の添加量は、4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基の量が酸基量の80%に相当する量以下が好ましい。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る複合電解質について説明する。
本実施の形態に係る複合電解質は、
分子内に酸基と、4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基の内のいずれか1以上の官能基を有する電解質ポリマーを含み、
前記電解質ポリマー分子間又は前記電解質ポリマー分子内において、前記官能基の解離により生成したカチオン基と前記酸基の解離により生成したアニオン基とが疎水性の酸/塩基架橋を形成していることを特徴とする。
すなわち、架橋剤分子を介することなく、高分子鎖間又は同一の高分子鎖内において、カチオン基とアニオン基とが酸/塩基架橋を形成している。この点が、第1の実施の形態とは異なる。
分子内への4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基の導入量は、第1の実施の形態における架橋剤分子の添加量に準ずる。電解質ポリマー、4級オニウム基、含窒素複素環アルキルカチオン基、及び、酸/塩基架橋に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
次に、本発明に係る固体高分子型燃料電池について説明する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を備えている。また、固体高分子型燃料電池は、通常、このようなMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持し、これを複数個積層したものからなる。
MEAを構成する電極は、通常、触媒層と拡散層の二層構造を取るが、触媒層のみによって構成される場合もある。電極が触媒層と拡散層の二層構造を取る場合、電極は、触媒層を介して電解質膜に接合される。
触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、電極触媒又は電極触媒を担持した担体と、その周囲を被覆する触媒層内電解質とを備えている。一般に、電極触媒には、MEAの使用目的、使用条件等に応じて最適なものが用いられる。固体高分子型燃料電池の場合、電極触媒には、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム等若しくはこれらの1種若しくは2種以上を含む合金、又は、白金等の白金族元素と、コバルト、鉄、ニッケル等の遷移金属元素との合金が用いられる。触媒層に含まれる電極触媒の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
触媒担体は、微粒の電極触媒を担持すると同時に、触媒層における電子の授受を行うためのものである。触媒担体には、一般に、カーボン、活性炭、フラーレン、カーボンナノフォーン、カーボンナノチューブ等が用いられる。触媒担体表面への電極触媒の担持量は、電極触媒及び触媒担体の材質、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な担持量が選択される。
触媒層内電解質は、固体高分子電解質膜と電極との間でプロトンの授受を行うためのものである。触媒層内電解質には、通常、固体高分子電解質膜を構成する材料と同一の材料が用いられるが、異なる材料を用いても良い。触媒層内電解質の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
拡散層は、触媒層との間で電子の授受を行うと同時に、反応ガスを触媒層に供給するためのものである。拡散層には、一般に、カーボンペーパ、カーボンクロス等が用いられる。また、撥水性を高めるために、カーボンペーパ等の表面に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性高分子の粉末とカーボンの粉末との混合物(撥水層)をコーティングしたものを拡散層として用いても良い。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、上述したMEAを構成する電解質膜及び/又は触媒層内電解質として、本発明に係る複合電解質を用いたことを特徴とする。
電解質膜に本発明に係る複合電解質を用いる場合、電解質膜は、複合電解質のみからなるものでも良く、あるいは、複合電解質と、多孔質材料、長繊維材料、短繊維材料等からなる補強材との複合体であっても良い。
次に、本発明に係る複合電解質の製造方法について説明する。
まず、酸基を有する電解質ポリマーの酸基を不活性化させる。酸基を不活性化させる方法としては、酸基を有するポリマーを適当な溶媒に溶解させ、これにアンモニア水を加えて酸基とアンモニアとを反応させる方法などがある。
次に、酸基が不活性化された電解質ポリマーを溶解させた溶液に、架橋剤分子を添加する。この時点では、酸基が不活性化されているので、酸基と4級オニウム基等の官能基とが反応することがない。そのため、電解質ポリマーと架橋剤分子とを均一に混合することができる。
電解質ポリマーと架橋剤分子の均一溶液を作製した後、これを適当な基板(例えば、ポリテトラフルオロエチレンシート)に塗布し、溶媒を揮発させると、電解質膜が得られる。また、均一溶液にさらに電極触媒を添加した後、これを適当な基板に塗布し、溶媒を揮発させると、触媒シートが得られる。
次に、電解質ポリマー及び架橋剤分子の混合物を膜化若しくは触媒シート化した後、又は、これらを接合してMEAにした後、膜、触媒シート又はMEAを酸溶液(例えば、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液など)に浸漬する。これにより、不活性化された酸基が元の酸基に戻ると同時に、酸基が解離したアニオンと架橋剤が解離したカチオンとが反応し、電解質内に疎水性の酸/塩基架橋が形成される。
架橋形成後、水洗浄により余分な酸を除去すれば、本発明に係る複合電解質を含む電解質膜、触媒シート又はMEAが得られる。さらに、得られたMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持し、これを所定個数積層すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
分子内に酸基に加えて、4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基の内のいずれか1以上の官能基を有する電解質ポリマーは、例えば、ビニルホスホン酸とビニル(1−エチル)ピリジンとの共重合により製造することができる。また、このような電解質ポリマーの酸基の不活性化は、上述と同様に、アンモニア水により行うことができる。
酸基を不活性化した後、架橋剤分子を添加しない点以外は、上述と同様の手順に従い、電解質膜又は触媒シートを作製する。さらに、得られた膜、触媒シート、又はMEAを酸溶液(例えば、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液など)に浸漬すれば、電解質内に疎水性の酸/塩基架橋が形成される。
架橋形成後、水洗浄により余分な酸を除去すれば、本発明に係る複合電解質を含む電解質膜、触媒シート又はMEAが得られる。さらに、得られたMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持し、これを所定個数積層すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
次に、本発明に係る複合電解質及び固体高分子型燃料電池の作用について説明する。
例えば、ポリベンズイミダゾールのようなイミダゾール基を有する塩基性ポリマーと、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンのような電解質ポリマーとを混合し、これらを反応させると、ポリベンズイミダゾールで架橋された電解質ポリマーが得られる。しかしながら、この方法により得られる電解質ポリマーにおいて、相対的に高い耐水性及び耐膨潤性を得るためには、相対的に多量の塩基性ポリマーを必要とする。これは、架橋点の立体障害が少なく、架橋点に水分子が接近しやすい(すなわち、架橋点の親水性が高い)ために、加湿水や生成水によって架橋点が解離しやすいためと考えられる。
これに対し、4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基を有する架橋剤分子を用いて、電解質ポリマーの酸基が解離したアニオンと架橋剤分子が解離したカチオンとから複合電解質内に酸/塩基架橋を形成すると、相対的に高い電気伝導度を維持したまま、耐水性や耐膨潤性を向上させることができる。これは、カチオン基周辺の立体障害が大きく、架橋点に水分子が接近しにくい(すなわち、架橋点が疎水性となる)ために、水による架橋点の解離が抑制されるためと考えられる。この点は、同一分子内に酸基と4級オニウム基及び/又は含窒素複素環アルキルカチオン基を有する電解質ポリマーのみを用いて複合電解質とする場合も同様である。
そのため、従来の方法に比べて、相対的に少量の架橋剤添加量で、イオン交換容量の大きい電解質ポリマーに対して、不溶性及び膨潤抑制効果を付与することができる。また、高い耐水性、耐膨潤性を得るために消費される酸基量を相対的に少なくすることができるので、従来の方法に比べて、高い電気伝導度が得られる。
(実施例1〜9、比較例1〜9)
[1. 電解質膜の作製]
[1.1. 架橋剤としてポリ(N,N−ジエチルベンズイミダゾリウム)クロライドを用いた場合(実施例1〜3)]
水溶性のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(以下、「S−PEEK」という。EW=370)0.588gを秤量し、ジメチルアセトアミド10mL中に溶解・攪拌した。この溶液に10%アンモニア水を、上記溶液中のスルホン酸基量と等モルとなるように入れ、2時間攪拌した。
次に、10wt%のポリ(N,N−ジエチル−ベンズイミダゾリウム)クロライドのDMAc溶液を、イミダゾリウム基量がS−PEEK中スルホン酸基に対して10%(実施例1)、5%(実施例2)、又は1%(実施例3)となるように入れ、一晩攪拌した後、フラットシャーレにキャストした。ドラフト中で1週間放置後、140℃で2時間真空乾燥し、フィルムをシャーレから剥がした。
このフィルムを1N塩酸中で洗浄(2時間×5回)し、フィルム中に残っているアンモニア及びDMAcを除去した。この後、フィルムを水洗浄(2時間×5回)し、残っていた塩酸を除去した。このフィルムを60℃で一晩乾燥し、目的のフィルムを得た。
[1.2. 架橋剤としてポリビニル(N−エチル−ピリジニウム)クロライドを用いた場合(実施例4〜6)]
水溶性のS−PEEK(EW=370)0.588gを秤量し、ジメチルアセトアミド10mL中に溶解・攪拌した。この溶液に10%アンモニア水を、上記溶液中のスルホン酸基量と等モルとなるように入れ、2時間攪拌した。
次に、10wt%のポリビニル(N−エチル−ピリジニウム)クロライドのDMAc溶液を、ピリジニウム基量がS−PEEK中スルホン酸基に対して10%(実施例4)、5%(実施例5)、又は1%(実施例6)となるように入れ、一晩攪拌した後、フラットシャーレにキャストした。ドラフト中で1週間放置後、140℃で2時間真空乾燥し、フィルムをシャーレから剥がした。
このフィルムを1N塩酸中で洗浄(2時間×5回)し、フィルム中に残っているアンモニア及びDMAcを除去した。この後、フィルムを水洗浄(2時間×5回)し、残っていた塩酸を除去した。このフィルムを60℃で一晩乾燥し、目的のフィルムを得た。
[1.3. 架橋剤としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた場合(実施例7〜9)]
水溶性のS−PEEK(EW=370)0.588gを秤量し、ジメチルアセトアミド10mL中に溶解・攪拌した。この溶液に10%アンモニア水を、上記溶液中のスルホン酸基量と等モルとなるように入れ、2時間攪拌した。
次に、10wt%のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドのDMAc溶液を、アンモニウム基量がS−PEEK中スルホン酸基に対して10%(実施例7)、5%(実施例8)、又は1%(実施例9)となるように入れ、一晩攪拌した後、フラットシャーレにキャストした。ドラフト中で1週間放置後、140℃で2時間真空乾燥し、フィルムをシャーレから剥がした。
このフィルムを1N塩酸中で洗浄(2時間×5回)し、フィルム中に残っているアンモニア及びDMAcを除去した。この後、フィルムを水洗浄(2時間×5回)し、残っていた塩酸を除去した。このフィルムを60℃で一晩乾燥し、目的のフィルムを得た。
[1.4. 架橋剤なしの場合(比較例1)]
水溶性のS−PEEK(EW=370)0.588gを秤量し、ジメチルアセトアミド10mL中に溶解・攪拌した。この溶液を一晩攪拌した後、フラットシャーレにキャストした。ドラフト中で1週間放置後、140℃で2時間真空乾燥し、フィルムをシャーレから剥がした。
このフィルムを1N塩酸中で洗浄(2時間×5回)し、フィルム中に残っているDMAcを除去した。この後、フィルムを水洗浄(2時間×5回)し、残っていた塩酸を除去した。このフィルムを60℃で一晩乾燥し、目的のフィルムを得た。
[1.5. 架橋剤としてポリベンズイミダゾールを用いた場合(比較例2〜4)]
水溶性のS−PEEK(EW=370)0.588gを秤量し、ジメチルアセトアミド10mL中に溶解・攪拌した。この溶液に10%アンモニア水を、上記溶液中のスルホン酸基量と等モルとなるように入れ、2時間攪拌した。
次に、10wt%のポリベンズイミダゾールのDMAc溶液を、イミダゾール基量がS−PEEK中スルホン酸基に対して10%(比較例2)、5%(比較例3)、又は1%(比較例4)となるように入れ、一晩攪拌した後、フラットシャーレにキャストした。ドラフト中で1週間放置後、140℃で2時間真空乾燥し、フィルムをシャーレから剥がした。
このフィルムを1N塩酸中で洗浄(2時間×5回)し、フィルム中に残っているアンモニア及びDMAcを除去した。この後、フィルムを水洗浄(2時間×5回)し、残っていた塩酸を除去した。このフィルムを60℃で一晩乾燥し、目的のフィルムを得た。
[1.6. 架橋剤としてポリビニルピリジンを用いた場合(比較例5〜7)]
水溶性のS−PEEK(EW=370)0.588gを秤量し、ジメチルアセトアミド10mL中に溶解・攪拌した。この溶液に10%アンモニア水を、上記溶液中のスルホン酸基量と等モルとなるように入れ、2時間攪拌した。
次に、10wt%のポリビニルピリジンのDMAc溶液を、ピリジン基量がS−PEEK中スルホン酸基に対して10%(比較例5)、5%(比較例6)、又は1%(比較例7)となるように入れ、一晩攪拌した後、フラットシャーレにキャストした。ドラフト中で1週間放置後、140℃で2時間真空乾燥し、フィルムをシャーレから剥がした。
このフィルムを1N塩酸中で洗浄(2時間×5回)し、フィルム中に残っているアンモニア及びDMAcを除去した。この後、フィルムを水洗浄(2時間×5回)し、残っていた塩酸を除去した。このフィルムを60℃で一晩乾燥し、目的のフィルムを得た。
[1.7. 架橋剤としてポリジアリルアミンを用いた場合(比較例8〜10)]
水溶性のS−PEEK(EW=370)0.588gを秤量し、ジメチルアセトアミド10mL中に溶解・攪拌した。この溶液に10%アンモニア水を、上記溶液中のスルホン酸基量と等モルとなるように入れ、2時間攪拌した。
次に、10wt%のポリビニルピリジンのDMAc溶液を、アミノ基量がS−PEEK中スルホン酸基に対して10%(比較例8)、5%(比較例9)、又は1%(比較例10)となるように入れ、一晩攪拌した後、フラットシャーレにキャストした。ドラフト中で1週間放置後、140℃で2時間真空乾燥し、フィルムをシャーレから剥がした。
このフィルムを1N塩酸中で洗浄(2時間×5回)し、フィルム中に残っているアンモニア及びDMAcを除去した。この後、フィルムを水洗浄(2時間×5回)し、残っていた塩酸を除去した。このフィルムを60℃で一晩乾燥し、目的のフィルムを得た。
[2. 試験方法]
得られたフィルムの耐熱水性、水膨潤率、及び電気伝導度を測定した。耐熱水試験は、フィルムを沸騰水中に1時間浸漬することにより行い、溶解したか否かを目視により確認した。また、水膨潤率は、絶乾状態の膜と室温の水に一晩浸漬した後の膜の長さの変化率として求めた。さらに、電気伝導度は、交流4端子法(水中、25℃)により測定した。
[3. 結果]
表1に、その結果を示す。S−PEEKのみからなるフィルム(比較例1)は、イオン交換容量が大きい(EWが小さい)ために、電気伝導度は高い。しかしながら、水膨潤率が大きく、耐熱水試験では完全に溶解した。
一方、架橋剤としてポリベンズイミダゾールを用いた場合(比較例2〜4)、ポリビニルピリジンを用いた場合(比較例5〜7)、及びポリジアリルアミンを用いた場合(比較例8〜10)を用いた場合のいずれも、添加量が5%以上であるときは、フィルムは熱水に対して不溶となった。また、架橋剤の添加量が多くなる程、電気伝導度は低くなるが、水膨潤率は小さくなった。しかしながら、添加量が1%の時には、いずれも溶解した。
これに対し、架橋剤としてポリ(N,N−ジエチル−ベンズイミダゾリウム)クロライドを用いた場合(実施例1〜3)、ポリビニル(N−エチル−ピリジニウム)クロライドを用いた場合(実施例4〜6)、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた場合(実施例7〜8)のいずれも、フィルムは熱水に対して不溶となった。また、スルホン酸基量に対して10%相当の架橋剤の添加により、比較例2、5、8と同等以上の電気伝導度と、約1/2の水膨潤率が得られた。さらに、架橋剤添加量が1%であっても、膜は、熱水に対して不溶であった。
表1より、4級オニウム基又は含窒素複素環アルキルカチオン基を2つ以上有する架橋剤分子を用いると、高い電気伝導度を維持したまた、耐熱水性・耐膨潤性を向上させることができることがわかる。
Figure 0005245269
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る複合電解質は、固体高分子型燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、電極材料等として用いることができる。
また、本発明に係る固体高分子型燃料電池は、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等に用いることができる。

Claims (7)

  1. 酸基を有する電解質ポリマーと、
    4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基のうちのいずれか2つ以上の官能基を有する架橋剤分子とを備え、
    前記官能基の解離により生成したカチオン基と前記酸基の解離により生成したアニオン基とが疎水性の酸/塩基架橋を形成している複合電解質。
  2. 分子内に酸基と、4級オニウム基及び含窒素複素環アルキルカチオン基のうちのいずれか1以上の官能基を有する電解質ポリマーを含み、
    前記電解質ポリマー分子間又は前記電解質ポリマー分子内において、前記官能基の解離により生成したカチオン基と前記酸基の解離により生成したアニオン基とが疎水性の酸/塩基架橋を形成している複合電解質。
  3. 前記電解質ポリマーは、
    (イ) 全フッ素系電解質ポリマー、
    (ロ) 主鎖イミド、
    (ハ) ポリアリーレン系若しくはポリアゾール系の重合体を含み、前記重合体に含まれる芳香環及び複素環のいずれか1以上にプロトン酸基が導入されたもの、又は、
    (ニ) ビニル系重合体を含み、前記ビニル系重合体のいずれか1以上にプロトン酸基が導入されたもの、
    を含む請求項1又は2に記載の複合電解質。
  4. 前記4級オニウム基は、4級アンモニウム基、及び4級ホスホニウム基からなる群から選ばれるいずれか1以上である
    請求項1から3までのいずれかに記載の複合電解質。
  5. 前記官能基は、
    (イ) テトラアルキルアンモニウム基、
    (ロ) テトラアルキルホスホニウム基、並びに、
    (ハ) アルキルイミダゾリウム基、アルキルピリジニウム基、アルキルピリダジニウム基、アルキルピリミジニウム基、アルキルピラジニウム基、アルキルキノリウム基、及び、含窒素複素環化合物の4級窒素化物
    からなる群から選ばれるいずれか1以上である請求項1から4までのいずれかに記載の複合電解質。
  6. 前記架橋剤分子は、ポリ(アルキレン)−トリアルキルアンモニウムクロリド末端、ポリ(N,N−ジアルキル−ベンズイミダゾリウム)、ポリビニル(1−アルキル−ピリジニウム)、及び、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれるいずれか1以上である請求項1に記載の複合電解質。
  7. 請求項1から6までのいずれかに記載の複合電解質を電解質膜及び/又は触媒層内電解質に用いた固体高分子型燃料電池。
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