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JP5456042B2 - 盛上げタップ - Google Patents
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JP5456042B2 - 盛上げタップ - Google Patents

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Description

本発明は盛上げタップに係り、特に、高速加工等の溶着を生じ易い条件でめねじを加工する場合でも優れた耐久性が得られるようにする技術に関するものである。
完全山部と、その完全山部に連続して設けられ且つ先端に向かう程小径となる食付き部とを有するとともに、それ等の完全山部および食付き部には突出部と逃げ部とが交互に形成されたおねじが設けられている盛上げタップが知られている(特許文献1、2参照)。このような盛上げタップにおいては、被加工物に設けられた下穴内に食付き部側からねじ込まれ、前記突出部がその下穴の内壁表層部に食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するため、切りくずが排出されず、清掃作業等が簡略化される。
特開2003−127027号公報 特開2004−148430号公報
ところで、このような盛上げタップの前記突出部には、一般に工具中心線Oまわりにおいて外周部で2°〜6°程度の角度範囲に径寸法が一定のマージンが存在するため、例えば高速でタッピングを行なう場合や、比較的硬質(例えば30HRC程度以上)の鋼をタッピングする際に大きな摩擦トルク(回転抵抗)が発生し、発熱により溶着が生じて工具寿命が著しく損なわれる場合があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、めねじを塑性加工する場合の発熱を抑制し、被加工物の工具への溶着を防止するとともに、熱的影響を低減することで工具の摩耗を抑え、工具寿命を向上させることにある。また、溶着を抑制することで、めねじ加工の高速加工化を可能にする。
かかる目的を達成するため、第1発明は、完全山部と、その完全山部に連続して設けられ且つ先端に向かう程小径となる食付き部とを有するとともに、それ等の完全山部および食付き部には突出部と逃げ部とが交互に形成されたおねじが設けられている盛上げタップにおいて、(a) 前記食付き部における前記突出部の工具中心線Oまわりの形状に関し、径寸法が最大のその突出部の頂点よりも少なくとも盛上げ加工側であって、且つ被加工物に食い込んで盛上げ加工を行なう加工領域を含む範囲において、前記頂点を0°として前記工具中心線Oまわりの盛上げ加工側への角度をδとした時、(b) 前記角度δが前記加工領域内で予め定められた変曲点角度θ以下の仕上げ塑性変形区間では、その角度δ=0°の前記頂点における径寸法からの後退量であるレリーフ量Rが、その変曲点角度θ側へ向かうに従って増加するように、前記突出部の形状が角度δに対して二次曲線に従って変化するように定められている一方、(c) 前記角度δが前記変曲点角度θよりも大きく且つ前記加工領域を超えるように定められた粗塑性変形区間では、前記レリーフ量Rが角度δに対して直線的に増加するように、前記突出部の形状が一定の逃げ角α1のアルキメデス曲線(アルキメデスのうず巻き線ともいう)に従って変化するように定められており、且つ、(d) 前記頂点の径寸法と等しい径寸法のマージン区間は略0か、或いは前記角度δが1°以下の範囲内とされていることを特徴とする。
第2発明は、第1発明の盛上げタップにおいて、前記仕上げ塑性変形区間は、前記マージンが無ければ前記角度δ=0°の前記頂点から前記変曲点角度θまでの範囲で、前記マージンが存在する場合はそのマージンの外端から変曲点角度θまでの範囲であることを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明の盛上げタップにおいて、(a) 前記変曲点角度θは0°<θ≦4°で且つ前記マージンが存在する場合にはそのマージンよりも外側の範囲内で定められ、(b) 前記逃げ角α1は2°≦α1≦12°の範囲内で定められ、(c) 前記仕上げ塑性変形区間では、前記変曲点角度θへ向かうに従って逃げ角αが徐々に大きくなり、その変曲点角度θ付近で前記逃げ角α1となって前記粗塑性変形区間に滑らかに接続されていることを特徴とする。
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの盛上げタップにおいて、前記角度δ=0°の前記頂点を挟んで前記盛上げ加工側と反対の逃げ側の形状は、その盛上げ加工側と対称的に変化していることを特徴とする。
第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの盛上げタップにおいて、前記仕上げ塑性変形区間および前記粗塑性変形区間を有する前記突出部の形状は、その突出部における前記おねじのフランクおよび山頂の何れか一方または両方の部位の形状であることを特徴とする。
このような盛上げタップにおいては、突出部の頂点よりも盛上げ加工側の形状に関し、マージン区間が略0か或いは角度δが1°以下の狭い範囲内とされているため、盛上げ加工(転造加工)時の被加工物との接触面積が小さくなり、摩擦トルク(回転抵抗)や発熱が低減される。また、仕上げ塑性変形区間と粗塑性変形区間とを有し、突出部の頂点(δ=0°)から離れた粗塑性変形区間では角度δに対してレリーフ量Rが直線的に変化するアルキメデス曲線形状とされているが、頂点に近い仕上げ塑性変形区間では突出部の形状が角度δに対して二次曲線に従って変化するように形成されており、加工負荷が大きい頂点付近ではレリーフ量Rの変化が小さくなるため、盛上げ加工が円滑に行なわれるようになって、突出部の耐久性(摩耗や損傷など)を損なうことなく摩擦トルクや発熱が低減される。
このように本発明の盛上げタップによれば、マージン区間の縮小および突出部の特殊形状により、突出部の耐久性(摩耗や損傷など)を損なうことなく摩擦トルクや発熱が低減されるため、高速加工や低潤滑性油剤等の溶着を生じ易い条件でめねじを盛上げ加工する場合でも、溶着の発生や突出部の摩耗、損傷が抑制されて工具寿命が向上する。また、展延性の良い低炭素鋼に限らず、盛上げタップ加工が困難であった比較的硬い高炭素鋼や合金鋼(30HRC程度以上)などの材料への適用が可能になる。
第3発明では、変曲点角度θが0°<θ≦4°で且つマージンが存在する場合にはそのマージンよりも外側の範囲内で定められ、逃げ角α1は2°≦α1≦12°の範囲内で定められている一方、仕上げ塑性変形区間では変曲点角度θへ向かうに従って逃げ角αが徐々に大きくなり、その変曲点角度θ付近で逃げ角α1となって粗塑性変形区間に滑らかに接続されているため、盛上げ加工が一層円滑に行なわれるようになり、突出部の耐久性(摩耗や損傷など)を損なうことなく摩擦トルクや発熱を適切に低減することができる。
第4発明では、突出部が頂点を挟んで対称形状を成しているため、全体としてマージン区間が2°以下になり、被加工物との接触面積が小さくなって摩擦トルクや発熱が適切に低減されるとともに、加工側と別個に逃げ側の形状を設定する場合に比較して設計が容易で簡単且つ安価に構成される。
本発明の一実施例である盛上げタップを説明する図で、(a) は正面図、(b) は(a) におけるIB−IB断面の拡大図、(c) は(b) における突出部の頂点付近を更に拡大して示した図である。 図1の実施例の突出部の頂点付近のレリーフ量Rを角度δをパラメータとして示した図である。 図1の実施例における突出部の頂点付近の形状の設定手順を説明する図である。 本発明品、比較品、および従来品をそれぞれ2本ずつ用いて耐久性試験を行なった結果を説明する図で、(a) は突出部の形状を比較して示した図、(b) は工具寿命までの加工穴数を比較して示した図である。 本発明品、比較品、および従来品をそれぞれ2本ずつ用いて耐久性試験を行ない、(a) は工具寿命までの加工穴数を比較して示した図で、(b) は本発明品および従来品のタッピングトルクの測定結果を比較して示した図である。
本発明の盛上げタップは、被加工物に設けられた下穴内に食付き部側からねじ込まれることにより、前記突出部がその下穴の内壁表層部に食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するように用いられる。下穴を加工するドリルやリーマ等をタップの先端側に一体的に設けることもできるし、めねじの内径を仕上げるための内径仕上げ刃を一体に設けることもできるなど、種々の態様が可能である。
盛上げタップは、複数の突出部が軸心と平行に連続するように、軸心まわりに等間隔で3列以上設けられることが望ましいが、各列の突出部を軸心まわりにねじれた螺旋状に連続するように設けることもできるし、軸心まわりに不等間隔で設けることもできるなど、種々の態様が可能である。必要に応じて、切削油剤を供給する油溝等がおねじを分断するように軸方向に設けられても良い。
盛上げタップは切りくずを発生しないため、止り穴に対しても通り穴に対しても良好にタッピングを行なってめねじを形成することができる。本発明によれば、高速加工や低潤滑性油剤(水溶性潤滑油剤など)等の溶着を生じ易い条件でめねじを盛上げ加工する場合でも、突出部の耐久性を損なうことなく摩擦トルクや発熱が低減されて溶着が抑制され、工具寿命が向上するが、低速で盛上げ加工を行なったり、不水溶性等の比較的潤滑性能の高い潤滑油剤を用いて盛上げ加工を行なったりしても良いことは勿論である。
突出部の頂点の径寸法と等しい径寸法のマージン区間を0とし、角度δ=0°から二次曲線形状とすることが望ましいが、角度δが1°以下の範囲でマージンが存在しても良い。マージンは小さい方が望ましい。なお、このようなおねじの突出部形状は、例えばおねじを研削加工する研削砥石とタップ素材との距離をカム等によりコントロールすることによって形成できるが、本発明はおねじの突出部形状に関するもので、その製造方法は特に限定されず、研削砥石以外の製作技術で盛上げタップのおねじを形成する場合にも本発明は適用され得る。
突出部の形状が角度δに対して二次曲線に従って変化させられる仕上げ塑性変形区間のレリーフ量Rは、例えば角度δ=0°或いはマージン区間の外端でレリーフ量Rが極小(=0)となり、角度δが増加するに従って二次関数的に増大するように定められる。このような二次曲線ではまた、逃げ角αが連続的に大きくなり、変曲点角度θにおいて粗塑性変形区間の逃げ角α1と略同じ逃げ角になるように設定することが望ましい。すなわち、例えば0.1°〜α1の間で逃げ角αが連続的に変化するように突出部の二次曲線を設定することが望ましい。突出部の形状を二次曲線に従って変化させたり、突出部の形状をアルキメデス曲線に従って変化させたりすることは、厳密に幾何学的に二次曲線やアルキメデス曲線である必要はなく、研削砥石による研削加工時の加工誤差などで多少の誤差があっても良い。言い換えれば、研削砥石の接近離間パターン等によって定まる突出部の目標形状が二次曲線やアルキメデス曲線であれば良い。
二次曲線やアルキメデス曲線に基づいて定められる突出部の形状は、その径寸法変化(レリーフ量Rの変化)に対応して製作されたカムにより、研削砥石を機械的にタップ素材に対して相対的に接近離間させて形成することができるが、NC制御等により電気信号で接近離間させることもできる。おねじの加工は、一般に溝部分の溝研削加工と山頂の外周研削加工とが別々に行なわれ、本発明の突出部形状は、溝研削加工によって形成されるフランクおよび外周研削加工によって形成される山頂の何れか一方だけでも良いが、その両方が本発明の突出部形状とされることが望ましい。特に、被加工物に食い込んで摩擦トルクや発熱に大きく関与するフランクの外周縁近傍(山頂付近)の形状が本発明の突出部形状を満たすようにすることが望ましい。突出部形状は、例えば触針式表面粗さ測定器等を用いて測定することができる。
第3発明では、変曲点角度θが0°<θ≦4°の範囲内で設定され、逃げ角α1が2°≦α1≦12°の範囲内で設定されるが、変曲点角度θは1°≦θ≦3°程度の範囲内が更に望ましく、逃げ角α1は4°≦α1≦8°程度の範囲内が更に望ましい。第1発明の実施に際しては、例えばおねじの呼び径や被加工物の硬さ等に応じて、上記範囲を超えて変曲点角度θや逃げ角α1を設定することも可能である。
第4発明では、角度δ=0°の突出部の頂点を挟んで盛上げ加工側と反対の逃げ側の形状も、その盛上げ加工側と対称的に構成されているが、逃げ側は盛上げ加工に殆ど関与しないため、被加工物の弾性による接触を考慮して例えば突出部頂点(δ=0°)から変曲点角度θを超えて突出部の形状を二次曲線に従って変化させたり、突出部頂点(δ=0°)から直接アルキメデス曲線に従って変化させたりするなど、盛上げ加工側とは別個に突出部の形状を適宜設定することが可能である。
本発明は、少なくとも食付き部における突出部の形状を二次曲線およびアルキメデス曲線に基づいて規定するもので、完全山部における突出部の形状については、食付き部とは別個に適宜設定することが可能である。例えば、食付き部と同様に二次曲線およびアルキメデス曲線に基づいて規定することもできるが、二次曲線のみ或いはアルキメデス曲線のみに基づいて規定することもできるし、他の形状を採用することもできる。なお、完全山部の最先端に位置して盛上げ加工に関与する第1完全山は食付き部に属する。
第1発明〜第5発明の何れかの盛上げタップにおける前記突出部の形状の設定方法は、例えば(a) 前記変曲点角度θ、その変曲点角度θにおけるレリーフ量Rc、および前記粗塑性変形区間における前記逃げ角α1をそれぞれ決定する工程と、(b) 前記変曲点角度θで前記レリーフ量Rが前記レリーフ量Rcとなり且つ逃げ角αが前記逃げ角α1となるように前記仕上げ塑性変形区間の二次曲線を決定する工程と、を有して構成される。
変曲点角度θや逃げ角α1は、例えばおねじの呼び径および被加工物の硬さを考慮して設定される。例えば、呼び径が大きい場合は小さい場合に比較して変曲点角度θは小さくされ、逃げ角α1は大きくされる。また、被加工物の硬さが高い場合は低い場合に比較して変速点角度θは小さくされ、逃げ角α1は大きくされる。
一定の逃げ角α1のアルキメデス曲線に従って形状が定められる粗塑性変形区間のレリーフ量Rは、変曲点角度θにおけるレリーフ量Rc、およびおねじの呼び径Dを用いて次式(1) で表すことができる。
R={D×π×(δ−θ)/360}×tanα1+Rc ・・・(1)
本発明の盛上げタップは、例えば超硬合金や高速度工具鋼等の工具材料にて構成される。また、必要に応じてTiNやTiCN、TiAlN、CrN等の化合物被膜やDLC(Diamond Like Carbon ;ダイヤモンド状カーボン)膜、ダイヤモンド被膜等の硬質被膜をコーティングしたり、水蒸気処理、窒化処理等を施したりすることもできる。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である盛上げタップ10を説明する図で、この盛上げタップ10は、呼び:M10×1.5の右ねじ、ローブ数:8、食付き勾配角:10°で構成しており、材質は高速度工具鋼にて構成されているとともに、表面には硬質被膜としてTiCN膜がコーティングされている。図1の(a) は工具中心線Oと直角方向から見た正面図、(b) は(a) におけるIB−IB断面の拡大図、(c) は(b) における突出部18の頂点(δ=0°)付近の形状を更に拡大して示した図である。この盛上げタップ10は、めねじを加工するためのもので、図示しないチャックを介して主軸に取り付けられるシャンク12と、下穴内にねじ込まれることによりめねじを形成する加工部14とを同軸上に一体に備えている。
加工部14は、外側へ湾曲した辺からなる多角柱形状、本実施例では略八角柱形状の断面を成しているとともに、その外周面には、被加工物の下穴の表層部に食い込んで塑性変形させることによりめねじを盛上げ加工するおねじ16が設けられている。おねじ16のねじ山は、形成すべきめねじの溝の形状に対応した断面形状を成しており、そのめねじに対応するリード角のつる巻き線に沿って設けられている。すなわち、加工部14には、おねじ16のねじ山が径方向の外側へ突き出してめねじを加工する8箇所の突出部18と、その突出部18よりも小径の8箇所の逃げ部20とが、それぞれ工具中心線Oと平行に軸方向へ連なるように、工具中心線Oまわりにおいて交互に且つ等角度間隔で設けられているのである。突出部18の頂点部分の外径は、形成すべきめねじの谷径と同じ寸法か、或いは塑性変形に対する弾性復帰を考慮して、めねじよりも大き目に設定される。また、この加工部14は、軸方向においてねじ山の径寸法が一定の完全山部22と、工具先端側へ向かうに従って径寸法が小さくなる食付き部24とを備えている。食付き部24では、外径だけでなく有効および谷径を含むねじ山全体が工具先端側へ向かうに従って小径とされている。先端の突出部18の外径寸法は、タップ加工前の下穴径と略等しいか小さめに設定される。なお、図1の(b) は、おねじ16の溝の谷底においてつる巻き線に沿って切断した時の1リード分の外径および谷径を示す断面である。
図1の(c) は、図1の(b) における突出部18の頂点付近の形状の拡大図である。すなわち、径寸法が最大の突出部頂点(ローブトップ)を0°として工具中心線Oまわりの角度をδとした場合に、盛上げ加工時の回転方向である盛上げ加工側(図1(c) における右まわり方向)、および反対の逃げ側へ、それぞれδ=±6°程度の範囲を示した図である。本実施例では、突出部18の頂点である角度δ=0°を中心として加工側および逃げ側の形状が対称形状とされている。また、従来は、図1(c) において点線で示すように、角度δ=±2°程度の範囲で径寸法が最大径で一定のマージンを備えていたが、実線で示す本実施例ではマージンが略0(角度δが10′程度以下)である。図1の(b) および(c) は食付き部24における形状であるが、完全山部22も突出部18および逃げ部20を有して食付き部24と同様に構成されている。図1(c) は、ねじ山の山頂の形状であるが、フランクも工具中心線Oまわりにおいて山頂と同様に変化しており、フランクの山頂付近は山頂と同一形状と見做すことができる。また、図1(c) に一点鎖線で示す円弧rは、突出部18の頂点(δ=0°)と同じ径寸法の円弧である。
図2は、上記突出部18の頂点付近の形状を更に具体的に説明する図で、頂点(δ=0°)から加工側に関するものであり、頂点(δ=0°)からの角度δと、頂点(δ=0°)における径寸法からの後退量であるレリーフ量Rとの関係を示す図である。言い換えれば、突出部18の頂点付近を工具中心線Oまわりに展開した展開図に相当し、前記図1の(c) において円弧rと本実施例を表す実線との間の径方法の間隔はレリーフ量Rである。図2において、角度δが予め定められた変曲点角度θ以下の仕上げ塑性変形区間では、頂点(δ=0°)から変曲点角度θ側へ向かうに従ってレリーフ量Rが二次関数的に増加するように、突出部18の形状が角度δに対して二次曲線に従って変化させられている。角度δが変曲点角度θを超えた粗塑性変形区間では、レリーフ量Rが角度δに対して直線的に増加するように、突出部18の形状が一定の逃げ角α1のアルキメデス曲線に従って変化させられている。変曲点角度θは0°<θ≦4°の範囲内で本実施例ではθ=2°であり、逃げ角α1は2°≦α1≦12°の範囲内で本実施例ではα1=6°である。また、本実施例では1ローブ当りの転造量すなわち一つの突出部18の食い込み代が約0.033mmで、レリーフ量R<0.033の領域が加工領域であり、上記変曲点角度θは加工領域内(角度δが約3.3°以下)で設定されるとともに、粗塑性変形区間は加工領域を超えて例えば角度δ=6°程度までの範囲に設定されている。なお、この粗塑性変形区間よりも外側の逃げ部20については、例えば一定の径寸法で形成するなど適宜定められる。
上記仕上げ塑性変形区間の突出部18の二次曲線形状は、レリーフ量Rの変化を表す図2においても二次曲線となり、逃げ角αが徐々に大きくなって変曲点角度θ付近で粗塑性変形区間の逃げ角α1となるように定められており、変曲点角度θ付近の所定の範囲に設けられた接合部を介して粗塑性変形区間の直線に滑らかに接続されている。具体的には、例えば角度δ=0°の頂点では逃げ角α=0.1°程度で、角度δ=θの変曲点角度で逃げ角α=α1となるように定められる。θ=2°でα1=6°の本実施例では、仕上げ塑性変形区間のレリーフ量Rは、例えば次式(2) で示す二次曲線のように設定される。なお、上記接合部は、角度δが例えば30′程度以下の範囲で定められる。
R=0.00196×δ2 +0.00448×δ ・・・(2)
また、粗塑性変形区間のレリーフ量Rは、上記二次曲線によって規定される変曲点角度θにおけるレリーフ量Rcを用いて、前記(1) 式で表される。本実施例ではおねじ16の呼び径D=10mmで、変曲点角度θ=2°、逃げ角α1=6°であることから、次式(3) となる。
R={10×π×(δ−2)/360}×tan6°
+0.00196×22 +0.00448×2 ・・・(3)
このような突出部18の頂点付近の形状は、上記図2のように角度δに対するレリーフ量Rの変化を基準にして定められ、例えば図3に示す手順に従って設定される。すなわち、先ずステップS1で変曲点角度θを決定する。この変曲点角度θは、0°<θ≦4°の範囲内で且つ加工領域内に入ることを条件として、例えば呼び径Dおよび被加工物の硬さを考慮して設定され、呼び径Dが大きい場合は小さい場合に比較して小さくされ、被加工物の硬さが高い場合は低い場合に比較して小さくされる。ステップS2では、上記変曲点角度θにおけるレリーフ量Rcを決定する。このレリーフ量Rcは、例えばローブ数と食付き部24の長さなどにより算出された1山当りの盛上げ量よりも小さく定められる。ステップS3では、粗塑性変形区間における逃げ角α1、すなわち図2におけるレリーフ量Rの勾配を決定する。この逃げ角α1は、2°≦α1≦12°の範囲内に入ることを条件として、例えば呼び径Dおよび被加工物の硬さを考慮して設定され、呼び径Dが大きい場合は小さい場合に比較して大きくされ、被加工物の硬さが高い場合は低い場合に比較して大きくされる。ステップS4では、上記変曲点角度θでレリーフ量Rが上記レリーフ量Rcとなり且つ逃げ角αが上記逃げ角α1となるように、仕上げ塑性変形区間の二次曲線を決定する。
そして、以上のように設定された形状の突出部18は、例えばその径寸法変化(レリーフ量Rの変化)に対応して製作されたカムにより、研削砥石を機械的にタップ素材に対して相対的に接近離間させることにより形成することができる。おねじ16の加工は、一般に溝部分の溝研削加工と山頂の外周研削加工とが別々に行なわれるが、本実施例では、溝研削加工によって形成されるフランクおよび外周研削加工によって形成される山頂が、何れも上記レリーフ形状となるように形成される。
このような盛上げタップ10においては、突出部18の頂点よりも盛上げ加工側の形状に関し、マージン区間が略0とされているため、盛上げ加工時の被加工物との接触面積が小さくなり、摩擦トルクや発熱が低減される。また、盛上げ加工に関与する突出部18の頂点付近には仕上げ塑性変形区間および粗塑性変形区間が設けられ、突出部頂点(δ=0°)から離れた粗塑性変形区間では角度δに対してレリーフ量Rが直線的に変化するアルキメデス曲線形状とされているが、頂点に近い仕上げ塑性変形区間では突出部18の形状が二次曲線に従って変化するように形成されており、加工負荷が大きい頂点付近ではレリーフ量Rの変化が小さくなるため、盛上げ加工が円滑に行なわれるようになって、突出部18の耐久性(摩耗や損傷など)を損なうことなく摩擦トルクや発熱が低減される。
このように本実施例の盛上げタップ10によれば、マージン区間の縮小および突出部18の特殊形状により、突出部18の耐久性(摩耗や損傷など)を損なうことなく摩擦トルクや発熱が低減されるため、高速加工や低潤滑性油剤(例えば塩素系極圧剤を含まない水溶性油剤)等の溶着を生じ易い条件でめねじを盛上げ加工する場合でも、溶着の発生や突出部18の摩耗、損傷が抑制されて工具寿命が向上する。また、展延性の良い低炭素鋼に限らず、盛上げタップ加工が困難であった比較的硬い高炭素鋼や合金鋼(30HRC程度以上)などの材料への適用が可能になった。
また、本実施例では変曲点角度θが0°<θ≦4°の範囲内で定められ、逃げ角α1が2°≦α1≦12°の範囲内で定められている一方、仕上げ塑性変形区間では変曲点角度θへ向かうに従って逃げ角αが徐々に大きくなり、その変曲点角度θ付近で逃げ角α1となって粗塑性変形区間に滑らかに接続されているため、盛上げ加工が一層円滑に行なわれるようになり、突出部18の耐久性(摩耗や損傷など)を損なうことなく摩擦トルクや発熱を適切に低減することができる。
また、本実施例では突出部18が頂点(δ=0°)を挟んで対称形状を成しているため、全体としてマージン区間が略0となり、被加工物との接触面積が小さくなって摩擦トルクや発熱が適切に低減されるとともに、加工側と別個に逃げ側の形状を設定する場合に比較して設計が容易で簡単且つ安価に構成される。
因に、図4の(a) に示すように突出部18の頂点付近の形状が相違する本発明品、従来品、および比較品をそれぞれ2本ずつ用意し、以下の加工条件でめねじのタップ立て加工を行なって耐久性(加工穴数)を調べたところ、図4(b) に示す結果が得られた。本発明品はマージンが略0の前記実施例の盛上げタップ10と同じもので、従来品は、突出部頂点(δ=0°)の両側の計4°程度の範囲にマージンを有するとともに、マージンの外側は前記仕上げ塑性変形区間と同様に二次曲線に従って変化するように突出部形状が定められている。比較品は、マージンが略0で、突出部18の頂点近傍には前記仕上げ塑性変形区間および粗塑性変形区間が設けられているが、それ等の境界である変曲点角度θ=6°、粗塑性変形区間の逃げ角α1=6°の場合である。この比較品は、請求の範囲第1項に記載の発明品に含まれる。図4の(a) は、前記図1の(c) に比較品を追加したものである。
《加工条件》
・呼び:M10×1.5
・被加工物材質:SCM440(JISの規定によるクロムモリブデン鋼)
・被加工物硬さ:29〜31HRC
・下穴径:9.25mm
・下穴深さ:19mm(通り)
・ねじ立て長さ:19mm
・切削速度:15m/min
・回転数:477min-1
・送り機構:シンクロ
・潤滑油剤:水溶性(10倍希釈)
・注油方式:外部
図4の(b) において、従来品の工具寿命は2穴であったのに対し、本発明品の工具寿命は約1400穴、比較品の工具寿命は560穴であった。本発明品および比較品によれば工具寿命が大幅に向上する。特に、変曲点角度θ=2°の本発明品は、変曲点角度θ=6°の比較品に比べても2倍以上の耐久性が得られる。また、本発明品は、「GP−OUT」すなわち通りねじプラグゲージ(GP)がめねじを通り抜けなくなったことにより寿命となっており、前記おねじ16の突出部18の摩耗等によりめねじの径寸法が規定寸法に達しなくなったが、比較品および従来品は溶着により加工不可になっており、単に突出部18の頂点近傍に仕上げ塑性変形区間(二次曲線形状の区間)および粗塑性変形区間(アルキメデス曲線形状の区間)を設けるだけでなく、それ等の境界である変曲点角度θが4°以下(試験品はθ=2°)にされることにより溶着が適切に抑制されることが分かる。
図5は、同じく本発明品、比較品、および従来品をそれぞれ2本ずつ用意し、以下の加工条件でめねじのタップ立て加工を行なって耐久性を調べるとともに、本発明品および従来品のタッピングトルクを測定した場合で、(a) は耐久性(加工穴数)、(b) はタッピングトルクの代表例を示す図である。この場合の試験品は何れも呼びがM8×1.25で、本発明品および従来品の突出部18の頂点近傍の形状は前記図4の(a) と同じである。すなわち、本発明品は、仕上げ塑性変形区間および粗塑性変形区間を有するとともに、それ等の境界である変曲点角度θ=2°、粗塑性変形区間の逃げ角α1=6°である。また、従来品は、突出部頂点(δ=0°)の両側の計4°程度の範囲にマージンを有するとともに、マージンの外側は前記仕上げ塑性変形区間と同様に突出部形状が二次曲線に従って変化している。一方、比較品は、マージンが略0であるが、突出部形状が二次曲線で変化する仕上げ塑性変形区間を備えておらず、突出部頂点(角度δ=0°)から直接アルキメデス曲線形状の粗塑性変形区間(逃げ角α1=6°)が両側に設けられている。
《加工条件》
・呼び:M8×1.25
・被加工物材質:SCM440(JISの規定によるクロムモリブデン鋼)
・被加工物硬さ:29〜31HRC
・下穴径:7.4mm
・下穴深さ:20mm(通り)
・ねじ立て長さ:16mm
・切削速度:15m/min
・回転数:600min-1
・送り機構:タッパー(シンクロ送り無し)
・潤滑油剤:水溶性(10倍希釈)
・注油方式:外部
図5の(a) において、従来品の工具寿命は100穴以下であり、比較品の工具寿命は1000穴前後であったのに対し、本発明品の工具寿命は6000穴以上で、このように本発明品によれば工具寿命が大幅に向上する。また、従来品の耐久限界理由は溶着により加工不可となったのに対し、本発明品および比較品は「GP−OUT」、すなわち通りねじプラグゲージ(GP)がめねじを通り抜けなくなって寿命となっており、前記おねじ16の突出部18の摩耗等によりめねじの径寸法が規定寸法に達しなくなったことによる。突出部頂点(角度δ=0°)から直接アルキメデス曲線形状で形成されている比較品は、被加工物との接触面積が小さくなって溶着が適切に抑制されるものの、突出部18の特に頂点付近の耐久性(摩耗や損傷など)が損なわれ、十分な工具寿命が得られない。このため、突出部18の頂点付近には二次曲線形状の仕上げ塑性変形区間を設ける必要がある。
図5の(b) は、本発明品と従来品の盛上げ加工時におけるタッピングトルクを比較して示した図で、本発明品は約10N・mであるのに対して従来品は約17N・mであり、本発明品によれば従来品に比較してタッピングトルクが約40%低減される。このタッピングトルクの低下により発熱や溶着が抑制されて耐久性が向上する。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:盛上げタップ 16:おねじ 18:突出部 20:逃げ部 22:完全山部 24:食付き部 O:工具中心線 δ:突出部頂点からの角度 θ:変曲点角度 α1:粗塑性変形区間の逃げ角

Claims (5)

  1. 完全山部と、該完全山部に連続して設けられ且つ先端に向かう程小径となる食付き部とを有するとともに、それ等の完全山部および食付き部には突出部と逃げ部とが交互に形成されたおねじが設けられている盛上げタップにおいて、
    前記食付き部における前記突出部の工具中心線Oまわりの形状に関し、径寸法が最大の該突出部の頂点よりも少なくとも盛上げ加工側であって、且つ被加工物に食い込んで盛上げ加工を行なう加工領域を含む範囲において、前記頂点を0°として前記工具中心線Oまわりの盛上げ加工側への角度をδとした時、
    前記角度δが前記加工領域内で予め定められた変曲点角度θ以下の仕上げ塑性変形区間では、該角度δ=0°の前記頂点における径寸法からの後退量であるレリーフ量Rが、該変曲点角度θ側へ向かうに従って増加するように、前記突出部の形状が該角度δに対して二次曲線に従って変化するように定められている一方、
    前記角度δが前記変曲点角度θよりも大きく且つ前記加工領域を超えるように定められた粗塑性変形区間では、前記レリーフ量Rが該角度δに対して直線的に増加するように、前記突出部の形状が一定の逃げ角α1のアルキメデス曲線に従って変化するように定められており、
    且つ、前記頂点の径寸法と等しい径寸法のマージン区間は略0か、或いは前記角度δが1°以下の範囲内とされている
    ことを特徴とする盛上げタップ。
  2. 前記仕上げ塑性変形区間は、前記マージンが無ければ前記角度δ=0°の前記頂点から前記変曲点角度θまでの範囲で、前記マージンが存在する場合は該マージンの外端から該変曲点角度θまでの範囲である
    ことを特徴とする請求項1に記載の盛上げタップ。
  3. 前記変曲点角度θは0°<θ≦4°で且つ前記マージンが存在する場合には該マージンよりも外側の範囲内で定められ、
    前記逃げ角α1は2°≦α1≦12°の範囲内で定められ、
    前記仕上げ塑性変形区間では、前記変曲点角度θへ向かうに従って逃げ角αが徐々に大きくなり、該変曲点角度θ付近で前記逃げ角α1となって前記粗塑性変形区間に滑らかに接続されている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の盛上げタップ。
  4. 前記角度δ=0°の前記頂点を挟んで前記盛上げ加工側と反対の逃げ側の形状は、該盛上げ加工側と対称的に変化している
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の盛上げタップ。
  5. 前記仕上げ塑性変形区間および前記粗塑性変形区間を有する前記突出部の形状は、該突出部における前記おねじのフランクおよび山頂の何れか一方または両方の部位の形状である
    ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の盛上げタップ。
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