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JP5307019B2 - 骨吸収抑制剤、並びにこれを含有する飲料、食品及び医薬品 - Google Patents
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骨吸収抑制剤、並びにこれを含有する飲料、食品及び医薬品 Download PDF

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Description

本発明は、骨吸収抑制剤、並びにこれを含有する飲料、食品及び医薬品に関する。
近年、高齢化社会の進展や生活習慣の変化に伴って骨粗鬆症患者が増加しており、日本における骨粗鬆症患者の数は1000万人を超えている。骨粗鬆症患者は、全体の7割を女性が占め、50歳以上の女性に多く発症している。このため、特に女性は、骨量が最大に達する30歳くらいまでの間に、骨量をできるだけ高めておくことが骨粗鬆症の予防に重要であるとされている。
しかしながら、最近では、運動不足や栄養不足が原因で若年期における潜在的な骨粗鬆症患者が増加している。骨粗鬆症の予防又は改善法に関しては、医学的なアプローチに加え、遺伝学的・栄養学的観点からの様々な研究も行われている(非特許文献1)。
骨代謝においては、破骨細胞が骨吸収を担い、骨芽細胞が骨形成を担っている。骨粗鬆症は、骨吸収と骨形成とのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ることが原因であると考えられている。また、骨吸収の亢進は、骨粗鬆症以外にも、慢性関節リウマチ等の骨疾患に深く関与している。このことから、骨吸収を担う破骨細胞は、骨粗鬆症、慢性関節リウマチを始めとする骨疾患を予防又は改善(治療若しくは症状緩和)する際の標的になると考えられている。
骨吸収に関与するプロテアーゼとしては、カテプシンB、H、K及びLが知られている。中でもカテプシンKは、破骨細胞に特異的に局在し、カテプシンKの阻害によって骨吸収を抑制できることが報告されている(非特許文献2及び3)。このことから、カテプシンKは、骨粗鬆症、慢性関節リウマチを始めとする骨疾患を予防又は改善(治療若しくは症状緩和)する際の標的分子として注目を集めている。
カテプシンK阻害剤としては、例えば、ジペプチジルケトン阻害剤、ジアミノピリジノン阻害剤、ジアシルカルボヒドラジド阻害剤、ピリドキサルプロピオネート誘導体、環状ケトン誘導体、アリルアミノエチルアミド誘導体、4−アミノ−アゼパン−3−オン阻害剤、3−アリルアミノ−アゼチジン−2−オン阻害剤及びケトアミド誘導体が開発されている。
天然物を起源とするカテプシンK阻害剤としては、乳又は乳由来原料に含まれる塩基性タンパク質組成物(特許文献1)や、イネ科植物に含まれるオリザシスタチン−I及びオリザシスタチン−II(特許文献2)が報告されている。
また、健康機能食品に利用されている素材としては、例えば、CPP(カゼインホスホペプチド)、CCM(クエン酸リンゴ酸カルシウム)、大豆イソフラボン、フラクトオリゴ糖、ポリグルタミン酸、MBP(乳塩基性タンパク質)及びビタミンK(メナキノン−7)が知られている(非特許文献4)。
特開平9−191858号公報 特開2006−151843号公報 米田,「新しい骨のバイオサイエンス」,羊土社,2002年 Littlewoodら,Bone,1997年,20巻,p.81−86 Inuiら,J.Biol.Chem.,1997年,272巻,p.8109−8112 財団法人 日本健康・栄養食品協会,「特定保健用食品・トクホごあんない 2005年度版」
しかしながら、現在広く一般的に使用されているカテプシンK阻害剤は、人工的に化学合成された化合物であるため、医師の診断を受けることなく摂取するのは安全性の点で問題がある。
また、カテプシンK阻害剤は、カテプシンKによる骨の基質成分(タンパク質成分)の分解は抑制するが、基質成分の周囲でセメントの役割を担う無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制することはできない。このため、カテプシンK阻害剤が投与されても、無機成分の分解が進行し、カテプシンK以外のプロテアーゼ(例えば、MMP−9)による基質成分の分解を効果的に食い止めることができない。
そこで、本発明は、人体への安全性に優れ、医薬品のみならず食品への応用も可能な、カテプシンK阻害剤とは異なるメカニズムの骨吸収抑制剤であって、骨粗鬆症、慢性関節リウマチを始めとする骨疾患の予防及び改善(治療、症状緩和)を可能とする骨吸収抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、一定の大麦抽出物、当該大麦抽出物を分画して得られる画分、及び前記大麦抽出物若しくは画分を酵素処理して得られる酵素処理物が、カテプシンKを阻害することなく、破骨細胞により引き起こされる骨の無機成分の分解を抑制することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、大麦を粉砕した大麦粉を水若しくは緩衝液で抽出した大麦抽出物又はこれを分画した画分或いは前記大麦抽出物又は前記画分の酵素処理物、を有効成分として含有する骨吸収抑制剤を提供する。
大麦は、古くから主要な穀物として人類の食用に供されてきたものであり、大麦抽出物由来の骨吸収抑制剤は人体に対する安全性に優れている。また、本発明の骨吸収抑制剤は、骨吸収においてまず初めに進行する骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制するため、基質成分(タンパク質成分)の分解のみを抑制するカテプシンK阻害剤とは異なるメカニズムを介して骨吸収を効果的に抑制することができる。
上記大麦抽出物の画分は、上記大麦抽出物を陽イオン交換樹脂に接触させ、次いで、樹脂に吸着した成分を当該樹脂から分離して得られる塩基性画分であることが好ましい。このような塩基性画分を使用すれば、破骨細胞により引き起こされる骨の無機成分の分解を顕著に抑制することができる。
上記大麦抽出物の画分としては、例えば、上記塩基性画分を更に75%飽和硫安で分画して得られる沈殿画分を使用することもできる。また、例えば、上記沈殿画分を更に限外濾過膜で分画して得られる塩基性タンパク質画分(例えば、分子量5000〜50000のタンパク質の画分)を使用することもできる。
上記大麦抽出物又は画分の酵素処理物は、上記大麦抽出物又は画分(好ましくは、塩基性画分、沈殿画分又は塩基性タンパク質画分)を、ペプシン、パンクレアチン及びトリプシンのうちの少なくとも1種の酵素で酵素処理(消化)して得られる酵素処理物であることが好ましい。
上記酵素処理物は、胃液、腸液等の消化液中の酵素(例えば、ペプシン、パンクレアチン、トリプシン)で消化して得られるものでもよく、上記大麦抽出物又は画分は、経口で摂取された場合にも骨吸収を抑制することができる。
上記塩基性タンパク質画分及びその酵素処理物は、本発明の骨吸収抑制剤の有効成分として使用することができる。すなわち、本発明はまた、大麦抽出物の塩基性画分に含まれるタンパク質又はその酵素処理物、を有効成分として含有する骨吸収抑制剤であって、前記塩基性画分は、大麦を粉砕した大麦粉を水又は緩衝液で抽出する工程と、得られた抽出物を陽イオン交換樹脂に接触させる工程と、前記樹脂に吸着した成分を当該樹脂から分離する工程と、をこの順に実施することによって得られる画分である骨吸収抑制剤を提供する。
本発明の骨吸収抑制剤は、骨吸収抑制活性及び安全性に優れることから、飲料、食品、飲食品添加物、飼料、医薬品等の成分として使用することができる。
本発明によれば、人体に対する安全性に優れた骨吸収抑制剤が提供される。また、本発明によれば、骨吸収においてまず初めに進行する骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制し、骨の基質成分(タンパク質成分)の分解とは異なるメカニズムにより骨吸収を効果的に抑制することが可能な骨吸収抑制剤が提供される。
本発明の骨吸収抑制剤は、胃液、腸液等の消化液中の酵素(例えば、ペプシン、パンクレアチン、トリプシン)で酵素処理されても活性が維持されるため、経口で摂取した場合にも骨吸収を抑制することができる。
大麦抽出物の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。 大麦抽出物の塩基性画分又は酸性画分の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。 大麦抽出物及びシスタチンCのカテプシンK活性を示すグラフである。 イチバンボシ又ははるな二条の大麦抽出物の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。 大麦抽出物の酵素処理物の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。 シスタチンCの存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。 大麦抽出物の塩基性タンパク質画分を投与された卵巣摘出マウスの骨密度を示すグラフである。 大麦抽出物の塩基性タンパク質画分を投与された卵巣摘出マウスの子宮重量を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明の骨吸収抑制剤は、大麦を粉砕した大麦粉を水若しくは緩衝液で抽出した大麦抽出物、又はこれを分画した画分、或いは前記大麦抽出物又は前記画分を酵素処理して得られる酵素処理物、を有効成分として含有する。
上記大麦としては、二条、六条、裸、皮等、任意の種類の大麦を使用することができ、より具体的には、例えば、はるな二条、イチバンボシ、CDC Fibarが挙げられる。また、全粒、精麦粒、糠等、大麦種子に由来する任意の組織を使用することができる。例えば、大麦種子の内層部や外層部を単独で使用してもよく、また、麦芽を使用してもよい。更に、例えば、Bホルディン欠失系統やプロテインZ4欠失系統の大麦を使用することもできる。
大麦を粉砕して大麦粉を得る工程では、大麦を効率的に微粉状に粉砕できればよく、例えば、ピンミル、ハンマーミル、ボールミル、ミキサー等の粉砕機を用いることができる。
大麦粉を水又は緩衝液で抽出して大麦抽出物を得る工程では、大麦粉を水又は緩衝液中で攪拌し、大麦に含有される水溶性のタンパク質を抽出する。水又は緩衝液の温度は、0℃超30℃以下が好ましく、0℃超10℃以下がより好ましく、2℃以上8℃以下(特に3℃以上7℃以下)が更に好ましい。
また、抽出に用いる緩衝液は、中性から弱酸性のpHとなるように緩衝作用を発揮するものが好ましく、緩衝液のpHとしては、4.0〜7.0が好ましく、5.0〜6.0がより好ましい。緩衝剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、酢酸、フタル酸、コハク酸、炭酸、HEPES、MES、トリスが挙げられ、例えば、0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、20mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、20mM MES緩衝液(pH6.0)が特に好ましい。
大麦抽出物を分画して画分を得る工程では、まず、上記大麦抽出物を陽イオン交換樹脂に接触させる。次いで、樹脂に吸着しなかった成分を回収すれば、酸性画分が得られる。また、樹脂に吸着した成分を当該樹脂から分離すれば、塩基性画分が得られる。大麦抽出物と陽イオン交換樹脂との接触は、例えば、大麦抽出物を陽イオン交換樹脂に通液することにより行うことができる。また、陽イオン交換樹脂に吸着した成分を当該樹脂から分離するには、例えば、樹脂に溶離液を通液して吸着成分を溶出させればよい。陽イオン交換樹脂としては、例えば、Hitrap SP FF、HiTrap SP HP、HiTrap CM FF、HiTrap 16/10 SP XL、HiTrap 16/10 SP FF、HiTrap 16/10 CM FF、Resource S、Source 15S、Source 30S、Mono S、Mini S、SP Sepharose HP、SP Sepharose XL、SP Sepharose Fast Flow、CM Sepharose Fast Flow(以上、GEヘルスケアバイオサイエンス社)、AG 50W Resins、AG MP−50 Resin、Bio−Rex 70 Resin、Macro−Prep high Q、Macro−Prep high S、Macro−Prep CM(以上、Bio−Rad社)、ゲル型 ダイヤイオン(登録商標) SKシリーズ、ポーラス型 ダイヤイオン(登録商標) PKシリーズ、水処理用ゲル型均一粒径 ダイヤイオン(登録商標)、工業クロマト分離用陽イオン交換樹脂 ダイヤイオン(登録商標)UBK500シリーズ(以上、三菱化学社)、Asahipak Column ES−502C 7C、Shodex Column IEC CM−825、Shodex Column IEC SP−825、Shodex Column IEC SP−420N(以上、昭和電工社)、SP−Toyopearl(東ソー社)が挙げられる。陽イオン交換樹脂の中では、強酸性型のイオン交換樹脂が好ましい。
上記大麦抽出物の画分としては、上記大麦抽出物を陽イオン交換樹脂に接触させ、次いで、樹脂に吸着した成分を当該樹脂から分離させて得られる塩基性画分が好ましい。このような塩基性画分を使用すれば、骨吸収の際の骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を顕著に抑制することができる。
上記大麦抽出物の画分としては、例えば、上記塩基性画分を更に75%飽和硫安で分画して得られる沈殿画分を使用することもできる。また、例えば、上記沈殿画分を更に限外濾過膜で分画して得られる塩基性タンパク質画分(例えば、分子量5000〜50000のタンパク質の画分)を使用することもできる。
上記大麦抽出物又は画分の酵素処理物は、上記大麦抽出物又は画分(好ましくは塩基性画分、沈殿画分又は塩基性タンパク質画分)を、ペプシン、パンクレアチン及びトリプシンのうちの少なくとも1種の酵素で酵素処理(消化)して得られる酵素処理物であることが好ましい。
ペプシン、パンクレアチン及びトリプシンは、胃液、腸液等の消化液に含有される消化酵素であり、試薬メーカーから容易に入手することができる。上記大麦抽出物又は画分を酵素で処理する条件(酵素量、温度、時間等)は、当該酵素の至適条件であれば特に制限されない。入手可能なペプシン、パンクレアチン及びトリプシンとしては、例えば、ブタ胃粘膜由来ペプシン、ブタ膵臓由来パンクレアチン、ウシ膵臓由来トリプシン、ブタ膵臓由来トリプシンが挙げられる。酵素処理は、例えば、上記大麦抽出物又は画分に対して体積比が10%となるように酵素を加え、37℃で少なくとも2時間反応させることによって行うことができる。
骨吸収抑制活性は、例えば、次のように測定することができる。すなわち、まず、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)で被膜された培養プレートの各ウェルに破骨細胞前駆細胞を播種し、細胞がプレートに完全に接着するまで培養する。その後、骨吸収抑制剤の候補品を加えて37℃で7〜10日間培養し、骨吸収抑制剤を添加していないコントロールのウェルにおいて骨吸収痕跡の形成が一面に確認できた時点で培養をストップする。そして、各ウェルの表面の様子をデジタルマイクロスコープで観察し、骨吸収面積又は骨吸収痕跡数を計測する。骨吸収痕跡の形成の阻害は、骨吸収が抑制されたことを意味し、その阻害の程度によって骨吸収抑制活性の強さを判定することができる。
本発明の骨吸収抑制剤は、例えば、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、歯周病疾患、骨パジェット病、微小重力環境下での骨量減少・骨折に対して予防及び改善(治療、症状緩和)効果を有しており、特に、骨粗鬆症及び慢性関節リウマチの予防及び改善に適している。
本発明の骨吸収抑制剤は、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ等の骨疾患の予防や改善(治療、症状緩和)を目的として飲料及び食品に添加でき、また、これらの骨疾患の予防又は改善(治療若しくは症状緩和)剤(医薬品)の成分として使用できる。本発明の骨吸収抑制剤は、固体、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、注射剤等のいずれの剤形を取ってもよい。また、放出制御製剤の形態を取ることもできる。上記飲料、食品及び医薬品は、大麦を粉砕した大麦粉を水若しくは緩衝液で抽出した大麦抽出物、又はこれを分画した画分(好ましくは前述の塩基性画分、沈殿画分若しくは塩基性タンパク質画分)、或いは当該大麦抽出物又は画分を酵素処理して得られる酵素処理物(好ましくは、ペプシン、パンクレアチン及びトリプシンのうちの少なくとも1種の酵素で酵素処理して得られる酵素処理物)、のみからなっていてもよい。
なお、本発明の骨吸収抑制剤は、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、病者用食品等の飲食品に配合することもできる。また、飼料に配合することもできる。
本発明の飲料、食品及び飼料は、当該分野で通常使用される添加物を更に含有してもよい。このような添加物としては、例えば、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂;グルコース等の単糖類;スクロース、フルクトース、マンニトール等の二糖類;デキストロース、デンプン等の多糖類;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール類;ビタミンC等のビタミン類、が挙げられる。これらの添加物は、単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の医薬品は、薬学的に許容される添加物を更に含有してもよい。この添加物としては、例えば、グルコース等の単糖類;スクロース、フルクトース、マンニトール等の二糖類;デキストロース、デンプン等の多糖類;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール類;ビタミンC等のビタミン類;アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、シロップ、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油が挙げられる。これらの添加物は、単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の骨吸収抑制剤は、ヒトに投与されても、非ヒト哺乳動物に投与されてもよい。投与方法は、経口投与、直腸投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、槽内投与、膣内投与、腹腔内投与、膀胱内投与、吸入投与等の全身投与、及び軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤等による局所投与のいずれでもよい。投与量及び投与方法は、投与される個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。好適な投与方法としては、例えば、経口投与が挙げられる。
本発明の骨吸収抑制剤は、胃液、腸液等の消化液中の酵素(例えば、ペプシン、パンクレアチン、トリプシン)で酵素処理されても活性が維持される。そのため、本発明の骨吸収抑制剤を含有する飲料、食品、飼料、医薬品等は、これらを経口で摂取した場合にも骨吸収を効果的に抑制することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:大麦抽出物の骨吸収抑制活性〕
(大麦抽出物の調製)
十分に乾燥した大麦種子(品種:はるな二条)をミキサー(ラボミルサー、岩谷産業社)で約10分間粉砕して微粉状態の大麦粉を得た。得られた大麦粉2gを乳鉢に移し、そこにホモジナイズ用緩衝液(0.1M 酢酸ナトリウム、pH5.5、5mM EDTA、0.1% Tween−20、5mM DTT、1錠のコンプリート・EDTAフリー・プロテアーゼインヒビターカクテル錠(ロシュ社))10mLを加えて、乳棒で懸濁した。
その後、大麦粉の懸濁液を、4℃で10分間、10000×gで遠心分離し、その上清をMiraclothフィルター(Calbiochem社)で濾過した。得られた濾液をPD−10カラム(GE Healthcare社)にアプライし、20mM MES(pH6.0)にバッファー交換して、大麦抽出物を得た。
(Pit Formationアッセイ)
得られた大麦抽出物の骨吸収抑制活性をPit Formationアッセイで測定した。
具体的には、まず、ラット破骨前駆細胞(1×10個)を、ラット破骨細胞培養キット(セルガレージ社)に含まれる分化誘導用培地(5mL)(培地組成:α−MEM、10%FBS、50ng/mL RANKL&M−CSF)に懸濁し、これを、リン酸カルシウムで被膜されたOAASプレート(オスコテック社)の各ウェルに100μL(2×10個/ウェル)ずつ分注し、細胞がプレートに完全に接着するまでCOインキュベーター内で培養した。
その後、各ウェルに所定タンパク質濃度の大麦抽出物を加え、37℃のCOインキュベーター内で7〜10日間培養し、コントロールのウェル(大麦抽出物の代わりに等量の滅菌水を添加したウェル)において骨吸収痕跡の形成が一面に確認された時点で、各ウェルの表面の様子をデジタルマイクロスコープ(VHX−100F、キーエンス社)で観察し、骨吸収面積を計測した。なお、大麦抽出物の骨吸収抑制活性の強さは、骨吸収痕跡形成の阻害の程度によって判定することができる。
図1は、大麦抽出物の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。図1において、骨吸収面積は、コントロールの骨吸収面積に対する相対値(%)で示されている。また、濃度(μg/mL)は、培地中のタンパク質の濃度を示す。
図1から明らかなように、大麦抽出物は、タンパク質濃度が1μg/mL以上の場合に骨吸収をほぼ完全に抑制し、0.2μg/mLの場合にも骨吸収を顕著に抑制した。
実施例1により、大麦抽出物が、骨吸収抑制活性、特に、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制する活性を有することが示された。
〔実施例2:塩基性画分及び酸性画分の骨吸収抑制活性〕
(塩基性画分及び酸性画分の調製)
実施例1と同様にして大麦抽出物を得た。得られた大麦抽出物をHiTrap SP FF(強陽イオン交換カラム、GE Healthcare社)にアプライし、陽イオン交換樹脂に非吸着の成分を開始バッファー(20mM MESバッファー、pH6.0)5mLで溶出して、大麦抽出物の酸性画分を得た。引き続き、陽イオン交換樹脂に吸着した成分を溶出バッファー(20mM MESバッファー、pH6.0、1M NaCl)5mLで溶出して、大麦抽出物の塩基性画分を得た。なお、塩基性画分には、タンパク質、アミノ酸及び核酸が含有されていた。
(Pit Formationアッセイ)
得られた塩基性画分及び酸性画分の骨吸収抑制活性を、実施例1と同様にしてPit Formationアッセイで試験した。
図2は、大麦抽出物の塩基性画分又は酸性画分の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。図2において、骨吸収面積は、コントロールの骨吸収面積に対する相対値(%)で示されている。また、濃度(μg/mL)は、培地中のタンパク質の濃度を示す。
図2から明らかなように、塩基性画分は、タンパク質濃度が1μg/mL以上の場合に骨吸収をほぼ完全に抑制し、0.2μg/mLの場合にも骨吸収を顕著に抑制した。また、酸性画分も、塩基性画分ほど強くはないものの、骨吸収抑制活性を示した。
実施例2により、大麦抽出物の塩基性画分及び酸性画分が骨吸収抑制活性、特に、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制する活性を有することが示された。また、塩基性画分が、特に強い骨吸収抑制活性を有することが示された。
〔参考例1:大麦抽出物のカテプシンK阻害活性〕
実施例1と同様にして大麦抽出物を得た。得られた大麦抽出物のカテプシンK阻害活性を次のように試験した。
まず、96ウェルプレートの各ウェルに酵素反応用緩衝液(100mM NaOAc、20mM L−Cystein、5mM EDTA、pH5.5)130μLと4μg/mLのカテプシンK(ヒトリコンビナント・プロカテプシンK、カルビオケム社)溶液10μLとを加え、そこに、所定タンパク質濃度の上記大麦抽出物10μL、又は1μg/mLのシスタチンC(ヒト尿由来シスタチンC、カルビオケム社)溶液10μL、又は上記酵素反応用緩衝液(コントロール)10μL、を更に加え、37℃で30分間、プレインキュベートした。
次いで、蛍光基質溶液(20μM Z−Phe−Arg−MCA(Benzyloxycarbonyl−L−phenylalanyl−L−arginine−4−methylcoumaryl−7−amide)、ペプチド研究所)50μLを加え、37℃で酵素反応を行った。蛍光強度の増加度をマイクロプレートリーダーMTP−800AFC(励起波長350nm、吸収波長450nm、コロナ社)で測定して、カテプシンK活性を評価した。
図3は、大麦抽出物及びシスタチンCのカテプシンK活性を示すグラフである。図3において、大麦抽出物及びシスタチンCのカテプシンK活性は、コントロールに対する相対値(%)で示されている。また、濃度(μg/mL)は、反応液中のタンパク質の濃度を示す。
図3から明らかなように、大麦抽出物は、タンパク質濃度が5μg/mLの場合にもカテプシンKの活性を阻害しなかった。他方、カテプシンK阻害剤であるシスタチンCは、1μg/mLでもカテプシンKの活性を完全に抑制した。
参考例1により、大麦抽出物がカテプシンK阻害活性を有しないこと、すなわち、大麦抽出物の骨吸収抑制作用が、カテプシンK阻害剤とは異なるメカニズムを介するものであることが示された。
〔実施例3:大麦抽出物の骨吸収抑制活性〕
2種の大麦品種イチバンボシ及びはるな二条の大麦種子から、実施例1と同様にして大麦抽出物を得た。そして、得られた各大麦抽出物の骨吸収抑制活性を、実施例1と同様にしてPit Formationアッセイで試験した。
図4は、イチバンボシ又ははるな二条の大麦抽出物の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。図4において、骨吸収面積は、コントロールの骨吸収面積に対する相対値(%)で示されている。また、濃度(μg/mL)は、培地中のタンパク質の濃度を示す。
図4から明らかなように、イチバンボシ及びはるな二条のいずれも、顕著な骨吸収抑制活性を示した。
〔実施例4:酵素処理物の骨吸収抑制活性〕
大麦抽出物を人工胃液及び人工腸液で処理して得た酵素処理物について、骨吸収抑制活性を試験した。
実施例1と同様にして大麦抽出物を得た。所定タンパク質濃度の大麦抽出物に対して体積比が10%となるように人工胃液(2% NaCl、10kU/mL ペプシン、0.6N HCl)を加え、37℃で2時間反応させ、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。
引き続き、体積比が10%となるように人工腸液(4% パンクレアチン、4% トリプシン、1M NaHCO)を加え、37℃で2時間反応させ、90℃で2分間の熱処理を行って、大麦抽出物の酵素処理物を得た。
得られた大麦抽出物の酵素処理物について、実施例1と同様にしてPit Formationアッセイを行った。
図5は、大麦抽出物の酵素処理物の存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。図5において、骨吸収面積は、コントロールの骨吸収面積に対する相対値(%)で示されている。また、濃度(μg/mL)は、培地中のタンパク質の濃度を示す。
図5から明らかなように、大麦抽出物を人工胃液及び人工腸液で処理して得られる酵素処理物は、タンパク質濃度が1μg/mL以上の場合に骨吸収を完全に抑制し、0.2μg/mLの場合にも骨吸収を顕著に抑制した。
実施例4により、大麦抽出物の酵素処理物が骨吸収抑制活性、特に、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制する活性を有することが示された。
〔比較例1:カテプシンK阻害剤の骨吸収抑制活性〕
カテプシンK阻害剤であるシスタチンCの骨吸収抑制活性を、実施例1と同様にしてPit Formationアッセイで試験した。
図6は、シスタチンCの存在下で行われたPit Formationアッセイにおける骨吸収面積を示すグラフである。図6において、濃度(μg/mL)は、培地中のシスタチンCの濃度を示す。
図6から明らかなように、培地中にシスタチンCが10μg/mL含有されている場合にも、骨吸収面積はコントロールとほぼ同等であり、シスタチンCの添加によって骨吸収はほとんど抑制されなかった。
比較例1により、シスタチンCは、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制する活性を有せず、カテプシンKが関与しない骨吸収の系では骨吸収を抑制しないことが示された。
〔実施例5:塩基性タンパク質画分の骨吸収抑制活性〕
7週齢の雌性ddyマウス(日本エスエルシー社)を用いて、以下のようにして、大麦抽出物の塩基性画分の骨吸収抑制活性を確認した。以下の試験において、マウスは、1週間の馴化飼育後、一般状態が良好であった24匹を選抜し、無作為に、シャム(偽手術)群、コントロール群、大麦タンパク質0.5%群及び大麦タンパク質1.0%群の4群(各群6匹)に分けた。なお、馴化飼育期間及び試験期間を通じて、マウスは、温度23±1℃、湿度60±5%、明暗サイクル12時間(明期:8時〜20時;暗期:20時〜8時)の条件で飼育した。
(塩基性タンパク質画分の調製)
十分に乾燥した大麦種子(品種:りょうふう)をミキサー(やまびこ号L−S型、国光社)で約10分間粉砕して微粉状態の大麦粉を得た。得られた大麦粉5.4kgを20mM 酢酸ナトリウム水溶液(pH5.0)27Lに一晩浸漬し、4℃で20分間、8000rpmで遠心分離して、大麦抽出物(上清)を得た。得られた大麦抽出物を強陽イオン交換樹脂(SP−Toyopearl、東ソー社)に通液し、樹脂に吸着した成分を0.5M 塩化ナトリウム水溶液で溶出して、大麦抽出物の塩基性画分を得た。
そして、上記塩基性画分を更に75%飽和硫安で分画し、得られた沈殿画分を更に限外濾過膜で分画して、塩基性タンパク質画分(分子量5000〜50000のタンパク質の画分)を得た。
(飼料の調製)
大麦タンパク質0.5%群、大麦タンパク質1.0%群のマウスに投与する飼料は、大麦タンパク質の含有量がそれぞれ0.5%、1.0%となるように、粉末飼料AIN93Gに上記塩基性タンパク質画分を配合して調製した。シャム群、コントロール群のマウスについては、AIN93Gをそのまま使用した。
各飼料の組成を下記表1に示す。表中、各成分量の単位はg/kg飼料である。
Figure 0005307019
(飼料の投与)
上述の馴化飼育後、コントロール群、大麦タンパク質0.5%群及び大麦タンパク質1.0%群のマウスには卵巣摘出手術を、また、シャム群のマウスには偽手術を施し、次いで、4週間、各群のマウスに所定の飼料及び水を自由摂取させた。なお、卵巣が摘出されると、エストロゲンが欠乏し、骨量が減少することが知られている。
(骨密度の測定)
4週間の飼料投与後、各群のマウスを解剖し、DCS600−ER−X(アロカ社製)を用いて二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)により大腿骨近位部の骨密度を測定した。結果(平均±標準偏差)を図7に示す。有意差検定は、Tukey HSD法により行った。図7において、各データ(グラフ)の上方に付されたアルファベットは、異なるアルファベットの付されたデータ間で有意差(p<0.05)があることを示す。
図7から明らかなように、コントロール群では、シャム群と比較して骨密度が有意に低下した。そして、大麦タンパク質0.5%群、大麦タンパク質1.0%群では、コントロール群と比較して、大腿骨近位部の骨密度低下が有意に抑制された。
(子宮重量の測定)
解剖した各群のマウスから子宮を摘出し、その重量を測定した。結果(平均±標準偏差)を図8に示す。
図8から明らかなように、卵巣摘出手術を施した3群(コントロール群、大麦タンパク質0.5%群、大麦タンパク質1.0%群)では、シャム群と比較して子宮重量が有意に小さかった。また、卵巣摘出手術を施した3群の間では、子宮重量にほとんど差がなかった。
実施例5により、大麦の塩基性タンパク質画分(塩基性画分中のタンパク質)、又はこれを消化液中の酵素で消化して得られる酵素処理物は、子宮等の生殖器官に影響することなく、骨吸収及びこれに伴う骨密度低下を抑制することが可能であることが示された。
以上の実施例、比較例及び参考例により、大麦抽出物、その塩基性画分、酸性画分及び塩基性タンパク質画分(塩基性画分中のタンパク質)、並びにこれらの酵素処理物は、骨の基質成分(タンパク質成分)の分解とは異なるメカニズムで骨吸収を抑制することが可能であることが明らかとなった。

Claims (5)

  1. 大麦抽出物の塩基性画分又はその酵素処理物、を有効成分として含有する骨吸収抑制剤であって、
    前記塩基性画分は、大麦を粉砕した大麦粉を水又は緩衝液で抽出する工程と、得られた抽出物を陽イオン交換樹脂に接触させる工程と、前記樹脂に吸着した成分を当該樹脂から分離する工程と、をこの順に実施することによって得られる画分である骨吸収抑制剤。
  2. 前記酵素処理物は、前記画分を、ペプシン、パンクレアチン及びトリプシンのうちの少なくとも1種の酵素で酵素処理して得られる酵素処理物である、請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  3. 大麦抽出物の塩基性画分に含まれるタンパク質又はその酵素処理物、を有効成分として含有する骨吸収抑制剤であって、
    前記塩基性画分は、大麦を粉砕した大麦粉を水又は緩衝液で抽出する工程と、得られた抽出物を陽イオン交換樹脂に接触させる工程と、前記樹脂に吸着した成分を当該樹脂から分離する工程と、をこの順に実施することによって得られる画分である骨吸収抑制剤。
  4. 前記酵素処理物は、前記タンパク質を、ペプシン、パンクレアチン及びトリプシンのうちの少なくとも1種の酵素で酵素処理して得られる酵素処理物である、請求項3に記載の骨吸収抑制剤。
  5. 骨の無機成分の分解抑制を介して骨吸収が抑制される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の骨吸収抑制剤。
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