<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係るダンパーを制震装置について説明する。
図1に示すように、構造物10を構成する左側の柱20L、右側の柱20R、上梁22A、及び下梁22Bで構成された架構24内に、制震ダンパー100Lと制震ダンパー100Rとが左右に並んで配設されている。また、左側の制震ダンパー100Lと右側の制震ダンパー100Rとは、架構24内に左右対称に配置されている。なお、以降、左右を区別する必要がある場合は、符号の後にL,Rのいずれかを付し、区別する必要がない場合は、L,Rを省略する。
制震ダンパー100L及び制震ダンパー100Rは、筒状の筐体110の中に、軸部120が軸方向に移動可能に挿入された構成とされている。
制震ダンパー100Lは、軸部120Lの一端部(後述するシャフト122Lの一端部)に設けられた取付部128Lが、上梁22Aと柱20Lとの隅部に取り付けられた取付部40Lに回転可能に連結され、筐体110Rの他端部(後述する外筒144Lの他端部)に設けられた取付部118Lが下梁22Bの左右方向の略中央部分に取り付けられた取付部30に回転可能に連結されている。
同様に、制震ダンパー100Rは、軸部120Rの一端部(後述するシャフト122Rの一端部)に設けられた取付部128Rが上梁22Aと柱20Rとの隅部に取り付けられた取付部40Rに回転可能に連結され、筐体110Rの他端部(後述する外筒144Rの他端部)に設けられた取付部118Rが下梁22Bの左右方向の略中央部分に取り付けられた取付部30に回転可能に連結されている。
ここで、この図1のような制震ダンパー100の設置(配置)構成は一例であって、架構24の水平方向の変形(図4(A)と図4(B)を参照)を抑制できれば、どのように設置(配置)してもよい。更に、構造物10のいずれの層(階)の架構に設置してもよい。また、架構以外の部位に設置してもよい。つまり、構造物10が地震などの外乱によって相対移動する第一部位と第二部位との間に制震ダンパー100を設けることによって、制震効果が得られるように設置(配置)すればよい。また、特開2008−002165号公報等に記載されているようにトグル機構を適用してもよい。なお、トグル機構の例については、図10を用いて後述する。
つぎに、制震ダンパー100について詳しく説明する。なお、左右の制震ダンパー100R,100Lは同じ構造であるので、L及びRを省略して説明する。
図2に示すように、制震ダンパー100は、前述したように、筒状の筐体110の中に、軸部120が軸方向に移動可能に挿入されている。
制震ダンパー100は、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とを有し、これらが直列に接合された構成とされている。また、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とが接合された部位が接合部140とされている。
まず、回転慣性質量ダンパー部150について説明する。
回転慣性質量ダンパー部150は、回転体152、筐体110を構成するホルダー112、及び軸部120を構成するシャフト122を有している。
シャフト122の外周面には、雌ネジ溝122Aが形成されている。このシャフト122は、雌ネジ溝122Aに螺合する雄ネジ152Aが内周面に形成された円筒状の回転体152に挿入されている。また、シャフト122の一端部に取付部128が設けられている。
回転体152は、両端が開口した円筒状のホルダー112の内部に軸回りに回転可能に保持されている。また、シャフト122は、ホルダー112及び回転体152を貫通するように構成されている。
回転体152は、円柱部154D、第一円盤部154A、及び円柱部154Dよりも径が大きな第二円盤部154B,第三円盤部154Cで構成されている。
回転体152の一方の端部側はホルダー112の外側に延出し、延出した先端部には前述した第一円盤部154Aが形成されている。回転体152の他方の先端部には第三円盤部154Cが形成されている。また、ホルダー112の内に、第二円盤部154Bと第三円盤部154Cが配置されている。
第二円盤部154B,第三円盤部154Cに対応するホルダー112の軸方向の両端部分には、第二円盤部154B,第三円盤部154Cが嵌る凹部112B、112Cが形成されている。そして、凹部112B、112Cに軸受け(ボールベアリング)153が設けられている。このような構成により回転体152は、軸回りには回転するが、軸方向への移動が規制されている。
図2と図3(A)とに示すように、回転体152の第一円盤部154Aには、複数の円盤状の質量体158がボルト159で締結されている。質量体158の中央部には円形の開口部158Aが形成され、この開口部158Aの中をシャフト122が通っている。なお、開口部158Aの内径はシャフト122の外径よりも十分に大きいので、開口部158Aとシャフト122とは接していない。また、回転体152(第一円盤部154A,第二円盤部154B,第三円盤部154C,円柱部154D)の軸心、質量体158の軸心、シャフト122の軸心、は同一軸線上にある。
回転慣性質量ダンパー部150は、このような構成により、シャフト122が軸方向に移動すると、シャフト122の外周面の雌ネジ溝122Aと回転体152の雄ネジ152Aとが螺合して回転体152が軸周りに回転し、更に、回転体152とボルト159で締結された質量体158が軸回りに回転する(回転体152と質量体158とが一体となって回転する)。
つまり、回転慣性質量ダンパー部150は、シャフト122の軸方向の直線変位を、回転慣性質量である質量体158(と回転体152)の回転変位に変換する機構を有する。
なお、ここで説明した回転慣性質量ダンパー部の構成(構造)は、一例であって、本実施形態に限定されるものではなく、所望の形式や特性のものを、任意に採用することができる。
つぎに、オイルダンパー部180について説明する。なお、本実施形態のオイルダンパー部180は、複筒式のオイルダンパーとされている。
図2に示すように、オイルダンパー部180は、内筒182と筐体110を構成する円筒状の外筒114との二重構造となった筒部184を有している。なお、外筒142の他端部に取付部118が設けられている。
筒部184を構成する内筒182の中に軸部120を構成するピストンロッド124が挿入されている。ピストンロッド124の先端部にはピストンバルブ186が設けられている。内筒182の底部にはベースバルブ188が設けられている。ピストンバルブ186には、オイル経路となるオリフィス186Aが形成されている。また、ベースバルブ188にはオイル経路となるオリフィス188Aが形成されている。
内筒182の中にはオイルEが充填されている。なお、外筒114のピストンロッド124との間には、オイルEが漏れでないようにオイルシール189によってシールされている。
内筒182の中に充填されたオイルEは、ベースバルブ188のオリフィス188Aを通って、外筒114と内筒182の隙間に導かれる。そして、ピストンロッド124の軸方向の直線変位によってピストンバルブ186が内筒182内を軸方向に移動する際にピストンバルブ186のオリフィス186A及びベースバルブ188のオリフィス188Aを通過する際の抵抗によって減衰機能が発揮される。
なお、基本的にオイルEは殆ど圧縮及び膨張しないので、オイルダンパー部180が発揮する減衰力(減衰値)は、ピストンバルブ186のオリフィス186A及びベースバルブ188のオリフィス188Aの大きさよって決定される。つまり、オリフィス186A,188Aが小さければピストンバルブ186が動く際の抵抗は大きくなり減衰力が大きくなり、オリフィス186A,188Aが大きければ抵抗は小さくなり減衰力が小さくなる。
なお、本実施形態のオイルダンパー部180は、リリーフ弁(図示略)により圧力を頭打ちにしてダンパーの負担力をリリーフ荷重で頭打ちにする機能、所謂リリーフ機構(図示略)が設けられている。
つぎに接合部140について説明する。
本実施形態の制震ダンパー100は、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とが、シャフト122とピストンロッド124とが同一軸線上となるように、直列に配置されている。そして、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180との接合部位が接合部140とされている。接合部140は円筒状の筒部116を有している。
ここで、回転慣性質量ダンパー部150の円筒状のホルダー112と、オイルダンパー部180の円筒状の外筒114と、が筐体110を構成する筒部116で接続されている。つまり、筐体110は、ホルダー112、外筒114、及び筒部116で構成されている。
筒部116の中で、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の他端部とオイルダンパー部180のピストンロッド124の一端部とが接合されている。なお、本実施形態では、シャフト122の他端部に円板状のフランジ126が設けられ、ピストンロッド124の一端部に円板状のフランジ126が設けられ、これらフランジ126同士が接合されている。つまり、軸部120は、同一軸線上に配置されたシャフト122とピストンロッド124とが接合部位に設けられたフランジ126を介して接合されることで、一体化されている。
このように、回転慣性質量ダンパー部150のホルダー112とオイルダンパー部180の外筒114とが筒部116で接合されると共に、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122とオイルダンパー部180のピストンロッド124の端部同士がフランジ126を介して接合されることで、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とが直列に配置され一体化されている。
なお、本実施形態においては、接合部140の筒部116の内壁には、軸方向に沿って複数のリブ119が形成されている。そして、フランジ126外周面には、リブ119が係合する軸方向に沿って複数の溝126Aが形成されている。これにより、軸部120は筐体110に対しては軸方向に移動可能であるが、軸回りに回転することが防止される(図3(B)を参照)。
ここで、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122とオイルダンパー部180のピストンロッド124とは、下記[数1]の関係となるように各諸元が設定されている。
なお、[数1]の各記号の意味を下記に記す。
kD.M:回転慣性質量ダンパー部のシャフトの剛性
kC :オイルダンパー部のピストンロッドの剛性
また、回転慣性質量ダンパー部のシャフトの剛性kD.Mとオイルダンパー部のピストンロッドの剛性kCとは、下記[数2]及び[数3]で求めることができる
なお、[数2]及び[数3]の各記号の意味を下記に記す。
E:ヤング率
AD.M:回転慣性質量ダンパー部のシャフトの軸方向と直交する断面の面積
LD.M:回転慣性質量ダンパー部のシャフトの軸方向の長さ
AC:オイルダンパー部のピストンロッドの軸方向と直交する断面の面積
LC:オイルダンパー部のピストンロッドの軸方向の長さ
つまり、[数1]に示すように、本実施形態の制震ダンパー100は、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の剛性kD.Mと、オイルダンパー部180のピストンロッド124の剛性kCと、が同じか、シャフト122の剛性kD.Mの方がピストンロッド124の剛性kCよりも大きくなるように設定されている。
ここで、上記の「剛性」とは、軸方向に対する変形(軸方向の伸縮)のしづらさの度合いを指す、軸剛性とする。
なお、上記の数式([数1]〜[数3])における回転慣性質量ダンパー部のシャフトとは、図2のD.Mの部分を指す。つまり、取付部128及びフランジ126を含まないシャフト122部分を指す。
また、オイルダンパー部のピストンロッドとは、図2のCの部分を指す。つまり、ピストンバルブ186及びフランジ126を含まないピストンロッド124部分を指す。
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
制震装置は、図4(A)に示すように、地震動等の振動(外乱)により、構造物10が左側へ水平移動すると、架構24が左方向へ水平変形(平行四辺形状に変形)する。すなわち上梁22Aが左側に水平移動する(上梁22Aと下梁22Bとが相対移動する)。
よって、架構24内において、取付部30と取付部40Lとの距離が長くなり、取付部30と取付部40Lとの距離が短くなる。このように取付部30と取付部40L,40Rとの距離の変化によって、制震ダンパー100Lは全長が伸長し、制震ダンパー100Rは全長が収縮する。
また、図4(B)に示すように、構造物10が右側へ水平移動すると、架構24が右方向へ水平変形(平行四辺形状に変形)する。すなわち上梁22Aが右側に水平移動する(上梁22Aと下梁22Bとが相対移動する)。
よって、架構24内において、取付部30と取付部40Lとの距離が短くなり、取付部30と取付部40Rとの距離が長くなる。このように取付部30と取付部40L,40Rとの距離の変化によって、制震ダンパー100Rは全長が収縮し、制震ダンパー100Lは全長が伸長する。
つまり、地震等の外乱(振動)によって、架構24が左右に振動すると取付部30と取付部40R,40Lとの距離が変化し、制震ダンパー100L,100Rの全長が伸縮する。
この制震ダンパー100の伸縮(全長の変化)により、回転慣性質量ダンパー部150の回転体152が軸周りに回転し回転体152と一体となった質量体158が軸回りに回転する(回転体152と質量体158とが一体となって回転する)。これにより慣性質量が発生することで、直線変位とは逆向きの力が発生し、外乱による入力が低減される。
また、オイルダンパー部180によって、軸部120の軸方向の直線変位に対する減衰力が発生する。
つまり、本実施形態の制震ダンパー100は、「回転慣性質量(M)+粘性(C)」の効果を有するダンパーであり、これらによって、制震効果を発揮する。
ここで、図2のように本実施形態の制震ダンパー100は、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とが同一軸線上に直列に配置されている。このことをモデル化した図が図6(A)である。しかし、解析モデルとしては、図6(B)に示すように、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とが並列に配置された構成と同等のモデルとなる。つまり、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とが並列に配置された構成と同様に、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の軸方向の振動をオイルダンパー部180の減衰力で減衰させる。
なお、[数1]を満足していない場合、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の剛性kD.Mと、オイルダンパー部180のピストンロッド124の剛性kCと、が同じか、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の剛性kD.Mの方が大きくなるように各諸元が設定されていない場合、すなわち回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の剛性kD.Mよりもオイルダンパー部180のピストンロッド124の剛性kCの方が大きい場合は、オイルダンパー部180は減衰効果を発揮しない、又は減衰効果を発揮したとしてもその効果は限定的である(十分な減衰効果を発揮しない)。
これは、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122が変形し、オイルダンパー部180のピストンロッド124を軸方向に動かすことができない、又は動いたとしても動作量が少ないからである。
よって、本実施形態のように、[数1]を満足させるように、すなわち回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の剛性kD.Mよりもオイルダンパー部180のピストンロッド124の剛性kCの方が大きくなるように各諸元を設定することで、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122が変形することなく、確実にオイルダンパー部180のピストンロッド124が軸方向に動かすことできる。つまり、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の軸方向の振動をオイルダンパー部180の減衰力で減衰させることができる。
このように、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とを直列に配置しても、[数1]の関係となるように各諸元を設定することで、回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とを並列に配置した構成として扱うことができる、すなわち回転慣性質量ダンパー部150とオイルダンパー部180とを並列に配置した構成と同様に、回転慣性質量ダンパー部150のシャフト122の軸方向の振動を減衰させることがきる。
ここで、図7(A)は、本発明が適用された本実施形態の制震ダンパー100における軸部120の軸方向の移動速度と軸方向の抵抗値との関係を説明するためのグラフである。図7(B)は、本発明が適用されていない、粘性体や粘性流体等で軸部に直接又は回転体等を介して、軸回りに回転抵抗を与える構成の制震ダンパーにおける軸部の軸方向の移動速度と軸方向の抵抗値との関係を示すグラフである。
図7(B)に示すように、粘性体や粘性流体等で軸部に直接又は回転体等を介して軸回りに回転抵抗を与える構成の制震ダンパーは、軸方向の移動速度(振動速度)が速くなるに従って摩擦抵抗が小さくなり、軸方向の抵抗力が低下する。
これに対して、図7(A)に示すように、本発明が適用された制震ダンパー100は、軸方向の移動速度(振動速度)に応じて軸方向の抵抗力が大きくなる(線形又は略線形となる)。
したがって、本実施形態の制震ダンパー100は、粘性体や粘性流体等で軸部に直接又は回転体等を介して軸回りに回転抵抗を与える構成と比較し、軸部120の軸方向の移動速度(振動速度)が速くなるに従って軸方向の抵抗力が低下することが防止又は抑制されている。よって、本実施形態の制震ダンパー100は、粘性体や粘性流体等で軸部に直接又は回転体等を介して軸回りに回転抵抗を与える構成と比較し、軸部120の速度(振動速度)が速くなっても高い制震効果が得られる。
また、リリーフ弁により圧力を頭打ちにしてダンパーの負担力をリリーフ荷重で頭打ちにする機能、所謂リリーフ機構が設けられているので、軸方向の抵抗力が所定以上(図のP点以上)となるとことが防止される。
なお、このようなリリーフ機構を、粘性体や粘性流体等で軸部に直接又は回転体等を介して軸周りに回転抵抗を与える構成の制震ダンパーに設けることは、構造上、非常に困難とされている。
また、本実施形態の制震ダンパー100は、既存のオイルダンパーに回転慣性質量ダンパーを直列に配置して接続することで、容易に構成することできる。
また、接合部140の筒部116の内壁に形成された複数のリブ119に、フランジ126外周面に形成された複数の溝126Aが係合しているので、軸部120は筐体110に対しては軸方向に移動可能であるが、軸回りに回転することが防止される(図3(B)を参照)。よって、回転体152が回転すること等による軸部120の捩れが防止される。
さて、ここで上記の数式([数1]〜[数3])における回転慣性質量ダンパー部のシャフトとは、図2のD.Mの部分を指し、取付部128及びフランジ126を含まないシャフト122部分を指すとした。また、オイルダンパー部のピストンロッドとは、図2のCの部分を指し、ピストンバルブ186及びフランジ126を含まないピストンロッド124部分を指すとした。
しかし、正確には、取付部128、及びフランジ126、ピストンバルブ186の部分も回転慣性質量ダンパー部のシャフトの剛性kD.M(剛性K1)とオイルダンパー部のピストンロッドの剛性kC(剛性K2)に影響する。しかし、本実施形態の場合は、近似的に上記の数式([数1]〜[数3])で計算しても大きな問題は生じない。但し、より正確に設計を行なう場合は、取付部128、及びフランジ126、ピストンバルブ186を含んだ剛性kD.M(剛性K1)及びピストンロッドの剛性kC(剛性K2)を計算して求めることが望ましい。
また、シャフトの軸の軸径や断面形状が軸方向で異なるような場合(例えば、一方から他方に向かって徐々に太くなるようなシャフトや一方側が断面円形で他方側が断面四角形のシャフト(円柱と角柱が繋がったような形状))等も、上記の数式([数1]〜[数3])以外の計算式で剛性を求めることになる。
要は、回転慣性質量が発生する回転慣性質量発生部における第一軸部の剛性K1が、軸方向に抵抗力を与えることで減衰させる減衰部における第二軸部の剛性K2以上になるように設定されていればよい。
<第二実施形態>
つぎに、第二実施形態の制震ダンパー200について説明する。なお、第一実施形態と同様の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
図5に示すように、制震ダンパー200は、筒状の筐体210の中に、軸部220が軸方向に移動可能に挿入されている。
なお、軸部220の一端部(後述するピストンロッド224の一端部)に取付部128が設けられ、上梁22Aと柱20との隅部に取り付けられた取付部40(図1参照)に回転可能に連結され、筐体210の他端部(後述するホルダー212の他端部)に設けられた取付部118が下梁22Bの左右方向の略中央部分に取り付けられた取付部30(図1参照)に回転可能に連結されている。
制震ダンパー200は、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280とを有し、これらが直列に接合された構成とされている。また、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280とが接合された部位が接合部240とされている。
回転慣性質量ダンパー部250は、第一実施形態の回転慣性質量ダンパー部150と略同様である。回転慣性質量ダンパー部250は、回転体152、筐体210を構成するホルダー212、及び軸部220を構成するシャフト222を有している。
シャフト222の外周面には、雌ネジ溝222Aが形成されている。この雌ネジ溝222Aは、雌ネジ溝222Aに螺合する雄ネジ152Aが内周面に形成された円筒状の回転体152に挿入されている。回転体152は、両円筒状のホルダー212の内部に軸回りに回転可能に保持されている。また、シャフト222は、回転体152を貫通する。
回転慣性質量ダンパー部250は、第一実施形態の回転慣性質量ダンパー部250と同様にシャフト222が軸方向に移動すると、シャフト222の外周面の雌ネジ溝222Aと回転体152の雄ネジ152Aとが螺合して回転体152が軸周りに回転し、更に、回転体152とボルト159で締結された質量体158が軸回りに回転する(回転体152と質量体158とが一体となって回転する)。
つまり、回転慣性質量ダンパー部250は、シャフト222の軸方向の直線変位を、回転慣性質量である質量体158(と回転体152)の回転変位に変換する機構を有する。
なお、ホルダー212は、質量体158に応じて一部が外側に膨出した構成とされている。
本実施形態においては、ホルダー212の他端部側の空間252にシャフト222の他端部が配置されている。そして、この空間252内をシャフト222の他端部が軸方向に移動する構成となっている。空間252の他端部の外側、つまりホルダー212の他端部に前述した取付部118が設けられている。
なお、第一実施形態と同様に、回転慣性質量ダンパー部250の構成(構造)は、一例であって、本実施形態に限定されるものではなく、所望の形式や特性のものを任意に採用することができる。
つぎに、オイルダンパー部280について説明する。なお、本実施形態のオイルダンパー部280は、PSA−P(粘性減衰装置)方式のオイルダンパーとされている。
オイルダンパー部280は、筐体210を構成する円筒状の外筒214を有している。この外筒214の中にピストンロッド224が挿入され、ピストンロッド224にピストンバルブ282が設けられている。また、ピストンロッド224の一端部に取付部128が設けられている。
なお、外筒214の開口部とピストンロッド224との間には、オイルEが漏れでないようにオイルシール288によってシールされている。
外筒214の外側には、外周面における両端部間を連通するように構成された連通管(狭管)284が設けられている。また、外筒214の一端部の外周面には、バッファ286が設けている。そして、ピストンロッド224が軸方向に移動することに伴ってピストンバルブ282が移動し、これによって連通管284がオイルEが流れる。そして、連通管284に流れるオイルEの粘性抵抗力によって減衰抵抗が発揮される。
つぎに接合部240について説明する。
本実施形態の制震ダンパー200は、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280とが、シャフト222とピストンロッド224とが同一軸線上となるように、直列に配置されている。そして、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280との接合部位が接合部240とされている。接合部140は、筐体210を構成する円筒状の筒部116を有している。
そして、回転慣性質量ダンパー部250の円筒状のホルダー212と、オイルダンパー部280の円筒状の外筒214とが、筐体210を構成する筒部116接続されている。つまり、筐体210は、ホルダー212、外筒214、及び筒部116で構成されている。
筒部116の中で、回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222の一端部とオイルダンパー部280のピストンロッド224の他端部とが接合されている。なお、本実施形態においても、シャフト222の一端部に円板状のフランジ126が設けられ、ピストンロッド224の他端部に円板状のフランジ126が設けられ、これらフランジ126同士が接合されている。つまり、軸部120は、同一軸線上に配置されたシャフト222とピストンロッド224とが接合部位に設けられたフランジ126を介して接合されることで、一体化されている。
このように、回転慣性質量ダンパー部250のホルダー212とオイルダンパー部280の外筒214とが筒部116で接合されると共に、回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222とオイルダンパー部280のピストンロッド224の端部同士がフランジ126を介して接合されることで、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280とが直列に配置され一体化されている。
なお、本実施形態においても、筒部116の内壁には、軸方向に沿って複数のリブ119が形成され、フランジ126外周面には、リブ119が係合する軸方向に沿って複数の溝126Aが形成されている。これにより、軸部120は筐体110に対しては軸方向に移動可能であるが、軸回りに回転することが防止される(図3(B)を参照)。
また、本実施形態においても、回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222とオイルダンパー部280のピストンロッド224とは、第一実施形態で説明した[数1](〜数3])の関係となるように各諸元が設定されている。
つまり、本実施形態の制震ダンパー200は、回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222の剛性kD.Mと、オイルダンパー部280のピストンロッド224の剛性kCと、が同じか、回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222の剛性kD.Mの方が大きくなるように各諸元が設定されている。
なお、上記の回転慣性質量ダンパー部のシャフトとは、図5のD.Mの部分を指す。つまり、フランジ126を含まないシャフト222部分を指す。また、オイルダンパー部のピストンロッドとは、図2のCの部分を指す。つまり、取付部128、フランジ126、ピストンバルブ282を含まないピストンロッド224部分を指す。言い換えると、取付部128及びピストンバルブ282を含まないC1部分と、ピストンバルブ282及びフランジ126を含まないC2部分と、がC部分とされている。
つぎに、本実施形態の制震ダンパー200の作用について説明する。
第一実施形態と同様に、制震ダンパー200の伸縮(全長の変化)により、回転慣性質量ダンパー部250の回転体152が軸周りに回転し回転体152と一体となった質量体158が軸回りに回転する(回転体152と質量体158とが一体となって回転する)。これにより慣性質量が発生することで、直線変位とは逆向きの力が発生し、外乱による入力が低減される。
また、オイルダンパー部280によって、軸部220の直線変位に対する減衰力が発生する。
つまり、本実施形態の制震ダンパー200は、「回転慣性質量(M)+粘性(C)」の効果を有するダンパーであり、これらによって制震効果を発揮する。
ここで、本実施形態の制震ダンパー200は、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280とが同一軸線上に直列に配置されている(図6B)を参照)。しかし、第一実施形態と同様に数値解析モデルとしては、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280とが並列に配置された構成と同様のモデルとなる(図6(C)を参照)。つまり、回転慣性質量ダンパー部250とオイルダンパー部280とが並列に配置された構成と同様に、回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222の軸方向の振動をオイルダンパー部280の減衰力で減衰させることができる。
なお、本実施形態においても、[数1]を満足するように、すなわち回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222の剛性kD.Mと、オイルダンパー部280のピストンロッド224の剛性kCと、が同じか、回転慣性質量ダンパー部250のシャフト222の剛性kD.Mの方が大きくなるように各諸元が設定されているので、オイルダンパー部280は減衰効果を発揮する。
また、第一実施形態と同様に、粘性体や粘性流体等で軸部に直接又は回転体等を介して軸回りに回転抵抗を与える構成と比較し、軸部220の軸方向の移動速度(振動速度)が速くなるに従って軸方向の抵抗力が低下することが防止又は抑制される。よって、軸部220の速度(振動速度)が速くなっても高い制震効果が得られる。
また、本実施形態の制震ダンパー200も、第一実施形態と同様に、既存のオイルダンパーに回転慣性質量ダンパーを直列に配置して接続することで、容易に構成することできる。
また、接合部240の筒部116の内壁に形成された複数のリブ119に、フランジ126外周面に形成された複数の溝126Aが係合しているので、軸部220は筐体210に対しては軸方向に移動可能であるが、軸回りに回転することが防止される。よって、回転体152が回転すること等による軸部220の捩れが防止される。
<変形例>
上記実施形態では、回転慣性質量発生部(回転慣性質量ダンパー部)と減衰部(オイルダンパー部)とを直列に配置しても、解析モデルとしては、回転慣性質量発生部と減衰部とが、並列に配置された構成と同等の制震ダンパーであった(図6を参照)。
しかし、図8に示す解析モデル図のように、解析モデルとしては、回転慣性質量発生部と減衰部とが並列に配置された構成(上記実施形態の制震ダンパー100、200)に、更にバネ(バネ要素)300を直列に配置した構成の制震装置としてもよい。
このように、軸方向の直線変位を質量体の回転運動に変換する回転慣性質量発生部と減衰抵抗力を発生する減衰部とを並列接続した系と、弾性反力を発生するバネ要素と、を直列接続した制震装置(図8参照)が、第一部位と第二部位とを連結する構成とすることで、回転慣性質量とバネ要素とで構成される振動系が連成振動すると共に、並列接続された減衰部が振動エネルギーを吸収する。
また、このようにバネ300を直列に配置した制震装置(図8参照)においては、回転慣性質量とバネ300とにより定まる固有振動数を、構造物10の固有振動数に同調又は略同調させることで、バネ300を直列配置しない構成と比較し、回転慣性質量を大きくすることができる。
また、バネ(バネ要素)300を直列に配置することで、軸方向の抵抗力の最大値を制御(制限)することができる。言い換えると、リリーフ弁などを用いることなく、軸方向の抵抗力が所定以上(例えば、図7(A)のP点以上)となることを防止するリリーフ機構を備える構成と略同等の機能を有することができる。
つぎに、バネ300を直列に配置する配置位置の例について、図9(A)及び図9(B)を用いて説明する。
図9(A)及び図9(B)に示すように、第一実施形態の制震ダンパー100の筐体110又は第二実施形態の制震ダンパー200の筐体210と、取付部30と、の間の配置位置B1にバネ300を配置してもよい
或いは、第一実施形態の制震ダンパー100のシャフト122の取付部128又は第二実施形態の制震ダンパー200のシャフト224の取付部128と、取付部40R,40Lと、の間の配置位置B2にバネ300を配置してもよい。
また、第一実施形態の制震ダンパー100の筐体110又は第二実施形態の制震ダンパー200の筐体210と、取付部30と、をバネ要素と同様の機能を有する連結部材で連結してもよい。同様に、第一実施形態の制震ダンパー100のシャフト122の取付部128又は第二実施形態の制震ダンパー200のシャフト224の取付部128と、取付部40R,40Lと、をバネ要素と同様の機能を有する連結部材で連結してもよい。
なお、本実施形態では、V型ブレース状に構成された制震ダンパー100、200を設けたが、これに限定されない。例えば、K型ブレースに本発明が適用された制震ダンパー100、200を設けてもよい。つまり、取付部30が上梁22Aに設けられ、取付部40R,40Lが架構24の下隅部に配置され下梁22Bと柱20R,20Lとに取り付けられた構成であってもよい。
このようなK型ブレースに適用する場合も、第一実施形態の制震ダンパー100の筐体110又は第二実施形態の制震ダンパー200の筐体210と、架構に設けられた取付部と、の間にバネ300を設けてもよいし、これらの間をバネ要素と同様の機能を有する連結部材で連結してもよい。同様に、第一実施形態の制震ダンパー100のシャフト122の取付部128又は第二実施形態の制震ダンパー200のシャフト224の取付部128と、架構に設けられた取付部と、の間にバネ300を設けてもよいし、これらの間をバネ要素と同様の機能を有する連結部材で連結してもよい。
更に、トグル機構を有するトグル制震装置に本発明が適用された制震ダンパー100、200を設けてもよい。
例えば、図10に示すように、トグル制震装置500R,500Lは、取付部30に一端が回転可能に支持された第一アーム538R,538Lと、取付部40R,40Lに一端が回転可能に支持された第二アーム542R,542Lと、を備えている。第一アーム538R,538L及び第二アーム542R,542Lの他端は、制震ダンパー100R,100Lの取付部128R、128Lに、回転可能に所定の角度を持って連結されている。更に、制震ダンパー100R,100Lの取付部118R,118Lが架構24の下隅部に配置され下梁22Bと柱20R,20Lとに取り付けられた取付部510R,510Lに回転可能に連結されている。
そして、このようなトグル制震装置500R,500Lにおいて、第一アーム538R,538L及び第二アーム542R,542Lを、バネ要素として機能させることができる。
なお、図10では、第一実施形態の制震ダンパー100を適用したが、第二実施形態の制震ダンパー200を用いてもよい。
また、トグル機構の構成は、図10に示す構成以外の構成であってもよい。
例えば、図10では、第一アーム538と第二アーム542とで構成する角部は上方側に凸形状となるように構成されている。しかし、第一アーム538と第二アーム542とで構成する角部が下側に凸形状となるように構成されていてもよい。
また、例えば、架構の対角線上の一方の隅部と他方の隅部とに、第一アーム538の一端と第二アーム542の一端とが連結された構成であってもよい。
<その他>
本発明は上記実施形態に限定されない。
上記実施形態では、減衰部は、オイルダンパー部180、280は、複筒式のオイルダンパー又はPSA−P(粘性減衰装置)方式のオイルダンパーであったが、これに限定されない。単筒式のオイルダンパーであってもよい。或いは、他の構成のオイルダンパーであってもよい。
更に、減衰部はオイルダンパー以外で構成されていてもよい。他の方式のダンパー、例えば、弾塑性系のダンパーを用いることができる。また、例えば、粘性ダンパー、摩擦ダンパー、粘弾性ダンパー等で構成されていてもよい。
なお、減衰部を直列に配置した構成に、更に、粘性体や粘性流体等で軸部に直接又は回転体等を介して、軸回りに回転抵抗を与えてもよい。
また、上記実施形態では、シャフト122、222とピストンロッド124、224とは、フランジ126を介して接合されていたが、これに限定されない。シャフト122、222とピストンロッド124、224との端部同士が直接接合されていてもよい。或いは、複数の軸部を接続した構成でなく、一本の軸部の一方側に雌ネジ溝122Aを形成してもよい。つまり、一本の軸部の一方側を第一軸部とし他方側を第二軸部とした構成であってもよい。
また、上記実施形態では、筒部116の内壁面にリブ119を形成し、フランジ126の外周面に溝126Aを形成したが、これに限定されない。筒部116の内壁面に溝を形成し、フランジ126の外周面にリブを形成してもよい。或いは、筒部の中にフランジ126を貫通するガイド軸を設けた構成であってもよい。要は、軸部120、220の軸回りの回転を防止する機構であればよい。なお、必ずしも軸部120、220の軸回りの回転を防止するガイド機構は必要でない(このようなガイド機構を備えていない構成のダンパー又は制震装置であってもよい)。
また、上記実施形態では、取付部40に制震ダンパー100、200の軸部120、220に設けられた取付部128が連結され、取付部30に制震ダンパー100、200の筐体110、210に設けられた取付部118が連結されていたが、これに限定されない。別の部材、例えば、アームなどを介して連結されていてもよい。或いは、上述したようにバネや他の制震装置等を介して連結されていてもよい。
また、オイルダンパー等に上下方向の配置に制限が無ければ、取付部40に制震ダンパーの軸部側が連結され、取付部30に制震ダンパーの筐体側が連結されていてもよい。要は、構造物が地震などの外乱によって相対移動する第一部位と第二部位との間に制震ダンパーを設けることによって、制震効果が得られるように設置すれば、どのように制震ダンパーを配置してもよい。
また、上記実施形態では、構造物を制震する目的に主に使用する制震ダンパーに本発明を適用したが、これに限定されない。制震以外の目的に使用するダンパーにも本発明を適用することができる。
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
なお、本明細書で一方及び他方との記載は相対的なものであり、どちらが一方及び他方であってもよい。