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JP5458276B2 - 内燃機関の点火方法 - Google Patents
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JP5458276B2 - 内燃機関の点火方法 - Google Patents

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本発明は、少ないエネルギーで点火可能な内燃機関の点火方法に関する。
内燃機関は、燃焼室内部で燃料を燃焼させて動力を取り出す機械で、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する熱機関の一種に分類されるものであり、例えばピストンエンジンがこれにあたる。ピストンエンジンの一種であるガソリンエンジンは、ガソリン機関とも呼ばれ、可燃性ガスであるガソリンと空気の混合気をピストンで圧縮した後に点火、燃焼、及び膨張させることによってピストンを往復運動させる内燃機関である。
ガソリンエンジンの燃焼は、通常、ガソリンを含む混合気に、スパーク放電により点火(着火)させる役割を有する点火プラグを用いて開始される。可燃性ガスの点火には、このスパーク放電が主として用いられている。スパーク放電は、簡便な放電回路を用いて点火可能である点において優れている。しかしながら、放電領域が点火プラグの電極近傍に限られるため、電極直近の熱伝導で熱が奪われる領域において火炎の核形成が行われる。リーン運転や希釈運転時には、火炎の核形成領域が更に小さくなるため、点火後、火炎伝播するまでに失火してしまう場合が多いという不都合がある。
自動車用ガソリンエンジンにおいては、このような不都合を回避すべく、イリジウム等耐久性の高い材料を放電電極とすることにより電極体積を最小に抑え、電極による吸熱及び放熱を小さくして火炎の冷却を防いでいる。また、火炎伝播を確実にすべく、スパーク放電のために大きなエネルギーを付与し、放電を維持させる試みもなされている。
但し、点火プラグから大きな電流を流す必要があるため、蓄電容量を大きくする必要がある。このため、蓄電するのに約1msもの時間を必要としている。また、気流の影響によって、混合気の濃度が点火プラグの放電部近傍において変化する場合がある。このため、放電部近傍における混合気が点火時に希薄状態となっているような場合には、失火するおそれがあった。これらの問題を解消すべく、点火の度にスパーク放電を複数回行い、点火を確実にする試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。一方、火炎伝播そのものを助長する試みも行われている。例えば、レーザーを用いる点火方式(例えば、特許文献2参照)や、高いパルス電圧を印加して大きな電流を流さずに放電点火させる試みがなされている。
特開2004−79458号公報 特表平8−505676号公報
従来のガソリンエンジンにおける空気対燃料質量比(空燃比、A/F)は、ほぼ14.7であり、酸素と燃料が過不足なく燃焼する理論空燃比に近いものであった。従って、発生する三種類の有害ガス(炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物)を除去する三元触媒を機能させるためには、酸素リッチのリーンバーン(希薄燃焼)を採用することは困難であった。ところが、近時開発される自動車に対しては、地球温暖化防止のために燃費の向上、及び排出される二酸化炭素(CO2)量の低減が要求されており、これらの要求を満足すべくリーンバーンエンジンが再び注目されつつある。
一方、発生する三種類の有害ガス(炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物)を除去するためには三元触媒が必要であり、三元触媒を機能させるためには理論空燃比近傍の酸素分圧の低い排ガス組成が必須である。したがって従来の空燃比が十分大きくないリーンバーン(希薄燃焼)運転では燃焼温度がまだ高いため窒素酸化物が発生し、酸素リッチであるため三元触媒だけで還元することができず、燃費が向上し難いとともに、酸化雰囲気で使用可能な触媒を過剰に搭載しなければならないためにコスト高になるという問題もあり、リーンバーン(希薄燃焼)エンジンを採用することは困難であった。
しかしながら、空燃比を十分高め(当量比を十分に下げ)、燃焼温度を大きく下げることができれば、燃費の向上のみならず、窒素酸化物の発生を抑制することができ、還元触媒が不要になるため、高トルク・高回転で用いる理論空燃比近傍混合気燃焼排ガス浄化用三元触媒の搭載だけで済み、コスト低減にもなる。
従来のアーク放電点火では、混合気の流れを強力にスワール又はタンブルさせ、主として火炎伝播を工夫することで混合気を燃焼させていた。即ち、混合気の温度を高めて燃焼の立ち消えを防止せざるを得ないために、火炎が高温となってしまい、窒素酸化物が多量に発生してしまうという問題があった。
また、アーク放電点火では、アーク放電の寸前にわずかな放電でガスの活性化を行う。しかしながら、パルスの立ち上がりが遅いために十分な活性状態には至らない場合がほとんどであり、その効果はほとんど無視できるレベルであった。このため、電流を如何に多く流せるかによって、アーク放電による点火が支配されると考えられている。また、特許文献1で開示されたような、点火の度にスパーク放電を複数回行う方式によれば、アーク放電の電流を供給する充電のために平均で約1msもの時間を必要としていた。このため、点火最適時点で2回以上のアーク放電を繰り返し行うことは極めて困難であった。また、アーク放電点火では電流値が大きいため、点火プラグの放電電極の消耗も激しかった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、通常のスパーク放電に比して少ないエネルギーで点火可能であり、点火プラグの放電電極の消耗が少なく、燃費が向上し、排出される窒素酸化物及び二酸化炭素(CO2)量が少ない内燃機関の点火方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成とすることによって上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す内燃機関の点火方法が提供される。
[1]大気圧以上の正圧下、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、下記条件(1)を満たすパルスストリーマ放電を100μs以下の間隔で複数回繰り返し引き起こしてバースト発生させ、前記パルスストリーマ放電のバースト発生により前記可燃性気体に点火する内燃機関の点火方法(以下、「第一の点火方法」ともいう)。
[条件(1)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて2番目の第2変曲点から3番目の第3変曲点までの間に発生するパルス放電。
[2]前記パルスストリーマ放電を引き起こす前に、ファインパルスストリーマ放電及び/又はグロー放電を引き起こし、前記ファインパルスストリーマ放電が下記条件(2)を満たす前記[1]に記載の内燃機関の点火方法。
[条件(2)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて1番目の第1変曲点から2番目の第2変曲点までの間に発生するパルス放電。
[3]大気圧以上の正圧下、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、下記条件(2)を満たすファインパルスストリーマ放電を100μs以下の間隔で繰り返し引き起こし、バースト発生させ、前記ファインパルスストリーマ放電のバースト発生により前記可燃性気体に点火する内燃機関の点火方法(以下、「第二の点火方法」ともいう)。
[条件(2)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて1番目の第1変曲点から2番目の第2変曲点までの間に発生するパルス放電。
[4]大気圧以上の正圧下、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、下記条件(2)を満たす1回以上のファインパルスストリーマ放電と、前記ファインパルスストリーマ放電に続く下記条件(1)を満たす複数回のパルスストリーマ放電との組み合わせを1組以上引き起こし、バースト発生させる内燃機関の点火方法(以下、「第四の点火方法」ともいう)。
[条件(1)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて2番目の第2変曲点から3番目の第3変曲点までの間に発生するパルス放電。
[条件(2)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて1番目の第1変曲点から2番目の第2変曲点までの間に発生するパルス放電。
[5]前記パルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が3〜15kV/mmであるとともに、前記パルスストリーマ放電の立ち上がり時における電圧上昇率(dV/dt)が50kV/μs以上である前記[1]、[2]、及び[4]のいずれかに記載の内燃機関の点火方法。
[6]前記パルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が5〜10kV/mmである前記[5]に記載の内燃機関の点火方法。
[7]前記パルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が7〜10kV/mmである前記[5]に記載の内燃機関の点火方法。
[8]前記ファインパルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が5〜13kV/mmである前記[2]〜[5]のいずれかに記載の内燃機関の点火方法。
[9]前記ファインパルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が7〜13kV/mmである前記[8]に記載の内燃機関の点火方法。
[10]前記ファインパルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が7〜11kV/mmである前記[8]に記載の内燃機関の点火方法。
[11]静電誘導型サイリスタをスイッチングデバイスとするパルス電源により電気パルスを発生させて放電させる前記[1]〜[10]のいずれかに記載の内燃機関の点火方法。
[12]前記パルス電源が、誘導エネルギー蓄積型電源回路である前記[11]に記載の内燃機関の点火方法。
[13]前記パルス電源を用いて発生させる電気パルスの電圧を、誘導エネルギー蓄積時間により制御する前記[11]又は[12]に記載の内燃機関の点火方法。
[14]前記パルス電源を用いて発生させる電気パルスの、電圧、間隔、回数、及びこれらの組み合わせを、エンジン制御ユニット(ECU)により制御する前記[11]〜[13]のいずれかに記載の内燃機関の点火方法。
[15]前記可燃性物質が、メタン、プロパン、ガソリン、軽油、植物由来燃料、水素、及び合成化学燃料からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]〜[14]のいずれかに記載の内燃機関の点火方法。
[16]前記支燃性ガスが、空気及び/又は酸素であるとともに、窒素、二酸化炭素、及び燃焼排ガスからなる群より選択される少なくとも一種の希釈ガスが前記可燃性気体に含まれる前記[1]〜[15]のいずれかに記載の内燃機関の点火方法。
本発明の内燃機関の点火方法は、通常のスパーク放電に比して少ないエネルギーで点火可能であり、点火プラグの放電電極の消耗が少なく、燃費が向上し、排出される窒素酸化物及び二酸化炭素(CO2)量が少ないといった効果を奏する。
本発明の第一の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。 本発明の第一の点火方法の他の実施形態を模式的に示す概念図である。 本発明の第二の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。 本発明の第三の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。 本発明の第四の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。 IES回路の構成を示す回路図である。 IES回路の動作を示す模式図である。 放電の状態を示す模式図である。 ピーク電界強度とピーク電流密度の関係を示すグラフである。 パルスストリーマ放電発生時における、ピーク電界強度とピーク電流密度の経時変化を示すグラフである。 アーク放電発生時における、ピーク電界強度とピーク電流密度の経時変化を示すグラフである。 パルス電源とプラグの電極対との第1の電気的な接続の形態を示す模式図である。 パルス電源とプラグの電極対との第2の電気的な接続の形態を示す模式図である。 パルス電源とプラグの電極対との第2の電気的な接続の形態を示す模式図である。 空燃比(A/F)に対してIMEP変動率(%)をプロットしたグラフである。
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
[1]内燃機関の点火方法:
[1−1]第一の点火方法:
図1は、本発明の第一の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。第一の点火方法においては、大気圧以上の正圧下(例えば1MPa以下)、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、パルスストリーマ放電PSを100μs以下の間隔で複数回繰り返し引き起こしてバースト発生させ、内燃機関に点火する。なお、図1〜図5中、「T」は点火間隔(ms)を示す。例えば、内燃機関が回転数N(rpm)のエンジンである場合、点火間隔T=(1000/N)×2×60=120000/N(ms)と算出することができる。
パルスストリーマ放電は、下記条件(1)を満たす非平衡放電である。内燃機関の燃焼室内において対向配置された電極間に電気パルス(パルス電圧)を印加してパルスストリーマ放電を所定の間隔で繰り返し引き起こすことにより、高エネルギー電子を効率的に発生させ、可燃性気体である混合気を励起させることができるとともに、活性種ラジカルの発生を促進させることができる。
[条件(1)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、ピーク電界強度とピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて2番目の第2変曲点から3番目の第3変曲点までの間に発生するパルス放電。
第一の点火方法における複数回のパルスストリーマ放電どうしの間隔は、100μs以下であり、好ましくは10〜90μs、更に好ましくは30〜50μsである。エネルギー注入が不足する、或いはパルスストリーマ放電どうしの間隔が10μs未満であると、ミスアーク電流通電時にパルス電源破壊が生ずる場合がある。
図2は、本発明の第一の点火方法の他の実施形態を模式的に示す概念図である。図2に示すように、第一の点火方法においては、パルスストリーマ放電PSを引き起こす前に、下記条件(2)を満たすファインパルスストリーマ放電FPS、又はグロー放電を引き起こすことが好ましい。なお、ファインパルスストリーマ放電とグロー放電を適宜組み合わせて引き起こすことも好ましい。これにより、投入エネルギーの適正化と電極の長寿命化が可能となる。
[条件(2)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、ピーク電界強度とピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて1番目の第1変曲点から2番目の第2変曲点までの間に発生するパルス放電。

[1−2]第二の点火方法:
図3は、本発明の第二の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。第二の点火方法においては、大気圧以上の正圧下(例えば、1MPa以下)、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、前記条件(2)を満たす非平衡放電であるファインパルスストリーマ放電FPSを100μs以下の間隔で繰り返し引き起こしてバースト発生させ、内燃機関に点火する。
内燃機関の燃焼室内において対向配置された電極間に電気パルス(パルス電圧)を印加してファインパルスストリーマ放電を所定の間隔で繰り返し引き起こすことにより、高エネルギー電子を効率的に発生させ、可燃性気体である混合気を励起させることができるとともに、活性種ラジカルの発生を促進させることができる。
第二の点火方法における複数回のファインパルスストリーマ放電どうしの間隔は、100μs以下であり、好ましくは10〜90μs、更に好ましくは30〜50μsである。エネルギー注入が不足する、或いはファインパルスストリーマ放電どうしの間隔が10μs未満であると、ミスアーク電流通電時にパルス電源破壊が生ずる場合がある。
[1−3]第三の点火方法:
図4は、本発明の第三の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。第三の点火方法においては、大気圧以上の正圧下(例えば1MPa以下)、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、前記条件(2)を満たす非平衡放電であるファインパルスストリーマ放電FPSを100μs以下の間隔で繰り返し引き起こしておくと同時に、点火タイミングに合わせて前記条件(1)を満たす非平衡放電であるパルスストリーマ放電PSを引き起こしてバースト発生させ、内燃機関に点火する。即ち、第三の点火方法では、ファインパルスストリーマ放電FPSを所定の間隔で常時引き起こしておく。そして、任意のタイミングでパルスストリーマ放電PSを引き起こして点火する。
ファインパルスストリーマ放電を所定の間隔で常時引き起こしておくことで、高エネルギー電子を効率的に発生させ、可燃性気体である混合気を励起させることができるとともに、活性種ラジカルの発生を促進させることができる。また、このように常時ファインパルスストリーマ放電をバックグラウンドで立てた状態とすれば、アーク放電を引き起こすのに要する高電圧を印加せずに効率的にプラズマを発生させ、任意のタイミングで点火することができる。
第三の点火方法において繰り返し引き起こされるファインパルスストリーマ放電どうしの間隔は、100μs以下であり、好ましくは10〜90μs、更に好ましくは30〜50μsである。エネルギー注入が不足する、或いはファインパルスストリーマ放電どうしの間隔が10μs未満であると、ミスアーク電流通電時にパルス電源破壊が生ずる場合がある。
[1−4]第四の点火方法:
図5は、本発明の第四の点火方法の一実施形態を模式的に示す概念図である。第四の点火方法においては、大気圧以上の正圧下(例えば、1MPa以下)、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、前記条件(2)を満たす1回以上のファインパルスストリーマ放電FPSと、このファインパルスストリーマ放電FPSに続く、前記条件(1)を満たす1回以上のパルスストリーマ放電PSとの組み合わせを1組以上引き起こし、バースト発生させて内燃機関に点火する。
ファインパルスストリーマ放電が複数回引き起こされる場合において、複数回のファインパルスストリーマ放電どうしの間隔は、100μs以下であることが好ましく、10〜90μsであることが更に好ましく、30〜50μsであることが特に好ましい。エネルギー注入が不足する、或いはファインパルスストリーマ放電どうしの間隔が10μs未満であると、ミスアーク電流通電時にパルス電源破壊が生ずる場合がある。
また、パルスストリーマ放電が複数回引き起こされる場合において、複数回のパルスストリーマ放電どうしの間隔は、100μs以下であることが好ましく、10〜90μsであることが更に好ましく、30〜50μsであることが特に好ましい。エネルギー注入が不足する、或いはパルスストリーマ放電どうしの間隔が10μs未満であると、ミスアーク電流通電時にパルス電源破壊が生ずる場合がある。
[2]パルス電源:
本発明の内燃機関の点火方法においては、所定のパルス幅を有するパルス電圧波形を示す電気パルスを電極間に印加して特定種類の放電を発生させる。所定のパルス幅を有するパルス電圧波形を示す電気パルスを発生させて電極間に印加するには、静電誘導型サイリスタ(以下、「SIThy」ともいう)をスイッチングデバイスとする誘導エネルギー蓄積型電源回路(以下、「IES回路」ともいう)のパルス電源を採用することが好ましい。IES回路は、SIThyのクロージングスイッチ機能の他、オープニングスイッチング機能を用いてターンオフを行い、このターンオフによりSIThyのゲート・アノード間に高圧を発生させている。なお、IES回路の詳細は、飯田克二、佐久間健:「誘導エネルギー蓄積型パルス電源」,第15回SIデバイスシンポジウム(2002)に記載されている。
図6を参照して、IES回路(パルス電源)の構成について説明する。IES回路13は、低電圧直流電源131を備えている。低電圧直流電源131の電圧Eは、IES回路13が発生させる電気パルスの電圧のピーク値より著しく低いことが許容される。例えば、後述するインダクタ133の両端に発生させる電圧VLのピーク値VLPが数kVに達しても、低電圧直流電源131の電圧Eは数10Vであることが許容される。電圧Eの下限は後述するSIThy134のラッチング電圧以上で決定される。IES回路13は、低電圧直流電源131を電気エネルギー源として利用可能であるので、小型・低コストに構築可能である。
IES回路13は、低電圧直流電源131に並列接続されるコンデンサ132を備えている。コンデンサ132は、低電圧直流電源131のインピーダンスを見かけ上低下させることにより低電圧直流電源131の放電能力を強化する。
更に、IES回路13は、インダクタ133、SIThy134、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(以下、「FET」ともいう)135、ゲート駆動回路136、及びダイオード137を備えている。IES回路13では、低電圧直流電源131の正極とインダクタ133の一端とが接続され、インダクタ133の他端とSIThy134のアノードとが接続され、SIThy134のカソードとFET135のドレインとが接続され、FET135のソースと低電圧直流電源131の負極とが接続されている。また、IES回路13では、SIThy134のゲートとダイオード137のアノードとが接続され、ダイオード137のカソードとインダクタ133の一端(低電圧直流電源131の正極)とが接続される。FET135のゲート及びソースには、ゲート駆動回路136が接続される。
SIThy134は、ゲート信号に応答して、ターンオン及びターンオフが可能である。
FET135は、ゲート駆動回路136から与えられるゲート信号Vcに応答してドレイン・ソース間の導通状態が変化するスイッチング素子である。FET135のオン電圧又はオン抵抗は低いことが望ましい。また、FET135の耐圧は低電圧直流電源131の電圧Eより高いことを要する。
ダイオード137は、SIThy134のゲートに正バイアスを与えた場合に流れる電流を阻止するため、即ち、SIThy134のゲートに正バイアスを与えた場合にSIThy134が電流駆動とならないようにするために設けられる。
インダクタ133は、自己インダクタンスを有する誘導性素子として機能しており、その両端には、負荷139(ここでは、電極対)が並列接続される。なお、昇圧トランスの1次側をインダクタ133として用いて、昇圧トランスの2次側の両端に負荷139を接続すれば、電圧のピーク値がより高い電気パルスを得ることができる。
続いて、図7を参照して、IES回路の動作について説明する。図7においては、上から順に、FETに与えられるゲート信号Vc、SIThyの導通状態、インダクタに流れる電流IL、インダクタの両端に発生する電圧VL、SIThyのアノード・ゲート間の電圧VAG(縦軸)の時間(横軸)に対する変化が示されている。
まず、時刻t0にゲート信号VcがOFFからONに切り替わると、FET135のドレイン・ソース間は導通状態となる。これにより、SIThy134のゲートがカソードに対して正バイアスされるので、SIThy134のアノード・カソード間は導通状態となり(図中の「A−K導通」)、電流ILが増加し始める。
電流ILがピーク値ILPに達するあたりの時刻t1にゲート信号VcがONからOFFに切り替わると、FET135のドレイン・ソース間が非導通状態となり、SIThy134のアノード・ゲート間が導通状態となる(図中の「A−G導通」)。これにより、時刻t2から時刻t3にかけて、SIThy134における空乏層の拡大に同期して(図中の「空乏層拡大」)、電流ILが減少するとともに、電圧VL及び電圧VAGが急激に上昇する。
そして、時刻t3において電圧VL及び電圧VAGが、それぞれピーク値VLp及びピーク値VAGpに達して電流ILの向きが反転した後は、時刻t3から時刻t4にかけて、SIThy134における空乏層の縮小に同期して(図中の「空乏層縮小」)、電流ILが増加するとともに、電圧VL及び電圧VAGが急激に低下する。
そして、時刻t4においてSIThy134が非導通状態となると(図中の「非導通」)、時刻t5に向かって電流ILが減少するとともに、電圧VL及び電圧VAGは0になる。
IES回路により電気パルスを発生させて放電させる構成とすることにより、印加する電気パルスのパルス波形、パルス頻度を適宜変更することかできる。このため、可燃性気体の圧力変化、温度変化、又は組成変化等に応じて放電条件を最適化することができる。従って、内燃機関の燃焼室内部における、有限な寿命を有する活性種ラジカルの濃度を可能な限り高めた状態で点火することができる。なお、IES回路は、極めて小型に構成することが可能な回路である。具体的には、IES回路の体積は100〜1000ml程度と極めて小型であることから、車載用のパルス電源としても好適である。
また、IES回路のパルス電源は、放電に必要なエネルギーを蓄電するのに必要な時間は短く、概ね10μs以下である。即ち、従来の回路に比して、単位時間当たりの放電回数を多くすることが可能であるため、最適なタイミングで点火することができ、点火の確実性を向上させることが可能である。IES回路が発生する電気パルスの電圧は、誘導性素子であるインダクタ133への誘導エネルギー蓄積時間、すなわち、FET135のオン時間で制御される。
なお、パルス電源を用いて発生させる電気パルスの電圧、間隔、回数、及びこれらの組み合わせは、放電条件に応じて任意に変更することができる。即ち、予めプログラミングされたアルゴリズムに従って、内燃機関の運転条件に応じてエンジン制御ユニット(ECU)からの信号により、最適な波形のパルス電圧列を印加することが可能である。
[3]放電の種類:
パルスストリーマ放電、及びファインパルスストリーマ放電は、いずれも放電の均一性に優れた非平衡放電である。このため、これらの放電の繰り返し数等を制御すれば、可燃性気体(混合気)の温度を従来の点火方法における点火温度まで上昇させることなく、活性種ラジカルを多量に含有する非熱平衡プラズマを、アーク放電を引き起こすのに要する高電圧を印加せずに効率的に発生させることができる。なお、電極の具体例としては、一般的な点火プラグを構成する電極である中心電極、及び外側(接地)電極等を挙げることができる。
本発明の内燃機関の点火方法を採用すれば、空燃比(A/F)を大きく設定した混合気に点火した場合であっても、安定した状態でリーン燃焼させることができる。従って、本発明の内燃機関の点火方法は、リーンバーンエンジン等の内燃機関の点火方法として好適であり、燃費の向上、及び排出される二酸化炭素(CO2)量の低減にも寄与するものである。
図8は、電極対への電気パルスの印加によって引き起こされる放電の状態を示す模式図である。
図8に示すように、電気パルスのパルス幅が所定の値に達すると、正イオンが陰極82に衝突する際に放出された2次電子によって新たな正イオンを発生させるグロー放電が引き起こされる。
一方、電気パルスの立ち上がり時の電圧Vの上昇率(電圧上昇率(dV/dt))が概ね30〜500kV/μsである場合、陽極81から陰極82へ向かうストリーマ83の成長が始まる。そして、ストリーマ83の成長は、陽極81と陰極82との間に短いストリーマ83が散点する初期段階で終了する。一方、パルス幅が更に広くなると、ストリーマ83が本格的に成長し、陽極81と陰極82との間に枝分かれした長いストリーマ83が存在する状態となる。本発明の内燃機関の点火方法では、ストリーマ83の成長が進んで陽極81と陰極82とが導通してしまわないように、ストリーマ83の成長の初期段階で放電を停止する。
なお、パルス幅が更に拡大すると、局部的な電流集中がおき、最終的にアーク放電が引き起こされる。
上述の説明で、電圧上昇率(dV/dt)の範囲について「概ね」としているのは、これらは、陽極81と陰極82の間隔、陽極81及び陰極82の構造等の点火プラグの具体的構成に依存して変化するためである。従って、ファインパルスストリーマ放電となっているか否かは、立ち上がり時の電圧上昇率(dV/dt)だけでなく、実際の放電を観察して判断すべきである。
図9は、ピーク電界強度とピーク電流密度の関係を示すグラフである。放電状態は、通常、パルス幅の長短、温度の高低、電圧の高低、電流の高低、及び気圧の高低の影響を受けて変化する。なお、図9に示すグラフは、金属電極放電ギャップ:1.5mm、プラグ陽極面積:φ2mm、プラグ陰極面積:2×3mm、圧力:10気圧、温度:60℃の条件下で放電を行って作成したものである。図9に示すように、電極間に電圧を印加していくと、あるピーク電界強度からグロー放電による電流が徐々に流れ始める。更に電圧を高めると、ピーク電流密度が急激に上昇する変曲点(第1変曲点)を経てファインパルスストリーマ放電に移行して、ピーク電流密度の上昇率が大きくなる。更に電圧を高めると、ピーク電界強度が徐々に減少し始める変曲点(第2変曲点)を経てパルスストリーマ放電に移行して、ピーク電流密度は増大する。更に電圧を高めると、ピーク電界強度はほとんど変化せずにピーク電流密度のみが高くなる変曲点(第3変曲点)を経てアーク放電に移行することとなる。
本明細書においては、放電開始から第1変曲点までの間に発生する放電を「グロー放電」、第1変曲点から第2変曲点までの間に発生する放電を「ファインパルスストリーマ放電」、第2変曲点から第3変曲点までの間に発生する放電を「パルスストリーマ放電」、第3変曲点以降に発生する放電を「アーク放電」という。
図10は、パルスストリーマ放電発生時における、ピーク電界強度とピーク電流密度の経時変化を示すグラフである。また、図11は、アーク放電発生時における、ピーク電界強度とピーク電流密度の経時変化を示すグラフである。図10及び図11に示すように、いずれの放電発生時においても、ピーク電界強度の上昇に伴ってピーク電圧密度も上昇する。但し、ピーク電圧密度の最大値は、アーク放電の場合は数〜10A/cm2にも達するのに対し、パルスストリーマ放電の場合は0.数〜数A/cm2程度である。また、いずれの放電発生時においても、ピーク電界強度の下降に伴ってピーク電圧密度も下降する。しかしながら、アーク放電の場合はピーク電界強度の消失以降も引き続きピーク電流密度が観測されるのに対し、パルスストリーマ放電の場合はピーク電界強度が消失する前にピーク電流密度は観測されなくなる(消失する)。ピーク電流密度の半値幅を比較してみると、アーク放電の場合は数μs〜数msにもなるのに対し、パルスストリーマ放電の場合は200ns以下と極めて短い。
本発明の内燃機関の点火方法においては、ピーク電流密度の半減値(消失裾引き)が、アーク放電に比して極端に短いパルスストリーマ放電、或いはファインパルスストリーマ放電を利用し、混合気の温度を従来の点火方法における点火温度まで上昇させることなく、活性種ラジカルを多量に含有する非熱平衡プラズマを、アーク放電を引き起こすのに要する高電圧を印加せずに効率的に発生させている。
パルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度は、3〜15kV/mmであることが好ましく、5〜10kV/mmであることが更に好ましく、7〜10kV/mmであることが更に好ましい。電気パルスの電界強度を上記範囲内とすることで、高効率なラジカル発生を実現することができる。
また、パルスストリーマ放電の立ち上がり時における電圧上昇率(dV/dt)は、50kV/μs以上であることが好ましく、100〜500kV/μsであることが更に好ましく、200〜300kV/μsであることが特に好ましい。電圧上昇率(dV/dt)を上記範囲内とすることで、高効率なラジカル発生を実現することができる。
なお、ファインパルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度は、5〜13kV/mmであることが好ましく、7〜13kV/mmであることが更に好ましく、7〜11kV/mmであることが特に好ましい。電気パルスの電界強度を上記範囲内とすることで、高効率なラジカル発生を実現することができる。
[4]可燃性物質:
内燃機関で燃焼させる可燃性気体(混合気)には、可燃性物質と支燃性ガスが含有される。可燃性物質としては、一般的な内燃機関において燃焼させる従来公知のものを採用することができる。可燃性物質の具体例としては、メタン、プロパン、ガソリン、軽油、植物由来燃料、水素、及び合成化学燃料からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
[5]支燃性ガス:
可燃性気体(混合気)に含有される支燃性ガスとしては、一般的な内燃機関において燃焼させる可燃性気体に含有されることのある、従来公知のものを採用することができる。支燃性ガスの具体例としては、空気、酸素、及びこれらの混合ガスを挙げることができる。
[6]希釈ガス:
可燃性気体(混合気)には、可燃性物質及び支燃性ガス以外の成分として、希釈ガスを含有させてもよい。希釈ガスとしては、一般的な内燃機関において燃焼させる可燃性気体に含有されることのある、従来公知のものを採用することができる。希釈ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、及び燃焼排ガスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。なお、本発明の内燃機関の点火方法においては、燃焼排ガスを循環させる(排ガス循環(EGR))させることにより、窒素や二酸化炭素のリッチな不活性な希釈ガスを混合気に含有させた場合であっても安定した点火状態とすることができるといった利点がある。
[7]パルス電源と点火プラグの電極対との電気的な接続:
図12、図13及び図14は、パルス電源と点火プラグの電極対との電気的な接続の形態を示す模式図である。
図12に示す第1の電気的な接続の形態においては、パルス電源1000と点火プラグ1006の電極対1012とが直接的に接続される。例えば、パルス電源1000の正出力端1002が点火プラグ1006の陽極1008に接続され、パルス電源1000の負出力端1004が点火プラグ1006の陰極1010に接続される。パルス電源1000の負出力端1005及び点火プラグ1006の陰極1010が接地されていてもよい。
しかし、図12に示す第1の電気的な接続の形態は、図11に示すアーク放電を発生させやすい。そこで、図11に示すアーク放電を抑制し図10に示すパルスストリーマ放電を専ら発生させるために、望ましくは、図13に示す第2の電気的な接続の形態又は図14に示す第3の電気的な接続の形態が採用される。
図13に示す第2の電気的な接続の形態及び図14に示す第3の電気的な接続の形態においては、パルス電源1100,1200と点火プラグ1106,1206の電極対1112,1212とが抵抗を介して接続される。例えば、パルス電源1100,1200の正出力端1102,1202が抵抗1114,1214を介して点火プラグ1106,1206の陽極1108,1208に接続され、パルス電源1100,1200の負出力端1104,1204が点火プラグ1106,1206の陰極1110,1210に接続される。パルス電源1100,1200の負出力端1104,1204及び点火プラグ1106,1206の陰極1110,1210が接地されていてもよい。
抵抗1114,1214は、図13に示すように、パルス電源1100と点火プラグ1106とを接続する接続ケーブルに内蔵されていてもよいし、図14に示すように、点火プラグ1206に内蔵されていてもよい。
「抵抗」は、レジスタンス成分を含んでいればよく、リアクタンス成分を含まない純抵抗である必要はない。当該レジスタンス成分の抵抗値は、500〜2000オームであることが望ましく、1000オーム程度であることがさらに望ましい。抵抗値がこの範囲を下回ると、アーク放電を抑制する効果が得られにくくなり、抵抗値がこの範囲を上回ると、損失が大きくなりすぎるからである。
「点火プラグ」は、少なくとも陽極及び陰極を備え、望ましくは陽極及び陰極を固定する基体等も備える電極構造体である。本発明の内燃機関の点火方法には、公知の点火プラグを採用しうるが、公知の点火プラグとは構造が異なる点火プラグも採用しうる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
点火プラグを備えたスパーク点火(SI)エンジンを使用し、以下に示す点火条件(1)(PRD)に従い、回転数を1000rpmに固定するとともに、空燃比(空気/燃料質量比、A/F)を理論空燃質量比(A/F=14.7〜26.7)の範囲内で可変とし、かつ、点火タイミングをMinimum Advance for Best Torque(MBT)として点火を行った。なお、以下に示す運転モード(1)と運転モード(2)の両方を行った。
<点火条件(1)(PRD)>
・全入力エネルギー:可変
・電気パルスの入力エネルギー制御法:ゲート時間幅による蓄積エネルギー制御
・電気パルスの入力パターン:ゲートパルス幅が3μs(半値幅=200ns)の電圧パルスを8回電極間に印加してパルスストリーマ放電を引き起こした。次いで、ゲートパルス幅が5.5μs(半値幅=200ns)の電圧パルスを2回電極間に印加してパルスストリーマ放電を引き起こした。なお、パルスストリーマ放電どうしの間隔は40μsとした。
・電源の一次側入力電圧:150V
・スパークギャップ(中心電極−外側(接地)電極間の距離):1.5mm
<運転モード(1)>
吸引圧力を70kPaに維持して運転する運転モードであり、吸引空気総量を制御しつつ運転するモードである。
<運転モード(2)>
平均有効圧(IMEP)を440kPaに維持して運転する運転モードであり、エンジン負荷を制御しつつ運転するモードである。
(比較例1)
以下に示す点火条件(2)(CIC)に従うこと以外は、前述の実施例1と同様の操作により点火を行った。
<点火条件(2)(CIC)>
・従来回路型点火を実施した。
・スパークギャップ(中心電極−外側(接地)電極間の距離):0.5mm
(評価結果(1))
図15に示す結果から、比較例1では、IMEP変動率が5%未満の安定領域で点火(運転)可能な最大空燃比(A/F)は20であるのに対し、実施例1では、最大空燃比(A/F)23まで安定に点火(運転)可能であることが明らかである。
即ち、本発明の内燃機関の点火方法は、実験容器のみならず、実際の内燃機関(エンジン)に点火する場合であっても有効であることが見出された。但し、従来の点火方法であっても、高エネルギーを負荷すれば希薄限界を伸ばせることはよく知られている。そこで、実施例1で用いた回路への供給エネルギーを、この回路における瞬時電圧と電流を測定することによって見積もったところ、約140mJ/サイクルであり、従来の点火方法で供給されるエネルギーとほぼ同等であることが判明した。
本発明は、ガソリンエンジンをはじめとする内燃機関の点火方法として好適である。
81:陽極、82:陰極、83:ストリーマ、13:IES回路、131:低電圧直流電
源、132:コンデンサ、133:インダクタ、134:SIThy、135:FET、
136:ゲート駆動回路、137:ダイオード、139:負荷、PS:パルスストリーマ
放電、FPS:ファインパルスストリーマ放電

Claims (16)

  1. 大気圧以上の正圧下、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、下記条件(1)を満たすパルスストリーマ放電を100μs以下の間隔で複数回繰り返し引き起こしてバースト発生させ、前記パルスストリーマ放電のバースト発生により前記可燃性気体に点火する内燃機関の点火方法。
    [条件(1)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて2番目の第2変曲点から3番目の第3変曲点までの間に発生するパルス放電。
  2. 前記パルスストリーマ放電を引き起こす前に、ファインパルスストリーマ放電及び/又はグロー放電を引き起こし、前記ファインパルスストリーマ放電が下記条件(2)を満たす請求項1に記載の内燃機関の点火方法。
    [条件(2)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて1番目の第1変曲点から2番目の第2変曲点までの間に発生するパルス放電。
  3. 大気圧以上の正圧下、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、下記条件(2)を満たすファインパルスストリーマ放電を100μs以下の間隔で繰り返し引き起こし、バースト発生させ、前記ファインパルスストリーマ放電のバースト発生により前記可燃性気体に点火する内燃機関の点火方法。
    [条件(2)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて1番目の第1変曲点から2番目の第2変曲点までの間に発生するパルス放電。
  4. 大気圧以上の正圧下、可燃性物質と支燃性ガスを含む可燃性気体の存在下において、下記条件(2)を満たす1回以上のファインパルスストリーマ放電と、前記ファインパルスストリーマ放電に続く下記条件(1)を満たす複数回のパルスストリーマ放電との組み合わせを1組以上引き起こし、バースト発生させる内燃機関の点火方法。
    [条件(1)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて2番目の第2変曲点から3番目の第3変曲点までの間に発生するパルス放電。
    [条件(2)]:点火プラグの電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅、前記可燃性気体の温度、及び前記可燃性気体の気圧を一定とした状態で点火プラグの電極間にパルス電圧を印加し、横軸にピーク電界強度、及び縦軸にピーク電流密度をそれぞれプロットして得られるグラフにおいて、前記ピーク電界強度と前記ピーク電流密度のいずれかが急激に変化する変曲点のうち、放電開始から数えて1番目の第1変曲点から2番目の第2変曲点までの間に発生するパルス放電。
  5. 前記パルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が3〜15kV/mmであるとともに、
    前記パルスストリーマ放電の立ち上がり時における電圧上昇率(dV/dt)が50kV/μs以上である請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載の内燃機関の点火方法。
  6. 前記パルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が5〜10kV/mmである請求項5に記載の内燃機関の点火方法。
  7. 前記パルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が7〜10kV/mmである請求項5に記載の内燃機関の点火方法。
  8. 前記ファインパルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が5〜13kV/mmである請求項2〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の点火方法。
  9. 前記ファインパルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が7〜13kV/mmである請求項8に記載の内燃機関の点火方法。
  10. 前記ファインパルスストリーマ放電を引き起こす電気パルスの電界強度が7〜11kV/mmである請求項8に記載の内燃機関の点火方法。
  11. 静電誘導型サイリスタをスイッチングデバイスとするパルス電源により電気パルスを発生させて放電させる請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関の点火方法。
  12. 前記パルス電源が、誘導エネルギー蓄積型電源回路である請求項11に記載の内燃機関の点火方法。
  13. 前記パルス電源を用いて発生させる電気パルスの電圧を、誘導エネルギー蓄積時間により制御する請求項11又は12に記載の内燃機関の点火方法。
  14. 前記パルス電源を用いて発生させる電気パルスの、電圧、間隔、回数、及びこれらの組み合わせを、エンジン制御ユニット(ECU)により制御する請求項11〜13のいずれか一項に記載の内燃機関の点火方法。
  15. 前記可燃性物質が、メタン、プロパン、ガソリン、軽油、植物由来燃料、水素、及び合成化学燃料からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜14のいずれか一項に記載の内燃機関の点火方法。
  16. 前記支燃性ガスが、空気及び/又は酸素であるとともに、
    窒素、二酸化炭素、及び燃焼排ガスからなる群より選択される少なくとも一種の希釈ガスが前記可燃性気体に含まれる請求項1〜15のいずれか一項に記載の内燃機関の点火方法。
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