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JP5468779B2 - 遺伝子置換微生物およびそれを用いたポリエステルの製造方法 - Google Patents
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遺伝子置換微生物およびそれを用いたポリエステルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、生分解性ポリエステルであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の商業的生産に有用な、改良された微生物株と、それを利用するPHAの製造方法に関する。
ポリヒドロキシアルカン酸は、広範な微生物によって生成されるポリエステル型有機分子ポリマーである。これらのポリマーは生分解性を有し、熱可塑性高分子であること、また、再生可能資源から産生されることから、環境調和型素材または生体適合型素材として工業的に生産し、多様な産業へ利用する試みが行われている。
このポリエステルを構成するモノマーは、一般名3−ヒドロキシアルカン酸であって、具体的には3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、あるいはよりアルキル鎖の長い3−ヒドロキシアルカン酸が単重合もしくは共重合することにより、ポリマー分子が形成されている。3−ヒドロキシ酪酸(以下3HBと略す)のホモポリマーであるポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P(3HB)と略す)は、1925年にバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)で最初に発見されたが、このP(3HB)は結晶性が高いため、硬くて脆い性質を持っており、実用的には応用範囲が限られている。この為、この性質の改良を目的とした研究がなされてきた。
その中で、3−ヒドロキシ酪酸(3HB)と3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)とからなる共重合体(以下P(3HB−co−3HV)と略す)の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このP(3HB−co−3HV)はP(3HB)に比べると柔軟性に富むため、幅広い用途に応用できると考えられた。しかしながら、実際にはP(3HB−co−3HV)は3HVモル分率を増加させても、それに伴う物性の変化が乏しく、特に柔軟性が向上しないため、シャンプーボトルや使い捨て剃刀の取っ手等、硬質成型体の分野にしか利用されなかった。
また、アルキル鎖の炭素数が6から16の3−ヒドロキシアルカン酸で構成される中鎖PHAは、P(3HB)やP(3HB−co−3HV)よりも結晶性が低く、弾力に富むことが知られており(非特許文献1参照)、異なる分野への用途が期待されている。中鎖PHAの製造研究は、シュードモナス属のPHA合成酵素遺伝子を、シュードモナス属、ラルストニア属、大腸菌に導入することによって行われてきたが、いずれも生産性が低く工業生産に適したものではなかった(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照)。
近年、3HBと3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHと略す)との2成分共重合ポリエステル(以下P(3HB−co−3HH)と略す)およびその製造方法について研究がなされた(特許文献3、特許文献4参照)。これら報告のP(3HB−co−3HH)の製造方法は、土壌より単離されたアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)を用いてオレイン酸等の脂肪酸やオリーブオイル等の油脂から発酵生産するものであった。また、P(3HB−co−3HH)の性質に関する研究もなされている(非特許文献5参照)。この報告では、炭素数が12個以上の脂肪酸を唯一の炭素源としてアエロモナス・キャビエを培養し、3HH組成が11〜19mol%のP(3HB−co−3HH)を発酵生産している。このP(3HB−co−3HH)は3HH組成の増加にしたがって、P(3HB)の硬くて脆い性質から次第に柔軟な性質を示すようになり、P(3HB−co−3HV)を上回る柔軟性を示すことが明らかにされた。すなわちP(3HB−co−3HH)は3HH組成を変えることで、硬質ポリエステルから軟質ポリエステルまで応用可能な幅広い物性を持つため、テレビの筐体等のように硬さを要求されるものからフィルム等のように柔軟性を要求されるものまで、幅広い分野への応用が期待できる。しかしながら、本製造方法では菌体生産量4g/L、ポリエステル含量30%とポリエステル生産性は低いものであり、本ポリエステルの実用化に向けた生産方法としては未だ不十分と言わざるを得なかったため、実用化に向けて更に高い生産性が得られる方法が探索された。
P(3HB−co−3HH)の工業生産を目指した取組みもなされている。アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)を用いた培養では、オレイン酸を炭素源とした43時間の流加培養において、菌体生産量95.7g/L、ポリエステル含量45.2%、3HH組成17%のP(3HB−co−3HH)が生産された(非特許文献6参照)。また、アエロモナス・ハイドロフィラを、炭素源としてグルコース及びラウリン酸を用いて培養し、菌体生産量50g/L、ポリエステル含量50%を達成した(非特許文献7参照)。しかしながら、アエロモナス・ハイドロフィラはヒトに対して病原性を有する(非特許文献8参照)ことから、工業生産に適した種とはいえない。また、これらの培養生産では高価な炭素源を使用するため、製造コストの観点より安価な炭素源の利用も求められている。
このため、安全な宿主での生産及び生産性の向上を目指した取組みが行なわれた。アエロモナス・キャビエよりポリヒドロキシアルカン酸(PHA)合成酵素遺伝子がクローニングされた(特許文献5、非特許文献9参照)。本遺伝子をラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha、旧アルカリゲネス・ユートロファス)に導入した形質転換体を用いてP(3HB−co−3HH)の生産を行った結果、菌体生産性は4g/L、ポリエステル含量は30%であった。更に本形質転換体を炭素源として植物油脂を用いて培養した結果、菌体生産量4g/L、ポリエステル含量80%が達成された(非特許文献10参照)。更に培養条件の改善により、菌体生産量45g/L、ポリエステル含量62.5%、3HH組成8.1%にまで向上したように、培養方法に関する研究もなされた(特許文献6参照)。
また、フラクトースを炭素源としてP(3HB−co−3HH)を生産できるラルストニア・ユートロファも構築されたが、本菌株のポリエステル生産性は低く、実生産に適しているとはいえなかった(非特許文献11参照)。
大腸菌を宿主としたP(3HB−co−3HH)生産株も構築された。アエロモナス属のPHA合成酵素遺伝子及びラルストニア・ユートロファのNADP−アセトアセチルCo―A還元酵素遺伝子等を大腸菌に導入した株が構築された。ドデカンを炭素源として同大腸菌を培養した結果、40.8時間培養で菌体量79g/L、ポリエステル含量27.2%、3HH組成10.8%という生産性であった(非特許文献12参照)。
P(3HB−co−3HH)の生産性向上並びに3HH組成制御を目指して、PHA合成酵素の人為的な改変が行なわれた。アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素変異体のなかで、149番目のアミノ酸のアスパラギンがセリンに置換された変異体酵素や、171番目のアスパラギン酸がグリシンに置換された変異体酵素は、大腸菌内でのPHA合成酵素活性や3HH組成が向上していることが示された(非特許文献13参照)。また、同酵素の518番目のフェニルアラニンがイソロイシンに置換された変異体酵素や214番目のバリンがグリシンに置換された変異体酵素は、大腸菌でのPHA合成酵素活性やポリエステル含量が向上したことが報告されている(非特許文献14参照)。しかし、これらは宿主として特殊な大腸菌を用いており未だポリエステル含量は低いことから、これらの変異体酵素の特徴を活かした工業的生産に向けた更なる改良が必要であった。
組換えDNA技術を応用して作製された菌株を用いて、PHAを工業的規模で培養する際に最も重要な課題の一つは、導入した遺伝子の安定性である。遺伝子の導入にはプラスミドを用いる方法や宿主染色体へ組み込む方法などが利用されている。しかしながら、プラスミドは組換え菌が増殖、分裂する際に脱落することが知られている(特許文献7参照)。このためプラスミドが脱落した菌体はPHA生産能を失うので商業的生産性を低下させることにつながる。従来、組換え菌体の培養では抗生物質を培地に添加することでプラスミド保持菌体のみを選択的に生育保持させる対応が一般的であるが、抗生物質使用によるコストアップ、培養廃液中の残留抗生物質による環境への影響などが問題となっている。また、プラスミドの安定化のためにR1プラスミド由来のparB遺伝子をP(3HB)生産プラスミドに組み入れた組換え大腸菌が作製された(非特許文献15参照)。この大腸菌は、110−120世代の培養後もほぼ100%プラスミドを保持していた。しかしながら、なお、プラスミドは脱落の危険性を含んでいる。
一方、染色体上に組み込まれた遺伝子は安定であると考えられ、PHAの合成に関する遺伝子を染色体に組み込んだ微生物が報告されている(特許文献8、非特許文献16、非特許文献17参照)。
特許文献8が開示している、PHA生合成酵素をコードする遺伝子を大腸菌の染色体にランダムに挿入することによって作製された大腸菌株は細胞乾燥重量の85%を超えるレベルでP(3HB)を産生した。しかしながら、実用的物性に優れたP(3HB−co−3HH)を大腸菌に産生させるためには、基質モノマー供給のための遺伝子をさらに共存させる必要や、または高価な脂肪酸などを培地へ供給させる必要があり、なお、高い生産効率を達成するための妨げになっている。さらには、染色体上にランダムに遺伝子を組み込む場合には、組み込まれた部位によっては、その部位上の、あるいはその部位周辺の遺伝子の発現に影響を及ぼし、PHA生産株として充分な能力を発揮できない状況が存在する。
外因性のPHA合成酵素遺伝子を宿主にプラスミド状で導入する場合や、染色体上に組み込む場合、ラルストニア属やシュードモナス属のような、元来PHAを生産する微生物種を宿主として使用するときは、その元来のPHAが生産できなくなった菌株が利用されてきた。そのような菌株は変異操作を経て作製されているので、その親株と比べて増殖能力や生物活性が劣っており(非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20等参照)、PHA生産株として充分な生産能力を発揮しているとは言い難い。
一方で、ラルストニア・ユートロファの染色体上のPHA合成酵素遺伝子をクロマチウム・ビノッサム(Chromatium vinosum)由来のPHA合成酵素遺伝子と置換した報告では、野生株を上回る細胞乾燥重量の91%のP(3HB)を蓄積した(非特許文献17)。しかしながら、菌体量が1.8g/Lと低く、生産ポリエステルも堅くてもろいP(3HB)であって広範な用途が期待できるP(3HB−co−3HH)ではなかったことから、ポリエステルの商業的生産には未だ課題を抱えていた。
特開昭57−150393号公報 特開昭59−220192号公報 特開平5−93049号公報 特開平7−265065号公報 特開平10−108682号公報 特開2001−340078号公報 特開昭59−205983号公報 米国特許6593116号明細書 Madison等、Microbiol.Mol.Biol.Rev.,63:21−53(1999) Matsusaki等、J.Bacteriol.,180:6459−6467(1998) Matsusaki等、Appl.Micrbiol.Biotechnol.,53:401−409(2000) Langenbach等、FEMS Microbiol.Lett.,150:303−309(1997) Doi等、Macromolecules,28:4822−4828(1995) Lee等、Biotechnol.Bioeng.,67:240−244(2000) Chen等、Appl.Microbiol.Biotechnol.,57:50−55(2001) 国立感染症研究所 病原体等安全管理規定 別表1付表1(1999) Fukui等、J.Bacteriol.,179:4821−4830(1997) Fukui等、Appl.Microbiol.Biotecnol.,49:333―336(1998) Fukui等、Biomacromolecules,3:618−624(2002) Park等、Biomacromolecules,2:248−254(2001) Kichise等、Appl.Environ.Microbiol.,68:2411−2419(2002) Amara等、Appl.Microbiol.Biotechnol.,59:477−482(2002) Lee等、J.Biotechnol.,32:203−211(1994) Kranz等、Appl.Environ.Microbiol.,63:3003−3009(1997) York等、J.Bacteriol.,183:4217−4226(2001) Schlegel等、Arch.Mikrobiol.,71:283−294(1970) Schubert等、J.Bacteriol.,170:5837−5847(1988) Peoples等、J.Biol.Chem.,264:15298−15303(1989)
以上のように、PHAの商業生産には未だ多くの課題が存在した。
本発明の目的は、工業的規模の培養プロセスにおいて、広範な用途が期待できる共重合ポリエステルを安定的に高レベルで蓄積する組換え微生物株を提供すること、およびそれを利用した共重合ポリエステルの製造方法を提供することである。
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、染色体上に存在するポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子を外因性のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子に置換したポリエステル生産微生物が、安定的に高レベルのPHAを蓄積できることを見いだした。
PHAの合成を安定にするためには、染色体上に遺伝子を導入することが有効であることが示唆されていたが、野生株を用いそのPHA合成酵素遺伝子を部位特異的に他のPHA合成酵素遺伝子に置換することで、既存遺伝子の破壊と導入遺伝子の発現を同時に行って共重合ポリエステルを蓄積させた場合の効果は知られておらず、また、従来知られていた技術から単純には予測することもできなかった。
実施例に示したように、ラルストニア・ユートロファH16株の染色体上のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子をアエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素変異体遺伝子に置換した微生物株は、48時間の培養で菌体生産量110.4g/L、ポリエステル含量73.8wt%のP(3HB−co−3HH)を生産した。この生産性はこれまで報告されたP(3HB−co−3HH)の生産性を大きく上回っていた。またこの株は培養のすべての工程で抗生物質やその他のいかなる選択圧も必要とせず、培養の終了時には実質的にすべての細胞がP(3HB−co−3HH)を蓄積していることを見いだした。
即ち本発明は以下の通りである。
[1]ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子を染色体上に本来有する微生物であって、かつ該ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子の少なくとも一部が外因性のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子に置換されている、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシペンタデカン酸及び3−ヒドロキシヘキサデカン酸からなる群より選択されるモノマーユニットの2種以上から構成される共重合ポリエステルを生産する微生物。
[2]共重合ポリエステルが3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸のモノマーユニットで構成されることを特徴とする、[1]に記載の微生物。
[3]ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子を染色体上に本来有する微生物がラルストニア・ユートロファであることを特徴とする、[1]または[2]に記載の微生物。
[4]ラルストニア・ユートロファがラルストニア・ユートロファH16株であることを特徴とする、[3]に記載の微生物。
[5]外因性のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子が、アエロモナス・キャビエ由来の酵素又はその変異体をコードするものである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の微生物。
[6]変異体が、以下の(a)、(b)いずれかのアミノ酸置換を少なくとも一つ以上行ったものである、[5]に記載の微生物。
(a)149番目のアミノ酸のアスパラギンをセリンに置換
(b)171番目のアミノ酸のアスパラギン酸をグリシンに置換
[7]外因性のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子が、149番目のアミノ酸のアスパラギンをセリンに置換し、かつ171番目のアミノ酸のアスパラギン酸をグリシンに置換した、配列番号9のアミノ酸配列で示されるアエロモナス・キャビエ由来の変異体酵素をコードするものである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の微生物。
[8]KNK−005株である微生物。
[9][1]〜[8]のいずれか1項に記載の微生物を用いたポリエステルの製造方法。
本発明における共重合ポリエステルとは、以下の一般式:
Figure 0005468779
(式中、R及びRは炭素数1以上であるアルキル基を表し、ポリマー中同一でも異なっていてもよい。mおよびnは該ポリマーのモノマー単位数を表し、1以上である。)で表される3−ヒドロキシアルカン酸をモノマー単位とする重合体のうち、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシペンタデカン酸及び3−ヒドロキシヘキサデカン酸からなる群より選択されるモノマー単位の2種または3種以上から構成される共重合ポリマーである。
上記共重合ポリエステルとしては、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸のモノマーユニットで構成されるものが好ましい。
本発明で用いる微生物は、ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子を生物種として原初的にその染色体DNAに有する微生物であれば特に制限なく使用することができ、別の炭素源が利用できるように改変された微生物、基質モノマーの生成や取り込みが改変された微生物、または生産を増大するように改変された微生物を含む。例としては、Ralstonia eutropha(分類学上、Wautersia eutropha、Cupriavidus necatorと同一)等のRalstonia属、Aeromonas caviae等のAeromonas属、Alcaligenes latus等のAlcaligenes属、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas putida等のPseudomonas属等の細菌類が含まれる。安全性及び生産性の観点から好ましくはRalstonia属であり、より好ましくはRalstonia eutrophaであり、更に好ましくはRalstonia eutropha H16株である。
本発明で用いる外因性のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子は、各種のPHA蓄積生物に由来する遺伝子のうち共重合ポリエステルを蓄積させるものであればどのようなものでもよい。そのような遺伝子としては例えば、Aeromonas caviae(非特許文献9)、Nocardia corallina(GenBankアクセッション番号AF019964)、Pseudomonas aeruginosa(Timm 等、Eur.J.Biochem.,209:15−30(1992))、Pseudomonas oleovorans(Huisman等、J.Biol.Chem.,266:2191−2198(1991))、Thiocystis violaceae(Liebergesell等、Appl.Microbiol.Biotechnol.,38:493−501(1993))などから単離されているポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子がある。好ましくは、アエロモナス・キャビエ由来の酵素又はその変異体をコードするものである。
また、目的とする酵素活性が失われない範囲内でアミノ酸配列が改変するようにそれらの遺伝子の塩基配列の一部を改変したものも使用することができる。例えば、非特許文献13に記載されている、149番目のアミノ酸のアスパラギンがセリンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子(N149S変異体遺伝子)、171番目のアミノ酸のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子(D171G変異体遺伝子)、または、上記の2つのアミノ酸置換が組み合わされた、配列番号9のアミノ酸配列で示されるアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子等を好ましく用いることができる。
上記の遺伝子はプロモーターおよび/またはリボソーム結合部位を有し得るが、必ずしも必要ではない。
ポリエステル合成酵素遺伝子の置換の態様は、染色体上に本来存在するポリエステル合成酵素遺伝子(被置換遺伝子)のコードする酵素活性が無くなり、かつ外因性のポリエステル合成酵素遺伝子(置換遺伝子)が発現されるように置き換わっていればどのような置き換わり方でもよい。置換後に、被置換遺伝子が染色体上からすべて失われていてもよいし、一部が存在していてもよく、分断されて存在していてもよい。置換の一つの態様として、置換遺伝子がリボソーム結合部位を有し、かつプロモーターを有しない場合は被置換遺伝子のプロモーターの下流に接続されるような置き換わり方が選択できる。また、置換の別の一つの態様として、置換遺伝子がプロモーターおよびリボソーム結合部位を有しない場合は被置換遺伝子のリボソーム結合部位の下流に接続されるような置き換わり方が選択できる。置換後に発現するポリエステル合成酵素蛋白は、置換遺伝子のコードする単独の蛋白であるような置き換わり方であっても、被置換遺伝子がコードする蛋白との融合蛋白であるような置き換わり方であってもよい。本発明で用いるポリエステル合成酵素遺伝子の置換の態様は以上の例示に限定されるものではないが、好ましい態様としては被置換遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを、置換遺伝子の開始コドンから終止コドンまで置換するものである。
染色体上の遺伝子を部位特異的に置換する方法は当業者に周知である。代表的な方法としては、トランスポゾンと相同組換えの機構を利用した方法(Ohman等、J.Bacteriol.,162:1068−1074(1985))や相同組換えの機構によって起こる部位特異的な組み込みと第二段階の相同組換えによる脱落を原理とした方法(Noti等、Methods Enzymol.,154:197−217(1987))などがあり、また、Bacillus subtilis由来のsacB遺伝子を置換遺伝子に共存させて、第二段階の相同組換えによってsacB遺伝子が脱落した微生物株をシュークロース添加培地耐性株として容易に単離する方法(Schweizer、Mol.Microbiol.,6:1195−1204(1992)、Lenz等、J.Bacteriol.,176:4385−4393(1994))も利用することができるが、染色体上の遺伝子を置換できればその方法は特に制限されない。
以下にRalstonia eutrophaのPHA合成酵素遺伝子(phaCRe)をAeromonas caviaeのPHA合成酵素遺伝子(phaCAc)に置換する場合の置換方法を、より具体的に例示する。
まず、置換フラグメントを作製する。置換フラグメントは、phaCReのコーディング配列(CDS:開始コドンから終止コドンまでを含む)直前の上流配列にphaCAcのCDSがつながり、その後にphaCReのCDS直後の下流配列がつながった形とする。すなわち、CDSのみがphaCAcのものに置き換わったphaCReのDNAフラグメントである。上流配列と下流配列は染色体上の遺伝子と相同組換えを起こすために必要な相同配列であって、一般的にはその長さが長いほど組換え頻度は高くなるが、相同組換えさえ起こればよく、その長さは任意に設定できる。
置換フラグメントには遺伝子置換の際に選択マーカーとなる遺伝子を付加することができる。選択マーカーとなる遺伝子は例えばカナマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、アンピシリン等の抗生物質の耐性遺伝子や各種の栄養要求性を相補する遺伝子等が使用できる。Ralstonia eutrophaで行う場合にはカナマイシンの耐性遺伝子が好適である。
さらにそれらに加えて、第二段階の相同組み換えによって選択マーカー遺伝子を含む領域が脱落した微生物株の選択を容易にするための遺伝子が付加できる。そのような遺伝子としてはBacillus subtilis由来のsacB遺伝子が例示できる(Schweizer、Mol.Microbiol.,6:1195−1204(1992))。この遺伝子が発現している微生物株はシュークロースを含む培地で生育できないことが知られており、シュークロースを含む培地での生育によりこの遺伝子を脱落によって失った株を選択することが容易となる。
これらで構成された置換フラグメントは宿主微生物株中で複製しないベクターに接続することによって遺伝子置換用のプラスミドが作製される。ラルストニア属やシュードモナス属等で利用できるこのようなベクターには例えば、pUCベクター、pBluescriptベクター、pBR322ベクターあるいはそれらと同じ複製起点を持つベクター等が挙げられる。さらには、接合伝達を可能にするmob、oriTなどのDNA配列を共存させることも可能である。
このような構成で作製された遺伝子置換用のプラスミドDNAはエレクトロポレーション法や接合伝達法などの公知に方法によりRalstonia eutropha等の微生物に導入することができ、相同組換えを行うことができる。
次に相同組換えによって染色体上に遺伝子置換用のプラスミドDNAが挿入された株の選択を行う。選択は遺伝子置換用のプラスミドDNAに共存させた選択用の遺伝子に基づいた方法によって行うことができる。カナマイシン耐性遺伝子を用いた場合にはカナマイシンを含む培地で生育してきた株から選ぶことができる。
次の段階で第二の相同組換えによって染色体上から選択マーカー遺伝子を含む領域が脱落した株を選択する。挿入時に利用した選択用の遺伝子に基づいて、例えばカナマイシンを含む培地で生育できなくなった株を選択してもよいが、sacB遺伝子を遺伝子置換用プラスミドに共存させている場合は、シュークロースを含む培地で生育してくる株から容易に選択できる。このようにして得られた株が所望するように遺伝子が置換された株かどうか確認するには、PCR法やサザンハイブリダイゼーション法、DNA塩基配列の決定など、公知の方法が使用できる。以上のようにしてRalstonia eutrophaのPHA合成酵素遺伝子(phaCRe)がAeromonas caviaeのPHA合成酵素遺伝子(phaCAc)に置換された株を取得することができる。このような株としては、以下の実施例で作製したKNK−005株等が挙げられる。
本発明において、本発明の微生物を炭素源存在下で増殖させることにより、微生物体内に共重合ポリエステルを蓄積させることができる。炭素源としては、糖、油脂または脂肪酸を用いることができる。炭素源以外の栄養源として、窒素源、無機塩類、そのほかの有機栄養源を任意に用いることができる。
糖としては、例えばグルコース、フラクトース等の炭水化物が挙げられる。油脂としては、炭素数が10以上である飽和・不飽和脂肪酸を多く含む油脂、例えばヤシ油、パーム油、パーム核油等が挙げられる。脂肪酸としては、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等の飽和・不飽和脂肪酸、あるいはこれら脂肪酸のエステルや塩等の脂肪酸誘導体が挙げられる。
窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
そのほかの有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸;ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。
培養温度は、その菌が生育可能な温度であればよいが、20℃から40℃が好ましい。培養時間は、特に制限はないが、1〜10日間程度で良い。
得られた該培養菌体に蓄積されたポリエステルは公知の方法により回収することができる。
ポリエステルの回収は、例えば次のような方法により行うことができる。培養終了後、培養液から遠心分離器等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水およびメタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてポリエステルを抽出する。このポリエステルを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてポリエステルを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてポリエステルを回収することができる。
ポリエステル生産確認の簡易法としては、Nileredを用いた染色法を利用できる。すなわち、組換え菌が生育する寒天培地にNileredを加え、組換え菌を1〜7日間培養し、組換え菌が赤変するか否かを観察することにより、ポリエステル生産の有無を確認できる。
本発明によれば、産業用発酵過程においてポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を安定的に高生産できる組換え微生物株が提供され、高純度のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が簡便かつ大量に、しかも安価に製造することが可能となる。
以下に実施例で本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
(実施例1)遺伝子置換用プラスミドの作製
Ralstonia eutropha H16株の菌体を鋳型DNAの供給源として、配列番号1と配列番号2で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子(phaCRe)の構造遺伝子を含むDNA断片を得た。PCR条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、(3)45℃で30秒、(4)72℃で3分、(2)から(4)を25サイクル、(5)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはTaKaRa LA Taq(タカラバイオ社製)を用いた。PCRで得たDNA断片を制限酵素BamHIで切断し、ベクターpBluescriptIIKS(−)(東洋紡社製)を同酵素で切断した部位にサブクローニングした(pBlue−phaCRe)。
Aeromonas caviae由来のポリエステル合成酵素変異体遺伝子であるN149S/D171G変異体は、次のように作製した。まず、pBluescriptIIKS(−)(東洋紡社製)をPstI処理し、DNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)を用いて平滑末端化しライゲーションすることによりPstIサイトを欠失させた。次いでこのプラスミドをXhoI処理し、DNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)を用いて平滑末端化しライゲーションすることによりXhoIサイトを欠失したプラスミドpBlue−Newを作製した。このプラスミドのEcoRIサイトにpJRD215−EE32d13(特許文献5)より同酵素で切り出したd13断片をクローニングした(pBlue−d13)。次に、理化学研究所より分与されたクローンE2−50由来のプラスミド(非特許文献13)を鋳型とし、配列番号3と4に記載のプライマーのセット及び配列番号5と6に記載のプライマーのセットを用いてそれぞれPCR法により増幅、2断片を得た。その条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)72℃で2分、(2)から(4)を25サイクル、(5)72℃で5分である。増幅された2断片を等モル混合し再びPCR反応を行い2断片を結合させた。その条件は(1)96℃で5分、(2)95℃で2分、(3)72℃で1分、(2)から(3)を12サイクルであり、ポリメラーゼとしてはPyrobestポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いた。目的サイズのDNA断片をアガロース電気泳動ゲルより切り出しPstIとXhoIで処理し、同酵素で処理したpBlue−d13に断片を入れ替える形でクローニングした(pBlue−N149S/D171G)。塩基配列決定を、PERKIN ELMER APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー310 Genetic Analyzerを用いて行い、PHA合成酵素の149番目のアミノ酸であるアスパラギンがセリンに、171番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がグリシンに置換された変異遺伝子であることを確認した。このアミノ酸配列を配列番号9に示す。
pBlue−N149S/D171Gを鋳型として配列番号7と配列番号8で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、N149S/D171G変異体の構造遺伝子DNAを増幅させた。PCR条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、(3)45℃で30秒、(4)72℃で2分、(2)から(4)を25サイクル、(5)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはTaKaRa LA Taq(タカラバイオ社製)を用いた。次に、pBlue−phaCReを制限酵素SbfIとCsp45Iで処理し、同酵素で処理した上記増幅DNA断片をphaCRe構造遺伝子と入れ替える形でクローニングした(pBlue−phaCRe::N149S/D171G)。
次に、プラスミドpJRD215(ATCC37533)を制限酵素XhoIとDraIで処理してカナマイシン耐性遺伝子を含む約1.3kbのDNA断片を単離後、DNAブランティングキット(タカラバイオ社製)を用いて末端を平滑化し、pBlue−phaCRe::N149S/D171Gを制限酵素SalIで切断後同様に平滑末端化した部位に挿入した(pBlue−phaCRe::N149S/D171G−Km)。
続いて、プラスミドpMT5071(Tsuda、GENE,207:33−41(1998))を制限酵素NotIで処理してsacB遺伝子を含む約8kbのDNA断片を単離し、pBlue−phaCRe::N149S/D171G−Kmを同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子置換用プラスミドpBlue−phaCRe::N149S/D171G−KmSACを作製した。
本実施例で構築した遺伝子置換用プラスミドpBlue−phaCRe::N149S/D171G−KmSACの構成の模式図を図1に示す。
(実施例2)遺伝子置換株の作製
遺伝子置換用プラスミドpBlue−phaCRe::N149S/D171G−KmSACで大腸菌S17−1株(ATCC47005)を形質転換し、Ralstonia eutropha H16株とNutrient Agar培地(Difco社製)上で混合培養して接合伝達を行った。250mg/Lのカナマイシンを含むシモンズ寒天培地(クエン酸ナトリウム2g/L、塩化ナトリウム5g/L、硫酸マグネシウム・7水塩0.2g/L、リン酸二水素アンモニウム1g/L、リン酸水素二カリウム1g/L、寒天15g/L、pH6.8)上で生育してきた菌株を選択して、プラスミドがRalstonia eutropha H16株の染色体上に組み込まれた株を取得した(第一段階の相同組換え)。この株をNutrient Broth培地(Difco社製)で2世代培養した後、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地上に希釈して塗布し、生育してきた菌株を選択して選択マーカー遺伝子を含む領域が脱落した株を取得した(第二段階の相同組換え)。さらにPCRによる解析によりphaCRe遺伝子がN149S/D171G変異体遺伝子に置換された菌株を単離した。この遺伝子置換株をKNK−005株と命名し、塩基配列決定を、PERKIN ELMER APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー310 Genetic Analyzerを用いて行い、染色体上のphaCRe遺伝子の開始コドンから終止コドンまでがN149S/D171G変異体遺伝子の開始コドンから終止コドンまでに置換された株であることを確認した。
本実施例で行った遺伝子置換の手順を図2に模式的に示す。第一段階の相同組換えによって遺伝子置換用プラスミドは染色体中に挿入され、第二段階の相同組換えにより、そのプラスミドに相当する部分が再び環状になって染色体上から離脱する。第二段階の相同組換えの際、相同組換えを起こす位置により元と同じ置換遺伝子(図中のphaCRe::N149S/D171G)を伴って離脱する場合(Δ1)と、被置換遺伝子(図中のphaCRe)を伴って離脱する場合(Δ2)があり、本発明のKNK−005株は、Δ2の位置で第二段階の相同組換えが行われたことにより得られる菌である。
(実施例3)ポリエステルの生産および精製
種母培地の組成は、1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Trypton、0.2w/v%Yeast−extract、0.9w/v%NaPO・12HO、0.15w/v%KHPO、pH6.8とした。
前培養培地の組成は1.1w/v% NaPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v%(NHSO 、0.1w/v% MgSO・7HO、2.5w/v%パームWオレイン油、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)とした。
ポリエステル生産培地の組成は0.385w/v% NaPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0・291w/v%(NHSO 、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)、0.05w/v%BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。炭素源はパーム核油を分別した低融点画分であるパーム核油オレインを単一炭素源として用い、培養全般を通じ、比基質供給速度が0.08〜0.1(g油脂)×(g正味乾燥菌体重量)−1×(h)−1となるように流加した。
KNK−005株のグリセロールストック(50μl)を種母培地(10ml)に接種して24時間培養し、1.8Lの前培養培地を入れた3Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社製MDL−300型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度30℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールしながら28時間培養した。pHコントロールには7%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
ポリエステル生産培養は6Lの生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社製MDL−1000型)に前培養種母を5.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量3.6L/minとし、pHは6.7から6.8の間でコントロールした。pHコントロールには7%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。培養は約48時間行い、培養終了後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した結果、110.4g/Lであった。
得られた乾燥菌体約1gに100mlのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のポリエステルを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が約30mlになるまで濃縮後、約90mlのヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出したポリエステルをろ別後、50℃で3時間真空乾燥した。乾燥ポリエステルの重量を測定し、菌体内のポリエステル含量を算出した。その結果、KNK−005株によるポリエステル含量は48時間で73.8(wt%)という高含量であった。
(実施例4)ポリエステル生産能の安定性評価
実施例3のポリエステル生産培養終了時の培養菌液を希釈してNutrient Agar培地に播種し、生育してきたコロニーをNilered含有培地(リン酸水素2ナトリウム・12水塩 9g、リン酸2水素カリウム 1.5g、塩化アンモニウム 0.05g、硫酸マグネシウム・7水塩 0.02g、フルクトース 0.5g、塩化コバルト・6水塩 0.25ppm、塩化鉄(III)・6水塩 16ppm、塩化カルシウム・2水塩 10.3ppm、塩化ニッケル・6水塩 0.12ppm、硫酸銅・5水塩 0.16ppm、Nilered 0.5mg、寒天 15g/1L)に接種した。30℃、3日間の培養後、コロニーが赤色を呈しているものがポリエステルを生産していると判定できる。100コロニーを調べた結果、すべてのコロニーがポリエステル生産能を保持していた。
本発明によれば、産業用発酵過程においてポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を安定的に高生産できる組換え微生物株が提供され、高純度のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が簡便かつ大量に、しかも安価に製造することが可能となる。
実施例1で構築した遺伝子置換用プラスミドpBlue−phaCRe::N149S/D171G−KmSACの構成を示した模式図である。 実施例2で行った遺伝子置換の手順を模式的に示した図である。

Claims (8)

  1. ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子を染色体上に本来有するラルストニア属微生物であって、かつ該ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子の少なくとも一部が、アエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素又はその変異体をコードする遺伝子に置換され
    本来の染色体上のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子のコードする酵素活性が無くなり、かつアエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子が発現されている、
    3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシペンタデカン酸及び3−ヒドロキシヘキサデカン酸からなる群より選択されるモノマーユニットの2種以上から構成される共重合ポリエステルを生産するラルストニア属微生物。
  2. 共重合ポリエステルが3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸のモノマーユニットで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のラルストニア属微生物。
  3. ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子を染色体上に本来有する微生物がラルストニア・ユートロファであることを特徴とする、請求項1または2に記載のラルストニア属微生物。
  4. ラルストニア・ユートロファがラルストニア・ユートロファH16株であることを特徴とする、請求項3に記載のラルストニア属微生物。
  5. 変異体が、以下の(a)、(b)いずれかのアミノ酸置換を少なくとも一つ以上行ったものである、請求項に記載のラルストニア属微生物。
    (a)149番目のアミノ酸のアスパラギンをセリンに置換
    (b)171番目のアミノ酸のアスパラギン酸をグリシンに置換
  6. 外因性のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子が、149番目のアミノ酸のアスパラギンをセリンに置換し、かつ171番目のアミノ酸のアスパラギン酸をグリシンに置換した、配列番号9のアミノ酸配列で示されるアエロモナス・キャビエ由来の変異体酵素をコードするものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のラルストニア属微生物。
  7. 本来の染色体上のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子の開始コドンから終始コドンまでが、アエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子の開始コドンから終始コドンに置換されている、請求項1に記載のラルストニア属微生物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のラルストニア属微生物を用いたポリエステルの製造方法。
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