半導体製造施設等で用いる電子顕微鏡、EB露光装置、EBステッパー等の電子ビーム応用装置は、例えば100nT(1mG)程度の微弱な磁気ノイズでも電子ビームの軌道が狂うので、製品の品質を維持するために環境磁場(外乱磁場)の影響を避けることが必要となる。また、医療施設等で用いる脳磁計や心磁計等のSQUID(超電導量子干渉素子)応用装置は、脳磁波や心磁波といった超微弱な生体磁気を測定するために環境磁場の影響を1nT(0.01mG)以下に制御することが必要となる。このような装置を微弱な環境磁場から保護して正常な動作を保証するため、半導体製造施設・医療施設等の建築物内に磁気シールド空間(シールドルーム)を設けることが要求される。
磁気シールド空間は、例えば対象空間Sの内面を透磁率μの高いパーマロイ、電磁鋼板等の磁性材料板(以下、磁性板ということがある)で覆うパッシブ型(受動型)磁気シールド構造として構築することができる。ただしパッシブ型磁気シールドは、利用するパーマロイ等の磁性板が一般に高価であり、また環境磁場の一時的なピークに合わせた過剰仕様になりがちであることから、要求されるシールド性能に対して磁性材料のコストが嵩むという問題点がある。これに対し、対象空間Sの周囲に補償磁場発生用のコイル(以下、補償コイルということがある)を配置し、環境磁場の変動に応じて補償コイルに適切な補償磁場を発生させて環境磁場の変動を打ち消すアクティブ型(能動型)磁気シールド構造が開発されている(例えば特許文献1)。変動する環境磁場に対応可能な磁気シールド空間を構築するためには、パッシブ型磁気シールドとアクティブ型磁気シールドとを組み合わせた複合型磁気シールドが性能的・経済的に有利である。
特許文献2及び3は、対象空間Sの床、壁、天井の各内面を磁性板で隙間なく囲むパッシブ型磁気シールド(以下、密閉型シールドということがある)とアクティブ型磁気シールドとを組み合わせた複合型磁気シールド構造を開示している。アクティブ型磁気シールドは対象空間Sの環境磁場検出用の磁気センサを必要とする。特許文献2の複合型磁気シールド構造は、対象空間Sを囲む各磁性板の外面にそれぞれ補償コイルを配置すると共にその外面と対向するように磁気センサを配置し、各磁気センサにより対向する磁性板の磁化による磁場と環境磁場(外部磁界)との合成磁場をそれぞれ検出する。各センサで検出した合成磁場に応じて、各磁性板の磁化の変化を打ち消すような補償磁場を各磁性板の補償コイルに発生させ、各磁性板の磁化の程度をそれぞれ一定に保つことにより、各磁性板で囲まれた密閉型シールド構造内の対象空間Sのシールド性能の劣化を防止する。
また特許文献3の複合型磁気シールド構造は、図8に示すように、対象空間Sの特定位置Oを通る軸線方向(例えばSQUID装置の配置位置Oを通るX軸方向)のまわりの補償コイル34(例えばHelmholtz型コイル)を対象空間Sの外周面(図示例では上部と下部)に沿って配置すると共に、対象空間Sを囲む密閉型シールド30の磁性板31に貫通孔32を設けて同じ軸線方向(X軸方向)の磁気検出コイル36を配置し、その検出コイル36によって環境磁場の変化に対応する誘導電圧を磁性板31内の磁束密度の変化として検出する。補償コイル34及び検出コイル36を制御装置40に接続し、検出コイル36の検出値がほぼ最小となるように(すなわち環境磁場の変動がキャンセルされるように)補償コイル34の印加電流を負帰還制御することにより、密閉型シールド30で囲まれた対象空間S内のX軸方向の環境磁場を最小化する。同様にY軸方向及びZ軸方向についても、補償コイル34及び検出コイル36を配置してY軸方向及びZ軸方向の環境磁場を最小化することにより、対象空間S内の特定位置O(例えばSQUID装置の配置位置)における環境磁場を最小化する。また、図示例のように対象空間Sの各軸線方向に複数の検出コイル36a、36bを配置し、複数の検出コイル36a、36bの検出値の差分に基づいて各軸線方向の補償コイル34の印加電流を制御することにより、各軸線方向の磁場勾配を補正することができる。
しかし、特許文献2及び3の複合型磁気シールド構造は、磁気シールド対象空間S内の特定位置(例えば1点)の磁場(磁束密度)を制御することはできるものの、対象空間S内の全体又は広範囲にわたる磁場の分布を適切に制御することはできない問題点がある。一般に、対象空間Sの内部の環境磁場は一様ではなく、位置によって相違している。また、空間Sを囲む各磁性板の磁化分布(磁束密度の分布)も一様ではなく、部位毎に相違している。特許文献2の複合型磁気シールド構造は、対象空間Sを囲む各磁性板の磁化の状態を対向する磁気センサで検出しているが、そのような磁気センサでは磁性板の特定部位の磁化の状態を把握することしかできず、磁性板の全体の磁化分布を把握することはできない。また、対象空間Sの周囲の各磁性板について磁化状態を個別に制御しているが、そのような各磁性板の磁化状態の個別制御では各磁性板の磁化状態の相互作用によって生じる対象空間S内の磁場分布を制御することは困難である。
また特許文献3の複合型磁気シールド構造は、対象空間Sを囲む各磁性板31の貫通孔32に磁気検出コイル36を配置して磁性板31内の磁束密度を測定しているが、密閉型シールド30では磁性板31内の磁束密度が2次元的な広がりを有しているので、そのような検出コイル36では磁性板31の内部の向きを含めた磁束密度(磁束ベクトル)を把握することはできない。複数の磁気検出コイル36a、36bを配置した場合も、それらの検出値の差分から特定方向の磁束密度の勾配を或る程度推定することはできるが、磁性板31内の向きを含めた磁束密度の分布を検出することはやはり困難である。磁性板31内の磁束密度の分布を把握できない特許文献3の磁気シールド構造では、対象空間S内の特定位置(例えば1点)の環境磁場を最小化することができても、対象空間S内の広範囲にわたる磁場分布を制御することは困難である。
例えば半導体製造施設(工場)等において、製造ライン等の複数箇所に電子ビーム装置を配置し又は移動することがあり、そのような製造ライン等を含む比較的広い空間の全体又は広い範囲を所望のシールド性能とする要望がある。また、医療施設等においても、SQUID装置等を移動させながら使用することがあり、装置の移動可能な空間内の全体又は広範囲を所望のシールド性能とする要望がある。特許文献2及び3のように対象空間S内の特定位置のみでしか所望のシールド性能が得られない磁気シールド構造では、対象空間S内での装置の配置又は移動が制限されてしまい、対象空間Sの利用効率が大幅に低下してしまう。要望に沿って広範囲にわたり所望のシールド性能が得られる磁気シールド空間を構築するためには、空間内の磁場分布を適切に制御できる複合型磁気シールド構造を開発する必要がある。
そこで本発明の目的は、対象空間内部の磁場分布を制御することができる複合型磁気シールド構造及びシステムを提供することにある。
一般に閉じた空間内部における電磁場の分布は支配方程式(Maxwellの方程式)と境界条件とによって一意的に決定することができ、磁気シールド対象空間Sの内部の磁場分布はMaxwellの方程式と境界条件とを考慮した(1)式のKirchhoff積分表示、又は変位電流に関する項を除外したMaxwellの方程式と境界条件とに基づく(1)式の近似式で表すことができる(非特許文献1参照)。(1)式において、左辺ψ(x、t)は空間Sの内部の任意位置xの時刻tにおける磁場ベクトル(磁束密度ベクトル)を表し、右辺は空間Sの表面(境界面)S´上の位置x´の初期時刻t´における磁場ベクトル(磁束密度ベクトル)ψ(x´、t´)又はその時間変化∂ψ(x´、t´)/∂t´によって定まる境界条件を表す。右辺のn´は表面S´の単位法線ベクトル、Rは空間Sの内部位置xと表面S´上の位置x´とを結ぶベクトル又は距離を表す。すなわち、対象空間Sにおいて境界条件である表面(内面)S´上の位置x´における磁場ベクトル(磁束密度の分布)を検出することができれば、空間Sの内部の任意位置xにおける磁場ベクトル(磁場の分布)を(1)式又はその近似式により算出することができる。
ただし、複合型磁気シールド構造では対象空間Sの内面S´が磁性板(パッシブ型磁気シールド構造)で覆われている。図8を参照して上述したように、内面S´を磁性板で隙間なく覆う密閉型シールド構造30を用いた場合は、内面S´上の磁場ベクトルすなわち磁性板31内の2次元的に広がった磁束密度の分布(磁束密度の向き)を限られた数の磁気検出コイル36で検出することは一般的に困難である。理論的には磁性板31に多数の磁気検出コイルを配置して内部の磁束密度分布を検出することも考えられるが、その場合は図8において磁性板31に多数の貫通孔32を設ける必要が生じるので密閉型シールド構造30自体のシールド性能の劣化を招くおそれがあり、検出コイル36の取付け及び配線等も考えると実用化は困難である。複合型磁気シールド構造において対象空間Sの内部の磁場分布を求めるためには、空間Sの内面S´を覆う磁性板内の磁束密度分布が検出できるパッシブ型磁気シールド構造を用いる必要がある。
本発明者は、図6に示すように、簾状又はルーバー状に並べた帯状磁性板の群(以下、シールド簾体という)を用いたパッシブ型磁気シールド構造(以下、密閉型シールドということがある)に注目した(特許文献4及び5参照)。開放型シールド構造とは、図6(A)に示すように所定幅(例えば30〜100mm程度)の複数の帯状磁性板2を長手方向中心軸Cが同一簾面F上にほぼ平行に並ぶように所定間隙dで積層したシールド簾体3を基本構造とし、或いは図6(B)のように複数のシールド簾体3a、3b、3c、3dを各簾体3の対応する帯状磁性板2の端縁の重ね合わせ(面接触、図中の符号9参照)によって磁気的に接合して列状の構造としたものである。列状のシールド簾体3は、図6(B)に示すように一端側の未接合端縁を他端側の対応する未接合端縁と重ね合わせて接合することにより、対象空間Sを囲む磁気的に閉じた環状の構造(以下、環状シールド簾体5ということがある)とすることができる。
図6に示すシールド簾体3は、各帯状磁性板2の間隙dによって対象空間に開放性(透視性、透光性、放熱性)を与える。その間隙dは、磁性板2中の磁束の通りやすさ(磁性板のパーミアンス)が間隙d中の磁束の通りやすさ(間隔のパーミアンス)より大きくなるように、すなわち長手方向と直交する間隙dの断面積Saに対する磁性板2の断面積Smと比透磁率μsとの積(Sm・μs)の割合(Sm・μs/Sa)が1より大きくなるように設計する。実際には、その割合(Sm・μs/Sa)を要求されるシールド性能に応じて1より充分に大きくすることができる。またシールド簾体3は、端縁の重ね合わせにより磁性板2の接合部に高い磁気的連続性を確保し、列状又は環状(図6(B)ではロ字型)に接合した磁性板2を磁束の通りやすい(磁束の漏れにくい)磁路とすることができる。例えば図6(B)の環状シールド簾体5は、環状磁性板2により形成された閉磁路(磁気回路)に磁束を集中させて間隙dからの磁気の漏洩(シールド性能の劣化)を小さく抑え、同じ量の磁性材料を用いた図8の密閉型シールド構造30よりも高度なシールド性能を対象空間Sに与える(特許文献4参照)。
図7(A)は、図6(B)の環状シールド簾体5をZ軸方向の外乱磁場に暴露したときの磁化分布(磁束密度の分布)を色分け表示したものである。また図7(B)は、その環状シールド簾体5を構成する各環状磁性板2内の磁束密度の分布を表し、更に各部位における磁束密度の勾配(磁束密度ベクトル)を矢印で付記したものである。図7(A)から分かるように、開放型シールド構造においても図8の密閉型シールド構造30と同様に、磁性板2の磁束密度は部位毎に相違している。しかし図7(B)の矢印に示すように磁束密度の分布を磁場の流れとして見れば、開放型シールド構造の各部位における磁束密度は何れも磁性板2のほぼ長手方向に沿った勾配を有しており、密閉型シールド構造30のような2次元的な分布ではなく1次元の分布となっていることが分かる。
すなわち、開放型シールド構造では、列状又は環状に接合した磁性板2(磁路)に磁束が集中して流れるので、磁性板2内の磁束密度の分布を磁性板2の長手方向に限定することができる。このような特徴を有する開放型シールド構造を用いて複合型磁気シールド構造を構築すれば、対象空間S内の磁場分布の算出に必要な境界条件、すなわち空間Sの内面S´上の磁束密度分布を検出することが期待できる。本発明は、この着想に基づく研究開発によって完成に至ったものである。
図1を参照するに、本発明による複合型磁気シールド構造は、磁気シールド対象空間Sの内面上に複数の帯状磁性板2を各々の長手方向中心軸Cが所定間隙dで平行に並ぶように配設した磁気シールド簾体3(図6参照)、その内面を複数に分割した各領域にそれぞれ配置した複数の補償磁場発生用コイル10、及びシールド簾体3上の複数位置に取付けて磁性板2内の磁束密度を検出する磁気センサ14を備えてなり、シールド簾体3の長手方向と各センサ14の位置及び検出値とから対象空間Sの内面上の磁束密度分布及び対象空間Sの内部の磁場分布を算出し且つその算出値と所定磁場分布との偏差に応じた補償電流iを各領域のコイル10へ選択的に印加することにより対象空間S内を所定磁場分布に制御するものである。
また図1を参照するに、本発明による複合型磁気シールドシステムは、磁気シールド対象空間Sの内面上に複数の帯状磁性板2を各々の長手方向中心軸Cが所定間隙dで平行に並ぶように配設した磁気シールド簾体3(図6参照)、その内面を複数に分割した各領域にそれぞれ配置した補償磁場発生用コイル10、シールド簾体3上の複数位置に取付けて磁性板2内の磁束密度を検出する磁気センサ14、並びにシールド簾体3の長手方向と各センサの位置及び検出値とから対象空間Sの内面上の磁束密度分布及び対象空間Sの内部の磁場分布を算出し且つその算出値と所定磁場分布とのに応じた補償電流iを各領域のコイル10に選択的に印加する制御手段20を備えてなるものである。
好ましくは、図示例のように、磁気シールド簾体3を対象空間Sの内囲面に沿って磁気的に結合させつつ配設した環状シールド簾体5(図6(B)参照)とし、補償磁場発生用コイル14を環状シールド簾体5の外側又は内側に隣接させて配置する。磁気センサ14は、例えば図3のようにシールド簾体3の磁性板2上に巻き付けた誘導コイル14aとすることができ、又はシールド簾体3の磁性板2の間隙対向面に取付けることができる。各領域に配置する補償磁場発生用コイル10は、その領域の中心を通る垂直軸の周りに配置した環状コイルとすることができる。
本発明の複合型磁気シールド構造及びシステムは、対象空間Sの内面上にパッシブ型磁気シールドとして磁気シールド簾体3を配設すると共に、その内面を複数に分割した各領域にそれぞれ補償磁場発生用コイル10を配置してアクティブ型磁気シールドとし、シールド簾体3上の複数位置に取付けた磁気センサ14により磁性板2内の磁束密度を検出し、その磁気センサ14の位置及び検出値とシールド簾体3の長手方向とから対象空間Sの内面上の磁束密度分布及び対象空間Sの内部の磁場分布を算出し、算出した磁場分布と所定磁場分布との偏差に応じた補償電流iを各領域のコイル10へ選択的に印加することにより対象空間S内を所定磁場分布に制御するので、次の効果を奏する。
(イ)パッシブ型磁気シールド構造として、磁性板2内の磁束密度の向きを磁性板2の長手方向に限定できる磁気シールド簾体3を用いることにより、その磁性板2上の磁束密度の検出値から対象空間Sの内面S´の磁束密度分布を求め、その内面S´の磁束密度分布を境界条件として対象空間S内の特定位置(例えば1点)の磁束密度ではなく全体又は広範囲の磁場分布を算出することができる。
(ロ)また、磁性板2(磁路)に磁束が集中して流れる磁気シールド簾体3を用いることにより、対象空間Sの内部の磁場分布を算出する際の磁性板2上の磁束密度の寄与度を高め、比較的検出しやすい磁性板2上の磁束密度から対象空間内の磁場分布を精度よく算出することができる。
(ハ)更に、磁性板2の相互間に間隙dを有する磁気シールド簾体3を用いることにより、その間隙dを利用して磁気センサ14及びその配線ケーブル等を配置することができ、パッシブ型磁気シールド構造自体のシールド性能を損なう(シールド性能を劣化させる)ことなく磁性板2内の磁束密度を検出することができる。
(ニ)対象空間Sの内面を複数に分割して各領域に補償磁場発生用コイル10を配置し、磁気シールド簾体3の磁束密度分布から算出した空間S内の磁場分布と所定磁場分布(例えば空間S内の各位置xで許容される環境磁場の分布)との偏差に応じて必要なコイル10のみを選択的に駆動することにより、対象空間Sの内部の広範囲にわたる磁場分布を最小限の駆動電力で制御することができる。
図1は、開放型シールド構造を用いたパッシブ型磁気シールドとアクティブ型磁気シールドとを組み合わせた本発明の複合型磁気シールド構造の実施例を示す。図示例の開放型シールド構造は、図6(B)と同様に、対象空間Sの中心軸線Xを囲む内周面(Y軸方向及びZ軸方向の4内面)上にそれぞれ複数の帯状磁性板2をそれぞれ長手方向中心軸CがY軸方向又はZ軸方向に所定間隙dで平行に並ぶように配設して磁気シールド簾体3a、3b、3c、3dを形成し、各シールド簾体3a、3b、3c、3dを端縁の重ね合わせにより接合して環状シールド簾体5としたものである。また、図示例のアクティブ型磁気シールドは、空間Sの内周面(Y軸方向及びZ軸方向の4内面)をそれぞれ複数に分割した各領域にそれぞれ配置した補償コイル10の群と、環状シールド簾体5上の複数の所定位置にそれぞれ取付けた磁気センサ14の群とを有する。各磁気センサ14を制御装置20に接続すると共に各補償コイル10を駆動装置26に接続し、制御装置20及び駆動装置26を含めてアクティブ型磁気シールドを駆動する複合型磁気シールドシステムを構成する。
図示例の制御装置20は、記憶手段21と、対象空間S内の磁場分布を算出する算出手段22とを有する。記憶手段21には、アクティブ型磁気シールドの制御に必要な磁気シールド構造のパラメタ、例えば対象空間Sで要求される所定磁場分布(例えば対象空間S内の各位置xで許容される最大磁場の分布)、シールド簾体5の各磁性板2の長手方向(配設方向、図示例ではY軸方向及びZ軸方向)、環状シールド簾体5上の各磁気センサ14の取付け位置(空間Sの表面S´上の位置x´)等を記憶する。算出手段22は、各磁気センサ14の検出値(シールド簾体5上の磁性板2内の磁束密度)を入力し、その検出値と記憶手段21に記憶したパラメタ(各磁性板2の長手方向、各磁気センサ14の取付け位置等)とに基づいて対象空間Sの内面S´上の磁束密度分布を算出し、更にその内面S´上の磁束密度分布を境界条件として対象空間Sの内部の磁場分布を算出する。また図示例の制御手段20は、算出手段21で算出した対象空間S内の磁場分布と記憶手段21に記憶した対象空間Sの所定磁場分布との偏差を検出する検出手段23、及びその偏差に応じて駆動すべき補償コイル10の領域と補償コイル10に印加する補償電流iとを選択する選択手段24を有している。選択手段24で選択した領域を駆動装置26に入力することにより、アクティブ型磁気シールドの複数の補償コイル10を選択的に駆動し、対象空間S内が所定磁場分布となるように制御する。
なお、図示例ではパッシブ型磁気シールドとして環状シールド簾体5を用いているが、本発明で用いるシールド簾体3は環状構造に限らず、例えば対象空間Sの内周面のうち環境磁場の影響の大きい特定の内面(例えばY軸方向又はZ軸方向の内面)又はその一部分のみを覆う面状又は列状のシールド簾体3(図6(A)参照)としてもよい。この場合は、シールド簾体3を配設しない内面S´上の磁束密度分布(境界条件)は検出できないが、対象空間Sの内部の磁場分布を算出する上で環境磁場の影響の小さい内面S´の寄与度は相対的に小さいので、面状又は列状のシールド簾体3上で検出された磁束密度に基づき対象空間S内の磁場分布を充分な精度で算出することができる。
また、図示例では制御装置20をコンピュータ(PC)とし、算出手段22、検出手段23、選択手段24等をコンピュータ内蔵のプログラムとしているが、制御装置20として従来技術に属する他の制御手段、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、プログラマブルロジックデバイス(FPGA等)、又はアナログ信号処理回路等を用いることができる。必要に応じて、磁気センサ14と制御装置20との間に前置アンプやフィルタ回路等(図示せず)を付加して磁気センサ14の検出値のS/N比を改善することもできる。
図2は、図1の複合型磁気シールドシステムを用いて対象空間Sの磁場分布を制御する方法の流れ図の一例を示す。以下、図2の流れ図を参照して図1に示す複合型磁気シールド構造の作用を説明する。ステップS001〜S003は複合型磁気シールド構造を構築する手順を示す。先ずステップS001において、図1又は図6(A)に示すように、対象空間Sの環境磁場の影響の大きい内面にシールド簾体3を施工する。例えば、対象空間S内に要求される所定磁場分布(例えば各位置xにおいて許容される環境磁場の分布)を決定すると共に、シールド簾体3の施工前の対象空間S内の環境磁場分布及びその変動を計測し、環境磁場が最小であるときに所定磁場分布が得られるようにシールド簾体3の配設位置、各磁性板2の長手方向と直交する断面積Sm、比透磁率μs、間隙d等を設計する。設計した対象空間Sの所定磁場分布及び施工したシールド簾体3の長手方向は、制御装置20の記憶手段21に記憶する。
ステップS002において、シールド簾体3上の複数の所定位置にそれぞれ、磁性板2内の磁束密度を検出する磁気センサ14を取付ける。各磁気センサ14及びそれらを制御装置20に接続する配線ケーブル16は、シールド簾体3のシールド性能を損なわないように、シールド簾体3の各磁性板2の間隙dに配置することができる。磁気サンサ14は、間隙dに取付け可能であればとくに種類の制限はないが、例えば図3に示すようにシールド簾体3の磁性板2上に巻き付けた誘導コイル14aとし、コイル14aの誘導電圧により取付け位置の磁性板2内の磁束密度を検出する。或いは磁気サンサ14を、シールド簾体3の磁性板2の間隙対向面に取付け可能な高感度マイクロ磁気サンサ(MIセンサ)、ホール素子を用いた磁気センサ、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサ(MRセンサ)、磁性薄膜を用いた高周波駆動型の磁気センサ(TMFセンサ)等としてもよい。必要に応じて、誘導コイル14aと他の磁気センサ14とを併用してもよい。
磁気センサ14の取付け位置及び数(取付け間隔)は、シールド簾体3の磁性板2に生じうる磁化分布(磁束密度の分布)に応じて設計するが、例えば磁気シールド簾体3の設計時に得られた環境磁場分布に応じて決定することができる。例えば、図7(A)のように環境磁場の暴露方向が一定(図示例ではZ軸方向)である場合は、その長手方向の磁性板2が集中的に磁化されて磁束密度の勾配(図中のZ軸方向の矢印)が大きくなるので、環境磁場の暴露方向と一致する長手方向のシールド簾体3には短間隔で集中的に磁気センサ14を取付け、他の長手方向のシールド簾体3には比較的粗い間隔で磁気センサ14を取付ければ足りる。他方、任意方向の環境磁場に対応する必要がある場合は、図1に示すように、シールド簾体3を構成する全ての磁性板2にそれぞれ複数の磁気センサ14を取付けることが望ましい。各磁気センサ14の取付け位置も制御装置20の記憶手段21に記憶しておく。
次いでステップS003において、シールド簾体3を配設した対象空間Sの内面を複数に分割し、分割した各領域にそれぞれシールド簾体3の外側又は内側に隣接するように補償コイル10を配置し、各補償コイル10を駆動装置26経由で制御装置20に接続する。制御装置20によって各領域の補償コイル10の発生する補償磁場を調整することにより、対象空間S内が所定磁場分布となるように制御する。補償コイル10の配置位置及び形状(空間Sの内面の分割方法)は、補償コイル10の発生する補償磁場によって対象空間S内の磁場分布が自由に制御できるように設計するが、例えば磁気シールド簾体3の設計時に得られた環境磁場の分布に応じて、対象空間S内に所定磁場分布が再現できるように数値シミュレーションによって決定することができる。環境磁場の原因及び発生源は対象空間S毎に相違しているので、補償コイル10の配置位置及び形状は、本発明を実際に適用する現場の対象空間Sに応じて設計・施工することが望ましい。なお、各補償コイル10の配線ケーブル28も、シールド簾体3の間隙dを利用して配置することができる。
図1は、任意方向の環境磁場に対応できる補償コイル10の配置位置及び形状の一例を示しており、対象空間Sの中心軸線Xを囲む内周面(Y軸方向及びZ軸方向の4内面)をそれぞれ格子状領域(図示例では16領域)に分割し、その各領域(合計64領域)にそれぞれシールド簾体3と外接するように補償コイル10を配置している(図4(A)も参照)。各補償コイル10は、例えば各領域の中心を通る垂直軸の周りに配置した環状のHelmholtz型コイル、複数の環状コイルを組み合わせて一様性の高い補償磁場を各領域の中心近傍に発生するMerritt型コイル、又は非特許文献2が開示するように一次勾配付き補償磁場を各領域の中心近傍に発生する3連型環状コイル等とすることができる。各補償コイル10の発生する補償磁場の分布は、各領域の中心位置と補償コイル10に印加する補償電流iとからBiot−Savartの法則によって求めることができる。
なお、図示例では各補償コイル10をシールド簾体3の外側に外接するように配置しているが、各補償コイル10をシールド簾体3の内側に内接するように配置してもよい。シールド簾体3の外側に補償コイル10を配置した場合は、制御装置20によって各補償コイル10の発生する補償磁場を境界条件に含めて対象空間S内の磁場分布を算出し、所定磁場分布が再現できるように補償コイル10の駆動位置及び補償電流iを選択することができる。また、シールド簾体3の内側に補償コイル10を配置した場合は、制御装置20によって各補償コイル10の発生する補償磁場を空間Sの内部の磁場発生源(例えば電流源等)として対象空間S内の磁場分布を算出し、所定磁場分布が再現できるように補償コイル10の駆動位置及び補償電流iを選択すればよい。
例えば図4(A)に示すように、補償コイル1033、1044に補償電流iを印加した場合は、それらの領域の中心近傍に発生する補償磁場により対象空間3内の磁場分布を制御することができる。また、補償コイル1011、1012、1021、1022に同振幅で同位相の補償電流iを印加することにより、図4(A)に点線で示すように、それら4領域の周縁に沿って補償電流iを印加したときと等価の補償磁場を発生させ、その4領域の中心近傍に発生する補償磁場によって対象空間3内の磁場分布を制御することができる。更に、各補償コイル1011、1012、1021、1022の補償電流iの位相を相違させることで、補償磁場の発生分布を変化させることもできる。各補償コイル10の発生する補償磁場のベクトル加算に応じて対象空間3内の磁場分布を自由に制御し、対象空間S内に所定磁場分布を再現することができる。空間Sの内面の分割数を増やすことにより、磁場分布の制御の自由度を更に高めることもできる。
図4(B)は、対象空間Sにおける補償コイル10の他の配置位置及び形状の一例を示しており、空間Sの内周面を各内面の中央部領域と三面が交差する隅部領域(図示例では四隅)とに分割し、各中央部領域にそれぞれ矩形の補償コイル1011、1012、1013……を配置すると共に、各隅部領域にそれぞれ三角形の補償コイル1021、1022、1023……、1031、1032、1033……を配置している。矩形又は三角形の各辺の補償コイル10は同じ長さである必要はなく、矩形又は三角形は歪んでいてもよい。図4(B)の場合も、図4(A)の場合と同様に、補償コイル10の駆動位置と各補償コイル10に印加する補償電流iの振幅・位相とを選択することにより、各補償コイル10の発生する補償磁場のベクトル加算に応じて対象空間3内の磁場分布を自由に制御し、対象空間S内に所定磁場分布を再現することができる。また、中央部領域及び隅部領域をそれぞれ更に細かい矩形領域及び三角形領域(細領域)に分割し、図4(A)のように、その各細領域に小型の矩形又は三角形の補償コイル10を配置してもよい。このような各補償コイル10の配置位置(分割領域)、及び補償電流iの振幅・位相に応じて発生する補償磁場の分布特性は、制御装置20の記憶手段21に記憶しておく。
図2のステップS004〜S006は、ステップS001〜S003で構築した複合型磁気シールド構造に囲まれた対象空間S内の磁場分布を制御する手順を示す。ステップS004は、各磁気センサ14で検出された磁性板2内の磁束密度の検出値を制御装置20に入力し、制御装置20の算出手段22により対象空間S内の磁場分布(磁束密度分布)を算出する処理を示す。上述したように、磁気シールド簾体3は磁性板2内の磁束密度分布が磁性板2の長手方向に限定されているので、記憶手段21に記憶された各磁気センサ14の取付け位置と各磁性板2の長手方向とから、その取付け位置における磁束密度の向きを決めることができる。算出手段22は、各磁気センサ14の取付け位置x´と磁束密度の検出値と磁性板2の長手方向とから、その取付け位置x´における磁場ベクトル(磁束密度ベクトル)ψ(x´、t´)を求める。また、シールド簾体3上の複数の位置x´における磁場ベクトルψ(x´、t´)を対象空間Sの内面S´に沿って積分することにより、空間Sの内面S´上の磁束密度分布(境界条件)を算出する。内面S´上の磁束密度分布が検出できれば、例えばKirchhoff積分表示((1)式又はその近似式)を適用することにより、対象空間Sの内部の任意位置xにおける磁場ベクトル、すなわち空間S内の磁場分布を算出することができる。
なお、制御装置20の算出手段22は、(1)式又はその近似式を直接的又は近似的に適用して対象空間S内の磁場分布をリアルタイムに算出することもできるが、対象空間Sを覆うシールド簾体3上の磁化分布(境界条件)を把握できれば、他の適当な方法によって対象空間S内の磁場分布を算出することも可能である。例えば、磁気シールド簾体3の設計時に得られた環境磁場分布に基づく数値シミュレーションにより、環境磁場分布の変動に応じたシールド簾体3上の磁化分布と対象空間S内の磁場分布との関係式(テーブル等)を予め作成しておき、その関係式を用いてシールド簾体3上の磁化分布から対象空間S内の磁場分布を簡易且つ迅速に算出することができる。また、対象空間Sにおける環境磁場の原因ないし発生源が特定できる場合は、その原因ないし発生源で発生する環境磁場の変動に応じたシールド簾体3上の磁化分布と対象空間S内の磁場分布との関係式を数値シミュレーションにより作成し、その関係式を用いて対象空間S内の磁場分布を算出することも可能である。
図2のステップS005は、制御装置20の検出手段23により、ステップS004で算出された対象空間S内の磁場分布と記憶手段21に記憶した対象空間Sの所定磁場分布との偏差(空間S内の任意位置xにおける偏差の大きさ)を検出し、更に制御装置20の選択手段24において、その偏差を打ち消すために必要な補償コイル10の駆動位置と各補償コイル10に印加する補償電流iとを選択する処理を示す。例えば、検出手段23によって偏差が検出された領域又はその近傍の補償コイル10を選択し、選択手段24によってその補償コイル10に発生させる補償磁場すなわち補償電流iの振幅・位相を選択する。或いは選択手段24において、偏差が検出された近傍の補償コイル10の発生する補償磁場を境界条件又は磁場発生源に含めてKirchhoff積分表示((1)式又はその近似式)を適用し、対象空間S内の磁場分布の再計算を繰り返することにより、所定磁場分布が再現できる補償コイル10の駆動位置と補償電流iの振幅・位相を選定することができる。
なお、ステップS005においても、(1)式を直接的又は近似的に適用する方法に代えて、他の適当な方法によって補償コイル10の駆動位置及び補償電流iを選択することができる。例えば、上述した磁気シールド簾体3の設計時に得られた環境磁場分布に基づく数値シミュレーションにより、対象空間S内の磁場分布に生じうる偏差とその偏差を打ち消すために必要な補償コイル10の位置及び補償電流iとの関係式(テーブル等)を予め作成しておき、検出手段23で検出された偏差に応じて、その関係式を用いて補償コイル10の駆動位置及び補償電流iを選択することができる。また、対象空間Sにおける環境磁場の原因ないし発生源が特定できる場合は、その原因ないし発生源で発生する環境磁場の変動に応じて発生しうる対象空間S内の磁場分布の偏差とその偏差を打ち消すために必要な補償コイル10の位置及び補償電流iとの関係式を数値シミュレーションにより作成し、その関係式を用いて補償コイル10の駆動位置及び補償電流iを選択することも可能である。
図2のステップS006は、制御装置20の選択手段24で求めた補償コイル10の駆動位置及び補償電流iの信号を駆動装置26に入力し、対象空間3の各領域に配置した補償コイル10を選択的に駆動する処理を示す。図1に示す駆動装置26は増幅器又は電流ブースタ27を介して各補償コイル10と接続されており、増幅器又は電流ブースタ27を介して選択された補償コイル10に選択された補償電流iを印加することにより、対象空間S内に生じた磁場分布の変動(所定磁場分布との偏差)を打ち消す補償磁場を生成する。なお、実際の対象空間Sには原因ないし発生源の異なる複数の環境磁場が重畳されて同時に暴露されることがあり、特定の原因ないし発生源の環境磁場に対する補償電流iを補償コイル10に印加するだけでは、対象空間S内に生じた環境磁場の変動を充分に解消できない場合がありうる。このような場合は、図1の駆動装置26にマルチプレクサやセレクタ(デュプレクサ)等を含め、異なる環境磁場に対応する各補償コイル10の補償電流iの信号を駆動装置26で調整(合成または分波)したうえで、各補償コイル10を駆動することが有効である。原因ないし発生源の異なる複数の環境磁場に対する補償電流iを各補償コイル10に印加することにより、そのような環境磁場に暴露された対象空間Sの磁場分布の変動を打ち消す重畳補償磁場を生成することができる。
ステップS007において対象空間Sの磁場分布の制御を終了するか否かを判断し、制御を継続する場合はステップS004に戻り、上述したステップS004〜S006を繰り返す。図2の流れ図によれば、対象空間S内の特定位置(例えば1点)における磁場だけなく任意位置xにおける磁場を制御することができ、磁気シールド空間S内の全体又は広範囲を所望の磁場分布に制御することができる。例えば、電子ビーム装置やSQUID装置等を使用する磁気シールド空間Sに本発明の複合型シールド構造を適用することにより、その空間S内での装置の配置替え又は移動を可能とし、空間Sの利用効率を大幅に向上させることができる。また、対象空間S内の磁場分布に偏差が生じた場合に、その偏差が生じた領域近傍の補償コイル10のみを選択的に駆動して磁場分布の偏差を打ち消すことができるので、最小限の駆動電力で対象空間S内の磁場分布を制御することが可能である。
こうして本発明の目的である「対象空間内部の磁場分布を制御することができる複合型磁気シールド構造及びシステム」の提供を達成することができる。
図5は、図1に示すように対象空間Sの中心軸線Xを囲む環状シールド簾体5xと、中心軸線Yを囲む環状シールド簾体5yとを入れ子状に組み合わせ、対象空間Sの床、壁、天井の各内面にシールド簾体5を配設した開放型シールド構造の実施例を示す。開放型シールド構造は、帯状磁性板2の配設方向が環境磁場の方向と揃っているときに大きなシールド効果を発揮するので、XYZ軸方向のあらゆる方向の環境磁場に対応するためには、図5(A)のように設置方向(環状の中心軸方向)の異なる複数の環状シールド簾体5x、5yを入れ子状に組み合わせて2層構造とすることが有効である。また、図5(A)の多層構造に対して更に中心軸線Zを囲む環状シールド簾体5z(図示せず)を入れ子状に組み合わせ、3層以上の多層構造とすることも可能である。
図5(B)は、図5(A)の2層入れ子構造の環状シールド簾体5x、5yを用いた本発明の複合型磁気シールド構造の実施例を示す。図5(B)の磁気シールド構造も、対象空間Sの6面全てにパッシブ型シールド構造とアクティブ型シールド構造を配置する点を除き、上述した図2の流れ図に従って構築し、その構造で囲まれた対象空間S内の磁場分布を制御することができる。すなわち、ステップS001において対象空間Sの床、壁、天井の各内面に2層入れ子構造の環状シールド簾体5x、5yを施工したのち、ステップS002において各内面のシールド簾体5x、5y上の所定位置にそれぞれ磁気センサ14を取付ける。2層入れ子構造のシールド簾体5x、5yは一体となって対象空間Sの内面S´を形成するので、シールド簾体5x、5yが重なる空間Sの内面(図示例ではZ軸方向の内面)では、その何れかのシールド簾体5x、5y上に磁気センサ14を取付ければ足りる。ステップS003において、2層入れ子構造で囲まれた対象空間Sの全ての内面をそれぞれ複数に分割し、分割した各領域にそれぞれ補償コイル10を配置する。補償コイル10の配置の一例を図4(C)に示す。
ステップS004において、対象空間Sの各内面の磁気センサ14で検出された磁性板2内の磁束密度の検出値を制御装置20に入力し、算出手段22によって対象空間Sの全ての内面S´上の磁束密度分布を算出し、その全ての内面S´上の磁束密度分布を境界条件として対象空間Sの内部の磁場分布を算出する。上述したように、例えば(1)式又はその近似式を適用して磁場分布を算出することもできるが、予め作成した2層入れ子構造上の磁束密度分布と対象空間S内の磁場分布との関係式(テーブル等)を用いて対象空間S内の磁場分布を算出してもよい。次いでステップS005において、検出手段23により対象空間S内の磁場分布と所定磁場分布との偏差を検出し、その偏差を打ち消すために必要な補償コイル10の駆動位置及び印加する補償電流iの振幅・位相を選択手段24によって選択する。図4(C)における補償コイル10の選択方法も、図4(A)を参照して上述した方法と同様である。更にステップS006において、補償コイル10の駆動位置及び補償電流iの信号を駆動装置26に入力し、2層入れ子構造の各内面に配置した補償コイル10を選択的に駆動することにより、対象空間S内に生じた磁場分布の変動(所定磁場分布との偏差)を打ち消す補償磁場を生成し、対象空間S内の全体又は広範囲を所望の磁場分布に制御することができる。