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JP5370982B2 - 組換えプロテアーゼの製造方法 - Google Patents
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JP5370982B2 - 組換えプロテアーゼの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、組換えプロテアーゼの製造方法に関し、詳しくはプロテオーム解析に有用なV8プロテアーゼ等のプロテアーゼの遺伝子組換え技術を用いた供給方法に関する。
プロテアーゼは細胞内および細胞外タンパク質代謝に必須であり、また、細胞内シグナル伝達においても重要な働きをする。これらの生物学的な重要性の他に、タンパク質化学の分野では種々のプロテアーゼが研究のツールとして利用されている。最近では、ゲノム解析によりタンパク質データベースが充実し、切断したペプチドの質量分析を行うことにより、数千個のタンパク質を一挙に同定するプロテオーム解析が可能となっている。プロテオーム解析において、アルギニンとリジンのカルボキシル側のペプチド結合を特異的に切断するトリプシン、アルギニンのみに特異的なプロテアーゼ、および酸性アミノ酸、特にグルタミン酸のカルボキシル側を特異的に切断する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)V8プロテアーゼ(GluV8、EC 3.4.21.19)が汎用されている。
GluV8は界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下でも酵素活性を保持するため、SDSを含むポリアクリルアミドゲル中のタンパク質への使用が可能である。GluV8は現在、産生細菌であるS. aureus V8株培養上清から精製された標品が市販されているが、大腸菌でリコンビナントプロテアーゼの発現が可能となればコストダウンがはかれる。さらに遺伝子改変によって、より高い活性や安定性を有する酵素分子の生産も可能となる。また、病原性細菌であるS. aureus由来の精製標品には、種々の病原因子の混入の可能性も否定できないことから、リコンビナント標品の発現および精製が可能になれば本酵素の利用範囲が広がるものと期待される。
大腸菌を用いた遺伝子発現系において、カスパーゼなどの一部のプロテアーゼの産生が可能となっているものの、一般にGluV8を含む多くのプロテアーゼの発現は困難であると考えられている。その原因として、まず、大腸菌内で導入遺伝子の転写および翻訳が進行したとしても、高次構造の構築がうまくいかない可能性がある。特にジスルフィド結合を有する場合には、正しいペアを形成することは難しい。一方、正常なフォールディングが起きた場合は、発現したプロテアーゼの活性が宿主に毒性をもたらすと考えられている。
藪田ら(非特許文献1)は、成熟型GluV8のN末およびC末両側に外来性のアミノ酸配列を導入することにより、不溶性分子としてGluV8を大腸菌で発現させた。この発現法では、リコンビナント分子は沈殿物である封入体として発現されるため、これを精製後、可溶化、付加アミノ酸配列の切断、再生、その後にGluV8を精製するという煩雑な操作を要する(特許文献1)。可溶化(変性)−再生操作での活性プロテアーゼの収率は精製標品の20%であり高くはない。従って、より簡便かつ効率的な活性型プロテアーゼ発現法の確立は有意義である。
GluV8は336アミノ酸よりなるトリプシンファミリーエンドペプチダーゼである(非特許文献2)。C末部分にPro-Asn(またはAsp)-Asnトリペプチドの12回繰り返し構造があるが(非特許文献3)、この配列は酵素活性や高次構造形成には関与していないとされている(非特許文献1)。S. aureusにおいてはプロテアーゼ活性を持たない不活性型として発現するが、サーモライシンファミリー酵素であるオーレオライシンによるプロセシングによりAsn68-Val69が切断され、268アミノ酸よりなる成熟型に変換する(非特許文献4)。
本発明者らは以前に、黄色ブドウ球菌GluV8の類縁酵素である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)由来グルタミン酸特異的プロテアーゼ(GluSE)を精
製し、その遺伝子をクローニングした(非特許文献5)。GluSE遺伝子は282アミノ酸をコードし、予想される分子量は30,809であった。前記遺伝子は、GluV8に存在するC末端繰り返し配列はコードしていなかった(図1A)。
特開平8−187094号公報 Yabuta, M., et al., Appl. Microbiol. Biotech. 44, 118-125 (1995) Stennicke H. R. and Breddam K., Handbook of Proteolytic Enzymes. San Diego: Academic Press, 243-246 (1998) Carmona C. and Gray G. L., Nucleic Acids Res. 15, 6757 (1987) Shaw, L. et al., Microbiology 150, 217-228 (2004) Ohara-Nemoto, et al., Microb. Pathog. 33, 33-41 (2002)
本発明の目的は、黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼ等の有用プロテアーゼの安価で大量な供給手段の提供である。
本発明者らがクローニングしたGluSEのアミノ酸配列(配列番号2)において、N末端のプレプロ配列(配列番号8)は66残基であり、GluV8のプレプロ配列(配列番号5)より2アミノ酸少なかった。さらに表皮ブドウ球菌が分泌するGluSEのN末端のプロセシング過程の解析の結果、GluSEのプレプロ配列(配列番号8)のうちプレ配列がMet1-Ala27(配列番号6)、プロ配列がLys28-Ser66(配列番号7)であることが明らかとなった(Ohara-Nemotoら、投稿準備中)。N末端プレプロ配列のプロセシングの結果、GluSEは216アミノ酸よりなる成熟分子となる。プロ配列の2残基とC末端のGluV8にユニークな繰り返し配列部分を除いてGluSEとGluV8のアミノ酸の相同性を比較すると、プレ配列、プロ配列、成熟分子領域でそれぞれ37%、20.7%、59.1%であり、プロ配列領域の相同性が最も低かった(図1B)。
本発明者らは、不活性型のGluSEを可溶性タンパク質として大腸菌発現系で大量生産することに成功し、GluSEのプレプロ配列は大腸菌のプロテアーゼで切断されないことを見出した。さらに、GluSEのプレプロ配列のin vitroプロセシングによる活性型プロテアーゼの精製方法を確立した。本発明者らは、かかる知見に基づいて、大腸菌の発現系において、GluV8の大量生産と精製にも成功し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者らは、GluV8のプレプロ配列にも着目して本発明者らが開発した大腸菌発現系に活かすべく鋭意検討した結果、GluV8のプレプロ配列中の5つのアミノ酸を置換することによってもプロテアーゼを高収量で得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本願発明は、以下に示す通りである。
〔1〕大腸菌で作動可能なプロモーター、および表皮ブドウ球菌由来グルタミン酸特異的プロテアーゼのプレプロ配列をコードするヌクレオチドと成熟型プロテアーゼをコードするヌクレオチドとがインフレームで連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する、大腸菌で不活性型可溶性プロテアーゼを発現するベクター。
〔2〕前記プレプロ配列が配列番号8のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、または少なくとも配列番号8の64位のチロシンから66位のセリンからなるアミノ酸配列を含むペプチドである、前記〔1〕記載の発現ベクター。
〔3〕前記成熟型プロテアーゼが黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼである、前記〔1〕または〔2〕に記載の発現ベクター。
〔4〕大腸菌で作動可能なプロモーター、および黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼのプレプロ配列を5アミノ酸置換した変異プレプロ配列をコードするヌクレオチドと成熟型プロテアーゼをコードするヌクレオチドとがインフレームで連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する、大腸菌で不活性型可溶性プロテアーゼを発現するベクター。
〔5〕前記変異プレプロ配列が配列番号17のアミノ酸配列を有するペプチドである、前記〔4〕記載の発現ベクター。
〔6〕前記成熟型プロテアーゼが黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼである、前記〔4〕または〔5〕に記載の発現ベクター。
〔7〕前記発現カセットが、成熟型プロテアーゼのC末端にタグを付加するように、さらにタグコードヌクレオチドがインフレームで連結されているものである、前記〔1〕〜〔6〕いずれか1項に記載の発現ベクター。
〔8〕前記プロモーターがT5プロモーター/ラクトースオペレーターである、前記〔1〕〜〔7〕いずれか1項に記載の発現ベクター。
〔9〕前記黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼがC末端のPro-Asp-AsnまたはPro-Asn-Asnからなる3アミノ酸の12回繰り返し配列を欠損したものである、前記〔3〕または〔6〕に記載の発現ベクター。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕いずれか1項に記載の発現ベクターを含む形質転換体。
〔11〕下記工程:
前記〔10〕記載の形質転換体を培養する工程、
培養工程で得られた培養物を回収する工程、および
回収した培養物からプロテアーゼを精製する工程
を含む、不活性型プロテアーゼの製造方法。
〔12〕下記工程:
前記〔10〕記載の形質転換体を培養する工程、
培養工程で得られた培養物を回収する工程、
回収した培養物からプロテアーゼを精製する工程、および
精製したプロテアーゼを酵素処理して、プレプロ配列を切断する工程
を含む、活性型プロテアーゼの製造方法。
〔13〕表皮ブドウ球菌由来グルタミン酸特異的プロテアーゼのプレプロ配列をコードするヌクレオチドを含有する、大腸菌で不活性型可溶性タンパク質を製造するためのベクター。
〔14〕前記プレプロ配列が配列番号8のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、または少なくとも配列番号8の64位のチロシンから66位のセリンからなるアミノ酸配列を含むペプチドである、前記〔13〕記載のベクター。
〔15〕黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼのプレプロ配列を5アミノ酸置換した変異プレプロ配列をコードするヌクレオチドを含有する、大腸菌で不活性型可溶性タンパク質を製造するためのベクター。
〔16〕前記変異プレプロ配列が配列番号17のアミノ酸配列を有するペプチドである、前記〔15〕記載のベクター。
本発明の発現ベクターによると、大腸菌の発現系では切断されないGluSEのプレプロ配列またはGluV8の変異プレプロ配列を目的タンパク質(成熟プロテアーゼ)のN末端に連結可能な発現カセットを含むことから、不活性型でしかも可溶性のキメラタンパク質、好ましくは外来性の不活性型プロテアーゼを大量に生産することが可能である。本発明の形質転換体によると、前記発現ベクターを含むことから、培養中に目的のキメラタンパク質または組換えタンパク質を封入体ではなく容易に可溶化できる形態で製造可能である。本発明の形質転換体を用いたプロテアーゼの製造方法によると、不活性型可溶性プロテアーゼを大量かつ容易に得ることができ、プロテオーム解析等の酵素として大量供給が可能である。さらに、本発明により製造されたGluV8のプロテアーゼ活性は、GluSEのプロテアーゼ活性より高く、GluV8の方がより利用価値が高いことも明らかとなった。
本発明は、大腸菌で作動可能なプロモーター、および表皮ブドウ球菌由来グルタミン酸特異的プロテアーゼのプレプロ配列をコードするヌクレオチドと成熟型プロテアーゼをコードするヌクレオチドとがインフレームで連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する、大腸菌で不活性型可溶性プロテアーゼを発現するベクターを提供する。
本発明の発現ベクターに含まれる発現カセットの最大の特徴は、表皮ブドウ球菌由来グルタミン酸特異的プロテアーゼのプレプロ配列をコードするヌクレオチドを構成要素として含むことにある。
表皮ブドウ球菌由来グルタミン酸特異的プロテアーゼとは、本発明者らがクローニングしたプロテアーゼであって(Ohara-Nemoto, et al., Microb. Pathog. 33, 33-41 (2002))、その塩基配列およびアミノ酸配列(配列番号2)はGenbankに登録されており(AB096695)、公知である。
GluSEのプレプロ配列とは、成熟型プロテアーゼのN末端に連結された状態で当該プロテアーゼの活性を不活化し、切断されることにより当該プロテアーゼを活性化させる調節機能を有するペプチドをいう。具体的には、配列番号8に記載のアミノ酸配列(配列番号2の1位〜66位のアミノ酸配列)を有するペプチドがあげられる。GluSEのプレプロ配列は、前記調節機能を有する限り、配列番号8に記載のアミノ酸配列において、1または数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個)のアミノ酸の置換、欠失、挿入等の変異が導入された配列を有するペプチドであってもよい。プレプロ配列のアミノ酸配列の変異の例としては、実施例に記載のような配列番号8に記載の1位のメチオニンと2位のリジンの間にGly-Gly-Serの3アミノ酸の挿入がなされたプレプロ配列があげられる。
また、本発明においては、本質的に配列番号6に記載の27個のアミノ酸配列(配列番号2の1位〜27位のアミノ酸配列)からなるペプチドをGluSEのプレ配列という。また、本発明においては、本質的に配列番号7に記載の39個のアミノ酸配列(配列番号2の28位〜66位のアミノ酸配列)からなるペプチドをGluSEのプロ配列という。
酵素活性を阻害する機能を有する短縮型変異プロ配列(truncated prosequence)として次の5種類の配列が同様に有効であることを確認した。(1) Ser33-Ser66、(2) Ile49-Ser66、(3) Ile56-Ser66、(4) Asn61-Ser66、(5) Tyr64-Ser66
したがって、前記プレプロ配列は、そのC末端側に位置するプロテアーゼの活性を大腸菌での発現において不活性化させておく機能を有する点から、配列番号8のアミノ酸配列を有するペプチドであってもよいが、少なくとも配列番号8の64位のチロシンから66位のセリンからなるアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。
また、本発明は、大腸菌で作動可能なプロモーター、および黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼのプレプロ配列を5アミノ酸置換した変異プレプロ配列をコードするヌクレオチドと成熟型プロテアーゼをコードするヌクレオチドとがインフレームで連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する、大腸菌で不活性型可溶性プロテアーゼを発現するベクターも提供する。
本発明において黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼ(EC 3.4.21.19、Genbank登録番号:Y00356、成熟体の例として、配列番号1の69位〜336位のアミノ酸配列を有するタンパク質、以下、「GluV8」と省略する場合がある)のプレプロ配列とは、成熟型プロテアーゼのN末端に連結された状態で当該プロテアーゼの活性を不活化し、切断されることにより当該プロテアーゼを活性化させる調節機能を有するペプチドをいう。具体的には、配列番号5に記載のアミノ酸配列(配列番号1の1位〜68位のアミノ酸配列)を有するペプチドがあげられる。また、GluV8のプレプロ配列は、そのN末端側をプレ配列(具体例として、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するペプチド)、そのC末端側をプロ配列(具体例として、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチド)として分けることもできる。
GluV8の変異プレプロ配列とは、成熟型プロテアーゼのN末端に連結された状態で当該プロテアーゼの活性を不活化し、切断されることにより当該プロテアーゼを活性化させる調節機能を有するペプチドであって、大腸菌の発現系では切断されないようにそのアミノ酸配列が置換されたペプチドをいう。GluV8の変異型プレプロ配列は、配列番号5に記載のアミノ酸配列において、少なくとも4アミノ酸の置換、好ましくは5アミノ酸の置換、より好ましくはプロ配列(配列番号5の28位〜68位のアミノ酸配列)中の5アミノ酸の置換が導入された配列である。5アミノ酸置換の好ましい具体例として、GluV8の変異型プレプロ配列は、MKGKFLKVSSLFVATLTTATLVSSPAANALSSKAMHNHPQQTQSSKQQTPKIQKGGNLKPLQQRSHPS(配列番号17)に記載のアミノ酸配列を有するペプチドである。GluV8の変異プレプロ配列は、前記機能を有する限り、配列番号17に記載のアミノ酸配列において、さらに1または数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個)のアミノ酸の置換、欠失、挿入等の改変が導入された配列を有するペプチドであってもよい。GluV8の変異プレプロ配列のアミノ酸配列のさらなる改変の例としては、1位のMetと2位のLysの間に発現ベクター由来の3アミノ酸が挿入されたもの(図6b参照)などがあげられる。また、別の改変の例として、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するペプチドにおいて、67位のProをAlaに置換して67位を野生型のGluV8のアミノ酸に戻した4アミノ酸置換の変異型プレプロ配列があげられる。
本発明において、発現対象のプロテアーゼとしては、タンパク質の解析および調製に適したプロテアーゼのみならず、様々な産業で利用可能なあらゆるプロテアーゼ、例えば、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、シグナルペプチダーゼ、金属エンドペプチダーゼがあげられる。
好ましいプロテアーゼとしては、これまで組換えタンパク質として製造が困難であったプロテアーゼの例として黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼ(EC 3.4.21.19、Genbank登録番号:Y00356、成熟体の例として、配列番号1の69位〜336位のアミノ酸配列を有するタンパク質)およびS. warneri由来グルタミン酸特異的プロテアーゼ(EC 3.4.21.9、Genbank登録番号:AJ293885、Yokoi K et al., Gene, 281, 115-122 (2001)、例えば配列番号18のアミノ酸配列を有するたんぱく質)、血液凝固-線溶系のプロテアーゼとして、Factor Xa (EC 3.4.21.6)、プラスミン (EC 3.4.21.7)、組織型プラスミノゲン活性化因子(t-PA, EC 3.4.21.68)あるいはウロキナーゼ(u-PA, EC 3.4.21.73)、トロンビン (EC 3.4.21.5)、細胞培養に汎用されるコラゲナーゼ(EC 3.4.24.3)、歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalis由来のアルギニン特異的プロテアーゼ(アルギニルジンジパイン(Rgp1、Rgp2))、リジン特異的プロテアーゼ(リジルジンジパイン(Kgp))などがあげられる。かかるプロテアーゼをコードするヌクレオチドは、開示された塩基配列またはアミノ酸配列に基づいて、自体公知の方法により得ることができる。
好ましいプロテアーゼとしてGluV8(成熟体の例として、配列番号1の69位〜336位のアミノ酸配列を有するタンパク質)を選択した場合、当該プロテアーゼのC末端側のPro-Asp-AsnまたはPro-Asn-Asnからなる3アミノ酸の繰り返し配列を欠損した改変GluV8であってもよい。改変GluV8の例としては、前記繰り返し配列の全部欠損体または一部欠損体のいずれであってもよい。前記繰り返し配列の数は、配列番号1の69位〜336位のアミノ酸配列を有するGluV8の場合12個(289位〜324位のアミノ酸配列に相当)であり、全部欠損体の場合は12個の繰り返し配列の欠損を有し、一部欠損体の場合は1〜11個のいずれかの繰り返し配列の欠損を有するものである。かかる改変プロテアーゼをコードするヌクレオチドは、当該技術分野で用いられる遺伝子組み換え技術により得ることができる。
発現対象のプロテアーゼの精製を容易にならしめるためには、当該プロテアーゼのC末端にタグを付加するように発現カセットを設計することが好ましい。この場合、前記発現カセットは、成熟型プロテアーゼコードヌクレオチドの3’側にさらにタグコードヌクレオチドがインフレームで連結されている。
前記タグとしては、組換えタンパク質の精製に使用されているタグが制限なく用いられ、Hisタグ、Mycタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、FLAG、マルトース結合タンパク質(MBP)などがあげられるが、タグ部分の分子量が最も小さいこと、変性状態でも精製が可能であること、及び精製にかかるコストが安価であることからの理由により、Hisタグが好ましい。
発現カセットに含まれる「大腸菌で作動可能なプロモーター」としては、特に限定されるものではなく、公知の大腸菌発現用ベクターに組み込まれて使用されているあらゆるプロモーターを使用することができる。本発明の発現対象のプロテアーゼは、常時発現した場合に宿主大腸菌に対して毒性をもたらすことが予測されるので、プロモーターとオペレーター/サプレッサーの組合せからなるプロモーターが好ましく、ラクトースプロモーター/ラクトースサプレッサーが好適な例としてあげられる。かかるプロモーターは、市販の発現ベクターから切り出して使用することもでき、自体公知の方法により得ることができる。特に、pQE−60(キアゲン社製)は、強力なT5プロモーターに続いて2つのラクトースオペレーター、その下流に位置するマルチクローニングサイト、およびHisタグコード配列を含み、発現産物のC末端にHisタグを付加することが可能な大腸菌発現ベクターであるので、本発明の発現ベクターの構築に好適に利用することができる。
発現カセットの構築は、前記プロモーターと各種ヌクレオチドがインフレームに連結されるように行う。このような連結方法は、当該技術分野で公知であり、当業者であれば自体公知の方法に従って発現カセットを作製することができる。発現カセットがインフレームで連結する場合、連結部位に追加のコドンが生じてもよい。
本発明の発現ベクターは、前記発現カセットを含み、かつ大腸菌で機能する限り、プラスミドベクター、ファージベクターのいずれのバックボーンでも構わない。扱いやすさの点から、プラスミドベクターが好ましい。前記pQE−60を用いて構築された発現ベクターがより好ましい。
本発明の発現ベクターは、形質転換体のスクリーニングが容易なように、さらに薬剤耐性遺伝子を含んでいてもよい。薬剤耐性遺伝子としては、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子等があげられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の形質転換体は、前記発現ベクターを含むことを特徴とする。
形質転換対象の宿主としては、外来性のタンパク質を発現可能なあらゆる大腸菌を用いることができ、具体的には、Y1090、BL21、M15、SG13009、TG1、XL1-Blueがあげられる。
本発明の形質転換体は、自体公知の方法により、前記発現ベクターで前記宿主を形質転換することにより得られる。
このようにして得られた形質転換体を用いて、不活性型組換えプロテアーゼを製造することができる。かかる製造方法は、下記工程を含むことを特徴とする:
(1)本発明の形質転換体を培養する工程、
(2)培養工程で得られた培養物を回収する工程、および
(3)回収した培養物からプロテアーゼを精製する工程。
(1)本発明の形質転換体を培養する工程
形質転換体の培養方法は、由来する宿主に応じて、培地、培養条件を適宜設定することができる。例えば、pQE−60をバックボーンとする発現ベクターを含む形質転換体の場合、適当な抗生剤を含むLB培地、37℃で一晩振とう培養した菌液を同培地で3倍希釈し、600nmの吸光度が0.5〜0.7に達するまで37℃で激しく振とう培養する。β-イソプロピルガラクトピラノシド(最終濃度が0.2mM)を添加し、30℃で5時間培養する。
(2)培養工程で得られた培養物を回収する工程
培養物は、前記培養工程の培養液を遠心分離して回収する。遠心分離の条件は、通常、4,000xgで、10分である。
(3)回収した培養物からプロテアーゼを精製する工程
回収した培養物(菌体)は、溶解緩衝液(例、リゾチーム、ロイペプチン等を含むトリス緩衝液(pH約8))中で凍結融解等により大腸菌を溶解し、遠心分離して上清を回収する。これにより、本発明の発現ベクターから産生される不活性型プロテアーゼは、可溶化され、上清中に存在する。上清中の不活性型プロテアーゼは、タンパク質の精製に通常使用されるクロマトグラフィー等を用いて自体公知の方法により単離、精製することができる。不活性型プロテアーゼのC末端にタグが付加されている場合、当該タグに対するアフィニティークロマトグラフィーにより、容易に単離、精製することができるので好ましい。例えば、Hisタグが付加されたプロテアーゼは、抗Hisタグ抗体結合樹脂またはニッケル結合樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより単離、精製する。
このようにして得られた不活性型組換えプロテアーゼは、自己消化等を起こしにくいので、長期の保存が可能である。必要に応じて、不活性型プロテアーゼを下記工程に供することにより、活性型プロテアーゼを用時に提供することができる。本発明は、活性型プロテアーゼの製造方法も提供する。かかる製造方法は、上記(1)〜(3)の工程に加え、下記工程(4)を含む。
(4)精製したプロテアーゼを酵素処理して、プレプロ配列を切断する工程
本工程において、プレプロ配列を切断可能な酵素を用いて、前記工程(3)で得られた不活性型プロテアーゼを処理する。用いる酵素としては、サーモライシン、キモトリプシン、トリプシン等があげられる。
サーモライシンを用いてプレプロ配列を切断する条件としては、精製リコンビナントタンパク質に重量比50:1でサーモライシンを添加し、10 mMホウ酸緩衝液(pH 8)、2 mM CaSO4、0.005% TritonX100中で、36℃、4時間の反応が例示される。
GluSEのプレプロ配列の所在と、当該配列は大腸菌に通常存在するプロテアーゼでは切断されないことが本発明者らにより解明されたので、GluSEのプレプロ配列をコードするヌクレオチドを含有するベクターは、大腸菌で不活性型可溶性タンパク質を製造するためのベクターとして利用することができる。
GluV8のプレプロ配列の5つのアミノ酸を対応するGluSEのプレプロ配列のアミノ酸に置換することにより、当該配列は大腸菌に通常存在するプロテアーゼでは切断されないことが本発明者らにより解明されたので、GluV8の変異プレプロ配列をコードするヌクレオチドを含有するベクターは、大腸菌で不活性型可溶性タンパク質を製造するためのベクターとして利用することができる。
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
材料
発現ベクターpQE60およびpREP4ならびにHot Star PCRキットはキアゲン社(東京)、Talonアフィニティーゲルはクローンテック社(Palo Alto, CA, USA)、サーモライシンはシグマ社(St. Louis, Mo., USA)、KOD Plus DNA ポリメラーゼは東洋紡(東京)、DNA修飾酵素は日本ジーン(東京)、グルタミン酸特異的蛍光ペプチド性基質(Z-Leu-Leu-Glu-MCA)とロイペプチンはペプチド研究所(大阪)、DEAE Sephacelと低分子量SDS電気泳動用分子量マーカーはアマシャムバイオサイエンス社(Piscataway、NJ、 USA)、アゾカゼインはシグマ社より、それぞれ購入した。オリゴプライマーはジーンネット社(福岡市)より購入した。その他の一般試薬は特級を用いた。
実施例1 グルタミン酸特異的プロテアーゼの発現プラスミドの作製1
(1)S. epidermidis グルタミン酸特異的プロテアーゼ遺伝子のクローニング
S. epidermidis ATCC 14990ゲノムDNAを鋳型とし、下記プライマー:
5’-TATGGATCCAAAAAGAGATTTTTATCTATATGTAC;(5'-プライマー、配列番号9)および
5’-ATTGGATCCCTGAATATTTATATCAGGTATATTG;(3'-プライマー、配列番号10)
を用いてPCRを行なった。プライマー配列中の下線部は導入したBamHI部位を示す。配列番号10は、ヒスチジンタグがC末に付加するようストップコドンを除いた3’-プライマーとした。PCRの条件は、下記の通りであった。
94℃、2分間の後、94℃、20秒間、55℃、20秒間、72℃、1分間の温度サークルを30回行い、72℃、4分間の伸長反応を行った。
PCRで得られたDNA断片をBamHI処理後、別途BamHIで切断し脱リン酸化したpQE60にライゲーションした。得られた発現プラスミド(pQE60-GluSE)を用いてEscherichia coli Y1090[pREP4]を形質転換した。DNAシーケンスによりpQE60-GluSEの挿入配列には塩基変異の生じていないことを確認した。
(2)S. aureus グルタミン酸特異的プロテアーゼ遺伝子のクローニング
S. aureus ATCC 35984ゲノムDNAを鋳型とし、GluV8全長(336アミノ酸)をコードする領域を、下記プライマー:
5’-ATGGGATCCAAAGGTAAATTTTTAAAAGTTAGTTCT;(5'-プライマー、配列番号11)および
5’-ATTGGATCCCTGAATATTTATATCAGGTATATTG;(3'-プライマー、配列番号12)
を用いてPCRにより増幅した。下線部は導入したBamHI部位を示す。PCRの条件は、下記の通りであった。
94℃、2分間の後、94℃、20秒間、55℃、20秒間、72℃、1分間の温度サークルを30回行い、72℃、4分間の伸長反応を行った。
PCRで得られたDNA断片を、上記(1)と同様の手順によりプラスミドと連結させ、発現ベクター(pQE60-GluV8)を作製し、E. coli Y1090[pREP4]を形質転換した。
(3)キメラ(S. epidermidis とS. aureus)グルタミン酸特異的プロテアーゼ発現プラスミドの構築
上記(1)および(2)で得られたpQE60-GluSEとpQE60-GluV8が鋳型として共存する状態で、下記プライマー:
GluSEプレプロ領域増幅用3'-プライマー(5'-ACTTGGGTAACTTTTATTTTGACTTGGT:配列番号13)
GluV8成熟領域増幅用5'-プライマー(5'-GTTATATTACCAAATAACGATCGTCACC:配列番号14)を用いてPCRを行った。PCRの条件は、下記の通りであった。
94℃、2分間の後、94℃、20秒間、55℃、20秒間、72℃、6分間の温度サークルを35回行い、72℃、4分間の伸長反応を行った。
本PCR中に両鋳型の共通部分であるベクター配列領域で相同組換えを起こしてキメラ型分子GluSE-GluV8をコードする5.5-kbの直鎖状プラスミドが増幅された。続いて5.5-kb断片の5’末端のリン酸化とセルフライゲーションを行い、環状プラスミドを作製した。得られた環状プラスミドpQE60-GluSE-GluV8でE. coli Y1090[pREP4]を形質転換した。得られたプラスミドDNAの塩基配列を決定して、予定のキメラ分子発現プラスミドが構築されていることを確認した。
(4)キメラグルタミン酸特異的プロテアーゼ欠失変異体発現プラスミドの構築
プロテアーゼのN末端側のプロペプチドの機能を検討するために、GluSE-GluV8キメラ分子のプロペプチドを段階的に欠失させた分子を発現するプラスミドを構築した。GluSEのプロペプチド領域(Lys28-Ser66)のIle49、Ile56、Asn61、Tyr64よりスタートするようにそれぞれBamHI部位を導入した5'-プライマーを作製した。3'-プライマーは、上記のGluV8用3'-プライマー(配列番号12)を用い、GluSE-GluV8キメラ分子発現プラスミドを鋳型としてPCRを実施した。PCRの条件は、下記の通りであった。
94℃、2分間の後、94℃、20秒間、55℃、20秒間、72℃、6分間の温度サークルを30回行い、72℃、4分間の伸長反応を行った。
PCRで得られたDNA断片を、上記(1)と同様にBamHI消化し、pQE60のBamHI部位に導入した。
実施例2 組換えグルタミン酸特異的プロテアーゼの発現と精製1
従来の報告(Matsumoto et al., J. Biol. Chem. 277, 34959-34966 (2002))に従い、実施例1で得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で、37℃で一晩振とう培養後、この菌液を同培地で3倍希釈し、600 nmの吸光度が0.5〜0.7に達するまで37℃で激しく振とう培養し、0.2 mM β-イソプロピルガラクトピラノシド存在下、30℃で5時間、リコンビナントタンパク質を発現誘導後、菌体を回収した。0.5 mg/mlリゾチームと10 μg/mlロイペプチンを含むライゼート緩衝液(20mM トリス塩酸、pH 8、0.1M塩化ナトリウム、10mM イミダゾール)中で凍結融解法により菌を溶解した後、遠心分離して上清を回収しバクテリアライゼートとした。リコンビナントタンパク質は、溶出液(10%グリセロール、0.1 Mイミダゾール、pH 8.0)を用いたTalonアフィニティーゲルクロマトグラフィーにより精製した。精製標品は使用時まで-80℃に保存した。
サーモライシン処理とプロテアーゼ活性の測定
精製リコンビナントタンパク質に10 mMホウ酸 (pH 8)、2 mM CaSO4、0.005% TritonX100中で、0〜1 μgのサーモライシンを加え、36℃、4時間加温した。その後、試料の一部をプロテアーゼ活性測定溶液 [50 mM トリス塩酸 (pH 8)、5 mM EDTA、 20μM Z-Leu-Leu-Glu-MCA]に添加し、25℃で保温した。5 mM EDTAはサーモライシンの不活化剤として加えた。2時間後、励起光380 nmとして測定光460 nmの蛍光を蛍光スペクトル光度計F-4000(日立)を用いて測定した。また、アゾカゼインを基質に用いた活性測定では、リコンビナントタンパク質(1 μg)を50 mMトリス塩酸(pH 8)、5 mM EDTA、2 mg/ml アゾカゼイン(75 μl)にて37℃で反応し、1時間後に25 μlの氷冷トリクロロ酢酸溶液(15w/v%)を加えて反応を停止した。遠心分離後、上清に等量の0.5 M NaOHを加えてから、440 nmの吸光度を測定した。
表皮ブドウ球菌分泌GluSEの精製
S. epidermidis ATCC 14990は、Todd Hewitt寒天培地を用いて透析膜上培養法で、37℃、好気条件下で培養した(Ohara-Nemoto et al., Microb. Pathog. 33, 33-41 (2002))。一晩培養後、菌体外画分を回収し、水で希釈してイオン強度を下げた後、20 mM トリス塩酸(pH 8)で平衡化したDEAE Sephacel(1 x 6 cm)に添加した。平衡化緩衝液で洗浄後、0.1 M 塩化ナトリウムを含む20 mM トリス塩酸(pH 8)で溶出した。標品の純度は80%であった(図4A参照)。使用時まで-80℃に保存した。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
SDS-PAGEは12.5%のポリアクリルアミドゲルを用いて実施した。試料は1%SDSを含むサンプル緩衝液中で94℃、10分間熱変性させた。電気泳動後、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色した。
ザイモグラフィー
1%SDSを含むサンプル緩衝液中に溶解した試料を熱処理せずに1 mg/mlのアゾカゼインを含む12%ポリアクリルアミドゲルでSDS-PAGEにて分離した。電気泳動後、2.5% TritonX100で20分間、2回の洗浄、さらに50 mMトリス塩酸 (pH 8)、30 mM NaClで20分間、2回洗浄した後、新鮮な同トリス塩酸溶液に交換したのち37℃で12-16時間保温した。その後にゲルをCBB染色した。
N末端アミノ酸配列
リコンビナントタンパク質とそのサーモライシン切断分子をSDS-PAGEで分離後、PVDF膜(バイオラッド社)に転写した。膜上のタンパク質バンドをCBBで染色しN末端配列を Precise 49X cLCタンパク質配列決定装置(ABI社)を用いて決定した(Nemoto T. et al., J. Biol. Chem. 272, 26179-26187 (1997))。
タンパク質の定量
ウシ血清アルブミンを標準として用い、ビシンコニニック酸法によって定量した(ピアス社、Rockford、IL、USA)。
結果
表皮ブドウ球菌GluSEの大腸菌発現
分子のN末領域に位置するプレプロ配列の変化を最小限にとどめるために、C末側にアフィニティータグを付加する発現ベクターpQE60を用いて、表皮ブドウ球菌GluSEのプレ配列(Met1-Ala27)、プロペプチド(Lys28-Ser66)、成熟領域(Val67-Gln282)のすべてを含む分子をコードする発現ベクターpQE60-GluSEを構築した(図1A)。リコンビナント分子は、Met1-Lys2の間にGly-Gly-Serが挿入され、C末端Gln282に8アミノ酸残基(Gly-Ser-His-His-His-His-His-His:配列番号15)が付加されている。この系で発現したGluSEは、凝集沈殿せず可溶性画分に回収された。その後は1段階のアフィニティーカラムクロマトグラフィーで精製可能であった。培養液1リットル当たり20 mgの精製標品が得られた。SDS-PAGEでは29、30、32kDaの3種類のバンドを認めた(図2、左パネル、レーン1)。N末端配列解析の結果、それぞれのN末端は32kDa分子がLys28、30kDa分子がSer33とSer37、29kDa分子がIle49であった(表1と図1B)。つまり、32kDa分子は大腸菌のシグナルペプチダーゼによってAla27-Lys28が切断された分子であり、Ser33をN末端とする30kDa分子および29kDa分子はGlu32-Ser33およびAsp48-Ile49における自己分解により生じた分子であると考えられた(表1)。Ser37をN末端とする30kDa分子を生じるHis36-Ser37の切断酵素の実体は現在のところ不明であるが、大腸菌の産生するプロテアーゼによるものと推測された。
GluSEが属するファミリー酵素を代表する黄色ブドウ球菌由来GluV8は、in vivoではサーモライシンファミリーに属するオーレオライシンによってGluSEのSer66-Val67に相当するAsn68-Val69が切断されて成熟型酵素になると報告されている(Shaw, L. et al., Microbiology 150, 217-228 (2004)および図1B)。そこで、実施例2で得られた精製リコンビナントGluSEを種々の濃度のサーモライシンで処理したところ、サーモライシン濃度依存的に28kDa分子が出現した(図2、左パネル)。28kDa分子のN末端はVal67であり(表1)、以前に報告した表皮ブドウ球菌培養上清より精製したGluSE標品のN末端と一致した(Ohara-Nemoto et al.,上述)。ザイモグラフィーの結果、28kDa分子にアゾカゼイン分解活性が認められた(図2、右パネル)。対照として本実験条件中最高濃度のサーモライシンのみを含む条件で測定したが、アゾカゼイン分解を認めなかった(図2、右パネル、レーン10)。これらの結果から、プロペプチドの全部を保持する32kDaリコンビナント分子やプロペプチドの一部を保持する29、30kDaの分子は不活性型であり、サーモライシンによるSer66-Val67間の加水分解によって28kDaの成熟分子が生じると結論した。
黄色ブドウ球菌GluV8の大腸菌発現系
同じpQE60発現系によりGluV8の発現も試みたが、最もよい場合でも培養液1リットル当たり0.05 mgの収量で、しかも純度の低い標品しか得られなかった(結果には示さない)。GluSEとGluV8のプロ配列領域のアミノ酸配列の相同性は20.7%であり、成熟領域の相同性59.1%よりかなり低い(図1B)。そのため、リコンビナントGluV8の低発現の原因は相同性の低いGluV8のプロ領域にあるという仮説を立てた。そこで、GluSEのプレプロ配列Met1-Ser66とGluV8のVal69-Ala336のキメラ型分子をコードする発現ベクターを構築した(図1A)。キメラ分子を発現させた結果、リコンビナント分子がすべて可溶性画分に回収され、GluSEとほぼ同程度の収量(18 mg/l)であった。SDS-PAGEの結果、精製標品は43kDaの主要バンドとそれより分子量の小さな42kDaのマイナーバンドを含んでいた(図3、左パネル、レーン1)。この標品をサーモライシン処理すると、順次42、40、38kDaの分子種が生じた(レーン3-9)。これらのうち40kDa分子種に主要なアゾカゼイン分解活性があった(図3、右パネル)。N末端アミノ酸配列分析の結果、40kDa分子種と38kDaの分子種のN末端はともにVal69で、成熟型GluV8のそれと同一であった(表1)。以上の結果からGluV8はキメラ型分子プレプロGluSE-成熟GluV8として大量発現が可能であり、かつサーモライシン処理によって活性型の成熟GluV8が得られることが明らかとなった。
GluSEとGluV8のプロテアーゼ活性の比較
C末端の8残基のアミノ酸の付加がある以外は、リコンビナントGluV8分子はサーモライシン処理により天然型GluV8とまったく同じアミノ酸配列となる。そこで、リコンビナント標品の性質がそれぞれ表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌由来酵素と同じかどうか検討した。
表皮ブドウ球菌培養上清から精製したGluSE、黄色ブドウ球菌由来の市販のGluV8、および成熟型リコンビナントGluSEとGluV8の4試料についてSDS-PAGEを行った。表皮ブドウ球菌由来およびリコンビナントGluSEはともに28kDaであり(図4A)、黄色ブドウ球菌由来GluV8は38、40kDaの2本バンド、リコンビナントGluV8はこれらの2本のバンドに加えて、サーモライシンによる切断が不十分なために残存する42および43kDaのバンドを認めた。以上のように、それぞれのプロテアーゼの天然品と大腸菌で発現しin vitroで成熟化したリコンビナント分子のSDS-PAGEパターンにはほとんど差がなかった。
次に、蛍光ペプチド基質を用いてプロテアーゼ活性を比較検討した。各標品の純度を考慮すると、リコンビナントGluSEのプロテアーゼ活性は天然GluSE標品の活性と同程度であり、リコンナントGluV8の活性はサーモライシンの切断が不十分(rec1)だと天然品より低いが、その3倍量のサーモライシンで処理した試料(rec2)は天然のGluV8と同等以上の活性を有することが明らかになった。以上のことから、天然標品とリコンビナント標品では事実上、比活性に差はないと結論した。
驚くべきことにGluSEとGluV8のプロテアーゼ活性には2桁もの活性の違いがあった(図4BのスケールはGluSEとGluV8で異なっていることに注意)。しかし一方で、アゾカゼインを用いたザイモグラフーの結果(図2、3)では、活性に2桁もの差があるという印象は受けていなかったので、アゾカゼインを基質とするプロテアーゼ活性も測定した。その結果、やはりGluV8がより高い活性を示したもののGluSEとの差は2倍程度であり、蛍光ペプチド基質を用いた場合の2桁の差とは明白な違いがあった(図4C)。
GluV8全長分子が大腸菌で発現できない理由
GluV8全長の大腸菌発現は困難にもかかわらず、GluSE全長分子やプレプロGluSEキメラ分子の発現が可能であるという分子メカニズムは何であろうか。本発明者らはプロ配列内のアミノ酸に注目した。GluSEでは、成熟型へのプロセシング部位である Ser66-Val67近傍にはグルタミン酸や、さらに非常に弱いながらもGluSEに認識されうるアスパラギン酸も存在しない。一方、GluV8のプロ配列にはプロセシング部位であるAsn68-Val69近傍にGlu62とGlu65が存在する(図1B、四角で囲む)。そのため大腸菌内在性のプロテアーゼによってリコンビナントのプレプロGluV8分子から、微量の活性型分子が生じると、プロペプチド内のGlu62-Gln63結合やGlu65-His66結合の自己切断が起こるであろう。その結果生じたGluV8 Gln63-Ala336やGluV8 His66-Ala336分子は、成熟分子(Val69-Ala336)よりもN末側が6あるいは3残基余分に持つだけなので、プロテアーゼ活性を発揮しうる。結果として、活性化のカスケード反応を起こす可能性がある。そこで成熟GluV8のN末端であるVal69にプロペプチドの部分配列を保有する分子が実際に活性を有するかどうかを以下に検討した。
本実施例では、より活性が高く詳細な検討が可能なGluSE-GluV8キメラ分子を元にして、プロ領域をN末側から順次欠失した分子を作製した(図1A)。まず実際に観察されたIle49とIle56をN末端に持つ分子を発現した。さらにGluV8ではGlu62およびGlu65の存在により自己消化によって生じうるN末端であるGln63とHis66に相当するGluSEの部位にあたるAsn61、Tyr64をN末端に持つ分子を作製した(図1A)。これらのリコンビナント分子を発現する大腸菌は生育可能であった。精製標品のSDS-PAGEパターンはその欠失程度に応じて分子量が低下したが、サーモライシン処理後はすべて38、40kDaの2本バンドとなった(図5A)。トランケーション(短縮型変異)分子のプロテアーゼ活性も全長分子同様に抑制され、しかもサーモライシン処理により同程度の活性が出現した(図5B)。トランケーション分子でもサーモライシンによるSer66-Val67切断が起こること、および成熟プロテアーゼが全長分子と同程度のプロテアーゼ活性を示すことから、プロ配列の欠失は、プロセシング部位を含めて成熟部分の立体構造には影響しないものと推察された。つまり、ズブチリジン(Subbian et al., J. Mol. Biol. 347, 367-383 (2005))やサーモライシン(O'Donohue and Beaumont, J. Biol. Chem. 271, 26477-26481 (1996))のプロ配列とは異なり、GluSEのプロ配列は分子内シャペロンとしては機能していないと思われた。
さらに、Val69のN末端側にある程度のプロ配列を持つリコンビナント分子では、プロテアーゼ活性が強く抑制されているものの、より短い分子、特にAsn61とTyr64から始まるきわめて短いプロ配列を付加した分子種ではプロセシングなしでも明らかなプロテアーゼ活性が検出された。ただしその活性は低く、成熟分子(図5B)の0.05%程度であった(図5B、C)。このようにきわめて弱いながら、GluV8のGlu62とGlu65に相当する位置から始まるGluSE-GluV8分子は活性を保持することが証明された。
考察
本研究ではGluSEおよびGluV8の生化学的性質とその大腸菌発現系の構築に関していくつかの知見が得られた。まずGluSEのプロ領域にはプロテアーゼ活性の強力な抑制活性があることが判明した。この抑制活性により可溶性GluSEの大腸菌での大量発現が可能であった。またGluV8やGluSEのプロセシング酵素であるオーレオライシンはサーモライシンファミリータンパク質であり、疎水性アミノ酸残基のアミノ基側のペプチド結合を切断する。しかしそのような特異性の酵素は大腸菌には存在していないと考えられ、そのことも幸運であった。また、GluSEのプレプロ領域をGluV8の成熟領域に繋ぐことでGluV8の自己活性化が回避されGluV8も発現が可能となった。リコンビナントGluSEとGluV8は精製後in vitroでサーモライシン限定分解することにより、天然型酵素と同一の配列を持つ活性型分子を調製することが可能となった。これらリコンビナント分子の比活性は本来の菌由来の分子と同じであった。用いる基質の種類によってその程度は異なるもののGluV8の比活性はGluSEのそれに勝ることも明らかとなった。GluV8全長発現実験の結果、不活性型として大腸菌発現を試みたとしても、自己消化による活性化を生じる場合には、外来性プロテアーゼの大腸菌での可溶性分子としての発現が困難であることが明確となった。
GluV8全長分子ではGlu62-Gln63およびGlu65-His66の切断によっても活性を持つ分子がもたらされるという推定が正しいならば、GluSE Asn61-GluV8やGluSE Tyr64-GluV8キメラ分子はその毒性のために大腸菌では発現できないと予想した。実際にAsn61やTyr64から発現したキメラ型トランケートGluV8分子は弱いプロテアーゼ活性を示したが、意外にも、GluV8全長の大腸菌発現が実際上不可能だったのとは対照的に、これらのトランケーション分子は大腸菌発現が可能だった。本発明者らは、ベクター配列に由来するテトラペプチドのAsn61あるいはTyr64の N末側への付加がAsn61やTyr64で始まる分子の活性をさらに低下させているものと推測している。すなわち、プロ配列として7アミノ酸残基(met-gly-gly-ser-Tyr-Pro-Ser:配列番号16、小文字は外来性のテトラペプチド)はほぼ完全(99.95%)にGluV8プロテアーゼ活性を抑制したが(図5)、もしGluV8全長分子で、Glu65-His66の切断が生じた場合は残るプロ領域は3残基のみとなり、活性抑制はより不完全となると考えられる。そのためGluV8の全長分子を発現する大腸菌は生育できないと考えられる。
Prasadら(Prasad, L. et al., Acta Crysta. 60, 256-259 (2004))は、X線結晶解析の結果からGluV8のN末のVal69のα-アミノ基と基質ペプチドのグルタミン酸残基のγ-カルボキシル基とのイオン結合がGluV8の基質特異性を決定すると提唱した。実際、Asn61やTyr64をN末にもつプロペプチドの大部分を欠失したGluSE-GluV8キメラ分子には、わずかながらも活性があり、一方、プロペプチドすべてやIle49やIle56から始まる分子には活性がないという事実も、N末のα-アミノ基が本来のVal69の位置から移動したために活性が低下するとすれば説明がつく。またプロ配列に要求される主要な役割がVal69の位置のα-アミノ基の出現の阻害だけであればGluV8とGluSEのプロ配列の低い相同性も説明がつく。
従来、感染性細菌のプロテアーゼは感染の増悪因子と考えられている。今日、世界中で起こる院内感染の15%近くが黄色ブドウ球菌に起因すると見積もられている。一方、表皮ブドウ球菌は常在性細菌である。今回明らかとなった両菌種のグルタミン酸特異性プロテアーゼの活性の違いが、黄色ブドウ球菌の病原性を説明しうる可能性がある。今後さらに黄色ブドウ球菌のプロテアーゼ活性と病原性との関連性について明らかにする必要がある。
すでに多くの市販のタンパク質がリコンビナント技術で生産されている。例えば大半の制限酵素は大腸菌発現標品である。可溶性プロテアーゼの多くは単量体で糖鎖修飾もないことから大腸菌発現系が可能なタンパク質である。しかし、大腸菌発現系によるプロテアーゼの発現では、プロテアーゼ活性の毒性を回避するために、封入体として発現することが多かった。その結果、可溶化、再生、およびクロマトグラフィーによる活性型酵素の精製などの多段階の調製が必要であった。特に尿素等による変性、可溶化と再生段階は時間がかかり、自動化しにくく、かつ回収率が実験ごとに変動しやすい。一方、実施例の発現方法では、不活性型プロテアーゼは可溶性画分に回収されるので精製が容易である。発現および精製にそれぞれ1日あれば完了する。これまでの成績では、リッターカルチャー当たり20 mg程度の精製標品を得ることができ、引き続き、ほぼ100%の効率で成熟型分子を得ることができる。大腸菌の培養条件やリコンビナント分子の誘導条件等を検討することにより収量はさらに上げることができる。今回発現した2種類のプロテアーゼの中では、これまでの実績と比活性の高さから、GluSEよりもGluV8のほうが利用価値が高いと考えられる。
プロテアーゼの種類によっては保存中に自己消化する場合があるが、そのため本法の利点として、プロテアーゼを不活性型として長期保存しておき、使用時にサーモライシン処理によって簡便に活性型に変換できるという点も挙げられる。サーモライシンはミリモル濃度のEDTAにより不可逆的に失活するので、今回の実験条件で微量存在しても問題にならなかった。もし問題になる場合は、活性化後に28kDa GluSEや主要バンドである40kDa GluV8のC末タグ用アフィニティークロマトグラフィーによりサーモライシンを除去することが可能である。
自己分解反応を抑制して不活性型分子として大腸菌発現するという戦略は、さらに他のプロテアーゼの発現に適用できる可能性がある。歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisは、アルギニン特異的プロテアーゼであるアルギニルジンジパイン(Rgp1とRgp2)とリジン特異的プロテアーゼであるリジルジンジパイン(Kgp)を発現する。Rgp1とRgp2の活性化はArg-Tyr結合の切断によって起こり、Kgpの活性化はArg-Aspの切断による。つまりRgp1やRgp2全長分子を大腸菌で発現しても自己消化によって成熟分子がカスケード的に産生されてしまうであろう。Kgpの場合も、活性化部位がArg-Aspではあるものの、ArgとLysが同じ塩基性アミノ酸なので切断される可能性がある。しかも、Kgpではプロセシング部位から5残基N末側にLysが位置しているのでこの位置での切断も活性化を引き起こすだろう。Rgp1に関しては既に大腸菌発現の報告があるものの、やはり封入体としてリコンビナントRgp1を得ている(Margetts et al., Protein Expr. Purif. 18, 262-268 (2000))。実施例の結果は、ジンジパインでも自己プロセシングを受ける切断部位を適切に変異させれば発現の可能性があることを示している。プロセシング部位の塩基性アミノ酸をグルタミン酸に置換すれば、不活性型が安定化され、しかもGluV8によるin vitroプロセシングにより活性型分子を産生できると考えている。
実施例3 グルタミン酸特異的プロテアーゼの発現プラスミドの作製2
すべてpQE60(キアゲン社)を発現ベクターとして用いた。実施例1で作製したGluSE(野生型)、GluV8(野生型)およびGluSE-V8(GluSEのプレプロペプチドとGluV8成熟配列のキメラ分子)の発現プラスミドを基にして、in vitro点突然変異導入法によってアミノ酸の変異を導入した。GluV8(336アミノ酸)に関してはC末端に3アミノ酸(Pro-Asp-AsnまたはPro-Asn-Asn)の12回繰り返し構造を有するが、これを含む52アミノ酸の欠失を導入した(表2)。その結果、GluV8のアミノ酸は284アミノ酸からなり、成熟配列部分(アミノ酸69-284)はGluSE(アミノ酸67-282)と同一長となった。In vitro遺伝子変異によりGluV8のプロペプチド(アミノ酸1-68)内の2か所、4か所または5か所にアミノ酸置換を導入し、それぞれGluV8mut2、mut4、mut5と命名した。導入するアミノ酸は、GluV8とGluSEのプロ配列をアラインメントの結果を用いてGluSEのアミノ酸と一致させた(表2と図6b)。Staphylococcus warneriグルタミン酸特異的プロテアーゼ(GluSWと命名)の遺伝子の増幅に関してはYokoiら(2001)の報告を元に、BamHI部位(下線部)を挿入したプライマーセット:
5’プライマー,5’-TTTGGATCCAAAGTTAAGTTTTTTACAGCA(配列番号19)および
3’プライマー,5’-GGCGGATCCCGCTGCGTCTGGATTATCGTA(配列番号20)
により、Lys2-Ala316をコードするDNA断片を増幅し、pQE60のBamHI部位に挿入した。GluV8mut5プレプロ配列とGluSW成熟配列とのキメラ分子は、PCR法によって作製した。
実施例4 組換えグルタミン酸特異的プロテアーゼの発現と精製2
実施例2に記載の方法と同様にして、実施例3で作製した発現プラスミドを含む形質転換体を培養し、組換えタンパク質を発現誘導後、形質転換体を回収し、精製した。精製標品は使用時まで-80℃に保存した。
サーモライシン処理とプロテアーゼ活性の測定
実施例2に記載の方法と同様にして、精製した組換えタンパク質をサーモライシン処理し、プロテアーゼ活性を測定した。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
12.5%ゲルの代わりに11%のポリアクリルアミドゲルを用いること以外は実施例2と同様にして、SDS-PAGEを行なった。
N末端アミノ酸配列
実施例2と同様の方法により、組換えタンパク質およびそのサーモライシン切断分子のN末端アミノ酸配列を決定した。
タンパク質の定量
実施例2と同様の方法により、タンパク質を定量した。
結果
3種のグルタミン酸特異的プロテアーゼおよびそれらの誘導体の発現
Yokoiら(Yokoi K.,et al.,Gene,281,115-122(2001))は、S. warneri菌M株のグルタミン酸特異的プロテアーゼGluSWの精製と遺伝子クローニングを報告している。GluSW(配列番号18)は典型的な3アミノ酸(Pro-Asp/Asn-Asn)の繰り返し配列ではないが、11残基のAspと16残基のAsnを含む34アミノ酸からなるC末端配列を有する。C末端繰り返し配列は、GluSEには存在しない。GluV8のC末端繰り返し構造やGluSWのAsp/Asnリッチ配列を除き、GluSE C末端のGln282に相当するGluV8のAla284、GluSWのSer282までのアミノ酸配列を比較した(図6)。成熟領域ではGluV8とGluSWが80.1%ともっとも相同性が高く、ついで、GluSEとGluSWが61.1%、GluV8とGluSEの相同性が58.5%と、わずかにGluSWとGluSEの相同性の方が高かった。プレおよびプロ配列でもその傾向は同様で、共にGluV8とGluSWの方が、GluSEとGluV8あるいは、GluSEとGluSWよりも相同性が高かった。プレ、プロ、成熟配列の3領域では、成熟部分の方が58.8-80.1%と他の2領域よりも相同性が高く、プロ配列の相同性は15.4-51.3%と最も低かった。これらのことから、GluV8とGluSWがより近縁であることがわかる。第二に、各領域の変異速度には差があり、このことは、プロ領域がその機能を発揮するために必要な構造には、成熟領域が機能(すなわち酵素活性を発揮)するために必要な構造に比べて、大きなアミノ酸置換の自由度があることを示している。
pQE60発現ベクターのBamHI部位に全長分子をコードする3種類のグルタミン酸特異的プロテアーゼGluSE、GluV8もしくはGluSW遺伝子(Ohara-Nemotoら、Microb. Pathog. 33,33-41 (2002);Carmona and Gray、Nucleic Acids Res. 15, 6757 (1987);Yokoiら、Gene,281,115-122(2001))またはその誘導体の遺伝子を挿入して大腸菌発現を試みた。発現リコンビナント分子のN末端には制限酵素部位に由来するGly-Gly-Serが、一方C末端はHisタグが付加されている。さらに3種類の発現ベクターを元に、それらの誘導体を発現するベクター9種類、計12種類を発現させた(表2)。
12種類の発現分子を含むバクテリアライゼートをSDS-PAGEで分離し、タンパク染色した(図7)。レーン1、7、8、9、10、12では発現タンパク質のバンドが確認された(図7a、矢頭)。後で判明するが、レーン5、6にも44 kDa分子が定量的に発現していたが、その位置に大腸菌由来のタンパク質があるために、ライゼートでは発現を確認することはできなかった。分離したタンパク質をHisタグ特異的なモノクローナル抗体により検出したところ、すべてのレーンで陽性バンドの存在が確認された(図7b)。多くのレーンでは複数のバンドが検出され、部分分解を起こしていることが判明した。本抗体と反応するエピトープHisはC末端に局在するので、N末端側の異なる部分で切断されていると推察された。
バクテリアライゼートよりアフィニティークロマトグラフィー(タロンアフィニティーゲル)によってリコンビナントタンパク質を精製した(図7c)。そのバンド強度は発現量を反映していると考えられた。発現量はGluSE(レーン1)がGluV8(レーン2)を大きく上回っていた。実施例2では、GluV8のプレプロ配列をGluSEのそれと入れ替えることでGluV8の発現効率が上がった(レーン3)。この改善はGluV8のプレプロ配列を自己消化されにくいGluSEのプレプロ配列に置換したためだと考えられた。しかし、図7aに示すように、GluV8と同様にGluSEも複数のバンドを生じ部分分解が生じていた。
2種のプロテアーゼのプロ配列を比較すると、GluV8では、プロ配列部のC末付近にGlu62とGlu65というGluV8による消化を最も受けやすいペプチド結合を形成するアミノ酸が存在する。一方、GluSEプロ配列では、Glu40が成熟配列のN末端に最も近接しており、非効率的ながら切断されうるAspも、C末端に最も近いものでAsp46である。本発明者らは、Glu62とGlu65の位置で切断されたGluV8は,成熟型の1/1,000程度の活性を有することを示している(Nemotoら、FEBS J. 275,573-587(2008))。つまりGluV8の低発現は宿主内で自己消化を起こして宿主にダメージを与えるためであると推測された。
プロ配列内の自己消化を抑える目的で、本来のGluV8のプロ配列を用いて発現する改良法を検討した。2アミノ酸(図7c、レーン4)、4アミノ酸(レーン5)、5アミノ酸(レーン6)と、順次GluSEのプロ配列のアミノ酸に変異してゆくと、バンド強度が次第に増した。特にGluV8のプレプロ配列内のすべて(2か所のGluおよび1か所のAsp)と、プロ配列C末端部の2アミノ酸をGluSEのアミノ酸に置換した分子はもっともバンド強度が強かった(レーン6)。
GluV8にはC末端に3アミノ酸(Pro-Asp-AsnまたはPro-Asn-Asn)の12回繰り返し構造がある(Carmona and Gray、Nucleic Acids Res. 15,6757 (1987))。しかし、この配列はGluV8ファミリータンパク質で保存されているわけではなく、例えばGluSEにはこの配列はないことから、プロテアーゼ活性には無関係だと考えられる。実際にこの部分を欠失させたGluV8を発現しても活性を有する分子が得られている(Yabutaら、Appl. Microbiol. Biotech. 44,118-125 (1995))。そこでC末の繰り返し配列を含む52アミノ酸(アミノ酸285-336)の欠失分子(GluV8mut5 ΔC)を発現したところ、非欠失分子(GluV8mut5、レーン6)よりもさらにバンド強度が増した(レーン7)。
恒常不活性型GluV8と潜在型GluV8発現効率の比較
上記のようにGluV8プロ配列を自己消化抵抗性のアミノ酸に置換することでGluV8の収率が改善し、GluV8mut5 ΔCで、その発現は最高となった。しかし、この条件でも発現中にまだ自己消化が起きているのかどうかは不明である。そこで対照とするために恒常的に活性のないGluSEおよびGluV8の発現を試みた。グルタミン酸特異的プロテアーゼファミリーメンバーは、セリンプロテアーゼであり、GluSEのSer235およびGluV8のSer237が活性発現に必須であると考えられる(Ohara-Nemotoら、Microb. Pathog. 33,33-41 (2002); Prasadら、Acta Crysta. 60,256-259 (2004))。実際にGluV8のSer237をAlaに置換すると、その後のサーモライシンによる試験管内の活性化によっても全く活性を示さなかった(Nemotoら、FEBS J. 275,573-587(2008))。そこで自己消化を全く生じない恒常不活性型分子GluSE Ser235Ala、GluV8mut4 Ser237Ala、GluV8mut5ΔC Ser237Alaを発現すると、いずれも良好な発現が達成できた(図7、レーン8-10)。ところで,すでに述べた潜在型分子GluSE(図7、レーン1)、GluV8mut5(レーン6)およびGluV8mut5 ΔC(レーン7)において,もし自己消化が完全に抑制されているならば、それぞれの恒常性不活性型分子と同程度の発現が期待される。実際に,GluSE(レーン1)とGluSE Ser235Ala(レーン8),GluV8mut5(レーン6)とGluV8mut4 Ser237Ala(レーン9),GluV8mut5 ΔC(レーン7)とGluV8mut4 ΔC(レーン10)とを比較すると,ほぼ同水準の発現が達成されていた。
S. warneriグルタミン酸特異的プロテアーゼ(GluSW)とそのキメラ型分子(GluV8-SW)の発現
これまでGluSWの大腸菌およびその他の宿主での発現の報告はない。Yokoiら(Gene,281,115-122(2001))は、S. warneri菌の産生するGluSWを精製してその成熟型のN末端配列がGluV8(Val67-Ile-Leu-Pro---)やGluSE(Val67-Ile-Leu-Pro---)とは異なり、Arg64-Ala-Asn-Val-Ile-Leu-Pro---であったと報告している。もしそうならば、Glu63-Arg64の自己消化による活性化機構が考えられる。そこで本研究の発現手法がGluSWにも応用できるかどうかと、その後のin vitro活性化がGluSWでは自己消化によって起きるのか、それともサーモライシンファミリー酵素によるのかを明らかにするために、大腸菌発現系を構築することとした。
野生型GluSWではイムノブロットや精製標品で33 kDaを主要なバンドとする3本のバンドが認められるものの、その収量はかなり低く、ライゼートタンパク質をCBB染色した段階では発現は確認できなかった(図7、レーン11)。そのプロ配列内にはGlu28,Asp34,Asp51,Glu60,Glu63と自己消化のターゲットとなるアミノ酸が存在する(図6b)。特にプロ配列C末付近のGlu60とGlu63はGluV8にも共通していた。つまりGluV8と同様にGluSWの低発現も発現宿主内で自己消化を起こすためであると推測された。
GluV8で成功したようなGluSWプロ配列の7アミノ酸(3Glu,2Aspとプロ配列末端部のAla-Asn、図6b)を変異させることで、GluSWの自己消化による活性化を抑制できるものと考えられた。しかし、図6aに示したGluSWとGluV8のプロ配列の高い相同性を考慮すれば、7種類のアミノ酸を変異させるという煩雑な手法よりも、すでに作成している変異型GluV8(GluV8 mut5)のプロ配列を利用してキメラ分子(GluV8 mut5-SW)を作成することで、この目的を達成できるのではないかと考えた。そこで実際にキメラ分子を作成して発現したところ、ほぼ38 kDaの単一分子として発現され(図7c、レーン12)、しかも、ライゼートタンパク質の段階でバンドが認められるまで発現量は改善した(図7a、レーン12)。
GluV8およびGluSWの大量発現と精製
GluV8mut5 ΔCは、野生型の分子よりも、また実施例2のキメラ型GluV8よりも少量(12 ml)の発現系で収量が改善したが(図7)、実際に大量発現(800 ml培養)でもその発現量が大幅に改善することが示された(図8a)。1リットルカルチャーあたり20 mgの精製標品が得られた。GluSWでもまったく同様に、1リットルあたり25 mgの標品が得られた。
発現リコンビナントプロテアーゼのin vitroプロセシング
今回の目的は活性のあるプロテアーゼを大量に得ることにあるので、精製したプロ型プロテアーゼがin vitroで成熟型に変換されるかどうかをテストした。精製GluSE(10μg)あるいは等モルのその他のリコンビナントプロテアーゼ当たり0.1または0.3μgのサーモライシンで加温すると、0.1μg処理[リコンビンナントプロテアーゼ/サーモライシン(モル比)=100/1]では中間分子量のバンドが生じたが、0.3μg(モル比,33/1)で処理したものはほぼ単一バンドが得られた(図9a)。GluV8mut5(レーン6)では2本のバンドを生じたが、これは図3で示しているように、本来の黄色ブドウ球菌の産生するGluV8でも同じ位置に2本のバンドを生じる。C末の繰り返し構造内で切断された分子が生じているものと考えられた。
3種のグルタミン酸特異的プロテアーゼの活性を、Z-Leu-Leu-Glu-MCAペプチドを基質として測定した。精製標品は活性をまったく示さないが、サーモライシン処理によって、その活性が発現した。GluV8の比活性は、他の2種に比べて圧倒的に高かった。GluSWはGluSEと同程度だった(図9b)。高活性のGluV8を除いて、GluSEとGluSWに注目して同じデータを再プロットしたのが図9cである。2つのサーモライシン処理条件のどちらでも43%(0.1μgサーモライシン処理)、86%(0.3μg処理)GluSWの方がGluSEよりも活性が高かった。GluV8とGluSEのZ-Leu-Leu-Glu-MCAに対する比活性の大きな違いは、遺伝子操作によって引き起こされた人工的な変異によるものではなく、本来のそれぞれの菌の産生する酵素の活性の違いをそのまま反映していた。
このような大きな比活性の違いに関してさらに検討を進めた。アゾカゼインを基質としてその活性を測定したところ、比活性の順位はGluV8>GluSW>GluSEと活性の違いは同様だったが、Z-Leu-Leu-Glu-MCAの場合とは異なり、GluV8とそれ以外の2種のプロテアーゼ間で大差なかった。またこれら2種類の基質を用いた比較から、GluV8のC末の52アミノ酸を欠失した分子でも活性には全く差がないことが判明した。
発現GluSWのN末端配列
発現したリコンビナントGluSWのN末端配列を決定したところ、GluV8mut5-SWでは、GluV8のLeu30を持っていた(表3)。すなわちGluV8mut5-SWキメラ分子、かつ大腸菌発現系でも本来のプレ配列-プロ配列間で切断されていた。一方、野生型GluSWのN末端はArg64で、プロ配列の大部分を欠き、プロ配列の最後の3アミノ酸だけを保持していた。Glu63-Arg64結合はGluSWに切断されうる結合であり、予想したように自己消化が起きていると考えられた。そのため、自己消化を抑制することで発現の収量が改善することがGluSWにおいても確認できた。
図1は、GluSEとGluV8のアミノ酸配列の比較と発現分子の概要を示す。(A)実施例で発現させた表皮ブドウ球菌GluSE、黄色ブドウ球菌GluV8、GluSE-GluV8キメラ分子、およびN末端欠失分子を模式的に示す。(B)GluSE、GluV8およびGluSE-GluV8キメラ分子のN末端領域のアミノ酸配列を比較した。アミノ酸は1アルファベット表記で示した。GluSEとGluV8で共通のアミノ酸には下線を施した。相同性を最大にするためにGluSEで2残基の欠失(ハイフン)を導入した。矢印はリコンビナント精製標品およびそのサーモライシン処理で検出されたバンド(図2および図3)の切断部位を示す。下向き矢印がGluSEの切断部位、上向き矢印がGluSE-GluV8キメラ分子で得られた切断部位である。本実施例で注目したGluV8のGlu62とGlu65は四角で囲ってある。 図2は、リコンビナントGluSEの発現を示す。精製リコンビナントGluSE (0.8 mg/ml、80μl)を0℃、または36℃かつサーモライシン非存在下、または存在下でインキュベーションした。4時間後、(左パネル)その一部(1.5 μg)に1%SDSを添加して熱変性後、SDS-PAGEとCBB染色を行った。(右パネル)サーモライシン処理試料(6μg)に1%SDSを添加後、熱処理せずにSDS-PAGEで分離した。その後、ザイモグラフィーを行った。 サーモライシン非存在下で0℃保存(レーン1);36℃保存(レーン2);または36℃でサーモライシン 0.3 ng (レーン3)、 1 ng(レーン4)、 3 ng(レーン5)、 10 ng(レーン6)、 30 ng(レーン7)、 0.1 μg(レーン8)、 0.3 μg(レーン9)である。レーン10:レーン9と同じ量(0.3μg)のサーモライシンのみを含む溶液を同様に処理した対照。レーン11:表皮ブドウ球菌培養上清タンパク質(1.5μg)。レーン12:レーン1と11の等量混合物。M:分子量マーカー。 図3は、精製キメラ分子GluSE-GluV8のサーモライシンによるプロセシングを示す。精製リコンビナントGluSE-GluV8キメラ分子 (6.5 μg/ 80 μl)を0℃、または36℃かつサーモライシン非存在下、または存在下で4時間保温した。 (左パネル)その後、一部(0.5 μg)にSDSを添加して熱変性後、SDS-PAGEにて分離した。 (右パネル)一部(0.5 μg)にSDS添加後、熱処理せずにSDS-PAGEで分離した。その後、実施例に示した手順によりザイモグラフィーをおこなった。 サーモライシン非存在下で0℃保存(レーン1);36℃保存(レーン2);または36℃でサーモライシン1 ng (レーン3)、3 ng(レーン4)、10 ng(レーン5)、30 ng(レーン6)、0.1 μg(レーン7)、0.3μg(レーン8)、1μg(レーン9); レーン9と同じ量(1μg)のサーモライシンのみを含む溶液を同様に処理した対照(レーン10)。Mは分子量マーカーを示す。 図4は、ブドウ球菌由来プロテアーゼおよびリコンビナントプロテアーゼの比較を示す。(A)表皮ブドウ球菌より精製したGluSE(native GluSE)、リコンビナントGluSE(rec GluSE)、黄色ブドウ球菌の精製GluV8(native GluV8)およびサーモライシン切断リコンビナントGluV8(rec GluV8)のそれぞれ0.5μgをSDS-PAGEにて分離した。Mは分子量マーカーを示す。(B)および(C)表皮ブドウ球菌の精製したGluSE(native GluSE)、サーモライシン処理リコンビナントGluSE(rec GluSE)、黄色ブドウ球菌の精製GluV8(native GluV8)、サーモライシン切断リコンビナントGluV8(rec1およびrec2 GluV8)を蛍光ペプチド(B)またはアゾカゼイン(C)を基質としてプロテアーゼ活性を測定した。あらかじめ10 μg/50 μlのリコンビナントGluV8を0.3μg(rec1)または1μg(rec2)のサーモライシンで切断して活性測定に使用した。バーは標準偏差を示す(n=4〜5)。(B)では0.25μgを、(C)では1μgのタンパク質を活性測定に用いた。パネル(B)で白抜きカラムの値は左目盛り、黒塗りカラムの値は右目盛りによる。 図5は、N末端欠失GluSEプロ配列-GluV8キメラ分子のプロテアーゼ活性を示す。GluSE-GluV8(Full)または、そのN末端を段階的に欠失したIle49、Ile56、Asn61、Tyr64より始まる分子(12 μg/120 μl)を未処理(-)、サーモライシン(1 μg)処理(+)後に、(A)各試料のそれぞれ0.5 μgをSDS-PAGEに供した。Thはサーモライシン(1 μg)のみを含む液を同様に処理した対照を示す。(B)パネルAでサーモライシン未処理および処理試料(0.25 μg)を蛍光ペプチド基質により測定したプロテアーゼ活性を示す。バーは標準偏差(n=4)を示す。(C)サーモライシン未処理リコンビナント標品のプロテアーゼ活性の用量依存性を示す。 図6は、GluSE、 GluV8およびGluSWのアミノ酸配列の比較を示す。(a)表皮ブドウ球菌GluSE、黄色ブドウ球菌GluV8、S. warneri菌GluSWのプレ配列、プロ配列、成熟配列のアミノ酸の相同性を比較した。GluV8のC末端の繰り返し配列(アミノ酸285-336)、GluSWのC末のAsn/Aspリッチ領域(アミノ酸283-316)は比較から除外した。 (b)GluSE,GluV8,GluSW,GluV8mut5のプレプロペプチド配列を示す。小文字は発現ベクターpQE60由来の配列である。下線部は自己消化される可能性のあるアミノ酸を示す。相同性を最大にするために導入した2残基の欠失をハイフンで示す。 GluV8mut5においてGluV8型からGluSE型へ変換した5アミノ酸(Asp36His、Glu62Gln、Glu65Ser、Ala67Pro、Asn68Ser)に星印をつけた。矢印はプロセシング部位(プレプロ境界およびプロ−成熟領域境界)を示す。 図7は、リコンビナントプロテアーゼの発現を示す。リコンビナントを発現する大腸菌ライゼート(5 μl)をSDS-PAGEで分離した。(a)CBB染色 (b)His6タグ特異的モノクローナル抗体を用いたイムノブロッティング (c)リコンビナントタンパク質を発現する培養液(12 ml)から調製したライゼート(1 ml)からタロンアフィニティーゲル(20 μl)により精製されたリコンビンナントタンパク質(40 μl)のうち、5μlをSDS-PAGEで分離した。レーン1-12のタンパク質は表2のNos. 1-12に一致する。レーンM:分子量マーカー。 図8は、リコンビナントプロテアーゼを大量発現させた結果を示す。(a)GluV8(野生型,白丸)とGluV8mut5 ΔC(黒丸)、(b)GluSW (野生型,白丸)とGluV8mut5-SW(黒丸)を800 mlの培養液にて発現させ、ライゼート(60 ml)とした。タロンアフィニティーカラム(1.5x5 cm)で精製した。溶出液を1 mlずつ分画し、280 nmの吸光度を測定した。溶出ピークとその前後(5 μl)をSDS-PAGE(インサート図)により分離した。 図9は、リコンビナントプロテアーゼのサーモライシンによる活性化を示す。3.2 nmolの精製GluSE、GluV8mut5、GluV8mut5 ΔCおよびGluV8mut5-SW を処理なし(レーン1,4,7,10,または37℃でサーモライシン0.1 μg(レーン2,5,8,11)または0.3 μg(レーン3,6,9,12)存在下で4時間保温した。リコンビナントタンパク質/サーモライシンのモル比はそれぞれ100/1、33/1となる。SDS存在下で熱変性後3.2 pmol(GluSEでは1 μgに相当する)をSDS-PAGEにて分離した。(bとc)サーモライシン未処理あるいは処理試料(0.8 pmol、GluSEでは0.25 μg)のグルタミン酸特異的プロテアーゼ活性を測定した。cにはFig. 3bのカラム4-9を除いて同一データを拡大してプロットした。(d)アゾカゼインを基質として分解活性を測定した。b-dで0.1 μg(C1)および0.3 μg(C2)サーモライシンでリコンビナント非存在下で同様に処理して、その一部で活性測定した対照である。b-dのカラム1-12の試料はaのレーン1-12と同一である。
配列番号1:GluV8全長配列
配列番号2:GluSE全長配列
配列番号3:GluV8プレ配列
配列番号4:GluV8プロ配列
配列番号5:GluV8プレプロ配列
配列番号6:GluSEプレ配列
配列番号7:GluSEプロ配列
配列番号8:GluSEプレプロ配列
配列番号9:プライマー(GluSE 5'-プライマー)
配列番号10:プライマー(GluSE 3'-プライマー)
配列番号11:プライマー(GluV8 5'-プライマー)
配列番号12:プライマー(GluV8 3'-プライマー)
配列番号13:プライマー(GluSEプレプロ領域増幅用3'-プライマー)
配列番号14:プライマー(GluV8成熟領域増幅用5'-プライマー)
配列番号15:Hisタグ
配列番号16:短縮変異型プロ配列
配列番号17:GluV8変異プレプロ配列
配列番号18:GluSW全長配列
配列番号19:プライマー(GluSW 5'-プライマー)
配列番号20:プライマー(GluSW 3'-プライマー)
配列番号21:GluSWのN末端配列
配列番号22:GluSWの決定したN末端配列
配列番号23:GluSWのN末端配列
配列番号24:GluSWの決定したN末端配列
配列番号25:GluV8mut5−SWのN末端配列
配列番号26:GluV8mut5−SWの決定したN末端配列

Claims (10)

  1. 大腸菌で作動可能なプロモーター、および表皮ブドウ球菌由来グルタミン酸特異的プロテアーゼのプレプロ配列をコードするヌクレオチドと成熟型プロテアーゼである黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼをコードするヌクレオチドとがインフレームで連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する、大腸菌で不活性型可溶性プロテアーゼを発現するベクター。
  2. 前記プレプロ配列が配列番号8のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、または少なくとも配列番号8の64位のチロシンから66位のセリンからなるアミノ酸配列を含むペプチドである、請求項1記載の発現ベクター。
  3. 大腸菌で作動可能なプロモーター、および黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼのプレプロ配列を5アミノ酸置換した、配列番号17のアミノ酸配列からなる変異プレプロ配列をコードするヌクレオチドと成熟型プロテアーゼをコードするヌクレオチドとがインフレームで連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する、大腸菌で不活性型可溶性プロテアーゼを発現するベクターであって、成熟型プロテアーゼが黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼ、Staphylococcus warneri由来グルタミン酸特異的プロテアーゼ(EC 3.4.21.9)、Factor Xa(EC 3.4.21.6)、プラスミン(EC 3.4.21.7)、組織型プラスミノゲン活性化因子(EC 3.4.21.68)、ウロキナーゼ(EC 3.4.21.73)、トロンビン(EC 3.4.21.5)、コラゲナーゼ(EC 3.4.24.3)、歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalis由来アルギニルジンジパインおよびリジルジンジパインからなる群より選ばれる、発現ベクター
  4. 前記発現カセットが、成熟型プロテアーゼのC末端にタグを付加するように、さらにタグコードヌクレオチドがインフレームで連結されているものである、請求項1〜いずれか1項に記載の発現ベクター。
  5. 前記プロモーターがT5プロモーター/ラクトースオペレーターである、請求項1〜いずれか1項に記載の発現ベクター。
  6. 前記黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼがC末端のPro-Asp-AsnまたはPro-Asn-Asnからなる3アミノ酸の12回繰り返し配列を欠損したものである、請求項またはに記載の発現ベクター。
  7. 請求項1〜いずれか1項に記載の発現ベクターを含む形質転換体。
  8. 下記工程:
    請求項記載の形質転換体を培養する工程、
    培養工程で得られた培養物を回収する工程、および
    回収した培養物からプロテアーゼを精製する工程
    を含む、不活性型プロテアーゼの製造方法。
  9. 下記工程:
    請求項記載の形質転換体を培養する工程、
    培養工程で得られた培養物を回収する工程、
    回収した培養物からプロテアーゼを精製する工程、および
    精製したプロテアーゼを酵素処理して、プレプロ配列を切断する工程
    を含む、活性型プロテアーゼの製造方法。
  10. 黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼのプレプロ配列を5アミノ酸置換した、配列番号17のアミノ酸配列からなる変異プレプロ配列をコードするヌクレオチドを含有する、大腸菌で不活性型可溶性タンパク質を製造するためのベクター。
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