本発明においては、モータの回転速度の変化や回転方向の変化が頻繁になっても応答性に支障がなく、また、上糸に対するテンションの大きさを制御し、特に、天秤が下降する際に上糸に付与されるテンションの大きさを制御することができる刺繍用ミシンを提供するという目的を以下のようにして実現した。なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。
本発明に基づく刺繍用ミシン5−1は、図1〜図13に示すように構成され、刺繍ヘッド10−1〜10−nと、釜22dと、縫製枠(保持枠、刺繍枠としてもよい)22eと、釜用モータ32dと、枠駆動用モータ32eと、演算装置50と、記憶装置60とを有している。
ここで、刺繍ヘッド10−1〜10−nは、略平板状のミシンテーブル(図示せず)の上方に設けられ、刺繍ヘッド10−1〜10−nにおける各刺繍ヘッドは、所定の間隔を介して略直線状に配列されている。つまり、ミシンテーブルの上面からはフレーム100(図4参照)が立設して設けられ、このフレーム100の正面側(Y1側)に各刺繍ヘッドが設けられている。
刺繍ヘッド10−1〜10−nにおける各刺繍ヘッドは同様の構成であるので、刺繍ヘッド10−1を例にとって説明すると、刺繍ヘッド10−1は、図1〜図4に示すように構成され、機械要素群20と、制御装置30と、ケース部110と、巻き糸120と、上糸テンション付与機構部130と、を有している。
この機械要素群20は、刺繍ヘッドにおいて駆動される各機械要素であり、機械要素としては、天秤22aと、針棒22bと、布押え22cとが設けられている。
ここで、天秤22aは、ケース部110に対して左右方向(X1−X2方向)の軸線を中心に揺動可能に形成されている。つまり、天秤22aにおいては、図4に示すように、その基端部分に天秤用モータ32aの回転軸(モータ軸)32a−1が挿通され、この回転軸32a−1を中心に回動する。
つまり、天秤22aは、上糸122を引っ張る機能を有するものであり、図5、図6に示すように、天秤用モータ32aの回転軸32a−1に取り付けられた天秤アーム部24と、複数の針棒における各針棒に対応して設けられた天秤先端部26とを有し、これら複数の天秤先端部26は、針棒ケース114に配設され、針棒ケース114が左右方向にスライドすることにより天秤アーム部24と係合した天秤先端部26が、天秤アーム部24に支持されて回転することになる。
すなわち、天秤アーム部24は、弓状の板状を呈し、先端に行くほど下方に湾曲した板状を呈している。この天秤アーム部24の基端部分には、左右方向に穴部が形成され、回転軸32a−1が挿通されて回転軸32a−1に固定されている。つまり、天秤アーム部24の基端部分に設けられた穴部と回転軸32a−1の軸線J1は、左右方向を向いている。また、天秤アーム部24の先端側は、天秤先端部26と係合可能に形成され、図5の例では、側面視において凸状に形成されている。
なお、天秤用モータ32aは、ケース部110におけるアーム112側に設けられている。つまり、天秤用モータ32aや天秤アーム部24は、針棒ケース114が左右方向にスライドしてもスライドすることはない。
また、複数の天秤先端部26における各天秤先端部26は同一の構成であり、天秤先端部26は、糸通し部26aと、糸通し部26aと一体に形成された接続部26bとを有している。
ここで、糸通し部26aは、略円筒状を呈し、内部には略円柱状の空間が形成されている。この糸通し部26aの上端と下端は、円弧状に面取りされ、角部が形成されてないようになっている。これにより、上糸が糸通し部26aの上端と下端の接触しても糸切れが生じないようになっている。この糸通し部26aの軸線J2は、穴部24aの軸線J1と直角に構成されており、これにより、糸通し部26aの内部の糸通し空間の軸線J2は、回転軸32a−1の方向(つまり、軸線J1の方向)に対して直角に形成されている。
また、接続部26bは、糸通し部26aの背面側(Y2側)の側部に設けられ、天秤アーム部24と係合可能に形成され、図5の例では、側面視において凹状に形成されている。
複数の天秤先端部26は、天秤アーム部24に係合されて駆動されない状態では、針棒ケース114における左右方向に設けられた支持板部116に配設され、針棒ケース114が左右方向にスライドすることにより天秤アーム部24と係合した天秤先端部26が天秤アーム部24に支持された状態で回転する。
なお、通常の刺繍用ミシンにおける天秤が上下方向に揺動するのに対して、本実施例の場合には、図4、図5、図8に示すように、天秤22aは、前後方向に揺動し、天秤22aの揺動範囲において、最も正面側の位置においては、上糸テンション付与機構部130におけるテンション皿132aとテンション皿132b間の上糸122がそのまま垂直に垂下した状態で天秤22aの糸通し部26aに挿通するようになっている。つまり、天秤22aの揺動範囲における最も正面側の位置(糸通し部26aが最も正面側にある位置)においては、上糸122は、途中で折れ曲がることなく垂下して、天秤22aの糸通し部26a内を挿通する。この天秤22aの揺動範囲における最も正面側の位置が下死点となる。一方、天秤22aがこの下死点以外の位置にある場合には、上糸122は天秤22aの糸通し部26aの位置で折れ曲がることになり、天秤22aの揺動範囲における最も背面側の位置(糸通し部26aが最も背面側にある位置)、すなわち、揺動範囲における下死点とは反対側の端部位置が天秤22aの上死点となる。つまり、上死点は、天秤22aの回転中心を挟んで下死点に対して反対側にある。また、天秤22aが上死点の位置にある場合には、上糸122は鉛直方向に対して略くの字状に迂回するように天秤22aにより引っ張られる。
また、針棒22bは、上下動可能に設けられ、針棒22bには、下端に縫い針22b−1(この縫い針22b−1の針穴22b−2に上糸を挿通される)が固定して設けられ、上端には針棒抱き22b−3が固定して設けられている。針棒22bについては、実際には、針棒22bが1つの刺繍ヘッドにおいて複数設けられていて、該複数の針棒22bは、針棒ケース114に支持され、針棒ケース114を左右方向にスライドすることにより選択された針棒が上下動駆動される。つまり、図4に示すように、針棒用モータ32bのモータ軸には、駆動レバー152が設けられ、さらに、駆動レバー152のモータ軸側とは反対側の端部には連結アーム154の端部が回転可能に軸支され、連結アーム154の他方の端部には、針棒駆動部材156が回転可能に軸支されている。この駆動レバー152と連結アーム154はクランク機構を構成する。この針棒駆動部材156には、上下方向に設けられた基針棒158が挿通されて、針棒駆動部材156は、基針棒158に沿って上下動可能に形成され、針棒抱き22b−3と係合するように構成されている。つまり、針棒ケース114がスライドして所定の針棒を選択した際に、その針棒の針棒抱き22b−3が針棒駆動部材156と係合する。これにより、針棒用モータ32bが駆動すると、駆動レバー152が回転し、これにより連結アーム154を介して針棒駆動部材156が上下動することにより、針棒22bが上下動することになる。上記駆動レバー152と、連結アーム154と、針棒駆動部材156と、基針棒158とで、針棒駆動機構150が構成される。針棒駆動機構150を構成する各部は、アーム112内に設けられている。また、針棒用モータ32bと針棒駆動機構150とで上記針棒駆動部が構成される。
また、布押え22cは、図7に示すように、昇降ロッド168の下端に固定され、この昇降ロッド168が上下動することにより布押えが上下動するようになっている。すなわち、図7に示すように、布押え用モータ32cのモータ軸には、駆動レバー162が設けられ、さらに、駆動レバー162のモータ軸側とは反対側の端部には連結アーム164の端部が回転可能に軸支され、連結アーム164の他方の端部には、固定部材166が回転可能に軸支されていて、昇降ロッド168は、固定部材166に固定されている。この駆動レバー162と連結アーム164はクランク機構を構成する。なお、昇降ロッド168は、アーム112に固定された案内部材(図示せず)により上下動可能に支持されている。つまり、昇降ロッド168の上側と下側が案内部材により支持されている。これにより、布押え用モータ32cが回転することにより布押え22cが上下動することになる。駆動レバー162と連結アーム164と固定部材166と昇降ロッド168と案内部材とで、布押え駆動機構160が構成される。この布押え駆動機構160は、針棒駆動機構150と左右方向に隣接して設けられている。また、布押え用モータ32cと布押え駆動機構160で上記布押え駆動部が構成される。なお、布押え22cは、刺繍ヘッドごとに1つ設けられている。
また、制御装置30は、図2に示すように、天秤用モータ32aと、針棒用モータ32bと、布押え用モータ32cと、エンコーダ34a、34b、34cと、制御回路40とを有している。
ここで、天秤用モータ32aは、天秤22aを揺動させるためのモータであり、その回転軸は正逆回転し、回転軸の軸線は左右方向(X1−X2方向)を向いている。また、針棒用モータ32bは、針棒22bを上下動させるためのモータである。また、布押え用モータ32cは、布押え22cを上下動させるためのモータである。また、エンコーダ34a、34b、34cは、各モータの位置(回転方向の位置)を検出するためのもので、エンコーダ(天秤用モータ角度検出部)34aは、天秤用モータ32aに接続され、天秤用モータ32aの位置を検出し、エンコーダ(針棒用モータ角度検出部)34bは、針棒用モータ32bに接続され、針棒用モータ32bの位置を検出し、エンコーダ(布押え用モータ角度検出部)34cは、布押え用モータ32cに接続され、布押え用モータ32cの位置を検出する。
また、制御回路40は、天秤用モータ32aと針棒用モータ32bと布押え用モータ32cの各モータの動作を制御する回路で、演算装置50からのデータに従い、各モータの動作を制御する。つまり、制御回路40は、演算装置50から送信された仮想主軸データと天秤用データ(図11参照)とに基づき、天秤用モータ32aの動作を制御し、演算装置50から送信された仮想主軸データと針棒用データ(図12参照)とに基づき、針棒用モータ32bの動作を制御し、演算装置50から送信された仮想主軸データと布押え用データ(図13参照)とに基づき、布押え用モータ32cの動作を制御する。
さらに、制御回路40は、釜用モータ32dと枠駆動用モータ32eの動作を制御する。つまり、制御回路40は、演算装置50から送信された仮想主軸データと釜用データ(図示せず)とに基づき、釜用モータ32dの動作を制御し、演算装置50から送信された仮想主軸データと枠用データ(図示せず)とに基づき、枠駆動用モータ32eの動作を制御する。
この制御回路40は、図3に示すように、CPU42と、PWM(Pulse Width Modulation)回路44と、電流センサ46とを有している。ここで、CPU42は、演算装置50からのデータに基づいてモータに供給する電流値のデータをPWM回路44に出力する。PWM回路44は、CPU42からの電流値の振幅を振幅が一定のパルス信号に変換して該パルス信号を天秤用モータ32aに供給する。また、電流センサ46は、PWM回路44から出力されるパルス信号を電流値に変換し、電流値に定数を乗算してトルク値を算出してCPU42に出力する。
より具体的には、制御回路40は、図14〜図16に示すフローチャートや、図17、図18に示す機能ブロック図に示すように制御を行なう。詳しくは後述する。
また、制御回路40は、上糸テンション付与機構部130の動作も制御するが、詳しくは後述する。
また、ケース部110は、刺繍ヘッド10−1の筐体を構成し、フレーム100に固定されたアーム112と、アーム112の正面側に設けられアーム112に対して左右方向(X1−X2方向)に摺動する針棒ケース114とを有している。天秤用モータ32a、針棒用モータ32b、布押え用モータ32c、エンコーダ34a〜34c、制御回路40は、アーム112内に設けられている。
また、巻き糸120は、上糸を巻き付けて構成したものであり、ケース部110の上端に回転可能に支持されている。
また、上糸テンション付与機構部130は、天秤22aに挿通された上糸122の天秤22aよりも上流位置で上糸122の引き出しを停止させるものであり、図8に示すように、刺繍ヘッド10−1における天秤22aの上方位置に設けられ、上糸テンション付与機構本体131と、ソレノイド(上糸テンション付与用駆動部)142とを有している。
上糸テンション付与機構本体131は、テンション皿群132と、支持部136と、バネ部138と、駆動軸140とを有しており、これらは針棒ケース114の上部に設けられている。なお、上糸テンション付与機構本体131は、針棒ごとに設けられている。
テンション皿群132は、テンション皿132aとテンション皿132bとが互いに対向して設けられ、一対のテンション皿132a、132b間に上糸を挟むことができるようになっている。つまり、各テンション皿132a、132bは、ともに略円形板状(具体的には、円形板状の中央部分が外側に突出した形状)で中心に軸部136cを挿通する穴部を有する本体部133と、本体部133の周端から斜めに立設したテンション皿フレーム部134とを有し、テンション皿フレーム部134が外側になるようにしてテンション皿132aとテンション皿132bとが互いに対向している。
また、支持部136は、テンション皿群132を回転可能に軸支するものであり、板状部136aと、ロッド136bと、軸部136cとを有している。すなわち、板状部136aは、四角形状(その一辺がテンション皿132a、132bの直径よりも大きい四角形状)の板状を呈し、また、ロッド136bは、板状部136aの4つの角部にそれぞれ固定して設けられ、各ロッド136bの板状部136aとは反対側の端部は、針棒ケース114の正面側に固着されている。また、軸部136cは、板状部136aの背面側の略中央位置に固定して設けられ、前後方向(Y1−Y2方向)に形成されている。
また、バネ部138は、テンション皿132aと板状部136aとの間に設けられ、テンション皿132aをテンション皿132b側に付勢している。
また、駆動軸140は、軸部136cと同一軸線上に設けられ、軸部136cと、接続端部140bと、端部140cとを有している。軸部140aは、針棒ケース114の正面側と背面側にそれぞれ形成された穴部に挿通して支持されている。また、軸部140aは、アーム112に形成された穴部112aにも挿通されているが、針棒ケース114が左右方向にスライドすることから、針棒ケース114がスライドすることにより駆動軸140がスライドしても穴部112aが邪魔とならないように穴部112aは左右方向に長穴状に形成されている。接続端部140bは、軸部136cの背面側の端部と摺動可能に接続され、円筒状部140b−1と、円筒状部140b−1の背面側を封止する円形板状部140b−2を有し、この円形板状部140b−2の背面側に軸部140aの正面側が固着されている。軸部136cの背面側の端部は、円筒状部140b−1内に配置されている。なお、ソレノイド142が駆動しない状態では、軸部136cの背面側の端部と円形板状部140b−2間には隙間が形成されている。また、端部140cは、軸部140aの背面側の端部に固着され、略円形板状を呈している。
また、ソレノイド142は、アーム112の内部に支持されており、ソレノイド142を駆動することによりソレノイド142の軸部142aを正面側に移動させる。これにより、駆動軸140が正面側に押されて、テンション皿群132をバネ部138側に押すことにより、一対のテンション皿132a、132b間の上糸にテンションを付与するようになっている。なお、複数の上糸テンション付与機構本体131のうち、針棒ケース114が左右方向にスライドすることにより、選択された上糸テンション付与機構本体131の駆動軸140がソレノイド142により押されることになる。以上のようにして、1つの刺繍ヘッドにおいて、上糸テンション付与機構部130を構成するソレノイド142を1つのみ設ければよく、部品点数を少なくすることができる。
上記構成の上糸テンション付与機構部130においては、巻き糸120から引き出された上糸122が一対のテンション皿132a、132b間に挟んだ状態で設けられ、ソレノイド142を駆動しない状態では、バネ部138の付勢力により一対のテンション皿132a、132b間の上糸に対して軽くテンションが掛けられている。一方、ソレノイド142を駆動した場合には、バネ部138の付勢力に抗して駆動軸140がテンション皿群132をバネ部138側に押すので、テンション皿132bがテンション皿132aに対して強く押された状態となり、上糸122がテンション皿132aとテンション皿132b間に固定された状態となる。つまり、この状態では、一対のテンション皿132a、132b間のテンションは、天秤22aが上糸122を巻き糸120から引き出すことができないように設定されている。
なお、天秤22aの制御における下記で説明する特定期間においては、ソレノイド142を駆動して、上糸122をテンション皿132aとテンション皿132b間に固定し、特定期間以外の期間(以下「非特定期間」とする)場合には、ソレノイド142の駆動をオフとする。上糸テンション付与機構部130の動作の制御は、制御回路40により行われる。
また、ケース部110には、各所に上糸122の引き出しを円滑とするためのローラ部が設けられている。つまり、アーム112の上端の巻き糸120と上糸テンション付与機構部130間(アーム112の上端における巻き糸120の正面側)には、ローラ170aが設けられ、針棒ケース114における上糸テンション付与機構部130と天秤22aの間には、ローラ170bが設けられ、天秤22aと針棒22bの間には、ローラ170cが設けられている。
また、釜22dは、刺繍ヘッド10−1〜10−nの下方でミシンテーブルの上面よりも下側の位置に各刺繍ヘッドごとに設けられている。具体的には、ミシンテーブルの下側に設けられた釜土台(図示せず)に支持されている。
また、縫製枠22eは、加工布を張設保持するための枠状部材であり、ミシンテーブルの上方(上面としてもよい)に設けられている。
また、釜用モータ32dは、釜22dを駆動させるためのモータであり、例えば、釜22dを支持する釜土台に設けられている。また、枠駆動用モータ32eは、縫製枠22eを駆動するためのモータである。また、釜用モータ32dには、釜用モータ32dの位置を検出するエンコーダ34dが接続され、また、枠駆動用モータ32eには、枠駆動用モータ32eの位置を検出するエンコーダ34eが接続されている。
また、エンコーダ34a〜34eは、制御回路40と接続され、各エンコーダにより検出された位置情報が制御回路に送られる。
また、演算装置50は、主として、記憶装置60に記憶されている刺繍データに従い、仮想主軸データを作成する。この仮想主軸データは、図9に示すように、時間と主軸角度との対応を示すデータである。本実施例の刺繍用ミシン5−1においては、従来の刺繍用ミシンとは異なり、各刺繍ヘッドにおける機械要素と機械的に連結した1本の主軸は設けられていないが、各機械要素の動作を同期させるために仮想の主軸としての主軸データを用意し、この仮想主軸データと機械要素に対応した対応データ(例えば、天秤用データ、針棒用データ、布押え用データ)に従い各機械要素の動作を制御するのである。ここで、主軸角度とは、仮想主軸の角度、すなわち、回転方向の位置を示すものである。
また、記憶装置60には、刺繍を行なうための刺繍データが記憶されている。この刺繍データは、例えば、ステッチ幅、ステッチ方向、糸種類についてのデータが各ステッチごとに設けられたものである。また、この記憶装置60には、各機械要素ごとに、主軸角度と該機械要素の角度との対応を規定する角度対応データ(位置パターンデータとしてもよい)(例えば、天秤用データ、針棒用データ、布押え用データ)が記憶されている。
例えば、天秤用データ(天秤用角度対応データ)(図11)においては、主軸角度と、主軸角度に対応した天秤角度とが規定されている。ここでいう天秤角度とは、天秤用モータ32aの回転方向の位置を示すものである。また、天秤用データにおいては、後述するように、天秤の動作に際して、所定の区間である特定期間においては、トルク制御を行なうので、そのためのトルク情報が設けられている。つまり、主軸角度に応じて、トルクデータが記憶されている。なお、該トルクデータは、主軸角度に対応して定められているが、天秤角度も主軸角度に対応して定められているので、トルクデータは、天秤角度に対応して定められているともいえる。
また、針棒用データ(針棒用角度対応データ)(図12)においては、主軸角度と、主軸角度に対応した針棒角度とが規定されている。ここでいう針棒角度とは、針棒用モータ32bの回転方向の位置を示すものである。
また、布押え用データ(布押え用角度対応データ)(図13)においては、主軸角度と、主軸角度に対応した布押え角度とが規定されている。ここでいう布押え角度とは、布押え用モータ32cの回転方向の位置を示すものである。
なお、図示されていないが、釜用のデータ(主軸角度と、主軸角度に対応した釜角度とが規定されたデータで、釜角度とは、釜用モータ32dの回転方向の位置を示すものである)も記憶装置60に記憶されている。
なお、仮想主軸データにおける角度データは、実際には角度に対応した数値が格納され、また、角度対応データ(天秤用データ、針棒用データ、布押え用データ、釜用データ)における角度データは、実際には角度に対応した数値が格納されている。また、上記天秤用データ、針棒用データ、布押え用データ、釜用データは、ともに所定の回転数(例えば、1000回転)を基準として作成されたものである。
次に、上記構成の刺繍用ミシン5−1の動作について、図14〜図20を使用して説明する。なお、天秤22a以外の機械要素(針棒、布押え、釜等)については、図14、図15に示すフローチャートが適用され、天秤については、図14のフローチャートと、図15のフローチャートにおけるステップS21〜S25までの工程と、図16に示すフローチャートが適用される。また、図17、図18は、機能ブロック図であるが、天秤以外の機械要素(針棒、布押え、釜等)については、図17が適用され、天秤については、図18が適用される。
なお、図14に示すステップS11から図15に示すステップS25までは天秤と天秤以外の機械要素については同じ制御を行なうので、以下にまとめて説明する。また、以下に説明する制御方法は、当然各機械要素ごとに行なう。
まず、演算装置50は、記憶装置60に記憶されている刺繍データに従い、仮想主軸データを作成する。記憶装置60には、作成する刺繍についてステッチごとにステッチ幅、ステッチ方向、糸種類等の情報が記憶されているので、各ステッチのステッチ幅、ステッチ方向、糸種類に応じて仮想主軸データを作成する。この仮想主軸データは、時間ごとの仮想主軸角度のデータであり、例えば、ステッチ幅が大きい場合には、仮想主軸の角度変化を小さくし、ステッチ幅が小さい場合には、仮想主軸の角度変化を大きくする。また、ステッチの方向が前回のステッチの方向と逆の方向となる場合には、仮想主軸の角度変化を小さくする。
この演算装置50による仮想主軸データの作成は、実際に各機械要素(針棒、天秤、釜、布押え等)により刺繍縫いを行なうステッチよりも数ステッチ前の仮想主軸データを作成することにより、仮想主軸データを作成しながら実際の刺繍縫いを行なう。なお、予め演算装置50により、ある刺繍データの全体について仮想主軸データを作成しておいてもよい。
仮想主軸データの一例としては、図10に示すものが挙げられる。図10に示す仮想主軸データは、等速で回転しつづけるものであるが、各ステッチのステッチ幅が同じで、ステッチの角度も同じ方向である場合には、このような仮想主軸データとすればよい。なお、あるステッチのステッチ幅が大きい場合には、1ステッチの時間を長くし、ステッチ幅が小さい場合には、1ステッチの時間を短くする。
仮想主軸データを作成したら、仮想主軸の回転速度を検出する(図14のS11)。つまり、仮想主軸データを各時刻において微分し、各時刻における回転速度を検出する。
次に、検出された仮想主軸の回転速度に基づき、回転速度比率を算出する(図14のS12)。つまり、主軸角度と各モータの角度の対応を規定するデータ(天秤用データ、針棒用データ、布押え用データ、釜用データ)は、所定の回転数を基準として作成されていることから、検出された回転速度と所定の回転数との比率を算出するのである。
次に、角度対応データから角度データ(位置データとしてもよい)を読み出す(図14のS13、図17、図18のS13、読出し工程)。つまり、仮想主軸データにおいて処理の対象となる時間に対応する角度(主軸角度)に対応する角度を各角度対応データから検出してその角度のデータを読み出す。例えば、天秤用データにおいては、仮想主軸データにおいて処理の対象となる時間に対応する角度(主軸角度)に対応する天秤角度を読み出す。
次に、角度対応データから検出された角度データの単位時間当たりの変化量を検出して速度データを算出する(図14のS14、図17、図18のS14、速度データ算出工程)。つまり、角度データの変化量を時間で除算することにより速度データを算出する。例えば、時間t1における速度データを算出する場合には、仮想主軸データにおける時間t0の角度がa0、時間t1の角度がa1で、主軸角度a0に対応する天秤角度がb0、主軸角度a1に対応する天秤角度がb1とした場合に、(b1−b0)/(t1−t0)を算出する。なお、上記のように時間的に隣接する時間の変化量ではなく、時間的に離れた時間の変化量により算出してもよい。以上のように、角度データを微分することにより速度データを算出する。
次に、速度データの単位時間当たりの変化量を検出してトルクデータを算出する(図14のS15、図17、図18のS15、トルクデータ算出工程)。つまり、速度データの変化量を時間で除算することによりトルクデータを算出する。例えば、直前に算出した速度データがs1で直前の1つ前に算出した速度データがs0である場合に、(s1−s0)/1によりトルクデータを算出する。なお、上記のように時間的に隣接する時間の変化量ではなく、時間的に離れた時間の変化量により算出してもよい。以上のように、速度データを微分することにより速度データを算出する。なお、速度の変化量を算出するために必要な速度データは予めCPU42が保持しておく。
次に、ステップS14で算出された速度データにステップS12で算出された回転速度比率を乗算して、速度補償データを算出する(図14のS16、図17、図18のS16)。
次に、ステップS15で算出されたトルクデータからトルク補償データを算出する(図14のS17、図17、図18のS17)。すなわち、トルクデータに対して慣性比率を乗算し(図17、図18のS17−1)、慣性比率を乗算して得た値に回転速度比率を乗算し(図17、図18のS17−2)、回転速度比率を乗算して得た値にメカロスに基づくトルクを加算してトルク補償データを算出する(図17、図18のS17−3)。ここで、慣性比率とは、各機械要素の質量等に応じて予め定められた定数であり、回転速度比率は、ステップS12で算出された値である。また、メカロスに基づくトルクは、各機械要素に応じて予め定められた値である。
次に、ステップS13において読み出された角度データからエンコーダ34a等からのデータ(エンコーダのカウント値)を減算する(図15のS21、図17、図18のS21、位置偏差算出工程)。このステップS21で算出された値は、位置偏差の値といえる。なお、当然エンコーダは、制御対象の機械要素に対応するエンコーダであり、例えば、天秤の場合には、エンコーダ34aからのデータが用いられる。
次に、ステップS21で算出された算出値に対して、予め定められた定数を乗算して、速度値を算出する(図15のS22、図17、図18のS22)。
次に、エンコーダ34a等からの出力を微分してモータ現在速度値を算出する(図15のS23、図17、図18のS23)。つまり、エンコーダのカウント値の単位時間当たりの変化量を算出して、モータ現在速度値を算出する。
次に、ステップS22で算出された速度値からステップS23で算出されたモータ現在速度値を減算し、さらに、ステップS16で算出された速度補償データを加算する(図15のS24、図17、図18のS24、速度偏差算出工程)。このステップS24で算出された値は、速度偏差の値であるといえる。
次に、ステップS24で算出された算出値に対して、予め定められた定数を乗算して、トルク値を算出する(図15のS25、図17、図18のS25)。
上記ステップS25以降の工程は、天秤22a以外の機械要素と、天秤22aとに分けて説明する。
まず、天秤以外の機械要素については、ステップS25で算出されたトルク値から電流センサ46からのトルク値を減算し、さらに、ステップS17で算出されたトルク補償データを加算する(図15のS26、図17のS26、トルク偏差算出工程)。このステップS26で算出された値は、トルク偏差の値といえる。
次に、ステップS26で算出された算出値に対して、予め定められた定数を乗算して、PWM回路44に出力する電圧値(PWM回路への電圧指令)を算出し(図15のS27、図17のS27)、PWM回路44に出力する(図15のS28、図17のS28)。
PWM回路44は、入力された信号に基づき電圧信号としてのパルス信号を出力して、各モータ32b〜32eに対して電流を供給する(図15のS29、図17のS29、電流供給工程)。
一方、天秤22aの場合には、特定期間(特定区間、特定範囲としてもよい)であるか否かの判定が行われる(図16のS30)。ここで、特定期間とは、天秤22aの上死点から針棒22bの下死点までの期間であり、通常刺繍用ミシンにおいては、天秤が上死点から下死点に向かう期間においては、針棒が下死点に向かってすでに下降しており、天秤が下死点に到達する前に針棒の下死点が到達するので、天秤の上死点から針棒の下死点までの期間を特定期間とする。特定期間の判定の方法としては、主軸角度に応じた天秤角度が増加から減少に転じた場合に特定期間に入ったと判定し、主軸角度に応じた針棒角度が減少から増加に転じた場合に特定期間を脱したと判定する。また、天秤上死点の場合の天秤角度の値と針棒下死点の場合の針棒角度の値を予め定めておき、天秤角度が減少中にその値になった場合に特定期間に入ったと判定し、針棒角度が減少中にその値になった場合に特定期間を脱したと判定してもよい。なお、「角度が減少中に」としたのは、角度が上昇中にもその値になることがあるが、その場合は、特定期間の始点や終点とは無関係だからである。
なお、天秤の上死点から針棒の下死点までの区間における一部の期間(少なくとも天秤が下降中の位置から縫い針22b−1が挿針するまでの期間)を特定期間としてもよい。その場合にも、特定期間の始点となる機械要素の角度(例えば、天秤角度又は針棒角度)と特定期間の終点となる機械要素の角度(例えば、天秤角度又は針棒角度)を定めておき、天秤角度が減少中にその値になった場合に特定期間に入ったと判定し、針棒角度が減少中にその値になった場合に特定期間を脱したと判定してもよい。
そして、特定期間以外の期間、すなわち、非特定期間の場合には、他の機械要素の場合と同様に、ステップS25で算出されたトルク値にステップS17で算出されたトルク補償データを加算し(図16のS31、図18のS31)、さらに、電流センサ46からのトルク値を減算する(図16のS32、図18のS32)。すなわち、他の機械要素と同様に、トルク値+トルク補償データ−モータトルク値を算出する。
一方、特定期間である場合には、天秤用データにおけるトルクデータ(天秤トルクデータ)を読み出し(図16のS33、図18のS33)(つまり、天秤用データにおいて、主軸角度に対応するトルクデータを読み出す。)、そのトルクデータ値から電流センサ46からのトルク値を減算する(図16のS34、図18のS34)。
次に、ステップS32で算出された算出値又はステップS34で算出された算出値に対して、予め定められた定数を乗算して(つまり、特定期間でない場合には、ステップS32で算出された算出値に対して定数を乗算し、特定期間である場合には、ステップS34で算出された算出値に対して定数を乗算する)、PWM回路44に出力する電圧値を算出し(図16のS35、図18のS35)、PWM回路44に出力する(図16のS36、図18のS36)。その後、PWM回路44は、入力された電圧値に従い天秤用モータ32aに対して電流を供給する(図16のS37、図18のS37)。
なお、上記の処理(天秤以外の機械要素の場合には、ステップS11〜S29、天秤の場合には、S11〜S25、S30〜S37)は、仮想主軸データにおいて規定された時間ごとに繰り返して行われることになる。つまり、ステップS11〜S29(天秤の場合には、S11〜S25、S30〜S37)の一連の処理は、仮想主軸データにおいて規定された時間ごとに繰り返して行われることになる。
以上のように、天秤の制御においては、特定期間以外の期間においては、モータ角度とモータ速度とモータトルクに基づく制御(以下「通常制御」とする)を行い、特定期間においては、モータトルクに基づく制御、すなわち、トルク制御を行なう。この通常制御の一連の工程が、特許請求の範囲における「動作制御工程」に当たる。
なお、上記の天秤の制御における上記特定期間においては、上糸テンション付与機構部130のソレノイド142をオン状態としてソレノイド142を駆動し、上糸122をテンション皿132aとテンション皿132b間に固定した状態とし、特定期間以外の場合には、ソレノイド142をオフの状態とする。
図19は、天秤と針棒と釜の1ステッチ分の期間のモーションダイヤグラムと、1ステッチにおける上糸消費量を示す一例であり、天秤の上死点から針棒の下死点までの間の期間は、トルク制御を行なう。
また、図20は、1ステッチ分の期間の動作を模式的に示すものであり、針棒22b(特に、縫い針22b−1の針穴22b−2)と、釜22dと、上糸122と、下糸124の様子を示すものである。この図20において、針穴22b−2は点により示している。図20(a)においては、釜22dが上糸122を引き込んで回転することにより下死点にあり、このように釜22dが上糸122を引き込むことにより、上糸テンション付与機構部130を経由して上糸122が巻き糸120から引き出される。また、図20(a)に示す状態においては、天秤もほぼ下死点にある。この図20(a)は、図19においては釜が下死点となる290度の当たりの様子を示しており、この場合には、非特定期間であるので、上糸テンション付与機構部130におけるソレノイド142は駆動していないので、テンション皿132a、132bを通過して上糸122を引き出すことができる。また、天秤の制御においても、非特定期間であるので、上記通常制御が行われる。
また、図20(b)においては、釜22dから上糸122が外れて針棒22b及び天秤22aにより上糸122を積極的に上方に引き上げており、図20(b)は図19における330度当たりの様子を示している。
また、図20(c)においては、針棒22bが上死点から下降しているとともに、天秤22aが上死点にあり、図20(c)は図19における70度当たりの様子を示している。天秤22aが上死点にあるので、ここから特定期間になり、トルク制御に切り換えられる。また、図20(d)においては、天秤22aが下死点に向けて回動中であるとともに、針棒22bが下降中であり、図20(d)は図19における110度当たりの様子を示している。この場合には特定期間にあるので、上記のようにトルク制御が行われる。
また、図20(e)は、縫い針22b−1が加工布Nに挿針して、針棒22bが下死点に到達する直前の状態を示しており、釜22dが上糸122を引き込む直前の様子を示しており、図19における170度当たりの様子を示している。この場合には特定期間にあるので、上記のようにトルク制御が行われる。その後、針棒22bが下死点になると、特定期間は終了し、トルク制御から通常制御に切り換えられる。なお、図20において、7は針板であり、ミシンテーブルの上面に配置され、縫い針が通る穴が形成されている。
なお、縫製枠22eは、縫い針22b−1が加工布に挿針されていない区間(例えば、265度〜70度の区間)の間に送り制御される。
なお、特定期間が完了すると、通常制御に切り換えるわけであるが、その際には、切換え時における天秤22aの動作を円滑にするために以下のようなスムージング処理を行なう。すなわち、上記ステップS21においては、ステップS13で読み出された角度データの代わりに、エンコーダ34aのカウント値(つまり、現在値)を用いて、現在値−現在値(=0)を算出値とし、次のステップS21(仮想主軸データにおける次の時間における一連の処理のステップS21)においては、ステップS13で読み出された角度データの代わりに、現在値+(読み出された角度データ−現在値)/2(=代替角度データ)の代替角度データ算出式により算出された値として、代替角度データ−現在値をステップS21の算出値とし、読み出された角度データ−現在値が所定の値以下になるまで該代替角度データ算出式による処理(代替角度データ−現在値をステップS21の算出値とする処理)を繰り返す。
このようにすることにより、天秤の動作を円滑にして制御することができる。つまり、トルク制御から通常制御に切り換える際には、それまではトルク制御により天秤を制御しているので、読み出された角度データと現在値との差が大きい場合があり、即座に通常制御に切り換えると、天秤の動作が円滑とならないおそれがあり、特に、位置偏差が大きいほど動作が円滑にならないが、上記のようにスムージング処理を行なうことにより、トルク制御から通常制御に切り換える際に、天秤の動作を円滑に行なうことができる。
なお、通常制御からトルク制御に切り換える際には、上記のような問題が生じないので、上記のようなスムージング処理を行わない。
本実施例においては、図20(d)から(e)に示すように、縫い針22b−1が加工布Nに挿針することにより、縫い動作中のステッチW1とステッチW1の直前のステッチW2間における上糸122と下糸124の係止部分125を締めるのであるが、その際には、特定期間として天秤についてトルク制御を行なうので、上糸に対するテンションの大きさを制御することができる。これにより、例えば、上記特定期間における天秤に付与されるトルクを大きくすることにより、上糸に付与されるテンションを大きくして固い仕上げの刺繍にすることができ、一方、上記特定期間における天秤に付与されるトルクを小さくすることにより、上糸に付与されるテンションを小さくして柔らかい仕上げの刺繍にしたりすることができる。
また、その特定期間においては、上糸テンション付与機構部130におけるソレノイド142を駆動して、上糸122の引き出しを規制しているので、針棒22bと天秤22aが下降する際に上糸122が巻き糸120から繰り出されることがなく、天秤22aをトルク制御することによる上糸へ付与されるテンション制御の支障になることがない。つまり、上記の特定期間におけるトルク制御においては、針棒22bが下降する際に天秤22aも下死点側(つまり、正面側)に回動するが、針棒22bの下降に伴い下方に移動する上糸122が天秤22aを引っ張るのに抗して天秤22aが上記のように算出されたトルク値に従い上糸122にテンションを掛ける。その際、上糸122が巻き糸120から繰り出されるのを規制しないと、所定のトルク値に従い上糸122にテンションを掛けることができないので、上糸122が巻き糸120から繰り出されるのを防ぐのである。なお、上糸テンション付与機構部130を駆動して上糸120の繰り出しを停止しても、天秤22aが上死点にある際に背面側に上糸122を引き出しているので、針棒22bが下降するに伴い上糸122が下降しても、下降するための上糸122の長さが不足することはない。
また、本実施例の刺繍用ミシンにおいては、上記のように、針棒等の天秤以外の機械要素については、上記通常制御、すなわち、モータ角度とモータ速度とモータトルクに基づく制御を行ない、また、天秤については、非特定期間では上記通常制御を行い、特定期間ではトルク制御を行なうので、モータの回転速度の変化や回転方向の変化が頻繁になっても応答性に支障がないものとすることができる。
また、上糸テンション付与機構部130の代わりに、図21に示す上糸テンション付与機構部1130としてもよい。
この上糸テンション付与機構部1130は、刺繍ヘッド10−1における天秤22aの上方位置に設けられ、上糸テンション付与機構本体1131と、ソレノイド(上糸テンション付与用駆動部)1142とを有している。
上糸テンション付与機構本体1131は、テンション皿群1132と、支持部1136と、駆動軸1140とを有しており、これらは針棒ケース114の上部に設けられている。なお、上糸テンション付与機構本体1131は、針棒ごとに設けられている。
テンション皿群1132は、テンション皿1132aとテンション皿1132bとが互いに対向して設けられ、一対のテンション皿1132a、1132b間に上糸を挟むことができるようになっている。つまり、各テンション皿1132a、1132bは、ともに略円形板状(具体的には、円形板状の中央部分が外側に突出した形状)の本体部1133と、本体部1133の周端から斜めに立設したテンション皿フレーム部1134とを有し、テンション皿フレーム部1134が外側になるようにしてテンション皿1132aとテンション皿1132bとが互いに対向している。
また、支持部1136は、テンション皿群1132を支持するものであり、板状部1136aと、ロッド1136bとを有している。すなわち、板状部1136aは、四角形状(その一辺がテンション皿1132a、1132bの直径よりも大きい四角形状)の板状を呈している。テンション皿1132aは、この板状部1136aの背面側に固定して設けられている。つまり、この例では、テンション皿1132aは回転するようには取り付けられていない。また、ロッド1136bは、板状部1136aの4つの角部にそれぞれ固定して設けられ、各ロッド1136bの板状部1136aとは反対側の端部は、針棒ケース114の正面側に固着されている。
また、駆動軸1140は、軸部1140aと、接続端部1140bと、端部1140cとを有している。軸部1140aは、針棒ケース114の正面側と背面側にそれぞれ形成された穴部に挿通して支持され、正面視又は背面視において、軸部1140aの軸線とテンション皿1132a、1132bの中心とが略一致するように設けられている。また、軸部1140aは、アーム112に形成された穴部112aにも挿通されているが、針棒ケース114が左右方向にスライドすることから、針棒ケース114がスライドすることにより駆動軸1140がスライドしても穴部112aが邪魔とならないように穴部112aは左右方向に長穴状に形成されている。接続端部1140bは、軸部1140aの正面側の端部に固着され、略円形板状を呈していて、テンション皿1132bの本体部1133に固着されている。また、端部1140cは、軸部1140aの背面側の端部に固着され、略円形板状を呈している。
また、ソレノイド1142は、アーム112の内部に支持されており、ソレノイド1142を駆動することによりソレノイド1142の軸部1142aを正面側に移動させる。これにより、駆動軸1140が正面側に押されて、テンション皿1132bをテンション皿1132a側に押すことにより、一対のテンション皿1132a、1132b間の上糸にテンションを付与するようになっている。なお、複数の上糸テンション付与機構本体1131のうち、針棒ケース114が左右方向にスライドすることにより、選択された上糸テンション付与機構本体1131の駆動軸1140がソレノイド1142により押されることになる。
上記構成の上糸テンション付与機構部1130においては、巻き糸120から引き出された上糸122が一対のテンション皿1132a、1132b間に挟んだ状態で設けられ、ソレノイド1142を駆動しない状態では、一対のテンション皿1132a、1132b間の上糸に対してはテンションが掛けられていない。一方、ソレノイド1142を駆動した場合には、駆動軸1140がテンション皿1132bをテンション皿1132a側に押すので、上糸122がテンション皿1132aとテンション皿1132b間に固定された状態となる。つまり、この状態では、一対のテンション皿1132a、1132b間のテンションは、天秤22aが上糸122を巻き糸120から引き出すことができないように設定されている。
次に、実施例3の刺繍用ミシンについて説明する。実施例3の刺繍用ミシン5−3は、上記実施例1の刺繍用ミシン5−1と略同様の構成であるが、天秤の構成が異なるとともに、実施例1における上糸テンション付与機構部130が設けられていない点が異なる。
すなわち、刺繍用ミシン5−3は、図25〜図28に示すように構成され、刺繍ヘッド10−1〜10−nと、釜22dと、縫製枠(保持枠、刺繍枠としてもよい)22eと、釜用モータ32dと、枠駆動用モータ32eと、演算装置50と、記憶装置60とを有している。
ここで、刺繍ヘッド10−1〜10−nの構成は、実施例1における刺繍ヘッド10−1〜10−nと略同様の構成であり、各刺繍用ヘッドは、機械要素群20と、制御装置30と、ケース部110と、巻き糸120と、を有している。
この機械要素群20は、天秤200と、針棒22bと、布押え22cとを有し、天秤200の構成が実施例1における天秤22aと異なる。
ここで、天秤200は、図26〜図29に示すように、略半円状の板状を呈し、上糸122が当接する溝部がその周囲に設けられている。
すなわち、天秤200の詳細を図28、図29を使用して説明すると、天秤200は、全体に略半円状で半円状の直線状部の中央が小さな半円状に突出した形状の板状を呈し、本体部202と筒状部220とを有している。つまり、天秤200における円筒状の筒状部220以外の部分が本体部202となり、本体部202の形状としては、側面視(図28におけるX1側又はX2側から見た状態(図28では、天秤200が針棒ケース114に取り付けられた状態を考慮して、その平面が形成されている側(X1側、X2側)を側面とし、筒状部200が設けられている側(Y1)を正面側とする))では、半円状の直線部分の中央に半円状の凹部が形成されたものとなる。
そして、この本体部202の周囲には、溝部210が形成されている。この溝部210は、図29に示すように、断面略V字状の溝部であり、本体部202における円弧状の外周に沿って円弧状に形成された溝部(第1通路)210aと、本体部202における略直線状の外周に沿って直線状に形成された溝部(第2通路)210cと、溝部210aと溝部210cの一対の接続部分のうち下側(Z1側)の接続部分に形成された円弧状の溝部(第3通路)210bとを有しており、溝部210a、溝部210cはともに断面が略直角の溝部であり、溝部210bも図示されていないが同様に断面が略直角の溝部となっている。
なお、溝部210aは、本体部202の周方向の端部から断面略V字状に形成されているが、溝部210bや溝部210cにおいては、本体部202の周方向の端部から溝部の底部までの深さが溝部210aに比べて深いので、断面略V字状の溝部の手前側(周方向の端部側)は断面略四角形状に形成され、その両側面側には板状部212が形成されている。また、溝部210cについては、筒状部220の箇所では、溝部210cが筒状部220に塞がれた状態となるので、図29の(a)P−P断面図に示すように、溝部210cは開口部の状態となっている。
また、筒状部220は、本体部202の正面側の凹部の位置に本体部202と一体に形成されていて、略円筒状に形成され、内側に略円柱状の貫通穴222が形成されている。すなわち、貫通穴222は、円柱状の貫通穴本体222aと、貫通穴本体222aの内周面の相対する位置に形成された略コ字状の縦断面を有する係合溝222b、222cとを有した形状を呈している。つまり、貫通穴222には、天秤用モータ32aの軸部(出力軸)32a−1が挿通されるが、この軸部32a−1には、図27に示すように、一対の突部33a、33bが設けられ、この突部33a、33bの一方が係合溝222b、222cの一方に挿脱可能に係合し、この突部33a、33bの他方が係合溝222b、222cの他方に挿脱可能に係合するようになっている。この突部33a、33bの軸部32a−1の軸線方向(X1−X2方向)の長さは、1つの天秤200の同方向の幅以下に形成されている。これにより、針棒ケース114が左右方向にスライドすることにより、突部33a、33bが係合溝222b、222cに嵌合した1つの天秤200が、軸部32a−1の回転に伴い回転するようになっている。なお、天秤用モータ32aは、アーム112側に設けられていて、針棒ケース114には設けられていない。また、天秤200は、針棒ケース114に設けられた規制部材(図示せず)によって左右方向には移動しないように構成されている。この規制部材としては、天秤200の左右方向の両側に接することにより左右方向への移動を規制するものが考えられる。
以上のように溝部210が形成されることにより、溝部210に沿って上糸122が引き出されることになる。
機械要素群20における天秤200以外の構成は、実施例1と同様であるので詳しい説明を省略する。
刺繍ヘッド10−1〜10−nにおいては、図26に示すように、実施例1の天秤22aの代わりに天秤200がケース110に設けられ、図30(a)に示すように、天秤200は、溝部210cが垂直方向になった状態では、巻き糸120から引き出された上糸122が溝部210cに沿って垂下し、特に、該上糸122が溝部210cと筒状部220間を通るように設けられている。なお、天秤200においては、図30(a)に示すように、溝部210cが垂直方向になった状態が下死点となり、図30(c)に示すように、溝部210bが上方を向いた状態(下死点に対して150〜170度回転した状態)が上死点となる。
また、実施例1の場合とは異なり、天秤200の上方には上糸テンション付与機構部130は設けられていない。これは、天秤200により上糸テンション付与機構130と同様の作用を果たすことができるためである。
また、ケース部110には、各所に上糸122の引き出しを円滑とするためのローラ部が設けられていて、アーム112の上端における巻き糸120の正面側には、ローラ170aが設けられ、針棒ケース114における天秤200の上方にはローラ170bが設けられ、このローラ170bによりローラ170aからの上糸122が垂直に天秤200に導かれる。また、針棒ケース114における天秤200と針棒22bの間には、ローラ170cが設けられている。なお、ローラ170b、170cは、天秤200が図30(a)に示す状態の場合には、上方から垂下した上糸122がそのまま垂下した状態で針棒22bに至るように配設されていて、天秤200が図30(a)の状態の場合には、上方から垂下した上糸122がローラ170bやローラ170cにより折れ曲がることがない。
また、制御装置30と、釜22dと、縫製枠22eと、釜用モータ32dと、枠駆動用モータ32eと、演算装置50と、記憶装置60の構成は実施例1と同様であるので、詳しい説明を省略する。
なお、実施例1と異なり、上糸テンション付与機構部130が設けられていないので、制御装置30における制御回路40は、上糸テンション付与機構部130の動作を制御する機能は有していない。
実施例3の刺繍用ミシン5−3の動作は、上記実施例1の刺繍用ミシン5−1と略同様であり、天秤200以外の機械要素(針棒、布押え、釜等)については、図14、図15に示すフローチャートに従い制御され、天秤200については、図14、図15のフローチャートにおけるステップS21〜S25までの工程と、図16に示すフローチャートに従い制御される。また、天秤200以外の機械要素については、図17に示す機能ブロック図が適用され、天秤200については、図18に示す機能ブロック図が適用される。
また、実施例1の場合と同様に、天秤200が特定期間においてはトルク制御を行い、非特定期間においては上記通常制御を行なう。なお、特定期間とは、実施例1の場合と同様に、天秤200の上死点から針棒22bの下死点までの期間であるが、天秤200の上死点から針棒22bの下死点までの区間における一部の期間を特定期間としてもよい。
天秤と針棒と釜の1ステッチ分の期間のモーションダイヤグラムと、1ステッチにおける上糸消費量を示す一例としては、実施例1と同様に図19に示すものが挙げられ、また、1ステッチ分の期間の動作を模式的に示す図20も実施例3に適用される。
天秤200の具体的な動作を図30、図31を使用して説明すると、釜22dがほぼ下死点にある状態では、天秤200が図30(a)に示すように下死点にあり、天秤200が下死点にある場合には、溝部210cは鉛直方向に垂下した上糸122と略平行となる。すると、上糸122が溝部210にほとんど接触せず、上糸122は溝部210によりテンションが掛からないので、釜22dが上糸122を引き込む際に上糸122を支障なく引き出すことができる。この図30(a)の状態は、実施例1における図20(a)の状態に対応しているといえる。図30(a)の状態においては、非特定期間であるので上記通常制御が行われる。
また、釜22dから上糸122が外れて針棒22b及び天秤22aにより上糸122を積極的に上方に引き上げる状態では、図30(b)に示すように、天秤200の下端が正面側に回転し、これにより、上糸122が、筒状部220の外周面と溝部210の一部(特に、溝部210b)に接触した状態となっている。図30(b)は、図19における330度当たりの様子を示していて、実施例1の図20(b)に対応している。
また、針棒22bが上死点から下降しているとともに、天秤22aが上死点にある状態では、図30(c)に示す状態となり、上糸122は、筒状部220の外周面と溝部210の一部(特に、溝部210bと溝部210a)に接触した状態となっている。図30(c)は、図19における70度当たりの様子を示しており、実施例1の図20(c)に対応している。天秤200が上死点にあるので、ここから特定期間になり、トルク制御に切り換えられる。天秤200が上死点の位置では、上糸122は、筒状部220の周面と溝部210bと溝部210aに沿って接することから、上糸122を引き上げる構造となっていて、刺繍用ミシンにおける天秤として機能させることができる。
また、天秤200が下死点に向けて回転中であるとともに、針棒22bが下降中においては、図31(d)に示す状態となり、上糸122は、筒状部220の外周面と溝部210の一部(特に、溝部210bと溝部210a)に接触した状態となっている。図31(d)は、図19における110度当たりの様子を示しており、実施例1の図20(d)に対応している。この場合には特定期間にあるので、上記のようにトルク制御が行われる。
また、縫い針22b−1が加工布Nに挿針して、針棒22bが下死点に到達する直前の状態では、図31(e)に示す状態となり、上糸122は、筒状部220の外周面と溝部210の一部(特に、溝部210bと溝部210a)に接触した状態となっている。図31(e)は、図19における170度当たりの様子を示しており、実施例1の図20(e)に対応している。この場合には特定期間にあるので、上記のようにトルク制御が行われる。その後、針棒22bが下死点になると、特定期間は終了し、トルク制御から通常制御に切り換えられる。
また、天秤200が下死点に近くなると、図31(f)に示す状態となり、上糸122は、筒状部220の外周面と溝部210の一部(特に、溝部210b)に接触した状態となっている。図31(f)は、図19における250度当たりの様子を示している。
上記のように、特定期間においては、図30(c)、図31(d)、図31(e)に示すように、上糸122において天秤200の溝部210に接する長さが長くなっていて、上糸122に対してテンションを付加することができ、上糸122の引き出しを規制することができ、実施例1において上糸テンション付与機構部130と同様の機能を果たすことができる。
本実施例においては、図20(d)から(e)に示すように、縫い針22b−1が加工布Nに挿針することにより、縫い動作中のステッチW1とステッチW1の直前のステッチW2間における上糸122と下糸124の係止部分125を締めるのであるが、その際には、特定期間として天秤をトルク制御を行なうので、上糸に対するテンションの大きさを制御することができる。これにより、例えば、上記特定期間における天秤に付与されるトルクを大きくすることにより、上糸に付与されるテンションを大きくして固い仕上げの刺繍にすることができ、一方、上記特定期間における天秤に付与されるトルクを小さくすることにより、上糸に付与されるテンションを小さくして柔らかい仕上げの刺繍にしたりすることができる。
また、特定期間においては、上糸122において天秤200の溝部210に接する長さが長くなり、上糸122に対してテンションを付加することができ、上糸122の引き出しを規制することができ、実施例1において上糸テンション付与機構部130と同様の機能を果たすことができことから、針棒22bと天秤200が下降する際に必要以上に上糸122が繰り出されることがなく、天秤をトルク制御することによる上糸へ付与されるテンションの制御の支障になることがない。
また、本実施例の刺繍用ミシンにおいては、上記のように、針棒等の天秤以外の機械要素については、上記通常制御、すなわち、モータ角度とモータ速度とモータトルクに基づく制御を行ない、また、天秤については、非特定期間では上記通常制御を行い、特定期間ではトルク制御を行なうので、モータの回転速度の変化や回転方向の変化が頻繁になっても応答性に支障がないものとすることができる。
なお、天秤200の代わりに、図32〜図34に示す天秤300を用いてもよい。この天秤300は、天秤200と略同様の構成であるが、天秤の円弧状の周縁部を折曲された板状部310a、310bを交互に配設することにより上糸への摩擦力を向上させたものである。
すなわち、天秤300は、本体部302と、筒状部320とを有し、本体部302は、基端部304と、扇状部306a、306bと、フレーム部308a、308bと、折曲板状部310a、310bと、円柱状部312とを有している。
ここで、基端部304は、半円状の板状の一部に筒状部320を設けるための凹部を有する形状を呈している。また、基端部304の正面側(Y1側)には、V字状の溝部304aが形成されていて、筒状部320の位置では穴状になっている。
扇状部306aは、基端部304の正面視右側(X2側)の端部の上方と下方に連設された板状部材で、その正面側(Y1側)の辺部は、基端部304の正面側の面の延長線上にある。また、扇状部306bは、扇状部306aと対称に形成され、基端部304の正面視左側(X1側)の端部の上方と下方に連設された板状部材で、その正面側(Y1側)の辺部は、基端部304の正面側の面の延長線上にある。
また、フレーム部308aは、細長板状部材を円弧状に形成したものであり、一対の扇状部306a間に設けられている。また、同様に、フレーム部308bは、細長板状部材を円弧状に形成したものであり、一対の扇状部306b間に設けられている。フレーム部308aとフレーム部308bは、図33に示すように、外側にいくに従い互いの距離が離れるように傾斜して設けられている。
また、折曲板状部310aは、基端部304の円弧状の周縁における正面視右側の端部から連設され、基端部304から連設された平板部310a−1と該平板部310a−1の端部から連設された平板部310a−2とを有している。平板部310a−1は正面視左側(X1側)に傾斜し、平板部310a−2は正面視右側(X2側)に傾斜して形成されている。また、平板部310a−2の平板部310a−1と反対側の端部は、フレーム部308aに接続されている。また、折曲板状部310bは、基端部304の円弧状の周縁における正面視左側の端部から連設され、基端部304から連設された平板部310b−1と該平板部310b−1の端部から連設された平板部310b−2とを有している。平板部310b−1は正面視右側(X2側)に傾斜し、平板部310b−2は正面視左側(X1側)に傾斜して形成されている。また、平板部310b−2の平板部310b−1と反対側の端部は、フレーム部308bに接続されている。折曲板状部310aと折曲板状部310bとは、基端部304の周縁に沿って交互に配設されている。
なお、折曲板状部310aにおける平板部310a−1と平板部310a−2の境界位置は、折曲板状部310bにおける平板部310b−1と平板部310b−2の境界位置よりもX1側にあり、図33に示すように、平板部310a−2と平板部310b−2とは互いに交差するようになっている。これにより、平板部310a−2と平板部310b−2により溝部Mが形成され、この溝部Mに上糸を沿わせることにより上糸に摩擦力を与えることが可能となる。
また、円柱状部312は、下側(Z1側)に設けられた扇状部306aと扇状部306b間に設けられていて、上糸を湾曲状に沿わせるためのものである。この円柱状部312は、上記円弧状の溝部210bと同様の機能を果たす。
また、筒状部320は、基端部304の正面側の凹部の位置に基端部304と一体に形成されていて、略円筒状に形成され、内側に略円柱状の貫通穴322が形成されている。この貫通穴322の構成は、上記貫通穴222と同様であり、円柱状の貫通穴本体322aと、貫通穴本体322aの内周面の相対する位置に形成された略コ字状の縦断面を有する係合溝322b、322cとを有している。
上記構成の天秤300の作用・効果は上記天秤200の作用・効果と同様であるので、詳しい説明を省略する。なお、天秤300においては、折曲板状部310aと折曲板状部310bとが交互に配設されることによって上糸との摩擦力を大きくすることができ、この折曲板状部310a、310bが形成された領域に上糸がある場合に上糸へのテンションを大きくすることができる。