従来より、無励磁状態においてバネ等の付勢力或いは永久磁石の力により制動力が働く無励磁作動形ブレーキや、無励磁状態においてバネ等の付勢力或いは永久磁石の力により回転トルクをロータに伝達するように構成した無励磁作動形クラッチ、または、励磁状態において磁気吸引力により回転トルクをロータに伝達するように構成した電磁摩擦クラッチ(励磁作動形クラッチ)、或いは、励磁状態において磁気吸引力によりアーマチュアの回転動作に制動力が働くように構成した電磁摩擦ブレーキ(励磁作動形ブレーキ)等の電磁連結装置が知られている。
無励磁作動形ブレーキの一例としては、励磁コイルを有する磁極体と、被制動軸の軸方向に摺動可能であって且つ磁極体と共に磁気回路を形成し得るアーマチュアと、被制動軸の軸方向に沿ってアーマチュアと対向する位置に設けられ被制動軸に固定されるハブプレートと、ハブプレートのうちアーマチュアと対向する面に固着された摩擦板(フェーシング)と、アーマチュアをハブプレート側に付勢するバネ等の付勢部材とを備え、励磁コイルが無励磁状態である場合に、付勢部材によってハブプレート側に付勢されるアーマチュアが摩擦板を押圧することにより制動力が働く無励磁作動形ブレーキが挙げられる。
このような無励磁作動形ブレーキにおいて、ハブプレートには、被制動軸が挿入可能な挿入孔を有する筒状の固定部と、鍔状のフランジ部とが形成されており、この固定部の挿入孔に被制動軸を挿入した状態で、固定部に形成したネジ孔にネジを締め込み、ネジの先端部で被制動軸を押圧することによってハブプレートは被制動軸に固定されていた。そして、1本のネジでハブプレートを被制動軸に固定した場合には被制動軸に局部的な過度の負荷が作用するおそれがあり、強固に締め込むことが困難である一方、被制動軸の軸回りに3本以上のネジを締め付けた場合には、被制動軸に対する各ネジの締め込み力を均等化することが困難であることから、通常は、2本のネジを被制動軸の軸回りに所定角度離間させて締め付けている。したがって、ハブプレートの固定部には、軸回りに所定角度離間させた2箇所にネジ孔が形成されており、これらネジ孔の軸中心同士の開き角度は通常90°に設定されている。
そして、昨今の電磁連結装置では、より強力な作動力(ブレーキであれば制動力であり、クラッチであれば伝達駆動力)を導き出す等の目的を果たすためにハブプレートの大型化、具体的にはフランジ部の大型化(大径化)が図られ、また大型化に伴う重量化を回避すべく、フランジ部に抜き孔(開口部)やスリットを形成したハブプレートが適用される場合もある(特許文献1参照)。周方向に隣り合う抜き孔同士はハブプレートから放射状に延伸する3本のリブによって仕切られている。このようなリブを有するハブプレートは、固定部と、当該ハブプレートの外周縁を構成するフランジ部とを、固定部の軸回りに120°ピッチで設けた3本のリブによって接続したものであると捉えることができる。そして、特許文献1の図1及び図2(A)(B)に示されているように、3本のリブを有するハブプレートにおいては、固定部に形成する2つのネジ孔のうち一方のネジ孔の軸中心を何れか1本のリブの中心線に一致ないし略一致させている。このことから、同特許文献には図示されていないものの、他方のネジ孔は、その軸心が一方のネジ孔の軸心に対して90°となる位置に形成されている。
ところで、このような等ピッチ間隔で設けた3本のリブのうち1本のリブに一方のネジ孔の軸中心を一致させたハブプレートを被制動軸に固定した無励磁作動形ブレーキにおいて、ハブプレートのうちアーマチュアに対向する面(以下、「アーマチュア対向面」と称する)は、本来、被制動軸の軸方向に対して直角に保たれるべきである。しかしながら、ネジ孔にネジを締め込んでハブプレートを被制動軸に固定した際に、ハブプレートが変形してしまうと、被制動軸の軸方向に対するアーマチュア対向面の直角度が低下し、アーマチュア対向面が被制動軸の軸方向に直交する方向から外れる方向に振れる現象が生じる。そして、アーマチュア対向面の振れ幅が、無励磁状態において磁極体とアーマチュアとの間に確保すべき初期ギャップよりも大きくなった場合には、異音(摺動音)や異常摩耗が発生し、動作安定性の低下を招来し得る。
特に、初期ギャップの適正値をμm単位で厳格に管理することが要求されている使用環境下では、被制動軸に対するハブプレートの振れ幅を僅かな許容範囲内に抑えなければならず、ハブプレートのうちアーマチュア対向面の振れ幅を可及的に少なくすることは極めて重要である。なお、このような課題は、電磁摩擦クラッチや電磁摩擦ブレーキにおいても共通する。電磁摩擦クラッチにおいては、回転軸に固定したハブプレートが回転軸の軸方向と直交する方向から外れる方向に振れる現象が問題となる。
このような課題に着目してなされた本発明の主たる目的は、ハブプレートが被制動軸又は回転軸(これらを総称して「シャフト」と称する)の軸方向と直交する方向から外れる方向に振れる現象を可及的に抑制することができる電磁連結装置、及びこのような電磁連結装置を備えたモータを提供することにある。
上述したようなシャフトに対するハブプレートの振れ現象が生じる原因としては以下の2点が考えられる。
先ず、1点目は、ハブプレートをシャフトに固定した状態において両部材間に相対移動可能な隙間が形成されている場合に、この隙間に起因してハブプレートとシャフトとの間でがたつきが生じ、ハブプレート全体がシャフトの軸方向に直交する方向から外れる方向に傾いた場合である。しかしながら、この点については、ハブプレートとシャフトとの間でがたつきが生じないように両部材を相互に緊密に固定することによって対応することが可能である。
2点目は、ハブプレートをシャフトに固定する際に、ネジ等の締結部材の締め込み力の反力によりハブプレート自体が変形した場合である。上述したように、120度間隔で配した3本のリブを有するハブプレートをシャフトに固定するにあたっては、ハブプレートの固定部における所定の2箇所に形成した締結孔(例えばネジ孔)に締結部材(例えばネジ)を締め込むが、従来からの技術を踏襲して当然のように、一方の締結孔の中心軸方向を何れか1本のリブの延伸方向と一致させ、当該一方の締結孔を基準にして他方の締結孔の形成箇所を設定していた。
そこで、本発明者らは、このような踏襲されてきた従来技術を見直し、固定部における一対の締結孔の形成箇所をこれまでに採用されることのなかった新規有用な技術的思想に基づいて設定することによって、シャフトに対するハブプレートの振れ現象を可及的に抑えることが可能な電磁連結装置を案出した。
すなわち本発明の電磁連結装置は、励磁コイルを有する磁極体と、磁極体と共に磁気回路を形成し得るアーマチュアと、アーマチュアと対向する位置に配したハブプレートとを備え、これら磁極体、アーマチュア及びハブプレートを同一軸心上に設け、ハブプレートを締結部材により前記軸心となるシャフトに固定したものである。そして、本発明の電磁連結装置は、ハブプレートとして、中心部にシャフトが挿通可能な挿通孔を形成した筒状の固定部と、固定部の周方向に120度ないし略120度の角度ピッチで設けられた放射状に延伸する3本のリブと、これら各リブの延伸端同士を連結し固定部と同心円状に形成されるフランジ部とを一体に備え、固定部のうち、リブ及びフランジ部よりもシャフトの軸方向に突出させた部分に、締結孔を固定部の周方向に所定角度離間させた2箇所に形成したものを適用し、これら締結孔を、何れか1本のリブを中心に対称ないし略対称に設定していることを特徴としている。
ここで、「締結部材」とは、各種ネジは勿論のこと、一部にテーパ面を有するダボや、テーパ面は有さず外周面に螺旋状或いは直線状の突条部を形成したダボ、またはテーパ面を有する差込キー(テーパキー)を包含する概念であり、金属製、木製等を問わず、どのような素材から形成されるものであってもよい。また、「締結孔」はネジ孔やダボ差込孔、或いはテーパキーのテーパ面と圧接するテーパ面を有するテーパ孔を包含する概念である。なお、ネジ孔やダボ差込孔は、固定部の径方向に貫通するものであり、テーパ孔は固定部の径方向と直交する方向、換言すればシャフトの軸方向に沿って形成されるものである。また、固定部のうち、リブ及びフランジ部よりもシャフトの軸方向に突出させた側の端部を、「固定部の突出端」とした場合、テーパ孔は少なくとも固定部の突出端側に開口したものであり、このテーパ孔に固定部の突出端側からテーパキーを差し込むことによって、テーパ孔のテーパ面及びテーパキーのテーパ面の相互間のくさび作用によりハブプレートをシャフトに固定することが可能である。
このように、対をなす締結孔を、何れか1本のリブを中心に対称ないし略対称に設定したところ、作用機序は明らかではないが、従来の態様、すなわち、一方の締結孔の軸心方向を何れか1本のリブの延伸方向と一致させ、当該一方の締結孔を基準にして他方の締結孔の形成箇所を設定していた態様と比較して、一対の締結孔同士の開き角度によってはシャフトに対するハブプレートの振れ幅を小さくすることができたり、或いは同程度に抑えることができた。その結果、アーマチュアと磁極体との間、アーマチュアとハブプレートとの間の各ギャップ管理を簡易なものとし、トルク低下や異音防止、異常摩耗防止を効果的に低減できることとなる。
また、本発明者らは、対をなす締結孔同士の開き角度を90°以上270°以下に設定することによって、効果的にハブプレートの振れ現象を抑制する点を見出し、さらに、対をなす締結孔同士の開き角度を120°以上240°以下に設定することによって、より一層ハブプレートの振れ現象を抑制できる点も突き止めた。
ハブプレートとしては、それぞれ別体である固定部とフランジ部とをリブによって一体的に接続したものもあるが、本発明の電磁連結装置によって得られる作用効果、すなわちシャフトに対するハブプレート全体の振れ幅を可及的に小さくすることができるという作用効果をより効果的に得ることができるハブプレートは、固定部と3本のリブとフランジ部とを一体に有したものである。このような固定部、リブ及びフランジ部を一体に形成したハブプレートは、固定部に形成した締結孔に対する締結部材の締め付け作業に伴う固定部自体の変形が直接フランジ部の変形に影響を及ぼすものと考えられるため、このようなハブプレートの固定部における2つの締結孔同士の開き角度を上述した技術的思想に基づいて設定することにより、ハブプレート全体の振れ現象を可及的に抑えることができる。
また、本発明のモータは、シャフトを有するモータ本体と、上述した構成をなす電磁連結装置とを備え、電磁連結装置のうち磁極体をモータ本体又はその他の部材に固定するとともに、シャフトの一端部を電磁連結装置のうちハブプレートにおける固定部に固定したことを特徴としている。このようなモータであれば、上述した電磁連結装置によって得られる効果を発揮し、実用性に優れたものとなる。なお、電磁連結装置のうち磁極体を固定する対象はモータ本体又はその他の部材の何れかであればよく、「その他の部材」としては、モータ本体に対して相対位置変更不能に設定された部材や、或いは当該電磁連結装置以外の他の回転体に対して相対位置変更不能に設定された部材が挙げられる。
本発明によれば、ハブプレートがシャフトの軸方向と直交する方向から外れる方向に振れる現象を可及的に抑制することができ、動作安定性が低下することなく、異音(摺動音)や異常摩耗の発生を防止することが可能な電磁連結装置を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態では、電磁連結装置の一例として、図1等に示すように、無励磁状態において制動力が作用する乾式の無励磁作動形ブレーキXを適用している。また、本実施形態に係るモータMは、円柱状をなす被制動軸S(本発明の「シャフト」に相当)を有するモータ本体M1と、無励磁作動形ブレーキXとを備え、被制動軸Sの一端部を無励磁作動形ブレーキXのうち後述するハブプレート3に取り付けたものである。
無励磁作動形ブレーキXは、図1に示すように、励磁コイル12を有する磁極体1と、被制動軸Sの軸方向に摺動可能であって且つ磁極体1と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア2と、被制動軸Sの軸方向(スラスト方向)に沿ってアーマチュア2と対向する位置に配されるハブプレート3とを備えたものである。これら磁極体1、アーマチュア2及びハブプレート3は同一軸心(被制動軸S)上に配置されている。
磁極体1は、アーマチュア2側に開口する断面視コ字状の凹部11aが形成されたリング状のヨーク11と、凹部11a内に収容される励磁コイル12とを備えたものであり、フィールドコア或いはマグネット組立体とも称される。ヨーク11の中心部には被制動軸Sが挿通可能な挿通孔11bを形成している。なお、励磁コイル12はリード線Lに接続されている。また、磁極体1のうちモータ本体M1と対向する面には例えば平板状をなすモータ取付部13を適宜の手段で固着している。そして、このモータ取付部13をモータ本体M1に取り付けて固定することにより、磁極体1全体が移動不能に固定される。本実施形態では、図2(同図は、無励磁作動形ブレーキX単体を図1におけるA方向から見た図である)に示すように、概略矩形状のモータ取付部13を適用し、このモータ取付部13の四隅近傍にモータ取付孔13aを形成するとともに、中心部には被制動軸Sが挿通可能な挿通孔13bを形成している。
アーマチュア2は、例えば円形リング状をなすものであり、被制動軸Sの軸方向(スラスト方向)にスライド移動可能とされている。なお、本実施形態の無励磁作動形ブレーキXは、被制動軸Sの軸方向と平行な平行ピンpを磁極体1からアーマチュア2に亘って設けており、アーマチュア2は平行ピンpにガイドされながら被制動軸Sの軸方向にスライド移動可能であって且つ回転方向には平行ピンpにより拘束される(トルク支持される)ようにしている。具体的には、平行ピンpを、アーマチュア2の厚み方向に貫通させた貫通孔2a(平行ピンpにおける軸部分の径よりも大きな開口寸法を有する孔)又は例えば外側方(被制動軸Sから離間する方向)に向かって開口するU字状の溝(図示省略)に通した状態で磁極体1に形成した凹部11cに圧入しておくことにより、貫通孔又は溝と平行ピンpとのあそび(ギャップ)分だけアーマチュア2が被制動軸Sの回転方向に微少角度揺動するように構成している。本実施形態では、平行ピンpとして、弾性がある板状部材を円筒状に丸め、ピンの半径方向にバネ作用が生じるスプリングピンを適用している。また、アーマチュア2の中心部には被制動軸Sが挿通可能な挿通孔2bを形成している。
また、本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXは、アーマチュア2を磁極体1から離間する方向、換言すればアーマチュア2をハブプレート3に近付ける方向に付勢する付勢部材(図示省略)を備えている。付勢部材は、例えばバネから構成され、ヨーク11に形成した付勢部材用凹部(図示省略)に付勢部材の一部を収容している。なお、ヨーク11に形成した凹部11cを利用して付勢部材の一部を収容することもできる。
ハブプレート3は、例えばアルミダイキャスト製法によって形成された概略リング状をなすものである。このハブプレート3には、図1、図3〜図5(図3はハブプレート3の全体外観図であり、図4はハブプレート3を図1の矢印A方向とは反対方向から見た図であり、図5は、ハブプレート3を被制動軸Sに固定した状態を示す断面模式図である)に示すように、中心部に被制動軸Sが挿通可能な挿通孔31bを形成した筒状の固定部31と、固定部31の周方向に120度ないし略120度ピッチで設けた放射状に延伸する3本のリブ32と、これら各リブ32の延伸端部(先端部)同士を連結し固定部31と同心円状に形成されるフランジ部33とを一体に形成している。このような構成を採用することにより、ハブプレート3のうち周方向に隣り合うリブ32同士の間には、厚み方向に貫通する抜き孔34(開口部)が形成される。
また、固定部31のうち、リブ32及びフランジ部33よりも被制動軸Sの軸方向に突出させた部分に、径方向に貫通するネジ孔(本発明の「締結孔」に相当)31aを固定部31の周方向に所定角度離間させて2つ形成し、固定部31の挿通孔31bに被制動軸Sを挿し通した状態で各ネジ孔31aにネジv(例えばセットビス或いはタッピングビス等であり、本発明の「締結部材」に相当)を締め付けて、各ネジvの先端部で被制動軸Sを押圧することによってハブプレート3を被制動軸Sに固定している。したがって、ハブプレート3は被制動軸Sと一体に回転する。そして、本実施形態では、図4及び図5に示すように、これら対をなすネジ孔31aの軸中心31cを、3本のリブ32のうち何れか1本のリブ32の中心線を中心に対称ないし略対称に設定している。図4及び図5における符号32cは、対をなすネジ孔31aの形成箇所を決める際に基準となるリブ32の中心線を示す。図4及び図5に示すハブプレート3は、一方のネジ孔31aの軸中心31cを基準となるリブ32の中心32cに対して時計回りに60°回転させた位置に設定し、他方のネジ孔31aの軸中心31cを基準となるリブ32の中心32cに対して反時計回りに60°回転させた位置に設定したものである。すなわち、このハブプレート3は、対をなすネジ孔31aの軸中心31c同士の開き角度を1つのリブ32を中心に120°に設定している。
また、本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXは、ハブプレート3のうちアーマチュア2と対向する面3aに例えばリング状をなす摩擦板4を取り付けている(図1参照)。本実施形態では、ハブプレート3のうちアーマチュア2に対向する面3aに段部3bを形成し、この段部3bに摩擦板4をセットした状態で適宜の手段により摩擦板4をハブプレート3に固着している。なお、本実施形態において「アーマチュア2に対向する面3a」とは、ハブプレート3においてアーマチュア2に対向する面全体を意味する。つまり、固定部31においてアーマチュア2に対向する面、リブ32においてアーマチュア2に対向する面、及びフランジ部33においてアーマチュア2に対向する面、これらの面全体が「アーマチュア2に対向する面3a」である。そして、本実施形態では、「アーマチュア2に対向する面3a」のうちフランジ部33に段部3bを形成している。
次に、このような構成をなす無励磁作動形ブレーキXの動作について説明する。
励磁コイル12が励磁されていない無励磁状態である場合、アーマチュア2は、付勢部材の付勢力によって磁極体1から離間する方向に付勢され、図1に示すように摩擦板4に押圧する。その結果、被制動軸Sに制動力が作用する。この際、アーマチュア2と磁極体1との間には、例えば百数十μmのギャップが形成されている。
また、被制動軸Sに制動力が作用している状態で、励磁コイル12に電流を供給してこの励磁コイル12を励磁状態にすると、アーマチュア2は、磁極体1と共に磁気回路を形成し、この磁気回路を通る磁束によって発生する吸引力により付勢部材の付勢力に抗して磁極体1に接触する位置まで磁極体1側に吸引される。これにより、アーマチュア2は摩擦板4から離間し、アーマチュア2と摩擦板4との押圧状態が解除され、被制動軸Sに対する制動力は働かない。
このように、無励磁作動形ブレーキXは、無励磁状態であるか否かによって被制動軸Sに制動力が作用する状態と、制動力が作用しない状態との間で切り替えることが可能である。
そして、本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXは、上述したように、ハブプレート3における固定部31に形成した対をなすネジ孔31aの形成箇所を1本のリブ32を中心に対称ないし略対称に設定していることによって、ハブプレート3をネジ孔31aにネジvを締め付けて被制動軸Sに固定した際に、ハブプレート3(具体的にはハブプレート3のうち、段部3bを含むアーマチュア2に対向する面3a)又は摩擦板4のうちアーマチュア2に対向する面が被制動軸Sの軸方向と直交する方向から外れる方向に振れる幅を、無励磁状態においてアーマチュア2と磁極体1との間に形成される初期ギャップ幅よりも遙かに小さく抑えることができる。
図14は、ハブプレート3をネジ孔31aにネジvを規定トルクで締め付けて被制動軸Sに固定した場合において、ハブプレート3が被制動軸Sの軸方向と直交する方向から外れる方向に振れる幅(振れ量)、具体的にはハブプレート3のうちアーマチュア2に対向する面3aの上端の振れ幅(振れ量)と下端の振れ幅(振れ量)の絶対値の合計をそれぞれ実施例及び従来例について同じ条件下における試験並びにシミュレーションによって得られたデータの一例を示すものであり、以下に詳述する。
実施例1〜4は、何れも対をなすネジ孔31aの軸中心31cを、120°ピッチで設けた3本のリブ32のうち何れか1本のリブ32を中心にして対称ないし略対称に設定したものである。なお、各実施例及び従来例では、直径が例えば60mmのハブプレートを適用している。ここで、実施例1は、図6及び図7に示すように、ネジ孔31aの軸中心31c同士の開き角度を90°に設定したものであり、実施例2は、図4及び図5に示すように、ネジ孔31aの軸中心31c同士の開き角度を120°に設定したものであり、実施例3は、図8及び図9に示すように、ネジ孔31aの軸中心31c同士の開き角度を240°に設定したものであり、実施例4は、図10及び図11に示すように、ネジ孔31aの軸中心31c同士の開き角度を270°に設定したものである。なお、図6、図8及び図10は図4に対応する図であり、図7、図9及び図11は図5に対応する図である。
一方、従来例は、図12及び図13に示すように、対をなすネジ孔A31aのうち一方のネジ孔A31aの軸中心A31cを何れか1本のリブA32と一致させ、この一方のネジ孔A31aの軸中心A31cと他方のネジ孔A31aの軸中心A31cとの開き角度を90°に設定したものである。なお、図12及び図13において、図4及び図5における各部と対応する部材、部分には符号の先頭に「A」を付している。
そして、各実施例、従来例に係るハブプレート3をネジ孔31aにネジvを規定トルクで締め付けて被制動軸Sに固定した場合において、ハブプレート3のうちアーマチュア2と対向する面3aが被制動軸Sの軸方向と直交する方向から外れる方向に振れる幅(振れ量)を全て共通の条件で試験並びにシミュレーションを行った。なお、図14に示すハブプレート3の振れ量とは、被制動軸Sに固定した際におけるハブプレート3自体の変形に起因する振れ量であり、ハブプレート3を被制動軸Sに固定した状態におけるハブプレート3と被制動軸Sとのがたつきに起因する振れ量は排除している。つまり、ハブプレート3を被制動軸Sに固定した状態において両部材間にがたつきが生じないように両部材を相互に緊密に固定している。
各実施例、従来例についてそれぞれ試験及びシミュレーションを実施し、図14における数値はその結果の一例である。共通の条件及び測定方法によって相対比較した結果、リブ32を中心にネジ孔31aの軸中心31c同士の開き角度を120°、240°、270°に設定した実施例2〜4は、従来例と比較して、振れ量が少ないことが判明した。また、リブ32を中心にネジ孔31aの軸中心31c同士の開き角度を90°に設定した実施例1は、従来例と比較して振れ量が僅かに多いが、無励磁状態においてアーマチュア2と磁極体1との間に確保すべきギャップ寸法が通常、例えば百数十μmであることから、ギャップ幅よりも遙かに小さい振れ幅であり、実施例1であっても無励磁作動形ブレーキXの動作に支障を来さない範囲での揺れ幅(量)であることは明白である。このように、ハブプレート3の振れ量をごく小さくすることができる本発明の電磁連結装置Xは、特に2つのネジ孔31aの開き角度を1つのリブ32を中心に90°〜270°、とりわけ120°〜240°に設定することによって、トルク低減を防止し、異音や異常摩耗の発生も防止することができる。
また、このような電磁連結装置Xを備えたモータMとすることにより、上述した作用効果を得ることができ、実用性に優れたものとなる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、締結部材としてネジを適用するとともに、締結孔としてネジ孔を適用した態様を例示したが、締結部材としてダボを適用するとともに、締結孔としてダボが圧入可能なダボ差込孔を適用してもよい。この場合、ダボとしては、概略台形円錐形状をなし、外周面をテーパ面に設定したタイプや、或いは概略円柱状をなし、外周面に螺旋状又は直線状の突条部を形成したタイプが挙げられる。また、ダボ差込孔としては、内周面をテーパ面に形成した孔、或いは、テーパ面を有さず、開口始端から開口終端までの開口径を同一乃至略同一に設定した孔等が挙げられ、ダボの形状に応じて適宜変更すればよい。そして、ダボを固定部の径方向に貫通させたダボ差込孔に圧入することにより、ダボをダボ差込孔に緊密に締結することができ、各ダボの先端部でシャフトを押圧することによってシャフトをハブプレートの固定部に固定することができる。
また、締結部材としてテーパ面を有するキー(テーパキー)を適用し、締結孔としてテーパ面を有する孔(テーパ孔)を適用してもよい。テーパ孔はシャフトの軸方向に沿って形成される。固定部のうち、リブ及びフランジ部よりもシャフトの軸方向に突出させた側の端部を「固定部の突出端」とした場合、各テーパ孔は、固定部の突出端側に開口し且つ挿通孔に連通するものとなり、各テーパ孔に固定部の突出端側からテーパキーを差し込むことによって、テーパ孔のテーパ面及びテーパキーのテーパ面の相互間のくさび作用によりハブプレートをシャフトに緊密に固定することが可能である。そして、固定部の周方向に所定角度離間させた2箇所に形成したテーパ孔を何れか1本のリブを中心に対称ないし略対称に設定することによって、上述した作用効果と同様ないし略同様の作用効果、すなわち、シャフトに対するハブプレートの振れ量を可及的に小さくすることができ、特に2つのテーパ孔の開き角度を1つのリブを中心に90°〜270°、とりわけ120°〜240°に設定することによって、トルク低減を防止し、異音や異常摩耗の発生も防止することができるという作用効果を奏する電磁連結装置となる。
また、対をなす締結孔は、何れか1本のリブを中心に対称ないし略対称に設定されていればよく、締結孔同士の開き角度を上述した各実施例以外の角度に設定しても勿論構わない。
また、上述した実施形態では、摩擦板をハブプレートのうちアーマチュアに対向する面に取り付けた態様を例示したが、摩擦板をアーマチュアのうちハブプレートに対向する面に取り付けた態様や、或いは摩擦板を励磁状態においてアーマチュア及びハブプレートの何れにも接触しない位置に配し、無励磁状態において摩擦板がこれらアーマチュア及びハブプレートに挟み込まれて接触するように構成した態様、または摩擦板を備えず、無励磁状態においてアーマチュアとハブプレートとが直接接触するように構成した態様を採用することができる。
また、制動力にバネ等の付勢部材の弾性を利用する態様に代えて、磁極体に設けた永久磁石の力を利用して制動力を働かせる無励磁作動形ブレーキであっても構わない。すなわち、無励磁状態には永久磁石の力で制動力が被制動軸に作用する一方、励磁状態ではコイル磁束が永久磁石の力を打ち消すことによって制動力が被制動軸に作用しない無励磁作動形ブレーキであっても構わない。
また、前述した無励磁作動形ブレーキの他、無励磁状態においてバネ等の付勢力或いは永久磁石の力により、ハブプレートに固定した回転軸(シャフト)の回転トルクをロータに伝達するように構成した無励磁作動形クラッチ、または、励磁状態において磁気吸引力により、被制動軸に固定したハブプレートと対向する位置に配置したアーマチュアの回転動作に制動力が働くように構成した電磁摩擦ブレーキ(励磁作動形ブレーキ)、或いは、励磁状態において磁気吸引力により、ハブプレートに固定した回転軸(シャフト)の回転トルクをロータに伝達するように構成した電磁摩擦クラッチ(励磁作動形クラッチ)等の電磁連結装置においても、ハブプレートにおける一対の締結孔の軸中心を、何れか1本のリブを中心に対称ないし略対称に設定することによって上述した作用効果を得ることができる。
さらに、ハブプレートに消音板を取着した態様であってもよい。
また、本発明のモータは、このような電磁連結装置を備えたモータであればよく、その種類や用途は特に限定されるものではない。さらに、上述した実施形態では、電磁連結装置のうち磁極体をモータ本体に直接固定したモータを例示したが、電磁連結装置のうち磁極体を、モータ本体に対して相対位置変更不能に設定された部材や、或いは当該電磁連結装置以外の他の回転体に対して相対位置変更不能に設定された部材に固定したモータであってもよい。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。