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JP5345779B2 - 磁気軸受装置を制御する方法および装置 - Google Patents
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Description

本発明は、回転子を浮遊させて回転軸の周りを回転させるようにする磁気軸受装置の制御に関する。特に、本発明は、請求項1の前文に記載する磁気軸受装置を制御する方法および請求項5の前文に記載する当該軸受装置用の制御装置に関する。さらに、本発明は請求項11に記載の磁気軸受装置ならびに請求項12に記載のターボ分子ポンプに関する。
磁気軸受は、回転子を非接触方法で回転させるさまざまな利用に有用である。磁気軸受の利用として、例えばターボ分子ポンプ(TMPs)が挙げられる。
第一に、回転軸の周りを回転する磁気軸受装置に浮遊する回転子は、六つの空間自由度(DOFs)を備えた剛体として示される。一つの自由度は、装置の軸の周りの回転であり、その方向は以下ではzとして示される。この自由度は通常、電気モーターによって作動する。他の五つの自由度の励起は望ましくない。これらの五つの自由度は、三つの並進自由度(三方向x、y、zにおける回転子の重心の並進運動であり、xおよびyはz方向に垂直な二つの相互に直交する軸を示す)と、二つの回転自由度(固定した重心を備えたxおよびy軸の周りの回転子の傾斜運動)に分離することができる。
これらの自由度の制御は一般に、さまざまな場所に位置および/または速度センサーを設置し、制御装置にセンサー信号を与え、制御装置出力に磁気軸受のアクチュエータ用の制御信号を提供することにより達成される。五つの自由度を制御するには少なくとも五つのセンサーが必要である。しばしばこれらのセンサーは、一センサーは装置の軸(z)に沿う移動を測定し、二つのセンサーはそれぞれ装置の軸に沿って上部および下部に設置されてxおよびy方向で軸の上部および下部の移動を測定する。
並進運動によって両軸部は同じように移動することになる。一例として、x方向の並進運動では上部および下部xセンサーにおいて同一の信号を誘発することになる。傾斜運動の場合、重心は変化せず上部および下部は別様に移動する。いわばx軸の周りの傾斜運動によりy方向に移動する。この意味で、本明細書では特定の方向の傾斜に言及する。特定の方向における傾斜(傾斜方向と呼ぶ)は、傾斜方向およびz軸に及ぶ平面における傾斜であり、または同様に傾斜方向およびz軸に垂直の軸(傾斜軸と呼ぶ)の周りの傾斜である。数学的には、傾斜は、適切には傾斜ベクトルとして表すことができる。傾斜ベクトルは、傾斜軸の方向を示し、傾斜角度により増加する単位ベクトルである。
当該制御装置において、上部および下部xおよびyセンサーからの信号は、加重和および差を形成することにより変換され、並進移動および/またはxおよびy方向における重心の速さをそれぞれ測定し、かつ傾斜移動および/またはx軸およびy軸の周りの角速度をそれぞれ測定するようにする。伝統的に、三つの並進DOFsおよび二つの傾斜DOFsのそれぞれは、各DOFの個別制御ユニットにより別個に制御される。これらのユニットの出力は、最終的に再変換されて磁気軸受の各アクチュエータコイルの作動信号を生み出す。この制御スキームは、五つ以上のセンサーが用いられる場合には容易に一般化することができる。十個のセンサーを備えた伝統的な制御装置の例として、五つの対に組織された入力部が英国特許出願公開第2109596号A明細書の図2で示される。
しかしながら、回転子を迅速に回転させるためには、そのような制御スキームはしばしば傾斜運動を制御する際によい結果を達成することはできない。この一つの理由は、回転子のジャイロ的性質に見て取ることができる。高角速度での剛体回転子の回転にとって、傾斜移動の一因となる固有モードは歳差モードおよび章動モードである。歳差および章動は剛体こまの理論において周知の効果であり、その詳細は機械の標準的教科書に記載されている。これらのジャイロ方式の重要性については、先行技術で既に知られており、そのようなジャイロ効果を扱ういくつかのアプローチが提案されている。これらの方式のジャイロ性質の重要な特徴はいくつかの方向における力が異なる方向における移動をもたらしうる(または言い換えれば、所定方向の周りの力のモーメントは異なる方向の周りの角移動をもたらしうる)。それゆえ、ジャイロ方式は、(いわばx方向に沿った)所定の移動および/または速度の対向方向だけでなく、(いわばy方向に沿った)それぞれの速度で移動の垂直方向に力を利用することにより適切に制御される。
独国特許出願公開第3323648号A1明細書では、クロスカップリングスキームが提案されており、x方向への傾斜のための入力信号は、x方向における軸受のための出力信号の結果とならないだけでなく、この入力信号はまた、y方向に出力信号を引き起こす。同様に、y方向の傾斜信号はまた、x軸受のための出力信号となるが、異符号を備える。このようにして、章動モードを制御することができる。
同様のスキームは英国特許出願公開第2109596号A明細書で提案される。同公報では、クロスカップリングの符号は、独国特許出願公開第3323648号A1明細書の場合とは反対を選択し、そのような歳差モードを制御する。
欧州特許第0185765号明細書において、クロスカップリングスキームが提案され、帯域通過フィルターはクロスカップリングブランチで利用される。この方法において、所定の固定周波数帯内の傾斜運動のみがクロスカップリングに導かれる。周波数バンドが選択されて、歳差モードはその周波数により同定される。
米国特許第4,885,491号明細書では、クロスカップリングを利用した制御スキームが開示されており、帯域通過フィルターおよび低域フィルターが各クロスカップリングブランチに用いられているが、それらの出力部では異符号となっている。加えて、クロスカップリングブランチの増幅率は、回転周波数に依存する。そして、制御はそのように識別される方法に応じて実行される。
しかしながら、先行技術の制御スキームは依然として、高回転数ではしばしば良好な、安定した制御を達成することができない。このことは、純粋剛体動作に重畳する他の障害に起因するものと考えられる。この問題は、TMPsにおいて特に顕著である。
米国特許第4,697,128号明細書は、回転数と同期である回転子の不均衡振動を補正する回転数においてトラッキングフィルターを使用する。トラッキングフィルターを回転数の中心とし、かつ並進移動のみを入力信号として用いているので、この方法は不均衡の補正にのみ有用であり、傾斜動作の制御には適用することができない。
発明の概要
それゆえ、本発明の目的は、磁気軸受装置を制御する方法および装置を提供して、高回転数においても、および/または純粋剛体動作と重なり合わされた効果から生じる障害が存在しても、磁気軸受装置の安定的な制御を可能とすることを目的とする。
この目的は、請求項1に記載の方法および請求項5に記載の制御装置により達成される。
本発明に記載の方法は、磁気軸受装置の制御に関し、シャフトを含む回転子が磁気的に支持されて装置軸(z軸と呼ぶ)の周りを回転する。当該軸受装置は複数の電磁アクチュエータを含んでシャフトに半径方向力を与え、複数のセンサーを含んでシャフトの半径方向移動を検知する。当該センサーはセンサー信号を供給する。この方法は、以下の工程を含む。
− センサー信号から少なくとも二つの傾斜移動信号を得て、各信号は所定の方向でシャフトの傾斜移動に対応し、
− 傾斜移動信号から一つ以上の第一傾斜制御信号を得て、
− 第一傾斜制御信号を変換してアクチュエータ制御信号を得て、電磁アクチュエータを駆動するようにする。
本発明によれば、第一傾斜制御信号を得る工程は、装置軸の周りの傾斜ベクトルの第一規定回転方向用フィルターを傾斜移動信号に適用することを含む。言い換えれば、第一傾斜制御信号を得る工程は、第一規定円偏光用フィルターを傾斜移動信号に適用することを含む。
語句「円偏光」とは、信号間の所定段階の関係を定義する語句として用いる。二つ(またはそれ以上の)ほぼ周期的な信号は、当該信号が同一振幅および波形を具備する場合には所定の円偏光を具備するが、互いに対して所定の固定された位相角により変化する。当該位相角は信号源の配置に左右される。当該信号が直交方向に二つのセンサーから得られる場合には、円偏光を確定する位相角は、+90度(正の円偏光)または−90度(負の円偏光)のいずれかとなる。波動光学の分野でよく知られているように、一組の信号は全て正の円偏光の成分と負の円偏光の成分とに数学的に分離することができる。例として、二つの信号のうち一つのみが0とは異なっておりテンポよく周期的である場合には、これは直線偏光と呼ぶことができ、等しい振幅と対向円偏光とを備えた二つの成分の重畳に相当しうる。
したがって、本発明によれば、装置軸の周りの傾斜ベクトルの回転方向により、または同等に、対応する傾斜移動信号の円偏光により傾斜移動が識別される。傾斜ベクトルの回転方向が異なる一つ以上のモードが存在する場合、これらのモードのみが取り除かれ傾斜ベクトルの所定の回転方向を具備する制御装置に用いられる。このことにより、例えば歳差(傾斜ベクトルの回転方向が回転子軸の周りの回転子の回転と反対であるもの)と章動(傾斜ベクトルの回転方向が回転子軸の周りの回転子の回転と同じであるもの)の識別が、その周波数によるこれらのモードを識別する必要なく可能となる。より一般的には、これによりたとえその周波数が同様または同一であったとしても、装置軸の周りの傾斜ベクトルの回転方向が異なる別様の物理的影響により生じる傾斜モードを識別することが可能となる。特に、一方では章動モード、他方では例えば翼振動または回転子軸の湾曲運動から生じるモードを、そのようなモードのための装置軸周囲の傾斜ベクトルのさまざまな回転方向に基づいて、たとえ当該モードが同様または同一周波数を具備するモードであっても識別することが可能となる。
所定の回転方向(円偏光)用フィルターは出力信号(第一傾斜制御信号)を抑制し、入力信号(傾斜移動信号)が反対の(「不適切な」)回転方向(円偏光)を備えるようにする。フィルターのこのような適用は、第一傾斜制御信号が実質的に0とは異なり、ただ傾斜移動信号が第一規定回転方向を有する装置軸周囲を回転する傾斜ベクトルを伴う傾斜移動に対応する成分を具備するようにする。
好適には10dB、より好適には20dBより大きい抑制が望ましい。26dBまたはもっといえば34dB以上の抑制係数が有利である。したがって、「不適切な」円偏光を備えた入力信号のための出力信号の定常状態rms振幅は、好適にはおおよそ30%未満で、より好適には、定常状態出力部rms振幅の10%であり、入力信号は同一継続入力部rms振幅および同一周波数を備え、所定の(「正しい」)円偏光を備える。5%未満の比率、より好適には2%未満が有利である。この比率は測定される必要があり、入力信号が単一周波数を具備するようにする。周波数が選択され、傾斜制御信号が最大限で所定の円偏光となるようにする。
好適には、二つの現実の傾斜移動信号が設けられ、各信号は、二つの垂直方向のうち一つの方向への傾斜移動に対応する。しかしながら、使用するセンサーの配置に応じて二つ以上の現実の傾斜移動信号、例えば三つ、四つ、五つまたは六つの信号を設けることができる。少なくとも二つの傾斜移動信号が設けられる限りは、傾斜ベクトルの回転方向は、いくつもの数の(一般にはほぼ周期的な)傾斜移動信号間の位相関係により独自に決定することができる。
有利には、第一傾斜制御信号を得る工程は、第一規定回転方向(円偏光)用、および所定の周波数用の結合フィルターを傾斜移動信号に適用する工程を含むことができる。このようにして、その周波数および回転方向(または言い換えると、円偏光)により特徴付けられた所定のモードのみが制御される。
所定の周波数は、好適には回転子の固有モードの周波数である。固有モードには、剛体固有モード章動および歳差と同様に湾曲モードのような非剛体モードが挙げられる。不均衡障害のような回転および同期回転障害は、固有モードではないとみなされる。
しばしば、この制御ユニットにより減衰するモードは、ほとんどの固有モードを含み、既知の方法で回転子の回転数によって決まる。それゆえ、フィルターをあらゆる望ましいモードに「調整する」ことが可能である。この目的のために、当該方法は好適には以下の工程を含む。
− 回転子の回転数を決定し、
− 前記回転数に応じて前記の所定の周波数を計算し、
− 前記結合フィルターの中央周波数を前記の所定の周波数に設定する。
有利には、第一傾斜制御信号を得る工程は、追加的にクロスカップリング工程を含むことができる。この工程は有利には、以下を含む。第一傾斜移動信号をスケーリングし、それを第二傾斜移動信号に付加して、変換された第二傾斜移動信号を得るようにし、かつ第二傾斜移動信号をスケーリングし、それを第一傾斜移動信号に付加して、変換された第一傾斜移動信号を得るようにする。スケーリングは負の係数を含むあらゆる実係数により行なうことができる。好適には、第一および第二移動信号のスケーリング係数は異符号を具備し、最も好適には、それらは同じ絶対値で、かつ異符号を備える。そして、クロスカップリングは、傾斜移動信号と位相変換(座標の回転)の全体的なスケーリングとしてみなしうる。このことにより、傾斜制御信号の正しい位相の調整をすることが可能となる。これは、三つまたはそれ以上の傾斜移動信号のクロスカップリングを提供するために容易に一般化することができる。次にクロスカップリングとして、有利には傾斜移動信号を含む列ベクトルを備えた二次回転マトリクス(その大きさは傾斜移動信号の数である)の増加が挙げられる。
もう一つの方法または追加的方法として、クロスカップリング工程を傾斜移動信号の代わりに傾斜制御信号に利用することができる。有利には当該工程に以下を含む。第一傾斜制御信号をスケーリングし、それを第二傾斜制御信号に付加して変換された第二傾斜制御信号を得るようにし、かつ第二傾斜制御信号をスケーリングし、それを第一傾斜制御信号に付加して変換された第一傾斜制御信号を得るようにする。上述のように、スケーリングは負の係数を含むあらゆる実係数で行なうことができ、第一および第二傾斜移動信号用のスケーリング係数は有利には異符号であり、最も好適にはそれらは同じ絶対値で、かつ異符号を備える。この場合、クロスカップリングは傾斜制御信号と位相変換(座標の回転)を全体的にスケーリングするものとしてみなされうる。傾斜移動信号のクロスカップリングに関する場合も、傾斜制御信号のこのクロスカップリングにより生じる出力信号の正しい位相の調整をすることが可能となる。上述のように、二つ以上の傾斜制御信号の一般化も、もちろん可能である。
当該方法は容易に拡張することができ、同一または異なる円偏光を備える二つ以上のモードを個別に制御することができる。このため、当該方法は追加的に以下の工程を含む。
− 傾斜移動信号から実質的に0と異なる第二傾斜制御信号を得て、傾斜移動信号は、第二規定回転方向、特に第一規定回転方向と反対の回転方向に装置軸の周りを回転する傾斜ベクトルを備えた傾斜移動に対応する成分を単に具備する(言い換えれば、第二の円偏光、特に第一の円偏光と反対の円偏光用のフィルターを傾斜移動信号に適用することにより第二傾斜制御信号を得る)だけであり、
− アクチュエータ制御信号を得る前に第二傾斜制御信号と第一傾斜制御信号とを結合する。
特に異なるモードを識別する追加的手段を使用する場合、追加的周波数フィルタリングのように第二回転方向を第一回転方向と同じとすることができる。
本発明に記載の制御装置(制御用機器)は、磁気軸受装置を制御する制御装置であり、シャフトを含む回転子が磁気的に支持されて装置軸(zと呼ぶ)の周りを回転するようにする。制御装置は傾斜制御ユニットを含んで回転子シャフトの傾斜移動を制御するようにする。傾斜制御ユニットは少なくとも二つの入力部と少なくとも一つの出力部を具備する第一方向制御ユニットを含む。第一方向制御ユニットは、入力部に信号の第一回転偏向用のフィルターを含む。言い換えれば、入力部での信号が所定の回転偏光を備えた成分を具備する場合にのみ、少なくとも一つの出力部で0とは実質的に異なる信号を与えるように調整される。好適には、第一方向制御ユニットは二つの入力部を具備する。さらに、第一方向制御ユニットは二つの出力部を具備することが好ましい。しかしながら、三つ、四つ、五つ、六つあるいはそれ以上の入力部および/または出力部をセンサーおよびアクチュエータの配置に応じて設置することも可能である。
有利には、第一方向制御ユニットは、円偏光および入力信号の周波数用の結合フィルターを含むことができる。
好適には、制御装置はさらに周波数制御手段を含んで回転子の回転数を決定し、回転数に応じて結合フィルターの所定の周波数を制御するようにする。この方法で、仮にこの周波数が回転数に依存していることが分かっているならば、結合フィルターは容易に減衰すべき望ましいモードの周波数となる。
とりわけ、所定の周波数は固有モードの周波数でもよい。そして、周波数制御手段は、好適には回転子の所定の固有モードの周波数に対応する方法で、結合フィルターの所定の周波数を制御するよう調整される。このため、周波数制御手段は、例えば既知の方法で参照テーブルを使用することにより回転数から固有モードの周波数を計算する周波数計算ユニットを含むことができる。
好適な実施形態において、第一方向制御ユニットは、第一および第二積分機を含み、各々が一つの入力部および一つの出力部を有する。第二積分機の出力部は第一連結ユニットにより第一積分機の入力部と連結され、第一積分機の出力部は第二連結ユニットにより第二積分機の入力部に連結される。第一連結ユニットにより設けられた連結器の符号は、第二連結ユニットにより設けられた連結器の符号と反対である。
代替的実施形態として、結合フィルターは所定の周波数を中心とするトラッキングフィルターを含む。トラッキングフィルターは、一組の入力信号を回転フレーム(所定の周波数で回転する座標システム)に変換するユニットであり、低域通過フィルターを結果として生じる信号に適用し、かつフィルター処理した信号を基準座標系に再変換する。
好適には、第一方向制御ユニットはさらに、変換ブロックを含んで、第一方向制御ユニットの第一入力部および第二入力部の間にクロスカップリングを実装する。変換ブロックは第一クロスカップリングブランチを含んで第一入力部で第一信号をスケーリングし、スケーリングされた第一信号を第二入力部の信号に付加して変換された第二信号を生成し、かつ第二クロスカップリングブランチを含んで第二入力部で第二信号をスケーリングし、スケーリングした第二信号を第一信号に付加して変換された第一信号を生成する。スケーリングは負の数を含む任意の実数で行なうことができる。有利には、第一クロスカップリングブランチは、第二クロスカップリングブランチにより行われるスケーリングとは反対の符号でスケーリングを実行する。好適には、両ブランチにより実行されるスケーリングは同一の絶対値で、かつ異符号を備える。これにより、入力信号の望ましい位相回転が可能となり、方向制御ユニットにより制御されるべきモードの最適な減衰を達成することができる。
このスキームは、第一方向制御ユニットが二つの入力部のみを具備している場合に最も適切となる。しかしながら、変換ブロックは、三つ以上の傾斜移動信号が供給された場合にも容易に一般化することができる。次に、多数のクロスカップリングブランチが設けられ、二次回転マトリクスを増加させ、その大きさは傾斜移動信号を含む列ベクトルを備えた傾斜移動信号の数である。
代替的にあるいは追加的に、変換ブロックは方向制御ユニットの下流域に設置することができ、方向制御ユニットの入力部で信号間のクロスカップリングを実装する代わりに、方向制御ユニットの出力部で信号間のクロスカップリングを実装する。
有利には、傾斜制御ユニットはさらに、少なくとも二つの入力部および少なくとも一つの出力部を具備する第二方向制御ユニットを含むことができ、前記第二方向制御ユニットは第一規定円偏光と反対の第二規定円偏光用のフィルターを含むようにする。言い換えれば、第二方向制御ユニットは、入力部の信号が第一規定円偏光と反対の第二規定円偏光を備えた成分を具備する場合にのみ、少なくとも一つの出力部において実質的に0とは異なる信号を供給するように調整される。これにより、異なる円偏光を備えた傾斜運動の独立制御が可能となる。
代替的にまたは追加的に、当該傾斜制御ユニットは、第一入力部、第二入力部および少なくとも一つの出力部を具備する複数の方向制御ユニットを含み、各方向制御ユニットは所定の円偏光と所定の周波数用の結合フィルターを含み、当該所定の周波数は各方向制御ユニットで異なる。このようにして、同一円偏光を備えるいくつかの異なるモードは独立して制御することができる。
本発明に記載の制御装置は、好適にはシャフト上の半径方向力を発する複数の電磁アクチュエータと、当該シャフトの半径方向移動を検知しセンサー信号を供給する複数のセンサーとを含む軸受装置用の制御装置である。有利には、センサー信号を変換する第一変換ユニットを含んで少なくとも所定の方向で二つのシャフトを生成し、各傾斜移動信号は所定の方向でシャフトの傾斜に対応する。傾斜移動信号は傾斜制御ユニットの入力部に供給される。傾斜制御ユニットは傾斜制御信号を提供する少なくとも二つの出力部を具備し、制御装置はさらに第二変換ユニットを含んで傾斜制御信号をアクチュエータ制御信号に変換して電磁アクチュエータを駆動させるようにする。
本発明はさらに請求項11に記載の磁気軸受装置と、請求項12に記載の複数の回転子翼を備える磁気軸受装置および回転子を含むターボ分子ポンプを提供する。
本発明の有利な実施形態について図面を参照して、以下により詳細に説明する。
発明の詳細な説明
第一に、磁気軸受装置のいくつかの特徴を例として図1を参照して説明する。この図は、磁気軸受装置100に浮遊してz方向の周りを回転する回転子シャフト101を極めて概略的に示す。回転子本体部が回転子シャフトに取り付けられて、例えばTMPに用いられる回転子翼を支持する。なお、この回転子翼は図1に示されていない。当該軸受装置は、第一(上部)ラジアル軸受ユニット110、第二(下部)ラジアル軸受ユニット120、およびシャフト101に取付けられたディスク102と協同する軸方向(推力)軸受ユニット130を含む。上部ラジアル軸受ユニット110は、四個のアクチュエータ111、112、113および114を含んでシャフト101の上部領域で+x、+y、−x、−y方向にそれぞれ力を及ぼし、xおよびy方向は相互に直交してz方向に垂直である。同様に、下部ラジアル軸受ユニット120は、四個のアクチュエータ121、122、123および124を含んでシャフト101の下部領域で+x、+y、−x、−y方向にそれぞれ力を及ぼす。当該ラジアル軸受ユニットにおいて各アクチュエータは、磁極片またはヨーク上に巻かれたコイルを含む電磁石からなる。また、軸方向軸受ユニットは、二個の電磁石アクチュエータ131および132を含む。これらは簡略化した形で図1のコイルとして示される。
シャフト101を備え磁気軸受装置100内に浮遊する回転子は、第一に、六つの自由度(DOFs)を備えた剛体回転子として取り扱うことができる。一つのDOFは、z軸の周りの回転である。このDOFは、一般的に電気モーターにより駆動する。簡略化のため図1には示していない。他の五つのDOFは、x、y、z方向の並進移動およびx軸およびy軸(y−x平面およびx−z平面)の周りの傾斜運動に分離することができる。これらは以下のように制御することができる。センサー141、142は、±xおよび±y方向にシャフト101の上部領域の移動をそれぞれ決定する。同様に、センサー151、152は、±xおよび±y方向でシャフト101の下部領域の移動をそれぞれ決定する。センサー161は、±z方向の移動を決定する。これらのセンサーからの信号が制御装置に与えられ、制御装置は既知の手段を用いてセンサー信号からアクチュエータのための駆動信号を導き出す。同一のスキームが五個以上のセンサーを備えた状況に対して一般化されうる。
図1は例示として提供したに過ぎない。本発明は図1に示す磁気軸受装置に限定されるものでは全くない。例えば、各ラジアル軸受ユニットは四個ではなく多数のアクチュエータを含むことができ、装置軸に沿ったラジアル軸受ユニットの配置をさまざまにすることができ、または上述の種類の明確な軸方向軸受が存在しなくても軸制御を達成することができる。
そのような磁気軸受装置内で浮遊する回転子は、第一に剛体上端として取り扱うことができ、歳差および章動が当該傾斜移動の二つのモードとなる。高い回転数を得るためには、章動周波数は回転数にほぼ比例し、章動モードにおける装置軸の周りの傾斜ベクトルの回転方向は、回転軸の周りの回転子の回転方向と同じである。数学的にいえば、z軸周囲の章動の角速度ベクトルと回転軸周囲の回転の角速度ベクトルのユークリッドスカラ積は常に正である。対応角速度ベクトルのz成分の符号により周波数の符号を規定する場合、章動周波数の符号は回転数の符号と同一となる。以下では、傾斜ベクトルが、回転軸周囲の回転子の回転と同一の装置軸周囲の回転方向を有するモードを全て「順モード」と呼ぶ。一方で、傾斜ベクトルが、回転軸周囲の回転子の回転方向とは反対方向に装置軸周囲を回転するモードを全て「逆モード」と呼ぶ。歳差は逆モードである。高い回転数を得るためには、歳差周波数は回転数の逆数にほぼ比例し、すなわち、回転数を増加させると共に歳差周波数は0に向かって減少する。
しかしながら、しばしば剛体モードが重要であるだけでなく、他のモードも励起することができる。これらのモードの性質は、回転子の種類や構造に左右されるため、磁気軸受装置の具体的な用途に左右される。例えば、磁気軸受装置を用いてTMPの回転子を浮遊させる場合、剛体モードに加えて、回転子シャフトの湾曲モードおよび多数の回転子翼の振動モードもまた存在しうる。しばしばこれらのモードは、回転子の明確な部分の振動のみを含む「部分的」モードではなく、例えば翼振動モードまたは回転子シャフトの湾曲モードはまた回転子シャフトの微傾斜成分を含む。したがって、追加モードはセンサー信号に大いに貢献しうる。追加モードを回転子の回転に力学的に結合させる結果、追加モードの固有周波数がまた回転数に依存することになる。
回転子を磁気軸受装置に浮遊させたTMPに存在しているいくつかのモードの例が図2に概略的に示される。この図では、可変回転数Ω/2πといくつかの選択モードの固有周波数vの変化が概略的に示される。回転R以外に、章動Nおよび歳差Pという二つの剛体モードを示す。一般的に、章動周波数は回転数にほぼ比例する。比例率の係数は、z方向およびx−y方向の周りの慣性モーメント率により与えられる。伸長回転子では、この比率は1未満であり、高回転数では章動周波数は回転数よりも小さい。ディスク型の回転子では、この比率は1から2の間であり、章動周波数は回転数の最大二倍となる。本発明は、両種の回転子に等しく適用可能である。周波数が増大すると、章動モードの特徴として、有効な湾曲混合を実現する。これにより、章動周波数と回転数との間の直線関係からの逸脱がもたらされる。一般的に、湾曲混合の存在により僅かであるが感知できるほどに章動周波数が低下する。これらの逸脱は、湾曲固有モードを交差する周波数付近で最も大きくなる。
歳差周波数は、常に章動周波数より小さく、高い回転数の場合には、回転数にほぼ反比例する。並進運動は図2には示されていない。
剛体モードに加えて、回転数が低い限り、その固有周波数が剛体モードの固有周波数よりもずっと高いいくつかのモードが存在する。この例では、この種の最低周波数モードは、主に翼振動を含む二つのモードB1およびB2である。以下では、簡素化のため、翼振動により特徴付けられるモードを全て翼モードと呼ぶ。他の重要なモードは、回転子シャフトの湾曲振動により特徴付けられるモードである。そのようなモードを簡素化のために湾曲モードと呼ぶ。いくつかのモードが明確化のために図2から省略されている。具体的には、固有周波数が既に低い回転数において上昇回転数Ω/2πと共に上昇するモードのうちの一つのみを示す。
先行技術では、そのようなモードは通常無視されてきた。これは、これらモードの固有周波数が剛体モードの周波数と比べて高い場合には妥当する。これは、通常は低い回転数の場合である。しかしながら、図2で理解できるように、高い回転数を備えた磁気軸受装置を利用する際には、これらの追加的モードの固有周波数は回転数(ここでは約500Hz)と同程度となることができ、章動周波数と同じくらい低いか、または章動周波数より低くなりうる。追加(翼または湾曲)モードの固有周波数が回転速度または章動周波数に近くなる場合には、先行技術の制御スキームによる装置の制御は困難となり、これによって不安定となり、場合によっては悲惨な結果をもたらしうる。
このことはとりわけ、TMPsにおける磁気軸受装置の最新利用について当てはまる。そのような利用では、回転子シャフトを保つことがしばしば設計目標となり、回転子シャフトの湾曲モードの固有周波数を増加させるようにする。しかしながら、これにより高度なジャイロ回転子が得られ、その半径方向周囲の慣性モーメントは回転子軸周囲の慣性モーメントよりも少しだけ大きい。軸方向の半径方向慣性モーメントに対する高い比率は、高い章動周波数をもたらし、章動の制御はより困難となる。同時に、そのような最新のTMP装置はしばしば、比較的低い振動周波数を有する傾向にある長く薄い翼と、章動制御問題に付加する効果を特色とする。この問題はディスク型の回転子ではさらにひどくなり、半径方向周囲の慣性モーメントは軸方向周囲の慣性モーメントより小さく、章動周波数は回転数よりも高くなる。
先行技術スキームで制御することが困難な理由は、通常、所定の剛体モードとしての同一周波数を備えた翼モードまたは湾曲モードは、剛体モードそれ自体から区別されないということにある。そのようなモードが回転子において励起された場合、それはまた制御装置入力部でセンサー信号を生み出す。制御装置は、剛体モードを制御するのに合わせられ、追加モードから生じるこれらのセンサー信号を認識することなく、まるで信号が剛体モードから生じたかのように信号を最小限にしようとする。しかしながらこれは、全体的に不適切であり、追加的モードの増幅をもたらしさえする。
本発明は、剛体モードのように、追加モードもまたその回転方向により区別されうるということを利用することによって制御を改善する。これは回転子がほぼ軸対称である結果である。それゆえ、各追加モードは順モードまたは逆モードのいずれかである。順モードの固有周波数は一般的に回転数の増加により増大し、一方で逆モードの固有周波数は一般的に回転数の増加により減少する。それゆえ、高い回転数においては、最も低い周波数を有する追加モードは、通常逆モードであり、それは章動と同様の周波数を有するモードである。
このことは、以下の少なくとも二つの結果をもたらす。第一に、順章動モードおよび逆追加モードは、その異なる円偏光により直交する。すなわち、それらは周波数が交差する際にも分離モードの状態を保つ。第二に、順章動モードは原則として異なる円偏光により逆追加モードと区別される。したがって、逆翼モードの影響を受けずに順章動モードを個別に制御することができる。そのような制御が本発明で達成される。
本発明をより理解できるように、次に本発明の有利な実施形態を示す図3に言及する。この図では、磁気軸受装置用制御装置301を概略的に示す。
制御装置は入力信号Sx1、Sx2、Sy1、Sy2、Szのための五つの入力部と、出力信号Ax1、Ax2、Ay1、Ay2およびAzを供給する五つの出力部を具備する。各入力信号は磁気軸受装置内の一つ以上のセンサーから得られる。最も単純な場合には、入力信号Sx1は単一ラジアル移動センサーに受信され、x方向の回転子シャフトの下部の移動を測定する。一つ以上のセンサーが存在して、(正または負の)x方向の同一シャフト部分の移動を測定するようにする場合、これらの信号は制御装置入力部に供給される前に、和または差を出すことにより適切に組み合わされる。通常は、上述のように二つのセンサーがそれぞれの方向に存在する。
同様に、入力信号Sx2はx方向へのシャフトの上部移動に対応する。同じように、入力信号Sy1およびSy2は、y方向への当該シャフトの下部または上部の移動をそれぞれ示す。最後に入力信号Szはz方向の移動を示す。
制御装置301において、信号SzはCTRLzで示される制御ユニット302に供給され、出力部で制御信号Azを提供する。これは、z方向への移動を制御するのに役立つ。この目的のための適切な制御ユニットは、先行技術において周知である。そのようなものとして、例えば高周波数においてシグナル減衰用フィルターと組み合わされた比例制御装置、比例微分(PD)または比例微積分(PID)制御装置がある。
信号Sx1およびSx2は加算機303に付加され、場合によっては適切に加重した後、先行技術で周知であるようにx方向の回転子の重心並進運動に対応する信号STxを生成するようにする。同様に、信号Sy1およびSy2を付加して信号STyを生成するようにする。各並進信号STxおよびSTyは、それぞれCTRLxおよびCTRLyで示される独立制御ユニット304、304’に供給されて、出力信号ATxおよびATyを生成する。この場合も同様に、適切な制御ユニットが先行技術において知られている。これらの各信号は、スプリッタ305、305’内で分割され、場合によっては加重された後、制御信号Ax1、Ax2およびAy1、Ay2にそれぞれ寄与する。このようにして、x方向およびy方向の半径方向並進運動は一つの制御ユニットによりそれぞれ独立して制御される。
加算機306において、信号Sx1およびSy2は減算され、場合によっては適切に加重された後、x方向の傾斜に対応する信号Sθxを生成する。同様に、加算機306’において入力信号Sy1およびSy2も減算され、対応する信号Sθyを生成する。傾斜移動信号SθxおよびSθyは二つの入力部および二つの出力部を備えた傾斜制御ユニット307に供給される。このユニットは、その出力部で傾斜制御信号AθxおよびAθyを生成する。これらの各信号は次にスプリッタ308内で異なる符号を備えた二つの信号に分割され、場合によっては加重後に、アクチュエータ制御信号Ax1、Ax2およびAy1、Ay2にそれぞれ寄与する。
加算機306、306’は、より一般的には第一並進ユニット310を構成するものとしてみなすことができ、入力信号Sx1、Sx2、Sy1およびSy2を傾斜移動信号SθxおよびSθyに変換する。同様に、スプリッタ308、308’は第二並進ユニット311を構成するものとしてみなすことができ、傾斜制御信号AθxおよびAθyをアクチュエータ制御信号Ax1、Ax2、Ay1およびAy2に変換する。
したがって、大まかに言えば、傾斜運動の制御は第一にセンサー信号Sx1、Sx2、Sy1、Sy2を変換することにより達成され、傾斜移動信号Sθx、Sθyを生成する。これらは、二つの所定の、ここでは直交する方向x、yでシャフトの傾斜移動に対応する。次に、傾斜移動信号Sθx、Sθyから傾斜制御信号AθxおよびAθyが得られる。これらは次に変換され、変換によりアクチュエータ制御信号Ax1、Ax2、Ay1、Ay2を生成して電磁アクチュエータを駆動させる。
いくつかの先行技術スキームにおいて、傾斜制御ユニット307は二つの独立制御ユニットからなり、xおよびy方向に傾斜運動をするようにし、またはクロスカップリングスキームを実装することもできる。このことを図4で示す。図4は、先行技術に記載の概略的傾斜制御ユニット307を示す。当該ユニットは、CTRLθxで示される第一制御ユニット401とCTRLθyで示される第二制御ユニット402を含む。第一クロスカップリングユニット403は、第二制御ユニット402の入力信号の一部を第一制御ユニット401の出力部に供給する。第二クロスカップリングユニット404は、第一制御ユニット401の入力信号の一部をkxyで示す同一係数であるが、異符号である第二制御ユニット402の出力部に供給する。クロスカップリングユニットが離れた場合には、xおよびy方向の傾斜運動の独立制御が生じる。クロスカップリングを提供することにより、x方向の傾斜はまた、y方向およびその反対の制御信号を導く。数学的に言えば、これはある程度座標系の回転に対応し、クロスカップリングの符号は回転方向を決定する。一符号は適切に順モードを制御する一方で、その他の符号は適切に逆モードを制御する。しかしながら、傾斜移動信号Sθx、Sθyが逆モードから生じ、一方でクロスカップリングスキームが順モードを制御するよう調整される場合には、逆モードの減衰の代わりに増幅が生じる。このことから、一般にそのようなクロスカップリングスキームが(逆)翼モードを交差する周波数の付近の(順)章動を適切に制御できない理由が説明される。この動作は、たとえ先行技術において提案されるように周波数フィルターがクロスカップリングブランチ内で実行されるとしても、同じままである。というのは、周波数交差付近では、章動モードの周波数と翼モードの周波数とが本質的に類似しているからである。
その代わりに、本発明は図5に示すとおり、順モードおよび逆モードのための独立制御を提供することを提案する。ここで、傾斜制御ユニット307は二つの方向制御ユニット501および502を含む。CTRL/FWで示す第一方向制御ユニット501は順モードのみを制御するのに役立つ。すなわち、このユニットの出力信号は、入力信号が逆モードに対応する場合には単に実質的に0とはならないのに過ぎない。言い換えれば、逆モードに対応する入力信号からの出力信号は、順モードに対応する入力信号からの出力信号と比べると抑制される。当該第一方向制御ユニット501はそれゆえ、一つの具体的円偏光用のフィルターとして作動する。同じように、CTRL/BWで示す第二の方向制御ユニット502は、逆モードのみを制御するのに役に立つ。すなわち、このユニットの出力信号は、入力信号が順モードに対応する場合には単に実質的に0とはならないのに過ぎない。現実に利用する際には、入力信号は順成分と逆成分の両方を具備する。そして、各成分は、適切な方向制御ユニット内で別々に制御される。
概略的に言えば、重要なことは、方向制御ユニットによる望ましくない成分の抑制は少なくともセンサーの較正と同じくらい効果があるということなのである。センサーが未調整の場合、例えばx方向とy方向でセンサーが異なる増幅率を具備する場合、変位回転子シャフトの円順移動(数学的には、一定の長さを備えたz軸周囲の傾斜ベクトルの純粋な回転)が、楕円形として制御ユニットの入力部に現れる。楕円の順運動は他方で、より少ない増幅率の円順運動および円逆運動の重畳と理解することができる。このようにして、センサーの未調整により、たとえ逆運動がなくとも逆制御ユニットにより制御信号を得ることができ、完全な順抑制を備えた逆制御ユニットでも制御信号を得ることができる。もちろんそのような未調整は最小限にすべきである。
順方向制御ユニット501の制御スキームは、図6で示すように、概念的に四つの構成要素に分離することができる。たとえこの分離がいくらか人工的で、方向制御ユニットがこのように全く分離しなくてもよい。概念的には、傾斜移動信号Sθx、Sθyが変換ユニット601内でまず変換され、これはxy−>Fで示され、入力信号の順成分SθFのみを生成する。このユニットは円偏光フィルターとして理解することができ、光学的フィルターのようなものであり、単一の円偏光を備えた光のみを通過させることができる。順成分は光学的に帯域通過フィルター602を通過し、その中心周波数は章動周波数となる。章動周波数は回転数に依存するので、帯域は有利に調整され、回転数周囲の情報を受信し、その中心周波数を回転数の変化に応じて変化させるようにする。帯域は望ましい周波数帯以外のノイズと、章動周波数領域外の順モードから生じる信号を除去する。帯域出力は次に、CTRLθFで示される制御ユニット603に供給され、制御信号AθFを得る。この信号は、最後に他の変換ユニット604内に再変換され、傾斜制御信号Aθx、Aθyを生成する。
図7は本発明に記載の順方向制御ユニット501の有利な実施形態を示す。当該ユニットは、二つの独立ブロック701および710を含む。第二ブロック710についてまず説明する。このブロックは第一積分機711および第二積分機712を含む。第一連結ユニットは、因子a21により第二積分機712の出力をスケーリングし、それを第一積分機711の入力部に供給する。第二連結ユニット714は、因子a12により第一積分機711の出力をスケーリングし、それを第二積分機712の入力部に供給するが、異符号である。フィードバックユニット715および716は、因子a11およびa22により各積分機の出力をそれぞれスケーリングし、それ自体の入力部にこれを戻して制御装置自体を減衰するようにする。
以下、ブロック710の動作態様について説明する。クロスフィードバックスキームにおいて、二つの連結ユニット713、714を備えた二つの積分機711、712の閉鎖ループは、二次元振動子システムを構成する。この振動子の周波数は、連結ユニット713、714内の信号に適用されるスケーリングにより調整される。当該振動子は、方向制御ユニット501の二つの出力信号AθxおよびAθyを90度の固定位相差に維持し、この位相差の所定の符号を備える。当該振動子は、フィードバックユニット715、716により提供されたフィードバックにより減衰される。ブロック710の入力部で励起しなければ、振動子は振動しない。ブロック710の二つの入力部の入力信号は、入力信号が所定の振動子周波数とほぼ同じ周波数を備え、かつ振動子出力部と同じ位相関係を備えた成分を具備する場合にのみ振動子を励起する。他の全ての場合には、入力信号は振動子出力部での実質的な出力信号に導かれることはない。それゆえ、不適切な位相関係、すなわち対応する傾斜移動の誤った回転方向、つまり誤った円偏光を備えた入力信号から生じた出力信号が抑制される。また、振動子の所定の周波数とは異なる周波数を備えた入力信号から生じる出力信号もまた抑制される。よって、ブロック710は、単一ユニット内の円偏光フィルターおよび(狭帯域)周波数フィルターとして働く。
言い換えれば、ブロック710は、符号依存(つまり、回転方向依存または偏光依存)帯域通過フィルターのように動作する。符号依存帯域通過フィルターは、(「現実」および「仮想」と呼びうる)二つの入力部と、帯域中心周波数周囲の所定の周波数帯内の入力信号のためだけに入力信号を出力部に通過させる二つの出力部とを備えたユニットとして定義することができ、入力信号が、追加的に入力信号間の所定の位相関係を具備し、その位相関係が所定の回転方向(円偏光)を決定する場合に限り入力信号を出力部に通過させ、そして当該位相関係は周波数の符号と考えられる。
連結ユニット713、714およびフィードバックユニット715、716は、回転子の回転数Ω/2πに関する情報を受信する。そのような周波数情報に基づき、連結ユニットおよびフィードバックユニットはスケーリング係数a12、a21を調整して、振動子周波数を望ましい周波数ω、ここでは章動周波数に合わせ、それらが減衰係数a11、a22を調整して周波数依存光学減衰を提供できるようにする。
次に、ブロック701について説明する。ブロック701は、標準クロスカップリングスキームを実装する。スケーリングユニット702において、入力信号Sθxは係数k11によりスケーリングされる。同様に、スケーリングユニット705では、入力信号Sθyは係数k22によりスケーリングされ、好適には係数k22は、係数k11に等しい。加えて、クロスカップリングユニットが存在して、係数k12および−k21を備えたクロスカップリングをもたらす。好適には、係数k12およびk21もまた等しい。次にクロスカップリングスキームは、
Figure 0005345779
による入力信号と位相角Ф=逆正接関数(k12/k11)による座標回転のスケーリングに相当する。係数k11、k12、k21およびk22は有利には、回転数により決まりうる。
ブロック701のクロスカップリングスキームは、先行技術のクロスカップリングスキームとは異なる目的を果たす。先行技術では、クロスカップリングは、センサーにより検知されるモードに拘わらず、常に同一方向に座標システムを回転させる。対照的に、本発明では、クロスカップリングは、単一で明確なモードであり、その周波数と重要なことにはその円偏光により特定されるモードのためだけに座標システムを回転させるのに役立つ。この例として、クロスカップリングの目的は、最適な位相およびその次の振動子ユニット710の増幅を調整することにある。順・逆モードが独立して独立方向制御ユニットにより制御されるので、座標システム(すなわち位相)の回転を順モードと逆モードとで別様に選択することができる。加えて、増幅および位相は、回転数により決定することができる(または同等に回転数と振動子周波数とにより順番に決定することができる)。これらのパラメータはしたがって、回転数(または振動子周波数)に基づいて係数k11、k12、k21およびk22を選択することにより調整される。本発明のスキームにクロスカップリングを導入するにあたっては、このスキームの更なる改善が重要となる。
本発明の制御スキームは、アナログハードウェア、デジタルハードウェアまたはソフトウェアに実装することができる。本発明の制御スキームをデジタルハードウェアまたはソフトウェアに実装する場合、制御装置への全ての入力信号は、アナログデジタル変換機(ADCs)により第一にデジタル化される。デジタル出力信号は最終的に、デジタルアナログ変換機(DACs)によりアナログ制御信号に変換される。デジタルからアナログへの変換は、他の手段により実行され、または省略することが可能である。例えば、デジタルパルス幅変調方式(PWM)を用いて、スイッチング電力増幅器を制御し、アクチュエータの電磁石内の電流を直接制御するようにする場合には、デジタルからアナログへの変換は省略可能である。好適には、その制御は、デジタル信号プロセッサ(DSP)上で実施される。
以下では例を挙げる。図5記載の傾斜制御ユニットを備えた図3記載の制御装置を、適切にプログラミングされ標準パーソナルコンピューター(PC)と連動するDSPを設置することにより実装した。デジタル化された入力信号および出力信号は、DSPからPCへと送信され、シミュレーション環境Matlab(登録商標)(MathWorks社、ナティック、マサチューセッツ、アメリカ合衆国)を作動し、分析および可視化を行った。実際の移動信号は、ほぼ3000リットル/秒のポンプ能力と軸率およびほぼ1:1.3の半径方向慣性モーメントを備えたTMPから得られ、制御装置の入力部に供給された。制御装置の出力部の制御信号が用いられて、TMPのアクチュエータを駆動するようにする。
順・逆方向制御ユニット501および502は、図7に示すように実装される。順方向制御ユニットは、章動モードを制御するために最適化され、一方で逆方向制御ユニットは歳差モードを制御するために最適化された。順方向制御ユニットの係数は以下の通りである(全体的スケーリング係数と全体的符号規約に従う)。
Figure 0005345779
(順)章動モードの制御については、高周波数では、章動周波数の実効値が剛体近似で期待される値より若干低いということ、すなわち、回転数と章動周波数の間の線形関係からの逸脱があるということを考慮した。これは、二次項に小さい負の係数を持つ二次多項式によりこの関係を近似することにより達成される。章動モードの周波数を具備するが、誤った(つまり逆の)回転方向を有する入力信号から生じる出力信号は、この実行中全ての回転数で22dB以上抑制された。
逆方向制御ユニットの係数は、回転数とは独立して以下のように選択された。
Figure 0005345779
この例では、逆方向制御ユニットの係数a12およびa21は0と選択されたので、実際に方向フィルタリングはこの第二ユニットには適用されない。代わりに、クロスカップリングスキームは、低域フィルターと結合して低周波数逆歳差モードを制御するようにする。対応する低周波数で順モードが存在しないので、これは逆歳差モードの独立制御を達成するのに十分となる。しかしながら、低周波数歳差モードとは異なる逆モードを制御するために、これらの係数は有利には0とは異なる係数が選択される。
およそ150Hzより多い全回転数での安定制御は、この実施により達成される。
150Hzより少ない周波数では、先行技術に記載の標準制御スキームが用いられる。例として、図8は達成される制御の性質を示す。この図は、任意ユニット(a.u.)におけるいくつかの制御装置出力信号Aiを時間tの関数として示す。TMPは第一に、先行技術スキーム(領域801)によりΩ/2π=150Hzの回転数で制御された。次に、制御スキームは上記で明らかにされた本発明の制御スキーム(領域802)に転換された。制御信号のAiの増幅変化は、典型的に五つ以上の係数により急速に減少し、ほとんど出力ノイズがない安定制御を示した。広範な回転数での低出力ノイズは、低ノイズにより動作の円滑性が改善されるので、提案の制御スキームの他の有利な性質である。
達成可能な制御の特質はまた、図9で理解することができ、TMPの閉鎖ループ周波数応答(任意ユニットa.u.における増幅中間体)は、いくつかの異なる回転数について(絶対)周波数v(Hz)の関数として示される。周波数帯901は、Ω/2π=200Hzの回転数で記録され、一方で周波数帯905は400Hzの回転数に対応する。他の周波数帯は、50Hzずつこれらの値の間の回転数を取った。その周波数帯では、いくつかの共鳴現象が視認できる。もっとも低い周波数共鳴は歳差モードPに相当する。このモードの抑制は極端に成功しており、モードの振幅をほとんど計測することができない。章動モードNの振幅は、一層感知されるが、回転数が増加するにつれて減少する。このことは、ジャイロモードの非常に安定した制御が高い回転数でさえも達成しうることを示している。あらゆる追加翼モードおよび湾曲モードBiの振幅は、全回転数において章動モードの振幅より小さくまたは同程度であり、これらモードは制御スキームによってはほとんど影響を受けないし、あるいは励起さえしないことを示す。
異なる周波数で異なる制御スキームを提供することは本発明の範囲内に含まれる。特に、磁気軸受装置の起動中、第一の制御スキームは、先行技術の方法を含む任意の制御方法とすることができるが、所定の限界周波数以下の回転子の回転数Ω/2πにおいて用いることができる。例えば、この制御スキームは、各自由度(並進および傾斜DOF)が独立して単一入力制御ユニット、単一出力制御ユニットにより制御されるという方法をとることができる。限界周波数に達し且つそれを超えた場合にのみ、本発明に記載の制御スキームによる制御が実行される。これは、本発明のスキームを具体的に適合させるジャイロモードが低回転数ではあまり重要でなく、独立制御ユニットを備えた「標準」制御スキームが低回転数ではより適合するので、有利となる。上記の例のTMPにとっては、限界周波数は150Hzである。
制御装置の上記実施形態および制御の方法は、回転数750Hz以下の多様な他の磁気軸受装置にうまく応用される。安定的な制御は、あらゆる応用において達成された。さらに高い回転数でも容易に予想される。
一実施形態を詳細に説明したが、本発明は他の方法でも実施可能である。
図7に示す方向制御ユニット501を実行する代わりに、例えば離散型フーリエ変換(DFT)を用いて実行することが可能である。このために、方向制御ユニットはこの場合も同様に二つの入力部を具備する。方向制御ユニットでは、複合入力変数を入力部で傾斜移動信号SθxおよびSθyから形成し、Sθ=Sθx+jSθyの形をとり、j2=−1である。Sθは、時間tにおける離散点でサンプリングされる。ωを制御されるべき選択モードの所定の角周波数と指定する。正の符号は順モードを示し、負の符号は逆モードを示す。順モードのための方向制御ユニットでは、式DFW(ω;t)=Sθ(t)・exp(−j|ω|t)が形成され、低域フィルターに従う。数学的には、低域フィルターは時間の(限界)積分にほぼ相当する。したがって、数学的な用語で言えば、周波数ωでの複合信号のDFTの近似値(周波数ωでの信号の近似フーリエ要素)が得られる。これは式SθFW(ω;t)=LP(DFW(ω;t))・exp(j|ω|t)を形成することにより再変換され、LP(...)は低域フィルターを示す。この結果は、複合時間依存信号SθFWとなる。最終的に、信号SθFWは、実在部と仮想部とに分離され、x方向とy方向への分離制御信号AθxおよびAθyを生成する。入力信号、つまり傾斜移動信号SθxおよびSθyが所定の円偏光を備えた成分を具備している場合にのみ、すなわち入力信号が第一所定回転方向で装置軸z周囲を回転する傾斜ベクトルを備えた傾斜移動に対応する成分を具備する場合に、これらの信号は実質的に0とは異なる。要するに、このDFTスキームは周波数および円偏光用の結合フィルターとして作動する。
低域フィルターが一次フィルターである場合、このDFTスキームの変換機能は、図7のブロック710におけるような二つの結合積分機による実行と同じである。高次フィルターが使用される場合には、変換機能は二つ以上の結合積分機による実行と同じである。したがって、図7のブロック710において、二つ以上の積分機を使用することにより異なる(より狭帯域、高次元の)周波数応答を与えるようにする。
同様に、所定の周波数ωの逆モード用の方向制御ユニットにおいて、DBW(ω;t)=Sθ(t)・exp(j|ω|t)およびSθBW(ω;t)=LP(DBW(ω;t))・exp(−j|ω|t)が計算される。DFTの入力または出力は一般に固定された所定の位相により更なる相回転に従い、最適な減衰を達成するようにする。ハードウェアでは、この相回転は図7におけるブロック701等のモジュールにより簡単に実施される。ソフトウェアでは、この相回転は、所定の位相角φを備えたexp(jφ)による複合入力・出力信号の増加に相当する。
方向制御信号が同時周波数フィルターを利用することなく順成分および逆成分のみに分離される場合、周波数値ωの離散グリッドに関して上述の手順を実行し、その結果生じる出力信号SθFW(ω;t)およびSθBW(ω;t)をωの全ての値に対してそれぞれ加算して、これを達成することができる。その結果として、追加周波数フィルタリングをせずに純粋な円偏光フィルターとなる。
これら全ての動作は、上述のようにソフトウェアまたはハードウェアにおいて実行することができる。
ハードウェアの実施形態では、例えばいわゆるトラッキングフィルターを用いることにより、上述のDFT実装と同じ動作が達成される。トラッキングフィルターは、不平衡補償のような他の目的に関する先行技術文献で周知である。例として、米国特許第4,697,128号明細書が挙げられる。
具体的に適合させたトラッキングフィルターを利用する(順)方向制御ユニット501’の実施形態が図10に示される。方向制御ユニット501’は、所定の円偏光とその入力部における信号の所定の周波数用の結合フィルターを実装する。当該ユニットは二つの独立ブロック701および1001を含む。ブロック701は図7の対応ブロックと同一である。図7に関して述べたように、このブロックは、入力信号の位相を切り替える(言い換えれば、所定の位相角により座標システムを回転する)のに役に立ち、その後のトラッキングフィルターにより減衰されるべき選択モードの最適な減衰が達成されるようにする。ブロック701をブロック1001の前(上流)に配置する代わりに、ブロック1001の後ろ(下流)に配置することもできる。
ブロック1001はトラッキングフィルターを実装する。ブロック1001は、サイン/コサイン発生器1002、並進ユニット1003、二つの低域フィルター1005および1006、および逆並進ユニット1004を含む。これらのユニットについて、以下でより詳細に説明する。
サイン/コサイン発生器は、その入力部において、ある程度の回転角速度Ωを、例えばパルスセンサーまたはいわゆるレゾルバからのパルスの形で受信する。この周波数に基づき、減衰されるべきモードの期待角周波数ω、例えば章動周波数を決定し、その出力部でcosωtおよびsinωtにそれぞれ比例する一対の信号を提供する。この一対の信号は、並進ユニット1003および1004に供給される。
並進ユニット1003は、ブロック701の出力部で信号Sθx’、Sθy’を回転フレーム(周波数ωと回転する座標システム)に変換するよう作動する。このため、マトリクス
Figure 0005345779
とベクトル
Figure 0005345779
のマトリクス乗算を実行する。
これは、上のDFT実行の際、式DFW’(ω;t)=Sθ’(t)・exp(−jωt)を形成するのに等しく、Sθ’(t)=Sθx’+j・Sθy’となる。並進ユニット1003の両出力は、次に低域フィルタリングに従う。結果として生じる信号は次に逆数マトリクスT-1=Tによるマトリクス乗算により変換される。これにより直接的にxおよびyの傾斜に対する制御信号AθxおよびAθyがもたらされる。逆方向制御ユニットが実行される場合には、上の式においてωを−ωに置き換えられなければならない。
上の実施形態では、センサーが存在して、三つの相互に直交する方向に移動信号を直接提供するようにする。同様に、上記実施形態では、アクチュエータは直交方向に作動する。しかしながら、一般には、他の配置が可能である。測定された移動信号が適切であり、制御されるべき五つの全自由度への移動を決定する限り、センサーは指示された直交方向に移動信号を必ずしも提供する必要はない。同様に、アクチュエータの作動方向は相互に直交する必要はない。適切な並進スキーム、例えばいわゆる円錐ころ軸受または2×3ラジアルアクチュエータの配置のための並進スキームが先行技術で周知である。本発明はまた、磁気軸受装置を制御するのに適用可能であり、軸方向軸受は積極的には制御されない。
本発明の制御方法はまた、上述の状況とは異なる他の状況に適用することができる。有利な実施形態では、当該発明は「タッチダウン」状況における磁気軸受装置の制御に適用される。磁気軸受装置の停止、起動中、または緊急事態の際に回転子を支持するために、通常補助のタッチダウンボール軸受が設けられる。磁気軸受装置の典型的動作では、これらのボール軸受は作動的ではない。しかしながら、突然の大きな障害により、高い回転数ではシャフトがこれらのボール軸受の一つと接触する場合がある。これにより、シャフトが傾斜し、シャフトの傾斜ベクトルが回転子の回転数で(すなわち傾斜ベクトルの回転が回転子と同期であること)、回転子自体の回転方向と同じ方向で装置軸の周りを急速に回転する。このようにして、タッチダウンは同期順モードをもたらす。標準制御スキームはそのような障害に適切に応答するよう調整されないので、先行技術のスキームを備えたこのモードを制御し減衰することは、非常に困難である。しかしながら、本発明のスキームを備えた場合、予定外のタッチダウンがあった後の回転子の運動を、同期順モードを選択的かつ迅速に減衰することにより効果的に安定化することができる。このため、本発明に記載の制御装置が設けられ、当該回転数での順モードのためだけの傾斜制御信号を生成する。この制御装置は、他のモードの制御に影響を与えないように狭帯域とする。また、追加的制御装置を並列に設けることもできる。同一の原則がまた副同期障害にうまく適用される。
他の有利な用途として、本発明は臨界速度(横臨界速度、臨界湾曲速度)で回転子の安定化に利用される。そのような回転数で、回転子シャフトの大規模同期湾曲振動は、不平衡を原因として励起する場合がある。先行技術では、これは既知の不平衡補償スキームを利用することにより回避され、湾曲振動を減衰する。本発明の文脈では、回転子の臨界速度において湾曲モードは、およそ同期順モード、すなわち回転数における順モードとしてみなすことができる。本発明のスキームを用いれば、このモードは回転子周波数での狭帯域周波数フィルタリングを用いて順制御ユニットを設けることにより選択的に制御することができる。この場合も同様に、そのようなユニットを他のモードを制御するために調整された他の制御装置に加えて、設けることができる。
TMPに関連して本発明を説明したが、本発明がそのような利用に制限されないのは明らかである。本発明は、磁気軸受装置により回転子の回転を支持するあらゆる状況で利用可能である。TMP以外の他の型のポンプ、印刷機のシャフト、電力発電機のシャフトなどが例として挙げられる。
磁気軸受装置において浮遊する回転子の極めて概略的な側面図である。 回転子の固有モードの回転子速度依存を示す略図である。 一般的制御スキームのブロック図である。 先行技術文献に記載の制御ユニットのブロック図である。 本発明に記載の制御ユニットのブロック図である。 本発明に記載の章動モードのための制御スキームのブロック図である。 本発明の好適な実施形態に記載の制御ユニットのブロック図である。 本発明に記載の制御装置の出力部における信号の時間依存性を示す図である。 異なる回転数で本発明の方法を用いて制御される回転子の周波数スペクトルを示す図である。 本発明の代替的実施形態に記載の制御ユニットのブロック図である。

Claims (14)

  1. 磁気軸受装置(100)の制御方法であり、シャフト(101)を含む回転子が磁気的に支持されて装置軸(z)の周りを回転し、前記軸受装置(100)は複数の電磁アクチュエータ(111、112、113、114、121、122、123、124)を含んでシャフト(101)に半径方向力を与え、複数のセンサー(141、142、151、152)を含んでシャフト(101)の半径方向移動を検知し、前記センサー(141、142、151、152)はセンサー信号(Sx1、Sx2、Sy1、Sy2)を供給し、前記方法は、
    − センサー信号(Sx1、Sx2、Sy1、Sy2)から少なくとも二つの移動信号(Sθx、Sθy)を得て、各信号は所定の方向(x、y)でシャフト(101)の傾斜移動に対応する工程と、
    − 傾斜移動信号(Sθx、Sθy)から一つ以上の第一傾斜制御信号(Aθx、Aθy)を得る工程と、
    − 第一傾斜制御信号(Aθx、Aθy)を変換してアクチュエータ制御信号(Ax1、Ax2、Ay1、Ay2)を得て、電磁アクチュエータ(111、112、113、114、121、122、123、124)を駆動するようにする工程を含む方法において、
    第一傾斜制御信号(Aθx、Aθy)を得る工程は、装置軸(z)の周りの傾斜ベクトルの第一規定回転方向用および所定の周波数用の結合フィルターを前記傾斜移動信号(Sθx、Sθy)に適用する工程を含み、前記所定の周波数は回転子の固有モードの周波数に相当し、前記固有モードは前記回転数と概して非同期であり、前記第一規定回転方向用のフィルターは、周波数が同様又は同一であっても、装置軸周りの傾斜ベクトルの回転方向が異なる傾斜モードを識別することを特徴とする制御方法。
  2. 前記方法はさらに、
    − 回転子の回転数を決定する工程と、
    − 前記回転数に応じて前記の所定の周波数を計算する工程と、
    − 前記フィルターの中央周波数を前記の所定の周波数に設定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法はさらに、
    − 第一傾斜移動信号をスケーリングし、それを第二傾斜移動信号に付加して、変換された第二傾斜移動信号を得る工程と、
    − 第二傾斜移動信号をスケーリングし,それを第一傾斜移動信号に付加して,変換された第一傾斜移動信号を得るようにする工程と
    を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記方法はさらに以下の、
    − 傾斜移動信号(Sθx、Sθy)から0と異なる第二傾斜制御信号を得て、傾斜移動信号は、第一規定回転方向と反対の第二規定回転方向に装置軸の周りを回転する傾斜ベクトルを備えた傾斜移動に対応する成分を具備する工程と、
    − アクチュエータ制御信号(Ax1、Ax2、Ay1、Ay2)を得る前に第二傾斜制御信号を第一傾斜制御信号と結合する工程と
    を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  5. 磁気軸受装置(100)を制御する制御装置であって、シャフト(101)を含む回転子が磁気的に支持されて装置軸(z)の周りを回転するようにし、前記制御装置が回転子シャフト(101)の傾斜移動を制御する傾斜制御ユニット(307)を含む制御装置において、
    前記傾斜制御ユニット(307)は入力信号用の少なくとも二つの入力部と少なくとも一つの出力部を具備する第一方向制御ユニット(501)を含み、前記第一方向制御ユニットは、入力信号の第一規定円偏光用の結合フィルターと、所定の周波数とを含み、前記の所定の周波数は回転子の固有モードの周波数に相当し、前記固有モードは前記回転数と概して非同期であり、前記第一規定円偏光用のフィルターは、装置軸周囲の傾斜ベクトルの回転方向が異なる傾斜モードに対応する入力信号を、たとえ前記傾斜モードが同様または同一周波数を具備するモードであっても識別することを特徴とする制御装置。
  6. 前記制御装置はさらに、周波数制御手段を含んで前記回転子の回転数を決定し、前記回転数に応じて前記結合フィルター(710;1001)の前記の所定の周波数を計算するようにすることを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
  7. 第一方向制御ユニット(501)は、第一および第二積分機(711、712)を含み、各積分機は一つの入力部および一つの出力部を有し、第二積分機(712)の出力部は第一連結ユニット(713)により第一積分機(711)の入力部と連結され、第一積分機(711)の出力部は第二連結ユニット(714)により第二積分機(712)の入力部に連結され、かつ第一連結ユニット(713)により設けられた連結器の符号は第二連結ユニット(714)により設けられた連結器の符号と反対であることを特徴とする請求項5または6に記載の制御装置。
  8. 前記結合フィルター(710;1001)は、前記の所定の周波数を中心とするトラッキングフィルターを含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の制御装置。
  9. 第一方向制御ユニット(501)はさらに、変換ブロック(701)を含んで、第一方向制御ユニット(501)の第一入力部および第二入力部の間にクロスカップリングを実装し、前記変換ブロック(701)は第一クロスカップリングブランチ(703)を含んで第一入力部で第一信号をスケーリングし、スケーリングされた第一信号を第二入力部の信号に付加して変換された第二信号を生成し、かつ第二クロスカップリングブランチ(704)を含んで第二入力部で第二信号をスケーリングし、スケーリングした第二信号を第一信号に付加して変換された第一信号を生成することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の制御装置。
  10. 前記傾斜制御ユニット(307)はさらに、第一入力部、第二入力部および少なくとも一つの出力部を具備する第二方向制御ユニット(502)を含み、前記第二方向制御ユニット(502)は第一規定円偏光と反対の第二規定円偏光用のフィルターを含むことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の制御方法。
  11. 前記傾斜制御ユニット(307)は、第一入力部、第二入力部および少なくとも一つの出力部を具備する複数の方向制御ユニット(502)を含み、各方向制御ユニット(502)は前記第一規定円偏光と所定の周波数用の結合フィルターを含み、前記の所定の周波数は各方向制御ユニットで異なることを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の制御装置。
  12. 前記制御装置はさらに、センサー信号(Sx1、Sx2、Sy1、Sy2)を変換する第一変換ユニット(310)を含んで少なくとも二つの傾斜移動信号(Sθx、Sθy)を生成し、各傾斜移動信号は所定の方向(x、y)でシャフト(101)の傾斜に対応し、傾斜移動信号は傾斜制御ユニット(307)に供給され、当該傾斜制御ユニットは傾斜制御信号を供給する少なくとも二つの出力部を具備し、当該制御装置はさらに第二変換ユニット(311)を含んで傾斜制御信号(Aθx、Aθy)をアクチュエータ制御信号(Ax1、Ax2、Ay1、Ay2)に変換して電磁アクチュエータ(111、112、113、114、121、122、123、124)を駆動させるようにすることを特徴とする、シャフト(101)上の半径方向力を発する複数の電磁アクチュエータ(111、112、113、114、121、122、123、124)と、当該シャフト(101)の半径方向移動を検知し、センサー信号(Sx1、Sx2、Sy1、Sy2)を供給する複数のセンサー(141、142、151、152)を含む軸受装置(100)用の請求項5乃至11のいずれかに記載の制御装置。
  13. シャフト(101)を含んで装置軸(z)の周りを回転する回転子を磁気的に支持する磁気軸受装置(100)において、当該磁気軸受装置(100)は、請求項5乃至12のいずれかに記載の制御装置(301)を含むことを特徴とする磁気軸受装置。
  14. 磁気軸受装置(100)と当該磁気軸受装置により支持された複数の回転子翼を備えた回転子を含み、請求項5乃至12のいずれかに記載の制御装置(301)を含むことを特徴とするターボ分子ポンプ。
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