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JP5435658B2 - 水質シミュレーション方法及び装置 - Google Patents
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Description

本発明は、産業廃水や工場廃水を含む廃水の処理に関し、より詳しくは、生物分解性のある化合物成分を含む廃水の生物学的好気処理プロセスにおける水質シミュレーション方法及び装置に関する。 本願は、2008年11月14日に、日本国に出願された特願2008−292519号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年の閉鎖性水域における水質規制は強化傾向にあり、下水道、産業廃水、工場廃水における対策が急務である。水質規制値を遵守するためには、どの成分をどこまで処理すれば基準を満たせるかを予測することが必要である。これまで下水道分野では、活性汚泥法等の生物学的処理プロセスによる下水の処理方法が取られてきた。その運転管理は主に管理者の経験に基づいて行われていることが多く、安定した処理水質を得ることは困難であった。たとえば、流入水質が変動した場合に、変更すべき操作条件、操作量は下水処理場ごとに異なっていた。
そこで、管理者の経験に依存しない水質予測及び運転支援ツールとして、IWA(国際水協会)の提唱する活性汚泥モデル(Activated Sludge Model;ASM)が提案されている。活性汚泥モデルは、大きく次の手順から構成されている:
(1)流入廃水のCOD濃度を、溶解性不活性有機物、易分解性有機物、浮遊不活性有機物、遅分解性有機物等の性質によって分画し、それぞれCOD濃度ベースの変数と設定する;
(2)従属栄養生物の増殖や自己分解等のプロセスごとに、変数間の化学量論及びプロセスの反応速度式を設定する;
(3)化学量論係数及び反応速度定数のパラメーターを、酸素消費速度試験又は水質の実測データからのキャリブレーションにより決定する;
(4)シミュレーションを実行し、生物処理槽、処理水のCOD濃度等が算出される。
この活性汚泥モデルは管理ツールとして提案されており、活性汚泥モデルを用いた下水処理管理システムが提案されている(以下、特許文献1参照)。
一方で、下水と異なる成分をもつ産業廃水や工場廃水等についても、生物学的処理プロセスによる産業廃水や工場廃水の処理が行われている。しかしながら、これらの廃水に対して、水質シミュレーション方法に活性汚泥モデルが適用された事例はない。
特に、製鉄所コークス工場から発生する廃水は安水と呼ばれ、フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸を主成分とするが、これらは下水には含まれない成分であり、活性汚泥モデルの適用性について検討した事例は見られない。

特開2003−300093公報

味埜俊、活性汚泥モデル、日本、株式会社環境新聞社、2005年1月31日 J.S.Cech、J.Chudoba and P.Grau、Determination of Kinetic Constants of Activated Sludge Microorganisms、Water Science and Technology、Vol.17、pp.259−272、1984

前記したように、生物学的好気処理における水質シミュレーション方法として活性汚泥モデルが一般的であるが、産業廃水や工場廃水の生物学的好気処理に適用された事例はない。この原因として、以下の2点が挙げられる。
(1)活性汚泥モデルでは、下水のような複数成分が混合した廃水を生物学的好気処理する際の流入廃水と処理水のCOD濃度のみ予測するが、生物分解性を有する化合物成分の濃度は予測できないことが挙げられる。例えば、コークス製造過程で発生する安水では、安水中に含まれるフェノールが廃水基準項目の一つであり、フェノール濃度をシミュレーションにより予測する必要があるが、活性汚泥モデルでは特に安水のような複数成分が混合した廃水を生物学的好気処理した後の処理水中フェノール濃度を予測することが困難であるため、産業廃水や工場廃水に活性汚泥モデルを適用する意義は小さかった。
(2)産業廃水や工場廃水には、溶解性遅分解性の有機物(界面活性剤、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸等)、または、無機物(例えば、チオ硫酸、チオシアン酸)が含まれる。しかしながら、活性汚泥モデルで対象としている都市下水中には分解速度の非常に遅い溶解性遅分解性成分はそれほど含まれておらず、モデルの酸素収支に与える影響を考慮していなかった。すなわち、そもそも溶解性遅分解性成分の概念が活性汚泥モデルには含まれていなかったため、産業廃水や工場廃水に活性汚泥モデルを適用することは困難であった。
そこで本発明は、生物分解性を有する化合物成分を含む産業廃水や工場廃水などの廃水を、生物反応槽内で生物学的好気処理するプロセスにおいて、新たな活性汚泥モデルを構築し、廃水中の当該化合物の濃度が生物学的好気処理後に、どのように変化するかを推定することができる水質シミュレーション方法及び装置を提供することを目的とする。

本発明は、廃水中の成分ごとに分画し、成分ごとに成分を分解する細菌の種類および変数および反応プロセスを設定することで、活性汚泥モデルを利用した生物学的好気処理プロセスのシミュレーションが可能となり、処理水中の成分濃度を求め、さらに、溶解性遅分解性成分を含む廃水であっても、廃水中の成分ごとに分画するため、溶解性遅分解性成分という概念を用いること無しに、活性汚泥モデルを利用した生物学的好気処理プロセスのシミュレーションが可能となる、生物分解性のある化合物成分を含む産業廃水や工場廃水に適用可能な水質シミュレーション方法を提供することを目的とする。
本発明は、具体的には、以下の[1]、[2]である:
[1]生物分解性を有する化合物成分を含む廃水を生物反応槽内で生物学的好気処理するプロセスにおける水質シミュレーション方法であって、
前記生物反応槽に流入する前記廃水中の前記化合物成分の各成分濃度を分析する分析工程と、
前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、各成分濃度の分析値を各成分のCOD濃度に換算するCOD換算工程と、
化学量論パラメーターである増殖収率、反応速度式パラメーターである飽和定数、最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種類および濃度を設定するパラメーター設定工程と、
前記生物反応槽の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定工程と、
前記各成分のCOD濃度、前記増殖収率、前記飽和定数、前記最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種窺及び濃度、並びに溶存酸素濃度を用いて、下記演算式(1):
Figure 0005435658
{式中、Ciは、各成分濃度であり、iは、各成分を表す通し番号であり、Pijは、化学量論パラメーターであり、jは、各プロセスを表す通し番号であり、そしてρjは、反応速度式(反応速度式パラメーターを含む速度式)である。}により、前記生物学的反応槽内で前記生物学的好気処理した後の処理水における各成分のCOD濃度を算出する計算工程と、
前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、当該算出された生物学的処理水の各成分のCOD濃度を、各成分濃度に換算する成分濃度換算工程とを、含み、
前記パラメーター設定工程は、
(ア)前記流入する廃水及び処理水において、事前に時系列的に別途採取したそれぞれの生物分解性を有する化合物成分濃度と溶存酸素濃度を用いて、キャリブレーションによって決定する方法、
(イ)前記各成分それぞれに対して、各成分単独で前記生物学的好気処理を行って連続的に溶存酸素濃度を測定し、当該測定値から酸素消費速度を算出し、当該算出された酸素消費速度のデータから決定する方法、のいずれかの方法を用いて、前記化学量論パラメーター及び前記反応速度式パラメーターを設定する工程であり、
前記廃水が、コークス製造工程で発生する安水であり、
前記化合物成分のうち、有機物成分はフェノール、並びに、無機物成分はチオ硫酸及びチオシアン酸であり、
チオ硫酸、チオシアン酸のシミュレーションについては、
前記COD換算工程の代わりに、チオ硫酸及びチオシアン酸濃度を硫黄換算する硫黄換算工程と、
前記生物学的反応槽で上記生物学的好気処理した後の処理水における各成分の硫黄濃度を算出する硫黄計算工程と、
当該算出された生物学的処理水の各成分の硫黄濃度を、チオ硫酸濃度及びチオシアン酸濃度に再換算する硫黄再換算工程と
を採用する、水質シミュレーション方法。
]生物分解性を有する化合物成分を含む廃水を生物反応槽内で生物学的好気処理するプロセスで用いる水質シミュレーション装置であって、
前記生物反応槽に流入する前記廃水中の前記化合物成分の各成分濃度を分析する分析手段と、
前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、各成分濃度の分析値を各成分のCOD濃度に換算するCOD換算手段と、
化学量論パラメーターである増殖収率、反応速度式パラメーターである飽和定数、最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種類および濃度を設定するパラメーター設定手段と、
前記生物反応槽の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定手段と、
前記各成分のCOD濃度、前記増殖収率、前記飽和定数、前記最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種類及び濃度、並びに溶存酸素濃度を用いて、下記演算式(1):
Figure 0005435658
{式中、Ciは、各成分濃度であり、iは、各成分を表す通し番号であり、Pijは、化学量論パラメーターであり、jは、各プロセスを表す通し番号であり、そしてρjは、反応速度式(反応速度式パラメーターを含む速度式)である。}により、前記生物学的反応槽で前記生物学的好気処理した後の処理水における各成分のCOD濃度を算出する計算手段と、
前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、当該算出された生物学的処理水の各成分のCOD濃度を、各成分濃度に換算する成分濃度換算手段と
を、含み、
前記パラメーター設定手段は、
(ア)前記流入する廃水及び処理水において、事前に時系列的に別途採取したそれぞれの生物分解性を有する化合物成分濃度と溶存酸素濃度を用いて、キャリブレーションによって決定する手段、
(イ)前記各成分それぞれに対して、各成分単独で前記生物学的好気処理を行って連続的に溶存酸素濃度を測定し、当該測定値から酸素消費速度を算出し、当該算出された酸素消費速度のデータから決定する手段、のいずれかの手段を用いて、前記化学量論パラメーター及び前記反応速度式パラメーターを設定する手段であり、
前記廃水が、コークス製造工程で発生する安水であり、
前記化合物成分のうち、有機物成分はフェノール、並びに、無機物成分はチオ硫酸及びチオシアン酸であり、
チオ硫酸、チオシアン酸のシミュレーションについては、
前記COD換算手段の代わりにチオ硫酸及びチオシアン酸濃度を硫黄換算する硫黄換算手段と、
前記生物学的反応槽で上記生物学的好気処理した後の処理水における各成分の硫黄濃度を算出する硫黄計算手段と、
当該算出された生物学的処理水の各成分の硫黄濃度を、チオ硫酸濃度及びチオシアン酸濃度に再換算する硫黄再換算手段と
を採用する、水質シミュレーション装置。

本発明の奏する効果は以下のとおりである。
生物分解性を有する化合物成分を含む産業廃水や工場廃水に対して、流入廃水中の各成分濃度をCOD濃度に変換し、活性汚泥モデルを適用することで、処理水の各成分濃度が予測できる。また、活性汚泥モデルでは対象外であった溶解性遅分解性成分についても、その成分を分解する細菌の種類を設定することで、処理水の成分濃度を計算することが可能である。また、各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係を求める際には、CODMnの分析結果を用いることができるので、CODCrのように危険かつ有害性のある薬品を用いた分析を行わなくてもよい。

本発明に係る、廃水の生物学的処理プロセスの水質シミュレーション方法を示す構成図である。 フェノール濃度とCODMnの相関関係を示す図である。 チオ硫酸濃度とCODMnの相関関係を示す図である。 チオシアン酸濃度とCODMnの相関関係を示す図である。 酸素消費速度試験装置の構成図である。 本発明に係る実施例1におけるシミュレーション結果を示す図である。 本発明に係る実施例2におけるシミュレーション結果を示す図である。 本発明に係る実施例3におけるシミュレーション結果を示す図である。
廃水に含まれる成分は水に溶解しない浮遊成分と、溶解性成分に分けられる。これは、例えばろ紙を用いて分離を行うことで、ろ紙に残ったものを浮遊成分、ろ液を溶解性成分として得られる。本発明では、生物分解と関係が深い溶解性成分の生物分解を対象としたシミュレーション方法である。浮遊成分はほとんど生物分解されず、最終的には沈降分離によって除去されるため、本発明では対象外とする。
溶解性成分は、生物分解性成分及び生物分解性がほとんど無い難分解性成分に分けられる。難分解性成分は、もともと生物分解が困難であり、濃度としても小さい。さらに、生物分解性成分は、分析による定性、定量が困難な未知成分が含まれるが、廃水中の割合として少量なため無視しても構わない。例えば安水では、フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸以外の成分がこれに相当する。以上のことから、廃水における難分解性成分、及び、未知成分は無視しても、本発明の生物分解性を有する化合物成分の予測は可能である。
図1は、本発明による廃水の水質シミュレーション方法のフローを例示した図である。また、図中の各「工程」は各「手段」に替えることができ、廃水の水質シミュレーション装置を例示した図でもある。
ここでは廃水として、製鉄所におけるコークス工場から発生する安水を例として示すが、本発明の適用廃水は安水に限定されるものではなく、食品工業、化学工業、薬品工業、塗装工業、繊維工業、染色工業等の産業廃水や工場廃水に対しても、生物分解性を有する化合物成分を含有している限り適用可能である。例えば、安水中には、生物分解性を有する有機物成分としてフェノール、無機物成分としてチオ硫酸及びチオシアン酸を含んでいる。
また、図1の処理水とは、連続処理の場合は生物学的好気処理後の流出水、バッチ処理の場合は所定時間経過後の槽内水のことである。
また、生物学的好気処理とは、基質と細菌が存在し、ばっ気装置を有する反応槽において、ばっ気を行うことで溶存酸素を供給しながら、混合・撹拌を行うことで基質と細菌を接触・反応させることで、基質を分解処理する方法である。
図1に示すように、本発明による水質シミュレーション方法1は、生物学的好気処理プロセスに流入する産業廃水や工場廃水の成分濃度を分析する分析工程2と、各成分濃度とCOD濃度との相関関係3を用いて各成分をCOD濃度9に換算するCOD換算工程4と、化学量論パラメーター(増殖収率)及び反応速度式パラメーター(飽和定数及び最大比増殖速度)、並びに化合物成分を分解する細菌の種類及び濃度のパラメーター5を設定するパラメーター設定工程6と、生物反応槽の溶存酸素濃度7を測定する溶存酸素濃度測定工程8と、パラメーター5、溶存酸素濃度7及びCOD濃度9を用いて、前述の演算式(1)により、生物学的処理水の各成分のCOD濃度11を算出する計算工程10と、各成分濃度とCOD濃度との相関関係3を用いて各成分のCOD濃度11を各成分濃度に再換算することで、処理水の各成分濃度13を算出する成分濃度換算工程12とを備えている。
分析工程2は、成分濃度を分析する方法について指定しないが、毎回同じ分析方法を用いることが望ましい。たとえば、フェノール濃度についてはJIS K0102吸光光度法、チオ硫酸、チオシアン酸濃度についてはイオンクロマト分析、MLSS濃度については前記した非特許文献1等により分析できる。
相関関係3は、各成分濃度とCOD濃度から得られるものである。例として、図2A〜図2Cにフェノール濃度、チオ硫酸、チオシアン酸とCODMn濃度との実測値に基づく相関関係を示す。その結果、フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸1mgあたりの酸素消費量は、それぞれ2.1mg、0.48mg、1.0mgであった。また、相関関係を求める際には、分析工程でCOD濃度を測定した方法と同じCODCr又はCODMnのいずれの分析方法を用いることが望ましく、分析方法は一貫して同じ方法を用いる。

このように、既知成分濃度と、COD濃度との相関関係を求める際には、CODCrを用いなくとも、CODMnの分析結果を用いることができるので、CODCrのように危険かつ有害性のある薬品を用いた分析を行わなくても良いという利点がある。
また、この他にも、各成分濃度とCOD濃度の相関関係を簡易に得る方法として、成分の理論的酸素消費量を化学反応式から算出する方法もある。たとえば、フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸1mgあたりの理論的酸素消費量は、以下の化学反応式(1)〜(3):
Figure 0005435658
Figure 0005435658
Figure 0005435658
を用いて、それぞれ、2.38mg、0.57mg、1.1mgと算出される。
COD換算工程4は、分析工程2で得られた各成分濃度を、相関関係3を用いることで、COD濃度に換算するものである。ここで、COD濃度に換算するのは、活性汚泥モデルにおいて、最も優れた尺度として採用されているためである。すなわち、前記した非特許文献1にあるように、有機物や生物あるいは利用された酸素といった一連の電子等量の関係をCODだけで表現できるとともに、酸素収支をとることができるといった利点があるためである。COD濃度に換算せずに各成分濃度で計算することも可能ではあるが、上記の利点を活用できないため、現実的ではない。
チオ硫酸、チオシアン酸のような硫黄化合物は、ここで硫黄換算してシミュレーションを行い、後述する成分濃度換算工程12で各成分濃度に再変換することも可能である。これにより、チオ硫酸、チオシアン酸を硫黄成分として分けて考えることで、CODとしてカウントされない硫酸イオン成分等が算出可能となる。これにより、硫黄の物質収支を追跡することが可能となり、硫黄成分の挙動が把握できる。但し、硫黄換算することで硫黄の物質収支を取る場合であっても、酸素の物質収支は取れているので、シミュレーションに影響することはない。また、硫黄化合物を分解する細菌は、一般的には硫黄酸化細菌と考えられており、それらは有機物を分解する従属栄養細菌と異なり、互いに作用を及ぼしあうことがないと考えられるため、硫黄化合物をその他の成分と分けて考えることにより、精度が高まる。その場合、チオ硫酸、チオシアン酸1mgの硫黄換算値は、前記化学反応式(2)〜(3)より、それぞれ0.57mg、0.55mgと算出される。
また、成分濃度からCODへの換算は、理論的酸素消費量又はCODCr又はCODMnのいずれか一つを一貫して用いることで、後述する成分濃度換算工程12と同じとする。
パラメーター5としては、各成分の化学量論パラメーターである増殖収率及び反応速度式パラメーターである飽和定数、最大比増殖速度並びに前記化合物成分を分解する細菌の種類及び濃度を用いる。
また、生物学的処理において生物自身の自己分解が与える影響を加味するため、反応速度パラメーターに好気条件下における生物の比内生呼吸速度を設定しても良いが、通常は影響が少ないので、設定しなくてもよい。
パラメーター設定工程6は、大きく分けて(A)実験を行って、ある条件での実験データを解析する方法と、(B)文献値を拾う方法が挙げられ、前者によりパラメーター設定を行う方が望ましい。
上記(A)の方法について以下に述べる。この方法は、(ア)前記流入する廃水及び処理水において、事前に時系列的に別途採取したそれぞれの生物分解性を有する化合物成分濃度と溶存酸素濃度を用いて、キャリブレーションによって決定する方法、(イ)前記各成分それぞれに対して、各成分単独で前記生物学的好気処理を行って連続的に溶存酸素濃度を測定し、当該測定値から酸素消費速度を算出し、当該算出された酸素消費速度のデータから決定する方法のうち(ア)又は(イ)のいずれかの方法を用いて、事前にパラメーターを設定する。
上記(ア)の時系列実測値データについて、具体的なデータ取得方法は指定しないが、濃度変化がわかるような時系列データを採取する。例えば、1週間の処理水水質をシミュレーションするのであれば、その間の3点以上、たとえば、2日、4日、6日経過時のデータを取得することが望ましい。 また、時系列実測値データは安定したものが望ましく、たとえば上記の場合、流入する安水の含有成分濃度、組成などが1週間の間で大きく変動しているデータは望ましくない。変動の大きさの基準は、たとえば、シミュレーション予測の精度を±5%以内に設定する場合、シミュレーション生物処理時間(滞留時間)の時間間隔で流入する安水の含有成分濃度の変動幅が5%以内であるものを用いることができる。
上記(ア)のキャリブレーションによって決定する方法は、特に指定しないが、例えば、市販のシミュレーションソフトAQUASIMによって、時系列実測値、計算値及び時系列実測値の標準偏差から、下記演算式(2):
Figure 0005435658
{式中、χ2(p)は、対象とするモデルパラメーターpのχ2の値であり、ymeas,mは、m番目の時系列データの実測値(成分濃度または酸素消費速度)であり、ym(p)は、モデルパラメーターpの値を仮定した時の、m番目の時系列データの計算値(成分濃度または酸素消費速度)であり、σmeas,mは、m番目の時系列データの実測値の標準偏差又は実測値全体の標準偏差であり、そしてnは、データポイントの数である。}によりχ2の値を求め、χ2の値が最小となったときのパラメーターの値を用いる方法がある。パラメーターの値を求める方法は特に指定しないが、シンプレックス法、モンテカルロ法、遺伝的アルゴリズム等の数値解析手法によるものが望ましい。
上記(イ)の酸素消費速度試験の酸素消費速度データからパラメーターを決定する方法は、図3の試験装置を用いる。図3で、酸素消費速度試験装置21に、生物学的処理プロセスで用いる微生物汚泥22、アンモニア性窒素が硝酸性窒素に硝化される際の酸素消費を抑制するため硝化阻害剤23を添加し、撹拌装置24で酸素消費速度試験装置21の液を混合する。栄養塩の不足による微生物の活性の低下を防ぐため、栄養塩25を添加してもよい。次に、酸素消費速度試験装置21に対象とする成分26を添加し、溶存酸素濃度計27によって溶存酸素濃度の経時変化を測定する。溶存酸素濃度の記録はデータ記録装置28で行ってもよい。測定中は溶存酸素濃度を一定以上に制御するため、制御値を下回った時に空気供給装置29で空気を供給してもよい。pHを一定に制御するため、pH計30でpHを測定し、酸・アルカリ供給装置31で酸又はアルカリを供給し、制御してもよい。酸素消費速度試験装置21の温度を制御するため、ヒーター32を備えた恒温水槽33を用いてもよい。
対象とする成分(以下、成分Aと表記する)を添加して得られた溶存酸素濃度及び酸素消費速度の経時変化からパラメーターを決定する方法は特に指定しないが、たとえば増殖収率については、成分AのCOD換算濃度と、酸素消費量から、下記演算式(3):
Figure 0005435658
{式中、YAは、成分Aを分解する細菌の増殖収率であり、SA,CODは、成分AのCOD換算濃度であり、そしてO2measは、酸素消費量の実測値である。}によって求めることができる。
増殖収率をより厳密に求める方法には、内生呼吸による酸素消費速度を事前に求め、上記酸素消費量の実測値から内生呼吸による酸素消費速度を差し引くことで、増殖に使われた酸素消費速度を求めることができるが、本発明では特にその方法を指定しない。
最大比増殖速度、飽和定数の値を決定する方法については特に指定しないが、例えば、前記した非特許文献2にある方法で求めることができる。すなわち、酸素消費速度試験で用いる微生物汚泥を1時間、ばっ気した後に、微生物汚泥を様々な希釈率で廃水と混合し、酸素消費速度を測定する方法である。測定中は溶存酸素濃度を一定に保つように、ばっ気による制御を行う。次に、測定された酸素消費速度を汚泥濃度で除すことで比酸素消費速度を求め、比酸素消費速度から内生呼吸による酸素消費速度を引いたもの(比基質酸化速度)を求める。比内生呼吸速度とは、生物自身の自己分解時の内生呼吸による酸素消費速度であり、その求め方は、酸素消費速度試験において、成分Aを添加せずに行った時の酸素消費速度から求められる。この時、比増殖速度と比基質酸化速度の間には、下記演算式(4):
Figure 0005435658
{式中、μAは、成分Aを分解する細菌の比増殖速度であり、YAは、成分Aを分解する細菌の増殖収率であり、そしてrOXは、比基質酸化速度である。}に示す関係が成り立つ。
一方で、比増殖速度μAと最大比増殖速度μA,maxの間には、下記演算式(5):
Figure 0005435658
{式中、μA,maxは、成分Aを分解する細菌の最大比増殖速度であり、KAは、成分AのCOD濃度に対する飽和定数であり、SA,CODは、成分AのCOD換算濃度であり、SO2は、溶存酸素濃度であり、そしてKO2は、溶存酸素濃度に対する飽和定数である。}に示すミカエリス−メンテン式が成り立つ。
ここで、酸素消費速度試験では溶存酸素濃度を高濃度に維持するため、SO2/(KO2+SO2)の値はほぼ1と見なせる。したがって、比増殖速度は成分濃度のみの関数とみなせる。以上より、演算式(4)で得られた比増殖速度μAの値と成分濃度とのプロットが得られ、そのプロットに演算式(5)の式をフィッティングすることで、微生物の比最大増殖速度及び成分Aに対する飽和定数が求まる。
化合物成分を分解する細菌の種類および濃度を決定する方法については、特に指定しないが、種類については、基本的に一成分に対し一種類の細菌がその分解に対応することが望ましい。さらに、実験データや文献の知見から、複数成分を1種類の細菌が分解する可能性がある場合、実際の現象に即した計算予測や計算予測精度の向上のため、複数成分に1種類の細菌が対応するよう設定してもよい。但し、一成分を複数種類の細菌が分解することもあり得るが、それらは同じような分解作用を示すことが多く、また、細菌の種類を増やすことで計算量が増加するため、一成分に対し一種類の細菌を対応させることが望ましい。細菌の濃度については、化合物成分を用いた酸素消費速度が、下記演算式(6):
Figure 0005435658
{式中、OURは、酸素消費速度であり、そしてXAは、成分Aを分解する細菌の濃度であり、そしてYAは、成分Aを分解する細菌の増殖収率であり、Kは、成分A濃度のCOD換算値に対する飽和定数であり、SAは、成分AのCOD換算濃度であり、KO2は、溶存酸素濃度に対する飽和定数であり、SO2は、溶存酸素濃度である。}で表されることが多く、この式を用いる方法がある。
すなわち、演算式(6)で、最大比増殖速度、成分Aに対する飽和定数は、前記の方法で決定され、酸素消費速度試験では溶存酸素濃度を高濃度に維持するため、SO2/(KO2+SO2)の値はほぼ1と見なせる。このことから、酸素消費速度は成分Aを分解する細菌の濃度のみの関数として表される。したがって、演算式(6)に、酸素消費速度試験で得られるOUR実測値を代入することで、Xを決定することができる。
上記(B)の文献値を拾う方法については、例えば、前記した非特許文献1に典型的なパラメーター値が記述されており、好気条件下での従属栄養生物の収率は0.63とされている。この値をパラメーター値として設定してもよいが、対象とする廃水によって値が異なる可能性があるため、なるべく上記(A)の方法により設定するほうが望ましい。
溶存酸素濃度7は、生物学的処理プロセスに溶存酸素濃度計を設置し、生物反応槽の溶存酸素濃度を測定した値を用いる方法、又は、パラメーター設定工程6で溶存酸素濃度をパラメーターとして扱い、キャリブレーションにより決定した値を用いる方法のいずれでもよい。
計算工程10は、COD濃度9、溶存酸素濃度7及びパラメーター5を用いて、処理水の各成分のCOD濃度11を求める。計算に用いるモデルは、IWA活性汚泥モデルをベースとした前述の演算式(1)により、処理水の各成分のCOD濃度11を算出する。処理水の各成分のCOD濃度11は成分濃度換算工程12で、相関関係3を用いることで、処理水の各成分の成分濃度値13に再変換することができる。
さらに、計算工程10では、pH、アルカリ度、アンモニア濃度等の影響を含めたシミュレーションを行ってもよい。その計算方法の指定はしないが、例えば、Ciに水素イオン濃度、溶存二酸化炭素濃度、アンモニア濃度等を追加し、Pijに水素イオン濃度、溶存二酸化炭素濃度、アンモニア濃度等の化学量論パラメーターを追加し、ρjに反応速度式を追加して、計算を行ってもよい。また、生物学的処理において生物自身の自己分解が与える影響を加味することで予測精度を上げるため、反応速度パラメーターに好気条件下における生物の比内生呼吸速度を設定してもよいが、通常は影響が少ないので、設定しなくてもよい。設定する場合は、下記演算式(7):
Figure 0005435658
{式中、Xは成分Aを分解する細菌の濃度であり、そしてPは成分Aを分解するプロセスにおける化学量論パラメーターであり、そしてρは成分Aを分解するプロセスにおける反応速度論パラメーターであり、そしてbはXが自己分解するときの比内生呼吸速度定数である。}によって求めることができる。
実施例1:フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸を対象としたバッチ試験のシミュレーション(1成分を1種類の細菌が分解する場合)
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は、生物学的処理プロセスの水質シミュレーション方法の構成と計算の流れを示したブロック図である。
以下、生物分解性のある化合物成分としてフェノール、チオ硫酸、チオシアン酸を対象としたバッチ試験のシミュレーション方法について説明する。バッチ試験は、1Lの反応容器に、フェノール濃度100mg/L、チオ硫酸濃度100mg/L、チオシアン酸濃度10mg/Lとなるよう成分を添加し、MLSS濃度は5000mg/Lで行った。試験中は、溶存酸素濃度計により溶存酸素濃度を測定し、pH計によりpHを測定した。また、溶存酸素濃度を3.25mg/L、pH7.5に制御した。
分析工程2は、生物学的処理プロセスに流入する廃水中の成分濃度を分析する工程であるが、ここでは上記のバッチ試験装置中の初期成分濃度であり、各成分の添加量から算出するとともに、フェノール濃度についてはJIS K0102吸光光度法、チオ硫酸、チオシアン酸濃度についてはイオンクロマト分析、MLSS濃度については前記した非特許文献1の遠心分離法により確認を行った。COD換算工程4は、分析工程2で得られたフェノール、チオ硫酸、チオシアン酸の濃度をCOD濃度に換算するCOD換算工程である。COD換算には、図2A〜図2Cに示すフェノール濃度、チオ硫酸濃度及びチオシアン酸濃度とCODMn濃度との相関関係3により換算を行い、フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸の濃度を、処理水の各成分のCOD濃度11に換算した。
パラメーター設定工程6は、計算工程10で用いるパラメーター設定を行った。
パラメーター5は、増殖収率、最大比増殖速度、飽和定数、及び後述する計算工程10で用いるフェノール分解細菌濃度、チオ硫酸分解細菌濃度及びチオシアン酸分解細菌濃度を設定した。設定方法は、酸素消費速度試験の酸素消費速度データから決定する方法、及び、キャリブレーションによる方法を検討した結果、いずれも妥当な値が得られたが、今回のケースでは酸素消費速度試験から得られたパラメーター値に多少のばらつきが見られたため、キャリブレーションによる方法を用いた。キャリブレーションには市販のシミュレーションソフトAQUASIMを用いた。具体的には、実測値、計算値及び実測値の標準偏差から、演算式(2)に示されるχ2の値を求め、χ2の値が最小となったときのパラメーターの値を算出した。実測値は、事前に行った成分ごとのバッチ試験から、成分濃度の経時変化を得た。計算値は、後述する計算工程10の方法により求めた。
溶存酸素濃度7は、バッチ試験の制御値3.25mg/Lを用いた。
計算工程10は、廃水の各成分のCOD濃度9、溶存酸素濃度7及びパラメーター5を用いて、バッチ試験のフェノール、チオ硫酸、チオシアン酸濃度の経時変化のシミュレーションを行い、処理水の各成分のCOD濃度11を求めた。計算方法は、前記演算式(1)を用いた。以下の表1に、計算に用いる各成分濃度Ci及び化学量論パラメーター、反応速度パラメーターを示す。
Figure 0005435658
以下の表2は、プロセスρjにおける化学量論の関係を表しており、例えば、プロセスρ1のフェノール分解細菌の増殖では、フェノール分解細菌(XPhe)に対してP11=−1/YPheの割合でフェノール濃度が変化し、P41=−(1−YPhe)/YPheの割合でSO2が変化することを表す。
Figure 0005435658
以下の表3は、計算に用いる反応速度式を示す。
Figure 0005435658
例えば、プロセスρ1のフェノール分解細菌の増殖では、フェノール濃度の増加速度は、下記演算式(7):
Figure 0005435658
{式中、SPheは、フェノール濃度であり、tは、時間であり、SO2は、溶存酸素濃度であり、KO2は、溶存酸素濃度に対する飽和定数であり、KPheは、フェノール濃度に対する飽和定数であり、XPheは、フェノール分解細菌濃度であり、そしてμPheは、フェノール分解細菌の最大比増殖速度であり、YPheは、フェノール分解細菌の増殖収率である。}で表される。
成分濃度換算工程12は、COD換算工程4と同様に、図2A〜図2Cに示すフェノール、チオ硫酸、チオシアン酸濃度とCOD濃度との相関関係3により、処理水の各成分COD濃度11を各成分濃度に再換算した。
上記のシミュレーションの結果を図4に示す。図4は、バッチ試験の各成分濃度の経時変化を示す。以上述べたように、本実施例によれば、生物分解性のある化合物成分を含む廃水の生物学的好気処理プロセスにおいて、活性汚泥モデルを適用することで、処理水の各成分濃度を予測できる。さらに、元々フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸の各成分毎に計算を行っているため、単成分であっても2つの成分の組み合わせであっても、処理水の各成分濃度を予測できる。
実施例2:フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸を対象としたバッチ試験のシミュレーション(2成分を1種類の細菌が分解する場合)
以下、実施例1においてチオ硫酸、チオシアン酸の2成分を1種類の細菌(硫黄成分分解細菌)が分解すると設定した時のシミュレーション方法について説明する。ここで、チオ硫酸、チオシアン酸分解細菌を硫黄成分分解細菌としたのは、実際の処理では、硫黄成分分解細菌は硫黄酸化細菌が相当すると推測されたためである。
シミュレーションは図1と同じ流れで行い、生物分解性のある化合物成分、バッチ試験方法、分析工程2、パラメーター設定工程6、溶存酸素濃度7及び成分濃度換算工程12は実施例1と同じ方法で行った。但し、COD換算工程4、成分濃度換算工程12は硫黄換算工程に変更し、表1の成分濃度、化学量論パラメーター、反応速度パラメーターを、以下の表4に示すように設定し、また、計算工程10ではチオ硫酸分解細菌濃度及びチオシアン酸分解細菌濃度を、硫黄成分分解細菌濃度にまとめ、以下の表4に示す:
Figure 0005435658
また、以下の表5に示すように、プロセスρ2、ρ3における化学量論の関係では、チオ硫酸及びチオシアン酸の分解による細菌増殖が硫黄成分分解細菌に発生することとした。
Figure 0005435658
また、以下の表6に示すように、プロセスρ2、ρ3における反応速度式の細菌濃度の項を硫黄成分分解細菌に置き換えた。
Figure 0005435658
上記のシミュレーションの結果を図5に示す。図5は、バッチ試験の各成分濃度の経時変化を示す。図4と比べて、チオ硫酸について分解速度が増加した。これは、実施例1ではチオ硫酸分解細菌(XS2O3)とチオシアン酸分解細菌(XSCN)を分けて各々の分解細菌濃度を算出したが、本実施例ではチオ硫酸とチオシアン酸の2成分を硫黄成分分解細菌1種類で分解すると設定したため、チオ硫酸分解細菌(XS2O3)とチオシアン酸分解細菌(XSCN)の増殖が硫黄成分分解細菌濃度(XS)に集約されたことが主な原因である。また、チオシアン酸については、パラメーター設定行程6でキャリブレーションにより硫黄成分分解細菌濃度(XS)を設定した際に、実施例1のXSCN初期値より若干低い結果となり、分解速度がわずかに低下したが大きな違いは見られなかった。
ここで、実施例1と本実施例のいずれが良いかは、実験値と計算値との比較や、実際の現象に近い反応が計算できているか等によって判断し、選択することが望ましい。本実施例においては、計算値の精度向上が可能となったと考えられた。
以上述べたように、本実施例によれば、生物分解性のある化合物成分を分解する細菌の種類および濃度を決定する方法については、基本的に一成分に対し一種類の細菌がその分解に対応することが望ましいが、実際の現象に即した計算予測や計算予測精度の向上のためには、複数成分に1種類の細菌が対応するよう設定してもよい。また、チオ硫酸、チオシアン酸濃度を硫黄濃度に換算することで、硫黄の物質収支を追跡することが可能となり、硫黄成分の挙動が把握できるようになった。また、比内生呼吸速度を考慮した計算を行ったが、結果は無視しうる範囲であり、明確な差異は見られなかった。
実施例3:クレゾールを対象とした酸素消費速度試験のシミュレーション
以下、生物分解性のある有機物成分としてo−クレゾールを対象とした酸素消費速度試験のシミュレーション方法について説明する。
酸素消費速度試験は、1Lの反応容器に、o−クレゾール濃度15mg/Lとなるよう成分を添加し、MLSS濃度は330mg/Lで行った。試験中は、溶存酸素濃度計により溶存酸素濃度を測定し、pH計によりpHを測定した。また、溶存酸素濃度を3.25mg/L、pH7.5に制御した。
分析工程2は、生物学的処理プロセスに流入する廃水中の成分濃度を分析する工程である。ここでは上記の酸素消費速度試験装置中の初期成分濃度であるが、o−クレゾール濃度については、JIS K0102吸光光度法により確認を行った。COD換算工程4では、分析工程2で得られたo−クレゾールの濃度をCOD濃度に換算するCOD換算工程である。COD換算には、下記化学反応式(4):
Figure 0005435658
からo−クレゾールの理論的酸素消費量を算出した。その結果、o−クレゾール1mgあたりの理論酸素消費量は2.52mgであった。
この相関関係3により換算を行い、o−クレゾール濃度をCOD濃度9に換算した。パラメーター設定工程6は、計算工程10で用いるパラメーター設定を行った。
パラメーター5は、増殖収率、最大比増殖速度、飽和定数、及び後述する計算工程10で用いるクレゾール分解細菌濃度を設定した。設定方法は、増殖収率をo−クレゾールのCOD換算濃度と、酸素消費速度試験から得られた酸素消費量から演算式(3)によって求めた。具体的には、o−クレゾールを13mg/Lとなるよう添加したので、COD濃度は相関関係3から32.7mg/Lとなる。
この時の酸素消費量を求める際には、酸素消費速度試験での溶存酸素濃度の減少を常に見る必要がある。しかしながら、試験中には溶存酸素濃度が3.25mg/Lにするために、ばっ気を行うため、その時の正確な酸素消費速度を求めることはできない。そこで、ここでは、ばっ気時の酸素消費速度を、ばっ気前後における無ばっ気時の酸素消費速度の値から線形近似を行って求めた。たとえば、時間tにおける酸素消費速度を10mg/L/hr、時間t2における酸素消費速度を7.5mg/L/hrとし、時間t1から時間t2の間、ばっ気がされていた時、その間の時間Tにおける酸素消費速度を、下記演算式(8):
Figure 0005435658
{式中、OURTは、時間Tにおける酸素消費速度であり、t1は、ばっ気前の時間であり、t2は、ばっ気後の時間であり、そしてTは、ばっ気期間において、酸素消費速度を求めたい時間である。}を用いて求めた。但し、これに限らず、その他の近似方法を使ってもよい。
このようにして求めた酸素消費速度を時間で積分することで、酸素消費量は13.9mg/Lであったことから、増殖収率は(32.7−13.9)/32.7=0.57と算出された。また、分解細菌はクレゾール分解細菌が対応すると考えた。最大比増殖速度、飽和定数、及びクレゾール分解細菌濃度は、キャリブレーションによる方法で求め、実測値、計算値及び実測値の標準偏差から、演算式(2)に示されるχ2の値を求め、χ2の値が最小となったときのパラメーターの値を算出した。酸素消費速度及び成分濃度の実測値は、本実施例での酸素消費速度試験中に実測して求めた。計算値は、後述する計算工程10の方法により求めた。
溶存酸素濃度7は、バッチ試験の制御値3.25mg/Lを用いた。
計算工程10は、COD濃度9、溶存酸素濃度7及びパラメーター5を用いて、o−クレゾール濃度の経時変化についてシミュレーションを行い、処理水のo−クレゾールのCOD濃度11を求めた。計算方法は、演算式(1)を用いた。以下の表7は、計算に用いる各成分濃度及びパラメーターを示す:
Figure 0005435658
以下の表8は、計算に用いる化学量論を示す:
Figure 0005435658
そして以下の表9は、計算に用いた反応速度式を示す:
Figure 0005435658
成分濃度換算工程12は、COD換算工程4と同様に、o−クレゾール濃度とCOD濃度との相関関係3により、処理水のo−クレゾールCOD濃度11をo−クレゾール濃度13に再換算した。
上記のシミュレーションの結果を図6に示す。図6は、o−クレゾール濃度の経時変化を示す。以上述べたように、本実施例によれば、フェノール、チオ硫酸、チオシアン酸以外の成分にも本発明が適用可能であり、相関関係3に理論的酸素消費量を用いても成分濃度を求めることができる。

本発明によれば、活性汚泥モデルでは対象外であった溶解性遅分解性成分についても、その成分を分解する細菌の種類を設定することで、処理水の成分濃度を計算することが可能であり、産業上有用である。

1 水質シミュレーション方法の概要図
2 分析工程
3 各成分とCOD濃度との相関関係
4 COD換算工程
5 パラメーター
6 パラメーター設定工程
7 溶存酸素濃度
8 溶存酸素濃度測定工程
9 COD濃度
10 計算工程
11 処理水の各成分COD濃度
12 成分濃度換算工程
13 処理水の各成分濃度
21 酸素消費速度試験装置
22 微生物汚泥
23 硝化阻害剤
24 撹拌装置
25 栄養塩
26 対象成分
27 溶存酸素濃度計
28 データ記録装置
29 空気供給装置
30 pH計
31 酸・アルカリ供給装置
32 ヒーター 33 恒温水槽

Claims (2)

  1. 生物分解性を有する化合物成分を含む廃水を生物反応槽内で生物学的好気処理するプロセスにおける水質シミュレーション方法であって、
    前記生物反応槽に流入する前記廃水中の前記化合物成分の各成分濃度を分析する分析工程と、
    前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、各成分濃度の分析値を各成分のCOD濃度に換算するCOD換算工程と、
    化学量論パラメーターである増殖収率、反応速度式パラメーターである飽和定数、最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種類および濃度を設定するパラメーター設定工程と、
    前記生物反応槽の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定工程と、
    前記各成分のCOD濃度、前記増殖収率、前記飽和定数、前記最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種窺及び濃度、並びに溶存酸素濃度を用いて、下記演算式(1):
    Figure 0005435658
    {式中、Ciは、各成分濃度であり、iは、各成分を表す通し番号であり、Pijは、化学量論パラメーターであり、jは、各プロセスを表す通し番号であり、そしてρjは、反応速度式(反応速度式パラメーターを含む速度式)である。}により、前記生物学的反応槽内で前記生物学的好気処理した後の処理水における各成分のCOD濃度を算出する計算工程と、
    前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、当該算出された生物学的処理水の各成分のCOD濃度を、各成分濃度に換算する成分濃度換算工程とを、含み、
    前記パラメーター設定工程は、
    (ア)前記流入する廃水及び処理水において、事前に時系列的に別途採取したそれぞれの生物分解性を有する化合物成分濃度と溶存酸素濃度を用いて、キャリブレーションによって決定する方法、
    (イ)前記各成分それぞれに対して、各成分単独で前記生物学的好気処理を行って連続的に溶存酸素濃度を測定し、当該測定値から酸素消費速度を算出し、当該算出された酸素消費速度のデータから決定する方法、のいずれかの方法を用いて、前記化学量論パラメーター及び前記反応速度式パラメーターを設定する工程であり、
    前記廃水が、コークス製造工程で発生する安水であり、
    前記化合物成分のうち、有機物成分はフェノール、並びに、無機物成分はチオ硫酸及びチオシアン酸であり、
    チオ硫酸、チオシアン酸のシミュレーションについては、
    前記COD換算工程の代わりに、チオ硫酸及びチオシアン酸濃度を硫黄換算する硫黄換算工程と、
    前記生物学的反応槽で上記生物学的好気処理した後の処理水における各成分の硫黄濃度を算出する硫黄計算工程と、
    当該算出された生物学的処理水の各成分の硫黄濃度を、チオ硫酸濃度及びチオシアン酸濃度に再換算する硫黄再換算工程と
    を採用する、水質シミュレーション方法。
  2. 生物分解性を有する化合物成分を含む廃水を生物反応槽内で生物学的好気処理するプロセスで用いる水質シミュレーション装置であって、
    前記生物反応槽に流入する前記廃水中の前記化合物成分の各成分濃度を分析する分析手段と、
    前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、各成分濃度の分析値を各成分のCOD濃度に換算するCOD換算手段と、
    化学量論パラメーターである増殖収率、反応速度式パラメーターである飽和定数、最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種類および濃度を設定するパラメーター設定手段と、
    前記生物反応槽の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定手段と、
    前記各成分のCOD濃度、前記増殖収率、前記飽和定数、前記最大比増殖速度、並びに前記化合物成分を分解する細菌の種類及び濃度、並びに溶存酸素濃度を用いて、下記演算式(1):
    Figure 0005435658
    {式中、Ciは、各成分濃度であり、iは、各成分を表す通し番号であり、Pijは、化学量論パラメーターであり、jは、各プロセスを表す通し番号であり、そしてρjは、反応速度式(反応速度式パラメーターを含む速度式)である。}により、前記生物学的反応槽で前記生物学的好気処理した後の処理水における各成分のCOD濃度を算出する計算手段と、
    前記各成分濃度と、CODCr、CODMn及び理論的酸素消費量から選ばれる一つのCOD濃度との相関関係をもとに、当該算出された生物学的処理水の各成分のCOD濃度を、各成分濃度に換算する成分濃度換算手段と
    を、含み、
    前記パラメーター設定手段は、
    (ア)前記流入する廃水及び処理水において、事前に時系列的に別途採取したそれぞれの生物分解性を有する化合物成分濃度と溶存酸素濃度を用いて、キャリブレーションによって決定する手段、
    (イ)前記各成分それぞれに対して、各成分単独で前記生物学的好気処理を行って連続的に溶存酸素濃度を測定し、当該測定値から酸素消費速度を算出し、当該算出された酸素消費速度のデータから決定する手段、のいずれかの手段を用いて、前記化学量論パラメーター及び前記反応速度式パラメーターを設定する手段であり、
    前記廃水が、コークス製造工程で発生する安水であり、
    前記化合物成分のうち、有機物成分はフェノール、並びに、無機物成分はチオ硫酸及びチオシアン酸であり、
    チオ硫酸、チオシアン酸のシミュレーションについては、
    前記COD換算手段の代わりにチオ硫酸及びチオシアン酸濃度を硫黄換算する硫黄換算手段と、
    前記生物学的反応槽で上記生物学的好気処理した後の処理水における各成分の硫黄濃度を算出する硫黄計算手段と、
    当該算出された生物学的処理水の各成分の硫黄濃度を、チオ硫酸濃度及びチオシアン酸濃度に再換算する硫黄再換算手段と
    を採用する、水質シミュレーション装置。
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