JP5453801B2 - 車両用の繊維積層体 - Google Patents
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これら公知技術では、裏基布のみが安定して燃焼し且つこの燃焼速度が基準を下回るような裏基布の材質を採用することで、繊維積層体の燃焼速度を基準値以下とするものである。
また特許文献2では、セルロース系短繊維(繊維長100mm以下)を物理的に交絡してなる裏基布を使用することで、繊維積層体の燃焼速度を70〜80mm/minとすることができる。そしてこの公知技術では、複数の短繊維をウォーターパンチ(高圧の水の噴流)によって三次元的に交絡させることで、比較的伸び特性に優れる裏基布を製造することができる。
もっとも繊維積層体に難燃剤を付与して燃焼速度を低下させることも考えられるが、車両の製造コストなどを考慮すると、すんなり採用できる構成ではない。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、よりシンプルな構成によって、米国自動車安全基準FMVSS302をクリアすることにある。
そこで本発明では、上述の裏基布を、不燃性のカーボン繊維を含有して不燃化された布材(織物、編物又は不織布)とした。このように本発明では、カーボン繊維によって裏基布を不燃化することによって(比較的シンプルな構成によって)、難燃処理剤を要することなく上記基準をクリアすることができる。
そして本発明では、不燃性の裏基布によって表皮材の燃焼を抑制することにより、繊維積層体の燃焼性の悪化を防止又は低減しつつ、その品質向上を図ることができる。
また第1発明に係る車両用の繊維積層体は、カーボン繊維の炭素比率を20%〜70%とすることで、裏基布の導電性が比較的低く抑えられている。このため本発明の繊維積層体は、例えば車両内部のセンサ類に極力影響を与えることなく、車両に使用することができる。
本実施形態に係る車両用の繊維積層体2は、図1及び図2を参照して、表皮材4とクッション材6と裏基布8が積層されて構成されている(各構成の詳細は後述する)。そしてこの種の繊維積層体2は専ら車両内装材に用いられることから、米国自動車安全基準FMVSS302を満たすことが望まれる。
そこで本実施形態では、上記基準をより確実にクリアするため、後述するカーボン繊維によって裏基布8を不燃性としたものである。
表皮材4は、繊維積層体2の意匠面を構成する部材であり、例えば、ジャージ、織物、モケット、トリコット、天然皮革、人工皮革又は合成樹脂シートにて構成される。
表皮材4の材質や目付量は特に限定しないが、例えばPET製の典型的な表皮材4では、目付量が250g/m2〜650g/m2である。表皮材4は、コスト面等から難燃処理を施さない。
そして表皮材4の表面には、柔軟剤又は地糸切れ防止剤などの燃焼性のある油成分を含有の被膜層を備えて、その品質(染色や捺染による意匠性、抗菌性、制菌性、消臭性、防汚性、撥水性、すべり性、起毛性など)の向上が図られることが望ましい。表皮材4の表面には、柔軟剤や地糸切れ防止剤のほか、起毛性改良剤、耐摩耗性向上剤、毛倒れ防止剤又は撥水剤などの被膜層(単一種の被膜層又は複数種の被膜層)が形成されることがあり、これらは全て燃焼性の油成分を含有する。そして燃焼性の油成分として、ワックス系、パラフィン系、シリコン系、アクリル系及びフッ素系樹脂を例示することができる。
またクッション材6は、乗員の着座性を確保するクッション性を備えておればよく、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム又はポリエステルフォームにて構成される。このクッション材6として、耐へたり性に優れるポリウレタンフォーム(密度:10Kg/m3〜30Kg/m3)を用いることが望ましい。
なおクッション材6は、別途難燃処理が施されることもあるが、コスト面等から難燃処理を施さないことが好ましい。
そして裏基布8は、カーボン繊維を含有した布材(織物、編物又は不織布)である。ここでカーボン繊維とは、ポリアクリロニトリル系カーボン繊維(PAN系カーボン繊維)、ピッチ系カーボン繊維及びこれらの混紡繊維を例示できる。
そして本実施形態の裏基布8は、カーボン繊維によって不燃効果を奏するものであり、難燃処理剤を配合する必要がない(比較的シンプルな構成である)。なお一般的な難燃処理材(塩素化有機燐化合物等)は、自動車のウィンドウの曇り現象(いわゆるFogging現象)を誘発するため、裏基布8に使用しないことが望ましいものである。
耐炎化繊維とは、ポリアクリロニトリル(PAN)を紡糸したのち、耐炎化(空気中200℃〜300℃で加熱処理)したカーボン繊維である。また炭素化繊維とは、耐炎化繊維を炭素化(不活性雰囲気中1000℃〜1500℃で加熱処理)したカーボン繊維である。そして黒鉛化繊維とは、炭素化繊維を黒鉛化(不活性雰囲気中2000℃〜3000℃で加熱処理)したカーボン繊維である。
不融化繊維とは、ピッチ繊維を不融化(酸化性雰囲気中200℃〜350℃で加熱処理)したカーボン繊維である。また炭素化繊維とは、不融化繊維を炭素化(不活性雰囲気中1000℃〜1500℃で加熱処理)したカーボン繊維である。そして黒鉛化繊維とは、炭素化繊維を黒鉛化(不活性雰囲気中2000℃〜3000℃で加熱処理)したカーボン繊維である。
そしてカーボン繊維の炭素比率(炭素含有率)は、裏基布に不燃性を付与することができるかぎり特に限定しないが、70%以下(典型的には20%〜70%)であることが望ましい。炭素比率が20%以下のカーボン繊維では、十分な強度や弾性が得られない傾向にある。
ここで炭素比率が70%以下のカーボン繊維(例えば耐燃化繊維)は、アクリロニトリル繊維を低温(200℃〜300℃)で処理することで得られることから、低コストで製造可能である。また炭素比率が70%以下のカーボン繊維は、繊維強度が比較的低い(撓り易い)ことが知られている。
なお炭素比率が95%以上のカーボン繊維(例えば炭素化繊維及び黒鉛化繊維)は、比較的高温(1000℃以上)で処理することで得られることから、比較的高コストで製造される。
そして車両内部には、各種のセンサ類が内蔵されることが多い。このため導電性の高い繊維積層体2をセンサ類の近傍に配置する場合(車両用表皮材の裏基布として繊維積層体2を使用する場合)、車両内部のセンサ類に誤作動などの悪影響を及ぼすことが懸念される。
ここで炭素比率が70%以下のカーボン繊維(200℃〜300℃で処理されてなるカーボン繊維)は、比較的導電性が低いことが知られている。このため炭素比率が70%以下のカーボン繊維であれば、車両内部のセンサ類に極力悪影響を与えることなく、車両に使用することができる(繊維積層体2の使用範囲が広がる)。
布帛としての裏基布は、汎用の編織方法によって作製可能であり、不織布のとして裏基布も汎用の方法によって作製可能である。
例えば不織布は、カーボン繊維のシート(ウェブ)を作成したのち、このウェブを交絡して作成される。ウェブの作製には、カーボン繊維(短繊維)を開綿機にかけてほぐしたのちシート状とする乾式法、またはカーボン繊維を液中に分散させたのち抄紙機を利用してシート状とする湿式法のいずれも用いることができる。
このときカーボン繊維の繊維太さ(繊維径)は典型的にφ50μm以下であり、好ましくはφ10μm〜15μmである。またカーボン繊維の繊維長さは、典型的に100mm以下であり、好ましくは20mm〜60mmである。この範囲の繊維太さ又は繊維長さを有するカーボン繊維を使用することで、裏基布8の伸び特性を向上させることができる。
こうすることで短繊維同士が互いに密に絡み合い、接着剤や熱融着によらずとも繊維の絡み合いだけで安定した裏基布8(不織布状)とすることができる。特にウォーターパンチ(高圧の水の噴流)によってウェブの短繊維同士を三次元的に交絡することで、機械油などの不純物(燃焼を促進する不純物)の混入を極力排除することができる。
そして図2を参照して、表皮材4とクッション材6と裏基布8をこの順で配置したのち、縫着、接着又は溶着(ラミネート加工)などの手法で接合する。
このように作成された繊維積層体2は、不燃性の裏基布8を備えることから、米国自動車安全基準をより確実にクリアすることができるものとなる([表2]を参照)。また繊維積層体2は、従来品と遜色のない伸び特性を有する([表2]を参照)。このため繊維積層体2は、例えば車両用シートの表皮カバー材として好適に使用することができる。
そして本実施例では、不燃性の裏基布8によって表皮材4の燃焼を抑制することにより、繊維積層体2の燃焼性の悪化を防止又は低減しつつ、その品質向上を図ることができる。
以下、本実施の形態を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。
本試験では、下記[表1]の構成及び製造法に係る実施例1の裏基布8と、比較例1の裏基布9を使用することとした(図1を参照)。
そして実施例1の繊維積層体2を、表皮材4とクッション材6と裏基布8をこの順で積層及び接合して作製した(図1及び図2を参照)。なお表皮材4とクッション材6と裏基布8は、いずれも難燃処理材が混入されていないものを使用した。
表皮材4としてPET製ジャージ(目付量:250g/m2)を用いた。またクッション材6としてポリウレタンフォーム(密度:20Kg/m3、板厚:1.3mm)を用いた。
また比較例1の繊維積層体20を、表皮材4とクッション材6と裏基布9をこの順で積層及び接合して作製した(図1及び図2を参照)。表皮材4とクッション材6の詳細構成は実施例1と同一とした。裏基布9には、レーヨンとポリエチレンテレフタレート(PET)の混紡繊維からなる不織布を用いた(特許文献2を参照)。
そして実施例1の繊維積層体2から、ベルトコンベアの搬送方向Fに長尺な「縦長サンプルSh1」(縦350mm×横100mm)を採取した(図1(a)を参照)。また同方向Fに直交する向きに長尺な「横長サンプルSw1」(縦100mm×横350mm)を採取した。これら「縦長サンプルSh1」と「横長サンプルSw1」の最大燃焼速度を、米国自動車安全基準FMVSS302に準拠して測定した(図2を参照)。
また「縦長サンプルSh1の裏基布」と「横長サンプルSw1の裏基布」の破断伸度及び引張強度を、「JIS L1018 8.13 引張強さ及び伸び率」に準拠して測定した。
また「縦長サンプルSh2の裏基布」と「横長サンプルSw2の裏基布」の破断伸度及び引張強度を、「JIS L1018 8.13 引張強さ及び伸び率」に準拠して測定した。
実施例1の繊維積層体2では、「縦長サンプルSh1」と「横長サンプルSw1」は共に不燃であった。
このことから実施例1の繊維積層体2によれば、裏基布8を不燃化することにより、より確実に米国自動車安全基準をクリアできることがわかった。すなわち裏基布8は、カーボン繊維によって不燃効果を奏することができ、難燃処理剤を配合する必要がないことがわかった。
そして比較例1における燃焼速度のアンバランス化は、ベルトコンベアの搬送方向Fに対して裏基布9の短繊維が直行配置することにより同方向の燃焼が促進されたためと推測される。このことから比較例1の繊維積層体20(裏基布9)は、他の構成(表皮材4やクッション材6)との組合せ次第で、米国自動車安全基準を満たさない可能性があることが強く示唆された。
実施例1の繊維積層体2では、「縦長サンプルSh1の裏基布」の破断伸度と、「横長サンプルSw1の裏基布」の破断伸度が、比較例1と遜色のない値を示した。また同様に「縦長サンプルSh1の裏基布」の引張強度と、「横長サンプルSw1の裏基布」の引張強度が、比較例1と遜色のない値を示した。
また繊維積層体2は、裏基布8の引張強度が適度に低いため、安定して引張可能であることがわかった。例えば表皮カバー材の製造時には縫製作業を伴うが、このとき表皮カバー材(繊維積層体2)が安定して引張可能であると、その縫製作業が容易となるとともに、きれいな縫製ラインを形成することができる(見栄えの良い仕上がりとなる)。
このことから実施例1の繊維積層体2(裏基布8)は好適な伸び特性を有し、車両用シートなどの立体構造体を被覆する表皮カバー材などに好適に使用できることがわかった。
(1)本実施例では、専らカーボン繊維からなる裏基布8を例示した。このとき裏基布8の不燃性や伸び特性に悪影響を与えないならば、他の繊維(天然繊維又は合成繊維)を混紡することもできる。
(2)また本実施例の交絡工程では、物理的又は機械的にウェブを交絡させる構成を説明したが、接着剤やバインダー繊維を使用しない趣旨ではない。すなわち、裏基布8の不燃性や伸び特性に悪影響を与えない程度の分量の接着剤等を使用することもできる。
(3)また本実施例では、表皮材4とクッション材6と裏基布8のみからなる繊維積層体2を説明したが、これら各構成は主構成であり、この他に別の構成(樹脂板やコーティング層など)を有していてもよい。
4 表皮材
6 クッション材
8 裏基布
20 繊維積層体(比較例)
9 裏基布(比較例)
Claims (1)
- 表皮材とクッション材と裏基布が積層されてなる車両用の繊維積層体において、
前記裏基布が、カーボン繊維を含有して不燃化された布材であって、前記カーボン繊維の炭素比率が20%〜70%であり、
前記表皮材が、難燃処理の施されない部材であって、燃焼性のある油成分を含有の被膜層を備えるとともに、前記被膜層が、柔軟剤、地糸切れ防止剤、起毛性改良剤、耐摩耗性向上剤、毛倒れ防止剤及び撥水剤の少なくとも一つにて形成され、
前記裏基布のみがカーボン繊維を含有するとともに、前記表皮材のみが前記被膜層を備える車両用の繊維積層体。
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