[液晶パネル全体の概略]
図2に、本発明の実施形態による液晶パネルの概略断面図を示す。本発明の液晶パネル100は、液晶セル10と、液晶セル10の一方の側に配置された第1の偏光板21と、液晶セル10の他方の側に配置された第2の偏光板22を有し、液晶セル10と第1の偏光板21との間(図2(a)に対応)、又は液晶セル10と第2の偏光板22との間(図2(b)に対応)のいずれか一方に、ある直線偏光をそれと直交する直線偏光に変換する旋光素子30を有する。
図3は、本発明の液晶パネルの概略斜視図である。図3(a)は、図2(a)の構成に対応しており、図3(b)は図2(b)の構成に対応している。これらの図における各構成部材の縦横の比率、及び厚みの比率は、簡単のため、実際とは異なって記載されている。
本発明の液晶パネルにおいては、第1の偏光板21の吸収軸方向3と第2の偏光板22の吸収軸方向4は平行である。なお、本願明細書、並びに特許請求の範囲において、「平行」とは、完全に平行であるもののみならず、実質的に平行であることを包含し、その角度は一般に±3°以内であり、好ましくは±2°以内、より好ましくは±1°以内、さらに好ましくは±0.5°以内である。また、「直交」とは、完全に直交する場合のみならず、実質的に直交することを包含し、その角度は一般に90±3°の範囲であり、好ましくは90±2°、より好ましくは90±1°、さらに好ましくは90±0.5°の範囲である。また、略45°、略90°等と記載している場合についても同様に、その角度から±3°の範囲を包含し、好ましくは±2°、より好ましくは±1°、さらに好ましくは±0.5°の範囲を包含するものとする。
[本願構成の原理]
以降、本発明の液晶パネルについて、各構成要素図面により説明するが、図5及び図6における、符号(r)は、図4に示す通り、(a)が自然光、(b)が紙面左右方向の直線偏光、(c)が紙面法線方向の直線偏光を表し、(b)と(c)の直線偏光は直交する。また、(d)は光が透過していない暗状態(黒表示)を表している。
図5は従来の液晶表示装置における黒表示の原理を模式的に表す概念図である。
光源81を出射した自然偏光(r1)は、第1の偏光板21に入射する。
第1の偏光板21は紙面法線方向に吸収軸3を有しているため、紙面法線方向の光を吸収し、紙面左右方向の直線偏光(r2)を透過光として射出する。
第1の偏光板21を透過した直線偏光は液晶セル10に入射する(r5)。液晶セルが電圧オフの状態において、偏光状態が変換されず黒表示となる液晶セル(例えばノーマリー・ブラックのVAモードやIPSモードの液晶セル)を備える液晶表示装置においては、入射光(r5)は偏光状態が変換されることなく視認側へ射出される(r6)。
液晶セル10から射出された直線偏光(r6)は、第2の偏光板22に入射する(r7)。第2の偏光板22は紙面左右方向に吸収軸4を有しているため、直線偏光(r7)は第2の偏光板22によって吸収されて黒表示が得られる(r8)。
このように、従来の液晶表示装置は、第1の偏光板21の吸収軸方向3と第2の偏光板22の吸収軸方向4を直交させることによって、電圧がオフの時に黒表示が得られるように設計されている。そのため、画面の縦と横の長さが異なる液晶表示装置において、2枚の偏光板の吸収軸が直交するように配置するためには、図1(a)に示すように、液晶セルを挟持する一方と他方の偏光板でフィルムの幅が異なるものが必要であり、大画面サイズへの適用が困難であった。
図6は本発明の液晶パネルを用いた液晶表示装置における黒表示の原理を模式的に表す概念図である。
光源81を出射した自然偏光(r11)は、第1の偏光板21に入射する。
第1の偏光板21は紙面法線方向に吸収軸3を有しているため、紙面法線方向の光を吸収し、紙面左右方向の直線偏光(r12)を透過光として射出する。
第1の偏光板21を透過した直線偏光は、直線偏光をそれと直交する直線偏光に変換する旋光素子30に入射する(r13)。旋光素子によって偏光方向が回転されるため、旋光素子30から射出される光は紙面法線方向の直線偏光となっている(r14)。
この直線偏光は液晶セル10に入射する(r15)。液晶セルが電圧オフの状態において、偏光状態が変換されず黒表示となる液晶セル(例えばVAモードやIPSモードの液晶セル)を備える液晶表示装置においては、入射光(r15)は偏光状態が変換されることなく視認側へ射出される(r16)。
液晶セル10から射出された直線偏光(r16)は、第2の偏光板22に入射する(r17)。第2の偏光板22は紙面法線方向に吸収軸4を有しているため、直線偏光(r17)は第2の偏光板22によって吸収されて黒表示が得られる(r18)。
なお、図6では、液晶セル10と第1の偏光板21(光源側偏光板)との間に旋光素子30が配置されている場合について例示したが、図2(b)や図3(b)に示したように、液晶セル10と第2の偏光板22(視認側偏光板)との間に旋光素子30が配置されている場合においても、同様の原理によって、第1の偏光板21と第2の偏光板22の吸収軸方向3、4が平行となるように配置される。
[本願構成の利点]
(大画面サイズへの適用及び偏光板取れ率の向上)
一般に、テレビやパソコン用モニター等の液晶表示装置は画面の縦横比が異なるため、画面は長方形であり、それに用いられる偏光板も長方形となる。本願の構成においては、第1の偏光板と第2の偏光板の吸収軸方向が平行であるため、長尺の偏光板から切り出す場合に、図1の(b)に示すように、第1の偏光板21、第2の偏光板22の両者を、長尺の偏光板Pの長手方向が第1の偏光板21、第2の偏光板22の長辺となるように切り出すことができる。そのため、図1の(a)の場合に比して、大画面の液晶表示装置に対応することが可能となる。
表1及び表2に、各画面サイズ(横:縦=16:9)に対応する偏光板の大きさ、及び各サイズに対応する偏光板を長尺の偏光板から切り出す際の、幅方向に切り出すことができる枚数(取れ数)に基づいた製品として利用できる幅効率(取れ率)の一例を示している。なお、表1は長尺の偏光板の有効幅(フィルムの全幅のうち、製品として使用不可能な端部を除いた幅)が1000mmの場合、表2は有効幅が1500mmの場合を示している。また、表1、表2においては、光源側偏光板はフィルム幅方向が長方形の長辺、視認側偏光板はフィルム幅方向が長方形の短辺となるように偏光板を切り出した場合を記載しているが、その逆でも取れ数や取れ率は同様となる。
偏光板の有効幅が1000mm(表1)の場合においては、46インチ以上の画面サイズに対応する偏光板の長辺がフィルムの幅を超えるため、2枚の偏光板の吸収軸が直交する従来の液晶パネルの構成では、このような大画面の液晶表示装置に対応することができない。それに対して、偏光板と液晶セルの間に直線偏光をそれと直交する直線偏光に変換する旋光素子を配置することで、視認側偏光板、光源側偏光板共に、長尺の偏光板の幅方向が長方形の短辺となるように偏光板を切り出すことができるために、偏光板の幅を大きくすることなく、大画面の液晶表示装置に対応することができる。
また、42インチの場合は、2枚の偏光板の吸収軸が直交する従来の液晶パネル構成では光源側偏光板の取れ率が95%であるのに対して、視認側偏光板の取れ率が54%と低くなる。このような場合は、視認側偏光板と液晶セルの間に直線偏光をそれと直交する直線偏光に変換する偏光素子を配置することで、視認側偏光板、光源側偏光板共に長尺の偏光板の幅方向が長方形の短辺となるように偏光板を切り出すことで、両者の幅方向の取れ率を95%とすることができる。
一方、偏光板の有効幅が1500mm(表2)の場合においては、2枚の偏光板の吸収軸が直交する構成を採用する従来の液晶パネル構成においても画面サイズ65インチの液晶表示装置に対応する偏光板を得ることができるが、視認側偏光板の取れ率が光源側偏光板の取れ率に比して低くなる。このような場合、先の有効幅1000mmの42インチの場合と同様に、視認側偏光板と液晶セルの間に直線偏光をそれと直交する直線偏光に変換する偏光素子を配置することで偏光板の取れ率を高めることができる。
このように、本発明の液晶パネルの構成によれば、大画面の液晶表示装置に対応できることに加えて、液晶表示装置の画面サイズに最適となるように偏光板を切り出す方向を設計可能であるため、偏光板の取れ率を高めることができる。そのため、本願の液晶パネルの構成によれば、より幅の広い長尺偏光板を用いる場合においても、生産性やコスト、廃棄物量の減少といった観点において有利である。
(液晶パネルの反りの解消)
また、本願の構成によれば、大画面サイズの液晶パネルの反りの問題を解消し得る。2枚の偏光板の吸収軸が直交する従来の液晶パネルでは、液晶セルの表裏に配置される偏光板の加熱寸法変化方向の違い等によって、液晶パネルに反りが生じる場合があった。すなわち、前述のように偏光板は異方性を有しているが、通常用いられる偏光板はヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させたフィルムを延伸することによって異方性を発現させている。液晶パネルはバックライト等の光源と組み合わされて液晶表示装置となるが、かかる光源や外部環境からの熱によって偏光板は延伸方向に収縮または膨張しやすい傾向がある。そのため、液晶セルの表裏に2枚の偏光板の吸収軸が直交するように配置された液晶パネルにおいては、液晶セルの表裏において異なる方向に変形応力が生じるために、液晶パネルの周辺部が歪む場合がる。このような歪みはパネルに反りを生じさせ、パネル周辺部において光漏れ等の表示不良を生じ易いという問題がある。特に、大型の液晶パネルにおいては、かかる収縮、または膨張によって生じる応力が大きくなるため、このような反りや表示不良の問題が顕著となる傾向がある。
それに対して、本願発明の液晶パネルは、液晶セルの表裏に配置される偏光板の吸収軸方向が平行であるため、加熱等によって偏光板が収縮または膨張した場合であっても、それに伴って液晶セルに加わる応力の方向が液晶セルの表裏において同一となるため、液晶パネルの歪みの発生を抑止し、パネルの反りや表示不良を抑止し得るのである。
以下、本発明の液晶パネルを構成する、液晶セル、偏光板及び旋光素子について順次説明する。
[液晶セル]
図2及び図3を参照すると、本発明の液晶パネルに用いられる液晶セル10は、一対の基板11、12と、該基板間に挟持された表示媒体としての液晶層13とを有する。一般的な構成においては、一方の基板に、カラーフィルター及びブラックマトリクスが設けられており、他方の基板に、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線及びソース信号を与える信号線と、画素電極及び対向電極とが設けられている。上記基板11、12の間隔(セルギャップ)は、スペーサー等によって制御できる。上記基板11、12の液晶層13と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜等を設けることができる。
上記液晶層13は、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列、またはホモジニアス配列に配向させた液晶分子を含む。
「ホメオトロピック配列」とは、液晶分子の配向ベクトルが、配向処理された基板と液晶分子の相互作用の結果、基板平面に対し、垂直(法線方向に)に配向した状態のものをいう。なお、上記ホメオトロピック配列は、液晶分子の配向ベクトルが、基板法線方向に対し、わずかに傾いている場合、すなわち液晶分子がプレチルトを有する場合も包含される。液晶分子がプレチルトを有する場合は、そのプレチルト角(基板法線からの角度)は、好ましくは5°以下である。プレチルト角を上記範囲とすることによって、コントラストの高い液晶表示装置が得られうる。
上記液晶セルは、好ましくは、屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を示す。屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を示す液晶セルとしては、駆動モードの分類によれば、例えば、バーティカル・アライメント(VA)モードが挙げられる。本発明において、上記液晶セルとして電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含む場合、その駆動モードは、バーティカル・アライメント(VA)モードであることが特に好ましい。
上記VAモードの液晶セルは、電圧制御複屈折効果を利用し、電界が存在しない状態で、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を、基板に対して法線方向の電界で応答させる。具体的には、例えば、特開昭62−210423号公報や、特開平4−153621号公報に記載されているように、ノーマリー・ブラック方式の場合、電界が存在しない状態では、液晶分子が基板に対して法線方向に配向しているために、上下の偏光板を直交配置させると、黒表示が得られる。一方、電界が存在する状態では、液晶分子が偏光板の吸収軸に対して、45°方位に倒れるように動作することによって、透過率が大きくなり、白表示が得られる。なお、本発明においては、上下の偏光板(偏光板21、22に対応)が平行に配置されているが、直線偏光をそれと直交する直線偏光に変換する30を有するために、ノーマリー・ブラック方式を採用することができる。
上記VAモードの液晶セルは、例えば、特開平11−258605号公報に記載されているように、電極にスリットを形成したものや、表面に突起を形成した基材を用いることによって、マルチドメイン化したものであってもよい。上記液晶セルの、電界が存在しない状態におけるRthLC[590]は、好ましくは−500nm〜−200nmであり、さらに好ましくは−400nm〜−200nmである。上記RthLC[590]は、液晶分子の複屈折率とセルギャップによって、適宜設定される。上記液晶セルのセルギャップ(基板間隔)は、通常、1.0μm〜7.0μmである。
一方、「ホモジニアス配列」とは、配向処理された基板と液晶分子の相互作用の結果として、上記液晶分子の配向ベクトルが、基板平面に対し、平行且つ一様に配向した状態のものをいう。なお、本明細書において、上記ホモジニアス配列は、液晶分子が基板平面に対し、わずかに傾いている場合、すなわち、液晶分子がプレチルト角を持つ場合も包含する。上記プレチルト角は、通常、10°以下である。
電界が存在しない状態で、ホモジニアス配列に配向させた液晶分子を含む液晶層を備える液晶セルは、代表的には、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を有する。ここで、ny=nzは、nyとnzとが完全に同一である場合だけでなく、nyとnzが実質的に同一である場合も包含する。
上記液晶セルの代表例としては、駆動モードによる分類によれば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフィールドスイッチング(FFS)モード、強誘電性液晶(FLC)モード等が挙げられる。このような駆動モードに用いられる液晶の具体例としては、ネマティック液晶、スメクチック液晶が挙げられる。一般には、IPSモード及びFFSモードにはネマティック液晶が用いられ、FLCモードにはスメクチック液晶が用いられる。本発明において、上記液晶セルとして電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向させた液晶分子を含む場合、その駆動モードはンプレーンスイッチング(IPS)モードであることが、特に好ましい。
上記IPSモードは、電圧制御複屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringnence)効果を利用し、電界が存在しない状態でホモジニアス配向させた液晶分子を、例えば、金属で形成された対向電極と画素電極とで発生させた基板に平行な電界(横電界ともいう)で応答させる。より具体的には、例えば、テクノタイムズ社出版「月刊ディスプレイ7月号」p.83〜p.88(1997年版)や、日本液晶学会出版「液晶vol.2 No.4」p.303〜p.316(1998年版)に記載されているように、ノーマリー・ブッラクモードでは、液晶セルの電界無印加時の配向方向と一方の側の偏光板の吸収軸とを一致させて、上下の偏光板を直交配置させると、電界のない状態で完全に黒表示になる。電界があるときは、液晶分子が基板に平行を保ちながら回転動作することによって、回転角に応じた透過率を得ることができる。なお、上記のIPSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、スーパー・インプレーンスイッチング(S−IPS)モードや、アドバンスド・スーパー・インプレーンスイッチング(AS−IPS)モードを包含する。
上記ホモジニアス配向させた液晶分子とは、配向処理された基板と液晶分子の相互作用の結果として、上記液晶分子の配向ベクトルが基板平面に対し、平行かつ一様に配向した状態のものをいう。なお、本願明細書並びに特許請求の範囲においては、上記配向ベクトルが基板平面に対し、わずかに傾いている場合、すなわち上記液晶分子がプレチルトをもつ場合も、ホモジニアス配向に包含される。液晶分子がプレチルトをもつ場合は、そのプレチルト角は、20°以下である方が、コントラストを高く保ち、良好な表示特性が得られる点で好ましい。
上記ネマティック液晶としては、目的に応じて任意の適切なネマティック液晶が採用され得る。例えば、ネマティック液晶は、誘電率異方性が正のものであっても、負のものであっても良い。上記ネマティック液晶の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)との差、即ち複屈折率(ΔnLC)は、前記液晶の応答速度や透過率等によって適宜選択され得るが、通常0.05〜0.30であることが好ましい。
上記スメクチック液晶としては、目的に応じて任意の適切なスメクチック液晶が採用され得る。好ましくは、スメクチック液晶は、分子構造の一部に不斉炭素原子を有し、強誘電性を示すもの(強誘電液晶ともいう)が用いられる。強誘電性を示すスメクチック液晶の具体例としては、p-デシロキシベンジリデン−p’−アミノ−2−メチルブチルシンナメート、p-ヘキシルオキシベンジリデン−p’−アミノ−2−クロロプロピルシンナメート、4−o−(2−メチル)ブチルレゾルシリデン−4’−オクチルアニリンが挙げられる。
液晶セルのセルギャップ(基板間隔)としては、目的に応じて任意の適切なセルギャップが採用され得る。セルギャップは、好ましくは1.0〜7.0μmである。かかる範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
このような液晶層(結果として、液晶セル)は、液晶層の遅相軸方向、進相軸方向、及び厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、ny、nzとした場合、代表的には、nx>ny=nzの屈折率分布を示す。なお、本明細書において、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、nyとnzとが実質的に同一である場合も包含する。また、「液晶セルの初期配向方向」とは、電界が存在しない状態で、液晶層に含まれる液晶分子が配向した結果生じる液晶層の面内屈折率が最大となる方向をいう。本発明の液晶パネルが上記液晶セルとして電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向させた液晶分子を含む場合、液晶セルの初期配向方向と第1、第2の偏光板の吸収軸方向は平行または直交であることが好ましい。
なお、本発明において、上記液晶セルは、市販の液晶表示装置に搭載されているものをそのまま用いてもよい。
[偏光板]
本願明細書並びに特許請求の範囲において「偏光板」とは、自然光又は偏光を任意の偏光に変換し得る素子をいう。本発明の液晶パネルに用いられる偏光板は、特に制限されないが、好ましくは、自然光又は各種の偏光を直線偏光に変換するものである。このような偏光板は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分けたとき、そのうちの一方の偏光成分を透過させる機能を有し、且つ、他方の偏光成分を、吸収、反射、及び散乱させる機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する。
本発明に用いられる偏光板の波長440nmの透過率(単体透過率ともいう)は、41.0%以上であることが好ましく、42.0%以上であることがより好ましい。なお、単体透過率の理論的な上限は50%であるが、実際には、空気と偏光板屈折率の差等による反射が生じるため、単体透過率が50%となることはない。後述する偏光子保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを用いた場合は、43.2%が上限となる。
また、偏光度は、好ましくは99.8〜100%であり、更に好ましくは、99.9〜100%である。上記の範囲であれば、液晶表示装置に用いた際に正面方向のコントラストをより一層高くすることができる。
上記単体透過率及び偏光度は、分光光度計を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光板の平行透過率(H0)及び直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。
(偏光子)
上記偏光板の自然光又は偏光を直線偏光に変換する機能は、偏光子によって達成される。偏光板は偏光子に必要に応じてその片面又は両面に偏光子保護フィルムとしての透明フィルムを積層したものである。
偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。また、米国特許5,523,863号等に開示されている二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプの偏光子等も用いることができる。
このような偏光子の中でも、高い偏光度を有するという観点から、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムによる偏光子(以下、単に「ヨウ素系偏光子」と称する場合がある)が好適に用いられる。偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料には、ポリビニルアルコール又はその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸や、そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコールの重合度は、1000〜10000程度、ケン化度は80〜100モル%程度のものが一般に用いられる。
前記ポリビニルアルコール系フィルム中には可塑剤等の添加剤を含有することもできる。可塑剤としては、ポリオール及びその縮合物等が挙げられ、たとえばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。可塑剤の使用量は、特に制限されないがポリビニルアルコール系フィルム中20重量%以下とするのが好適である。
前記ポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は、常法に従って、一軸延伸処理、ヨウ素染色処理が少なくとも施される。さらには、ホウ酸処理、ヨウ素イオン処理を施すことができる。また前記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って乾燥されて偏光子となる。
なお、ヨウ素系偏光子は、延伸方向の偏光を吸収し(吸収軸)、延伸方向と直交する方向の光を透過する(透過軸)という性質を有する。偏光子を連続的に長尺(ロール状)で生産する場合は、生産性や偏光度を高める観点から、フィルムの長手方向、すなわち搬送方向に一軸延伸する縦延伸法が一般に用いられる。このように縦延伸によって得られた偏光子は、フィルム搬送方向に吸収軸を有し、幅方向に透過軸を有する。
(保護フィルム)
偏光子の保護フィルムは、偏光子の傷付きや劣化等を防止する目的で適宜用いられる。特に、ヨウ素系の偏光子や液晶性材料を用いた偏光子は、二色性物質の昇華を防止したり、フィルム強度を確保する観点から、両面に保護フィルムを有していることが好ましい。
保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。また、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂を用いることもできる。保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できない場合がある。
また、偏光子の液晶セル側に配置される保護フィルムとしては、光学的な均一性の高いものを用いることが好ましい。偏光子と液晶セルの間に配置される保護フィルムが複屈折を有していると、その複屈折によって液晶パネルの表示特性に影響を及ぼす場合がある。かかる観点からは、保護フィルムとしては、複屈折が小さい、すなわち光学等方性を有するものが好適に用いられ、中でも、セルロース系樹脂が一般に用いられる。セルロース系樹脂としては、セルロースと脂肪酸のエステルが好ましい。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。
なお、セルロース系フィルムとしては、例えば、上記セルロース系樹脂を加熱や溶剤処理によってアニールする方法、レターデーション調整剤等の添加剤の添加、脂肪酸セルロース系樹脂の脂肪酸による置換度を制御する方法等によって厚み方向位相差を小さく制御したものを用いることもできる。
保護フィルムとして、前述のように光学等方性のものを用いる代わりに、位相差を有するものを用いることもできる。すなわち、偏光子と液晶セルの間に配置される保護フィルムの複屈折を液晶セルの光学補償等に用いることで、偏光子の保護フィルムと光学補償フィルム(位相差板)の機能を1枚のフィルムで達成することができ、液晶パネルの薄型化、軽量化、低コスト化等に貢献し得る。さらに、本発明においては後述する偏光素子としての液晶層の支持体としての基材フィルム、あるいは配向膜の機能を偏光子の保護フィルムに兼用させることも好ましい構成である。
保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性等の点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。保護フィルムの厚みが過度に小さいと、偏光子が高温高湿環境での耐久性に劣ったり、局所的な凹凸欠陥(クニック欠陥)が発生しやすい等の問題を生じる場合がある。
保護フィルムは、偏光子の両面で同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。また、一方の面に2層以上の積層物を用いることもできる。
(偏光子と保護フィルムの積層)
偏光子と保護フィルムの積層方法は特に限定されないが、作業性や、光の利用効率の観点からは、接着剤や粘着剤を用いて各層を空気間隙なく積層することが望ましい。接着剤や粘着剤を用いる場合、その種類は特に制限されず、種々のものを用い得るが、偏光子と保護フィルムの積層には接着剤が好適に用いられる。
上記接着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム系、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、偏光子と光学等方性フィルムはとの積層には水性接着剤が好ましく用いられる。中でも、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするものが用いられる。
かかる接着剤に用いるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂や、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上するため好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独で又は二種以上を併用することができる。
また、接着剤は架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ又はトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物が挙げられる。これらのなかでもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好ましく、ジアルデヒド類としてはグリオキザールが好適である。なかでもメチロール基を有する化合物である、メチロールメラミンが特に好適である。
さらに、凹凸欠陥(クニック)の発生を抑制する観点からは、接着剤に金属コロイドを含有することも好ましい構成である。かかる金属コロイドとしては、アルミナコロイド、シリカコロイド、ジルコニアコロイド、チタニアコロイド及び酸化スズコロイド等が挙げられる。具体的には、特開2008−15483号公報に記載のものを好適に用いることができる。
接着剤の塗布は、乾燥後の接着剤層の厚みが10〜300nm程度になるように行なうのが好ましい。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る点から、10〜200nmであることがより好ましく、20〜150nmであることがさらに好ましい。フィルムへの粘着剤層や接着剤層の付設は、適宜な方式で行い得る。
粘着剤層や接着剤層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層としてフィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚み等の粘着剤層とすることもできる。
また、保護フィルムは、接着剤や粘着剤を付設する前に、接着性の向上等を目的として、親水化等の表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としてば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等が挙げられる。
(表面処理層)
さらに、保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした表面処理層を設けてもよい。
ハードコート層は偏光板表面の傷付き防止等を目的に設けられるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系等の適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式等にて形成することができる。反射防止層は偏光板表面での外光の反射防止を目的に設けられるものであり、従来に準じた反射防止膜等の形成により達成することができる。また、スティッキング防止層は隣接層(例えば拡散板等)との密着防止を目的に設けられる。
またアンチグレア層は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に設けられるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式等の適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子等の透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等の表面処理層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
[旋光素子]
本発明の液晶パネルに用いられる旋光素子は、直線偏光をそれと直交する直線偏光に変換するものである。直交する直線偏光に変換するものであれば、偏光を略90°回転させるものの他に、略270°、略450°回転させるもの等であってもよい。また、回転方向も特に制限されない。「旋光」とは、直線偏光が媒質を進むにつれてその偏光面が回転する現象をいう。
旋光性を示す物質としては、ガーネット単結晶等の無機結晶、水晶、グルコースに代表される糖類、ポリ乳酸、ヘリセン等のキラル(光学活性)な有機分子等が挙げられる。また、液晶分子の配向方向が層の厚み方向に沿って漸次連続的に変化している液晶層も旋光性を示す。
本発明の液晶パネルに用いられる旋光素子としては、上記のような旋光性を示す材料であれば特に制限無く採用することができるが、生産性やハンドリング性の観点から、液晶分子の配向方向が層の厚み方向に沿って漸次連続的に変化している液晶層を好適に用いることができる。かかる液晶層としては、ネマティック液晶性の分子が捩れ配向したもの(「カイラルネマティック液晶」、あるいは「コレステリック液晶」等と称する場合がある)が挙げられる。かかる液晶層としては、ネマティック液晶性材料(液晶相がネマティック相である液晶性材料)にカイラル剤を添加したものの配向状態を固定したものが好適に用いられる。特に、本発明においては、生産性やハンドリング性の観点から液晶が略90°捩れたカイラルネマティック液晶層を好適に用いることができる。
なお、旋光素子としてネマティック液晶性材料にカイラル剤を添加したカイラルネマティック液晶層を用いる場合、かかる液晶層におけるに液晶の捩れ角度、すなわち、旋光素子の偏光の回転角度はカイラル剤の添加量および液晶層の厚みによって調整することができる。換言すれば、カイラル剤の添加量によって液晶層の捩れのピッチ(「コレステリックピッチ」と称する場合がある)が調整されるが、液晶層の厚みをかかるコレステリックピッチ(液晶が360°捩れる厚みに等しい)の1/4となるように調整することで、液晶が90°捩れたカイラルネマティック液晶層を形成することができる。
特に、本発明においては、旋光素子としての液晶層に用いられるネマティック液晶性材料の波長545nmにおける複屈折Δn545と旋光素子の厚みdの積(Δn545×d)が1400nm以上であることが好ましい。カイラルネマティック液晶を用いた旋光の場合、液晶層の複屈折のために、カイラルネマティック液晶層が90°の捩れ角を有している場合であっても光漏れを生じる現象が生じ得る。一方、液晶層が90°捩れた液晶層においては、厚みを大きくすることによって、かかる複屈折による光漏れを低減し得る。この点につき、以下に説明する。
本発明の液晶パネルのように吸収軸が平行に配置された2枚の偏光板の間に、カイラルネマティック液晶層による旋光素子が存在する構成においては、厚みdが下記の式(1)を満足する場合に、波長λの単色光の透過率が理論上ゼロとなる。
ただし、上記式(1)において、mは1以上の整数であり、Δnλは波長λにおける複屈折である。
上記式(1)は、波長λにおける透過率を表す下記の式(2)に、おいて、T(λ)=0となる条件を示したものである。かかる式(2)は、ツイスティッド・ネマティック(TN)モードの液晶表示装置等における液晶セルの厚み(セルギャップ)を定める時に用いられる、グーチ・タリーの式[C.H.グーチおよびH.A.タリー、Appl. Phys.、8巻、1575〜1584頁(1975年)]に、θ=π/2(90°)を代入したものである。
通常のTNモード液晶セルや旋光素子においては、上記式(1)において、m=1となるような厚みd(「ファースト・ミニマム」と称される場合がある)が採用される。例えば、波長545nmにおける光漏れを最小とする場合は、(Δn545×d)の値が約470nmとなるように旋光素子の厚みが設計される。一方、屈折率は波長によって異なる、所謂「波長依存性」を有するため、複屈折Δnλも波長依存性を有する。そのため、上記式(1)を満たす厚みdは波長λによって異なることとなる。そのため、可視光領域における所定の波長の透過率が理論上ゼロとなるように旋光素子の厚みを設定した場合であっても、他の波長の透過率はゼロとはならず、結果として光漏れが生じることとなる。また、特定の波長の光漏れが大きくなると、表示に着色が生じる場合がある。
本願発明の好ましい態様は、かかる複屈折の波長依存性の影響について考慮し、旋光層の厚みdを大きくすることによって、良好な表示特性が得られるとの新たな知見に基づくものである。すなわち、特定の波長λにおける透過光量(透過率T)は、上記の式(2)で表される通りであるが、これを、可視光領域の波長範囲全体について考慮したY値が、旋光素子の厚みdに依存するとの知見に基づくものである。なお、Y値は、人間の視覚における「明るさ」に相当するXYZ表色系の三刺激値Yであり、下記の式(3)のように表すことができる。
かかるY値と、旋光素子の厚みdの関係については、後の実施例において実例に基づいて説明するが、所定の波長において透過率が極小となる厚みと、Y値が極小となる厚みは異なっている。そのため、所定の波長(λ)で透過率が極小とするべく、上記式(1)におけるmが整数となるように厚みdを選択した場合でも、かならずしもY値は極小とはらない。一方、旋光素子の厚みと複屈折の積(Δn545×d)が大きくなると、厚みの増加に伴って、Y値は減少する傾向があり、式(1)においてm=1となる厚み(ファースト・ミニマム)の場合よりもY値がより小さくなる。このように厚みを調整することによってY値が小さくなることは、概念的には、ポアンカレ球上での偏光状態の変換の軌跡によって説明される。以下、本発明の原理、および上記のように厚みを大きくすることによって光漏れが低減されることに関して、旋光素子を用いた場合と、波長の1/2のレターデーションを有する位相差板(1/2波長板)を用いた場合とを比較しながら、ポアンカレ球上での軌跡変換に基づいて説明する。
ポアンカレ球とは球上の点によって光線の偏光状態を表す方式であり、この球を地球に見立てると北極と南極の点は円偏光を示し、赤道上の点は直線偏光を示している。北極または南極と赤道の点は楕円偏光を示し、緯度が大きいほど楕円率が小さい、すなわち真円に近い楕円偏光に対応している。そして、赤道上の経度は直線偏光の角度の2倍に対応している。すなわち、赤道上で経度が180°異なる2つの点が、直交する2つの直線偏光に対応する。そして、ポアンカレ球上の各点は、3つのストークスパラメータ(S1,S2,S3)で表される。また、ストークスパラメータS0=(S1 2+S2 2+S3 2)1/2は光の強度に関するが、ここでは、S0=1で一定、すなわち、ポアンカレ球を半径1の球として表す。
直線偏光の偏光方向に対して光軸(遅相軸)方向が45°となるように1/2波長板(あるいは、3/2波長板、5/2波長板等)を配置した場合も、本願のような旋光素子を用いた場合と同様に、直線偏光はそれと直交する直線偏光に変換される。しかしながら、かかる1/2波長板等を用いた場合は、本願のような旋光素子を用いた場合と比較して、上記のY値が大きくなる傾向がある。
図7は、所定の波長(例えば545nm)の単色光に対して、1/2のレターデーションを有する1/2波長板によって、ポアンカレ球上で点A:(S1,S2,S3)=(−1,0,0)の直線偏光が、点B:(S1,S2,S3)=(1,0,0)の直線偏光に変換される場合の軌跡を示している。図7の(a)は見取り図、(b)はS2−S3面への投影図、(c)はS3−S1面への投影図、(d)はS1−S2面への投影図を表す(以下の図8、図9においても同様である)。
入射側の偏光板を透過した光(入射直線偏光)は、点A:(S1,S2,S3)=(−1,0,0)で表される。この入射直線偏光は、1/2波長板を厚み方向に進むにつれて、経度はそのままで、緯度を大きくしながら、子午線上を移動(南下)する。これは、厚み方向を進むにつれて直線偏光が楕円偏光に変換され、その楕円率が1に近付く様子を表す。そして、1/2波長板の厚み方向の中間点(1/4波長のレターデーションに相当)で南極、すなわち、点M:(S1,S2,S3)=(0,0,−1)で表される円偏光となる。さらに1/2波長板の厚み方向を進むと、今度はストークスパラメータS1が正の領域において緯度を小さくしながら、子午線上を移動(北上)する。これは、円偏光が、先ほどとは長軸方向が直交する楕円偏光に変換され、1/2波長板の厚み方向を進むにつれて楕円率が0に近付く様子を表す。そして、最終的には、点B:(S1,S2,S3)=(1,0,0)の直線偏光として1/2波長板から射出される。この点Bは、1/2波長板へ入射する直線偏光を表す点Aと同様に赤道上に存在し、かつ、点Aとは経度が180°異なることから、入射直線偏光と直交する直線偏光に相当する。この点Bで表される直線偏光は、射出側の偏光板に到達することとなるが、入射側の偏光板と射出側の偏光板の吸収軸方向が平行である場合には、光が吸収されるために暗表示となる。
これに対して、図8は、上記式(1)において、旋光素子の厚みdがm=1の条件を満たす場合において、ポアンカレ球で点Aの直線偏光が、それと直交する点Bの直線偏光に変換される場合の軌跡を示している。本発明のような旋光角度が90°の旋光素子を用いた場合は、点A:(S1,S2,S3)=(−1,0,0)の直線偏光が旋光素子を厚み方向に進むにつれて、前記の1/2波長板の場合に比してポアンカレ球上での緯度が小さい、すなわち直線偏光に近い状態を経て、経度が変換される、すなわち、偏光方向が回転される。そして、旋光素子の厚み方向の中間点において、中点Mを経由して、直交する直線偏光B:(S1,S2,S3)=(1,0,0)へと変換されて旋光素子から射出される。この光は、前記の1/2波長板の場合と同様に射出側の偏光板により吸収されるために暗表示となる。
さらに、図8は上記式(1)において、旋光素子の厚みがm=4の条件を満たす場合において、ポアンカレ球で点Aの直線偏光が、それと直交する点Bの直線偏光に変換される場合の軌跡を示している。この場合、前記したm=1の場合よりもさらに緯度が小さい状態を保ったまま、ポアンカレ球上で経度が変換される。そして、旋光素子の厚みの1/4において、一旦赤道上の点M1に到達、すなわち直線偏光となり、さらに、厚みの1/2の中間点M2および厚みの3/4の点M3においても直線偏光となり、最終的には、直交する直線偏光B:(S1,S2,S3)=(1,0,0)へと変換されて旋光素子から射出される。この光は、射出側の偏光板により吸収されるために暗表示となる。
m=4の場合について上記したが、m=2、3の場合においては、m=1の場合よりは緯度が小さく、m=4の場合よりは緯度が大きい状態で、直交する直線偏光B:(S1,S2,S3)=(1,0,0)へと変換されて旋光素子から射出されることとなる。また、m=5以上の場合は、さらに緯度が小さい、すなわちより赤道に近い経路を通って、直交する直線偏光Bへと変換されることとなり、理論上はm=∞のときに、ポアンカレ球上の軌跡は、赤道上を180°移動することとなる。このように、mが大きい、すなわち旋光素子の厚みが大きいほど、直線偏光に近い状態で偏光状態が変換されることがわかる。
次に、複屈折の波長依存性について考慮した場合、旋光素子を用いることによって、Y値を小さくできることについて以下に説明する。ポリマーや液晶分子の複屈折が波長依存性を有することは前述の通りであり、短波長ほど複屈折は大きくなるのが一般的である。そのため、例えば、波長545nm付近の緑色の光について、光漏れを最小とするように設計した場合、波長440nm付近の青色の光に関しては、複屈折が光漏れを最小とするのに適した値よりも大きくなる傾向がある。一方で、波長650nm付近の赤色の光に関しては、複屈折が光漏れを最小とするのに適した値よりも小さくなる傾向がある。
この波長依存性の影響について、まずは、位相差板を用いた場合をポアンカレ球上での光の軌跡に基づいて説明する。図10はレターデーションが波長の1/2よりも大きい場合に、ポアンカレ球上で点A:(S1,S2,S3)=(−1,0,0)の直線偏光が、点B1の楕円偏光に変換される場合の軌跡を示している。例えば、先に説明したような所定の波長(例えば545nm)の単色光に対して、1/2のレターデーションを有する位相差板(1/2波長板)を用いた場合に、他の波長(例えば440nm)においては波長の1/2よりレターデーションが大きくなる場合が相当する。
位相差板に入射した直線偏光は、図7に示した1/2波長板の場合と同様に、波長板を厚み方向に進むにつれて、ポアンカレ球上で緯度を大きくしながら、子午線上を一旦南下した後、北上し、波長の1/2のレターデーションで、(S1,S2,S3)=B(1,0,0)の直線偏光となる。しかしながら、位相差板のレターデーションが波長の1/2より大きいために、ポアンカレ球上の赤道を越えてさらに北上し、子午線上の点B1に到達する。これは、波長板から射出した光が楕円偏光であることを表している。そして、点B1の緯度、換言すれば点Bと点B1との距離が、楕円偏光楕円率に相当する。レターデーションが波長の1/2からずれるほど、点Bと点B1との距離が大きくなる。点B1で表される楕円偏光は、射出側の偏光板によっては完全には吸収されず、透過した光が光漏れとして観察されることとなる。点Bと点B1との距離が大きくなるほどこの光漏れは大きくなる。
次に、旋光素子を用いた場合の波長依存性の影響について説明する。先に、旋光素子の厚みdが所定の波長λにおいて、式(1)におけるm=1の条件を満たす場合について、図8を用いて説明したが、上記のλよりも短波長側の波長においては、複屈折の波長依存性の影響によって、mは一般に1より大きい値(整数とは限らない)となる。図11は、このように、mが1より大きく、整数でない場合について、ポアンカレ球上で点A:(S1,S2,S3)=(−1,0,0)の直線偏光が、点B2の楕円偏光に変換される場合の軌跡を示している。点Aの直線偏光が旋光素子を厚み方向に進むにつれて、前記の図8のm=1の場合と類似の軌跡を辿り、m=1に対応する厚みで赤道上の点M’に到達する。さらに厚み方向を進むと、先ほどと同様の軌跡形状で緯度を変化させながら南半球を進み、点Bと同一子午線上の緯度が異なる点B2に到達する。先ほどの図10の場合と同様に、点Bと点B2との距離が大きくなるほど光漏れが大きくなる。
一方、旋光素子の厚みdが所定の波長λにおいて、式(1)のm=4の条件を満たす場合に関して、図9を用いて先に説明したが、複屈折の波長依存性の影響のために、上記λよりも短波長側においては、mは一般に4より大きい値(整数とは限らない)となる。図12は、このようにmが4より大きく、整数でない場合について、ポアンカレ球上で点A:(S1,S2,S3)=(−1,0,0)の直線偏光が、点B3の楕円偏光に変換される場合の軌跡を示している。点Aの直線偏光が旋光素子を厚み方向に進むにつれて、前記の図3のm=4の場合と類似の軌跡を辿り、m=1,2,3,4に対応する厚みにおいて、それぞれ赤道上の点を経由して、点Bと同一子午線上で緯度が異なる点B3に到達する。そして、点BとB3との距離が大きくなるほど光漏れが大きくなる。ここで、点BとB3の距離は、先に示した点Bと点B1、あるいは点Bと点B2の距離に比して小さいことがわかる。
これは、先に説明したように、mの値が大きいほど、偏光状態はポアンカレ球上の赤道に近い軌跡、換言すれば直線偏光に近い状態を保ちながら変換されることに関係している。式(1)におけるmの値が大きい、すなわち旋光素子の厚みが大きいほど、mが整数値から外れた場合でも、直線偏光からの乖離が小さくなる。そのため、複屈折が波長依存性を有していても、可視光の全領域についての光漏れ、すなわちY値が小さくなる。
旋光素子として、従来は、式(1)においてm=1(ファースト・ミニマム)を満足するように厚みdを設定するのが一般的であったが、ポアンカレ球を用いて概念的に示したように、m=1の場合は、位相差板を用いた場合との差異が小さい、すなわち、点B・B1間の距離と点B・B2間の距離が略同様となる。それに対して、厚みを大きくすることによって、他の波長においても光漏れを小さくすることができるために、結果としてY値が小さくなる。ファースト・ミニマムの場合よりもY値が小さくなる厚みは、液晶層を形成する液晶性化合物の波長分散によって異なるが、後に実施例において示すように、旋光素子の複屈折と厚みの積(Δn545×d)が1400nm以上の場合に、Y値が小さくなる傾向がある。旋光素子の複屈折と厚みの積(Δn545×d)は1500nm以上であることがより好ましく、1600nm以上であることがさらに好ましく、1700nm以上であることが特に好ましい。このような範囲においては、旋光素子の厚みの増加に伴って、Y値が単調減少を示す傾向がある。
なお、(Δn545×d)が1400nm以上であることが好ましいことを言及したが、本発明は、旋光層の厚みdを大きくすることによって、複屈折の波長依存性に起因して可視光領域の各波長で生じる光漏れの影響を低減し、その結果Y値を小さくできるという新たな知見に基づくものである。
また、上記式(1)を満たすλを可視光領域に有する場合、かかる波長λにおける黒表示時の透過率Tを小さくすることができるため、良好な表示特性が得られる。一般に液晶パネルにおいては、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルターを用いることでカラー表示を可能としているが、かかるカラーフィルターの透過波長に基づいて設計するという観点からは、上記式(1)を満たすλが450〜650nmの範囲に存在することが好ましい。また上記3色の中でも最も視認性の高い緑の光に対して最適に設計する観点からは、530〜570nmの範囲に上記式(1)を満たすλが存在することが好ましい。緑色の波長(545nm付近)の光は、人間の視覚における視認性が高いため、緑色の波長領域における光漏れを小さくすることによって、視認性に優れた表示を得ることができる(結果としてY値も小さくなる傾向がある)。
なお、本発明は、旋光素子の(Δn545×d)が1400nm以上を満たす場合に限定されるものではないが、旋光素子の(Δn545×d)が1400nm未満である場合、可視光領域(380〜780nm)、好ましくは450〜650nmの範囲、より好ましくは500〜600nmの範囲、さらに好ましくは530〜570nmの範囲に、上記式(1)においてm=2となる波長λを有することが好ましい。このような場合、m=1のファースト・ミニマムの場合に比してY値を小さくすることができる。ただし、(Δn545×d)が1400nm以上である場合と比較すると、Y値は高くなる傾向がある。
また、厚みを大きくすることにより、黒表示における光漏れを抑制して、Y値を小さくできることに加えて、旋光素子の厚みばらつきによる特性変化の影響を抑制することも可能である。すなわち、旋光素子として液晶層を用いる場合、その厚みは後に詳述するように0.1〜数十μmの範囲とするのが一般的であるが、液晶層を大面積で生産する場合に、その厚みを完全に均一とすることは困難であり、同一の液晶層の面内、あるいは別個に作製した液晶層との製品間において、厚みのばらつきが生じる。かかる厚みのばらつきは、旋光層における液晶層の捩れ角、すなわち、旋光角のばらつきや、前記式(1)の条件を満たす厚みdからのずれを生じるために、表示特性が製品内や製品間で不均一となる場合がある。このような製品内、あるいは製品間の厚みのばらつきに関しても、厚みが大きい液晶層からなる旋光素子を採用することで、その抑制が可能となる。
Y値を小さくして良好な表示特性を得る観点において、旋光素子の厚みdは大きいほど好ましいことは前述の通りであるが、旋光素子の生産性の観点からは厚みdは10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。
(旋光素子の配置角度)
旋光素子として、液晶分子の配向方向が層の厚み方向に沿って漸次連続的に変化している液晶層を含むものを用いる場合、旋光素子の一方の面と他方の面で液晶分子の配向方向が異なることとなるが、本発明の液晶パネルにおいては、旋光素子と近接する方の偏光板の吸収軸方向と旋光素子の該偏光子と対向する側の面における液晶分子の配向方向とが平行または直交であることが好ましい。例えば図3(a)においては、旋光素子30と近接する第1の偏光板21の吸収軸3方向と、旋光素子30の第1の偏光板21と対向する側の面における液晶分子の配向方向5aが直交する形態を模式的に図示している。また、図3(b)においては、旋光素子30と近接する第2の偏光板22の吸収軸4方向と、旋光素子30の第2の偏光板22と対向する側の面における液晶分子の配向方向5aが平行である形態を模式的に図示している。このような角度配置とすることで、本発明の液晶表示装置のコントラストを、2枚の偏光板が直交するように配置された従来の液晶表示装置と比して遜色ないレベルとすることができる。
(旋光素子の製造方法)
上記旋光素子としての液晶層の材料や製造方法は特に限定されないが、前述の如く液晶相がネマティック相である液晶性材料(ネマティック液晶性材料)が好適に用いられる。このような液晶性材料としては、例えば、液晶性ポリマーや液晶性モノマーが使用可能である。液晶性材料の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。
上記液晶性材料は、液晶性モノマー(例えば、重合性モノマーおよび架橋性モノマー)であることが好ましい。これは、後述するように、液晶性モノマーを重合または架橋させることによって、液晶性モノマーの配向状態を固定できるためである。液晶性モノマーを配向させた後に、例えば、液晶性モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された液晶層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、液晶層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた光学補償層となる。
上記液晶性モノマーは特に限定されず、任意の適切な液晶性モノマーが採用され得る。例えば、特表2002−533742号(国際公開00/37585号)、欧州特許358208号(米国特許5211877号)、欧州特許66137号(米国特許4388453号)、国際公開93/22397号、欧州特許0261712号、ドイツ特許19504224号、ドイツ特許4408171号、および英国特許2280445号等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名Paliocolour LC242、Merck社の商品名E7、Wacker−Chem社の商品名LC−Sillicon−CC3767が挙げられる。また、1官能又は2官能反応性メソゲン化合物として、下記のような材料も好適に用いることができる。
上記ネマティック液晶性をカイラルネマティック配向させる目的においては、カイラル剤を用いることが好ましい。カイラル剤の含有量は、用いるカイラル剤やネマティック液晶の種類、あるいは、旋光素子(液晶層)の厚み等によって適宜選択し得るが、液晶層を90°捩れさせるのに適したコレステリックピッチを形成する観点においては、ネマティック液晶性材料100重量部に対してカイラル剤の添加量が0.005〜0.5重量部であることが好ましく、0.01〜0.3重量部がより好ましい。カイラル剤の添加量が過度に低いと液晶の捩れが小さくなるために、例えば90°捩れた液晶層を得るための厚みを過度に大きくすることを要し、液晶層の生産性や厚みの均一性に劣る場合がある。また、カイラル剤の添加量が過度に高いと、液晶性材料が液晶状態を呈しにくくなる(液晶相を示す温度範囲が狭くなる)ために、製造時の温度制御をきわめて精密に行うことを要する場合がある。また、90°捩れた液晶層とするための厚みが小さくなるために、液晶表示装置のY値が大きくなり、良好な黒表示を得られない場合がある。なお、カイラル剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記カイラル剤としては、液晶性材料を所望のカイラルネマティック配向し得る任意の適切な材料が採用され得る。添加するカイラル剤は光学活性基を有し、液晶性液晶化合物と混合したときにその配向性を乱さないものを好適に用い得る。カイラル剤は、液晶性を有していてもよく液晶性を有しなくてもよい。また、カイラル剤は反応性基を有するのもの有しないもののいずれも使用できるが、旋光素子(液晶層)の耐熱性、耐溶剤性の観点からは反応性基を有するものを好適に用い得る。反応性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、アジド基、エポキシ基などが挙げられるが、重合性液晶化合物の重合反応性基と同様の(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。また、耐熱性、耐溶剤性の観点からすると重合反応性基は2つ以上有するものが好ましい。
重合性官能基を2つ以上有するカイラル剤としては、例えば下記のような材料が挙げられる。
また、カイラル剤としては、BASF社の商品名「Paliocolour LC756」等、市販のものを用いることもできる。
このようなカイラル剤の捩り力は、好ましくは1×10−8nm−1・(wt%)−1以上であり、さらに好ましくは1×10−7nm−1・(wt%)−1〜1×10−2nm−1・(wt%)−1であり、最も好ましくは1×10−6nm−1・(wt%)−1〜1×10−3nm−1・(wt%)−1である。このような捩り力を有するカイラル剤を用いることにより、液晶層のコレステリックピッチを所望の範囲に制御することが可能となる。
液晶層の形成においては、上記液晶性化合物、カイラル剤やその他の添加剤を含む液晶組成物を、溶剤中に溶解、あるいは分散させた液を基材上に塗布する方法が好適に用いられる。かかる液晶組成物には、重合開始剤、架橋剤(硬化剤)等を含むことが好ましい。重合開始剤や架橋剤を用いることにより、液晶性材料が液晶状態で形成した液晶層を固定化することができる。このような重合開始剤または架橋剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な物質が採用され得る。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。また、チバ・ジャパン製の商品名イルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア651等の市販の重合開始剤も好適に用い得る。架橋剤(硬化剤)としては、例えば、紫外線硬化剤、光硬化剤、熱硬化剤が挙げられる。より具体的には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート架橋剤等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。
重合開始剤または架橋剤の含有量は、ネマティック液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜15重量%であり、より好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜7重量%である。重合開始剤または架橋剤の含有量が過度に小さいと、液晶層の固定化が不十分となる場合がある。また、重合開始剤または架橋剤の含有量が過度に大きいと、上記液晶性材料が液晶相を示す温度範囲が狭くなり、液晶層を形成する際の温度制御が困難となる場合がある。
上記液晶組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤としては、劣化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。より具体的には、上記劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物が挙げられる。上記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類やアルコール類が挙げられる。上記界面活性剤は、光学補償層の表面を平滑にする目的等で添加され、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系の界面活性剤が使用できる。
液晶層の形成方法としては、本願発明の効果を損なわない範囲において任意の適切な方法が採用され得る。その代表的な形成方法は、上記液晶組成物を溶剤に溶解した溶液を基板上に展開して展開層を形成する工程と、当該液晶組成物中の液晶性材料がカイラルネマティック液晶相を示すように当該展開層を加熱する工程を有する。なお、かかる加熱は溶剤の乾燥を兼ねていてもよい。さらに、任意に当該展開層に重合処理および架橋処理の少なくとも1つを施して、当該液晶性材料の配向を固定する工程、基板上に形成された液晶層を他の基材へ転写する工程とを含むことが好ましい。以下、当該形成方法の具体的な手順を説明する。
まず、液晶性材料、カイラル剤、及び必要に応じて重合開始剤または架橋剤、並びに各種添加剤を溶媒に溶解または分散し、液晶塗布液を調製する。液晶性材料、カイラル剤、重合開始剤、架橋剤および添加剤は、上記で説明したとおりである。液晶塗布液に用いられる溶媒は、特に制限されない。具体例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル系溶媒、あるいは二硫化炭素、エチルセロソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、MEK、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチルセロソルブである。これらの溶媒は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。
次に、上記液晶塗布液を、基板上に塗布して展開層を形成する。展開層を形成する方法としては、任意の適切な方法(代表的には、塗布液を流動展開させる方法)が採用され得る。具体例としては、ロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレーコート法が挙げられる。
上記基板としては、上記液晶性材料を配向させることができる任意の適切な基板が採用され得る。代表的には、各種プラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックとしては、特に制限されないが、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、アルミ、銅、鉄等の金属製基板、セラミック製基板、ガラス製基板等の表面に、上記のようなプラスチックフィルムやシートを配置したものも使用できる。また、上記基板あるいは上記プラスチックフィルムまたはシートの表面にSiO2斜方蒸着膜を形成したものも使用できる。基板の厚みは、好ましくは5μm〜500μmであり、さらに好ましくは10μm〜200μmであり、最も好ましくは15μm〜150μmである。このような厚みであれば、基板として十分な強度を有するので、例えば製造時に破断する等の問題の発生を防止できる。
また、上記基板は液晶配向膜を備えるものであることが好ましい。配向膜としては、従来より知られている各種のものを使用でき、たとえば、基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの延伸フィルム、シンナメート骨格やアゾベンゼン骨格を有するポリマーまたはポリイミドに偏光紫外線を照射したもの等を用いることができる。
液晶層を長尺のロール状に作製する場合において、かかる配向膜は、生産性の観点からそのフィルム長手方向、すなわち搬送方向に配向方向を有していることが好ましい。また、フィルム搬送方向に配向方向を有していれば、長手方向に吸収軸を有する長尺の偏光板とロール・トウー・ロールで積層して、旋光素子を備える長尺の積層偏光板とできる点においても好ましい。また、配向膜としては前述の如く延伸フィルムを用いることもできる。さらには、例えばヨウ素系の偏光子はフィルム長手方向に延伸されたものであるため、偏光子を液晶配向膜として代替し、偏光子の上に液晶塗布液を塗布することも可能である。その他、偏光子の保護フィルムや、後述する光学補償層(光学補償フィルム)等の、液晶パネルに用いられる部材を配向膜として用いることで、液晶パネル生産の工程数や、フィルムの積層数を削減することができる。
上記液晶塗布液の塗布量は、塗布液の濃度や目的とする層の厚み等に応じて適宜設定され得るが、液晶層の厚みを均一とする観点からは、塗布厚み(ウェット厚み)は1〜100μmであることが好ましく、2〜50μmであることがより好ましい。なお、本発明においては、前述の如く、黒表示の色付きを防止する観点においては、厚みを大きくする必要が生じる場合がある。このような場合で塗布厚みが上記範囲を超える場合は、厚みを均一とする観点から、上記範囲の厚みでの塗布を複数回行う方法を採用することが好ましい。例えば、45°の捩れ角となる厚みで2回塗布する方法や、30°の捩れ角となる厚みで3回塗布する方法を採用することができる。例えば30°の捩れ角となる厚みで3回塗布する方法の場合、1層目が0から30°、2層目が30から60°、3層目が60から90°と、各層が30°ずつ回転した配置とすることで、90°の捩れ角を達成することができる。
この場合、1層目を乾燥する前にウェットの状態で2層目、3層目を塗布することもできるが、厚みの均一性の観点からは1層目を塗布した後に一旦乾燥、及び必要に応じて硬化して液晶層の配向を固定した後に2層目を塗布し、さらに2層目の液晶層の配向を固定した後に3層目を塗布するというように、液晶層の塗布と配向の固定を順次行うことが好ましい。このように順次塗布する場合において、各層の塗布前に、配向膜を形成しておいてもよいが、液晶の配向が固定されている状態であれば、その液晶配向層が配向膜と同様に作用するため、配向膜を形成せずとも目的とする捩れ角(90°)を達成することができる。例えば30°の液晶層を3層塗布する場合においては、1層目の表層において液晶分子が30°の方向に配向しているため、2層目の展開層における1層目と隣接する面においては液晶分子が30°に配向し、かかる展開層を固化した場合は30から60°の捩れ角を有することとなる。同様に液晶分子が60°の方向に配向した2層目の表層が配向膜の役割を果たし、3層目は60〜90°の捩れ角を有する液晶層とすることができる。なお、30°の捩れ角を有する液晶層を3層塗布する場合を例に述べたが、他の捩れ角を有する液晶層を複数回塗布する場合であっても、同様にすることができる。
また、あらかじめ複数の液晶層を作製しておき、これらを所定の角度、例えば30°の捩れ角を有する液晶層を3層積層する場合であれば各層を30°ずつ回転させて配置する方法によって、90°の捩れ角を有する液晶層とすることもできる。
基材(配向膜)上に展開された展開層に加熱処理を施すことによって、上記液晶性材料が液晶相を示す状態で配向させることができる。上記展開層には、上記液晶性材料と共にカイラル剤が含まれているので、上記液晶性材料が、液晶相を示す状態で捻りを付与されて配向する。その結果、展開層(を構成する液晶性材料)がカイラルネマティック配向(らせん配向)を示す。
上記加熱処理の温度条件は、上記液晶性材料の種類に応じて適宜設定され得る。具体的には、液晶性材料が液晶性を示す温度に加熱することが好ましく、例えば、「化1」として前記した液晶性材料の場合、液晶性を示す温度範囲は概ね90〜185℃の範囲であり、この範囲に加熱することが好ましく、液晶性材料に十分な配向性を付与する観点からは、加熱温度は120℃以上であることがより好ましく、基材の耐熱性を考慮して、その選択の幅を拡げる観点からは、加熱温度は160℃以下であることが好ましい。また、加熱時間は、好ましくは30秒以上であり、さらに好ましくは1分以上である。処理時間が過度に短いと、液晶性材料が十分に液晶状態をとらない場合がある。一方、加熱時間は、好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは8分以下であり、最も好ましくは7分以下である。加熱時間が過度に長いと、添加剤が昇華する等の不具合を生じる場合がある。
次に、上記液晶性材料がカイラルネマティック配向を示した状態で、展開層に重合処理または架橋処理を施すことにより、当該液晶性材料の配向を固定する。より具体的には、重合処理を行うことにより、上記液晶性材料(重合性モノマー)および/またはカイラル剤(重合性カイラル剤)が重合し、重合性モノマーおよび/または重合性カイラル剤がポリマー分子の繰り返し単位として固定される。また、架橋処理を行うことにより、上記液晶性材料(架橋性モノマー)および/またはカイラル剤が3次元の網目構造を形成し、当該架橋性モノマーおよび/またはカイラル剤が架橋構造の一部として固定される。結果として、液晶性材料の配向状態が固定される。なお、液晶性材料が重合または架橋して形成されるポリマーまたは3次元網目構造は相状態の転移を生じず、厳密に言うと「非液晶性」である。したがって、形成された液晶層においては、例えば、液晶分子に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起こらず、温度による配向変化が生じない。その結果、形成された液晶層は、温度に影響を受けることがなく、安定した旋光性を示すことができる。
上記重合処理または架橋処理の具体的手順は、使用する重合開始剤や架橋剤の種類によって適宜選択され得る。例えば、光重合開始剤または光架橋剤を使用する場合には光照射を行えばよく、紫外線重合開始剤または紫外線架橋剤を使用する場合には紫外線照射を行えばよく、熱による重合開始剤または架橋剤を使用する場合には加熱を行えばよい。光または紫外線の照射時間、照射強度、合計の照射量等は、液晶性材料の種類、基板の種類、液晶層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。同様に、加熱温度、加熱時間等も目的に応じて適宜設定され得る。
このようにして基板(配向膜)上に形成された液晶層はそのまま用いてもよいし、基板から剥離して用いてもよい。さらには、別のフィルム、例えば偏光板や液晶セル、その他のフィルム等に転写して用いることもできる。また、転写を複数回行って、液晶層の配向角度や面の表裏を調整することもできる。転写は粘着剤を介して行うことが好ましく、転写を複数回行う場合は、例えば順次粘着力の高い粘着剤を用いる方法等を好適に採用し得る。
[液晶パネルの形成]
本発明の液晶パネルは、上記の液晶セル10、第1の偏光板21、第2の偏光板22、旋光素子30を用いて、任意の適切な方法で形成し得る。また、本発明の液晶パネルは、上記以外の光学層やその他の部材を含むこともできる。その例としては、前述した反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等の表面処理層や輝度向上フィルム等が挙げられる。また、光学等方性フィルムや光学補償層(光学補償フィルム)等を含むこともできる。
(輝度向上フィルム)
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定の偏光軸の直線偏光を透過して、他の光を反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等が挙げられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶性ポリマーの配向フィルムや、その配向層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等が挙げられる。
(光学補償層)
光学補償層は、液晶セルの複屈折による色付きや、斜め方向の光漏れを防止したり、視野角を拡大する目的等で用いられる。光学補償層は、液晶セル10と第1の偏光板21あるいは第2の偏光板22の間に配置し得る。また、第1の偏光板21、あるいは第2の偏光板22と旋光素子30の間に配置してもよいし、旋光素子30と液晶セル10の間に配置してもよい。また、両者に配置することもできる。
光学補償層としては、各種の位相差板や、視角補償フィルム等が挙げられる。位相差板としては、高分子材料を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶性ポリマーの配向フィルム、液晶性ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。延伸処理は、例えばロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法などにより行うことができる。延伸倍率は、一軸延伸の場合には1.1〜3倍程度が一般的である。光学補償層の厚みも特に制限されないが、位相差板として延伸フィルムを採用する場合において、その厚みは一般的に10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
前記位相差板に用いられる高分子材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などが挙げられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
前記液晶性ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどが挙げられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマティック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティック液晶性ポリマーやコレステリック液晶性ポリマーなどが挙げられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマティック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどが挙げられる。これら液晶性ポリマーは、例えば、ガラス製基板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板(ネガティブ二軸プレート)では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.1〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は20〜500nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は20〜500nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する(Z化)位相差板ではでは、正面位相差は20〜500nm、Nz係数は0を超え、0.9以下を満足するものを用いるのが好ましい。また、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足するものを用いることができる。
なお、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の遅相軸と直交する方向、すなわち進相軸方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率を表す。また、正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×dで表され、厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×dで表される。ただし、dはフィルムの厚みである。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表される。
このような位相差板は、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VAモードの液晶パネルの場合は、三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(一軸,二軸,Z化,ネガティブCプレート)の位相差板を用いることが好ましいこの場合、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲であることが好ましい。IPSモードの液晶パネルの場合、三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(一軸,Z化,ポジティブCプレート、ポジティブAプレート)の位相差板を用いることが好ましい。
なお、位相差板としては、フィルムのみならず、例えば特開2004−078203号公報等に記載されているようなポリマーのコーティング層等を用いることもできる。また、偏光子保護フィルムとしての透明フィルムに位相差板の機能を持たてもよいことは前述の通りである。
視角補償フィルムは、位相差板の一種であり、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償フィルムとしては、液晶性ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶性ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に一軸に延伸され厚み方向にも延伸された厚み方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルム等が好適に用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶性ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視野角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶性ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶性ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償層を好適に用いることができる。
(各部材の積層)
各部材は、それぞれ接着剤層や粘着剤層等を介して積層することが好ましい。その場合、接着剤又は粘着剤は透明で、可視光領域に吸収を有さず、屈折率は、各層の屈折率と可及的に近いことが表面反射の抑制の観点より望ましい。接着剤としては、偏光子と保護フィルムの積層において前記したもの等を好適に用い得る。また、粘着剤としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましく用いうる。
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が好ましい。
粘着剤層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤等の粘着剤層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層等であってもよい。粘着剤層の厚みは、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定できるが、一般には1〜500μmであり、2〜200μmが好ましく、3〜100μmがより好ましく、4〜50μmがさらに好ましい。
(液晶パネルの形成順序)
本発明において、液晶パネルの形成順序は特に限定されず、各部材を順次別個に積層する方式にて形成してもよく、予めいくつかの部材を積層したものを用いることもできる。また、その積層順序は特に制限されないが、本発明においては、偏光板と旋光素子、及び必要に応じて表面処理層や輝度向上フィルム、光学補償層等を積層した積層偏光板を予め用意し、これを液晶セルと積層することによって、品質の安定性や組立の作業性に優れたものとすることができる。
なお、前記偏光板、あるいは積層偏光板と液晶セルの積層は、前述の如く粘着剤、就中アクリル系粘着剤層を介して積層することが好ましい。特に、生産性や作業性の観点からは、偏光板の液晶セルと貼り合わせる側の面に粘着剤層を備えたものとして予め用意し、これを液晶セルと積層することが好ましい。
また、本発明において、偏光板と旋光素子、及び必要に応じてその他の光学層を積層した積層偏光板は、生産性の観点からは、偏光板と旋光素子等をロール・トゥー・ロールで積層して長尺積層偏光板として用いることが好ましい。また、前述の如く偏光子の保護フィルムや光学補償層(位相差板)を支持体(配向膜)として、これに旋光素子としての液晶層を形成するための液晶塗布液を連続的に塗布することで旋光素子を備える長尺の積層偏光板とすることもできる。
このようにして得られた(積層)偏光板は、所定の大きさに加工した後に、液晶セルと貼り合せることが好ましい。本発明においては、前述のように、第1の偏光板と第2の偏光板の吸収軸が平行となるように液晶セルと貼り合わせる構成を採用することで、大型の液晶パネルへの対応や、偏光板の取れ率を向上することが可能である。
前記(積層)偏光板に液晶セルと積層するための粘着剤層を設ける場合、粘着剤の付設は長尺積層偏光板から偏光板を切り出す前後のいずれに行うこともできるが、生産性や作業性の観点からは、偏光板を切り出す前に粘着剤層を付設することが好ましい。粘着剤層を供えた長尺の(積層)偏光板を形成し、それを所定のサイズに切り出すことで、液晶パネルの生産性及び作業性を向上させることができる。
粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層に接触することを防止できる。セパレータとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したもの等の、従来に準じた適宜なものを用いうる。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、上記液晶パネルと、光源、若しくは反射板等の液晶パネルに光を供給する手段とを有する。本発明の液晶表示装置の一例として、光源を備える透過型液晶表示装置について説明する。図13は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。この液晶表示装置300は、液晶パネル100と、液晶パネル100の一方の側に配置されたバックライトユニット200とを少なくとも備える。なお、図示例では、バックライトユニットとして、直下方式が採用された場合を示しているが、これは例えば、サイドライト方式のものであってもよい。
直下方式が採用される場合、上記バックライトユニット200は、好ましくは、光源81と、反射フィルム82と、プリズムシート84とを備える。また、図示していないが、拡散板や輝度向上フィルムを有することも好ましい。サイドライト方式が採用される場合、好ましくは、上記の構成に加え、さらに導光板と、ライトリフレクターとを備える。なお、図13に例示した光学部材は、本発明の効果が得られる限りにおいて、液晶表示装置の照明方式等の設計に応じてその一部が省略され得るか、又は、他の光学部材に代替され得る。
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用し得るその用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機等のOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用のインフォメーションディスプレイ等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター,医療用モニター等の介護・医療機器等である。特に、本発明の液晶表示装置は、テレビやインフォメーション用モニター等の大型の液晶表示装置に好適に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下に示す実施例に制限されるものではない。なお、実施例で用いた測定値等は、以下の方法によって得られたものである。
[測定方法]
(旋光角)
旋光素子の旋光角はシンテック社製の商品名「OPTIPRO」にて測定した。
(厚み)
旋光素子の厚みは大塚電子社製の膜厚計(商品名「MCPD2000」にて測定した。
(透過率およびY値)
液晶表示装置の電源をONにしてバックライト点灯の1時間後に、液晶パネルを黒表示として、ELDIM社製の商品名「EZ−contrast」を用いて各視角における透過率およびY値を測定した。なお、透過率およびY値は液晶表示装置のバックライト単体(液晶パネルを介さない場合)の輝度を基準(100%)としたものである。
[旋光素子の作製]
[製造例1]
(液晶塗布液の調製)
99.902重量部のネマティック液晶性材料[BASF社製の商品名「Paliocolour LC242」(Δn545=0.1)]、0.0981重量部のカイラル剤[BASF社製の商品名「Paliocolour LC756」]、5重量部のUV重合開始剤[チバ・ジャパン製の商品名「イルガキュア907」]、0.5重量部のレベリング剤[ビッグ・ケミー社製の商品名「BYK370」]を、270重量部のトルエンに溶解し、濃度27重量%の液晶塗布液Aを調製した。
(液晶層の形成)
得られた液晶塗布液を、#15のワイヤーバーを用いてポリビニルアルコールの配向膜上に塗布した。これを90℃のオーブンで3分間乾燥させながら液晶層を配向させ、300mJ/cm2のUV光を照射することによって硬化し、旋光素子を得た。得られた旋光素子を旋光素子Aとする。
[製造例2]
(液晶塗布液の調製および液晶層の形成)
表3に示すように塗布液の組成を変更した以外は、前記製造例2と同様にして液晶塗布液Bを調製した。得られた液晶塗布液Bを#30のワイヤーバーを用いてポリビニルアルコールの配向膜上に塗布した。これを90℃のオーブンで5分間乾燥させながら液晶層を配向させ、300mJ/cm2のUV光を照射することによって硬化し、旋光素子を得た。得られた旋光素子を旋光素子Bとする。
[製造例3]
(液晶塗布液の調製および液晶層の形成)
表3に示すように塗布液の組成を変更した以外は、前記製造例1と同様にして液晶塗布液Cを調製した。
(液晶層の形成)
得られた液晶塗布液Cを#20のワイヤーバーを用いてポリビニルアルコールの配向膜上に塗布した。これを90℃のオーブンで5分間乾燥させて液晶層を配向させ、300mJ/cm2のUV光を照射することによって硬化し、液晶固化層(液晶の捩れ角45°の液晶層)とした。得られた液晶固化層の上に、さらに液晶塗布液Cを#20のワイヤーバーを用いて塗布した後、再度90℃のオーブンで5分間乾燥させ、300mJ/cm2のUV光を照射することによって硬化して、液晶の捩れ角90°の液晶層を作製した。これを旋光素子Cとする。
[製造例4]
(液晶塗布液の調製および液晶層の形成)
表3に示すように塗布液の組成を変更した以外は、前記製造例1と同様にして液晶塗布液Dを調製した。得られた液晶塗布層Dを、#28のワイヤーバーを用いて上記製造例3と同様にして液晶層の塗布、乾燥、硬化を2回繰り返し、液晶の捩れ角90°の液晶層を作製した。これを旋光素子Dとする。
[製造例5]
(液晶塗布液の調製および液晶層の形成)
表3に示すように塗布液の組成を変更した以外は、前記製造例1と同様にして液晶塗布液Eを調製した。
(液晶層の形成)
得られた液晶塗布液Eを#24のワイヤーバーを用いてポリビニルアルコールの配向膜上に塗布した。これを90℃のオーブンで5分間乾燥させて液晶層を配向させ、300mJ/cm2のUV光を照射することによって硬化し、液晶固化層(液晶の捩れ角30°の液晶層)とした。得られた液晶固化層の上に、さらに液晶塗布液Eを#24のワイヤーバーを用いて塗布した後、再度90℃のオーブンで5分間乾燥させて液晶層を塗布、乾燥、硬化する工程を2回繰り返し、液晶の捩れ角90°の液晶層を作製した。これを旋光素子Eとする
[製造例6]
(液晶塗布液の調製および液晶層の形成)
表3に示すように塗布液の組成を変更した以外は、前記製造例1と同様にして液晶塗布液Fを調製した。得られた液晶塗布層Fを、#30のワイヤーバーを用いて上記製造例5と同様にして液晶層の塗布、乾燥、硬化を3回繰り返し、液晶の捩れ角90°の液晶層を作製した。これを旋光素子Fとする。
上記製造例1〜6で得られた旋光素子A〜Fの厚みは、それぞれ、前記式(1)において、波長λ=545nmとした場合におけるm=1、2、3、4、5、6の厚みに対応している。
[製造例7〜12]
前記製造例1において、ネマティック液晶性材料として「Paliocolour LC242」に代えて、下記の化合物(Δn545=0.3)を用い、液晶塗布液G〜Lの組成比、および塗布に用いるワイヤーバーの番手を表4の通りとした以外は製造例1と同様にして、旋光素子G〜Lを得た。
[製造例13〜14]
前記製造例3において、ネマティック液晶性材料として「Paliocolour LC242」に代えて、下記の化合物(Δn545=0.3)を用い、液晶塗布液M、Nの組成比、および塗布に用いるワイヤーバーの番手を表4の通りとした以外は製造例3と同様にして、液晶層の塗布、乾燥、硬化を2回繰り返し、液晶の捩れ角90°の液晶層を作製した。これらをそれぞれ旋光素子M、Nとする。
上記製造例7〜12で得られた旋光素子G〜Lの厚みは、それぞれ、前記式(1)において、波長λ=545nmとした場合におけるm=1、2、3、4、5、6の厚みに対応している。また、製造例14で得られた旋光素子Nはm=11の厚みに対応している。一方、製造例13、で得られた旋光素子Mの厚みは、前記式(1)において、波長λ=545nmとした場合におけるmが整数とならず、旋光素子Mはm=8.27の厚みに対応している。
[積層偏光板の作製]
[製造例15]
(旋光素子の転写)
上記製造例3で得られた旋光素子Cを、偏光子の両面に保護フィルムとして実質的に光学等方性(正面位相差が0.5nm以下、厚み方向位相差が1.0nm以下)の透明フィルムが積層された市販の偏光板[日東電工製の商品名「NPF SIG1423DU」、単体透過率:42.6%、偏光度:99.99%、]に、偏光板の吸収軸方向と、旋光素子の偏光板と対向する側の面における液晶分子の配向方向が直交するように、アクリル系の粘着剤を介して積層した後に配向膜を除去することによって転写を行い、旋光素子が形成された積層偏光板Cを作製した。
[製造例16]
上記製造例15において、旋光素子Cに代えて旋光素子Eを用いた以外は製造例15と同様にして旋光層が積層された積層偏光板Eを作製した。
[製造例17]
上記製造例15において、旋光素子Cに代えて旋光素子Iを用いた以外は製造例15と同様にして旋光層が積層された積層偏光板Iを作製した。
[製造例18]
上記製造例15において、旋光素子Cに代えて旋光素子Jを用いた以外は製造例15と同様にして旋光層が積層された積層偏光板Jを作製した。
[参考例1]
(バックライト)
シャープ製の液晶テレビ 商品名「AQUOS LC46RX1W」から液晶パネルを取り外し、バックライト単体で用いた。
(偏光板の特性の測定)
上記製造例15で得られた積層偏光板Cと、市販の偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」を、両者の吸収軸が平行となるように配置した。ただし、積層偏光板Cは、旋光素子を有する面が他方の偏光板と対向するように配置した。これを上記の液晶テレビから取り出したバックライト上に配置し、透過率およびY値を測定した。
[参考例2〜4]
上記参考例1において、積層偏光板Cに代えて、製造例16〜18で得られた積層偏光板E、I、Jを用いた以外は参考例1と同様に偏光板をバックライト上に平行に配置し、透過率およびY値を測定した。
[比較製造例1]
一軸延伸されてなる、545nmにおける位相差が273nmであり、Nz係数が1であるポリカーボネートフィルム[カネカ製 商品名「エルメックRフィルム」]と、上記偏光板(日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」をポリカーボネートフィルムの遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向のなす角が45°となるように、アクリル系の粘着剤を用いて積層して、位相差層が形成された積層偏光板を作製した。
[比較製造例2]
一軸延伸されてなる、545nmにおける位相差が273nmであり、Nz係数が1であるノルボルネン系樹脂フィルム[日本ゼオン製 商品名「ゼオノアフィルム」]と、上記偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]をノルボルネン系樹脂フィルムの遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向のなす角が45°となるように、アクリル系の粘着剤を用いて積層して、位相差層が形成された積層偏光板を作製した。
[比較参考例1]
上記参考例1において、積層偏光板Cに代えて、比較製造例1で得られたポリカーボネートフィルムが積層された積層偏光板を用いた以外は、参考例1と同様に偏光板をバックライト上に平行に配置し、透過率およびY値を測定した。
[比較参考例2]
上記参考例1において、積層偏光板Cに代えて、比較製造例2で得られたノルボルネン系フィルムが積層された積層偏光板を用いた以外は、参考例1と同様に偏光板をバックライト上に平行に配置し、透過率およびY値を測定した。
[比較参考例3]
市販の偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]2枚を、両者の吸収軸が直交するようにとなるようにバックライト上に配置し、透過率およびY値を測定した。
上記の参考例1〜4、及び比較参考例1〜3に用いた旋光素子(あるいは位相差板)の種類、及びバックライト上でのY値(%)の測定結果を表5に示す。また、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図14〜20及びに示す。なお、表5及び図14〜20においては、上側(バックライトから離れた側)に配置した偏光板の吸収軸方向を方位角の基準(0°)、画面の法線方向(正面視)を極角の基準(0°)として表している。
ポリカーボネート位相差板を用いた比較参考例1(図18)においては、ポリカーボネート位相差フィルムの位相差の波長依存性の影響によって、正面方向において光漏れが生じている。また、斜め方向においては、偏光板を直交(クロスニコル)に配置した比較参考例3(図20)と比して光漏れが大きいことが分かる。これに対して、ノルボルネン系フィルムを用いた比較製造例2(図19)においては、ポリカーボネートフィルムに比して位相差の波長依存性が小さいため、正面における光漏れは小さいものの、比較参考例3と比して光漏れが大きいことに変わりはなかった。また、斜め方向の光漏れ量は比較参考例2の場合と略同様であった。
それに対して、旋光素子を用いた参考例1〜4(図14〜17)においては、比較参考例3には若干劣るものの、比較参考例1、2に比して、正面、及び斜め方向の光漏れが格段に改善されていることが分かる。特に、厚みが大きい参考例2及び4においては、正面、斜め方向ともに光漏れが改善されていることがわかる。
[参考例5]
上記製造例1〜6の旋光素子の作製に用いたネマティック液晶性材料によって、液晶層のねじれ角度(旋光角)が90°の旋光素子を作製した場合において、旋光素子の厚みdを種々に変更した場合における波長545nmにおける透過率T(%)およびY値(%)を、前記式(2)および(3)に基づいて計算した。計算結果を、横軸:厚み、縦軸:透過率TまたはY値のグラフに表したものを図21に示す。なお、図21の(a)と(b)は同一のグラフの横軸(厚み)のスケールを変更したものである。
[参考例6]
上記製造例7〜14の旋光素子の作製に用いたネマティック液晶性材料によって、液晶層のねじれ角度(旋光角)が90°の旋光素子を作製した場合において、旋光素子の厚みdを種々に変更した場合における波長545nmにおける透過率T(%)およびY値(%)を、前記式(2)および(3)に基づいて計算した。計算結果を、横軸:厚み、縦軸:透過率TまたはY値のグラフに表したものを図22に示す。なお、図22の(a)と(b)は同一のグラフの横軸(厚み)のスケールを変更したものである。
図21及び図22から理解されるように、透過率Tは、式(1)においてmが整数となる厚みにおいて、最小値を有するのに対して、Y値は、厚みが小さい領域においては、透過率Tと類似の増減傾向を示すものの、厚みが増加するにつれて、その挙動が透過率Tとは異なってくる。そして厚みが大きくなるにつれて単調現減少を示すようになるが、その変化点は概ねΔn545×d=1400nmとなる領域に現れる。
[軸ずれの影響の評価]
[参考例7]
前記製造例14において、旋光素子Eの偏光板と対向する側の面における液晶分子の配向方向が偏光板の吸収軸方向と直交とする代わりに、両者のなす角を90°からそれぞれ0.5°、1°、2°ずらして配置した積層偏光板を作製し、上記参考例1と同様に偏光板の吸収軸が平行となるように配置し、透過率およびY値を測定した。
[参考例8]
前記製造例16において、旋光素子Jの偏光板と対向する側の面における液晶分子の配向方向が偏光板の吸収軸方向と直交とする代わりに、両者のなす角を90°からそれぞれ0.5°、1°、2°ずらして配置した積層偏光板を作製し、上記参考例1と同様に偏光板の吸収軸が平行となるようにバックライト上に配置し、透過率およびY値を測定した。
上記参考例7のバックライト上でのY値の測定結果を表6に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図23に示す。また、上記参考例8のバックライト上でのY値の測定結果を表7に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図24に示す。なお、図23および図24の(a)、(b)、(c)はそれぞれ、軸ずれの角度が0.5°、1°、2°の場合を表している。角度の基準は上記参考例1〜4の場合と同様である。
[セルロース系位相差フィルムを備える液晶パネル、液晶表示装置の作製]
[実施例1]
(液晶セル)
VAモード液晶パネルを備える市販の液晶表示装置[シャープ製の液晶テレビ 商品名「AQUOS LC46RX1W」]から、液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた光学フィルムを全て取り除いて、上記液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した液晶セルを用いた。
(光源側偏光板の作製)
前記製造例15において、旋光素子Cに代えて旋光素子Aを用いた以外は製造例15と同様にして、旋光層が積層された積層偏光板Aを作製した。この積層偏光板Aの旋光層を備える側に、545nmにおける位相差が50nm、厚み方向位相差が150nmであり、Nz係数が3であるセルロース系の位相差フィルム[コニカミノルタ製 商品名「N−TAC KC4HR−1」]を、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行となるようにアクリル系の粘着剤を介して積層した。
(視認側偏光板の作製)
市販の偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]の片面に、上記と同様のセルロース系位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が直交するようにアクリル系の粘着剤を介して積層した。
(液晶表示装置の作製)
上記の液晶セルの表裏に、上記で作製した光源側偏光板及び視認側偏光板をアクリル系の粘着剤を用いて貼り合せて、液晶パネルを作製した。貼り合せに際しては、旋光素子を有さない視認側偏光板は、元の液晶パネルにおいて配置されていた光源側偏光板と吸収軸方向が同一となるように配置し、旋光素子を有する視認側偏光板は、元の液晶パネルにおいて配置されていた光源側偏光板と吸収軸方向が直交するように配置し、2枚の偏光板の吸収軸を平行とした。
このようにして得られた液晶パネルを、元の液晶表示装置のバックライト元の液晶表示装置のバックライトユニットと再度組み立てることで液晶表示装置を作製した。
[実施例2〜12]
上記実施例1の光源側偏光板の作製において、旋光素子Aに代えて旋光素子B〜E、及び旋光素子G〜K、M、Nを用いた以外は実施例1と同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
[比較例1]
上記実施例1の光源側偏光板の作製において、積層偏光板Aに代えて、前記比較製造例1で得られたポリカーボネート位相差層が形成された積層偏光板を用い、該積層偏光板のポリカーボネート位相差層を備える側に、前記と同様のセルロース系の位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行となるようにアクリル系の粘着剤を介して積層した。この光源側偏光板を用いた以外は上記実施例1と同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
[比較例2]
上記比較例1において、比較製造例1の積層偏光板に代えて、比較製造例2で得られたノルボルネン系位相差層が形成された積層偏光板を用いた以外は比較例1と同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
[比較例3]
上記実施例1において、光源側偏光板として、上記実施例9の視認側偏光板と同様に、偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]の片面に、セルロース系位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が直交するようにアクリル系の粘着剤を介して積層したものを用い、光源側偏光板、視認側偏光板ともに、元の液晶パネルにおいて配置されていたのと吸収軸方向が同一、すなわち、視認側偏光板と光源側偏光板の吸収軸方向が直交するように、アクリル系の粘着剤を介して液晶セルに積層した。これを元の液晶表示装置のバックライトユニットと再度組み立てることで、2枚の偏光板の吸収軸が直交に配置された液晶表示装置を作製した。
実施例1〜12、比較例1〜3の液晶表示装置を黒表示とした場合における透過率およびY値を測定した。Y値を表7に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図25〜39に示す。さらに、実施例3〜5、8〜10及び比較例1〜3の液晶表示装置を黒表示させた場合の透過スペクトルを図40〜48に示す。図40〜48において、(a)は方位角0°方向(視認側偏光板の吸収軸方向)、(b)は方位角45°方向で極角を変化(0°、30°、60°)させた際の透過スペクトルを表している。なお、角度は液晶表示装置の画面の長辺方向(右側)を方位角の基準(0°)としたものである。
実施例にかかる図25〜36と、比較例1、2にかかる図37、38を対比すると、液晶表示装置に組み込んだ場合においても、旋光素子を用いた本発明は、位相差フィルムを用いた場合に比して、可視光の広い領域において透過率が低く、結果としてY値も小さくなり、色付きの少ない黒表示が得られることがわかる。特に、Δn545×dが1400nm以上である実施例3〜5、8〜12においては、正面方向に加えて、方位角45°方向の光漏れも抑制されており、旋光素子の厚みを調整することで、より色付きが少なく、偏光板がクロスニコルに配置した比較例3(図39)と対比しても遜色ない黒表示が得られることが分かる。
このように、旋光素子を用いることでY値を小さくできることは、図40〜48の透過率スペクトルからも明らかである。すなわち、位相差板を用いた比較例1、2(図46、47)においては、レターデーションが波長の1/4となる545nm付近においては、透過率が小さいものの、その他の波長における透過率が大きいために、画面が色づき、Y値が大きくなっているのに対して、実施例においては、このような波長による透過率の差異が小さく、位相差板を用いた場合に比してよりニュートラルな色相が得られる。この傾向は旋光素子のΔn545×dが大きくなるほど顕著であることが伺える。さらに、本発明のように旋光素子を用いた液晶パネルにおいては、従来の液晶パネルと同様の光学補償層を用いて光学補償が可能であることも伺える。
さらに、旋光素子Mを用いた実施例11(図35)においては、旋光素子Mの厚みが、波長545nm付近において、mは整数とならないが、mが整数となる実施例6〜10に比して光漏れの少ない良好な表示特性が得られている。このことは、先に参考例5、6(図23、24)において示したように、必ずしも式(1)でmが整数となる場合にY値が極小となるものではないことを裏付けているといえる。
[旋光素子の厚みずれの影響の評価]
[参考例9]
上記実施例6において、旋光素子Gに代えて、旋光素子Gの液晶層厚みをそれぞれ0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4、0.5μm厚くしたものを作製し、これを用いた以外は実施例6と同様にして、セルロース系位相差フィルムを備え、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネル作製し、これをバックライトユニットと再度組み立てることで液晶表示装置を作製した。
このように旋光素子の液晶層の厚みを変更したそれぞれの液晶表示装置の黒表示時のY値を表9に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図49に示す。図49において、(a)は実施例6(図30)と同一であり、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、液晶層の厚みを0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm厚くした旋光素子を用いた場合に対応する。
[参考例10]
上記実施例7において、旋光素子Hに代えて、旋光素子Hの液晶層厚みをそれぞれ0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm厚くしたものを作製し、これを用いた以外は実施例2と同様にして、セルロース系位相差フィルムを備え、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネル作製し、これをバックライトユニットと再度組み立てることで液晶表示装置を作製した。
このように旋光素子の液晶層の厚みを変更したそれぞれの液晶表示装置の黒表示時のY値を表10に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図50に示す。図50において、(a)は実施例7(図31)と同一であり、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、液晶層の厚みを0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm厚くした旋光素子を用いた場合に対応する。
上記実施例8において、旋光素子Iに代えて、旋光素子Iの液晶層厚みをそれぞれ0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm厚くしたものを作製し、これを用いた以外は実施例8と同様にして、セルロース系位相差フィルムを備え、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネル作製し、これをバックライトユニットと再度組み立てることで液晶表示装置を作製した。
このように旋光素子の液晶層の厚みを変更したそれぞれの液晶表示装置の黒表示時のY値を表11に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図51に示す。図51において、(a)は実施例8(図32)と同一であり、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、液晶層の厚みを0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm厚くした旋光素子を用いた場合に対応する。
上記表9においては、旋光素子の厚みが式(1)において丁度m=1となる場合に、各視角におけるY値が最小となり、厚みが0.1μm単位で増加するにつれて、Y値は大きくなる傾向がある。それに対して、表10においては、旋光素子の厚みが式(1)において丁度m=2となる場合よりも厚みが0.1μm、あるいは0.2μm大きい場合に、各視角におけるY値が小さくなっており、表11においては、m=3となる場合よりも厚みが0.4μm大きい場合に、正面および斜め方向におけるY値が最も小さくなっている。このように、波長545nmにおける透過率Tが極小となる厚みと、Y値が極小となる厚みが異なることが伺える。このように、本発明を実施するにあたっては、特定の波長における透過率Tを最小とするべく、式(1)におけるmが丁度整数となるように厚みを設計するよりも、波長分散を考慮して、Y値が最小となるように、厚みを設計することが好ましいことがわかる。
また、表9〜11及び図49〜51を対比すると、旋光素子の厚みが小さい参考例9においては、厚み変化による表示特性の変化が大きいのに対して、旋光素子の厚みを大きくするにつれて厚み変化に起因する表示特性の変化が抑制される。このように、旋光素子の厚みを設計することによって、生産条件等に起因する厚みばらつきが液晶表示特性に及ぼす影響を小さくすることができるため、製造の条件幅(プロセス・ウインドウ)を広くすることが可能であり、量産性においても優れている。
[旋光素子の軸ずれの影響]
[参考例12]
上記実施例8において、旋光素子Iの偏光板と対向する側の面における液晶分子の配向方向が偏光板の吸収軸方向と直交とする代わりに、両者のなす角を90°からそれぞれ1°、2°、3°、4°、5°ずらして配置した積層偏光板を作製した以外は、実施例8と同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
このように旋光素子の配置角度を直交からずらしたそれぞれの液晶表示装置の黒表示時のY値を表12に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図52に示す。図52において、(a)は実施例8(図32)と同一であり、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、旋光素子Iの配置角度を1°、2°、3°、4°、5°ずらした場合に対応する。
[参考例13]
上記実施例9において、旋光素子Jの偏光板と対向する側の面における液晶分子の配向方向が偏光板の吸収軸方向と直交とする代わりに、両者のなす角を90°からそれぞれ1°、2°、3°、4°、5°ずらして配置した積層偏光板を作製した以外は、実施例9と同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
このように旋光素子の配置角度を直交からずらしたそれぞれの液晶表示装置の黒表示時のY値を表12に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図52に示す。図52において、(a)は実施例8(図32)と同一であり、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、旋光素子Iの配置角度を1°、2°、3°、4°、5°ずらした場合に対応する。
[ノルボルネン系位相差フィルムを備える液晶パネル、液晶表示装置の作製]
[実施例13]
(光源側偏光板の作製)
旋光素子として旋光素子Gを用い、実施例1におけるセルロース系の位相差フィルムに代えて、二軸延伸されてなる、545nmにおける位相差が50nm、厚み方向位相差が150nmであり、Nz係数が3であるノルボルネン系の位相差フィルム[日本ゼオン製 商品名「ゼオノアフィルム」]と偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]を、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行となるようにアクリル系の粘着剤を介して積層した。
(視認側偏光板の作製)
市販の偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]の片面に、上記と同様のノルボルネン系位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が直交するようにアクリル系の粘着剤を介して積層した。
(液晶表示装置の作製)
実施例1の液晶パネルの作製において、光源側偏光板及び視認側偏光板として、上記で作製したものを用いた以外は同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
[実施例14〜19]
上記実施例13の光源側偏光板の作製において、旋光素子Gに代えて旋光素子H、I、J、K,M、Nを用いた以外は実施例13と同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
[比較例5]
上記実施例13において、光源側偏光板として、上記実施例13の視認側偏光板と同様に、偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]の片面に、ノルボルネン系位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が直交するようにアクリル系の粘着剤を介して積層したものを用い、光源側偏光板、視認側偏光板ともに、元の液晶パネルにおいて配置されていたのと吸収軸方向が同一、すなわち、視認側偏光板と光源側偏光板の吸収軸方向が直交するように、アクリル系の粘着剤を介して液晶セルに積層した。これを元の液晶表示装置のバックライトユニットと再度組み立てることで2枚の偏光板の吸収軸が直交に配置された液晶表示装置を作製した。
実施例13〜19、比較例4の液晶表示装置を黒表示とした場合における透過率およびY値を測定した。Y値を表14に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図54〜61に示す。なお、角度は液晶表示装置の画面の長辺方向(右側)を方位角の基準(0°)としたものである。
[ポリイミドコーティング層を備える液晶パネル、液晶表示装置の作製]
[実施例20]
(光学補償層)
特開2004−78203号公報の実施例1と同様にして、2,2’ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドを基材上に塗布、加工することで、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム基材上にポリイミド光学補償層が形成された位相差板を作製した。なお、かかる光学補償層の545nmにおける位相差は55nm、厚み方向位相差は200nm(Nz係数は3.6)でああった。
(光源側偏光板の作製)
旋光素子として旋光素子Gを用い実施例1において、セルロース系の位相差フィルムに代えて、上記のTACフィルム基材上にポリイミド光学補償層が形成された位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行となるようにアクリル系の粘着剤を介して積層した。なお、積層に際しては、位相差フィルムのTACフィルム側が旋光素子と対向するように積層した。
(視認側偏光板の作製)
市販の偏光板[日東電工製 商品名「NPF SIG1423DU」]をそのまま用いた。
(液晶表示装置の作製)
実施例1の液晶パネルの作製において、光源側偏光板及び視認側偏光板として、上記で作製したものを用いた以外は同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
[実施例21〜26]
上記実施例20の光源側偏光板の作製において、旋光素子Gに代えて旋光素子H、I、J、K、L、M、Nを用いた以外は実施例20と同様にして、2枚の偏光板の吸収軸が平行に配置された液晶パネルを備える液晶表示装置を作製した。
[比較例5]
上記実施例20において、光源側偏光板として、旋光素子Gを介さずに上記実施例27と同様のTACフィルム基材上にポリイミド光学補償層が形成された位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が直交するように平行となるようにアクリル系の粘着剤を介して積層したものを用いた。視認側偏光板は、実施例20と同様のものを用い、光源側偏光板、視認側偏光板ともに、元の液晶パネルにおいて配置されていたのと吸収軸方向が同一、すなわち、視認側偏光板と光源側偏光板の吸収軸方向が直交するように、アクリル系の粘着剤を介して液晶セルに積層した。これを元の液晶表示装置のバックライトユニットと再度組み立てることで2枚の偏光板の吸収軸が直交に配置された液晶表示装置を作製した。
実施例20〜26、比較例5の液晶表示装置を黒表示とした場合における透過率およびY値を測定した。Y値を表15に、Y値の測定結果の視野角分布(コーン図)を図62〜69に示す。なお、角度は液晶表示装置の画面の長辺方向(右側)を方位角の基準(0°)としたものである。
上記の実施例13〜19、および実施例20〜26から分かるように、旋光素子を用いた本発明の液晶パネルは、種々の光学補償形態においても、Y値の小さい黒表示を得ることができる。特に旋光素子の厚みを制御することによって、偏光板がクロスニコルに配置された従来の液晶表示装置と遜色ない表示特性が得られることがわかる。
なお、上記の各実施例、比較例等においては、構成による差異の比較を容易とするために、すべての例において偏光子の保護フィルムと光学補償層等を別体のものとして設けたが、1枚のフィルムに偏光子の保護フィルムと光学補償層や旋光素子を形成する液晶層の配向基材等の複数の機能を持たせることができるのは、先述の通りである。
以上、各実施例に示したように、本発明の旋光素子を用いた液晶パネルは、偏光板を平行に配置した場合でも色抜けの少ない黒表示を得ることができる。特に液晶層の厚みを調整することによって、従来の偏光板を直交に配置した場合に比して遜色なく、色付きの少ない良好な黒表示を得ることができる。また、本発明の液晶パネルにおいては、2枚の偏光板が直交に配置された従来の液晶パネルと同様に、位相差フィルム等の光学補償層によって、視角特性を向上することが可能である。
また、液晶セルの表裏に2枚の偏光板の吸収軸が平行となるように配置されているため、大型化や、偏光板の取れ率向上に寄与し得る。