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JP5283454B2 - 雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法 - Google Patents
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JP5283454B2 - 雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法 - Google Patents

雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属板に対して他の部材をボルトによって締結するための雌ねじを形成する雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法に関する。
車両を製造する際に、フレームのドアヒンジ部等のボルト締結部にナットを溶接することがある。このようなナットの溶接は正確な位置決めが困難であり、しかも溶接作業が煩雑である。
特許文献1では、ワークに対して種々の雌ねじを形成することのできる装置が提案されているが、自動車のフレーム等の薄板に対しては不適である。
本出願人は、特許文献2において、ナットの溶接を行う必要のない雌ねじ加工装置を提案している。この加工装置では、加工ツールを回転させながら金属板に押圧して、縮径部によって金属板に孔を形成するとともに、加工ツールを孔に挿入したまま、さらに回転挿入させ、タップ部によって孔に雌ねじを形成する。また、フィラーで肉盛りをすることにより、自動車のフレーム等の薄板に対しても適用可能であり、雌ねじを有するブッシュを1つの工程で形成することができて好適である。
特開平1−306124号公報 特開2005−329528号公報
ところで、金属板にナットを溶接する場合には、該ナットは元来十分な強度を有しており、ボルトに対して十分な締結強度が得られるが、薄板に対して肉盛りをしたブッシュに形成された雌ねじは必ずしも十分な強度を有しているとは限らず、十分な実験や検査が必要である。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、十分な強度を有する雌ねじ部を形成することができる雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法を提供することを目的とする。
本発明に係る雌ねじ加工装置は、金属板における雌ねじを形成する箇所を加熱する加熱部と、前記金属板に前記雌ねじを形成する加工ツールと、前記加工ツールを冷却する冷却部と、前記加工ツールを回転させる回転駆動部と、前記加工ツールを進退させる進退駆動部と、を有し、前記加熱された雌ねじを形成する箇所に前記加工ツールを挿入するときに、前記雌ねじを形成する箇所を急冷することにより組織が硬くなり、前記金属板に、ベイナイト組織を有するねじ部と、前記ねじ部の外側で且つ母材の内側に前記ねじ部よりも硬度が低く且つ前記母材よりも硬度が高い熱影響部とを形成することを特徴とする。
このような加熱部と冷却部とを設けることにより、加熱した加工箇所に加工ツールを挿入するときに、該加工箇所が急冷されて組織が硬くなり、高強度の雌ねじ部を形成することができる。
前記加工ツールは、チャックにより着脱自在であり、前記冷却部は、前記チャックを介して間接的に前記加工ツールを冷却してもよい。このようにチャックを介した間接的な冷却によれば、加工ツールは冷却手段が不要な簡便構造となるとともに、加工ツールの交換が容易となる。
前記冷却部は、前記チャック又はその周辺部に空気を噴き付けることによる空冷式であってもよい。このような空冷式によれば、冷却媒体の供給管路、回収管路等が不要で、簡便である。
前記冷却部は、流路に液体を流すことによる液冷式であってもよい。このような液冷式によれば、冷却効果が高い。
前記加工ツールは、前記金属板に孔を形成するために先端に設けられた縮径部と、前記孔に雌ねじを形成するために前記縮径部に対して連続して設けられたタップ部とを備えてもよい。このような加工ツールによれば、雌ねじを1つの工程で形成することができる。
本発明に係る雌ねじ加工方法は、加熱部により、金属板における雌ねじを形成する箇所を加熱する加熱工程と、冷却部により、前記金属板に前記雌ねじを形成する加工ツールを冷却する冷却工程と、前記加熱部による加熱を停止し、前記冷却部による冷却を継続し、自然冷却された前記雌ねじを形成する箇所に前記加工ツールを挿入し、前記雌ねじを形成する箇所を急冷し組織を硬くする急冷工程と、前記加工ツールを回転し、前記加工ツールで前記雌ねじを形成する箇所を冷却しながら雌ねじを成形する加工工程とを有することを特徴とする。
このような加熱工程及び冷却工程を設けることにより、加熱した加工箇所に加工ツールを挿入するときに、該加工箇所が急冷されて組織が硬くなり、高強度の雌ねじ部を形成することができる。なお、加工工程以外における加熱工程及び冷却工程の相互タイミングは特に問われない。
前記加熱工程では、前記金属板をオーステナイト域以上に加熱してもよい。これにより、金属組織に対して種々の熱処理をすることができる。
前記加工工程又はその後の放熱工程では、ベイナイト域を通して前記金属板を冷却してもよい。これにより、金属板にベイナイトが析出して十分高強度な雌ねじが得られる。
本発明に係る雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法によれば、このような加熱部又は加熱工程と冷却部又は冷却工程とを設けることにより、加熱した加工箇所に加工ツールを挿入するときに、該加工箇所が急冷されて組織が硬くなり、高強度の雌ねじ部を形成することができる。
以下、本発明に係る雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図17を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る雌ねじ加工装置10は、本塗装前であるフレーム(金属板)12における所定の箇所にブッシュ14を形成するためのユニット型式の装置であり、ロボット16の先端に着脱自在に設けられている。ブッシュ14には雌ねじ15(図12参照)が形成される。ロボット16は産業用の多関節型であって、雌ねじ加工装置10はロボット16の動作範囲内で任意の位置に任意の姿勢に設定可能である。これにより、雌ねじ加工装置10は、例えば、フレーム12におけるドアヒンジ部12aやバンパビーム部12bに対向するように配置され、これらの箇所にブッシュ14を形成することができる。
フレーム12は搬送ライン18上で搬入されてロボット16の近傍において一時停止し、カメラ19によって正確な位置の確認が行われる。フレーム12は雌ねじ加工装置10によってブッシュ14を形成する加工が行われた後、搬送ラインに沿って次工程のステーションへと搬送され、この後、ロボット16の近傍には未加工の次のフレーム12が搬入される。
ロボット16及び雌ねじ加工装置10は、コントローラ20によって制御される。コントローラ20は、ロボット16を所定の教示データに基づいて動作させるロボット駆動部22と、雌ねじ加工装置10内の昇降モータ(進退駆動部)36及びスピンドルモータ(回転駆動部)52を駆動するモータ制御部24と、フィラー48(図2参照)を送給するためのフィラー送給制御部26と、TIGトーチ(アーク加熱機46)からアークを放射するためのアーク電流制御部28と、雌ねじ加工装置10の所定の箇所を冷却するための冷却制御部29とを有する。また、コントローラ20はカメラ19から得られる画像に基づいてフレーム12及びブッシュ加工位置Pの位置確認を行うことができる。
図2に示すように、雌ねじ加工装置10は、ベースユニット30と、該ベースユニット30に対して昇降する昇降ユニット32とをベースとして構成されている。ロボット16はベースユニット30の側面に接続されている。
ベースユニット30は、ベース体34と、昇降モータ36と、ボールねじ38と、ボールナット40と、ガイドレール42と、フィラー送給機44と、アーク加熱機(加熱部)46(例えば、TIGトーチ)とを有する。ベース体34は縦長の構造体であり、上端に昇降モータ36が備えられている。ボールねじ38は昇降モータ36に接続されて下向きに延在しており、回転自在に保持されている。ガイドレール42は、ベース体34における端部で昇降ユニット32に対面して上下方向に延在して設けられている。ガイドレール42とボールネジ38は平行である。
ボールナット40はボールネジ38に螺合するとともに昇降ユニット32に接続されており、昇降モータ36の回転作用下に昇降ユニット32を昇降させることができる。昇降ユニット32の昇降量は、図示しないセンサを用いてフィードバックする。
フィラー送給機44は、ブッシュ加工位置Pを指向している。フィラー送給機44は、フィラー送給制御部26の作用下にフィラー48をブッシュ加工位置Pに向けて送給する。アーク加熱機46は、ブラケット47によってベース体34の下端部に固定されており、アーク電流制御部28の作用下にブッシュ加工位置Pに対するアーク放電を行い、該ブッシュ加工位置Pを加熱する。ブラケット47には、アーク加熱機46を移動させるスライド機構47aが設けられている。
昇降ユニット32は、昇降ベース体50と、スピンドルモータ52と、レール係合部54と、回転ロッド56と、チャック58と、加工ツール60と、冷却ユニット(冷却部)62とを有する。冷却ユニット62によって冷却される部分には、面積を広げて空冷効果を高めるようにフィンが設けられていてもよい。
昇降ベース体50は、上下2つのレール係合部54によってガイドレール42に対して昇降自在に係合するとともに、所定箇所がボールナット40に接続されている。昇降ベース体50の上端にはスピンドルモータ52が下向きで備えられている。モータ制御部24の作用下にスピンドルモータ52は回転数制御が可能な構成であり、昇降モータ36と同期して回転可能である。
回転ロッド56はスピンドルモータ52に接続されて下向きに延在しており、回転自在に保持されている。回転ロッド56の下端には該加工ツール60を保持するチャック58が設けられている。
冷却ユニット62は、回転ロッド56の中間部に設けられており、該回転ロッド56を軸支するベアリングブロック64を含んでいる。冷却ユニット62は、空気供給口66から圧縮空気が供給され、回転ロッド56及びベアリングブロック64に圧縮空気を噴き付けて冷却することができる。噴き付けられた圧縮空気は、そのまま外部に排出される。空気供給口66は、例えば複数のノズルを有する。空気供給口66に対しては、空気供給量を調整するとともに、流路の開閉が可能な調整弁67が設けられている。調整弁67には冷却された圧縮空気が供給されている。
このような空冷式の冷却ユニット62によれば、冷却媒体の供給管路、回収管路等が不要で、簡便である。
図3に示すように、加工ツール60は、先端に設けられた縮径部70と、該縮径部70の上方に連続して設けられた円柱部72と、そのさらに上方に連続して設けられたタップ部74とを有する。縮径部70は、下方に向かって縮径する円錐形であり、縮径部70の上端部における最も大径の部分は円柱部72と同径である。縮径部70はフレーム12に孔100(図7参照)を形成する部分であって、円柱部72は孔100の形状が安定化するように作用する、これらの縮径部70及び円柱部72は下孔形成部76として一体となっている。タップ部74は、孔100に雌ねじを形成するための部分であり、円柱部72よりも大径の螺旋突起74aが設けられている。設計条件及び加工条件によっては、円柱部72を設けずにタップ部74が縮径部70の直上部又は縮径部70の上端の一部まで達していても良い。
また、縮径部70には、フレーム12と間の摩擦効果を高めるためのダル加工や、強度を増加させるための超硬材コーティング等を形成してもよい。
タップ部74と下孔形成部76は着脱自在に構成されており、摩耗の程度によりいずれか一方を個別に交換可能である。もちろん、タップ部74と下孔形成部76は一体型であってもよい。加工ツール60は、例えば、高速工具鋼等の金属で構成される。
雌ねじ加工装置10は、ブッシュ加工位置Pを中心に配置された複数の負極板69(図5参照)を有している。また、負極板69の代わりにワークを固定する台車、治具、加工台等にアース線69a(図17参照)を設けてもよい。
次に、このように構成される雌ねじ加工装置10を用いて、フレーム12のブッシュ加工位置Pにブッシュ14(図12参照)を形成する雌ねじ加工方法について説明する。以下の説明では、表記したステップ番号順に処理が実行されるものとする。
図4におけるステップS1(冷却工程)において、冷却制御部29の作用下に、冷却ユニット62に冷却された圧縮空気を供給し、回転ロッド56及びベアリングブロック64を冷却する。この冷却工程は一連で複数回の雌ねじ加工時において、継続的に行われ、チャック58を介して間接的に加工ツール60を冷却する。このようにチャック58を介した間接的な冷却によれば、加工ツール60は冷却手段が不要な簡便構造となるとともに、加工ツール60の交換が容易となる。
初回の雌ねじ加工時には加工ツール60は常温となっていることから、冷却工程を省略し、2回目の加工時から冷却を開始してもよい。
このステップS1は、後述するステップS6で加熱された加工ツール60を適度に冷却するための処理であり、加工ツール60を600℃以下、例えば500℃程度にしておく。この冷却処理は、厳密な温度管理は必要なく、実験又は経験に基づいて適量で一定の空気を回転ロッド56及びベアリングブロック64に噴き続けておき、ステップS6の直前に加工ツール60が600℃以下となるようにしておけばよい。
本発明者の実験した結果によれば、ある程度の室温の変化があった場合でも、冷却ユニット62による回転ロッド56及びベアリングブロック64に対する冷却として、フィードバック制御を用いることなく、しかも室温に応じた特別な調整をすることがなくても、適量で一定の空気を回転ロッド56及びベアリングブロック64に噴き続けておけば好適な雌ねじ15を有するブッシュ14が得られることが確認されている。
ステップS2において、ロボット駆動部22の作用下にロボット16を動作させ、雌ねじ加工装置10をフレーム12に接近させて、負極板69を接触させる。ワークを固定する台車、治具、加工台等にアースを設けている場合には負極板69は不要である。このとき、予め設定されたブッシュ加工位置Pが加工ツール60の進退する軸上に配置されるようにする。
ステップS3(加熱工程)において、図5に示すように、フィラー送給制御部26の作用下にフィラー送給機44からフィラー48を送給して肉盛りをするとともに、アーク電流制御部28の作用下にアーク加熱機46に高電圧を印加してアークAを発生させる。アーク加熱機46は、ブッシュ加工位置Pの近傍までスライド移動させておき、該ブッシュ加工位置Pに対してアークを発生させて予備加熱して軟化させる。ブッシュ加工位置PはアークAによって迅速に加熱される。所定時間が経過した後、高電圧の印加を停止してアークAを消滅させる。ブッシュ加工位置Pにおけるフレーム12及び肉盛りされたフィラー48の加熱は、例えば1200℃に達するまで行う。
フィラー48は所定量送給された後、残余分はやや引き戻されてフィラー送給機44内に退避する。ブッシュ加工位置Pにおける板厚が厚いときにはフィラー48の供給による肉盛りを省略してもよい。
このときのブッシュ加工位置Pには、図6に示すように、適度な肉盛部110と、該肉盛部110を含みその周辺の熱影響部112が形成される。熱影響部112は、加熱により温度が上昇して、表面色が変化した箇所である。
熱影響部112の径R1は、後述するねじ部上部径R2(図12参照)の1.6〜1.7倍程度が好適である。
ステップS4において、ブッシュ加工位置Pが適温に自然冷却されるまで待機する。この時点でブッシュ加工位置Pの適温とは、オーステナイト域以上の温度であり、例えば900℃程度である。この前段階のステップS3において1200℃まで加熱することなく、900℃の加熱で停止させてもよいが、一旦それよりも高い1200℃程度まで加熱してから冷却させると、より短時間で900℃に設定でき、また、熱影響部112を適度に広く確保することができる。
ステップS5において、図7に示すように、加工ツール60を無回転で進行させて、孔100を形成する。当初、孔100は縮径部70の先端部によって形成された後、縮径部70の錐面によって拡径され、さらに円柱部72が挿通することにより形状が安定化する。
このとき、ブッシュ加工位置Pが900℃程度であるのに対して、加工ツール60は600℃以下、例えば500℃であることから、ブッシュ加工位置Pは急冷され、いわゆる焼入と同じ状態になる。冷却時間を0.5sec程度とすると、図8に示すように、CCT曲線(continuous cooling transformation diagram)86はベイナイト域88の直上部まで導かれることが理解されよう。図8は、C0.13%、Mn0.56%の炭素鋼における連続冷却状態図であるが、これ以外の組成の金属を用いる場合には、その組成の連続冷却状態図に基づいて冷却条件を設定すればよい。
加工ツール60によるフレーム12の急冷処理は、該フレーム12の温度の低下にともなって加工ツール60の温度が上昇し、両者が接触している間で、フレーム12が600℃〜700℃程度になるまで継続的に行われることになり、実際にはステップS5だけではなく次のステップS6においても継続的に行われる。600℃〜700℃程度の箇所はフェライト域であり、この後の空冷時にベイナイト域を通ることになる。600℃〜700℃程度までの急冷では、冷却設備が簡便で済む。
また、冷却設備は大型化するが、強制冷却時にベイナイト域まで直接的に冷却させることにより作業効率を向上させることができる。
この間、加工ツール60はフレーム12の熱を受けて多少の温度上昇が発生するが、該加工ツール60は、冷却ユニット62によってチャック58を介して継続的に冷却されていることから過度に温度上昇することはなく、熱膨張が抑制され、高い加工精度を維持することができる。
ステップS6において、円柱部72が無回転で孔100に挿入された後、スピンドルモータ52によって、ボールねじ38及び加工ツール60を回転させる。また、昇降モータ36の回転数を制御し、加工ツール60が1回転する間に該加工ツール60がタップ部74の螺旋突起74aのピッチt(図7参照)だけ進行するように同期させる。これにより、図9に示すように、螺旋突起74aが孔100に螺合するようにタップ加工され、雌ねじ15を有するブッシュ14が形成される。
ステップS6及びS7で強制冷却が行われる時間(つまり、加工ツール60がワークに接触している時間であって、孔を形成してタップ加工を行って、加工ツール60を抜くまでの時間)は、例えば1.5sec程度である。
なお、ステップS5の後、加工ツール60は孔100に挿入されたまま次のステップS6へ移ることから、これらのステップS5とステップS6は実質的に1つの工程とみなすことができる。このステップS5とステップS6との間において、加工ツール60を交換する必要がないことは当然である。
ステップS7において、スピンドルモータ52及び昇降モータ36を逆回転させ、加工ツール60をブッシュ14から抜き取る。このとき、スピンドルモータ52と昇降モータ36とを同期させて、加工ツール60が1回転する間に該加工ツール60がピッチtだけ後退するように同期させる。タップ部74がブッシュ14から抜き取られた後には加工ツール60を高速で後退させてもよい。
加工ツール60をブッシュ14から抜き取ることにより、該加工ツール60による強制冷却が終了する。加工ツール60は、この後も冷却ユニット62によって継続的に冷却される。
ステップS8(放熱工程)においては、ブッシュ14を自然空冷する。これにより、図8のCCT曲線86における屈曲点90以下の部分のように、緩やかに冷却が進み、ベイナイト域88を通してフレーム12を冷却することになる。これにより、フレーム12にベイナイトが析出して十分高強度な雌ねじが得られる。ベイナイトは、フェライト中に微細セメンタイトが分散した組織であり、高い硬度及び靭性を有する。CCT曲線86がパーライト域96を通るか否かは特に問われない。
また、金属板は一度、オーステナイト域まで加熱していることから、柔軟な対応が可能であり、設計条件によっては金属組織に対して種々の熱処理をすることができる。なお、図8において、符号92、94、96及び98は、順にオーステナイト域、フェライト域、パーライト域及びマルテンサイト域である。
ステップS8においては、加工ツール60以外の吸熱手段により、ブッシュ14の放熱を促進させてもよい(放熱工程)。
この後、ロボット16を動作させることにより雌ねじ加工装置10をフレームから離間させる。
ステップS9(ステップS8と並行してもよい。)においては、未加工のブッシュが残っているか確認し、未加工のものがある場合には、次のブッシュ加工位置Pへ雌ねじ加工装置10を移動させて、ステップS2へ戻り、同様の手順により加工を続行する。
全てのブッシュ14の加工が終了している場合には、冷却ユニット62を停止させ(ステップS10)、図4に示す処理を終了する。
このように本実施形態に係る雌ねじ加工装置10及び雌ねじ加工方法では、アーク加熱機46と冷却ユニット62とを設けることにより、加熱したブッシュ加工位置Pに加工ツール60を挿入するときに、該ブッシュ加工位置Pが急冷されて組織が硬くなり、高強度の雌ねじ15を形成することができる。
また、加工ツール60を無回転でブッシュ加工位置Pに押圧して、縮径部70によってブッシュ加工位置Pに孔100を形成し、この後、加工ツール60を回転させ、加工ツール60を孔100から抜くことなくさらに挿入させ、タップ部74によって孔100に雌ねじ15を形成している。これによって、ブッシュ14を実質的に1つの工程で形成することができ、作業効率の向上を図ることができる。
上記の冷却ユニット62は空冷式に限らず、図10に示す冷却ユニット62aのように液冷式にしてもよい。冷却ユニット62aは、図示しない回転継手を介して、回転ロッド56内に設けた流路180に液体(水、油等)を流すことによって該回転ロッド56の熱を吸収し、図示しないラジエータで放熱して、循環させている。このような液冷式の冷却ユニット62aによれば、高い冷却効果が得られる。
加工ツール60としては、例えば図11に示す加工ツール60aを用いてもよい。加工ツール60aにおける円柱部72及びタップ部74は前記加工ツール60と同様であり、前記縮径部70に相当する部分に先端部80が設けられている点で両者は異なる。先端部80は、縮径部70に対して螺旋突起80aを付加したものである。
また、螺旋突起80aの螺旋の方向と、タップ部74における螺旋突起74aの螺旋の方向とは同一の方向であるが、設計条件によっては逆向きにしてもよい。
次に、上記の雌ねじ加工装置10及び雌ねじ加工方法によって形成された雌ねじ15を有するブッシュ14について説明する。
図12は、ブッシュ14の断面カットモデルである。該図12に示すように、ブッシュ14はねじ部150と、熱影響部112とを有する。熱影響部112の外側は母材部114である。ねじ部150、熱影響部112及び母材部114は互いに組織が異なっており、断面色の違いにより識別が可能である。ねじ部150の内面に雌ねじ15が形成されている。
ねじ部150は、主に肉盛りされたフィラー48に基づく組織であって、熱影響が相当に大きい部分であると考えられ、ベイナイトが多く含まれている(ベイナイトが主成分として95%以上含まれている)。ねじ部150は下方に向けて突出した形状であり、熱影響部112との境界は、上接続部150a及び下接続部150bで略屈曲した形状となっている。
熱影響部112は、母材としてのフレーム12に対して多少のフィラー48が混在し、さらにある程度の熱影響を受けている部分であると考えられ、細かいフェライトに球状セメンタイトが混在している(セメンタイトと母材部に近づくほどに組織が微細化するフェライトとを主成分として95%以上含まれている。)。熱影響部112では、内側のねじ部150に近づくほどフェライトの金属組織が微細化している。熱影響部112は、内側のねじ部150へ向けてやや下向きに傾斜した形状であり、母材部114とは滑らか且つ略水平に接続されている。
つまり、熱影響部112の少なくとも内径側部分は、ねじ部150の突出する方向(図12で下向き)に向かって凸形状になっており、熱影響部112のスプリングの作用としての作用が一層発揮される。これは、例えば直線部材よりも蛇腹形状部材の方が屈曲しやすいことからも容易に理解されよう。
母材部114は、元のフレーム12からほとんど組織の変化がない部分であり、粗いフェライトに球状セメンタイトが混在している(セメンタイトとフェライトとを主成分として95%以上含まれている。)。
ねじ部上部径R2とねじ部150のねじ長Lは逆比例的な関係になり、一方が長くなると他方が短くなる。ねじ部150の強度は、ねじ部上部径R2を厚くするよりもねじ長Lを長くすることが好適である。したがって、ねじ部上部径R2は過度に厚い必要はなく、加工ツール60の径R3(図3参照)の1.3〜1.5倍程度が好適であり、フィラー48の供給量や加熱温度等によって調整するとよい。
また、熱影響部112は、母材部114とねじ部150とを接続する部分であり、適度な靭性、弾性を有することが望ましく、前記の通り熱影響部112の径R1は、ねじ部上部径R2の1.6〜1.7倍程度が好適である。
後述するように、熱影響部112は粘り強い特性を有しており、ねじ部150に対してボルト168を締結するときにスプリングの作用を奏する。また、熱影響部112は母材部114よりも硬く、母材部114は熱影響部112が弾性変形するのに倣うように変形することになる。
ここで、図13に示すように、熱影響部112が過度に広い場合には、母材部114が下方向に押されてしまい、上板170とフレーム12との接触面積を十分に確保できなくなる。
これに対して、熱影響部112の径R1がねじ部上部径R2の1.6〜1.7倍程度であると、図14に示すように、母材部114が下方向に押されることが抑制され、上板170とフレーム12との接触面積を十分に確保することができる。
本発明者は、ブッシュ14の硬度について、試験経路154に沿って0.5mmずつのピッチでビッカース硬さ試験を行った。試験経路154は、ブッシュ14におけるねじ部150の最も内側部154aから母材部114における熱影響部112から十分に離れた部分15bに至る径方向直線経路である。ねじ部150、熱影響部112及び母材部114の各境界を境界154c、境界154dとする。この試験結果を図15に示す。
図15から了解されるように、ねじ部150に相当する内側部154a〜境界154cの区間では非常に硬度が高くなっている。これは、ねじ部150がベイナイトを主成分として構成されていることによる。境界154cの近傍では急傾斜線156を示し、硬度が60%程度まで急激に低下している。
熱影響部112に相当する境界154c〜境界154dまでの区間では、緩傾斜線158を示し、硬度は、ねじ部150から母材部114へ向かって境界154cを基準としてさらに60%程度まで、途中で増加することなく、連続的に且つ緩やかに低下している。
母材部114に相当する境界154d以降の区間では、硬度はやや低下する傾向はあるが、概ね一定値となっている。
このように、ねじ部150は硬度が高いのに対して母材部114は硬度が低いが、その間の適度な幅の熱影響部112の硬度は距離に応じて緩やかな変化を示している。これは、熱影響部112で、内側ほどフェライトの金属組織が微細化していることに基づくと考えられる。
このような組成によれば、ねじ部150は十分な強度でありボルトの螺合が確実に行われるとともに、母材部114又はねじ部150に振動が加わっても、熱影響部112の弾性で振動を吸収することができ、ボルトと雌ねじ15との緩み止めの効果が得られる。特に、熱影響部112はねじ部150より硬度が低く、且つ、ねじ部150から母材部114へ向かって硬度が低下していることから、複数の弾性係数のばねが複合された特性を有し、様々な周波数の振動を吸収することができる。また、熱影響部112はねじ部150と母材部114との硬度を緩やかに接続していることから局所的な応力集中がない。
上述したように、ナットとしてのブッシュ14よれば、硬度傾斜部としての熱影響部112を設けることにより、ねじ部150は十分な強度しておりボルト168の螺合が確実に行われるとともに、母材部114又はねじ部150に振動が加わっても、熱影響部112の弾性で振動を吸収することができ、ボルト168の緩み止めを防止することができる。
上記の冷却ユニット62に代えて、図16に示す冷却ユニット300を適用してもよい。ベアリングブロック64の周囲をボックス302で覆い、該ボックス302に対してインレットパイプ204から冷却した圧縮空気を供給してベアリングブロック64及び回転ロッド56を冷却し、加工ツール60を間接的に冷却することができる。ベアリングブロック64をボックス302で覆うことにより、冷却された圧縮空気が無駄に拡散することなく、しかも高密度のまま冷却対象に接することから効率的な冷却が行われる。ボックス302内でベアリングブロック64等を冷却した空気はインレットパイプ304の反対側に設けられたアウトレットパイプ306から排出される。これにより、圧縮空気が気中に排出されることがなく音が静かである。ボックス302内では、効率的な冷却がなされるように、圧縮空気の通過する経路を適正に設定する案内壁が設けられていてもよい。
図17に示すように、負極板69の代わりにフレーム12又はブッシュ加工位置Pを含むその一部を固定する加工台310や治具、台車等にアース線69aを設けおいてもよい。これにより、フレーム12は電気的に負極に接続されることになり、加工機側に負極板69が不要になり設備及び作業が簡便になる。
本発明に係る雌ねじ加工装置及び雌ねじ加工方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
雌ねじ加工装置を備えるロボットと、コントローラの略式機能ブロック図である。 本実施の形態に係る雌ねじ加工装置の断面側面図である。 加工ツールの分解斜視図である。 本実施の形態に係る雌ねじ加工方法の手順を示すフローチャートである。 アークにより加熱を行う様子を示す説明図である。 ブッシュ加工位置に設けられた肉盛部及び熱影響部の斜視図である。 ブッシュ加工位置に孔を形成する様子を示す説明図である。 C0.13%、Mn0.56%の炭素鋼における連続冷却状態図である。 タップ部により雌ねじを形成する様子を示す説明図である。 液冷式の冷却ユニットの模式断面図である。 変形例に係る加工ツールの側面図である。 ブッシュの断面カットモデルである。 熱影響部が過度に広い場合に、ねじ部にボルトを螺合させたときの熱影響部及び母材部の変形を示す図である。 熱影響部が適度に広い場合に、ねじ部にボルトを螺合させたときの熱影響部及び母材部の変形を示す図である。 ブッシュについて行ったビッカース硬さ試験の試験結果を示すグラフである。 変形例に係る冷却ユニットの側面図である。 アース線が設けられた加工台の模式図である。
符号の説明
10…雌ねじ加工装置 12…フレーム
14…ブッシュ 15…雌ねじ
30…ベースユニット 32…昇降ユニット
34…ベース体 36…昇降モータ
38…ボールネジ 40…ボールナット
44…フィラー送給機 46…アーク加熱機
52…スピンドルモータ 54…レール係合部
56…回転ロッド 58…チャック
60、60a…加工ツール 62、62a…冷却ユニット
70…縮径部 72…円柱部
74…タップ部 88…ベイナイト域

Claims (8)

  1. 金属板における雌ねじを形成する箇所を加熱する加熱部と、
    前記金属板に前記雌ねじを形成する加工ツールと、
    前記加工ツールを冷却する冷却部と、
    前記加工ツールを回転させる回転駆動部と、
    前記加工ツールを進退させる進退駆動部と、
    を有し、
    前記加熱された雌ねじを形成する箇所に前記加工ツールを挿入するときに、前記雌ねじを形成する箇所を急冷することにより組織が硬くなり、
    前記金属板に、ベイナイト組織を有するねじ部と、前記ねじ部の外側で且つ母材の内側に前記ねじ部よりも硬度が低く且つ前記母材よりも硬度が高い熱影響部とを形成することを特徴とする雌ねじ加工装置。
  2. 請求項1記載の雌ねじ加工装置において、
    前記加工ツールは、チャックにより着脱自在であり、
    前記冷却部は、前記チャックを介して間接的に前記加工ツールを冷却することを特徴とする雌ねじ加工装置。
  3. 請求項2記載の雌ねじ加工装置において、
    前記冷却部は、前記チャック又はその周辺部に空気を噴き付けることによる空冷式であることを特徴とする雌ねじ加工装置。
  4. 請求項2記載の雌ねじ加工装置において、
    前記冷却部は、流路に液体を流すことによる液冷式であることを特徴とする雌ねじ加工装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の雌ねじ加工装置において、
    前記加工ツールは、前記金属板に孔を形成するために先端に設けられた縮径部と、
    前記孔に雌ねじを形成するために前記縮径部に対して連続して設けられたタップ部とを備えることを特徴とする雌ねじ加工装置。
  6. 加熱部により、金属板における雌ねじを形成する箇所を加熱する加熱工程と、
    冷却部により、前記金属板に前記雌ねじを形成する加工ツールを冷却する冷却工程と、
    前記加熱部による加熱を停止し、前記冷却部による冷却を継続し、自然冷却された前記雌ねじを形成する箇所に前記加工ツールを挿入し、前記雌ねじを形成する箇所を急冷し組織を硬くする急冷工程と、
    前記加工ツールを回転し、前記加工ツールで前記雌ねじを形成する箇所を冷却しながら雌ねじを成形する加工工程と、
    を有することを特徴とする雌ねじ加工方法。
  7. 請求項6記載の雌ねじ加工方法において、
    前記加熱工程では、前記金属板をオーステナイト域以上に加熱することを特徴とする雌ねじ加工方法。
  8. 請求項7記載の雌ねじ加工方法において、
    前記加工工程又はその後の放熱工程では、ベイナイト域を通して前記金属板を冷却することを特徴とする雌ねじ加工方法。
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