近年、無線通信の普及が目覚しい。携帯電話等の移動通信から、準静止環境でのスポット的な無線LANサービスの提供、光ファイバ等の有線回線の代替として無線回線を各家庭に提供するFWA(Fixed Wireless Access )サービスの提供など、様々な形で無線通信の利点を利用したサービスが展開されている。この際、ビジネス的な見地からは、少ない基地局設備で広範囲のエリアをカバーし、より多くのユーザ端末を収容することが望ましい。しかし一般には、ひとつの基地局がカバーできるエリア面積は、そのシステム固有の条件(例えば周波数、送信出力、アンテナ利得、アンテナ設置場所、変調方式等)や伝搬環境により異なる。例えば、無線局の送信側の機能として、大出力の送信アンプを備えていた場合には、より広い領域をサービスエリアに設定することが可能である。また、一般には低い周波数ほど遠くまで伝達する。
しかし、線形性の高い高機能の大出力送信アンプを利用することは、装置の価格を押し上げることになり、さらには電波法等の規定による送信出力の上限もあり、あまり大出力の送信アンプを利用してサービスエリア拡大を図るのは好ましくない。一方で、周波数の低いマイクロ波帯などは使い勝手の良い周波数帯として多くのシステムで利用されているために、既に周波数資源は枯渇しつつある状況であり、新たなシステムへの免許の割り当ては期待できない。
この結果、比較的高い周波数帯を用いて広いサービスエリアに対してサービス提供を図る場合、回線設計から得られるサービスエリア面積はビジネス的な採算性の視点からは十分と言えないことが多い。この場合の対策としては、エリア内の多数の無線局を利用して、無線によるマルチホップネットワークを構築して中継伝送することが考えられる。この様なマルチホップネットワークの例としては、例えばIEEE802.11sと呼ばれる無線LAN規格におけるメッシュワークなどが有名であり(非特許文献1参照)、ここでは送信元無線局から宛先無線局へデータを到達させるためのルーチングとしてAODV等の方式が提案されている。
図9は、従来技術の無線マルチホップネットワークにおけるルーチングの概要を示す。
図9において、100はネットワーク、101〜104は無線局(詳細には、101は送信元無線局、102は宛先無線局、103〜104は中継ノード)を表し、各無線局間リンクの数値は無線メトリック値を表す。例えば、ネットワーク100から無線局103にデータを転送する場合には、単純に無線局101と無線局103が直接的に無線回線を介して通信を行うことで対処可能である。一方、無線局101と直接的に通信を行うことができない無線局102に対してデータを転送する場合には、送信元無線局101→中継ノード103→宛先無線局102のルートと、送信元無線局101→中継ノード104→宛先無線局102のルートの様に、複数の選択肢が存在するルートの中から最適なルートを検索するルーチング処理が必要になる。
このルーチング処理では、まず各無線局間で運用可能な伝送速度、トラフィック量、干渉量などの無線回線の状態を示す指標として定義された無線メトリックを利用する。説明を簡単にするため、ここでは無線メトリック値が少ない方が無線回線の状態が好ましいとする。例えば、図9において、送信元無線局101と中継ノード103との間の無線メトリック値は「12」、送信元無線局101と中継ノード104との間の無線メトリック値は「10」、中継ノード103と宛先無線局102との間の無線メトリック値は「20」、中継ノード104と宛先無線局102との間の無線メトリック値は「12」となっている。この条件において、ルーチングを行うための処理を以下に示す。
(ステップ1)各無線局は、相互に近隣の無線局との間で無線メトリックを交換する。
(ステップ2)送信元無線局101は、リクエストパケットをマルチホップネットワーク内にブロードキャストする。具体的には、送信元無線局101からは近隣の中継ノード103〜104に対し、無線メトリック値を収容したリクエストパケットを送付する。
(ステップ3)各中継ノード103〜104は、受信したリクエストパケット内の無線メトリック値に、次の無線局との間の無線メトリック値を追加(積算または加算)したリクエストパケットを更に先の無線局に宛てて送信する。図9においては、中継ノード103および中継ノード104共に中継先が宛先無線局102のみなので、この局宛にリクエストパケットを送信する。
(ステップ4)宛先無線局102では、受信したリクエストパケットに収容された無線メトリック値を参照し、経路全体で積算または加算された無線メトリック値が最小なものを選択する。図9においては、経路として送信元無線局101→中継ノード103→宛先無線局102のルートは無線メトリック値「12」と「20」の積算(または加算)値、送信元無線局101→中継ノード104→宛先無線局102のルートは無線メトリック値「10」と「12」の積算(または加算)値となるので、経路としては送信元無線局101→中継ノード104→宛先無線局102のルートが好ましいと判断される。
(ステップ5)宛先無線局102は、レスポンスパケットを用いて選択されたルートを中継ノードに通知する。図9においては、中継ノード104宛てにレスポンスパケットを送付する。
(ステップ6)レスポンスパケットを受け取った中継ノード104は、この経路上の先の無線局に対しレスポンスパケットを転送する。具体的には、送信元無線局101にレスポンスパケットを送信し、マルチホップネットワーク内では送信元無線局101、中継ノード104、宛先無線局102のルートを選択して通信を行うことを決定する。
以上がマルチホップネットワークにおけるルーチングの概要である。一般的に、多数の無線局が混在する場合には、論理的なルートの数は膨大となり、それらの中から最適なルートを選択するためには時間がかかる。したがって、この様なルーチング処理を適切に行うためには、ある程度の期間は当該マルチホップネットワークのトポロジーに変化がない、ないしは各ルートの個別のリンクの状態はある程度の期間は定常的で変化が小さいという前提が必要となる。
図10は、従来技術における無線局装置の構成例を示す。
図10において、121は無線局装置、122は無線部、123はベースバンド信号処理部、124は無線パケット終端手段、125はインタフェース部、126はアンテナ、127は通信制御部、128は識別子取得手段、129は識別子一致判断手段、130は無線メトリック管理手段、131は制御部全体を示す。ここでの無線局装置とは、基地局および端末局を含む一般的な無線局装置であり、基本的な動作は、以下に説明するとおりである。なお、基地局であれば配下の端末局を管理するための機能などが追加されることになるが、例えばこれらの機能は通信制御部127の機能の一部と見ることができる。
無線局装置121は、無線回線を介した信号をアンテナ126で受信し、無線部122で帯域外信号のフィルタリング、ローノイズアンプによる信号増幅、RF周波数からベースバンド帯への周波数変換、アナログ信号からデジタル信号へのA/D変換等の処理を行う。デジタル化されたベースバンド信号は、ベースバンド信号処理部123に入力され、タイミング検出、物理レイヤに関するヘッダ情報の終端、復調処理、誤り訂正などの一連のベースバンド信号処理が施される。ここでの具体的な処理内容は、この無線局装置が備える無線方式に依存したものとなるが、以下で説明する基本動作はその無線方式には依存しない。
ベースバンド信号処理部123から出力される復調処理された信号は無線パケット終端手段124に入力され、ここで無線通信用のフォーマットからイーサネット(登録商標)等の有線ネットワーク上で通信されるパケットのフォーマットに変換される。この無線パケットには、いわゆるヘッダ領域等のオーバヘッドが含まれており、各種の制御情報や誤り検出用のビットの終端が行われる。例えば、誤り検出機能で誤りなしと判断された無線パケットは、ヘッダ情報から宛先や送信元等を示す識別子が取り出され、これを通信制御部127に転送する。通信制御部127ではこれらのヘッダ情報を管理するが、この中から識別子取得手段128が宛先の識別子を抜き出し、識別子一致判断手段129にて自局の識別子との一致/不一致判定を行う。この結果は通信制御部127にフィードバックされ、宛先が自局であると判断された場合には、通信制御部127は無線パケット終端手段124に対してデータの出力を指示し、フォーマット変換されたパケットをインタフェース部125にて電気的な条件等を調整して、外部に対して出力する。
逆に外部よりパケットが入力された際には、インタフェース部125を介して無線パケット終端手段124に入力され、ここで通信制御部124からの指示に従いヘッダ情報を付加し、更には誤り検出符号などを付加して無線パケットを生成する。ここでは宛先無線局の識別子に加え、送信元の識別子として自局の識別子が付与されている。この信号をベースバンド信号処理部123に入力し、ここで物理レイヤに関するヘッダ情報の付加や誤り訂正のための符号化に加え各種変調処理を施し、さらにプリアンブル信号の付加などを行い無線パケットのベースバンド信号を生成する。この信号は無線部122に入力され、デジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換、周波数変換、帯域外信号のフィルタリング、信号増幅などを行い、アンテナ126より送信される。
なお、上述のルーチング処理を行う場合には、通信制御部127にてリクエストパケットやレスポンスパケットを生成、終端する。なお、その際には周辺の無線局との間の通信状態である無線メトリック値を管理するための無線メトリック管理手段130を介して必要な情報をデータベース化して管理する。
以上の一連の信号処理は全体的な概要を説明したものであり、詳細には更に細かい処理が含まれるが、例えば無線部における送信と受信の切り替えに相当する時分割スイッチの管理などの各種タイミング管理から様々な制御情報の生成/終端など、通信制御部127が中心となって制御を行う。また、ここでは敢えて識別子取得手段128、識別子一致判断手段129、無線メトリック管理手段130を通信制御部127から切り離して説明を行ったが、これら全てをひとつの制御部全体131と捉えることも可能である。つまりハードウエア的に異なる別回路として構成をする必要はなく、ソフトウエア的な処理を行うひとつの回路として制御部全体131が存在し、その内部処理的に論理的な機能が分かれているとみなすことが可能である。
以下、図面を参照して本発明の無線通信装置の実施例について説明する。まず個々の実施例の説明の前に、全体的な基本動作について説明する。なお、本明細書においては「再送中継」という用語を用いているが、これはマルチホップ中継を行う際の1対1の通信を多段に組み合わせた通信と異なり、ヘッダ領域に記載される送信元および宛先無線局の識別子を書き換えることなしに中継することを意識したものであり、いわゆる誤り訂正のための再送(ARQ:Automatic Repeat reQest )を意味したものではない。
図1は、本発明における再送中継が適用されるシステム構成例を示す。
図1において、1−1〜1−2は基地局、2−1〜2−7および3−1〜3−7は無線局、4−1〜4−2は無線パケット、5−1〜5−2は各基地局のサービスエリア、100はネットワークを表す。
ネットワーク100に接続された基地局1−1,1−2は、それぞれがサービスエリア5−1,5−2を形成する。サービスエリア5−1は基地局1−1により管理されたエリアで、サービスエリア5−2は基地局1−2により管理されたエリアである。サービスエリア5−1内には無線局2−1〜2−7が存在し、サービスエリア5−2内には無線局3−1〜3−7が存在する。無線局2−1〜2−3は基地局1−1と通信できるが、その他の無線局2−4〜2−7は基地局1−1と直接通信を行うことはできない。なお、ここでのサービスエリアとは、たとえば、基地局1−1により管理される無線局によりマルチホップネットワークとして拡張される、無線局が基地局1−1と通信可能なエリアをいう。各基地局1−1〜1−2および各無線局2−1〜3−7にはそれぞれ識別子が付与されており、例えば基地局1−1には「A」、基地局1−2には「B」、無線局2−1には「a」、無線局2−2には「b」、…、無線局3−7には「n」の識別子が付与されている。
各サービスエリア5−1〜5−2に所属する無線局2−1〜3−7は、そのサービスエリアを管理する基地局の識別子を把握しているものとする。この把握方法は如何なるものであっても良く、例えばFWAサービスであればサービス契約時にサービスエリア毎の基地局情報を設定しても構わないし、無線局の位置が分かればネットワーク上ないしは無線局が備えるデータベースと位置情報を参照して基地局の識別子を把握しても良い。さらには、基地局がエリア内のユーザに対して以下に説明する低周波数帯通信の制御情報のひとつとして通知しても構わない。この様にして、例えばサービスエリア5−1内の無線局2−1〜2−7は、自局を管理する基地局1−1の識別子が「A」であることを事前に認識している。
次に、ネットワーク100から無線局2−7に送信すべきデータが存在する場合を考える。このデータはネットワーク100から基地局1−1に入力され、基地局1−1は、ヘッダ領域に送信元識別子「A」と宛先識別子「g」を含む無線パケット4−1を生成し、これを送信する。この無線パケット4−1は基地局1−1の近傍の無線局2−1〜2−3が受信する。例えば、無線局2−1は無線パケット4−1を受信すると、そのヘッダ領域に付与された送信元識別子「A」と宛先識別子「g」を認識する。ここで、自局を管理する基地局1−1の識別子が「A」であることから、送信元が自局を管理する基地局1−1であると認識することができる。この様な条件の無線パケット4−1を受け取った無線局2−1〜2−3はその無線パケットを再送中継し、それを無線局2−4〜2−6が受信できたとする。これらの無線局2−4〜2−6も同様に、無線パケット4−1と同等の無線パケットを受信し、そのヘッダ領域に付与された送信元識別子「A」と宛先識別子「g」を認識する。
ここで、無線局2−4〜2−6も自局を管理する基地局1−1の識別子が「A」であることから、送信元が自局を管理する基地局1−1であると認識することができる。そして同様にその無線パケットを再送中継し、それを無線局2−7が受信する。無線局2−7は、受信した無線パケットのヘッダ領域に付与された送信元識別子「A」と宛先識別子「g」を認識し、宛先識別子が自局の識別子と一致することを認識する。これにより、この無線パケットが自局宛であることを認識し、この無線パケットを終端し、中に収容されたデータを取り出すことができる。この様にして、基地局1−1から無線局2−7への通信を実現する。
次に、マルチホップネットワークの下流から上流方向へのアップリンクの通信に関して説明する。例えば、無線局3−7からネットワーク100側に送信すべきデータが存在する場合を考える。無線局3−7は、ヘッダ領域に送信元識別子「n」と宛先識別子「B」を含む無線パケット4−2を生成し、これを送信する。この無線パケットは無線局3−7の近傍の無線局3−4〜3−6が受信する。例えば、無線局3−4は無線パケット4−2を受信すると、そのヘッダ領域に付与された送信元識別子「n」と宛先識別子「B」を認識する。ここで、自局を管理する基地局1−2の識別子が「B」であることから、宛先が自局を管理する基地局1−2であると認識することができる。この様な条件の無線パケット4−2を受け取った無線局3−4〜3−6は、その無線パケットを再送中継し、これを無線局3−1〜3−3が受信できたとする。これらの無線局3−1〜3−3も同様に、無線パケット4−2と同等の無線パケットを受信し、そのヘッダ領域に付与された送信元識別子「n」と宛先識別子「B」を認識する。
ここで、無線局3−1〜3−3も自局を管理する基地局1−2の識別子が「B」であることから、宛先が自局を管理する基地局1−2であると認識することができる。そして同様に、その無線パケットを再送中継し、これを基地局1−2が受信する。基地局1−2は、受信した無線パケットのヘッダ領域に付与された送信元識別子「n」と宛先識別子「B」を認識し、宛先識別子が自局の識別子と一致することを認識する。これにより、この無線パケットが自局宛であることを認識し、この無線パケットを終端し、中に収容されたデータを取り出しネットワーク100に転送することができる。この様にして、無線局3−7から基地局1−2への通信を実現する。
ここで注意しておくこととして、例えば近接するサービスエリアからの電波の漏れ込み等により、無線局3−4が再送中継した無線パケット4−2と同等の信号を、基地局1−1の配下(基地局1−1のサービスエリア5−1内に存在することを意味する)の例えば無線局2−3や無線局2−6が受信できたとする。この際、無線局2−3または2−6は、受信した無線パケットのヘッダ領域に付与された送信元識別子「n」と宛先識別子「B」を認識することができるが、そのいずれも自局を管理する基地局1−1の識別子「A」と一致しないため、再送中継を行うことはない。
以上が基本的な動作である。その特徴は、再送中継を行う無線局は複数存在し、それらは全て同一の内容の信号を同一周波数でかつ同一タイミングで送信する点にある。それぞれの無線局の周波数誤差が無視できる場合には、若干のタイミング誤差があったとしても、それはあたかもマルチパスの信号と等価な信号とみなすことができる。しかも、図1では3つの無線局が同時に送信するため、総送信電力は3倍となり、かつ物理的に異なる場所からの信号であるためにダイバーシチ効果も得られる。受信側では複数の無線局からの信号が合成されて受信されることになるため、無線局毎に特性のばらつきが出ることは予想されるが、平均受信電力について中継局の数だけ利得が向上するため、システム全体としての回線利得が大幅に改善することが期待される。特に、局所的に見通しが利かないリンクがあっても、複数の無線局から信号を受信可能で、かつ受信側も複数の候補が存在するために、ダイバーシチ効果は非常に大きい。さらに、1対1の通信を多段に構成する構成ではないため、最適なルートを選定するルーチング処理が不要であり、トポロジーの急激な変化にも柔軟に対応可能である。
図2は、本発明における再送中継の基本動作例を示す。
図2において、11は基地局、12−1〜12−6は再送中継を行う無線局、13は宛先の無線局を表す。図2(1) は基地局11および無線局12−1〜12−6および宛先の無線局13の位置関係を示し、図2(2) はタイムスロット#1〜#8における各無線局の送信または受信状態を示し、横軸は時間を示す。
タイムスロット#1では、基地局11が無線局13宛てに無線パケットを送信すると、無線局12−1〜12−2がこの信号を受信する。次のタイムスロット#2では、前のタイムスロット#1で送信していた基地局11と、受信していた無線局12−1〜12−2が再送中継を行い、無線局12−3〜12−4がこの無線パケットを受信する。次のタイムスロット#3では、前のタイムスロット#2で送信していた基地局11および無線局12−1〜12−2と、受信していた無線局12−3〜12−4が再送中継を行い、無線局12−5〜12−6がこの無線パケットを受信する。次のタイムスロット#4では、前のタイムスロット#3で送信していた基地局11および無線局12−1〜12−4と、受信していた無線局12−5〜12−6が送信動作を行い、この無線パケットを宛先の無線局13が受信する。これにより、基地局11が送信した無線パケットを宛先の無線局13で受信することができる。
同様に、無線局13が基地局11宛てに無線パケットを送信する場合、タイムスロット#5で無線局13が無線パケットを送信すると、無線局12−5〜12−6がこの無線パケットを受信する。次のタイムスロット#6では、前のタイムスロット#5で送信していた無線局13と、受信していた無線局12−5〜12−6が再送中継を行い、無線局12−3〜12−4がこの無線パケットを受信する。次のタイムスロット#7では、前のタイムスロット#6で送信していた無線局13および無線局12−5〜12−6と、受信していた無線局12−3〜12−4が再送中継を行い、無線局12−1〜12−2がこの無線パケットを受信する。次のタイムスロット#8では、前のタイムスロット#7で送信していた無線局13および無線局12−3〜12−6と、受信していた無線局12−1〜12−2が再送中継を行い、この無線パケットを宛先の基地局11が受信する。これにより、無線局13が送信した無線パケットを基地局11で受信することができる。
ここでは、所定のタイムスロットまでの間は、各無線局は受信した無線パケットを何度も繰り返して送信し続ける。この様にして、トータルの送信電力を高めることで、最終的な無線パケットの送達を確実なものにすることができる。
図3は、本発明における無線局装置の基本構成例を示す。
図3において、21は無線局装置、22は無線部、23はベースバンド信号処理部、24は無線パケット終端手段、25はインタフェース部、26はアンテナ、27は通信制御部、28は識別子取得手段、29は識別子一致判断手段、30は基地局識別子取得手段、31は再送中継実施判断手段、32は制御部全体を示す。従来技術の説明でも述べたとおり、ここでの無線局装置とは、基地局および端末局を含む一般的な無線局装置であり、基地局であれば配下の端末局を管理するための機能などが追加されることになるが、これらの機能は通信制御部27の機能の一部と見ることができるため、基本的には以下の説明で基地局および端末局を含めた理解が可能である。
基本的な動作は従来技術の通りであるが、自局宛の無線パケット以外を再送中継する場合の動作が異なるので、その点に絞ってここでは説明を行う。無線回線を介した信号をアンテナ26で受信し、無線部22、ベースバンド信号処理部23で処理された信号は無線パケット終端手段24に入力され、ここで無線通信用のフォーマットからネットワーク上で一般的なパケットのフォーマットに変換される。ここでは、この無線パケットに付与されたヘッダ情報が取り出され、これを通信制御部27に転送する。通信制御部27ではこれらのヘッダ情報を管理するが、この中から識別子取得手段28が送信元識別子および宛先識別子を抜き出し、識別子一致判断手段29にて自局の識別子および自局が接続する基地局の識別子との一致/不一致判定を行う。この結果は通信制御部27にフィードバックされ、宛先が自局であると判断された場合には、通信制御部27は無線パケット終端手段24に対してデータの出力を指示し、フォーマット変換されたパケットをインタフェース部25にて電気的な条件等を調整して、外部に対して出力する。
一方、識別子一致判断手段29にて、送信元識別子または宛先識別子が自局宛ではないが自局が接続する基地局の識別子と一致すると判定した際には、この結果を再送中継実施判定手段31に通知し、再送中継実施判定手段31では後述する様々な判断条件を加味して再送中継の実施の可否を判断し、その結果を通信制御部27に通知する。通信制御部27では再送中継の実施指示を受けた際には、無線パケット終端手段24に対して受信した無線パケットをそのまま、ないしはヘッダ情報を所定のルールで変更し、誤り検出符号化などの処理を施し無線パケットを更新し、これをベースバンド信号処理部23、無線部22、アンテナ26を介して無線回線に送信する。この様にして再送中継を実施する。
なお、無線パケットのヘッダ情報の変更ルールや、再送中継実施判断の判断条件等は以下の実施例の中で説明を行うが、これらの例に限定されない。また、基地局識別子取得手段30は、基地局により報知された基地局識別子を通信制御部27が取得することにより、または自ら備えている様々な情報の中から、自局が接続すべき基地局の識別子情報を取得する。すなわち、基地局の識別子は基地局から受信した無線パケット(以下に示す低周波数帯通信における制御情報を含む)から取得したものでも構わないし、自局がもつデータベースなどから参照したものでも構わない。この場合、当該無線局がGPS等の自局の位置情報を取得できる場合には、当該位置情報とデータベース上の基地局の位置に基づいて、最も近い基地局に対応する識別子を取得するなど、当該無線システム以外の別の手段からの情報をもとにして取得することも可能である。また、FWAサービスなどの場合であれば、契約時、機器設置時などに設定しても構わない。この様に、基地局識別子取得手段30による「識別子の取得」の意図するところは、必ずしも能動的な取得である必要はなく、装置内の設定値の読み込みやデータベースからの検索という処理であっても良い。この様に様々な形で取得される識別子情報を基地局識別子取得手段30が管理し、識別子一致判断手段29の問合せに対して応答する。また、通信制御部27、識別子取得手段28、識別子一致判断手段29、基地局識別子取得手段30、再送中継実施判断手段31は、通信制御部27から切り離して説明を行ったが、これら全てをひとつの制御部全体32と捉えることも可能である。すなわち、ハードウエア的に異なる別回路として構成する必要はなく、ソフトウエア的な処理を行うひとつの回路として制御部全体32が存在し、その内部処理的に論理的な機能が分かれているとみなすことも可能である。同様に、ハードウエア的に全てまたは一部の機能を統合的に内在した回路の中で、等価な処理を実施することも可能である。
以上は無線回線で無線パケットを受信した場合の動作であるが、外部よりパケットが入力された際には、当然ながら識別子などの参照を省略して従来技術と同様の送信動作を行うことになる。ただし、従来技術ではルーチングのための動作が規定されていたが、ここではルーチングを行わずに無線パケットの転送を行うので、これらの機能は必要ない。
以上の一連の信号処理は全体的な概要を説明したものであり、詳細には更に細かい処理が含まれるが、例えば無線部における送信と受信の切り替えに相当する時分割スイッチの管理などの各種タイミング管理から様々な制御情報の生成/終端など、通信制御部27が中心となって制御を行う。
図4は、本発明における再送中継の基本処理フローを示す。
図4において、各無線局は無線パケットを受信する(S1 )と、受信した無線パケットの所定のフィールドから送信元識別子および宛先識別子を取得し(S2 )、宛先識別子が自局の識別子に一致するか否かを判定する(S3 )。一致した場合には、無線パケットを終端してデータの出力処理を実施し(S6 )、「再送中継なし」として処理を終了する(S7)。
一方、処理S3 にて一致しなかった場合は、送信元識別子または宛先識別子が自局を管理する基地局の識別子に一致するか否かを判断し(S4 )、一致しない場合には「再送中継なし」として処理を終了する(S7 )。一方、一致した場合には再送中継実施条件に合致するか否かの判断を行い(S5 )、再送中継実施条件に合致する場合には再送中継を実施し(S9 )、合致しない場合には再送中継を終了する(S8 )。なお、処理S9 にて再送中継を実施した場合には、再送中継の実施後に再度処理S5 に戻り、引き続き再送中継の実施条件に合致するか否かの判断を行う。繰り返し再送中継実施条件に合致する場合には、複数回の再送中継を継続し、条件に合致しなくなった段階で再送中継を終了する。なお、ここでの再送中継実施条件とは、以下の実施例でも具体例を示すが、例えば再送中継をどのタイムスロットまで継続するかや、何回まで再送中継を行ったら再送中継を終了するかなどの条件を意味する。
以上の説明では、従来技術において説明したようなルーチング処理は一切伴わない。基地局または端末局が送信局となる場合には、必要に応じて無線パケットのヘッダ情報を適宜設定したり、フレーム条件や報知情報などを再送中継条件に適合させるなどの整合性を確保する必要がある。さらに、送信局は無線パケットの新規送信(S10)の後、無線パケットの受信時と同様に処理S5 に移行し、この後の処理は無線パケット受信時と同様であり、再送中継実施条件に合致するか否かの判断を行い、その判断結果により再送中継の終了(S8 )または再送中継実施(S9 )の処理を実施する。
ここで、無線局が再送中継を繰り返す再送中継実施条件について説明する。再送中継実施条件として各無線局における再送回数を規定する場合は次のようになる。例えば、再送中継の実施は無線パケットを受信した次のタイムスロットのみの1回と限定しても構わない。同様に、無線パケットを受信した次のタイムスロットと更にその次のタイムスロットのみという様に2回と限定しても構わない。いずれにしても、先々の無線局で再送中継が繰り返されるが、各無線局における再送回数は限定される。
また、再送中継実施条件として再送中継が継続するタイムスロット(ホップ数)を規定する場合は次のようになる。無線パケット内に残りの再送回数を把握可能な条件として、例えば再送カウンタを記録しておき、無線パケットを受信した際に再送カウンタ数に残りがある場合には、残りがある間だけ再送中継を実施する。仮に再送カウンタ(以下「RC」という)が残りの再送回数を示すのであれば、RC=2と受信した場合には最初の再送中継時には、カウンタ値を1減算してRC=1、次の再送中継時にはRC=0として、このカウンタ値を更新して無線パケットに収容し、送信する。RC=0の無線パケットを受信した無線局は、次の再送中継を行わない。すなわち、最初に無線パケットを送信した無線局が再送カウンタに設定するタイムスロット(ホップ数)までの再送中継に限定される。なお、この動作では、再送中継の都度、無線パケットの中身は変更されることになるが、全ての無線局が同一のルールで無線パケットの中身を更新するため、結果的に同一の無線パケットを送信することが可能である。
また、フレーム構成を定義しておき、例えば各再送中継はそのフレーム内でのみ実施し、次のフレームでは再送中継を行わないとして、再送中継の回数を制限しても構わない。
以上説明した再送中継の基本概念は、先願(特願2011−082022)に記載の発明の技術的特徴である。
ここで、基地局のサービスエリア内に存在する無線局を基地局が制御するための技術について具体的に説明する。
本発明の対象となる無線通信システムは、上述したように、周波数資源が枯渇しつつある使い勝手の良いマイクロ波を避け、より高い周波数帯として例えばミリ波帯などを用いることを想定している。典型的な例として、IEEE802.15.3c などの標準規格などで規定される60GHz帯などを用いる場合を想定してみる。まず、自由空間伝搬損Lは周波数f(波長λ)、距離R、光速Cに対して以下の式で与えられる。
L=(4πR/λ)2=(4πfR/C)2 …(1)
式(1) より、同一距離の場合に周波数が大きくなるほど損失は大きくなることが分かる。例えば、免許不要のマイクロ波帯として利用される 2.4GHz帯と60GHz帯を比較すれば、周波数は25倍となる。dB表示で比較すれば、損失は約28dBの差となって表れる。
ここで一般に、周波数が高くなると小型の高利得アンテナを利用することが可能になること、逆に周波数が低い場合には高利得化には大きなアンテナが必要になることが知られている。基地局側では、あまりビーム幅の狭い指向性アンテナを利用しすぎるとサービスエリアを一括でカバーしきれなくなる点と、基地局側には多少は大きなアンテナを設置することも可能であることを考慮すれば、基地局側に想定しうるアンテナ利得は周波数帯の差にあまり影響を受けないことが想定される。一方、一般の無線局側については、小型のアンテナが必須であるために周波数によりアンテナ利得に差が出るのは必然的である。このアンテナ利得差を仮に10dBと仮定すれば、式(1) による28dBと合わせて、 2.4GHz帯と60GHz帯とでは周波数に依存して約18dBの回線利得差が存在する。このため、この回線利得差に起因してミリ波帯では直接通信できない無線局との通信を実現するために、マルチホップの中継を利用することを想定した。ちなみに、この18dBという回線設計上の利得差は、仮に伝送路での伝搬損失の減衰係数を3乗とすると、到達可能な伝送距離が4倍となることに相当する。つまり、概算すれば、ミリ波を用いて数ホップ(例えば4ホップ)程度のマルチホップ中継でカバーできるエリアは、マイクロ波であれば基地局と直接通信が可能である。
もともと、マイクロ波帯では周波数資源が枯渇しつつあるために、特に広帯域の高速データ通信を行うための周波数帯域としてミリ波等の高い周波数帯を想定したが、制御情報等の限定的な情報であれば、マイクロ波帯の周波数資源を活用して通信を実現することも可能である。極端な言い方をすれば、僅かなマイクロ波帯の周波数資源を用いて、周波数資源が潤沢なミリ波帯でマイクロ波帯の周波数資源の 100倍の情報量を伝送可能とするならば、ミリ波帯の周波数資源を 100倍有効活用したとみなすことができるかもしれない。
本発明は、以上の想定に基づき、基地局および各無線局が高周波数帯と低周波数帯の2つの周波数帯に対応する無線インタフェースを有し、高周波数帯で先願の再送中継によるデータ通信を行い、低周波数帯で再送中継のためのスケジューリング情報を含む制御信号を送受信し、再送中継を効率よく行うようにする。
ここで、高周波数帯は10GHzを超える準ミリ波帯やミリ波帯とし、その周波数帯を用いて行うデータ通信を高周波数帯通信という。低周波数帯は10GHz以下のマイクロ波帯とし、その周波数帯を用いて行う制御信号の通信を低周波数帯通信という。
図5は、本発明の実施例における再送中継の動作例を示す。
図5において、高周波数帯(例えばミリ波帯)では、広帯域高速でユーザデータ等の無線パケットを転送する高周波数帯通信を行う。一方、高周波数帯より低い低周波数帯(例えばマイクロ波帯)では、再送中継のためのスケジューリング情報を含む制御信号を転送する低周波数帯通信を行う。高周波数帯通信と低周波数帯通信は同時並行的に行われる。このようなマルチバンドでの通信を行うために、基地局11および無線局12−1〜12−6および宛先の無線局13は複数の無線通信機能を備え、それに伴い高周波数帯用のアンテナと低周波数帯用のアンテナを備える。
なお、ここでは便宜上、高周波数帯通信と低周波数帯通信のタイムスロットを同期が取れた同一のタイムスロットとして図示したが、実際のシステム設計ではスロット長なども異なる場合があるので、必ずしも同一のタイムスロットを利用する必要はない。
高周波数帯通信における再送中継の手順は、図2に示す基本動作例と同様である。ただし、基地局11は、タイムスロット#1での送信に合わせて、またはそれよりも先行して、ダウンリンクにおけるスケジューリング情報を収容したスケジューリング・マップ情報S−MAP1を低周波数帯通信で送信し、無線局12−1〜12−6および宛先の無線局13が受信する。
タイムスロット#1では、基地局11が送信した無線パケットを無線局12−1〜12−2が受信する。無線局12−1〜12−2は、スケジューリング・マップ情報S−MAP1で指示されたタイムスロット#2で再送中継を行う。また、基地局11もタイムスロット#2で2回目の送信を行う。
タイムスロット#2では、基地局11および無線局12−1〜12−2が送信した無線パケットを無線局12−3〜12−4が受信する。無線局12−3〜12−4は、スケジューリング・マップ情報S−MAP1で指示されたタイムスロット#3にて再送中継を行う。また、基地局11は3回目の送信を行い、無線局12−1〜12−2は2回目の再送中継を行う。
タイムスロット#3では、基地局11および無線局12−1〜12−4が送信した無線パケットを無線局12−5〜12−6が受信する。無線局12−5〜12−6は、スケジューリング・マップ情報S−MAP1で指示されたタイムスロット#4にて再送中継を行う。また、基地局11は4回目の送信を行い、無線局12−1〜12−2は3回目の再送中継を行い、無線局12−3〜12−4は2回目の再送中継を行う。なお、例えばタイムスロット#3で無線局12−5〜12−6以外の無線局が無線パケットを受信しても、スケジューリング・マップ情報S−MAP1が当該無線局の再送中継を指示してしなければ、再送中継は行われない。
タイムスロット#4では、基地局11および無線局12−1〜12−6が送信した無線パケットを宛先の無線局13が受信し、終端する。
一方、例えば無線局13がアップリンクでの帯域要求を行う場合には、低周波数帯通信において帯域要求情報Reqを送信する。ここでは、タイムスロット#5で送信した場合を示している。基地局11は、タイムスロット#5で当該帯域要求情報Reqを受信すると、アップリンクにおけるタイムスロット#7〜#10のスケジューリング情報を記載したスケジューリング・マップ情報S−MAP2をタイムスロット#6で低周波数帯通信で送信し、無線局12−1〜12−6および無線局13が受信する。
タイムスロット#7では、無線局13は、スケジューリング・マップ情報S−MAP2で指示されたタイムスロット#7で無線パケットを送信し、無線局12−5〜12−6が受信する。無線局12−5〜12−6は、スケジューリング・マップ情報S−MAP2で指示されたタイムスロット#8で再送中継を行う。また、無線局13も2回目の送信を行う。以下同様に、タイムスロット#8〜#10では、各無線局12−1〜12−6がスケジューリング・マップ情報S−MAP2の指示により無線パケットの再送中継を繰り返し、基地局11に到達する。
またここでは説明を省略したが、以上の再送中継においては、上述の基本動作で説明したように、受信した無線パケットに収容された識別子を参照し、その識別子が自局の識別子ないしは自局を管理する基地局の識別子と一致するか否かの判断結果をもとに再送中継を実施する。さらに、スケジューリング・マップ情報には下記に示すように基地局の識別子が含まれており、これにより受信したスケジューリング・マップ情報が自局が従うべきものか否かを判断する。さらには、自局が接続すべき基地局を判断する際に、この低周波数帯通信を複数の基地局から受信できた場合に、この低周波数帯通信の信号の受信強度が最も高い基地局に接続するとしても構わない。
なお、高周波数帯通信は、基地局11および各無線局12−1〜12−6,13が同期したタイミングで動作する必要がある。例えば、OFDM変調方式を用いたシステムであれば、基地局11および各無線局12−1〜12−6,13はシンボルタイミングを同期させると共に、複数OFDMシンボルで構成されるタイムスロットの識別も可能なように設定されている。このタイミング同期には、例えばGPSなどを用いても構わないし、高周波数帯通信または低周波数帯通信、電波時計等のその他の無線システムにおける信号を用いても構わない。
スケジューリング・マップ情報S−MAP1,2には、再送中継に係わる様々な条件が記載されており、例えば (1)どの無線パケットに関する情報であるかを示す条件、 (2)送信開始のタイミング、 (3)再送中継の実施判断のための情報などが含まれている。
上記の (1)に関しては、例えば送信を開始する無線局が何らかの条件に従い無線パケットの識別用のID(通し番号など)を無線パケット内に設定し、受信した無線局はその無線パケットの識別用IDを参照することで、どの無線パケットがどのタイムスロットに対応するかを関係付けている。アップリンクの送信元となる無線局13では、スケジューリング・マップ情報S−MAP2で自局への帯域割り当てを知ると共に、ここに記載の無線パケットの識別用のIDを送信する無線パケットの識別IDとして用いる。なお、この無線パケットの識別IDに関しては、上述の通し番号以外にも例えば送信元無線局の識別子と宛先無線局の識別子を用いて代用することも可能であるし、無線パケットの受信されたタイムスロットに関する情報に対応する無線パケットがいずれであるかを推定して運用することとしても構わない。
上記 (2)に関しては、図5に示したような基地局および端末局の双方が認識可能なタイムスロット番号で指示する場合の他、例えば全ての無線局が共通に同期したOFDMシンボルタイミング刻みでシンボルタイミングに通し番号を付与しておき、そのどのシンボルタイミングから送信(または受信)開始すれば良いかを指示することとしてもよい。このタイミング情報は、例えば所定のビット数のカウンタで管理可能であり、そのビット数で管理可能なシンボル長を超えると値が一巡するようなモジュロ的な値で表記しても構わない。
上記 (3)に関しては、エリア内の全ての無線局を何らかの方法でグループ化しておき、そのどのグループに所属している無線局が再送中継を実施すべきかを指示してもよい。例えば、多数の無線局が存在し、全ての局が同時に再送中継を行う必要がなければ、識別番子の末尾がバイナリ表示で「1」の無線局といった指示であってもよい。同様に各無線局が乱数を発生させ、所定の値以下(または以上)の無線局のみが再送中継を実施しても構わない。さらに、位置情報などを活用した指示であっても構わない。その他、再送中継の上限回数が2回目までの無線局などに限るというような指示をしても構わない。この上限回数は、例えば再送中継に関与可能な無線局の数などをもとに、毎回動的に変更することも可能である。
図6は、本発明の実施例におけるスケジューリング・マップ情報S−MAPを示す。
図6において、スケジューリング・マップ情報S−MAPは、全体制御情報31、情報要素32−1〜32−8を有する。スケジューリング・マップ情報S−MAPに収容する情報の内容は上述の通りであるが、その具体的なイメージの例として、ひとつの無線パケットとして構成されたスケジューリング・マップ情報内に収容される情報の構成をここでは示す。
ここでは、ダウンリンクのデータ伝送に続けて、アップリンクの割り当てを同時に行った場合の例を示している。スケジューリング・マップ情報の先頭部分には、全体に係わる制御情報として全体制御情報31が収容され、ここでは基地局の識別子(AP−ID)を明示することで、どのエリアのどの基地局の配下の無線局宛の情報かを示す。ここで、基地局と無線局のタイムスロット番号の認識を一致させるための方法として、例えば比較的長周期のフレームに対する通し番号と、その各フレーム内のローカルなアドレス情報としてのタイムスロット番号の組み合わせで指定することが考えられるが、このような場合には、全体制御情報31内に長周期のフレーム番号(Fr#)を収容し、フレーム内のローカルなタイムスロット番号(TS#)は情報要素32−1〜32−8内に記載することが効率的である。また、全体制御情報31内には、そのスケジューリング・マップ情報内に収容される情報要素32−1〜32−8の数(# of IE)を収容してもよい。この場合、情報要素32−1〜32−8の数はフレーム毎に可変に設定することもできるし、その結果、フレーム長も毎回異なる設定とすることができる。
次に、各情報要素32−1〜32−8に収容される情報の例を説明する。ここでの例では、タイムスロット番号(TS#)に加え、伝送する無線パケットの送信元無線局の識別子(S−ID)と宛先無線局の識別子(D−ID)が付与され、さらに各無線パケットにシーケンス番号(SN)を付与している。上述の通り、このシーケンス番号は如何なるものでも構わないため、ここでは基地局「A」に係わる高周波数帯通信における全ての無線パケットに共通の通し番号を付与している。したがって、各情報要素32−1〜32−4では再生中継に伴い同一のシーケンス番号「1」が付与され、各情報要素32−5〜32−8では同一のシーケンス番号「2」が付与されている。さらに、必須ではないが信号の流れとしてダウンリンク方向(DL)とアップリンク方向(UL)の方向指示(Dir)を行っている。
さらに、再送中継の可否として、タイムスロット#2〜#4およびタイムスロット#6〜#8の区間では再送中継を実施するために、情報要素32−2〜32−4および32−6〜32−8の中継指示(Relay )で中継実施を意味する「Yes 」が表記されている。一方、初回送信に相当するタイムスロット#1および#5の区間では、新規送信に伴う再送中継停止を意図して情報要素32−1および32−5の中継指示(Relay )では中継不可を意味する「No」が表記されている。さらに、再送の条件として、その情報要素で指し示された無線パケットを受信後に行う再送中継の上限回数を再送カウンタ(RC)として指示している。例えば、情報要素32−1で示された無線パケットをタイムスロット#1で受信した際に、その無線パケットの再送中継する回数の上限は残り3回(RC:3)であることを認識することができる。同様に、情報要素32−2で示された無線パケットをタイムスロット#2で再送中継した際に、その無線パケット送信後において、再送中継する回数の上限は残り2回(RC:2)であることから、その前の情報要素32−1による指示との整合性は担保されている。このように、再送カウンタやその他の情報も合わせてスケジューリング・マップ情報に収容することは可能である。
この状況は、アップリンクに係わる情報要素32−5〜32−8に関しても同様である。なお、情報要素32−5では、送信元無線局の識別子「z」および宛先無線局の識別子「A」が指示されていることから、無線局「z」は、自局に対しアップリンクの帯域割り当てがなされたことを知ることができる。
以上は一例を示したものであり、その他のどのような形式でスケジューリング・マップ情報が記述されていても構わない。OFDMAを採用したシステムであれば、割り当てサブキャリア番号もこのスケジューリング・マップ情報に含まれるべきであるし、伝送レートを時々刻々と変化させる適応変調であれば伝送モード(QPSK、16QAM等の変調方式と誤り訂正の符号化率等)の指示であったり、パケット長に関する指示であったり、その他の様々な情報がここに収容されても構わない。また、上述の一部を省略したものであっても当然構わない。
また、ここでは低周波数帯通信のスケジューリング・マップ情報のみを用いて再送中継の指示を行う場合を例に示したが、高周波数帯通信で伝達される情報と低周波数帯通信で伝達される情報との組み合わせで指示を行っても構わない。例えば、図6では再送カウンタ情報(RC)も低周波数帯通信のスケジューリング・マップ情報に収容していたが、このような情報は高周波数帯通信のデータ内に収容していても同様の動作は可能である。また、各タイムスロットのスロット長が通信の都度、可変である場合を想定すれば、低周波数帯通信のスケジューリング・マップ情報にて1スロットの長さを報知する一方、システム上のルールとして1フレームは4スロットで構成され且つフレームを超えた再送中継は行わないとの前提条件があれば、低周波数帯通信で報知される情報と、システム上で定められた再送中継の終了条件の組み合わせから、時間軸上では何処までが再送中継すべきかを把握することも可能である。このように、低周波数帯通信で報知される情報とその他の情報の組み合わせにより再送中継の実施可否判断を行う構成としても構わない。この際、基地局および端末局は、どの組み合わせで再送中継の実施可否判断を行うのかは既知である。
なお、上述の帯域要求情報とは一般的な帯域要求のための制御情報であり、その内容は如何なるものであっても良い。通常であれば、帯域要求を行う対象の基地局の識別子、端末局の識別子、無線パケットのサイズ(伝送速度を考慮したシンボル長でも良い)などを含み、必要に応じて基地局までのマルチホップ中継のホップ数(所要の再送中継の回数)や、その他の情報を含んでいても構わない。
本発明の実施例における高周波数帯通信に関する再送中継の動作フローは、基本的に図4に示した処理と同様であり、図5に記載の動作の場合には図4の処理S5において、低周波帯通信で受信したスケジューリング・マップ情報S−MAP1,2で指示された条件との一致不一致の条件判断を行うことになる。図6のスケジューリング・マップ情報を例に取れば、各タイムスロット番号(TS#)毎のRelay情報がYesであり、その直前のタイムスロットに対応した情報要素において再送カウンタ(RC)が1以上であることが、条件判断において用いられる。また、図6を例にとれば、再送中継を終了すべきタイムスロット#4および#8では、再送カウンタ(RC)が0となっており、これにより次のタイムスロットに再送中継を継続しないことが認識できる。一方で、タイムスロット#2〜#4および#6〜#8では中継指示(Relay )において、中継実施を意味する「Yes 」が表記されているため、これらのタイムスロットでは再送中継を実施する。
図7は、本発明の実施例における低周波数帯通信に関する処理フローを示す。図7(a) は、基地局から高周波数帯通信のダウンリンクのデータ送信時の処理フロー、図7(b) は、無線局から基地局に対してアップリンクの帯域要求を行う際の処理フロー、図7(c) は、基地局が無線局から帯域要求を受信した際の処理フローを示す。これらの処理は、高周波数帯通信と同時並行的に実施することが可能である。
図7(a) において、基地局から配下の無線局に対し、高周波数帯通信のダウンリンクでて送信すべきデータがあると判断すると(S11)、高周波数帯通信のダウンリンクにて送信すべき無線パケットの送信に関するスケジューリングを実施する(S12)。ここでは、初回の送信に加えて、再送中継もあわせたスケジューリングを実施する。その結果をスケジューリング・マップ情報S−MAPとして生成し(S14)、スケジューリング・マップ情報S−MAPを低周波数帯通信にて送信し(S14)、処理を終了する(S15)。
次に、図7(b) において、無線局から基地局宛にアップリンクで送信したいデータがあると判断された場合(S16)、帯域要求情報を生成し(S17)、帯域要求情報を低周波数帯通信にて送信する(S18)。所定の時間以内に自局のアップリンクの割り当てに関するスケジューリング・マップ情報S−MAPの受信を確認できない場合には(S19)、再度、処理S18に戻り帯域要求情報の送信を行う(S18)。一方、自局のアップリンクの割り当てに関するスケジューリング・マップ情報S−MAPの受信を確認できた場合には、高周波数帯通信において、スケジューリング・マップ情報S−MAPの指示に従い無線パケットを送信し、処理を終了する(S20)。
次に、図7(c) において、基地局が図7(b) の処理S18にて送信された帯域要求情報を受信すると(S21)、送信および再送中継を含めた高周波数帯通信のスケジューリングを実施し(S22)、この結果をもとにスケジューリング・マップ情報S−MAPを生成し(S23)、スケジューリング・マップ情報S−MAPを送信し(S24)処理を終了する(S25)。
なお、低周波数帯通信に関してはどのような無線標準規格を用いても構わない。今回の無線システムのために独自の規格を構築してもよいし、IEEE802.11やWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)等の既存の無線標準規格をそのまま流用しても構わない。例えばIEEE802.11であれば、処理S14、処理S18、処理S24などでは無線パケットの送信前にキャリアセンスを行い、他の通信および干渉が使用する低周波数帯においてないことを事前に確認する必要がある。高周波数帯通信の通信開始時には、そのタイミングないしはそれに先行してスケジューリング・マップ情報の送信が必要になるため、スケジューリング・マップ情報の送信がキャリアセンス等によりある程度の時間だけ遅延すると、スケジューリング内容を実現できない状況が発生する可能性があるが、この場合には送信前にスケジューリング・マップ情報の修整を行う必要がある。
図8は、本発明の実施例における無線局装置の構成例を示す。
図8において、本実施例の無線局装置は、図3に示す無線局装置の基本構成に対して、制御信号用無線機能部33とアンテナ34が追加された構成である。基本的な動作は図3と同様であるが、制御信号用無線機能部33とアンテナ34を実装することで、高周波数帯通信とは別の低周波数帯通信を可能としている。
アンテナ34で受信した信号は、制御信号用無線機能部33で低周波数帯通信の信号処理を行い、その結果得られる制御情報を通信制御部27に入力する。ここで得られた制御情報に従い送受信動作を行うと共に、再送中継に関する情報は再送中継実施判断手段31にも転送され、再送中継実施判断手段31で再送中継の実施可否判断を行う。すなわち、この制御情報をもとに、図4の処理S5の再送条件判断を実施する。再送中継を実施する場合には、無線パケットの生成および送信処理を行う。
また、無線局において、インタフェース部25に外部からデータが入力され、無線パケット終端手段24に入力後に通信制御部27に基地局宛に信号送信を行う要求が入力されると、通信制御部27では低周波数帯通信における帯域要求情報の送信要求を制御信号用無線機能部33に入力し、ここで帯域要求情報を生成し、低周波数帯通信としてアンテナ34を介して送信する。ここでは制御信号用無線機能部33とひとまとめに示したが、ここではRF信号処理からベースバンド信号処理、MACレイヤの信号処理等を全て含むものとする。
なお、これまでの説明では低周波数帯通信にて転送される制御信号は、再送中継の実施判断情報を含むスケジューリング情報、帯域要求情報を代表例として説明したがその他のいかなる制御信号を低周波数帯通信で転送しても構わない。また逆に、全ての制御信号が低周波数帯通信で行われる必要もない。