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JP5427030B2 - ボール - Google Patents
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JP5427030B2 - ボール - Google Patents

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Description

本発明は、各種の競技や、トレーニング、遊戯、レクリエーション等に用いられる、人が直接的又は間接的に、投げたり、蹴ったり、打ったりするボールに関する。
中実状と中空状とに大別されるボールの内、中空状のボールの構造の1つとして、圧縮空気が封入されるチューブと、そのチューブ上にナイロンフィラメント等をあらゆる円周方向に巻くことで形成された補強層と、その補強層上に形成されたカバーゴム層と、そのカバーゴム層上に接着された複数枚の皮革パネルよりなる表皮層と、を備えた構造が知られている(例えば特許文献1参照)。この構造のボールは、貼りボールと呼ばれている。
また、これとは異なるボール構造として、例えば特許文献2に開示されているように、複数枚の皮革パネルの端縁同士を縫い合わせて球状にすることで表皮層を形成すると共に、その表皮層内にチューブを収納した構造が知られている。この構造のボールは、縫いボールと呼ばれている。
さらに別のボール構造として、例えば特許文献3には、複数の織布片を互いに縫い合わせて球状とした織布層内にチューブを収納すると共に、その織布層の表面に複数枚の皮革パネルを接着して表皮層を形成した構造のボールが開示されている。
米国特許第4333648号明細書 特開平9−19516号公報 国際公開第2004/56424号パンフレット
ところで、従来のボールは、回転しながら飛ぶときには、ボールの軌道が比較的安定している。このため、競技者は、ボールをねらい通りにコントロールすることができる。
しかしながら、ボールが無回転又は少ない回転(以下、これらを総称して無回転とし、それ以外の状態を回転と呼ぶ)で飛ぶときには、その軌道が上下や左右にぶれる現象が見られる。それによって、ボールが、競技者がねらった位置からずれた位置に飛んでいってしまう場合がある。つまり、従来のボールは、無回転時におけるボールコントロール性の点で問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無回転時における軌道のぶれを抑制して、ボールコントロール性を高めたボールを提供することにある。
前記の課題を解決すべく本件発明者らが鋭意検討を重ねたところ、無回転時におけるボールの軌道のぶれはボールの空力特性に起因するという結論に至った。
具体的には、ボールが無回転で飛んでいるときには、回転時とは異なり、ボールの表面に層流境界層が形成される。層流境界層は、ボールの表面に沿って下流に向かうにつれて次第に発達し、所定の位置でボール表面から剥離する。その層流境界層が剥離したときに、条件によっては、ボールの後方位置にカルマン渦が発生する。発生したカルマン渦はボールに対し上下又は左右等の、ボールの飛び方向に直交する方向の力を及ぼす(以下、このボールに作用する力を横力とも言う)。つまり、無回転時のボールの軌道のぶれは、カルマン渦が原因であると考えられるのである。
従って、無回転時におけるボールの軌道のぶれを抑制するためには、カルマン渦の発生を抑制すればよいことになる。
本件発明者らは、カルマン渦は、層流境界層がボール表面から剥離するときに発生し、乱流境界層が剥離するときには発生しないことに着目して、本発明では、無回転時にボール表面に形成される層流境界層が乱流境界層に遷移するように構成し、それによって乱流境界層がボール表面から剥離するようにした。
本発明は、ボール本体が実質的に無回転で飛行しているときに、ボール本体に作用する横力の振動が抑制されてボール本体の軌道が安定化させるためか、又は、ボール本体の表面に形成される層流境界層が強制的に剥離されて乱流境界層に遷移させるために、ボール本体の状の表面を形成する表皮層が3枚以上の多数枚の皮革パネルのそれぞれを互いに隣接するように設けて構成される一方、多数枚の皮革パネルのそれぞれにおける表面の全域には連続する線状の凸部と不連続な多数個の凹部とを備え、上記連続する線状の凸部が多数個の凹部の各々を角筒形の垂直投影面を有する形状として囲む格子形状に構成されたボールであって、凸部の格子形状が一定間隔になっている一方隣接する各皮革パネル同士の合わせ部分では、一方の皮革パネルにおける凸部と他方の皮革パネルにおける凸部との連続性が失われ、一方の皮革パネルにおける凹部と他方の皮革パネルにおける凹部とが互いに連続するように、隣接する各皮革パネル同士の合わせ部分における多数個の角筒状の凹部には凸部が存在しないことを特徴とする
以上説明したように、本発明によると、無回転時にボール本体の表面に形成される層流境界層を、その表面で隆起する凸部によって乱流境界層に遷移させることで、ボールの軌道のぶれの原因であるカルマン渦の発生が抑制されるから、無回転時のボールの軌道を安定にすることができる。その結果、ボールのコントロール性を高めることができる。
図1は、本発明の実施形態に係るバレーボールを示す斜視図である。 図2は、バレーボールの一部断面図(図1のII−II断面図)である。 図3は、図2とは異なる構造のバレーボールの一部断面図である。 図4は、図2及び図3とは異なる構造のバレーボールの一部断面図である。 図5の上図は、ボールの表面から層流境界層が剥離する様子を示す説明図であり、図5の下図は、凸部によって層流境界層から遷移した乱流境界層がボールの表面から剥離する様子を示す説明図である。 図6は、ボール本体に対する凸部の位置を説明するための説明図である。 図7は、凸部の別構成を示す正面図である。 図8は、凸部のさらに別の構成を示す正面図である。 図9は、凸部のさらに別の構成を示す正面図である。 図10は、凸部のさらに別の構成を示す拡大斜視図である。 図11Aは、格子状に配置する凸部のさらに別の構成を示す概念図である。 図11Bは、格子状に配置する凸部のさらに別の構成を示す概念図である。 図11Cは、格子状に配置する凸部のさらに別の構成を示す概念図である。 図11Dは、格子状に配置する凸部のさらに別の構成を示す概念図である。 図11Eは、格子状に配置する凸部のさらに別の構成を示す概念図である。 図12は、実施例に係る、各ボールの空力特性の実験結果を示す図である。 図13Aは、従来例のボールに作用する横力を測定した実験結果を示す図である。 図13Bは、実施例4のボールに作用する横力を測定した実験結果を示す図である。 図13Cは、格子状の凸部を有するボールに作用する横力を測定した実験結果を示す図である。
符号の説明
1 ボール本体
14 皮革パネル
2 凸部
B バレーボール
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本実施形態に係るボールを示している。ここでは、バレーボールを例に、ボールについて説明する。尚、ボールはバレーボールに限らない。例えば、サッカーボール、ハンドボール、及び、バスケットボール等の他の競技に用いられるボールであってもよい。
前記バレーボールBは、ボール本体1と、ボール本体1の表面から隆起した凸部2と、を備えている。
ボール本体1は、図2、図3又は図4に示すように、本実施形態では、いわゆる貼りボールの構造を有している。すなわち、ボール本体1は、球形中空のチューブ11、チューブ11の表面を被覆する補強層12、補強層12上に被覆された、例えば天然ゴムからなるカバーゴム層13、及び、カバーゴム層13の表面に接着剤を介して接着された複数枚(このバレーボールBでは18枚)の皮革パネル14からなり、ボール本体1の球面状の表面を形成する表皮層15、を含んで構成される。
前記チューブ11は、例えばブチルゴム等の、空気非透過性弾性体からなる。チューブ11には、図示省略のバルブを介して圧縮空気が封入される。
前記補強層12は、数千m分の長さのナイロンフィラメント等をチューブ11上にあらゆる円周方向に巻回した糸巻き層、又は、複数枚の織布片を球形に縫い合わせた布層よりなる。この補強層12によって、ボールとしての品質が安定化する。つまり、この補強層12によって、ボール本体1の真球性、耐久性、球状維持性、及び、経時変化に対する強度、がそれぞれ向上する。
前記皮革パネル14は、天然皮革又は人工皮革からなり、それぞれ所定の短冊形状を有している。皮革パネル14は、ボール本体1の表面を、上下、左右、及び前後の、ボール本体の中心を通りかつ互いに直交する6軸(以下、各軸を中心軸と呼ぶこともある)それぞれの方向に6分割したときに略四角形状に形成される各領域内に3枚、その周縁部同士を互いに接した状態で配置される。そうしてボール本体1の表面が皮革パネル14によって覆われることで、前記表皮層15が形成される。
尚、図示は省略するが、各皮革パネル14は、その裏面の周縁部が厚み方向に斜めに削がれている。このことによって、ボール本体1の表面において皮革パネル14の周縁部同士が接合する箇所には、横断面略V字状の窪みが形成されることになる。すなわち、前記バレーボールBの表面には、予め所定の凹凸が形成されている。
尚、図2〜図4は、理解容易のために、ボール本体1の断面を模式的に描いている。図例では各層の厚みを互いに略同じに描いているが、各層の厚みは、実際は互いに異なるものである。
前記凸部2は、本実施形態のバレーボールBには、図1及び図6(尚、図6では皮革パネル14の図示を省略している)に示すように、上下、左右、及び前後の互いに直交する6軸それぞれの方向に対応して6つ、形成されている。尚、図例では、5つの凸部2が図示され、図においてボール本体1の裏側に配置される1つの凸部は図示していない。各凸部2は、それに対応する軸を中心とした円形状に、連続して形成されている。
各凸部2は、例えば以下のようにして、ボール本体1の表面に形成すればよい。すなわち、例えば図2に示すように、カバーゴム層13に対し一体的に、径方向の外方に突出する突条部13aを形成する。この突条部13aによって、そのカバーゴム層13上に接着した皮革パネル14がボール本体1の径方向外方に隆起するため、ボール本体1の表面から隆起する凸部2が形成されることになる。
尚、前記の突条部13aは、カバーゴム層13と一体成形により形成してもよいが、突条部13aの形成は一体成形に限るものではない。例えば図示は省略するが、カバーゴム層13の表面に、所定の高さを有する突条部材を接着等によって取り付けることによっても、前記の突条部13aを形成することができる。
これとは異なり、例えば図3に示すように、皮革パネル14に対し一体的に、その表面から突出する突条部14aを形成することによって、ボール本体1の表面から隆起する凸部2を形成してもよい。
また、前記の突条部14aを皮革パネル14と一体成形するのではなく、例えば図4に示すように、皮革パネル14の表面に、突条部材14bを例えば接着によって取り付けることによって、ボール本体1の表面から隆起する凸部2を形成するようにしてもよい。
ボール本体1の表面から隆起する各凸部2は、図5に示すように、ボール本体1の表面に形成される層流境界層を強制的に剥離させると共に、そのボール本体1の表面に乱流境界層を再付着させる機能を有する。
すなわち、バレーボールBが無回転で飛んでいるときには、図5の上図に示すように、そのボール本体1の表面に層流境界層が形成される。その層流境界層はボール本体1の表面に沿って下流に向かうにつれて発達する。そうして、流れ方向の所定の位置において、層流境界層はボール本体1の表面から剥離することになる。この層流境界層が剥離したときに、条件によっては、ボール本体1の後方にカルマン渦が発生する。発生したカルマン渦は、ボール本体1に対して、上下や左右の、流れ方向に直交する方向の力を作用させるため、ボールの軌道にぶれが生じることになる。
これに対し、図5の下図に示すように、前記凸部2を備えたバレーボールBは、その凸部2がボール本体1の表面に形成された層流境界層を強制的に剥離させると共に、ボール本体1の表面に乱流境界層を再付着させる。これによって、ボール本体1の表面からは乱流境界層が剥離することになるため、カルマン渦の発生は抑制される。従って、ボールが無回転であっても、ボールの軌道のぶれが抑制されてその軌道は安定になる。
ここで、ボール本体1に設ける凸部2の数については、特に限定されるものではなく、凸部2は、少なくとも1つあればよい。但し、凸部2によって、ボール本体1の重心位置が偏心しないことが望ましい。このバレーボールBでは、ボール本体1に対して、上下、左右及び前後の6軸を設定することによって、6個の凸部2を設けているが、ボール本体1に対して適宜の数の軸を均等に設定し、それぞれの軸に対応して凸部2を設けてもよい。
次に、前記各凸部2の配置位置や形状につき、好ましい位置及び形状を、図6等を参照しながら説明する。
各凸部2は、前述したように、ボール本体1の中心を通る6軸のそれぞれに対して、その中心軸を中心とした円形状に配置されている(図6参照)。従って、各凸部2は、当該中心軸に対して軸対称にされている。これは、球状表面を有するボール本体1が、軸対称性を有しているためである。
ここで、円形状の各凸部2は、その一周に亘って連続している必要はない。例えば図7に示すように、各凸部2は適宜の数に分割されていてもよい。図7では、各凸部2を、凸部2同士が互いに交差する位置において分けることによって、各凸部2は、長短合わせて8つの部分2−1〜2−8に分割されている。
また例えば、図8に示すように、点状の多数の突起2a,2a,…を円形状に並べて配置することによって、前記の凸部2を形成するようにしてもよい。
さらに、各凸部2は円形状に配置するに限らず、例えば図9に示すように紙面に直交する中心軸方向に見て、中心軸周りの角度θによって径Dが周期的に変化するような形状に配置してもよい。尚、図9では、理解容易のために、1つの凸部2のみを図示しているが、前述したように、凸部2の数に制限はない。また、図示は省略するが、各凸部2は、中心軸周りに、円形状ではなく波形状となるように配置してもよい。尚、図7、図8、図9に示す凸部の特徴を互いに組み合わせることも可能である。
例えばボール本体1の中心を通る中心軸を多数設定すると共に、その各中心軸に対応して、図8に示す点状の多数の突起2a,2a,…を、円形状や波形状に並べて配置することによって、前記の凸部2を多数形成してもよい。その結果として、多数の突起2aが、ボール本体1の球状表面の全体に亘って配置されるようにしてもよい。さらに、例えば図10に、バレーボール(ボール本体1)の表面を拡大して示すように、凸部2を、各皮革パネル14において、互いに直交する2方向それぞれに対して格子状となるように配置してもよい。これは、線状の凸部2を多数配置したことと等価である。凸部2の格子は、一定間隔としてもよい。こうしたボールは、前述したように乱流境界層の再付着によってカルマン渦の発生を抑制するという効果が得られることは勿論のこと、詳しくは後述するが、ボールの表面粗さ(ラフネス)が増大することによって、球速の広い範囲に亘ってボールの軌道が安定になるという効果が得られる。
凸部2の格子状配置の別の例として、図11A〜11Eを挙げることができる。具体的に図11Aでは、凸部2を#形状に配置すると共に、それを互いに直交する2方向それぞれに対し並べて配置している。また、図11Bでは、比較的短い線分状の凸部2を、互いに直交する2方向それぞれに対し並べて配置している。さらに、図11Cでは、凸部2をバツ状に配置すると共に、それを互いに直交する2方向それぞれに対し並べて配置している。加えて、図11Dでは、比較的長い線分状の凸部2を、1方向に並べて配置している。ここで凸部2の間隔は、同図に示すように周期的に変化させてもよいし、等間隔であってもよい。さらに、図11Eでは、凸部2をV字状に配置すると共に、それを互いに直交する2方向それぞれに対し並べて配置している。
また、前記各凸部2の、流れ方向(図6の白抜きの矢印参照)に対する位置(L)は、ボール本体1を一様流中においたときに層流境界層が自然に剥離する位置(つまり、図5の上図において、層流境界層が剥離する位置に対応する)よりも、上流側の位置となるように設定すればよい。これは、前記凸部2によって、ボール本体1の表面に形成される層流境界層を強制的に剥離させて、乱流境界層に遷移させる必要があるためである。
以上説明したように、前記のバレーボールBは、ボール本体1の表面から隆起する凸部2によって、無回転で飛んでいるときのカルマン渦の発生が抑制される。このため、ボールの軌道が安定し、競技者のねらい通りにボールが飛ぶようになる。つまり、前記のバレーボールBは、無回転時におけるボールコントロール性が高い。
また、前記の凸部2は、ボール本体1の表面に形成される層流境界層を乱流境界層に遷移させている。このように乱流境界層が剥離する場合は、層流境界層が剥離する場合に比べて、図5の下図に示すように、ボール後方における流れの乱れ幅が狭くなってボールの抗力が低下する。従って、前記のバレーボールBでは、ボールの飛距離が伸びるという付随的な効果も得られる。
次に、具体的に実施した実施例について説明する。先ず、18枚の皮革パネルが表面に貼られた市販のバレーボール(直径206mm)と、その表面に凹凸がなく平滑な表面を有する、直径が200mmのボール(以下、スムースボールと呼称する)と、をそれぞれ用意した。
そうして、市販のバレーボールそのものを従来例とする一方で、その市販のバレーボールの表面に、直径が0.45mmの断面円形状を有する線条部材を、所定の中心軸を中心とする、所定の直径(図6のD参照)の円形状となるように貼り付けることによって、ボールの表面から隆起する凸部を有するバレーボール(実施例1〜4)を作成した。
具体的に実施例1は、直径が109mmである凸部が、1つ設けられたボールであり、実施例2は、直径Dが151mmである凸部が、1つ設けられたボールであり、実施例3は、直径Dが187mmである凸部が、1つ設けられたボールである。また、実施例4は、直径Dが187mmである凸部が、6軸それぞれに対応して6つ設けられたボールである。
また、前記スムースボールそのものを比較例1とすると共に、実施例と同様に、そのスムースボールの表面における所定の位置に、直径が0.45mmの断面円形状を有する線条部材を、円形状となるように貼り付けたボールを作成した(比較例2)。具体的に比較例2は、直径Dが151mmである凸部が、1つ設けられたボールである。各実施例、従来例、及び各比較例の諸元を、表1にまとめて示す。
Figure 0005427030
前記の各例に対し風洞実験を行うことによって、各例のボールの空力特性を調べた。具体的には、風速を4m/secから20m/secまで、2m/sec刻みで変化させ、その各風速において、風洞の吹き出し口近傍に配置したボールの抗力を計測した。ここで、凸部が形成された各例(実施例1〜4及び比較例2)のボールは、図5の下図に示すように、凸部に対応する中心軸が流れ方向に一致すると共に、その凸部が流れ方向に相対するような向きに配置した。そうして、各例についての、レイノルズ数Reに対する抗力係数Cdの変化を調べた。尚、レイノルズ数Reは、Re=ρ×v×d/μであり、抗力係数Cdは、Cd=D/(1/2×ρ×v×(πd/4))である。ρは空気密度〔kg/m〕、vは流速〔m/s〕、dはボール直径〔m〕、μは粘性係数〔Pa・s〕、Dは発生する抗力〔N〕である。
ここで、ボールの表面から層流境界層が剥離しているときには、その剥離位置が比較的上流側の位置になることで、ボール後方における流れの乱れ幅が広くなり、ボールの抗力は相対的に高くなる(図5の上図参照)のに対し、ボールの表面から乱流境界層が剥離しているときには、その剥離位置が比較的下流側の位置になることで、ボール後方における流れの乱れ幅が狭くなって、ボールの抗力が相対的に低くなる(図5の下図参照)。
従って、抗力係数Cdが大きく低下するレイノルズ数(臨界レイノルズ数)が小さいボールは、低速域でも表面に乱流境界層が形成されると共に、その乱流境界層がボール表面から剥離していることになるから、カルマン渦の発生が抑制されているボールということができる。
前記の各実施例、従来例、及び各比較例について行った風洞実験の結果を、図12に示す。先ず、同図において、従来例及び比較例1を比較すると、比較例1は、その臨界レイノルズ数が、従来例の臨界レイノルズ数に比べて大幅に高い(従来例の臨界レイノルズ数は1.5×10程度、比較例1の臨界レイノルズ数は2.5×10程度)。すなわち、表面が平滑な比較例1では、比較的高い流速まで、ボールの表面に層流境界層が形成されてそれが剥離することにより、カルマン渦が発生し易い。従って、比較例1は、無回転時に軌道がぶれやすいボールである。
また、比較例1及び比較例2を比較すると、比較例2では、臨界レイノルズ数が1.4×10程度になり、比較例1に比べて大幅に小さくなって従来例と同程度になっている。これは、ボールの表面に凸部を設けることによって、その凸部によって比較的低い流速において、ボールの表面に形成された層流境界層が乱流境界層に遷移して、それが剥離するようになったと考えられる。従って、ボールの表面に設けた凸部は、カルマン渦の発生を抑制する機能を有している。
次に、各実施例と従来例とを比較すると、実施例1〜4では、臨界レイノルズ数がそれぞれ、1.2×10程度、0.9×10程度、0.6×10程度、0.6×10程度となり、従来例の臨界レイノルズ数(1.5×10程度)に比べてそれぞれ小さくなっている。従って、各実施例のボールは、従来例のボールに比べて、より低い流速においてボールの表面に形成された層流境界層が乱流境界層に遷移するようになって、その乱流境界層が剥離している。つまり、各実施例のボールは、従来例によりも低速域で乱流境界層が剥離するため、従来例よりもカルマン渦の発生が抑制される。換言すれば、各実施例のボールは、従来例よりも、無回転時における軌道のぶれが抑制されることになる。
特に実施例4のボールは、抗力係数Cdの値が、レイノルズ数の増大に対し単調に減少している。このことは、前述した凸部による層流境界層から乱流境界層への遷移を早める効果に加えて、複数の凸部を設けたことに伴うボールの表面粗さ(ラフネス)の増大によって、レイノルズ数の変化に対して層流境界層から乱流境界層への遷移が穏やかになる効果も得られることを示している。従って、実施例4のような複数の凸部を備えたボールは、低速域のみならず、高速域においてもボール軌道の安定性が向上することで、球速の広い範囲に亘ってボールの軌道が安定することが予想される。
また、前記従来例及び実施例4のボールについて風洞実験を行うことによって、ボールに作用する横力の時間変動を計測した。この結果を、図13A及び13Bに示す。これによると、従来例のボールには、横力が振動的に作用すると共に、その振幅は比較的大きかった(図13A参照)のに対し、実施例4のボールには横力の振動がほとんど生じないことが確認された(図13B参照)。さらに、図10に示すような、格子状の凸部を形成したボールについても風洞実験を行って横力の時間変動を計測した。この結果を、図13Cに示す。これによると、このボールも、実施例4のボールと同様に、横力の振動がほとんど生じないことが確認された。この結果より、実施例4のボール等は、従来例のボールと比較して、ボール軌道が安定することが実際に確認された。
尚、前述したように、本発明が適用可能なボールはバレーボールBに限らない。本発明は、その他、競技用、トレーニング用、遊戯用、レクリエーション用等の、各種のボールに適用可能である。尚、競技用ボールとしては特に、サッカーボール、ハンドボール、バスケットボール等が具体例として挙げることができる。
また、ボールの構造も、貼りボールに限定されるものではない。本発明は、各種の構造のボールに対して適用することが可能である。例えば中空のボールに限らず、中実のボールに対して本発明を適用することも可能である。
また、貼りボール以外の中空のボールの構造としては、例えば、複数枚の皮革パネルの端縁同士を縫い合わせて球状とした表皮層と、その表皮層内に収納したチューブとを含む構造の、いわゆる縫いボールを、具体例として挙げることができる。この縫いボールに本発明を適用するときには、皮革パネルに対し一体に突条部を形成することによって凸部を設けてもよいし、皮革パネルの表面に突条部材を接着等によって取り付けることによって凸部を設けてもよい。
また、中空のボールの構造としては、例えば、複数の織布片を互いに縫い合わせて球状とした織布層内にチューブを収納すると共に、その織布層の表面に複数枚の皮革パネルを接着した構造も、別の具体例として挙げることができる。この構造のボールに本発明を適用するときには、前記縫いボールと同様に、皮革パネルに突条部を一体に形成するか、皮革パネルに突条部材を接着等によって取り付けるか、すればよい。また、例えば織布層に突条部材を貼り付けると共に、その上に皮革パネルを接着することによって、ボール表面から隆起する凸部を設けてもよい。
以上説明したように、本発明は、無回転時におけるボールの軌道のぶれを抑制して、ボールコントロール性を高めることができるから、各種のボールに有用である。

Claims (1)

  1. ボール本体が実質的に無回転で飛行しているときに、ボール本体に作用する横力の振動が抑制されてボール本体の軌道が安定化させるために、又は、ボール本体の表面に形成される層流境界層が強制的に剥離されて乱流境界層に遷移させるために、ボール本体の状の表面を形成する表皮層が3枚以上の多数枚の皮革パネルのそれぞれを互いに隣接するように設けて構成される一方、多数枚の皮革パネルのそれぞれにおける表面の全域には連続する線状の凸部と不連続な多数個の凹部とを備え、上記連続する線状の凸部が多数個の凹部の各々を角筒形の垂直投影面を有する形状として囲む格子形状に構成されたボールであって、凸部の格子形状が一定間隔になっている一方、隣接する各皮革パネル同士の合わせ部分では、一方の皮革パネルにおける凸部と他方の皮革パネルにおける凸部との連続性が失われ、一方の皮革パネルにおける凹部と他方の皮革パネルにおける凹部とが互いに連続するように、隣接する各皮革パネル同士の合わせ部分における多数個の角筒状の凹部には凸部が存在しないことを特徴とするボール。
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