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JP5378692B2 - アクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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アクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、透明性・耐候性・表面硬度といったアクリル系樹脂の優れた特徴を保持しつつ、良好な取扱い性および表面平滑性を兼ね備え、剛性および靭性のバランスに優れたアクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。特に延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時、および/または長時間湿熱条件下に放置された時に、白化しないアクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。
自動車の内装・家電品の外装・壁紙などには、木目調などの絵柄による加飾・意匠性の付与および基材(自動車の内装・家電品の外装・壁紙など)の保護(耐傷つき性の付与や耐候性の付与)などを目的として、透明な樹脂フィルムが用いられている。その中でもアクリル系樹脂フィルムは、透明性・耐候性・表面硬度に優れることから、基材の保護機能を有する加飾フィルムとして広範囲に用いられている。
しかし、メタクリル系樹脂のみからなるフィルムは非常に脆く、製膜が困難であるばかりでなく、取扱い性が非常に悪く、製膜と同時にトリミングする際、製膜後にフィルムを切断する際、フィルムを基材と貼り合わせる際、若しくは、基材と貼り合わせた後に不用部(バリ)を除去する際、に割れるなどの不具合を生じることがあった。
そこで、このメタクリル系樹脂のみからなるフィルムの脆さを改善するために、通称コア−シェル型粒子をブレンドしたアクリル系樹脂フィルムが提案されている。
例えば、特許文献1には、アクリル酸アルキルエステル重合体の架橋粒子の存在下でメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルを共重合してなるコア−シェル型粒子(通称:2層型のコア−シェル型粒子)を、メタクリル系樹脂に配合してなるアクリル系樹脂フィルムが提案されている。
特公昭56−27378号公報
この2層型のコア−シェル型粒子をブレンドしたアクリル系樹脂フィルムは、一般的に表面硬度が低いため、その改善のために、通称3層型のコア−シェル型粒子(特許文献2)およびそれをブレンドしたアクリル系樹脂フィルム(特許文献3、4)が提案されている。このアクリル系樹脂フィルムの表面硬度が高くなると、フィルムの耐傷つき性が向上し、保護フィルムとして有利になる。
特公昭55−27576号公報 特許3287255号公報 特許3287315号公報
ところで、コア−シェル型粒子自体は架橋されているため流動性がない。そのために、コア−シェル型粒子をメタクリル系樹脂にブレンドした場合、製膜工程(例えば、Tダイを用いた溶融成形若しくはインフレーション成形)を経て成形されたフィルムの表面からコア−シェル型粒子の一部分が突き出ることは避けられず、これがアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性を低下させていた。
特に3層型のコア−シェル型粒子は一般的に2層型のコア−シェル型粒子に比べ変形しにくいため、3層型のコア−シェル型粒子を用いたアクリル系樹脂フィルムは、2層型のコア−シェル型粒子を用いたものに比べ、その表面硬度は高くなるものの、表面平滑性の低下は顕著であった。
フィルムの表面平滑性の低下は、製膜後にフィルムを切断する際、フィルムを基材と貼り合わせる際、若しくは、基材と貼り合わせた後に不用部(バリ)を除去する際等におけるフィルムの割れやすさを増大させる傾向にする。
そこで、表面平滑性が高く、特にフィルムに金属および/または金属酸化物の層を形成した場合にも良好な意匠性を発現し得るフィルムとして、特許文献5に、Tダイから溶融押出しされたアクリル系ゴム粒子含有アクリル系樹脂を、線圧300N/cm以上の押し付け圧力にて2本の鏡面ロールで挟み込んだ状態で製膜することによって得られた、アクリル系ゴム粒子を含有し、少なくとも片方の面のJIS B0601に規定されている中心線平均粗さRaが0.01〜0.05μmとなるアクリル系樹脂フィルムが提案されている。
ところで、特許文献5においては、半径3μmの測定触針を用いて、表面粗さ計〔(株)東京精密製の「サーフコム 570A型」〕にてRaの測定を行っている。本発明者らの検討によると、この測定触針のサイズはコア−シェル型粒子(通常数十〜数百nm)に比べて非常に大きいため、コア−シェル型粒子の突出の度合いなどを正確に評価できていないことがわかった。また、凝集したコア−シェル型粒子(通常数百nm〜1μm)があったとしても、それほどRaに反映されないことがわかった。そのため、中心線平均粗さRaが上記範囲になるアクリル系樹脂フィルムであっても、製膜後のフィルム切断の際、フィルムを基材と貼り合わせる際、若しくは、基材と貼り合わせた後に不用部(バリ)を除去する際等において、突出したコア−シェル型粒子や凝集したコア−シェル型粒子に起因する欠陥を起点とした、意に反するフィルムの割れを十分に防ぐことができていなかった。
特開2003−253016号公報
このように、コア−シェル型粒子の配合だけでは、アクリル系樹脂フィルムの取扱い性、表面硬度、および表面平滑性を同時に満足することは非常に困難であった。
また、アクリル系樹脂フィルムを液晶保護フィルム、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面フィルム、拡散フィルム等の光学関係部品などに用いる場合には、フィルムとしての取扱い性に加え、表面欠点の少なさなどの高い表面平滑性が要求される。さらに、フィルム表面に賦形を施す際にはその基材となるフィルムの表面粗さが賦形精度に影響を及ぼすので、この点からも非常に高い表面平滑性が要求される。
ところで、非特許文献1には、メタクリル酸メチル樹脂50質量部とポリビニルブチラール50質量部とのブレンド物を溶媒に溶解して、キャスト成形してフィルムを得たことが開示されている。このフィルムはメタクリル酸メチル樹脂が様々な大きさの分散相となった相分離構造を有している。このフィルムは、製膜時に溶媒を用いているので生産性が低いだけでなく、製膜環境を汚染するなどの不具合があった。また低分子量のポリメタクリル酸メチルを用いたフィルムは、取り扱い性が十分でなかった。また高分子量のポリメタクリル酸メチルを用いた場合でも、溶融混練を行っていないので、十分な取り扱い性を持ったフィルムを得ることができなかった。
Macromolecules, Vol.34, 4277 (2001)
本発明の課題は、フィルムの取扱い性が良く、表面硬度が高く、且つ、表面欠点がほとんどない良好な表面平滑性を有する、アクリル系樹脂フィルムを提供することである。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定のメタクリル系樹脂と特定のポリビニルアセタール樹脂とを特定の質量比で溶融混練して、前記メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度TgAと前記ポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度TgBとの間にメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度TgAPを有する樹脂組成物を得、該樹脂組成物を特定の方法で成膜することによって、透明性・耐候性・表面硬度といったアクリル系樹脂の優れた特徴を保持しつつ、良好な取扱い性と高い表面平滑性とを兼ね備えたフィルムを得られることを見出した。本発明は、この知見に基づき、さらに検討し完成したものである。
すなわち、本発明は以下の態様を含むものである。
(1) 重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂〔A〕と、数平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を(共)アセタール化して得られたアセタール化度が55〜83mol%のポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを、質量比(〔A〕/〔B〕)99/1〜51/49で含有し、前記メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度TgAと前記ポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度TgBとの間にメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度TgAPを有し、且つ少なくとも片方の面の粗度が1.5nm以下であるアクリル系樹脂フィルム。
(2) JIS K7136に準じて測定したヘイズが0.3%以下である(1)に記載のアクリル系樹脂フィルム。
(3) HB以上の鉛筆硬度を有する(1)または(2)に記載のアクリル系樹脂フィルム。
(4) 前記メタクリル系樹脂〔A〕と前記ポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを溶融混練し、Tダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形してなる(1)〜(3)のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
(5) 少なくとも片面に印刷が施されている、(1)〜(4)のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
(6) 重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂〔A〕と、数平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を(共)アセタール化して得られたアセタール化度が55〜83mol%のポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを、質量比(〔A〕/〔B〕)99/1〜51/49で、せん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで120℃以下の温度に冷却する工程を含む、前記(1)〜(5)に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
(7) 樹脂温度140℃以上で溶融混練する際に、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、せん断速度を50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回経る、(6)に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
(8) 重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂〔A〕と、数平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を(共)アセタール化して得られたアセタール化度が55〜83mol%のポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを、質量比(〔A〕/〔B〕)99/1〜51/49で溶融混練して、前記メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度TgAと前記ポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度TgBとの間にメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度TgAPを有する樹脂組成物を得、
該樹脂組成物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む、アクリル系樹脂フィルムの製造方法。
(9) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムが熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に設けられてなる積層体。
(10) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムを射出成形雌雄金型間に挿入し、該金型内に該フィルムの片方の面から熱可塑性樹脂を射出する工程を含む、積層体の製造方法。
(11) 前記(10)に記載の製造方法によって得られた積層体。
(12) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムの少なくとも一方の面に、他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層設けられてなる積層フィルム。
(13) 前記(12)に記載の積層フィルムが熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に設けられてなる積層体。
(14) 前記(12)に記載の積層フィルムを射出成形雌雄金型間に挿入し、
該金型内に該積層フィルムの片方の面から熱可塑性樹脂を射出する工程を含む、積層体の製造方法。
(15) 前記(14)に記載の製造方法によって得られた積層体。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、透明性・表面硬度といったメタクリル系樹脂自体の特徴を持ったフィルムであり、これまでのアクリル系樹脂フィルムではなしえなかった取扱い性、表面硬度および表面平滑性のバランスを達成するものである。本発明のアクリル系樹脂フィルムは、この優れた特徴を活かして、意匠性の要求される製品や光学用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを含有するフィルムである。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂〔A〕は、アルキルメタクリレートを含有する単量体混合物を重合することによって得られる。
アルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。これらのアルキルメタリレートは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アルキルメタクリレート以外の単量体としては、アルキルアクリレートが挙げられる。またアルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましい。これらのアルキルアクリレートは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートと共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、ハロゲンで核置換されたスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、モノメチルマレエート、ジメチルマレエートなどを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂〔A〕は、アルキルメタクリレート単位の割合が、耐候性の観点から、50〜100質量%であることが好ましく、80〜99.9質量%であることがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂〔A〕の耐熱性の観点から0.1〜20質量%の範囲でアルキルアクリレート単位を含有することが好ましい。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂〔A〕は、強度特性および溶融性の点から、重量平均分子量(Mwと表記、以下同じ)が、40,000以上、好ましくは40,000〜10,000,000であり、より好ましくは80,000〜1,000,000である。本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、単量体が線状に結合したものであっても良いし、分岐を有するものであっても良いし、環状構造を有するものであっても良い。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂〔A〕は、α,β−不飽和化合物を重合させることができる方法であれば特にその製法によって制限されないが、ラジカル重合によって製造されたものが好ましい。重合法としては、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などが挙げられる。
重合時に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスγ−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、オキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、全単量体100質量部に対して、通常、0.05〜0.5質量部用いられる。重合は、通常50〜140℃の温度で、通常2〜20時間掛けて行われる。
メタクリル系樹脂〔A〕の分子量を制御するために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコエート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、全単量体に対し通常0.005〜0.5質量%の範囲で使用される。
ポリビニルアセタール樹脂〔B〕は、通常、化1で表される繰り返し単位を有する樹脂である。
Figure 0005378692
化1中、nは、アセタール化に用いたアルデヒドの種類を示す番号(自然数)、R1、R2、・・・・、Rnはアセタール化反応に用いたアルデヒドのアルキル残基または水素原子、k(1)、k(2)、・・・、k(n)はそれぞれR1、R2、・・・、Rnを含むアセタール単位の割合(mol比)、lはビニルアルコール単位の割合(mol比)、mはビニルアセテート単位の割合(mol比)である。ただし、k(1)+k(2)+・・・+k(n)+l+m=1であり、k(1)、k(2)、・・・、k(n)、l、及びmはいずれかがゼロであってもよい。各繰返し単位は、化1に示す配列順序によって特に制限されず、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよいし、テーパー状に配列されていてもよい。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂〔B〕は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとを反応させることによって得ることができる。
ポリビニルアセタール樹脂〔B〕の製造に用いられるポリビニルアルコール樹脂は、数平均重合度が、200〜4,000であり、好ましくは300〜3,000であり、より好ましくは500〜2,000である。ポリビニルアルコール樹脂の数平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂の力学物性が不足し、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性、特に靭性が不足する傾向がある。一方、ポリビニルアルコール樹脂の数平均重合度が4,000を超えるとメタクリル系樹脂と溶融混練する際の溶融粘度が高くなる傾向がある。
ポリビニルアルコール樹脂は、その製法によって特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニル等をアルカリ、酸、アンモニア水等によりけん化することにより製造されたものを用いることができる。
ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されたものであってもよいが、部分的にけん化された部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。けん化度は80mol%以上のものを用いることが好ましい。
また、上記ポリビニルアルコール樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等の、ビニルアルコールとこれに共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることができる。さらに、一部にカルボン酸等が導入された変性ポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。
これらポリビニルアルコール樹脂は、一種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂〔B〕の製造に用いられるアルデヒドは特に制限されない。例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む。)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む。)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらアルデヒドのうち、ブチルアルデヒドを主体とするものが好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化をブチルアルデヒドを主体とするアルデヒドで行って得られるポリビニルアセタール樹脂〔B〕を特にポリビニルブチラールと呼ぶ。本発明では、ポリビニルアセタール樹脂〔B〕中に存在するアセタール単位のうち、ブチラール単位の割合(下式参照)が0.9を超えて有するポリビニルブチラールが好ましい。すなわち、化1に示すポリビニルアセタール樹脂の構造式において、R1=C37(ブチルアルデヒドのアルキル残基)であるとき、k(1)/(k(1)+k(2)+・・・+k(n))>0.9であるものが好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとの反応((共)アセタール化反応)は、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリビニルアルコール樹脂の水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存在下、アセタール化反応させて樹脂粒子を析出させる水媒法;ポリビニルアルコール樹脂を有機溶媒中に分散させ、酸触媒の存在下、アルデヒドとアセタール化反応させ、この反応液をポリビニルアセタール樹脂に対して貧溶媒である水等により析出させる溶媒法などが挙げられる。これらの方法のうちで水媒法が好ましい。
上記酸触媒は特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸類;炭酸ガス等の水溶液にした際に酸性を示す気体;陽イオン交換体や金属酸化物等の固体酸触媒などが挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂〔B〕のアセタール化度は、55〜83mol%である。この範囲のアセタール化度を有するポリビニルアセタール樹脂を用いることによって、溶融加工または製造が容易で且つ安価に本発明のアクリル系樹脂フィルムを得ることができる。
なお、ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度(mol%)は、以下の式で定義することができる。
アセタール化度(mol%)=
{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2
/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、JIS K6728(1977年)に記載の方法に則って、ビニルアルコールユニットの質量割合(l0)および酢酸ビニルユニットの割合(m0)を滴定によって求め、ビニルアセタールユニットの質量割合(k0)をk0=1−l0−m0によって求め、これからビニルアルコールユニットのモル割合(l)および酢酸ビニルユニットのモル割合(m)を計算し、k=1−l−mの計算式によりビニルアセタールユニットの割合(k=k(1)+k(2)+・・・+k(n))を計算し、アセタール化度(mol%)={k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100によって求めても良いし、ポリビニルアセタール樹脂を重水素化ジメチルスルフォキサイドに溶解し、1H−MMR、または13C−NMRを測定して算出しても良い。
ブチルアルデヒドでアセタール化された割合は特にブチラール化度と呼ばれる。化1に示すポリビニルアセタールの構造式において、R1=C37(ブチルアルデヒドのアルキル残基)であるとき、ブチラール化度は下式で定義される。
ブチラール化度(mol%)={k(1)}×2
/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂〔B〕は、ブチラール化度が55〜75mol%であることがさらに好ましい。ブチラール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、力学特性、特に靭性に優れ、本発明のアクリル系樹脂フィルムを容易に且つ安価に得ることができる。また、ブチラール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、メタクリル系樹脂(A)の屈折率とポリビニルブチラールの屈折率との差が小さくなり、メタクリル系樹脂(A)の特長である透明性(高可視光線透過率・低ヘイズ)が保持されやすい。さらに、延伸した際、折り曲げた際、衝撃を受けた際および/または長時間湿熱条件下に置かれた際にほとんど白化しないという特長があらわれやすい。
ブチラール化度が55mol%未満では、ポリビニルアセタール樹脂の製造コストが高く、また熱安定性が低下し、本発明のアクリル系樹脂フィルムの黄色度(YI)が大きくなりやすい。またメタクリル系樹脂との相溶性が低くなり、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性、特に靭性が低くなり、フィルムの取扱い性が悪くなる傾向がある。ブチラール化度が75mol%を超えると、メタクリル系樹脂との相溶性が低下し、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性、特に靭性が低下し、フィルムの取扱い性が悪くなる傾向がある。また、メタクリル系樹脂〔A〕の屈折率とポリビニルアセタール樹脂〔B〕の屈折率との差が大きくなり、メタクリル系樹脂〔A〕の特長である透明性が低下傾向になる。
また、好適なポリビニルアセタール樹脂〔B〕は、ビニルアルコール単位を通常17〜45モル%含み、ビニルアセテート単位を通常0モル%以上5モル%以下、好ましくは0モル%以上3モル%以下含む。
水媒法及び溶媒法等において生成したスラリーは、通常、酸触媒によって酸性を呈している。酸触媒を除去する方法として、該スラリーの水洗を繰り返し、pHを通常5〜9、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;該スラリーに中和剤を添加して、pHを通常5〜9、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;アルキレンオキサイド類等を添加する方法などが挙げられる。
上記酸触媒除去のために用いる化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物やアンモニア、アンモニア水溶液が挙げられる。また、アルキレンオキサイド類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
次に中和により生成した塩、アルデヒドの反応残渣などを除去する。除去方法は特に制限されず、脱水と水洗を繰り返すなどの方法が通常用いられる。
残渣等が除去された含水状態のポリビニルアセタール樹脂は、必要に応じて乾燥され、さらに必要に応じてパウダー状、顆粒状若しくはペレット状に加工され、成形材料として供される。パウダー状、顆粒状若しくはペレット状に加工する際に、減圧状態で脱気することによりアルデヒドの反応残渣や水分などを低減しておくことが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、動的粘弾性測定においてガラス転移温度が少なくとも二つ観測される。一つは、メタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度(TgAP)であり、もう一つはポリビニルアセタール樹脂(B)に起因するガラス転移温度(TgBP)である。
ガラス転移温度が一つしか観測できない場合は、すなわちTgAP=TgBPとなる場合は、アクリル系樹脂フィルム中のメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全な相溶状態になっていることを示している。
TgAP=TgA、TgBP=TgBとなる場合は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全な非相溶の状態になっていることを示している。
これに対して、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度TgAPが、メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度(TgA)とポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度(TgB)との間の値である。すなわち、TgB<TgAP<TgA、又はTgA<TgAP<TgBの関係を満たしている。このような関係を満たすTgAPを持つ本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分的に相溶した状態になっていると考えられる。そして、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくともメタクリル系樹脂(A)が連続相を成しているものであることが好ましい。
なお、本発明において、メタクリル系樹脂(A)が二以上のメタクリル系樹脂の組み合わせである場合、その組み合わせたもののうちのいずれか一つのガラス転移温度をTgAとし、ポリビニルアセタール樹脂(B)が二以上のポリビニルアセタール樹脂の組み合わせである場合は、その組み合わせたもののうちのいずれか一つのガラス転移温度をTgBとし、上記関係、すなわちTgB<TgAP<TgA、又はTgA<TgAP<TgBの関係を満たしていればよい。
詳細な理由は明らかではないが、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶である場合、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、耐熱性、表面硬度及び剛性がメタクリル系樹脂とほぼ同等であり、且つ延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化し難くなっている。また、靭性、取扱い性なども優れている。
一方、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全相溶である場合は、アクリル系樹脂フィルムの表面硬度が低下傾向になる。また、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全相溶でTgB<TgAである場合には耐熱性が低下傾向になる。メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全非相溶である場合は、強度が低下したり、白化したりするようになる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムにおいて、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕との質量比〔A〕/〔B〕は、99/1〜51/49である。本発明のアクリル系樹脂フィルムの靭性すなわち取扱い性、表面硬度の観点から、質量比〔A〕/〔B〕は、95/5〜60/40であることが好ましく、90/10〜60/40であることがより好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂〔B〕の割合が1質量%を下回ると、本発明のアクリル系樹脂フィルムの靭性などの力学物性が低下傾向になり、フィルムの取扱い性が悪くなる傾向がある。一方、ポリビニルアセタール樹脂〔B〕の割合が49質量%を上回ると、本発明のアクリル系樹脂フィルムの表面硬度が不足する傾向になる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムに、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などを添加してもよい。なお、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性および表面硬度の観点から軟化剤や可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムには、耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系、または、トリアジン系のものが好ましい。紫外線吸収剤の添加量は、メタクリル系樹脂〔A〕の質量とポリビニルアセタール樹脂〔B〕の質量の合計に対して、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜2質量%である。
なお、本発明のアクリル系樹脂フィルムに添加される上記添加剤は、溶融混練前のメタクリル系樹脂〔A〕および/またはポリビニルアセタール樹脂〔B〕に添加されていてもよいし、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを溶融混練する際に添加してもよいし、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを含む組成物を作製し、該組成物を製膜する際に添加してもよい。また、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕と上記添加剤を混合し、直接に製膜を行ってアクリル系樹脂フィルムを作製してもよい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂〔A〕が連続相を成していることが好ましい。メタクリル系樹脂〔A〕が連続相を成すことにより、メタクリル系樹脂〔A〕に由来する良好な耐熱性および高い表面硬度を持ったアクリル系樹脂フィルムが得られる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、その製法によって特に制限されないが、上記したメタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを、上記の質量比(〔A〕/〔B〕)で溶融混練し、成膜する方法で得るのが好ましい。
特に、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕とに対して、せん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで120℃以下の温度に冷却する工程を含むことが好ましい。
さらに好適な製法では、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、樹脂温度140℃以上で溶融混練する際に、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断速度を50sec-1以下とする段階とをそれぞれ少なくとも2回経ることが好ましい。このような工程を経ることにより、少なくともメタクリル系樹脂(A)が連続相を成しているアクリル系樹脂フィルムを得ることができる。
上記工程を含む製法であれば、一旦メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの公知の混練機を用いて、各構成成分をせん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、好ましくは、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断速度を50sec-1以下とする段階とをそれぞれ少なくとも2回経て、樹脂温度140℃以上で溶融混練し、その後120℃以下に急速冷却し、必要に応じてカットしてペレット形状としてから、このペレットをフィルムに成形しても良いし;メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを含む混合物に対して、せん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら、好ましくは、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断速度を50sec-1以下とする段階とをそれぞれ少なくとも2回経て、樹脂温度140℃以上で溶融し、120℃以下に急速冷却して、直接にフィルム形状に成形しても良い。
これらの製法のうち、大きなせん断力が得られ、メタクリル系樹脂〔A〕が連続相を成しやすく、安定性および取扱い性に優れるので、二軸押出機を用いて溶融混練した後、冷却し、必要に応じてカットして一旦ペレット形状とし、このペレットをフィルムに成形するのが好ましい。溶融混練する際の樹脂温度は、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、180℃以上が特に好ましい。また、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕との劣化を抑制するという観点から、樹脂温度は、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがさらに好ましい。
溶融混練する際に与える剪断は、剪断速度が100sec-1以上であることが好ましく、200sec-1以上であることが特に好ましい。上記混合物のペレットを作製する際に、100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融し、120℃以下に冷却した場合には、フィルム化の際に再び100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融してもよいが、特にその必要はない。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの製造は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、上記溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、フィルム両面を鏡面ロール若しくは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロール若しくは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高いほうが好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましい。
また、良好な表面平滑性、良好な表面光沢、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、フィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの少なくとも一方の表面温度を60℃以上で且つフィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの両方の表面温度を130℃以下とすることが好ましい。フィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの両方の表面温度が60℃未満であると得られるアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性、ヘイズが不足する傾向にあり、少なくとも一方の表面温度が130℃を超えるとフィルムと鏡面ロール若しくは鏡面ベルトが密着しすぎるため、鏡面ロール若しくは鏡面ベルトからフィルムを引き剥がす際にフィルム表面が荒れやすくなり、得られるアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性が低くなるか、またはヘイズが高くなる傾向になる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも片面の粗度は1.5nm以下、好ましくは0.1〜1.0nmである。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢や本発明のアクリル系樹脂フィルムに印刷された絵柄層の鮮明さに優れる。また、光学用途においては、光線透過率等の光学特性や表面賦形を行う際の賦形精度に優れる。なお、成形体(フィルム)の粗度は、実施例に記載の方法で求めた値である。
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムのヘイズは、厚さ100μmにおいて、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢や本発明のアクリル系樹脂フィルムに印刷された絵柄層の鮮明さに優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まり好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。当該フィルムの厚さとしては50〜300μmがより好ましく、75〜200μmが特に好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは着色されていてもよい。着色法としては、メタクリル系樹脂〔A〕とポリビニルアセタール樹脂〔B〕との組成物自体に、顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;アクリル系樹脂フィルムを、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に、印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩が付与される。模様は有彩色のものであっても、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、後述する他の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂と接する側に施すのが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、表面がJIS鉛筆硬度(厚さ100μm)で、好ましくはHBまたはそれよりも硬く、より好ましくはFまたはそれよりも硬く、さらに好ましくはHまたはそれよりも硬い。表面が硬い本発明のアクリル系樹脂フィルムは、傷つき難いので、意匠性の要求される成形品の表面の加飾兼保護フィルムとして好適に用いられる。
(積層フィルム)
本発明の積層フィルムは、前述の本発明アクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層、直接または接着層を介して設けられているものである。また、本発明の積層フィルムは、前述の本発明アクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に木製基材やケナフなどの非木質繊維からなる基材が設けられてなるものであってもよい。
積層に適した他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。
積層フィルムの製法は、特に制限されない。例えば、(1)本発明のアクリル系樹脂フィルムと、他の熱可塑性樹脂フィルムとを別々に用意しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション); (2)本発明のアクリル系樹脂フィルムを基材にして、Tダイから溶融押出した他の熱可塑性樹脂をラミネートする方法; (3)前述のメタクリル系樹脂〔A〕および前述のポリビニルアセタール樹脂〔B〕の混合物と、別の熱可塑性樹脂とを共押出することにより、本発明のアクリル系樹脂フィルムの層と、他の熱可塑性樹脂フィルムの層とが積層されたフィルムを得る方法などが挙げられる。
これらの方法のうち、(1)または(2)の方法では、ラミネート前に、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは他の熱可塑性樹脂フィルムの貼り合せ面側にコロナ処理などの表面処理を施してもよい。
本発明の積層フィルムでは、本発明のアクリル系樹脂フィルムを積層フィルムの内層またはその一部に用いてもよいし、最外層に用いてもよい。フィルムの積層数に関しては特に制限はない。積層フィルムに用いられる他の樹脂は、フィルムの意匠性の観点から、メタクリル系樹脂などの透明な樹脂が好ましい。フィルムに傷がつきにくく、意匠性が長く持続するという観点から、最外層は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましく、例えば、メタクリル系樹脂からなるフィルム又は本発明のアクリル系熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。
本発明の積層体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、他の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に設けられてなるものである。
該積層体に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。また、本発明の積層体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、木製基材やケナフなどの非木質繊維からなる基材の表面に設けられてなるものであってもよい。
本発明の積層体の製法は、特に制限されない。例えば、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムを、他の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面にまたは木製基材もしくは非木質繊維基材の表面に、加熱下で真空成形・圧空成形・圧縮成形することにより、本発明の積層体を得ることができる。本発明の積層体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、成形体や基材の最表層に設けられており、それによって、表面平滑性、表面硬度、光沢などに優れ、さらにアクリル系樹脂フィルムに印刷された絵柄等が鮮明に表示される。
本発明の積層体の製法のうち、好ましい方法は、射出成形同時貼合法と一般に呼ばれている方法である。
この射出成形同時貼合法は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムを射出成形用雌雄金型間に挿入し、その金型に該フィルムの片方の面から溶融した熱可塑性樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時に、その成形体に前記フィルムを貼合する方法である。
金型に挿入されるフィルムは、平らなものそのままであってもよいし、真空成形、圧空成形等で予備成形して凹凸形状に賦形されたものであってもよい。
フィルムの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で予備成形を行ってもよい。後者の方法、すなわち、フィルムを予備成形した後その片面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。
フィルムに本発明の積層フィルムを用いる場合には、積層された他の熱可塑性樹脂の層が射出成形される樹脂側になるように、すなわち、本発明のアクリル系樹脂フィルムが最表面となるように配置することが好ましい。このようにして、最表層に本発明のアクリル系樹脂フィルムが設けられた積層体を得ることができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは積層フィルムは、良好な取扱い性、良好な表面平滑性および高表面硬度を活かして、意匠性の要求される成形品や高度な光学特性が要求される成形品、すなわち、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク等の表面の加飾フィルム兼保護フィルム、壁紙;マーキングフィルム;液晶保護フィルム、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面フィルム、拡散フィルム等の光学関係部品等に好適に用いられる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、特にことわりのない限り「質量部」を表し、「%」は、特にことわりのない限り「質量%」を表す。
メタクリル系樹脂・ポリビニルアセタール樹脂・熱可塑性樹脂組成物・フィルム等の物性評価を以下の方法に従って行った。
(1)重量平均分子量
テトラヒドロフランを溶媒に用い、昭和電工株式会社製Shodex(商標)GPC SYSTEM11に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー用カラムとしてShodex(商標)KF−806Lを繋ぎ、検出器としてShodex(商標)示差屈折率検出器RI−101を用いて測定した。試料溶液は、樹脂を3mg精秤し、これを3mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより調製した。測定の際の流量は、1.0ml/min.とし、ポリマーラボラトリーズ製標準ポリメタクリル酸メチルで作製した検量線に基づいて、ポリメタクリル酸メチル換算分子量として重量平均分子量(Mw)を算出した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度(Tg)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6000 DMSを用いて、フィルムを作製するのに用いたアクリル系樹脂組成物からなるペレットを射出成形して得られた試験片を切断することによって得た長さ60mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を曲げモード(両持ち梁測定)において、正弦波振動10Hz、昇温速度3℃/min.により測定した。
(3)フィルム表面の粗度の測定
原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPI4000プローブステーションE−sweep環境制御ユニット)を用いて、表面の形状をDFMモードによって測定した。プローブはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製SI−DF20(背面Al)を用いた。試料測定に先立ち、ピッチ10μm、段差100nmの参照試料を測定し、装置のX軸、Y軸の測定誤差が10μmに対して5%以下、Z軸の誤差が100nmに対して5%以下であることを確認した。
試料の観察領域は2μm×2μmとし、測定周波数を1.0Hzとした。スキャンライン数はX軸を512、Y軸を512とした。測定は25℃±2℃、湿度30±5%の大気環境で行った。得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウェアにより解析し、平均面粗さRaを求めた。すなわち、装置の測定ソフトウェアの[ツール]メニューの[3次傾き補正]コマンドを選択し、フィルムの傾きや大きなうねりの全面傾きを補正した後、[解析]メニューの[表面粗さ解析]コマンドを選択し、平均面粗さRaを得た。平均面粗さRaは、以下のように定義される。
※平均面粗さRa:基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値。
Figure 0005378692
ここでF(X,Y)は(X,Y)座標での高さの値を表す。Z0は以下で定義されるZデータの平均値を表す。
Figure 0005378692
また、S0は、測定領域の面積を表す。
この平均面粗さRaをフィルムの両面(便宜上、A面およびB面とする)において異なる10箇所の領域で測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値をフィルム表面の粗度とした。
3次傾き補正は、測定した試料表面を3次の曲面で最小2乗近似によってフィッティングすることによって行い、フィルム試料の傾きおよびうねりの影響を排除するために行った。
(4)フィルムのヘイズの測定
JIS K7136に従い、厚さ100μmのフィルムのヘイズを測定した。
(5)フィルムの表面硬度
JIS K5400にしたがって、厚さ100μmのフィルムの鉛筆硬度を測定した。
(6)フィルムの取扱い性
〔A〕フィルムの製膜同時トリミング性
プラスチック工学研究所製GT−40単軸押出し機を用いて幅500mmのTダイよりフィルム状成形体を押出し、フィルムを巻き取る前に、フィルムのMD方向に平行に、かつ、フィルムの面方向に対して60°の角度でフェザー株式会社製フェザーS 青函片刃(品番FAS−10)をフィルムの両端から5cmのところに接触させることによりトリミングを行い、製膜同時トリミング性を評価した。フィルムが直線的に切断でき2時間以上フィルムのMD方向以外に亀裂が全く入らなかった場合を○、フィルムが直線的に切断できるが2時間以内にフィルムのMD方向以外に一度でも亀裂が入った場合を△、フィルムが直線的に切断できなかった場合を×として評価した。
〔B〕フィルムの切断性
株式会社ダンベル製スーパーダンベルカッターを株式会社ダンベル製SDL−200型レバー式試料裁断器に取り付け、株式会社ダンベル製台紙(サイズ:160mm×200mm×3mm)の上にフィルムを置いて、フィルムからJIS K7162に記載の1A形ダンベル状試験片を10回打抜いた際に、1A形ダンベル形状以外に亀裂が10回とも入らなかった場合を○、1A形ダンベル形状以外に一回以上亀裂が入った場合を△、1A形ダンベル形状以外に亀裂が10回すべてに入った場合を×として評価した。
(7)フィルムの表面光沢
JIS K7105に従って、厚さ100μmのフィルムの60度表面光沢度を測定した。
〔メタクリル系樹脂〕
表1に示す比率のメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸メチル単位からなるメタクリル系樹脂をバルク重合法により作製した。作製したメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(TgA)を表1に示した。
Figure 0005378692
〔ポリビニルアセタール樹脂〕
ポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶液に、アルデヒド化合物ならびに酸触媒(塩酸)を添加し、攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた。公知の方法に従ってpH=6になるまで洗浄し、次いでアルカリ性にした水性媒体中に懸濁させて攪拌しながら後処理し、再びpH=7になるまで洗浄し、揮発分が1.0%になるまで乾燥することにより、表2に示すポリビニルアセタール樹脂をそれぞれ得た。
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、下記の手順にて求めた。
まず、JIS K6728(1977年)に記載の方法に則って、ビニルアルコールユニットの質量割合(l0)および酢酸ビニルユニットの質量割合(m0)を後記の方法によって求め、さらに、ビニルアセタールユニットの質量割合(k0)をk0=1−l0−m0によって求めた。
次に、l=(l0/44.1)/(l0/44.1+m0/86.1+2k0/Mw(acetal))およびm=(m0/86.1)/(l0/44.1+m0/86.1+2k0/Mw(acetal))を計算によって求め、k=1−l−mの計算式によりビニルアセタールユニットの割合(k=k(1)+k(2)+・・・+k(n))を計算し、最後に、アセタール化度(mol%)={k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100によって求めた。
ここで、Mw(acetal)はアセタール化ユニットひとつあたりの分子量であり、例えば、ポリビニルブチラールのとき、Mw(acetal)=Mw(butyral)=142.2である。
また、ブチルアルデヒドとその他のアルデヒドとで共アセタール化した場合は、1H−NMR、または13C−NMRを測定し、各々のアセタール化度(mol%)を算出することができる。
〔l0およびm0の求め方〕
ポリビニルアセタール樹脂約0.4gを共せん付き三角フラスコに正確に量りとり、ピリジン/無水酢酸(体積比92/8)の混合液10mlをピペットで加えて溶解し、冷却器をつけて温度50℃の水浴上で120分間加熱した。冷却後ジクロロエタン20mlを加えてよく振り混ぜ、さらに水50mlを加え、栓をして激しく振り混ぜた後、30分間放置した。生成した酢酸をN/2水酸化ナトリウム溶液でフェノールフタレインを指示薬として激しく振り混ぜながら微紅色をするまで滴定し、その滴定量をa(ml)とする。別にブランク試験を行い、これに要したN/2水酸化ナトリウム溶液の滴定量をb(ml)とし、次の式により求めた。
0=2.2×(b−a)×Fl/(sl×Pl
式中の、s1:ポリビニルアセタール樹脂の質量、Pl:純分(%)、Fl:N/2水酸化ナトリウム溶液の力価である。
また、ポリビニルアセタール樹脂約0.4gを共せん付き三角フラスコに正確に量りとり、エタノール25mlを加えて85℃で溶解し、N/10水酸化ナトリウム溶液5mlをピペットでよく振り混ぜながら加え、冷却器をつけて温度85℃の水浴中で60分間還流させた。冷却後、N/10塩酸5mlをピペットで加えてよく振り混ぜ、30分間放置した。過剰の塩酸をN/10水酸化ナトリウム溶液でフェノールフタレインを指示薬として微紅色を呈するまで滴定し、その滴定量をc(ml)とした。別にブランク試験を行い、これに要したN/10水酸化ナトリウム溶液の滴定量をd(ml)として、次の式により求めた。
0=0.86×(c−d)×Fm/(sm×Pm
式中の、sm:ポリビニルアセタール樹脂の質量、Pm:純分(%)、Fm:N/10水酸化ナトリウム溶液の力価である。
Figure 0005378692
実施例1
メタクリル系樹脂(A−1)75部、およびポリビニルアセタール樹脂(B−1)25部を、日本製鋼所製二軸混練押出機TEX−44α(L/D=40)を用いてシリンダー温度220℃、スクリュー回転数200rpmで混練し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。その際の押出機のダイ直前で測定した樹脂温度は233℃であった。押出機内の最大剪断速度は、300sec-1であり、バレルとスクリューエレメントとのクリアランスが大きい部分でのせん断速度は45sec-1であった。スクリューは、上記の回転数において、300sec-1のせん断と45sec-1のせん断とが交互に2回ずつ掛かる構成のものを用いた。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、日本製鋼所製J50E2を用いて、シリンダー温度240℃で射出成形し、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を得た。さらに、この直方体試験片を切断することにより、長さ60mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を得て、TgAPを測定した。
上記ペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイより押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度(便宜上、A面およびB面と記載した。以下、同様。)、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表3に示した。
実施例2
メタクリル系樹脂(A−2)75部及びポリビニルアセタール樹脂(B−1)25部に配合処方を変えた以外は実施例1と同様にして、ペレット、直方体試験片・フィルムを得た。TgAP、フィルムの表面の粗度(便宜上、A面およびB面と記載した。以下、同様。)、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表3に示した。
実施例3
メタクリル系樹脂(A−3)75部及びポリビニルアセタール樹脂(B−1)25部に配合処方を変えた以外は実施例1と同様にして、ペレット、直方体試験片・フィルムを得た。TgAP、フィルムの表面の粗度(便宜上、A面およびB面と記載した。以下、同様。)、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表3に示した。
実施例4
Tダイ直下において2本の金属製鏡面ロールで挟み込まず、フィルムを1本の90℃に温度調節した鏡面金属ロールのみに接触させ、片面を空気に開放したこと以外は実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得た。TgAP、フィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表3に示した。
実施例5〜8
メタクリル系樹脂および/またはポリビニルアセタール樹脂の種類を表3に記載した処方に変更した以外は実施例4と同様にして、厚さ100μmのフィルムを得た。TgAP、フィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表3に示した。
Figure 0005378692
比較例1
メタクリル系樹脂(A−1)のみを用いて、プラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイより押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表4に示した。
比較例2
メタクリル系樹脂(A−2)のみを用いたこと以外は、比較例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表4に示した。
比較例3
メタクリル系樹脂(A−3)のみを用いたこと以外は、比較例1と同様にしてフィルムを作製しようとしたが、樹脂が非常に脆いためフィルム状の成形体を作製することができなかった。
比較例4
特公昭55−27576号公報(=USP3793402)の実施例1に準じて、最内層がメタクリル酸メチルと少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された架橋重合体、中間層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレンおよびメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性共重合体、最外層がメタクリル酸メチルと少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる平均粒子径が280nmの球形の3層構造のコア−シェル型粒子(C−1)を作製し、この3層構造のコア−シェル型粒子25部をメタクリル系樹脂(A−1)75部に混合し、日本製鋼所製二軸混練押出機TEX−44α(L/D=40)を用いて混練してペレットを得た。得られたペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイより押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表4に示した。
比較例5
比較例4において、3層構造のコア−シェル型粒子の最内層を形成することなく、内層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレンおよびメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性共重合体、外層がメタクリル酸メチルと少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる平均粒子径が280nmの球形の2層構造のコア−シェル型粒子(C−2)を作製し、この2層構造のコア−シェル型粒子25部をメタクリル系樹脂(A−1)75部に混合し、日本製鋼所製二軸混練押出機TEX−44α(L/D=40)を用いて混練してペレットを得た。得られたペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイより押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表4に示した。
比較例6
比較例4において、Tダイ直下において2本の金属製鏡面ロールで挟み込まず、フィルムを1本の90℃に温度調節した鏡面金属ロールのみに接触させ、片面を空気に開放した状態で製膜したこと以外は比較例4と同様にして厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表4に示した。
比較例7
比較例5において、Tダイ直下において2本の金属製鏡面ロールで挟み込まず、フィルムを1本の90℃に温度調節した鏡面金属ロールのみに接触させ、片面を空気に開放した状態で製膜したこと以外は比較例5と同様にして厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、ヘイズ、表面硬度、取扱い性、表面光沢を表4に示した。
Figure 0005378692
表3および表4に示すように、コア−シェル粒子を用いた比較例4や5のフィルムでは、両面を鏡面ロールに接触させたにも関わらず、粗度が両面平均で約2.7nmと高く、光沢度も低い。これに対して、本発明に従った、実施例のフィルムは、両面を鏡面ロールに接触させたものの粗度が両面平均で約0.9mmであり、非常に低い。さらに表面光沢度も高く、ヘイズも小さくなっている。これらのことから、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂のみからなるフィルムと同等の表面平滑性とヘイズを有し、しかも、メタクリル系樹脂だけでは達成できなかった製膜同時トリミング性、切断性等の取り扱い性が向上し、これまでにないバランスを達成したフィルムであることがわかった。

Claims (15)

  1. メチルメタクリレート単位80〜99.9質量%およびアルキルアクリレート単位0.1〜20質量%を含有し且つ重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂〔A〕と、
    数平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を(共)アセタール化して得られたアセタール化度が55〜83mol%のポリビニルアセタール樹脂〔B〕と
    を、質量比(〔A〕/〔B〕)99/1〜51/49で含有し、
    前記メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度TgAと前記ポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度TgBとの間にメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度TgAPを有し、且つ
    少なくとも片方の面の粗度が1.5nm以下
    であるアクリル系樹脂フィルム。
  2. JIS K7136に準じて測定したヘイズが0.3%以下である請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  3. HB以上の鉛筆硬度を有する請求項1または2に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  4. 前記メタクリル系樹脂〔A〕と前記ポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを溶融混練し、Tダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形してなる請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
  5. 少なくとも片面に印刷が施されている、請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
  6. メチルメタクリレート単位80〜99.9質量%およびアルキルアクリレート単位0.1〜20質量%を含有し且つ重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂〔A〕と、数平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を(共)アセタール化して得られたアセタール化度が55〜83mol%のポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを、質量比(〔A〕/〔B〕)99/1〜51/49で、せん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで120℃以下の温度に冷却する工程を含む、請求項1〜5に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
  7. 樹脂温度140℃以上で溶融混練する際に、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、せん断速度を50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回経る、請求項6に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
  8. メチルメタクリレート単位80〜99.9質量%およびアルキルアクリレート単位0.1〜20質量%を含有し且つ重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂〔A〕と、数平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を(共)アセタール化して得られたアセタール化度が55〜83mol%のポリビニルアセタール樹脂〔B〕とを、質量比(〔A〕/〔B〕)99/1〜51/49で溶融混練して、前記メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度TgAと前記ポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度TgBとの間にメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度TgAPを有する樹脂組成物を得、
    該樹脂組成物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む、アクリル系樹脂フィルムの製造方法。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムが熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に設けられてなる積層体。
  10. 請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムを射出成形雌雄金型間に挿入し、
    該金型内に該フィルムの片方の面から熱可塑性樹脂を射出する工程を含む、積層体の製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法によって得られた積層体。
  12. 請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムの少なくとも一方の面に、他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層設けられてなる積層フィルム。
  13. 請求項12に記載の積層フィルムが熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に設けられてなる積層体。
  14. 請求項12に記載の積層フィルムを射出成形雌雄金型間に挿入し、
    該金型内に該積層フィルムの片方の面から熱可塑性樹脂を射出する工程を含む、積層体の製造方法。
  15. 請求項14に記載の製造方法によって得られた積層体。
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