しかしながら、上記従来技術は、空調対象となる上下階を区画する上下境界部(階間部)に水平ダクトが設けられる構成であるため、その水平ダクトを設置するスペースを改めて確保しなければならない。なぜなら、上下境界部は元々狭い空間であり、水平ダクトを設置するだけの余裕をもっていないからである。
そして、上下境界部に新たなスペースを確保するのであれば、下階天井の一部を低くして下がり天井としたり、上階床面の高さを高くしたりしなければならないが、それでは空調対象となる各階の居室等を狭くする方向へ天井又は床が張り出すことになり、その分、居室等が狭くなってしまう。また、下がり天井としたり、床面高さを高くすることになれば、特別な設計や専用の造作等が必要となって設置コストも増加してしまう。
そこで、本発明は、空調対象となる上下階を区画する上下境界部に冷暖房設備が設けられなくても全館空調を実現できる建物を提供することを主たる目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
すなわち、第1の発明では、複数階建ての建物において、空調対象となる各階に設けられた居室等の空間部と、前記各階の空間部に横並びで隣接し、かつ空調対象の最下階部分から最上階部分まで連通する通風通路と、を備えるとともに、空調対象の最上階床面よりも上に設けられ、前記通風通路の最上階部分に冷熱を与える冷房設備と、空調対象の最下階天井面よりも下に設けられ、前記通風通路の最下階部分に温熱を与える暖房設備と、の少なくともいずれか一方の設備を備えた。
この第1の発明によれば、冷房設備を備えた場合、この冷房設備により通風通路の最上階部分に冷熱が与えられる。その最上階部分の冷気は、自然対流によって下の階に流れる。これにより、空調対象の最下階から最上階までつながる通風通路の全域が冷房される。また、暖房設備を備えた場合、この暖房設備により通風通路の最下階部分に温熱が与えられる。その最下階部分の暖気は、自然対流によって上の階に流れる。これにより、通風通路の全域が暖房される。そして、冷房又は暖房された通風通路から、該通風通路に隣接する各階の空間部に冷気又は暖気が送り込まれるようにすれば、全館空調を行うことが可能となる。
かかる構成では、冷房設備は空調対象の最上階床面よりも上に設けられ、暖房設備は空調対象の最下階天井面よりも下に設けられているため、空調対象となる上下階を区画する上下境界部に冷暖房設備が設けられていない。このため、その上下境界部に水平ダクトを設置するスペースを確保するため、下がり天井としたり、床面高さを高くしたりする必要はなくなる。これにより、空調対象となる各階の空間部を狭くすることなく十分な広さを確保できるし、特別な設計や専用の造作等も不要として全館空調用の設備の設置コストを低減できる。
以上より、この第1の発明によれば、空調対象となる上下階を区画する上下境界部にダクト等の冷暖房設備が設けられなくても全館空調を実現できる。
ここで、建物ユニットが複数連結されてなるユニット式建物では、上下境界部に冷暖房設備が設けられる場合、各建物ユニットの梁に設けられた梁貫通孔を利用して、同一階の建物ユニット間にまたがる通気ダクトが設置される。そして、その梁貫通孔の径(通常、100φ)は全館空調用として一般的に用いられる通気ダクトの外径(250mm)よりも小さい。このため、建物ユニット同士の連結部位ごとでダクト径が変化し、そのダクト径の変化が圧力損失をもたらしてしまうという問題がある。また、その圧力損失を避けるため、梁を回避するように通気ダクトを設置するのであれば下がり天井とならざるを得ず、前述の課題で指摘したように空間部が狭くなってしまう。
この第1の発明によれば、前述したように、上下境界部に冷暖房設備が設けられないため、圧力損失を考慮する必要がなくなるし、空間部を狭くしてしまうこともなく、全館空調を実現できる。したがって、この第1の発明はユニット式建物である場合に特に有効な手段となる。
第2の発明では、前記冷房設備は冷気を吹き出して冷熱を与える設備であり、その冷房用吹出し口は最上階天井部に設けられ、前記暖房設備は暖気を吹き出して温熱を与える設備であり、その暖房用吹出し口は最下階床部に設けられている。
この第2の発明によれば、冷房時には、自然に降下する冷気が最上階天井部から吹き出されるため、通風通路全域の温度分布が自然対流によって均一化される。また、暖房時には、自然に上昇する暖気が最下階床部から吹出されるため、通風通路全域の温度分布が自然対流によって均一化される。なお、ここでいう天井部とは、天井面だけでなく、天井面近傍の壁面も含まれる。また、床部とは、床面だけでなく、床面近傍の壁面も含まれる。
第3の発明では、前記冷房設備は前記最上階部分の天井裏空間に設けられ、前記暖房設備は前記最下階部分の床下空間に設けられている。
この第3の発明によれば、天井裏空間や床下空間といったデッドスペースを有効活用できる。また、冷房設備又は暖房設備として竪ダクトを備えている場合、それは内壁部に埋め込まれるようにして設置されるため、天井裏空間や床下空間といった比較的余裕のあるスペースに水平ダクトを設置することに比べ、その設置工事が煩雑となる。そのため、設置コストがかさみ、全館空調用の設備を設置する上で、コスト高の原因となってしまう。この点、第3の発明によれば、内壁部に設置される竪ダクトは不要となるから、全館空調用の設備の設置コストを低減できる。
第4の発明では、前記冷房設備の吸入口は最上階天井部に設けられ、前記暖房設備の吸入口は最下階床部に設けられている。
この第4の発明によれば、自然対流が生じる通風通路に吸入口が設けられるため、空気の吸い込みによって生じる空気流により、自然対流が促進される。これにより、通風通路の温度分布の均一度合いを高めることができる。
第5の発明では、前記冷房設備を備えた場合、前記通風通路の最上階部分の温度を検出する最上階温度検出手段と、前記最上階温度検出手段による検出温度に基づいて、前記冷房設備の冷房装置を制御する冷房用制御手段と、を備えた。また、前記暖房設備を備えた場合、前記通風通路の最下階部分の温度を検出する最下階温度検出手段と、前記最下階温度検出手段による検出温度に基づいて前記暖房設備の暖房装置を制御する暖房用制御手段と、を備えた。
この第5の発明によれば、冷熱を発生させる冷房装置又は温熱を発生させる暖房装置は、通風通路のうち、冷房設備又は暖房設備によって冷房又は暖房がなされる階部分の温度に基づいて制御されるため、その制御を好適に行える。
第6の発明では、前記通風通路と前記空間部とを区画する内壁部に、前記通風通路の冷熱又は温熱を前記空間部に伝導する壁部熱伝導手段が設けられている。
この第6の発明によれば、冷房設備を備えた場合、壁部熱伝導手段により、通風通路の冷熱が前記空間部に伝導される。また、暖房設備を備えた場合、壁部熱伝導手段により、通風通路の温熱が前記空間部に伝導される。これにより、全館空調を実現できる。
この場合、各階で前記空間部は複数設けられることが好ましい。これにより、通風通路から冷熱又は温熱が伝導される空間部が多くなり、全館空調の範囲をより広げることができる。
第7の発明では、前記壁部熱伝導手段は前記通風通路と前記空間部とを連通する連通孔である。
この第7の発明によれば、通風通路と空間部とを連通する連通孔を内壁部に形成するだけで足りるため、全館空調用の設備の設置コストを低減できる。
第8の発明では、前記壁部熱伝導手段は、前記通風通路の空気を前記空間部に送るファン装置である。
この第8の発明によれば、通風通路が冷房された場合、その冷気がファン装置により空間部に送られ、それにより冷熱が伝導する。また、通風通路が暖房された場合、その暖気がファン装置により空間部に送られ、それにより温熱が伝導する。このように、ファン装置を利用すれば冷気又は暖気が強制的に送られるため、熱伝導が促進されて全館空調の効率を高めることができる。
第9の発明では、前記空間部における人の在室状況を検出する人検出手段と、前記人検出手段によって人が検出された場合に、前記ファン装置を駆動させるファン制御手段と、を備える。
この第9の発明によれば、人が在室しないために熱伝導させる必要性が小さい空間部に対して、ファン装置を用いた強制的な熱伝導がなされず、人が在室するため熱伝導の必要性の大きい空間部に対してのみそれがなされる。このため、ファン装置を利用した熱伝導に関して、そのエネルギー消費を抑制できる。
第10の発明では、前記通風通路の温度を検出する第1温度検出手段と、前記空間部の温度を検出する第2温度検出手段と、前記第1温度検出手段及び前記第2温度検出手段の温度検出により、前記通風通路と前記空間部との間で温度差が所定値以上となった場合又は設定値を超えた場合に前記ファン装置を駆動させるファン制御手段と、を備えている。
この第10の発明によれば、通風通路と空間部との間の温度差が所定値以上となった場合又は所定値を超えた場合、自動的にファン装置が駆動されて冷熱又は温熱が空間部に伝導される。これにより、建物利用者の利便性を高めることができる。
第11の発明では、前記ファン制御手段は、前記通風通路が設定温度となったことを条件として前記ファン装置の制御を開始する。
この第11の発明によれば、通風通路は各階に連通している空間であり、冷房設備により最上階部分への冷熱付与が開始された後、又は暖房設備により最下階部分への温熱付与が開始された後、通風通路全域が冷房又は暖房されるまでにはある程度の時間を要する。このため、通風通路が設定温度となって初めてファン装置の制御が開始され、空間部への熱伝導が行われるようにすれば、冷房又は暖房の効率を高めることができる。
第12の発明では、前記冷房設備は、前記最上階部分の空間部にも冷熱を与えて当該空間部も冷房する設備であり、前記暖房設備は、前記最下階部分の空間部にも温熱を与えて当該空間部も暖房する設備である。
ここで、建物に空調設備が設けられていない場合を想定すると、自然対流によって最上階の空間部には暖気が滞留しやすいが、それより下の階部分の空間部は最上階部分の空間部と比べて弱冷状態にある。また、逆に、自然対流によって最下階の空間部には冷気が滞留しやすいが、それより上の階部分の空間部は最下階部分の空間部に比べて弱暖状態にある。
そこで、第12の発明によれば、冷気又は暖気が滞留しやすい空間部が設備によって冷房又は暖房されるため、冷気又は暖気が送り込まれることによって冷房又は暖房されるのに比べ、冷房又は暖房の効果を高めることができる。
第13の発明では、上記第12の発明において、上下に隣接する前記空間部を区画する上下境界部に、上側空間部から下側空間部へ冷熱を伝導し、下側空間部から上側空間部へ温熱を伝導する境界部熱伝導手段が設けられた。
この第13の発明によれば、冷房設備を備えた場合、境界部熱伝導手段により、最上階部分の空間部の冷熱はその下階の空間部に伝導するため、その下階の空間部も冷房される。また、暖房設備を備えた場合、境界部熱伝導手段により、最下階部分の温熱はその上階の空間部に伝導するため、その上階の空間部も暖房される。これにより、全館空調を実現できる。
第14の発明では、前記境界部熱伝導手段は、前記上下に隣接する空間部同士を連通するパスダクトである。
この第14の発明によれば、冷房設備を備えた場合、自然対流により、最上階部分の空間部の冷気がパスダクトを通じて下階の空間部に流れて冷熱が伝導する。また、暖房設備を備えた場合、自然対流により、最下階部分の冷気がパスダクトを通じて上階の空間部に流れて冷熱が伝導する。この場合、自然対流を利用しているため動力を必要とせず、熱伝導に関するエネルギー消費を抑制できる。
この場合、パスダクトは上下方向に沿って設けられることが好ましい。これにより、パスダクトは自然対流の流れの向きに合致して設けられるため、冷気又は暖気が導入されやすくなり、全館空調の効率を高めることができる。
第15の発明では、前記通風通路は、各階の廊下、ホール等の通路空間部と、それら各通路空間部へ昇降する階段が設置された階段空間部とで形成されている。
この第15の発明によれば、通路空間部及び階段空間部は、同一階の空間部又は他階の空間部へ移動する際に通過するスペースであり、その通過スペースと空間部との間の温度差を小さくすることが可能となる。これにより、空間部間を移動する際にヒートショック又はコールドショックが生じることを緩和できる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照しつつ説明する。この第1の実施形態では、建物ユニットが複数連結されてなるユニット式の二階建て建物を、建物の一例としている。最初に、二階建て建物の全体構成を図1に基づいて説明する。なお、図1は二階建て建物の縦断面図である。
図1に示されるように、建物10は、基礎11上に形成された一階部分12と、その一階部分12の上方に隣接して形成された二階部分13とを備えている。一階部分12及び二階部分13はいずれも住人の日常生活に利用される居住空間であり、いずれも空調対象となっている。このため、一階部分12は空調対象の最下階部分であり、二階部分13は空調対象の最上階部分となっている。
一階部分12と二階部分13とは、上下境界部14によって区画されている。上下境界部14は一階天井面12bと二階床面13aとを含み、梁、下地材及び仕上げ材等によって周知の如く構成されている。また、一階床面12aの下方には床下空間15が設けられ、二階天井面13bの上方には天井裏空間16が設けられている。
建物10の一階部分12には、空間部として例えば第1居室21及び第2居室22がそれぞれ設けられている。同じく一階部分12には、各居室21,22の他に、一階廊下25も設けられ、前記各居室21,22と一階内壁部17によって区画されている。また、建物10の二階部分13には、空間部として例えば第3居室23及び第4居室24が設けられている。同じく二階部分には、各居室23,24の他に、二階廊下26が設けられ、前記各居室23,24と二階内壁部18によって区画されている。
前記一階廊下25及び二階廊下26は、一階部分12の各居室21,22及び二階部分13の各居室23,24の間を住人が行き来する際に通過する通路空間部であり、上下階につながる階段空間部等を通じて相互に連通している。そして、これら一階廊下25及びに階廊下26により、一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27が形成されている。なお、図1では、通風通路27が上下階に連通する空間であることを分かり易くするため、上下階にわたって突き抜けた空間として図示されている。
次に、この建物10に設けられた全館空調のための構成を図1に基づいて説明する。
図1に示されるように、床下空間15には暖房設備31が設けられている。暖房設備31は暖房装置32と、暖房用通気ダクト33とを備えている。暖房装置32は吸入した空気を暖めて排出する装置であり、通風通路27の下方に配置されている。通風通路27の一階床面12aには暖房用吸入口34が設けられており、この暖房用吸入口34から通風通路27の空気が吸入されるようになっている。一方、暖房用通気ダクト33は、暖房装置32から排気された暖気が流通するダクトである。一階床面12aには居室21,22及び一階廊下25ごと、それぞれ一対の暖房用吹出し口35が設けられており、これら各暖房用吹出し口35と前記暖房装置32とが暖房用通気ダクト33によって接続されている。このため、暖房装置32から排出された暖気は、暖房用通気ダクト33を流通した後、各暖房用吹出し口35から吹き出すようになっている。
前記暖房装置32には、同暖房装置32を制御する暖房用制御装置36が設けられている。暖房用制御装置36は例えば暖房装置32と一体的に設けられ、通風通路27の内壁面に設けられた集中操作装置51と接続されている。集中操作装置51には暖房制御のオン・オフを操作する暖房スイッチ、冷房制御のオン・オフを操作する冷房スイッチ、室温を設定する設定スイッチ等が設けられている。暖房用制御装置36は、その暖房スイッチのオン操作に基づいて暖房装置32の駆動制御を開始する。本実施の形態では暖房用制御装置36によって暖房用制御手段が構成されている。
暖房用制御装置36には、一階廊下25、すなわち通風通路27の一階部分12に設けられた最下階温度検出手段としての第1温度センサ37が接続されている。暖房スイッチがオン操作されると、第1温度センサ37により検出された通風通路27の一階部分12における温度情報が暖房用制御装置36に随時入力される。暖房用制御装置36は第1温度センサ37からの温度情報に基づき、通風通路27の温度が設定スイッチによって設定された温度と一致するように、暖房装置32を制御する。
また、天井裏空間16には冷房設備41が設けられている。冷房設備41は冷房装置42と、冷房用通気ダクト43とを備えている。冷房装置42は吸入した空気を冷やして排出する装置であり、通風通路27の上方に配置されている。通風通路27の二階天井面13bには冷房用吸入口44が設けられており、この冷房用吸入口44から通風通路27の空気が吸入されるようになっている。一方、冷房用通気ダクト43は、冷房装置42から排気された冷気が流通するダクトである。二階天井面13bには、居室23,24及び二階廊下26ごと、それぞれ一対の冷房用吹出し口45が設けられており、これら各冷房用吹出し口45と前記冷房装置42とが冷房用通気ダクト43によって接続されている。このため、冷房装置42から排出された冷気は、冷房用通気ダクト43を流通した後、各冷房用吹出し口45から吹き出すようになっている。
前記冷房装置42には、同冷房装置42を制御する冷房用制御装置46が設けられている。冷房用制御装置46は例えば冷房装置42と一体的に設けられ、前記集中操作装置51と接続されている。そして、前述した集中操作装置51の冷房スイッチのオン操作に基づいて、冷房用制御装置46は冷房装置42の駆動制御を開始する。本実施の形態では冷房用制御装置46によって冷房用制御手段が構成されている。
冷房用制御装置46には、二階廊下26、すなわち通風通路27の二階部分13に設けられた最上階温度検出手段としての第2温度センサ47が接続されている。冷房スイッチがオン操作されると、第2温度センサ47により検出された通風通路27の二階部分13における温度情報が冷房用制御装置46に随時入力される。冷房用制御装置46は第2温度センサ47からの温度情報に基づき、通風通路27の温度が設定スイッチによって設定された温度と一致するように、冷房装置42を制御する。
さらに、一階内壁部17の上部には、一階廊下25と一階部分12の各居室21,22とを連通する壁部熱伝導手段としての一階連通孔61が設けられている。そして、この一階連通孔61により、通風通路27と一階部分12の各居室21,22との間が通気状態となっている。また、二階内壁部18の下部には、二階廊下26と二階部分13の各居室23,24とを連通する壁部熱伝導手段としての二階連通孔62が設けられている。そして、この二階連通孔62により、通風通路27と二階部分の各居室23,24との間が通気状態となっている。
なお、両連通孔61,62についてはその詳細な説明を省略するが、各種の構成を採用することが可能である。例えば、両内壁部17,18に設けられた単なる貫通孔や欄間でもよいし、各居室21〜24への出入りする際に開閉される扉体又は窓用開口部が開放された状態であってもよい。また、扉体に設けられた換気用ガラリのスリットであってもよいし、扉体の下部がカットされて形成されるアンダーカット部分であってもよい。
次に、以上のように構成された建物10において、全館空調を行う場合の作用を図2及び図3に基づいて説明する。なお、図2は暖房時における空気の流れと建物を概略的に示す概略図であり、図3は冷房時における空気の流れと建物を概略的に示す概略図である。
建物10の住人が全館空調の実施を要求する場合、住人は集中操作装置51の暖房スイッチ又は冷房スイッチをオン操作する。最初に、暖房スイッチがオン操作された場合について説明し、その後で冷房スイッチがオン操作された場合について説明する。
暖房スイッチがオン操作されると、暖房用制御装置36は暖房装置32を駆動する。すると、図2に示されているように、通風通路27の一階床面12aに設けられた暖房用吸入口34から通風通路27の空気が吸い込まれる。そして、その空気は暖房装置32によって暖められて同暖房装置32から排出される。その排出された暖気は一階床面12aに設けられた各暖房用吹出し口35に暖房用通気ダクト33を通じて送られ、その各暖房用吹出し口35から吹き出す。
そして、暖房用制御装置36は、第1温度センサ37によって検出された通風通路27の温度が設定温度と一致するように、暖房装置32を駆動させたり、その駆動を停止させたりする制御を実施する。これにより、一階部分12の各居室21,22、及び一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27が設定温度となるように暖房される。
この場合、一階部分12の各居室21,22では一階床面12aから暖気が吹き出すために自然対流が発生し、その自然対流によって各居室21,22の温度分布は室内全体にわたって均一化される。また、通風通路27でも一階床面12aから暖気が吹き出し、さらに一階部分12の各居室21,22から一階連通孔61を通じて暖気が流入するために自然対流が発生し、その自然対流によって通風通路27の温度分布は通路全体にわたって均一化される。
そして、通風通路27の暖気は、二階連通孔62を通じて二階部分13の各居室23,24に流入する。この暖気の導入により、二階部分13の各居室23,24も暖房される。この場合、二階連通孔62は二階内壁部18の下部に設けられているため、暖気は各居室23,24の下部から導入される。このため、二階部分13の各居室23,24においても自然対流が発生し、その自然対流によって各居室23,24内の温度分布は均一化される。
このようにして、一階部分12の各居室21,22、二階部分13の各居室23,24及び一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27の全域が設定温度となるように暖房されることで、建物10の全館空調が行われる。
一方、冷房スイッチがオン操作されると、冷房用制御装置46は冷房装置42を駆動する。すると、図3に示されているように、通風通路27の二階天井面13bに設けられた冷房用吸入口44から通風通路27の空気が吸い込まれる。そして、その空気は冷房装置42によって冷やされて同冷房装置42から排出される。その排出された冷気は二階天井面13bに設けられた各冷房用吹出し口45に冷房用通気ダクト43を通じて送られ、その各冷房用吹出し口45から吹き出す。
そして、冷房用制御装置46は、第2温度センサ47によって検出された通風通路27の温度が設定温度と一致するように、冷房装置42を駆動させたり、その駆動を停止させたりする制御を実施する。これにより、二階部分13の各居室23,24、及び一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27は設定温度となるように冷房される。
この場合、二階部分13の各居室23,24では二階天井面13bから冷気が吹き出すために自然対流が発生し、その自然対流によって各居室23,24の温度分布は室内全体にわたって均一化される。また、通風通路27でも二階天井面13bから冷気が吹き出し、さらに二階部分13の各居室23,24から二階連通孔62を通じて冷気が流入するために自然対流が発生し、その自然対流によって通風通路27の温度分布は通路全体にわたって均一化される。
そして、通風通路27の冷気は、一階連通孔61を通じて一階部分12の各居室21,22に流入する。この冷気の導入により、一階部分12の各居室21,22も冷房される。この場合、一階連通孔61は一階内壁部17の上部に設けられているため、冷気は各居室21,22の上部から導入される。このため、一階部分12の各居室21,22においても自然対流が発生し、その自然対流によって各居室21,22内の温度分布は均一化される。
このようにして、一階部分12の各居室21,22、二階部分13の各居室23,24及び通風通路27の全域が冷房されることで、建物10の全館空調が行われる。
以上の構成により、第1の実施形態によれば、以下に示す有利な効果が得られる。
本実施の形態では、暖房設備31により、一階床面12aの暖房用吹出し口35から暖気が吹き出すとともに、二階連通孔62を通じて通風通路27から暖房用吹出し口35のない二階部分13の各居室23,24に暖気が導入されて、全館暖房がなされる。また、冷房設備41により、二階天井面13bの冷房用吹出し口45から冷気が吹き出すとともに、一階連通孔61を通じて通風通路27から冷房用吹出し口45のない一階部分12の各居室21,22に冷気が導入されて、全館冷房がなされる。
そして、前記暖房設備31は一階部分12の床下空間15に設けられ、前記冷房設備41は二階部分13の天井裏空間16に設けられている。このため、この建物10では、上下境界部14に暖房設備31や冷房設備41が設けられていない。これにより、上下境界部14に水平ダクトを設置するスペースを確保するために、一階部分12の各居室21,22を下がり天井としたり、二階部分13の各居室23,24の床面高さを高くするしたりする必要はなくなる。その結果、一階部分12及び二階部分13の空間領域を狭くすることなく、十分な広さを確保できるし、特別な設計や専用の造作等も不要として設置コストを低減できる。
したがって、本実施の形態の建物10によれば、暖房設備31や冷房設備41が上下境界部14に設けられなくても、全館空調を実現できる。
また、上下境界部14に暖房設備31や冷房設備41が設けられていないため、内壁部17,18に竪ダクトが設置されることもない。これにより、竪ダクトを内壁部に設置すると設置工事が煩雑となるという問題点を解消でき、暖房設備31及び冷房設備41の設置コストを低減できる。
さらに、建物10はユニット式建物であるが、床下空間15や天井裏空間16には暖房設備31や冷房設備41を設置するだけの余裕があるため、建物ユニットの梁貫通孔を利用しなくても通気ダクト33,43を設置することが可能である。そして、前述したように、上下境界部14に暖房設備31や冷房設備41が設けられないため、その上下境界部14に通気ダクト33,43が設けられることもない。このため、ダクト径の変化による圧力損失を考慮する必要がなくなる。
本実施の形態では、全館暖房又は全館冷房に際し、暖気の吹き出しは一階床面12aからだけであり、冷気の吹き出しは二階天井面13bからだけである。それにもかかわらず、二階部分13の各居室23,24も暖房されたり、一階部分12の各居室21,22も冷房されたりする。これは、それら各居室21〜24に隣接する通風通路27の温度分布が自然対流によって通路全体にわたって均一化され、その通風通路27から暖気又は冷気が導入されるからである。このように、通風通路27における自然対流を利用することで、空調対象となる全空間部が空調設備によって空調されなくても全館空調が可能となるため、全空間部を空調設備によって空調していた従来の全館空調に比べて、エネルギーの消費を低減できる。
本実施の形態では、暖房用吹出し口35は一階床面12aに設けられ、冷房用吹出し口45は二階天井面13bに設けられている。このため、もっとも効率よく自然対流を発生させることができる。
本実施の形態では、暖房用吸入口34は通風通路27の一階床面12aに設けられ、冷房用吸入口44は通風通路27の二階天井面13bに設けられている。空気の吸い込みによって発生する空気流は、暖房時に下向きの流れとなり、冷房時に上向きの流れとなり、その流れは暖気又は冷気の吹き出しと上下が反対の方向となっている。これにより、暖気は上昇し、冷気は下降するという自然対流を促進させることができる。
本実施の形態では、通風通路27に設けられた第1温度センサ37又は第2温度センサ47によって暖房装置32又は冷房装置42が制御される。冷気又は暖気がこもりがちな居室21〜24と異なり、通風通路27は、自然対流によって冷気又は暖気が他の階部分に流れる空間である。そのような通風通路27の温度に基づいて冷暖房が制御されることにより、居室21〜24の温度に基づく制御に比べて温度制御を好適に行える。
また、自然対流によって暖気は上昇し、冷気は下降することから、下階部分ほど暖房が必要であり、上階ほど冷房が必要となる。本実施形態では、そのような冷暖房が必要な階部分の温度に基づいて、暖房装置32又は冷房装置42が制御される。これにより、空調による快適性を高めることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の別の実施の形態を図4及び図5を参照しつつ説明する。この実施の形態は、第1の実施形態における一階連通孔61及び二階連通孔62の代わりに、ファン装置が一階内壁部17及び二階内壁部18に設けられたものである。このファン装置に関する構成以外は上記第1の実施形態と同じであるから、以下では、その異なる構成を中心に説明する。なお、図4は、ファン装置が設けられた建物の概略図である。
図4に示されているように、建物10の一階内壁部17及び二階内壁部18には、各居室21〜24に対応する壁部熱伝導手段としてのファン装置F1〜F4がそれぞれ設けられている。各ファン装置F1〜F4は、20〜200m3/h程度の風量を有する装置であり、各居室21〜24の広さに合わせて最適な風量のファン装置Fが選択されて設置されている。なお、風量が可変となる装置を用いることも可能である。そして、これら各ファン装置F1〜F4により、通風通路27の空気が各居室21〜24へ送気される。
各ファン装置F1〜F4は、ファン制御手段としてのファン制御装置71と接続されている。なお、図4では、便宜上、第3居室23に設けられたファン装置F3についてのみ、ファン制御装置71との接続状態が図示されている。ファン制御装置71は、例えば集中操作装置51と一体的に設けられ、集中操作装置51の冷房スイッチ又は暖房スイッチのオン操作に基づいて、各ファン装置F1〜F4の駆動を個別に制御する。
ファン制御装置71には、通風通路27に設けられた前記第1温度センサ37及び第2温度センサ47が接続されている。本実施の形態では、これら両温度センサ37,47が第1温度検出手段となっている。暖房スイッチがオン操作された場合、第2温度センサ47により検出された通風通路27の二階部分13における温度情報がファン制御装置71に随時入力される。また、冷房スイッチがオン操作された場合、第1温度センサ37により検出された通風通路27の一階部分12における温度情報がファン制御装置71に随時入力される。そして、その温度情報に基づき、通風通路27の温度が設定温度に保たれていると判断した場合に、ファン制御装置71は各ファン装置F1〜F4の駆動制御を開始する。
また、ファン制御装置71には、各居室21〜24に設けられた第2温度検出手段としての居室温度センサ72がそれぞれ接続されている。なお、図4では、便宜上、第3居室23に設けられた居室温度センサ72についてのみ、ファン制御装置71との接続状態が図示されている。そして、暖房スイッチがオン操作された場合、暖房用吹出し口35がない、二階部分13の各居室23,24の温度が居室温度センサ72により検出され、その温度情報がファン制御装置71に随時入力される。ファン制御装置71は、この温度情報を基に、第2温度センサ47によって検出された通風通路27の二階部分13の温度と所定値(例えば、3℃)以上の温度差又は所定値を超える温度差が生じた居室23,24について、対応するファン装置F3,F4を駆動させる。
一方、冷房スイッチがオン操作された場合、冷房用吹出し口45がない、一階部分12の各居室21,22の温度が居室温度センサ72により検出され、その温度情報がファン制御装置71に随時入力される。ファン制御装置71は、その温度情報を基に、第1温度センサ37によって検出された通風通路27の一階部分12の温度と所定値(例えば、3℃)以上の温度差又は所定値を超える温度差が生じた居室21,22について、対応するファン装置F1,F2を駆動させる。
上記の如く構成された建物10で実施される、ファン装置Fを用いた全館空調の作用は次の通りである。なお、図4には暖房時における空気の流れが概略的に示され、図5には冷房時における空気の流れが概略的に示されている。
暖房スイッチがオン操作された場合、図4に示されているように、暖房用吹出し口35から暖気が吹き出すとともに、自然対流が発生する。これにより、一階部分12の各居室21,22、及び一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27が設定温度となるように暖房される。通風通路27が設定温度に保たれている状態で、二階部分13の各居室23,24と通風通路27との間で所定値以上の温度差又は所定値を超える温度差が生じていると、ファン制御装置71はその温度差が生じた居室23,24に対応するファン装置F3,F4を駆動させる。これにより、通風通路27の空気が暖気となって温度差が生じた居室23,24に送気される。
そして、ファン制御装置71は、第3居室23及び第4居室24の温度が、通風通路27の温度と所定値より小さい又は所定値以内の温度差となるように、ファン装置F3,F4を駆動させたり、その駆動を停止させたりする制御を実施する。これにより、暖房用吹出し口35のない第3居室23及び第4居室24に暖気が導入され、当該各居室23,24も暖房される。
一方、冷房スイッチがオン操作された場合、図5に示されているように、冷房用吹出し口45から冷気が吹き出すとともに、自然対流が発生する。これにより、二階部分13の各居室23,24、及び一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27が設定温度となるように冷房される。通風通路27が設定温度に保たれている状態で、一階部分12の各居室21,22と通風通路27との間で所定値以上の温度差又は所定値を超える温度差が生じていると、ファン制御装置71はその温度差が生じた居室21,22に対応するファン装置F1,F2を駆動させる。これにより、通風通路27の空気が冷気となって温度差が生じた居室21,22に送気される。
そして、ファン制御装置71は、第1居室21及び第2居室22の温度が、通風通路27の温度と所定値より小さい又は所定値以内の温度差となるように、ファン装置F1,F2を駆動させたり、その駆動を停止させたりする制御を実施する。これにより、冷房用吹出し口45のない第1居室21及び第2居室22に冷気が導入され、当該各居室21,22も冷房される。
以上の構成により、この第2の実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加えて、以下に示す有利な効果が得られる。
本実施の形態では、暖房用吹出し口35からの暖気の吹き出しとともに、ファン装置F3,F4により、通風通路27から暖房用吹出し口35のない二階部分13の各居室23,24に暖気が導入されて、全館暖房がなされる。また、冷房用吹出し口45からの冷気の吹き出しとともに、ファン装置F1,F2により、通風通路27から冷房用吹出し口45のない一階部分12の各居室21,22に冷気が導入されて、全館冷房がなされる。このように、ファン装置Fを用いることにより、冷気又は暖気が強制的に送られるため、熱伝導が促進されて全館空調の効率を高めることができる。
本実施の形態では、通風通路27と各居室21〜24との間の温度差が所定値以上となった場合又は所定値を超えた場合、自動的にファン装置Fが駆動されて当該居室21〜24に冷気又は暖気が送り込まれる。これにより、住人の利便性を高めることができる。
本実施の形態では、通風通路27が設定温度となったことを条件として、ファン制御装置71は各ファン装置F1〜F4の駆動制御が開始されている。通風通路27は一階部分12と二階部分13とにまたがる比較的広い空間であるため、吹出し口35,45から暖気又は冷気が吹き出し始めてから、設定温度となるまでにある程度の時間を要する。このため、通風通路27が設定温度に保たれてから各ファン装置F1〜F4を駆動するようにすれば、十分に冷暖房された空気が各居室21〜24に送り込まれることになり、冷暖房の効率を高めることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の別の実施の形態を図6及び図7を参照しつつ説明する。この実施の形態は、第1の実施形態における一階連通孔61及び二階連通孔62の代わりに、パスダクトが上下境界部14に設けられたものである。このパスダクトに関する構成以外は上記第1の実施形態と同じであるから、以下では、その異なる構成を中心に説明する。なお、図6及び図7は、パスダクトが設けられた建物の概略図である。
図6及び図7に示されているように、建物10の上下境界部14には、境界部熱伝導手段としてのパスダクト81が設けられている。パスダクト81は上下に隣接する居室同士を連通するダクトであり、上下方向に沿って設けられている。そして、このパスダクト81により、第1居室21と第3居室23とが連通され、第2居室22と第4居室24とが連通されている。
なお、パスダクト81の設置数は特に限定されず、上下に隣接する一組の居室ごとに複数のパスダクト81が設けられた構成としてもよい。
このようなパスダクト81が設けられていることにより、次のような作用が得られる。なお、図6には暖房時における空気の流れが概略的に示され、図7には冷房時における空気の流れが概略的に示されている。
図6に示されているように、暖房時には、暖房用吹出し口35から暖気が吹き出すとともに、自然対流が発生し、一階部分12の各居室21,22、及び一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27が暖房される。すると、暖気は自然に上昇するため、一階部分12の各居室21,22の暖気がパスダクト81を通じて二階部分13の各居室23,24へ自然に導入される。これにより、暖房用吹出し口35のない二階部分13の各居室23,24も暖房される。
また、図7に示されているように、冷房時には、冷房用吹出し口45から冷気が吹き出すとともに、自然対流が発生し、二階部分13の各居室23,24、及び一階部分12と二階部分13とにまたがる通風通路27が冷房される。すると、冷気は自然に下降するため、二階部分13の各居室23,24の冷気がパスダクト81を通じて一階部分12の各居室21,22へ自然に導入される。これにより、冷房用吹出し口45のない一階部分12の各居室21,22も冷房される。
以上の構成により、この第3の実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加えて、以下に示す有利な効果が得られる。
本実施の形態では、暖房用吹出し口35からの暖気の吹き出しとともに、パスダクト81を通じて、一階部分12の各居室21,22から暖房用吹出し口35のない二階部分13の各居室23,24に暖気が導入されて、全館暖房がなされる。また、冷房用吹出し口45からの冷気の吹き出しとともに、パスダクト81を通じて、二階部分13の各居室23,24から冷房用吹出し口45のない一階部分12の各居室21,22に冷気が導入されて、全館冷房がなされる。この場合、自然対流を利用して他階の居室へ冷気又は暖気を導入しているためその導入に際して動力を必要とせず、熱伝導に関するエネルギー消費を抑制できる。
また、パスダクト81は上下方向に沿って設けられているため、自然対流の流れの向きに合致している。このため、水平方向に向けて冷気又は暖気が導入される第1実施形態の連通孔61,62と比べて、冷気又は暖気が導入されやすくなっている。これにより、全館空調の効率を高めることができる。
なお、以上説明した第1乃至第3の実施形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
(第1の実施形態の別例)
上記第1の実施形態では、床下空間15に暖房設備31が設けられているが、暖房設備31が一階天井面12bよりも下に設けられた構成としてもよい。例えば、一階部分12に暖房装置32が設けられた空間を設けたり、暖房用通気ダクト33や吸入用ダクトを一階内壁部17に設置するようにしてもよい。
また、天井裏空間16に冷房設備41が設けられているが、冷房設備41が二階床面13aよりも上に設けられた構成としてもよい。例えば、二階部分13に冷房装置42が設けられた空間を設けたり、冷房用通気ダクト43や吸入用ダクトを二階内壁部18に設置するようにしてもよい。
上記第1の実施形態では、暖房用吹出し口35が一階床面12aに設けられているが、これは一階部分12に暖気が吹き出す位置に設けられていれば足りる。また、冷房用吹出し口45は二階天井面13bに設けられているが、二階部分13に冷気が吹き出す位置に設けられていれば足りる。
もっとも、暖房用吹出し口35は一階床面12aや、一階内壁部17の一階床面12a近傍等の一階床部に設けられていることが好ましい。また、冷房用吹出し口45は二階天井面13bや、二階内壁部18の二階天井面13b近傍等の最上階天井部に設けられていることが好ましい。これらの構成を採用することにより、暖気又は冷気が吹き出される居室21〜24に自然対流を発生させることができるし、通風通路27でも通路全体にわたる自然対流を発生させることができる。
上記第1の実施形態では、暖房用吸入口34が一階床面12aに設けられ、冷房用吸入口44が二階天井面13bに設けられているが、これら各吸入口34,44の設置位置は特に限定されない。例えば、暖房用吸入口34を一階内壁部17に設けて、一階部分12の居室21,22の空気を吸入するようにしてもよいし、冷房用吸入口44を二階内壁部18に設けて、二階部分13の居室23,24の空気を吸入するようにしてもよい。
上記第1の実施形態では、第1温度センサ37及び第2温度センサ47が通風通路27に設けられているが、居室21〜24に設けられた構成としてもよい。また、両温度センサ37,47を共通化して、一つの温度センサだけが設けられた構成としてもよい。このように一つの温度センサで通風通路27の温度を検出する場合、その温度センサは例えば一階部分12と二階部分13との境界部分に設けられることが好ましい。
上記第1の実施形態では、暖房設備31は暖気を吹き出すことにより空間部に温熱を与える設備であるが、床部を暖めることで空間部に温熱を与える床暖房設備を暖房設備としてもよい。同様に、冷房設備41は冷気を吹き出すことにより空間部に冷熱を与える設備であるが、天井部を冷やすことで空間部に冷熱を与える天井冷房設備を冷房設備としてもよい。
上記第1の実施形態で、通風通路27の二階天井面13bに、シーリングファン(天井扇)74が設けられた構成としてもよい。これにより、通風通路27の温度分布をより均一化させることができる。
上記第1の実施形態では、建物としてユニット式の二階建て建物10を例として説明したが、軸組工法やツーバイフォー工法等の他の工法で建てられた建物でもよい。また、三階建て以上の建物であってもよい。
(第2の実施形態の別例)
上記第2の実施形態では、ファン制御装置71は温度差に基づいてファン装置Fの駆動を制御しているが、比エンタルピー差に基づいて制御するようにしてもよい。この場合、比エンタルピーは室温及び湿度から算出される。そして、通風通路27と各居室21〜24との間の比エンタルピー差が所定値(例えば、2.0kJ/kg)以上となった場合又は所定値を超えた場合に、ファン装置Fを駆動させることにより、温度だけでなく湿度に関する空調を行うことができる。
上記第2の実施形態では、吹出し口35,45のない居室21〜24について、その在室状況にかかわらず通風通路27からファン装置Fによって暖気又は冷気が導入されているが、人が在室する場合にだけ導入されるようにしてもよい。人が在室していない居室21〜24に暖気又は冷気を導入して快適性を保つ必要性は低いため、人が在室する場合にだけ暖気又は冷気が導入されるようにすれば、エネルギーの消費を抑制できる。
これを実現させる一つの構成例として、各居室21〜24に人感センサを設け、ファン制御装置71は、その人感センサからの人検出情報に基づいて人の在室状況を把握する構成が考えられる。また、別の構成例として、住人ごとに所持される携帯型通信装置から無線送信される住人の識別情報をファン制御装置71が受信することで、ファン制御装置71が人の在室状況を把握する構成も考えられる。
後者の例においては、住人の識別情報と対応付けて、室温等に関する住人ごとの嗜好情報を携帯型通信装置に記憶させ、ファン制御装置71は受信した住人固有の嗜好情報に基づいてファン装置Fの駆動を制御するようにしてもよい。これにより、住人が在室する居室21〜24について、当該住人の嗜好に合った空調を行うことができる。
また、前述した後者の例においては、吹出し口35,45のない居室21〜24における住人ごとの一日の在室状況を、ファン制御装置71が有する記憶装置に随時記録し、その記録に基づいて住人ごとの在室スケジュールを作成してもよい。そして、この在室スケジュールに基づき、住人の入室に先立ってファン装置Fの駆動制御を開始させるようにすれば、各居室21〜24は住人が入室する前に予め空調された状態となるため、快適性と利便性を高めることができる。
上記第2の実施形態では、ファン制御装置71は温度差が予め設定された所定値以上となった場合又は所定値を超えた場合にファン装置Fを自動的に駆動させているが、それとともに又はそれに代えてファン装置Fの駆動が手動で制御されるようにしてもよい。この場合、各居室21〜24の内壁面に手動操作用の開始スイッチや停止スイッチを備えた操作装置を設置し、それら各種スイッチの操作に基づいて、ファン制御装置71はファン装置Fの駆動を制御する。これにより、住人は自己の嗜好に基づいた空調を行うことができる。
(第3の実施形態の別例)
上記第3の実施形態では、境界部熱伝導手段としてパスダクト81が設けられているが、例えば、ファン装置が設けられた構成としたり、上下境界部14自身の熱伝導性が高められた構成としたりしてもよい。
上記第3の実施形態では、一階内壁部17及び二階内壁部18に、連通孔61,62等の壁部熱伝導手段が設けられていないが、上下境界部14にパスダクト81が設けられた構成に、壁部熱伝導手段が併せて設けられた構成としてもよい。これにより、内壁部17,18と上下境界部14の両者に熱伝導手段が設けられることになり、吹出し口35,45のない居室の冷房又は暖房の効率を高めることができる。
(その他の別例)
上記第1乃至第3の実施形態では、内壁部17,18に連通孔61,62やファン装置Fを設けたり、上下境界部14にパスダクト81を設けたりして、吹出し口35,45のない居室へ熱伝導させているが、それらを省略してもよい。なぜなら、自然対流により、二階部分13の各居室23,24は元々弱暖状態にあり、一階部分12の各居室21,22は元々弱冷状態にあるからである。これにより、空調対象となる空間を減らすことができるから、エネルギーの消費を低減させることができる。
10…建物、12…一階部分(最下階部分)、12a…一階床面(最下階床部)、12b…一階天井面(最下階天井面)、13…二階部分(最上階部分)、13a…二階床面(最上階床面)、13b…二階天井面(最上階天井部)、14…上下境界部、15…床下空間、16…天井裏空間、17…一階内壁部、18…二階内壁部、21…第1居室(空間部)、22…第2居室(空間部)、23…第3居室(空間部)、24…第4居室(空間部)、17…通風通路、31…暖房設備、32…暖房装置、36…暖房用制御装置(暖房用制御手段)、37…第1温度センサ(最下階温度検出手段、第1温度検出手段)、41…冷房設備、42…冷房装置、46…冷房用制御装置(冷房用制御手段)、47…第2温度センサ(最上階温度検出手段、第1温度検出手段)、61…一階連通孔(壁部熱伝導手段)、62…二階連通孔(壁部熱伝導手段)、71…ファン制御装置(ファン制御手段)、72…居室温度センサ(第2温度検出手段)、81…パスダクト(境界部熱伝導手段)、F…ファン装置(壁部熱伝導手段)。