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JP5423265B2 - 音響処理装置 - Google Patents
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JP5423265B2 - 音響処理装置 - Google Patents

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Description

この発明は、複数の音声信号を加算処理して音響を改善する技術に関する。
近時、音楽などをステレオ再生する音声再生装置は、携帯性の向上や省スペース化などを目的として、筐体が小型化されたものが多くなっている。小型化された音声再生装置は、Lch用とRch用の2つのスピーカの間隔が狭く、2つのスピーカから放音される音の両耳に到達する時間差やレベル差が小さいため、得られる音場の広がり感が乏しくなる。
そこで、従来、あるチャンネルの信号に、反対側のチャンネルの信号の逆相成分(間接経路の成分)を加算してスピーカから放音させることで、音場の広がり感を良好にする音響処理技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平10−28097号公報
音声再生装置で再生する音楽などの音声信号には、ボーカルなどの音声がステレオ再生時に音像がセンタに定位するように、LchとRchの音声信号に同相成分として入れられている。しかし、Lチャンネル(Rチャンネル)の音声信号に、反対側のRチャンネル(Lチャンネル)の音声信号の逆相成分を加算入力すると、LchとRchの音声信号に含まれる同相成分が干渉することで劣化して、センタの音像の密度が低くなるという問題があった。例えば、従来のステレオ再生装置で音楽を再生すると、左右に音場は広がるが、センタに定位するボーカルが聞こえにくくなることがあった。
そこで、この発明は、複数の音声信号に含まれる同相成分の劣化を防止する音響処理装置を提供することを目的とする。
この発明の音響処理装置は、入力手段と、位相調整手段と、逆相生成手段と、出力手段と、を備える。入力手段は、同相成分を含む複数チャンネルのオーディオ信号が入力される。位相調整手段は、入力手段に入力された複数チャンネルのそれぞれのオーディオ信号を異なる位相の位相調整信号に調整する。逆相生成手段は、位相調整手段が調整した各チャンネルの位相調整信号を加算して位相を反転させた逆相信号を生成する。出力手段は、入力手段に入力された各チャンネルのオーディオ信号に、それぞれ、位相調整手段が調整した他チャンネルの位相調整信号と、逆相信号と、を加算して出力する。
この構成により、異なる位相の成分(間接経路の成分)を他チャンネルから出力するので、音場の広がり感を良好にする。また、各チャンネルのオーディオ信号に他チャンネルの位相調整信号を加算すると、各チャンネルのオーディオ信号に含まれる同相成分が打ち消し合うので、同相成分が劣化するが、各チャンネルの位相調整信号の同相成分を逆相信号として加算することで、劣化した同相成分が復活する。したがって、複数チャンネルのオーディオ信号(音声信号)に含まれる同相成分の劣化が防止される。
上記構成において、音響処理装置は、フィルタ手段を備える。フィルタ手段は、入力手段に入力された各チャンネルのオーディオ信号に対して、4kHz乃至8kHzの範囲にディップを形成して、前記位相調整手段に出力する。
間接経路の成分において4kHzから8kHzまでにディップを有する音声をスピーカから放音すると、仮想スピーカが角度30°から60°までの位置に定位しているように、聴取者は明確に知覚する。この構成により、仮想スピーカが角度30°から60°までの位置に定位しているように聴取者が明確に知覚するオーディオ信号を生成するので、実際のスピーカが聴取者の正面方向に対して30°未満の角度で配置されていたとしても、その位置よりも広がった位置にスピーカが定位しているように明確に知覚させるオーディオ音声を生成できる。したがって、聴取者に音場の広がり感を明確に知覚させるオーディオ信号を生成できる。
上記構成において、フィルタ手段は、遅延手段と加算手段を備えている。遅延手段は、入力手段に入力された各チャンネルのオーディオ信号を、予め設定された時間だけ遅延させる。加算手段は、遅延手段が遅延させた各チャンネルのオーディオ信号と、入力手段に入力された同じチャンネルのオーディオ信号とを加算して出力する。
この構成においては、予め設定された時間だけ遅延させた、あるチャンネルのオーディオ信号と、同じチャンネルのオーディオ信号と、を加算するだけで、各チャンネルのオーディオ信号に対して、4kHz乃至8kHzの範囲にディップを形成できる。例えば、サンプリング周波数が48Hzであれば、遅延時間がわずか4サンプル分で6kHzにディップを形成できる。したがって、フィルタ手段の演算量はわずかで済む。
上記構成において、音響処理装置は、補償手段を備えている。補償手段は、出力手段が出力した各チャンネルのオーディオ信号のうち、逆相信号の成分のディップを補償する。入力手段に入力された、あるチャンネル(例えばLch)のオーディオ信号に、4kHz乃至8kHzの範囲にディップを形成して、位相を調整した他チャンネル(例えばRch)のオーディオ信号と、該逆相信号と、を加算すると、該逆相信号にはディップのあるLchの成分も加算されているため、Rチャンネルのオーディオ信号だけでなく、Lチャンネルのオーディオ信号にもディップが形成される。そこで、この構成では、その周波数特性を補償することにより、Lチャンネルのオーディオ信号に形成されるディップを無くすことができる。
この発明によれば、複数の音声信号に含まれる同相成分の劣化を防止できる。
実施形態に係るスピーカ装置のスピーカ位置と聴取者との関係を示す上方視図である。 (A)は、β=20°における直接経路のHRTFの周波数特性を示す図、(B)は、β=20°における間接経路のHRTFの周波数特性を示す図である。(C)は、β=30°における直接経路のHRTFの周波数特性を示す図、(D)は、β=30°における間接経路のHRTFの周波数特性を示す図である。 (A)は、β=45°における直接経路のHRTFの周波数特性を示す図、(B)は、β=45°における間接経路のHRTFの周波数特性を示す図である。(C)は、β=60°における直接経路のHRTFの周波数特性を示す図、(D)は、β=60°における間接経路のHRTFの周波数特性を示す図である。 実施形態に係るステレオ再生装置の構成を示すブロック図である。 実施形態におけるくし型フィルタの周波数特性を示す説明図である。 逆相生成部を備える場合と備えない場合の同相成分の周波数特性を示す図である。 Cchのオーディオ信号成分を含まない場合において、Lch信号を入力したときに、逆相生成部の出力信号に含まれるLchの直接経路成分とRchの間接経路成分の周波数特性を示す図である。 Cchのオーディオ信号成分を含む場合において、Lch信号を入力したときに、逆相生成部の出力信号に含まれるLchの直接経路成分とRchの間接経路成分の周波数特性を示す図である。 実施形態に係るステレオ再生装置の変形例を示すブロック図である。
以下、音響処理装置の一実施形態であるステレオ再生装置について説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るステレオ再生装置1は、2台のスピーカ50L、スピーカ50Rを備えている。スピーカ50Lとスピーカ50Rは、ステレオ再生装置1の正面パネルの中点Cから等間隔に設置されている。ステレオ再生装置1は、不図示の他の装置から入力されたオーディオ信号に応じたステレオ音声を、スピーカ50Lとスピーカ50Rから放音する。聴取者100は、中点Cを通過する中心線LC上の任意の位置を聴取位置101として、ステレオ再生装置1が再生する音声を聞くことで音場感を感じることができる。聴取位置101とスピーカ50Rを結ぶ直線と中心線LCとの成す角を角度α、聴取位置101と仮想スピーカ51Rを結ぶ直線と中心線LCとの成す角を角度βと称する。以下の説明では、角度α<角度βとする。
ステレオ再生装置1は、オーディオ信号に音響処理を施すことで、近接したスピーカ50Lとスピーカ50R(片側角度α、見開き2α)の音像が、点線で示す仮想スピーカ51Lと仮想スピーカ51Rの位置(片側角度β、見開き2β)に広がったように聴取者100に知覚させる音声(オーディオ音声)を放音する。
まず、従来のようにHRTFを用いたバイノーラル再生技術において、音像位置を広げる音響処理を行う場合について簡単に説明した後、本発明の実施形態における音響処理を実現するステレオ再生装置1の構成について説明する。
バイノーラル再生技術を用いる場合には、まず、仮想定位させたい位置に実際に設置したスピーカから、右耳200Rおよび左耳200Lまでの頭部伝達関数(以下、HRTFと称する。)を取得する。HRTFの取得は、例えばダミーヘッドを用いた方法など公知の方法を用いる。角度α方向に定位するスピーカ50Rから右耳200Rへの直接経路のHRTFをHa(α)、スピーカ50Rから左耳200Lへの間接経路のHRTFをHb(α)と称する。角度β方向に定位する仮想スピーカ51Rから右耳200Rへの直接経路のHRTFをHa(β)、仮想スピーカ51Rから左耳200Lへの間接経路のHRTFをHb(β)と称する。
なお、前記のように、スピーカ50Rとスピーカ50Lは、中点Cから等間隔に設置される。また、仮想スピーカ51Rと仮想スピーカ51Lは、中点Cから等間隔に定位させる。そのため、スピーカ50Lおよびスピーカ51Lから両耳への経路のHRTFは、スピーカ50Rおよびスピーカ51Rのものと同様になるので、取得は不要である。
続いて、直接経路のHRTFであるHa(α)とHa(β)の差分(単位をdBとする場合にはHa(β)−Ha(α))を、Rch用のオーディオ信号およびLch用のオーディオ信号に畳み込む。また、間接経路のHRTFであるHb(α)とHb(β)の差分(単位をdBとする場合にはHb(β)−Hb(α))を、Rch用のオーディオ信号およびLch用のオーディオ信号に畳み込む。
そして、直接経路のHRTFの差分を畳み込んだRch用のオーディオ信号と、間接経路のHRTFの差分を畳み込んだLch用のオーディオ信号と、を加算して、スピーカ50Rから放音させる。また、直接経路のHRTFの差分を畳み込んだLch用のオーディオ信号と、間接経路のHRTFの差分を畳み込んだRch用のオーディオ信号と、を加算して、スピーカ50Lから放音させる。
これにより、聴取者100は、スピーカ50Rからの放音を仮想スピーカ51Rからの放音として、また、スピーカ50Lからの放音を仮想スピーカ51Lからの放音として、知覚することができる。
本発明の発明者らは、HRTFの周波数特性の分析、および音像定位の実験を行った。その結果、間接経路の音声が、4kHzから8kHzまでの周波数範囲にディップを有すると、仮想スピーカが角度30°から60°の位置に定位しているように、聴取者に知覚させられることが判明した。これは、人種、男女、老若の違いに因らないことが判明した。また、ディップの中心周波数が高いほど、知覚する音像の角度が大きくなることが判明した。
図2および図3に示すように、Hb(β)において、βが30°、45°、60°のとき、それぞれ5kHz、6kHz、6.5kHzを中心周波数とするディップが存在する。一方、Hb(β)において、βが20°のときには、8kHz以下の帯域において顕著なディップは存在しない。
なお、これらのディップはある程度の半値幅を有するので、ディップは4kHz付近から8kHz付近までの範囲に分布することになる。8kHzを上限とするのは、βがどの範囲であっても8kHz以上には大きなディップが存在し、8kHz以上の周波数帯域においては、ディップの音像定位への影響が小さいと考えられるからである。一方、4kHzを下限とするのは、βが30°においては、5kHz±1kHzの範囲にディップがあるが、βが20°以下である場合には、この周波数範囲において顕著なディップは存在しないからである。したがって、この周波数範囲におけるディップが、音像定位の広がり感に対して大きな影響を及ぼすと考えられる。なお、βが20°未満についての周波数特性については図示を省略しているが、20°の周波数特性と概ね同じものとなっている。
本発明の実施形態におけるステレオ再生装置1は、上述のように、出願人の分析と実験から得られた結果を応用して、HRTFに類似する音響処理を簡易的に実現するものである。以下、本発明の一実施形態であるステレオ再生装置1の構成について説明する。
図4に示すように、ステレオ再生装置1は、入力部10、音響処理部20、D/Aコンバータ30(以下、DAC30と称する。)、増幅部40、スピーカ50R、およびスピーカ50Lを備えている。音響処理部20は、本発明の音響処理装置に相当する。
音響処理部20は、くし型フィルタ71、増幅器72、くし型フィルタ81、増幅器82、逆相生成部90、イコライザ95、およびイコライザ96を備えている。
不図示のDIR(デジタル・インターフェース・レシーバ)、ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)などが出力したデジタルのオーディオ信号は、入力部10に入力される。入力部10は、入力されたオーディオ信号をデコードして音響処理部20に出力する。
音響処理部20に入力されるオーディオ信号は、ステレオ2chのオーディオ信号であり、センタに定位すべき音声を含む信号である。すなわち、Cchオーディオ信号を含むRchオーディオ信号と、Cchオーディオ信号を含むLchオーディオ信号である。Cchオーディオ信号は、同相成分として、Rchオーディオ信号とLchオーディオ信号に含まれている。以下、Lchのオーディオ信号をオーディオ信号L、Rchのオーディオ信号をオーディオ信号R、Cchのオーディオ信号をオーディオ信号Cと称する。また、オーディオ信号Lとオーディオ信号Rのサンプリング周波数は、一例として48kHzである。
くし型フィルタ71は、遅延部711および加算部712を有するくし型フィルタであって、オーディオ信号Rが入力され、所定の周波数特性のフィルタ処理を施してオーディオ信号FRを出力する。
遅延部711は、入力されたオーディオ信号Rに対して、予め設定された遅延時間の遅延処理を行う。この遅延時間は、この例においては、オーディオ信号Rの4サンプル分の遅延処理を行う。遅延時間は、サンプリング周波数が48kHzのときには、概ね83.3マイクロ秒である。加算部712は、遅延部711によって遅延処理されたオーディオ信号Rを、入力部10から入力されたオーディオ信号Rに加算して、オーディオ信号FRを出力する。
ここで、くし型フィルタ71について、遅延部711に設定される遅延時間とフィルタの周波数特性との関係について、図5に基づいて説明する。図5において、それぞれの周波数特性の近傍に付した数字は、遅延時間として設定されたサンプル数を示している。くし型フィルタの周波数特性は、所定の周波数範囲にディップを持つものとなり、ディップの中心周波数は、遅延時間によって決まる。くし型フィルタにおけるディップの中心周波数は、以下の式1に示すとおりである。
DFn=(2n−1)/2Td・・・・・(式1)
式1において、DFnはディップの中心周波数(Hz)、Tdは遅延部711に設定される遅延時間(秒)、nは自然数である。
この例のように、サンプリング周波数が48kHzで、遅延時間Tdが4サンプル分(概ね83.3マイクロ秒)である場合には、ディップの周波数のうち最低周波数であるDF1は、6kHzとなる。なお、遅延時間Tdが、2サンプル、3サンプル、4サンプル、5サンプル、6サンプルである場合、対応する周波数特性におけるディップの最低周波数DF1は、概ね12kHz、8kHz、6kHz、4.8kHz、4kHzである。
上述したように、間接経路におけるHRTFの周波数特性において4kHzから8kHzにディップが存在すると、実際のスピーカの位置より広がった位置に仮想スピーカの定位を聴取者に明確に知覚させる。また、上記周波数の範囲外にディップの最低周波数DF1が存在したとしても、聴取者に広がった位置に仮想スピーカの定位を明確に知覚させることは難しい。したがって、遅延部711には、周波数特性におけるディップの最低周波数DF1が4kHzから8kHzまでの範囲になるように、遅延時間Tdを62.5マイクロ秒から125マイクロ秒の範囲(この例におけるサンプル数で表す場合には、3サンプルから6サンプルの範囲)に設定する。
なお、これらのディップは一定の半値幅を有するから、HRTFにおけるディップの中心周波数の範囲(βが30°から60°に対応して、5kHzから6.5kHzまでの範囲)にあわせて、遅延時間Tdが77マイクロ秒から100マイクロ秒の範囲で設定されると、音像定位を拡大する効果をより明確に得ることができる。この場合、サンプル数で表すと、4サンプルのみとなるが、オーディオ信号Lとオーディオ信号Rのサンプリング周波数が高い場合や、音響処理部20に入力されるオーディオ信号Lとオーディオ信号Rをオーバーサンプリングしてサンプリング周波数を増大させるオーバーサンプリング処理部を設けた場合には、設定範囲内で細かく遅延時間Tdを調整することができる。
この例において、くし型フィルタ71は、入力されたオーディオ信号Rに対して、6kHzにディップの中心周波数を有する周波数特性のフィルタ処理を施すので、出力されるオーディオ信号FRは、オーディオ信号Rと比較して6kHz近傍の出力レベルが低下した周波数分布となる。
くし型フィルタ81は、遅延部811および加算部812を備え、オーディオ信号Lが入力され、所定の周波数特性のフィルタ処理を施してオーディオ信号FLとして出力する。くし型フィルタ81の構成は、くし型フィルタ71と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、くし型フィルタ71とくし型フィルタ81は、本発明のフィルタ手段に相当する。
増幅器72は、反転増幅器であり、くし型フィルタ71から入力されたオーディオ信号FRを予め設定された増幅率で増幅し、出力レベルを調整し、位相を反転(逆相化)して、オーディオ信号GRを出力する。また、増幅器82は、反転増幅器であり、くし型フィルタ81から入力されたオーディオ信号FLを予め設定された増幅率で増幅し、出力レベルを調整し、位相を反転(逆相化)して、オーディオ信号GLを出力する。これは、くし型フィルタ71、くし型フィルタ81においてフィルタ処理されることによるディップと、HRTFの差分におけるディップのレベルの違いを調整するためのものである。この例においては、Hb(α)とHb(β)との差分に対応するレベルに応じて調整されるように増幅率が設定されている。なお、このレベルの調整によって、音像定位に与える影響は軽微であり、大きく異なるものでなければよく、HRTFの差分にレベルを高精度に一致させるような調整は不要である。なお、増幅器72と増幅器82は同じ増幅率に設定する。なお、増幅器72と増幅器82は、本発明の位相調整手段に相当する。また、増幅器72と増幅器82が出力する信号は、位相調整信号に相当する。
逆相生成部90は、加算器91、および増幅器92を備えている。
加算器91は、増幅器72によって増幅および移相(逆相化)処理されたオーディオ信号GRと、増幅器82によって増幅および移相(逆相化)処理されたオーディオ信号GLと、を加算して、オーディオ信号PRLを出力する。
増幅器92は、反転増幅器であり、加算器91から入力されたオーディオ信号PRLを予め設定された増幅率で増幅し、出力レベルを調整し、位相を反転(逆相化)して、オーディオ信号GRL(本発明の逆相信号に相当)を出力する。増幅器92の増幅率は、例えば、−(マイナス)0.5倍に設定しておく。
加算器91と増幅器92により、オーディオ信号GLとオーディオ信号GRを加算し、−0.5倍に増幅することで、オーディオ信号Cについては、オーディオ信号GLとオーディオ信号GRとに含まれるものと同じレベルで逆相化された信号が生成される。
加算器93は、オーディオ信号Cを含むオーディオ信号Lと、増幅器72によって増幅および逆相化処理された、オーディオ信号Cを含むオーディオ信号GR(オーディオ信号Rの間接経路の成分)と、増幅器92によって増幅および逆相化処理されたオーディオ信号GRLと、を加算して、オーディオ信号TLを出力する。オーディオ信号Lとオーディオ信号GRを加算すると、オーディオ信号Lに含まれるオーディオ信号Cと、オーディオ信号GRに含まれるオーディオ信号Cと、が干渉して打ち消し合ったものとなる。そのため、逆相生成部90を備えない場合には、図6に示す周波数特性301のようにオーディオ信号Cは劣化したものとなる。しかし、加算器93では、さらにオーディオ信号GRLを加算することで、オーディオ信号GRに含まれるものと同量のオーディオ信号Cを加算することになり、オーディオ信号Cを復活させることができる。同様に、加算器94でも、オーディオ信号GRLを加算することで、オーディオ信号Cを復活させることができる。したがって、逆相生成部90を備えることで、図6に示す周波数特性302のように、オーディオ信号Lに含まれるオーディオ信号C(同相成分)と、オーディオ信号Rに含まれるオーディオ信号C(同相成分)と、が劣化するのを防止できる。なお、加算器93と加算器94は、本発明の出力手段に相当する。
逆相生成部90において、上記の処理を行うと、図7の周波数特性312と図8の周波数特性322に示すように、オーディオ信号TLに含まれるオーディオ信号Rの間接経路の成分は周波数特性が変化しない。これは、全く同じ周波数特性を有する信号であるオーディオ信号GRとオーディオ信号GRLを、加算器93で加算するからである。オーディオ信号TRについても同様に、オーディオ信号Lの間接経路の成分は周波数特性が変化しない。
一方、逆相生成部90において、上記の処理を行うと、図7の周波数特性311と図8の周波数特性321に示すように、オーディオ信号TLに含まれるオーディオ信号Rの直接経路の成分は周波数特性が変化する。これは、加算器93で、入力部10から入力されたオーディオ信号L(直接経路の成分)と、オーディオ信号GRLに含まれるオーディオ信号L(間接経路の成分(6kHzにディップを有する))を加算するからである。オーディオ信号TRに含まれるオーディオ信号Rの直接経路の成分も、同様に周波数特性が変化する。これらの周波数特性の変化による影響はわずかであるが、以下のように構成することで、周波数特性の変化を補償することが可能である。
周波数特性の変化を補償する場合には、入力部10と加算器93の間にイコライザ95を設けて、加算器93が出力するオーディオ信号TLのうち、オーディオ信号Lの成分のディップが無くなるように補償する。また、入力部10と加算器94の間にイコライザ96を設けて、加算器94が出力するオーディオ信号TRのうち、オーディオ信号Rの成分のディップが無くなるように補償する。すなわち、イコライザ95は、オーディオ信号Lの直接経路の成分において、4kHz乃至8kHzの範囲における周波数特性の変化を補償する。また、イコライザ96は、オーディオ信号Rの直接経路の成分において、4kHz乃至8kHzの範囲における周波数特性の変化を補償する。これにより、加算器93が出力するオーディオ信号TLは、図7の周波数特性311に示したような特性となる。加算器94が出力するオーディオ信号TRも同様である。なお、イコライザ95とイコライザ96は、本発明の補償手段に相当する。
このようにして、音響処理部20は、入力されたオーディオ信号Lとオーディオ信号Rに対して音響処理を施して、オーディオ信号TLとオーディオ信号TRを出力する。
DAC30は、デジタルアナログコンバータであって、音響処理部20から出力されたデジタルのオーディオ信号TLとオーディオ信号TRをアナログ変換し、アナログのオーディオ信号ALとアナログのオーディオ信号ARとして出力する。
増幅部40は、プリアンプおよびパワーアンプであって、DAC30から出力されたオーディオ信号ALとオーディオ信号ARを増幅する。そして、増幅したオーディオ信号ALとオーディオ信号ARを、それぞれスピーカ50Lとスピーカ50Rに出力し、放音させる。
このようにして、スピーカ50Lから間接経路の成分の6kHzにディップが形成されたオーディオ信号ALに基づく音声が放音され、スピーカ50Rから間接経路の成分の6kHzにディップが形成されたオーディオ信号ARに基づく音声が放音されると、図1に示すような聴取者100は、角度β=45°の方向にオーディオ信号ALとオーディオ信号ARの音像が定位するようになる。これにより、聴取者100は、仮想スピーカ51Lと、仮想スピーカ51Rから放音されているように知覚することができる。
このように、本発明の実施形態に係るステレオ再生装置1は、一方のチャンネルのオーディオ信号に対して、数サンプルの遅延を用いたくし型フィルタのような簡易な構成で処理負荷の小さいフィルタ処理を施して4kHzから8kHz近傍にディップ付与し、また位相を調整して、もう一方のチャンネルのオーディオ信号に加算する音響処理を行う。そして、このような音響処理がされたオーディオ信号に基づいて放音することにより、ステレオ再生装置1のスピーカ50Lとスピーカ50Rとが近い場所に設けられ、聴取者100からの見開き角度が狭いものとなっていても、聴取者100に、より見開き角度の大きい仮想スピーカ51L、51Rから放音されているように感じさせることができ、音像位置を拡大(変更)することができる。
また、くし型フィルタにおける周波数特性が、一部の周波数にディップを設けるというものであるため、HRTFを用いるよりもロバスト性のあるものとなり、HRTF作成に用いた頭部の形状と異なる聴取者であっても違和感なく音像位置の拡大感が得られ、さらに、音像位置の拡大感が得られる聴取位置の範囲を広くすることができる。
さらに、本発明の実施形態に係るステレオ再生装置1は、逆相生成部90で、各チャンネルの位相調整信号の同相成分を逆相信号として加算することで、劣化した同相成分が復活する。また、図7、図8に示す間接経路の成分は、周波数特性が変わらない。したがって、音場の広がりに影響を与えることなく、同相成分の劣化を防止できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、様々な態様で実施可能である。
上述した実施形態においては、音響処理部20の増幅器72における位相の調整は、逆相関係になるように行われていたが、逆相関係でなくてもよい。この位相の調整については、スピーカ50Lから放音されるオーディオ信号ALに含まれるオーディオ信号Lの成分と、スピーカ50Rから放音されるオーディオ信号ARに含まれるオーディオ信号FLの成分との相関により、スピーカ50Lとスピーカ50Rの間に定位するのを防止するためのものである。増幅器82についても同様である。
このような定位を防止するためには、少なくともオーディオ信号Lとオーディオ信号FL、およびオーディオ信号Rとオーディオ信号FRが同相関係にならないようにすればよい。位相の調整は、オールパスフィルタなどを用いる。例えば、図9に示すように、増幅器72の後段にオールパスフィルタ74を設ける。また、増幅器82の後段にオールパスフィルタ84を設ける。
オールパスフィルタ74は、増幅器72から入力されたオーディオ信号FRの位相を、入力部に入力されたオーディオ信号Rと異なる位相に調整する。
オールパスフィルタ84は、増幅器82から入力されたオーディオ信号FLの位相を、入力部に入力されたオーディオ信号Lと異なる位相に調整する。
この場合には、くし型フィルタ71が出力したオーディオ信号は、増幅器72で反転させなくてもよい。くし型フィルタ81が出力したオーディオ信号についても同様である。なお、この場合、オールパスフィルタ74とオールパスフィルタ84が、本発明の位相調整手段に相当する。
上述した実施形態において、音響処理部20の遅延部711、遅延部811に設定される遅延時間を変更することが可能である。この場合には、図1に破線で示したように制御部60を設ければよい。この制御部60は、指示に応じて、遅延部711、遅延部811に設定すべき遅延時間を決定し、決定した遅延時間を設定する。この指示は、例えば、図示しない操作手段を聴取者100が操作することによって行われ、音像位置を広げたり狭めたりする指示とすればよい。制御部60は、音像位置を広げる指示であった場合には、遅延時間Tdを現設定より短くした所定時間として決定し、狭める指示であった場合には、逆に長くした所定時間として決定すればよい。このように、遅延時間Tdを短くすれば、ディップの最低周波数DF1が高くなり、遅延時間Tdを長くすれば、ディップの最低周波数DF1が低くなるから、聴取者100が所望する音像位置の拡大感に変更することができる。
なお、所定時間については、上述したように、遅延時間Tdの設定範囲内、すなわち、62.5マイクロ秒から125マイクロ秒の範囲内において決定され、例えば、125マイクロ秒と設定されているときに、狭める指示があっても、設定される遅延時間Tdは長くなることはない。このとき、警告音などにより聴取者100に報知してもよい。
さらに、制御部60は、遅延時間の設定を変更するだけでなく、増幅器72、増幅器82に設定される増幅率の変更、オールパスフィルタ74、オールパスフィルタ84における位相の調整量の変更など、設定される各種パラメータの変更制御を行うように構成することが可能である。
上述した実施形態においては、くし型フィルタ71、くし型フィルタ81については、くし型フィルタであるものとしたが、ノッチフィルタ、パラメトリックイコライザなどを用いて、ディップの最低周波数が4kHzから8kHzの周波数範囲に予め設定された周波数特性のフィルタとして機能させることが可能である。
上述した実施形態においては、本発明は、ステレオ再生装置1を一実施形態として説明したが、音響処理部20の構成を有する音響処理装置としても、本発明の目的を達成することが可能である。このような音響処理装置は、ステレオ再生可能な2台以上のスピーカを有する携帯電話、テレビ、AVアンプなど、様々な電気機器に適用可能である。
上述した実施形態における各構成については、ハードウエアによる構成として説明したが、音響処理部20の機能の一部または全部については、入力部10、DAC30、増幅部40およびスピーカ50Lとスピーカ50Rを有する図示しないコンピュータのCPUが、記憶部に記憶された音響処理プログラムを実行することにより実現するようにしてもよい。このような音響処理プログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。この場合には、これらの記録媒体を読み取る読取手段を設ければよい。また、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。
なお、以上の説明では、Lchオーディオ信号とRchオーディオ信号に同相成分としてオーディオ信号Cが含まれている場合について説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、音響装置は、同相成分を含む複数チャンネルのオーディオ信号が入力されるものであればよい。
1…ステレオ再生装置(音響処理装置) 10…入力部 20…音響処理部 30…D/Aコンバータ(DAC) 40…増幅部 50L…スピーカ 50R…スピーカ 51L…仮想スピーカ 51R…仮想スピーカ 60…制御部 71,81…くし型フィルタ 74,84…オールパスフィルタ 90…逆相生成部

Claims (4)

  1. 同相成分を含む複数チャンネルのオーディオ信号が入力される入力手段と、
    前記複数チャンネルのそれぞれのオーディオ信号を異なる位相の位相調整信号に調整する位相調整手段と、
    前記位相調整手段が調整した各チャンネルの位相調整信号を加算して位相を反転させた逆相信号を生成する逆相生成手段と、
    前記入力手段に入力された各チャンネルのオーディオ信号に、それぞれ、前記位相調整手段が調整した他チャンネルの位相調整信号と、前記逆相信号と、を加算して出力する出力手段と、
    を備えた音響処理装置。
  2. 前記入力手段に入力された各チャンネルのオーディオ信号に対して、4kHz乃至8kHzの範囲にディップを形成して、前記位相調整手段に出力するフィルタ手段を備えた請求項1に記載の音響処理装置。
  3. 前記フィルタ手段は、
    前記入力手段に入力された各チャンネルのオーディオ信号を、予め設定された時間だけ遅延させる遅延手段と、
    前記遅延手段が遅延させた各チャンネルのオーディオ信号と、前記入力手段に入力された同じチャンネルのオーディオ信号と、を加算して出力する加算手段と、
    を備えた請求項2に記載の音響処理装置。
  4. 前記出力手段が出力した各チャンネルのオーディオ信号のうち、前記逆相信号の成分のディップを補償する補償手段を備えた請求項2または3に記載の音響処理装置。
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