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JP5343433B2 - 高強度鋼板用の連続鋳造鋳片およびその連続鋳造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板等の高強度鋼板用の素材である連続鋳造鋳片およびその連続鋳造方法に関する。
自動車用素材として用いられる鋼板は、軽量化による環境負荷低減を目的として高強度化が図られており、特に540MPa以上の引張強度を有する鋼板のニーズが高まっている。自動車用の熱延鋼板は、使用される部位により要求される特性が異なり、高強度および高靱性であるとともに、良好な深絞り性、張り出し性、穴拡げ性または曲げ性といった加工性をも具備することが要求される。
成品加工の最終段階である成形プロセスにおいては、曲げ成形の頻度が最も高く、その組み合わせによって様々な形状の部品に加工されることから、曲げ成形性が良好である必要がある。さらに、部品として使用されることから曲げ加工後の表面性状も良好であることが必要である。
高強度鋼板の曲げ性の改善については、従来より鋼組織の制御の面からアプローチがなされている。例えば特許文献1では、鋼板を構成する組織のうち、低温変態生成相の硬さを低下させ、フェライト相との硬度差を小さくすることが良いとされている。
一方、特許文献2や特許文献3には、フェライトの結晶粒を微細化させると、曲げ性と同様に局部変形能が必要な伸びフランジ性と高強度化とを両立できることが開示されている。
しかしながら、高強度化を目的としてMnを多量に添加した高強度鋼板を製造する場合には、連続鋳造鋳片の凝固過程を考慮することが必要であり、これについては特許文献1〜3では検討されていない。
Mnを多量に添加した溶鋼の凝固過程においては、Mnの平衡分配係数が小さいことから、偏析により、凝固後の連続鋳造鋳片に見られるデンドライト組織の樹間ではMn濃度が上昇し、デンドライトの樹芯ではMn濃度が低下する。このため、連続鋳造鋳片は、デンドライトの樹間と樹芯のMn濃度が異なる領域が層状に形成されることになる。
このように、凝固過程における偏析により、凝固組織内で局所的に組成が変動し、特に、低温変態相の生成に大きく影響するMn濃度が周期的に変動すると、連続鋳造鋳片またはこれを熱間圧延した熱延鋼板において、拡散熱処理によるMn濃度の均一化が十分でない場合には、Mn濃度の変動に対応して組織も不均一になる。
したがって、特許文献1に開示された技術では、鋼板全体でフェライト相および低温変態相の硬さ自体を精緻に制御することが極めて困難であるだけでなく、局所的な組成の変動に対応した不均一組織により、加工部の表面に目視によっても観察されるような顕著な凹凸が出現する。そして、その凹凸が不均一変形をさらに助長し、割れを誘発し、曲げ性そのものを劣化させる。また、割れに至らない場合であっても、加工部に凹凸が存在すると、外観不良となるだけでなく、部品としての衝突性能も劣化する。部品としての衝突性能とは、鋼板をプレス成形して加工した部品が、衝突時に強度を確保しながら変形することでエネルギーを吸収する能力を意味する。
また、凝固過程における偏析によって、相変態現象も局所的に変化し、結晶粒径も不均一となるので、特許文献2や特許文献3に開示された技術を用いても、曲げ性を改善することができない。とりわけ、これらの文献に記載の技術では、鋼中に偏析し易いMnやNiを多量に添加するため、上述のように成形時の曲げ性はもちろん、部品としての衝突性能に劣ることが容易に予想される。
組織均一化の観点からは、単相組織化という究極的なアプローチがあり、例えば特許文献4には、究極の均一組織であるマルテンサイト単相組織にすることによって、伸びフランジ性および曲げ性を向上できることが記載されている。しかしながら、特許文献4に開示された技術のように、鋼組織をマルテンサイト単相としたのでは、相変態時に生じた起伏により鋼板の平坦性が損なわれ、寸法精度が必要な自動車部品への適用が困難となる。
以上のことから、連続鋳造鋳片を圧延した鋼板において、平坦性を維持しつつ、曲げ性と高強度化とを両立させるためには、高強度化のためにMnを多量に含有させながら、均一な組織を得るという、見かけ上、相反する特性を両立させなければならないことがわかる。
均一組織を得る方法として、不均一組織の起源である凝固時の成分偏析自体を拡散によって解消するというアプローチがなされている。例えば特許文献5には、鋼材を1250℃以上の高温で10時間以上の長時間保持する溶体化処理を行うことによって、成分偏析が低減され、鋼材が均質化されることが記載されている。しかしながら、特許文献5に記載されているような、高温で長時間保持するプロセスは、著しいコスト増大および生産性の低下を招くため、現実的ではない。
特開昭62−13533号公報(特許請求の範囲および第4頁右上欄) 特開2004−211126号公報(特許請求の範囲、段落[0014]、[0047]および[0049]) 特開2004−250774号公報(特許請求の範囲および段落[0043]) 特開2002−161336号公報(特許請求の範囲、段落[0042]、[0058]および[0062]) 特開平4−191322号公報(特許請求の範囲および第2頁) Mizukami、外2名、「High Temperature Deformation Behavior of Peritectic Carbon Steel during Solidification」、ISIJ International、社団法人日本鉄鋼協会、Vol.42(2002)No.9、p.964−97338
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、平坦性を有するとともに、高強度化に必要なMnを多量に含有しても均一な組織を有し、曲げ加工時の表面性状に優れた高強度鋼板を得ることができる連続鋳造鋳片、およびその鋳造方法を提供することにある。
連続鋳造鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態を呈している。このデンドライトは、凝固過程における溶質元素の拡散に起因して形成され、溶質元素は、その平衡分配係数に依存して、デンドライトの樹間部または樹芯部において濃化する。高強度鋼板に含有されるMnは、平衡分配係数が小さいことから樹間部において濃化し、樹芯部での濃度は低下する。
この連続鋳造鋳片を素材として高強度鋼板を製造する場合、連続鋳造後の鋳片を加熱炉内において1200〜1300℃程度で数時間保持した後、熱間圧延工程および冷間圧延工程において圧延する。
本発明者らは、詳細な実験および分析により、連続鋳造鋳片のデンドライト組織に形成されるMnの偏析は、通常の加熱炉操業における温度および時間の範囲内では、拡散により解消することができず、その後の熱間圧延工程および冷間圧延工程を経ても偏析が残存することを明らかにした。
特に、鋼板表面に発生するすじ模様が、連続鋳造鋳片の表層部で形成されるデンドライトの1次アーム間隔と対応し、デンドライトの樹間のMn濃化部において硬質のパーライトまたはベイナイトが形成され、Mn濃度の低い樹芯部では軟質のフェライトが形成されることを明らかにした。このような、硬質のパーライトまたはベイナイトと、軟質のフェライトとが鋼板内において層状に形成されると、鋼板の曲げ加工時にすじ状の模様が発生することになる。
上記のすじ模様の原因であるMnの偏析を低減させる方法の一つとして、Mn濃度を低下させる方法が挙げられる。しかし、鋼板の強度を確保する観点から、偏析を解消する程度にまでMn濃度を低下させることはできない。
Mnの偏析を低減させる別の方法としてMnの拡散を促進させる方法が挙げられる。
熱伝導に関して、フーリエの法則が知られており、半無限固体における熱伝導の理論解析結果から、フーリエ数F0=α・t/x2が導かれている。ここで、α:熱拡散係数(m2/s)、t:時間(s)、x:熱移動距離(m)である。
このフーリエ数F0を、鋼の凝固過程における凝固組織と元素の拡散に適用することにより、拡散の効果を表す指標として一般に用いられる、フーリエ数Fr=D・t/λ2が得られる。ここで、D:溶質の拡散係数(cm2/s)、t:拡散時間(s)、λ:拡散距離(cm)である。そして、このλは、凝固組織におけるデンドライトの1次アーム間隔に等しい。また、拡散係数Dは温度Tの関数であり、一般に温度が高いほど大きい。
フーリエ数Frを用いて、実操業における操業因子の変更による効果について以下のような検討を行った。
フーリエ数Frを増大させるためには、拡散距離λを低減させるか、拡散係数Dまたは拡散時間tを増大させる必要がある。
拡散距離λは、上述のように連続鋳造鋳片で見られるデンドライトの1次アーム間隔に相当し、通常は鋳片の冷却速度の1/2乗に反比例して小さくなる。しかし、冪指数が1/2であることから、冷却速度が大きく変化してもλの変化は小さく、また、通常の連続鋳造方法において冷却速度を大きく変化させることは困難である。したがって、実際の操業においてλを低減させることは困難である。
拡散係数Dは、温度Tを高めることにより増大させることができる。操業においては、加熱炉の温度を上昇させることになる。しかし、通常の操業温度は1200〜1300℃程度であるため、これ以上に温度を高めると、コストの大幅な上昇になるだけでなく、加熱時のスケールの発生量の増加をともなって、歩留まりを低下させ、鋳片の表面性状の劣化による圧延後の鋼板の表面性状を悪化させることになる。したがって、実際の操業において温度Tを高めること、すなわち拡散係数Dを増大させることは事実上困難である。
拡散時間tを大きくすることは、操業においては、加熱炉内への装入時間を延長することになる。通常の加熱時間を数時間とすると、Mnの偏析を解消するにはその数倍を要すると試算される。現状の操業でこのような装入時間の延長を行うと、生産効率が大幅に低下することになるため、時間tを大きくすることも事実上困難である。
以上のことから、Mnの偏析を低減させるためにフーリエ数Frを増大させることも、現実的ではないことがわかる。
ところで、高強度鋼の凝固モードを平衡状態図から単純に検討すると、以下の3通りの凝固モードが考えられる。第1の凝固モードは、液相から初晶のδ相が晶出して液相およびδ相の2相共存状態となり、固相線温度における凝固完了時にδ相単相となり、さらに温度が低下するとδ/γ変態が生じてδ相とγ相の2相共存状態に移行するものである。第2の凝固モードは、液相から初晶のδ相が晶出して液相およびδ相の2相共存状態となり、続いてγ相が晶出または析出して3相共存状態となり、固相線温度における凝固完了時にδ相およびγ相の2相共存状態に移行するものである。そして、第3の凝固モードは、液相から初晶のδ相が晶出して液相およびδ相の2相共存状態となり、続いてγ相が晶出または析出して3相共存状態となった後、δ相が消滅して液相およびγ相の2相共存状態となり、固相線温度における凝固完了時にγ相単相の状態に移行するものである。
前述のように、デンドライト組織は溶質が再分配されながら形成されることから、拡散係数が組織の形成を支配していることがわかる。高強度鋼板において問題となるMnは、拡散係数がδ相中とγ相中とで異なり、δ相中での拡散係数の方が、γ相中での拡散係数よりも大きいことから、デンドライト組織の形成が完了する凝固終了時におけるδ相の割合を大きくすれば、Mnの拡散が進行しやすくなり、Mnの偏析が低減することになる。
そこで、本発明者らは、連続鋳造鋳片の凝固モードと最終製品である鋼板のすじ模様との関連に着目し、基礎的検討を行った。
まず、熱力学平衡計算ソフトThermo−Calcを用いて、Fe−0.1mass%C−2.5mass%Mn鋼のδ相およびγ相の存在割合と温度との関係を算出した。その結果、凝固完了時点(固相線温度)で凝固組織中のδ相の占める割合は約30%と小さいことが予測された。ただし、これは平衡状態についての計算値であり、溶質元素であるMnの拡散の影響は考慮されていないため、拡散現象と関連するすじ模様の発生に関する評価はできないと推測される。
次に、拡散の影響を検討するため、非特許文献1に記載の解析方法を用いて、拡散を考慮した凝固過程におけるδ相およびγ相の存在割合と温度との関係を算出した。Mnの拡散係数は、δ相では7.6×10-5×exp(−53640/RT)m2/s、γ相では5.5×10-6×exp(−59600/RT)m2/s、液相では4.4×10-92/sとした。
その結果、凝固完了時のδ相の割合は約50%であり、単純な平衡計算の結果とは異なる値となった。このことからも、凝固過程の現象は、平衡計算では正確に評価できないことがわかる。そこで、実際の凝固組織を評価の対象とすることにした。
一般に、凝固組織を評価する場合には、試料表面を鏡面研磨してからエッチングにより組織の顕出を行い、光学顕微鏡でこれを観察する。炭素鋼のデンドライト形状の凝固組織を顕出する場合には、ピクリン酸溶液が通常用いられる。ピクリン酸溶液を用いたエッチングでは、デンドライト樹間のMn濃化部のγ相がエッチングされ、光学顕微鏡で観察した際には黒く見え、エッチングされないδ相は白く見える。したがって、δ相とγ相の判別および割合の判定が可能であり、エッチング条件を同一とした場合には、複数の試料間でδ相とγ相の割合の比較が可能である。
表1に示す条件で連続鋳造鋳片について凝固組織を顕出し、倍率50倍の光学顕微鏡を介してCCDカメラで撮影し、画像解析により鋳片中のδ相とγ相の割合を算出した。
Figure 0005343433
本発明者らは、成分組成を変えた連続鋳造鋳片を用いて鋼板を製造し、その曲げ加工時においてすじ模様が発生するMn偏析比と、上述の解析により算出した鋳片中のδ相の割合の関係を明らかにし、すじ模様の抑制が可能となるδ相の割合を求めた。その結果、凝固完了時におけるδ相の割合が50%以上であればMn偏析比が1.12以下となり、鋼板の曲げ加工時にすじ模様が発生しないことがわかった。
ここで、Mn偏析比は、(デンドライト樹間のMn濃度(質量%))/(初期の溶鋼中のMn濃度(質量%))により定義し、デンドライト樹間のMn濃度の測定にはEPMAを用いた。EPMAによる測定時のビーム径は1μmとし、デンドライトの成長方向と垂直方向に、50mmの領域の線分析を行い、最大値をデンドライト樹間のMn濃度とした。
以上のように、鋼板のすじ模様が連続鋳造鋳片のデンドライト組織とその鋳片の相変態とに関連することに着目したアプローチは、本発明における調査研究が初めてであり、他に、この点につき報じた文献は見当たらない。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は下記の(1)に示す連続鋳造鋳片および(2)に示す連続鋳造方法にある。
(1)質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.005〜0.5%、Mn:3.1〜4.0%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜1.0%、N:0.01%以下、Mg:0.0001〜0.0015%およびTi:0.003〜0.50%を含有し、さらに、Nb:0.50%以下、Ca:0.01%以下およびREM:0.01%以下の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる組成を有し、固相線温度での凝固組織中のδ相の割合が50%以上であることを特徴とする高強度鋼板用の連続鋳造鋳片。
(2)上記(1)に記載の鋳片を製造するための連続鋳造方法であって、タンディッシュ内の溶鋼または鋳型内の溶鋼中に浸漬させた浸漬ランス内にMgならびにCaおよび/またはREMを含有する金属ワイヤーまたはロッドを挿入することにより、ランス内で金属蒸気および/または金属粒子を発生させ、該金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に添加することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
本発明において、「金属蒸気および/または金属粒子」とは、金属蒸気および/または、蒸発が不十分なために液体もしくは固体粒子として存在する金属粒子、または金属蒸気が凝縮して形成される金属粒子を意味する。また、「金属」とは、純金属および合金のいずれをも含む。
以下の説明では、鋼の成分組成についての「質量%(mass%)」を、単に「%」とも表記する。
本発明の鋳片は、引張強度540MPa以上の鋼板用の素材として好適であり、本鋳片を素材として用いることにより、鋼板の曲げ加工時における表面のすじ模様の発生を抑制することができるとともに、穴拡げ性、延性、材質の安定性についても良好な性能を発揮することが期待できる。
また、本発明の連続鋳造方法は、上記の鋼板用素材となる鋳片を製造するのに必要な、蒸気圧が高く融点の低い金属元素の適正量を溶鋼中に効率良く添加し、連続鋳造鋳片内に均一に分散させるための最適な連続鋳造方法である。
本発明の連続鋳造鋳片は、上述のとおり、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.005〜0.5%、Mn:2.0〜4.0%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜1.0%、N:0.01%以下、Mg:0.0001〜0.005%およびTi:0.003〜0.50%を含有し、さらに、Nb:0.50%以下、Ca:0.01%以下およびREM:0.01%以下の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる組成を有し、固相線温度での凝固組織中のδ相の割合が50%以上であることを特徴とする高強度鋼板用の連続鋳造鋳片である。以下、本発明の内容についてさらに詳細に説明する。
1.鋼組成の範囲および限定理由
C:0.03〜0.15%
Cは、鋼の強度を確保するのに必要な元素であり、その効果を得るには含有量を0.03%以上とする必要がある。しかし、含有量が0.15%を超えて高くなると、連続鋳造鋳片におけるδ相の割合が低下する。そこで、Cの適正範囲を0.03〜0.15%とした。
Si:0.005〜0.5%
Siは、固溶強化により強度を向上させるとともに、フェライト変態を促進して延性などを向上させる元素であり、その効果を得るには含有量を0.005%以上とする必要がある。しかし、含有量が0.5%を超えて高くなると、鋼板表面のめっきの濡れ性や密着性が低下する。そこで、Siの適正範囲を0.005〜0.5%とした。
Mn:2.0〜4.0%
Mnは、固溶強化により強度を向上させるとともに、鋼のAc3変態温度を低下させ、好適な焼鈍温度範囲を広げる効果も有する元素であり、その効果を得るには含有量を2.0%以上とする必要がある。しかし、含有量が4.0%を超えて高くなると、偏析に起因するすじ模様の発生が顕著になるだけではなく、フェライト変態が抑制され、延性が劣化する。そこで、Mnの適正範囲を2.0〜4.0%とした。
P:0.1%以下
Pは、鋼板の高強度化に有効な作用を有する元素であり、その効果を得るには含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、含有量が0.1%を超えて高くなると鋼板の溶接性が低下する。そこで、Pの適正範囲を0.1%以下に制限した。
S:0.01%以下
Sは、MnS介在物などを形成して鋼板の延性や穴拡げ性を低下させる元素である。このため、その含有量を0.01%以下に制限した。
Al:0.01〜1.0%
Alは、溶鋼の脱酸作用を有する元素であり、また、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させる作用を有する。これらの効果を両立させるためには含有量を0.01%以上とする必要がある。しかし、その含有量が1.0%を超えて高くなると、鋼中の粗大な酸化物系介在物の生成量が増加し、鋼板の表面性状や溶接性に悪影響を及ぼす。上記の理由から、その含有量の適正範囲を0.01〜1.0%とした。
N:0.01以下
Nは、一般には不可避的に含有される元素であるが、本発明においては、鋼板中にTi系、Nb系、またはTi−Nb複合系の窒化物や炭窒化物を形成させて鋼板の強度を上昇させるのに有効な元素である。その効果を得るには含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、過度に多く含有されると、粗大なTiNが形成され、曲げ性および穴拡げ性が劣化するので、その含有量は、0.01%以下とする必要がある。
Mg:0.0001〜0.005%
Mgは、溶鋼中の酸素と反応してMg酸化物を生成する。溶鋼中のMg酸化物としては、MgO単独の他にMgOとAl23、SiO2、Ti23などのうちの1種以上を含有するものが生成される。これらの酸化物は鋼中で微細に分散し、鋼板の加工性を向上させる。また、鋼中のSと反応してMgS化合物を生成し、鋼板の機械的特性を低下させるMnSの生成を抑制する効果もある。これらの効果を得るためには含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかし、その含有量が0.005%を超えて高くなると、鋼中の粗大な酸化物系介在物の生成量が増加し、鋼板の強度に悪影響を及ぼす。上記の理由から、その含有量の適正範囲を0.0001〜0.005%とした。
Ti:0.003〜0.5%
Tiは、主として炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を析出させ、その析出強化作用により、母材強度の向上や結晶粒径の微細化を促進し、鋼板の曲げ性の改善に有効な作用を有する元素である。その効果を十分に得るには含有量を0.003%以上とする必要がある。一方、その含有量が0.5%を超えて高くなると、鋼中に粗大な析出物や介在物が形成され、鋼の延性、靱性および加工性が低下する。上記の理由から、その含有量の適正範囲を0.003〜0.5%とした。
Nb、CaおよびREMについては、これらの成分元素のうち、1種または2種以上を、下記の含有量の範囲で含有させる。
Nb:0.50%以下
Nbは、主として炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を形成し、鋼板の高強度化に有効な作用を有する元素である。また、結晶粒の微細化に効果があるため、鋼板の曲げ性の向上にも有効な元素である。さらに、焼鈍後の冷却時のフェライト変態を著しく促進させるとともに、硬質な変態相の生成を抑制する作用を有する。しかし、過度に多く含有させても、上記の効果が飽和するとともに、コストも増大するので、含有量を0.50%以下とする。また、含有させる場合の好ましい下限は、0.001%である。
Ca:0.01%以下
Caは、鋼中のSと反応してCaSを生成し、鋼板の延性や穴拡げ性を低下させるMnSの生成を抑制する作用を有することから、鋼板のこれらの特性を向上させるために有効である。しかし、過度に多く含有させても、上記の効果が飽和するとともに、粗大な介在物を生成することから、かえって機械的特性を低下させる。そこで、含有量を0.01%以下とした。また、含有させる場合の好ましい下限は、0.0005%である。
REM:0.01%以下
REMは、鋼中のSと反応して硫化物を生成し、鋼板の機械的特性を低下させるMnSの生成を抑制する効果がある。しかし、過度に多く含有させても、上記の効果が飽和する。そこで、含有量を0.01%以下とした。ここでいうREMとは、Nd、Ce、Pr、Dy、SmおよびYの1種または2種以上を含有する化合物を意味する。また、含有させる場合の好ましい下限は、0.0001%である。
連続鋳造鋳片の鋼組成を上述の範囲とすることにより、固相線温度における凝固組織のδ相の割合を50%以上とすることができるため、Mnの偏析を低減させることができ、この鋳片を用いて製造した鋼板の曲げ加工時におけるすじ模様の発生を抑制することができる。
2.連続鋳造方法
本発明の連続鋳造方法は、前述の通り、タンディッシュ内の溶鋼または鋳型内の溶鋼中に浸漬させた浸漬ランス内にMgならびにCaおよび/またはREMを含有する金属ワイヤーまたはロッドを挿入することにより、ランス内で金属蒸気および/または金属粒子を発生させ、該金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に添加することを特徴とする。このような方法でMgならびにCaおよび/またはREMを添加することにより、これらの元素の適正量を溶鋼中に効率良く添加し、連続鋳造鋳片内に均一に分散させることができる。
この連続鋳造方法を実施するための装置としては、例えば、後述する実施例にて説明する通り、タンディッシュと、タンディッシュ下部に設けられタンディッシュ内の溶鋼を鋳型に供給するための浸漬ノズルと、タンディッシュの下方に位置する鋳型と、タンディッシュ内の溶鋼にワイヤーもしくはロッドを供給するための浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼にワイヤーもしくはロッドを供給するための浸漬ランスと、浸漬ランスの孔内にワイヤーもしくはロッドを供給するためのワイヤーまたはロッド供給装置と、浸漬ランス内にキャリアガスを供給するガス供給装置とを有する連続鋳造装置が好適である。
本発明の連続鋳造鋳片およびその連続鋳造方法の効果を確認するため、以下に示す試験を実施して、その結果を評価した。
〔鋳造条件〕
溶鋼成分:C、Si、Mn、P、S、Al、N、TiおよびNbの各成分が後述する表2に記載された組成に調製された溶鋼を使用し、Mg、CaおよびREMの各成分については下記の添加方法により添加して表2に示される組成に調製
溶鋼温度:1600℃
鋳型サイズ:幅1100mm×厚み250mm
鋳造速度:1.0m/分
添加金属:Mg、CaおよびREMを下記のとおり組み合わせて添加
添加方法:下記の成分組成を有する直径3mmの金属ワイヤーを溶鋼中に供給
Mg添加の場合:純Mg金属ワイヤーを使用
Mg+Ca添加の場合:40%Ca−Mg合金ワイヤーを使用
Mg+REM添加の場合:5%REM−Mg合金ワイヤーを使用
Mg+Ca+REM添加の場合:5%REM−40%Ca−Mg合金ワイヤーを使用
REM添加の場合:REM単独ワイヤーを使用
添加位置:タンディッシュ内
キャリアガス:アルゴンガス10L/分
ガス圧力:0.05MPa
図1に、金属ワイヤーを浸漬ランスを通してタンディッシュ内の溶鋼に供給しながら連続鋳造する方法を示す。取鍋3からタンディッシュ2に供給された溶鋼1は、浸漬ノズル6を経由して鋳型8内に注入され、下方に引き抜かれながら凝固シェル7を形成して鋳片となる。添加金属元素を含有する金属ワイヤー50が、タンディッシュ2内の溶鋼1中に浸漬された浸漬ランス4の孔内に所定の速度で挿入される。
浸漬ランス4の上端部はワイヤー供給機5に接続されている。金属ワイヤー供給機5にはワイヤーリール51が装填されており、金属ワイヤー50は、ワイヤー繰出し速度制御装置53によりその繰出し速度を制御されたワイヤー繰出しロール52により、浸漬ランス4内に挿入供給される。金属ワイヤー供給機5には、流量圧力制御装置57の指令により作動する流量制御弁56および圧力指示調節弁55により流量および圧力を制御されたキャリアガス54が導入され、金属ワイヤー50とともに浸漬ランス4内に供給される。
そして、連続鋳造試験により得られた連続鋳造鋳片を素材として、熱間圧延および冷間圧延を行い、鋼板の試作を行った。本試験では、EPMA分析用の試験片を採取するために、連続鋳造鋳片を一旦室温まで冷却した後、加熱炉に装入して所定の温度まで加熱して熱間圧延を行い、続いて冷間圧延を行った。圧延条件は以下に示す通りとした。
〔圧延条件〕
鋼素材の圧延開始温度:1050〜1300℃
仕上温度:800〜950℃
巻取温度:450〜750℃
熱間圧延と冷間圧延の総圧下率:97%以上
焼鈍温度:Ac3変態点〜950℃
焼鈍時間:5〜200秒
750℃から600℃までの平均冷却速度:1〜50℃/秒
本発明例の試験において鋳込まれた溶鋼の成分組成を表2中の本発明例1〜6の欄に示し、Mgを添加しない比較例の試験において鋳込まれた溶鋼の成分組成を表2中の比較例1および2の欄に示した。
Figure 0005343433
本試験では、溶鋼成分を変化させて連続鋳造を行い、連続鋳造鋳片を製造した。そして、得られた鋳片の表層から厚み方向に、幅50mm×長さ50mm×厚み8mmの試験片を採取し、凝固組織のMn濃度分布をEPMAを用いて分析した。EPMAによる分析では、測定時のビーム径は1μmとし、デンドライトの成長方向と垂直方向に、25mmの領域の線分析を行った。
また、連続鋳造鋳片を素材として作製した鋼板について、先端角度が180°のU曲げ試験を実施し、曲げ部の表面でのすじ模様の発生の有無を調査した。曲げ試験片は、試験片の長手方向が鋼板の圧延方向と直角な方向となるように、幅40mm×長さ100mm×板厚2.6mmの試験片を採取し、その曲げ稜線が圧延方向となるように曲げて作製した。
〔試験結果〕
上記条件で作製した連続鋳造鋳片および鋼板について、3種類の項目について評価を行った。試験結果を、前記表2に組成と併せて示した。評価項目は、「フェライト率」、「Mn偏析比」および「すじ発生」とした。
「フェライト率」は、固相率1.0におけるδ相の割合を表し、採取した鋳片のサンプルの横断面を鏡面研磨した後、ピクリン酸飽和溶液で顕出した組織を光学顕微鏡で観察し、画像解析により評価した値である。
また、「Mn偏析比」は、前述のように、連続鋳造鋳片より採取した試験片をEPMAにより分析し、得られたMn濃度の最大値を初期の溶鋼中のMn濃度により除した値を意味する。
そして、「すじ発生」とは、連続鋳造鋳片から作製した鋼板についてU曲げ試験を実施した際の、曲げ部の表面におけるすじ模様の発生の有無を目視観察により判別した結果を示す。
フェライト率すなわちδ相の割合は、Mgを含有しない比較例1および2では、25%および12%であった。一方、Mgを含有し、さらにNb、CaおよびREMの1種または2種以上を含有する本発明例1〜6では、δ相の割合は54〜98%の良好な結果が得られた。
また、Mn偏析比は、比較例1および2では1.25および1.47と大きかったが、本発明例1〜6では1.03〜1.10であり、比較例1および2と比べて小さく良好な値となった。これは、本発明例1〜6ではフェライト率が50%以上であり、Mnの拡散が進行しやすかったためと考えられる。
そして、Mn偏析比の大きい比較例1および2では、いずれもU曲げ試験においてすじ模様が発生したが、Mn偏析比の小さい本発明例1〜6ではすじ模様は発生せず良好な表面性状であった。
本発明の連続鋳造鋳片は、γ相よりもMnの拡散係数が大きいδ相の割合が多いため、Mnの偏析が生じにくく、この鋳片を素材として得られた鋼板は、曲げ加工時における表面でのすじ模様の発生を抑制することができ、自動車用の高強度鋼板をはじめとする高強度高加工性鋼板として好適である。また、本発明の連続鋳造方法は、上記鋳片を得るために必要な金属元素の適正量を溶鋼中に効率良く添加し、連続鋳造鋳片内に均一に分散させるための最適な連続鋳造方法である。
したがって、本発明の鋳片は、自動車用熱延鋼板をはじめとする強度、靱性および加工性に優れた構造用または加工用鋼材の素材として、また、本発明の鋳造方法は、上記鋼材製造用の鋳片を鋳造するための連続鋳造方法として、それぞれ広範に適用できる。
金属ワイヤーを浸漬ランスを通しておよび直接タンディッシュ内の溶鋼に供給しながら連続鋳造する方法を示す図である。
符号の説明
1:溶鋼、 2:タンディッシュ、 3:取鍋、 4:浸漬ランス、
5:金属ワイヤー供給機、 50:金属ワイヤー、 51:ワイヤーリール、
52:ワイヤー繰出しロール、 53:ワイヤー繰出し速度制御装置、
54:キャリアガス、 55:圧力指示調節弁、56:流量制御弁、
57:流量圧力制御装置、 6:浸漬ノズル、 7:凝固シェル、 8:連続鋳造鋳型

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.005〜0.5%、Mn:3.1〜4.0%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜1.0%、N:0.01%以下、Mg:0.0001〜0.0015%およびTi:0.003〜0.50%を含有し、さらに、Nb:0.50%以下、Ca:0.01%以下およびREM:0.01%以下の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる組成を有し、固相線温度での凝固組織中のδ相の割合が50%以上であることを特徴とする高強度鋼板用の連続鋳造鋳片。
  2. 請求項1に記載の鋳片を製造するための連続鋳造方法であって、タンディッシュ内の溶鋼または鋳型内の溶鋼中に浸漬させた浸漬ランス内にMgならびにCaおよび/またはREMを含有する金属ワイヤーまたはロッドを挿入することにより、ランス内で金属蒸気および/または金属粒子を発生させ、該金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に添加することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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