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JP5435546B2 - 銀コバルト錯体、および抗菌・抗カビ剤 - Google Patents
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JP5435546B2 - 銀コバルト錯体、および抗菌・抗カビ剤 - Google Patents

銀コバルト錯体、および抗菌・抗カビ剤 Download PDF

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Description

本発明は、(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体からなる新規な銀コバルト錯体、上記銀コバルト錯体を含有する抗菌・抗カビ剤、および抗菌・抗カビ剤組成物に関するものである。本発明の抗菌・抗カビ剤は、例えば、紙、繊維、布帛、フィルターなどの紙・繊維製品類;木材、石膏ボードなどの建材製品のほか、フィルム、プラスチックなどの素材などに広く適用可能である。
抗菌剤は、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤に大別される。このうち無機系抗菌剤は、光や熱に弱く、ハロゲンなどにも鋭敏なため、耐久性に劣っている。また、長寿命の無機系抗菌剤として注目されている酸化チタンは、抗菌性発現のために光が必要であり、固体状態でしか加工できないなどの問題がある。このような耐久性や加工性などの問題は、無機系抗菌剤を紙、繊維、布帛などの基材に担持した抗菌製品の開発に大きな支障をもたらしている。また、抗菌製品には、好ましくは抗カビ性も更に有していることが要求され、抗菌性と抗カビ性の両特性を兼ね備えた抗菌・抗カビ剤の開発が望まれている。
銀イオンは、人体に対する毒性が低く、広い抗菌スペクトルを有しているため、種々の工業製品の抗菌処理に利用されている。例えば、特許文献1〜特許文献3には、銀錯体の抗菌剤が提案されている。本発明者らも、非特許文献1に、下式のCo−Ag−Co三核錯体が大腸菌Y1090(E. coli strain Y1090)に対して優れた抗菌活性を有していることを報告している。この錯体は、モノチオラト−コバルト(III)錯体と銀(I)イオンとの反応によって得られ、AgとCoが硫黄(S)で架橋されたS架橋ヘテロ三核錯体である。
特開2005−263712号公報 特開2000−86668号公報 特開2002−212444号公報
"Application of Co-Ag-Co trinuclear thiolato complexes toward eco-friendly type antimicrobial agent"、T.Yonemura、T.Ama、H.Kawaguchi、 Program No.635. 2005 Abstract Viewer、 The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies
本発明の目的は、抗菌性と抗カビ性の両特性に優れているほか、耐久性や加工性も良好な新規な銀コバルト錯体、および当該銀コバルト錯体を含有する抗菌・抗カビ剤を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明の銀コバルト錯体は、下式(1)で表される(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体からなるところに要旨を有している。

nは1〜3の整数であり、
〜R12は同一または異なって、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基であり、
Nに結合するR〜Rのいずれかの基、R〜Rのいずれかの基、R〜R
いずれかの基、R10〜R12のいずれかの基は、他のいずれかの基と架橋結合を有
していても良く、
13は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基である。
上式(1)の銀コバルト錯体は、具体的には、例えば、下式(2)〜(4)で表される化合物である。


式中、nおよびR13は前と同じ意味である。
上記課題を解決することのできた本発明の抗菌・抗カビ剤は、上式(1)で表される(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体を含有するところに要旨を有している。
本発明の抗菌・抗カビ剤は、上式(2)、上式(3)、および上式(4)で表される(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体の少なくとも一種を含有している。
本発明には、上記の抗菌・抗カビ剤および基材を有する抗菌・抗カビ剤組成物も含まれる。
本発明の抗菌・抗カビ剤は、広範囲の抗菌性・抗カビ性を有し、耐光性、耐熱性などの耐久性に優れている。本発明の抗菌・抗カビ剤は、様々な製品に適用可能であり、例えば、紙類、繊維・布帛、フィルター類のほか、木材などの建材製品、プラスチック類などの素材に利用することができる。
図1は、式(5)で表される銀コバルト錯体のX線結晶構造解析の結果を示す図である。 図2は、式(5)で表される銀コバルト錯体の13C−核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定結果を示す図である。 図3は、式(5)で表される銀コバルト錯体の可視−紫外(UV−Vis)吸収スペクトルの測定結果を示す図である。 図4は、式(5)で表される銀コバルト錯体の赤外(IR)吸収スペクトルの測定結果を示す図である。 図5は、式(5)で表される銀コバルト錯体を用いた実施例2において、キセノン光照射下におけるUV−Vis吸収スペクトルの経時変化を示すグラフである。 図6Aは、式(6)で表される銀コバルト錯体の13C−NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 図6Bは、式(6)で表される銀コバルト錯体のH−NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 図7は、式(6)で表される銀コバルト錯体のUV−Vis吸収スペクトルの測定結果を示す図である。 図8は、式(6)で表される銀コバルト錯体のIR吸収スペクトルの測定結果を示す図である。 図9は、式(6)で表される銀コバルト錯体を用いた実施例5において、キセノン光照射下におけるUV−Vis吸収スペクトルの経時変化を示すグラフである。
本発明は、式(1)で表される新規な銀コバルト錯体、並びに当該銀コバルト錯体を含有する抗菌・抗カビ剤、および抗菌・抗カビ剤組成物に関するものである。詳細には、式(1)で表される(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体からなる銀コバルト錯体が、(ア)黄色ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌、肺炎桿菌などに対する抗菌性に優れているだけでなく、クロコウジカビ、ススカビ、クロカビなどの抗カビ性にも優れており、広範囲の抗菌・抗カビ特性を有していること、(イ)光や熱などにも安定で耐久性に優れていること、および(ウ)溶液・固体のいずれの状態でも紙類・布帛などの基材に適用可能であり加工性に優れていることを見出し、本発明を完成した。式(1)の化合物として好ましいのは、式(2)〜式(4)の化合物であり、より具体的には、例えば下式(5)および下式(6)の化合物などが挙げられる。
まず、本発明に用いられる式(1)の新規化合物について説明する。
上式(1)に示すように、本発明に用いられる化合物は、金属イオンとしてAg6個、Co6個を含み、配位子としてチオカルボキシラト配位子、アミン配位子を有する銀コバルト錯体である。詳細には、Ag−S−Ag−S−Ag−Sの六核ユニットがカルボキシラト酸素で繋がった(Ag−S−Ag−S−Ag−S)の十二核錯体を有し、それぞれのSはカルボキシラト配位子を介してCoが結合した構造を有している。後記する実施例で実証したように、上記化合物は、カビ類の最小発育阻止濃度(Minimum Inhibition Concentration、MIC)が非常に低く、銀イオンと同程度またはそれ以上の抗カビ作用を有していることが判明した。抗菌作用剤の多くは抗カビ作用を有していないことは周知であり、上式(1)の銀コバルト錯体は、広範囲の抗菌作用を発揮するだけでなく、優れた抗カビ作用を有する点で極めて有用である。
上記の錯イオンは+12価であり、アニオンとしては、例えば、NO、ClO、PF、BF、CFSOなどが挙げられ、下式で表される。
(NO)l(ClO)m(PF)n(BF)o(CFSO)p
式中、l、m、n、o、およびpは0〜12の整数であり、l+m+n+o+p=12である。
上式(1)において、Nに結合するR〜R12は、例えば、上式(2)〜上式(4)に示すように、架橋結合を有していることが好ましい。ただし、本発明はこれらに限定する趣旨ではない。本発明の抗菌・抗カビ剤は、式(2)〜式(4)の化合物を少なくとも一種含有することができる。後記する実施例では、式(5)の化合物[式(2)において、n=1、R13=H]および式(6)の化合物[式(2)において、n=1、R13=CH]を用いて実験を行なった。
本発明に用いられる銀コバルト錯体は、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、コバルト錯体を製造する。具体的には、原料物質として、(ア)硝酸コバルトなどのCoイオン含有化合物と、(イ)2−メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸などの含硫黄カルボン酸配位子と、(ウ)トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミンなどの2〜4座のアミン配位子を水溶液中に徐々に加え、pHを約8.0〜8.5に調整しながら混合する。pHは、使用するアミン配位子の種類に応じて上記範囲内で適宜調整すれば良い。原料物質である上記(ア)〜(ウ)の比率は、使用するアミン配位子の種類によっても変化するが、おおむね、(ア):(イ):(ウ)=1:1:1〜1:1:2の比率(モル比)に制御することが好ましい。上記のpHを維持しながら、室温で90〜120分攪拌する。この反応液の不要物を濾過により取り除いた後、Coに対するモル比で2.5倍当量程度の過塩素酸ナトリウム水溶液を加えると、コバルト錯体の結晶が得られる。
次に、このようにして得られたコバルト錯体にAgイオンを反応させる。具体的には、上記のコバルト錯体を蒸留水に溶かし、硝酸銀などのAgイオン含有化合物を、おおむね、Co:Ag=1:1の比率で加えて水溶液中(おおむね、30〜40℃)で反応させる。次いで、硝酸ナトリウムや過塩素酸ナトリウムなどを、AgおよびCoに対するモル比で2.5倍当量程度加えると、所望の銀コバルト錯体が得られる。後記する実施例では、含硫黄配位子として、メルカプト酢酸を用いた。
なお、後記する実施例では、上式(2)において、n=1、R13=Hである式(5)の化合物、およびn=1、R13=CHである式(6)の化合物を製造して実験を行なったので、詳細は実施例を参照すれば良い。また、上式(3)や上式(4)の化合物は、チオラト配位子やアミン配位子の種類を変え、pHや反応温度などを適宜改変するなどして製造することができる。
本発明の抗菌・抗カビ剤は、固体状態のままで使用しても良いし、水などの溶媒に溶解した溶液状態で使用しても良い。溶液状態で使用するときの濃度は、所望の抗菌・抗カビ作用が発揮されるように適宜調整すれば良いが、おおむね、0.1〜1.0質量%の濃度に調整して用いることが好ましい。
次に、本発明の抗菌・抗カビ剤組成物について説明する。本発明の抗菌・抗カビ剤組成物は、上記の抗菌・抗カビ剤と基材を含有している。
本発明に用いられる基材は、抗菌・抗カビ剤を担持する抗菌・抗カビ製品に通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、紙、繊維、布帛、フィルターなどの紙・繊維製品類;木材、石膏ボードなどの建材製品;フィルム、プラスチック、金属、ガラスなどの素材などが挙げられる。
本発明の抗菌・抗カビ剤を基材に担持し、成形物(製品)を得る方法は特に限定されず、基材の種類に応じて、通常用いられる方法を適宜採用すれば良い。例えば、基材を製品に加工した後、抗菌・抗カビ剤の溶液を当該製品の表面に被覆したり、当該製品に浸漬するなどの方法が挙げられる。あるいは、製品に加工する前に、基材と抗菌・抗カビ剤を混合するなどの方法を採用しても良い。
基材に担持する抗菌・抗カビ剤の配合量は、使用する基材の種類や用途などに応じ、適宜適切に制御すればよい。例えば、紙類や布帛類などの基材に本発明の抗菌・抗カビ剤を用いる場合、基材全体に対し、おおむね、0.05〜0.5質量%を配合することが好ましい。
本発明の抗菌・抗カビ剤は、後記するように、優れた抗菌・抗カビ作用を有している。適用可能な細菌類としては、例えば、黄色ブドウ球菌Staphylococus aureus、大腸菌Escherichia coli、枯草菌Bacillus subtilis、肺炎桿菌Klebsiella pneumoniae subsp. Pneumoniaeなどの汎用菌が挙げられる。また、カビ類としては、風呂などの衛生加工品などに繁殖し易いクロコウジカビAspergillus niger、ススカビAlternaria alternate、クロカビCladosporium cladosporioidesなどが挙げられる。また、抗菌・抗カビ剤の配合量などを適切に制御すれば、食品などに繁殖し易いアオカビPenicillium citrinumなどにも適用可能である。また、酵母類などにも適用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
以下の実施例1〜3では、上式(5)の銀コバルト錯体を試料として用い、(ア)抗菌・抗カビ性(実施例1)、(イ)光に対する耐久性(実施例2)、および(ウ)布帛に適用したときの抗菌・抗カビ性(実施例3)を調べた。
実施例1〜3に用いた式(5)の銀コバルト錯体は、以下の方法で製造した。
まず、Co(NO・6HO28mmolを200cmの水に溶かし、これに、チオラト配位子として2−メルカプト酢酸(「ma」と略記)28mmol水溶液50cmを加えた。さらにトリス(2−アミノエチル)アミン(「tren」と略記)28mmolの50cm水溶液をpH8.5に調整しながら徐々に加えた。pHを8.5に維持しながら室温で90分攪拌した。この反応液を自然濾過し、不要物を取り除いた。濾過後、70mmolのNaClO水溶液を加えて冷蔵庫に一晩放置すると、茶色がかった紫色の結晶が析出した。吸引濾過により濾液を濾別した後、メタノールと水(1:1)の混合溶媒50cmで洗浄し、アセトンで乾燥してコバルト錯体[Co(ma)(tren)](ClO)を得た。
次に、生成した[Co(ma)(tren)](ClO)2.4mmolを60cmの蒸留水に溶かし、これに少量の蒸留水に溶かしたAgNO2.4mmolを加え、遮光下において40℃で4時間攪拌した。反応液を濾過した後、少量の蒸留水に溶かしたNaNOを6mmol加え、数日間冷蔵庫で放置すると、桃色の結晶または粉末が析出した。これを吸引濾過して結晶または粉末を濾取した後、冷水で洗浄し、所望とする銀コバルト錯体である式(5)の化合物を得た。
得られた化合物の立体構造を明らかにするため、X線結晶構造解析、および核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定を行なった。図1にX線結晶構造解析の結果を、図2に13C−NMRスペクトルの結果を、それぞれ示す。また、可視−紫外(UV−Vis)、赤外(IR)吸収スペクトルの測定を行い、分光学的特性を調べた。その結果を図3、4に示す。
また、元素分析の結果は以下のとおりである。
Found:C:16.85,H:4.20,N:14.62%
Calcd for[Ag{Co(ma)(tren)}](NO12・12H
=C481202412CoAg(NO12・12H
C:17.06,H:4.30,N:14.92%
実施例1 式(5)の銀コバルト錯体の抗菌・抗カビ試験
本実施例では、上記の方法で得られた式(5)の銀コバルト錯体を用い、以下のようにして抗菌・抗カビ試験を行なった。
(1)試験に用いた試料溶液の調製
上記の銀コバルト錯体を水に溶解して1000ppm濃度の試料溶液を得た。この溶液を2倍系列で希釈し、500ppm、250ppm、125ppm、63ppm、32ppm、16ppm、8ppm、4ppm、2ppmの各濃度に調製した。比較のため、銀イオン(硝酸銀AgNOを使用)を用い、上記と同様の各濃度に調製した。
(2)抗菌試験
(2−1)試験菌液の調製
試験細菌として、黄色ブドウ球菌Staphylococus aureus、大腸菌Escherichia coli、枯草菌Bacillus subtilis、肺炎桿菌Klebsiella pneumoniae subsp. Pneumoniaeを用いた。
上記の各細菌を普通寒天培地(NA、ニッスイ)に接種し、35℃で24時間培養した後、生理食塩水を用いて細菌の菌数が10個/mLになるように調製したものを試験菌液とした。
(2−2)試験方法
上記のようにして得た各濃度の試料溶液に試験菌液を0.1mL接種し、35℃で24時間培養した。培養後、細菌の発育の有無を肉眼で観察し、MIC(ppm)を判定した。
(3)抗カビ試験
(3−1)試験胞子液の調製
試験カビとして、クロコウジカビAspergillus niger、ススカビAlternaria alternate、クロカビCladosporium cladosporioidesを用いた。
上記の各カビをポテトデキストロース寒天培地に接種し、25℃で7日間培養した後、0.05% tween80液(界面活性剤Poly(Oxyethylene)sorbitan monooleate)を用いて胞子の個数が10/mLになるように調製したものを試験胞子液とした。
(3−2)試験方法
上記のようにして得た各濃度の試料溶液に試験胞子液を0.1mL接種し、25℃で7日間培養した。培養後、カビの発育の有無を肉眼で観察し、MIC(ppm)を判定した。
これらの結果を表1〜表7に示す。MICが小さい程、抗菌性/抗カビ性に優れていることを意味する。
これらの表より、以下のように考察することができる。
まず、抗菌性について検討すると、本発明例は、銀イオンに比べ、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性に特に優れていることが分かる。また、他の細菌に対する抗菌作用も、概ね、良好であることが確認された。
次に、抗カビ性について検討すると、本発明例は、銀イオンに比べ、クロカビに対する抗カビ性に特に優れており、他のカビ類についても銀イオンと同程度の作用が確認された。
このように本発明例は、特に広い抗カビスペクトルを有している点で、銀イオンよりも抗菌・抗カビ剤として有用であることが分かった。
実施例2 耐光性試験
本実施例では、上記の方法で得られた式(5)の銀コバルト錯体を用い、固体状態での光(紫外光)に対する安定性を調べた。固体試料は、上記の銀コバルト錯体の粉末を用いて調製した。
まず、試料(粉末)を5.25×10-5mol量り取り、200Wキセノン光を照射したときのUV−Vis吸収スペクトルの時間変化を測定した。ここでは、浜松フォトニクス社製「L3451−01型」の紫外線照射装置(200W水銀−キセノンランプ)を使用した。ライト・ガイドの光出射口からの距離は15cmに固定した。照射後0、2時間、40時間に7.5×10-6molを量り取り、5mlメスフラスコを用いて1.5mmol・dm−3の水溶液を調製し、UV−Vis吸収スペクトル(650〜350nm領域)を測定した。
この結果を図5に示す。図5に示すように、40時間という長時間の光照射下でも、スペクトルの変化は殆ど認められなかった。従って、本発明例は、光に対する安定性に優れていることが確認された。
実施例3 式(5)の銀コバルト錯体を布帛に塗布した後の光照射後における抗菌・抗カビ試験
本実施例では、上記のようにして得られた式(5)の銀コバルト錯体を布帛(基材)に塗布し、耐光性試験を行なった後の抗菌・抗カビ性を調べた。
(1)試験菌液の調製
本実施例では、試験細菌として、黄色ブドウ球菌Staphylococus aureus、大腸菌Escherichia coli、枯草菌Bacillus subtilis、肺炎桿菌Klebsiella pneumoniae subsp. Pneumoniaeを用いた。
上記の試験細菌を普通寒天培地(NA、ニッスイ)に接種し、35℃で24時間培養した。これを20倍に希釈した普通ブイヨンを用い、菌数が10/mLになるように調製したものを試験菌液とした。
(2)試験胞子液の調製
本実施例では、試験カビとして、クロコウジカビAspergillus niger、ススカビAlternaria alternate、クロカビCladosporium cladosporioidesを用いた。
上記の各カビをポテトデキストロース寒天培地に接種し、25℃で7日間培養した後、20倍に希釈したブドウ糖ペプトン培地(Glucose Peptone Broth)を用いて胞子の個数が10/mLになるように調製したものを試験胞子液とした。
(3)基材
本実施例では、スパンレース不織布(三昭紙業株式会社製のKP9380)を用いた。
(4)試験検体の調製
まず、上記のようにして得られた銀コバルト錯体に水を添加し、濃度が4000ppmになるように調製した。次いで、この溶液を基材に塗布し、銀コバルト錯体含浸基材を得た。塗布には霧吹き器を用いた。また、基材への塗布濃度は、塗布前後の重量変化から当該濃度が3000ppmになるように調製した。
このようにして得られた銀コバルト錯体含浸基材に対し、28℃で照射照度550W/mで100時間照射(これは、直射日光下で約1年間照射に相当する。)を行った。照射後の基材を無菌的に細かく切り、滅菌アンプル瓶に0.4g入れたものを試験検体とした。
(5)耐光試験後の抗菌性
このようにして得られた試験検体に上記の試験菌液を4mLずつ接種し、35℃で24時間培養した。培養後、滅菌水10mLで洗浄したものを試験液とし、水で希釈し、10倍希釈液を用意した。
この希釈液をSCDLP(不活化剤含有一般生菌数測定用培地Soybean Casein Digest Agar with Lecithin, Polysobate 80)寒天培地に接種し、35℃で48時間培養した。培養後、形成された集落をカウントし、生菌数(個/mL)を計測し、抗菌性を評価した。これにより、長時間光照射を行なった環境下での本発明例の抗菌作用を確認できる。
比較のため、耐光試験前の銀コバルト含浸基材(コントロール)について上記と同様の実験を行った。これにより、光照射を行なわない通常環境下での本発明例の抗菌作用を確認できる。
(6)耐光試験後の抗カビ性
このようにして得られた試験検体に上記の試験検体に各試験胞子液を4mLずつ接種し、25℃で24時間培養した。培養後、滅菌水10mLで洗浄し、水で希釈して10倍希釈液を得た。
このようにして得られた希釈液をGPLP(不活化剤含有真菌数測定用培地、Glucose Peptone Broth with Lecithin,Polysorbate 80)寒天培地に接種し、25℃で5日間培養した。培養後、形成された集落をカウントし、生菌数(個/mL)を計測し、耐光試験後の抗カビ性を評価した。これにより、長時間光照射を行なった環境下での本発明例の抗カビ作用を確認できる。
比較のため、耐光試験前の銀コバルト錯体含浸基材(コントロール)について上記と同様の実験を行った。これにより、光照射を行なわない通常環境下での本発明例の抗カビ作用を確認できる。
これらの結果を表8〜表14(基材への塗布濃度3000ppm)に示す。
はじめに、抗菌性(表8〜11を参照)について考察する。
まず、各表の「耐光試験前スパンレース不織布」の結果を参照する。初発菌数に比べて48時間後の生菌数が減少した場合、本発明例の銀コバルト錯体は、光照射を行なわない通常環境下で抗菌作用を有しているといえる。表8〜11を参照すると、いずれの菌についても、初発菌数に比べて48時間後の生菌数は減少し、本発明例が広範囲の抗菌作用を有することが確認された。特に、枯草菌(表11)に対しては、48時間後の生菌数が10個/mL未満となり、極めて強い抗菌作用が確認された。
次いで、各表の「耐光試験後スパンレース不織布」の結果を参照する。初発菌数に比べて48時間後の生菌数が減少した場合、本発明例の銀コバルト錯体は、長時間光照射を行なった環境下(直射日光下で約1年間照射に相当する環境下)で抗菌作用を有しているといえる。表8〜11を参照すると、いずれの菌についても、初発菌数に比べて48時間後の生菌数は減少し、本発明例が、耐光試験後も広範囲の抗菌作用を持続していることが確認された。特に、黄色ブドウ球菌(表8)および枯草菌(表11)に対しては、48時間後の生菌数が10〜10個/mLオーダーまで減少し、極めて強い抗菌作用が確認された。
次に、抗カビ性(表12〜14を参照)について考察する。本実施例の抗カビ試験は、使用したカビの胞子が胞子→菌糸→胞子と順次増殖していく胞子数(各表では「生菌数」と記載)を測定するものであり、慣用のJIS Z2911に記載のカビ抵抗性試験(カビの胞子から菌糸の発育だけを評価する定性試験)に比べ、抗カビ性を定量的に評価する試験である。この抗カビ試験によれば、初発菌数(初発胞子数)に比べて5日後の生菌数が有意に超えていなければ、「抗カビ性あり」と評価できる。
まず、各表の「耐光試験前スパンレース不織布」の結果を参照する。クロカビおよびススカビに対しては、表13および表14に示すように、初発菌数に比べて5日後の生菌数が有意に減少しており、優れた抗カビ作用が確認された。また、クロコウジカビに対しては、表12に示すように、上記のカビよりも効果が若干劣るものの、5日後の生菌数の有意な増加は認められず、抗カビ作用が確認された。
次いで、各表の「耐光試験後スパンレース不織布」の結果を参照する。クロカビに対しては、表13に示すように、初発菌数に比べて5日後の生菌数が有意に減少しており、耐光試験後も優れた抗カビ作用が確認された。また、クロコウジカビおよびススカビに対しては、表12および表14に示すように、5日後の生菌数の有意な増加は認められず、耐光試験後も抗カビ作用が確認された。
上記の実験結果より、本発明の銀コバルト錯体は、良好な抗菌・抗かび作用を有しており、上記作用は、耐光試験後も維持されていることが確認された。
これらの表より、耐光試験を行なった後でも、本発明による優れた抗菌・抗カビ性が充分に維持されていることが分かった。
以下の実施例4、5では、上式(6)の銀コバルト錯体を試料として用い、(ア)抗菌性(実施例4)、および(イ)光に対する耐久性(実施例5)を調べた。
式(6)の銀コバルト錯体は、以下の方法で製造した。
前述した式(5)の製造方法において、チオラト配位子として、2−メルカプト酢酸の代わりに2−メルカプトプロピオン酸(「mp」と略記)を用いたこと以外は上記と同様にしてコバルト錯体[Co(mp)(tren)](ClO)を得た。次いで、上記式(5)の製造方法と同様にしてAgNOとの反応を行なうことにより、所望とする銀コバルト錯体である式(6)の化合物を得た。
得られた化合物の立体構造を明らかにするため、核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定を行なった。図6Aおよび図6Bに、13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルの結果をそれぞれ示す。また、可視−紫外(UV−Vis)、赤外(IR)吸収スペクトルの測定を行い、分光学的特性を調べた。その結果を図7、8に示す。
また、元素分析の結果は以下のとおりである。
Found:C:18.37,H:4.85,N:14.20%
Calcd for[Ag{Co(2−mp)(tren)}](NO12・14HO =C541442412CoAg(NO12・14H
C:18.53,H:4.61,N:14.40%
実施例4 式(6)の銀コバルト錯体の抗菌試験
本実施例では、上記の方法で得られた式(6)の銀コバルト錯体を用い、実施例1と同様にして抗菌試験を行なった。
これらの結果を表15〜表18に示す。以下に示すように、式(6)の銀コバルト錯体も、前述した式(5)と同程度の良好な抗菌性を有することが確認された。
実施例5 耐光性試験
上記の方法で得られた式(6)の銀コバルト錯体を用い、実施例2と同様にして耐光性試験を行った。この結果を図9に示す。
図9に示すように、式(6)の銀コバルト錯体は、前述した式(5)と同様、光に対する安定性に優れていることが確認された。

Claims (7)

  1. 下式(1)で表される(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体。


    式中、
    nは1〜3の整数であり、
    〜R12は同一または異なって、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基であり、
    Nに結合するR〜Rのいずれかの基、R〜Rのいずれかの基、R〜R
    いずれかの基、R10〜R12のいずれかの基は、他のいずれかの基と架橋結合を有
    していても良く、
    13は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基である。
  2. 下式(2)で表される請求項1に記載の(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体。


    式中、nおよびR13は前と同じ意味である。
  3. 下式(3)で表される請求項1に記載の(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体。


    式中、nおよびR13は前と同じ意味である。
  4. 下式(4)で表される請求項1に記載の(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体。

    式中、nおよびR13は前と同じ意味である。
  5. 下式(1)で表される(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体を含有することを特徴とする抗菌・抗カビ剤。


    式中、
    nは1〜3の整数であり、
    〜R12は同一または異なって、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基であり、
    Nに結合するR〜Rのいずれかの基、R〜Rのいずれかの基、R〜R
    いずれかの基、R10〜R12のいずれかの基は、他のいずれかの基と架橋結合を有
    していても良く、
    13は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基である。
  6. 下式(2)、下式(3)、および下式(4)で表される(Co−Ag−Co−Ag−Co−Ag)の十二核錯体の少なくとも一種を含有する請求項5に記載の抗菌・抗カビ剤。



    式中、nおよびR13は前と同じ意味である。
  7. 請求項5または6に記載の抗菌・抗カビ剤および基材を含有する抗菌・抗カビ剤組成物。
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