JP5476809B2 - 耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系Cr含有鋼 - Google Patents
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Description
以下、本発明を詳細に説明する。
以下に、本発明に係る耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系Cr含有鋼の成分組成の限定理由を説明する。 なお、成分組成を示す単位は、全て質量%とする。
C、Nは、固溶し、または、NbやVなどと炭窒化物を形成して析出し、焼入れ後や焼戻し後の硬さを高める効果を有する本発明において重要な元素である。焼入れ後および焼戻し後においても所定の硬さを確保するためには、C量、N量は、それぞれ、0.02%以上含有することが必要であり、さらにCとNの合計で0.08%以上含有することが必要である。
Siは、脱酸剤として含有される元素であり、その効果を得るためには、0.05%以上含有することが望ましい。しかし、0.5%を越えて含有すると、焼入れ時にフェライト相が生成し易くなり、硬さが低下する原因となる。よって、Si量の上限は0.5%以下とする。
Alを脱酸剤として含有される元素であるが、0.04%を越えて含有しても脱酸効果が飽和する。また、Alの過剰な含有は、Al系介在物による表面欠陥の増加や打抜き加工性の低下を引き起こす。特にAlの含有量が0.1%を越えると、その悪影響が顕著となるので、Al量の上限は0.1%とする。好ましくは、0.04%以下(0%を含む)である。
Mnは、脱酸効果がある他、焼入れ時のフェライト相の生成を抑制し、焼入れ後に安定して適正な硬さを確保するために有用な元素であり、この効果を得るためには、0.3%以上含有する必要がある。しかし、過剰に含有すると、打抜き加工性や耐食性が著しく低下するため、Mn量の上限を3.0%以下とする。なお、焼入れ性を安定して確保する観点からは、2.5%以下であることが好ましい。
Crは、本発明の鋼では、耐食性を向上するための必須元素であり、ブレーキディスク用素材に求められる耐食性を得るためには10.5%以上の含有が必要である。一方、13.5%を超えて含有すると、打抜き加工性や靭性が低下すると共に、焼入れ後に十分なマルテンサイト相が生成せず、適正な焼入れ硬さの確保が困難になる。よって、Cr量は10.5〜13.5%の範囲とする。なお、耐錆性を重視する場合には11.0%以上、打抜き加工性や耐熱性を重視する場合には13.0%以下であることが好ましい。
NbおよびVは、鋼中に固溶したり、C、Nと炭窒化物を形成したりすることにより、焼戻しによる軟質化を抑制する効果が高く、本発明が目的とする耐熱性、即ち、700℃で1時間の焼戻し後においてもHRC:30以上の硬さを確保するために必要な元素である。また、その効果を得るためには、NbとVを同時に含有することが重要であり、Nb量を0.05%以上、V量を0.15%以上、NbとVの合計量を0.25%以上とする必要がある。しかし、Nb、Vを過剰に含有すると、焼入れ時にフェライト相が生成し、却って、焼入れ後あるいは焼戻し後の硬さが低下する原因となるので、Nb量、V量は、それぞれ、0.60%以下、0.80%以下、NbとVの合計量を0.95%以下とする。
Niは、焼入れ時のフェライト相の生成を抑制し、焼入れ性を高めたり、耐食性を向上したりする元素である。それらの効果を得るためには0.02%以上含有する必要がある。一方、過剰に含有すると、焼入れ前の硬さが増加して打抜き加工性が低下し、また焼入れ後の硬さが、所定の範囲を越える場合もあるため、Ni量の上限は2.0%とする。特に打抜き加工性を確保するために、焼入れ前の硬さをHRBで95以下とするには、Ni量は1.5%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜1.4%の範囲である。
ここで、鋼中の含有窒素量[N]とは、鋼中に含有される全ての形態(固溶状態および析出状態の両方を含む)の窒素量であり、燃焼-赤外線吸収法等により求められる。
一方、析出物として析出した窒素の量は、鋼を適当な溶液で溶解し、その溶解液をろ過して得られる残渣として、鋼中に存在する介在物や析出物を分離した後、この残渣を混酸により加圧分解し、蒸留および吸光光度法で残渣中の窒素量を定量することにより、鋼に対する量(単位は質量%)として算出することができる。
本発明が目的とする耐熱性(耐焼戻し軟化性)を得るためには、上記した成分組成が、所定の範囲内にあることの他に、さらに、下記式(1)で定義されるFp値が、80.0〜96.0の範囲を満たすよう含有することが必要である。
本発明の低炭素マルテンサイト系Cr含有鋼の製造方法について説明する。
上述した成分組成を有する鋼を、転炉、電気炉などで溶製し、さらに溶鋼をVODやAODなどで二次精錬した後、連続鋳造法あるいは造塊-分塊圧延法で、厚さ100〜250mmのスラブとする。なお、生産性や鋼板材質の均質性観点からは、連続鋳造法が好ましい。
次に、ブレーキディスクの製造方法について説明する。
上述した熱延鋼板あるいは冷延鋼板のコイルあるいは切り板から、打抜き加工などにより円盤状に打抜き、さらに冷却や磨耗粉などの排出機能を有する溝や小孔などを打抜き加工し、所望の形状とする。次いで、高周波誘導加熱装置や、バッチ式あるいは連続式の熱処理炉や高周波加熱装置を用いて、950〜1250℃の温度に加熱後、空冷以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を行い、その後、酸洗処理や表面研磨によるスケール除去、不動態化処理などの酸処理や塗装による防錆処理などを施してブレーキディスクとするのが好ましい。また必要に応じて、歪取り焼鈍を行なってもよい。さらに本発明の鋼は、焼入れ処理のみでブレーキディスクに使用できること(焼戻し処理不要)が大きな特徴の1つであるが、焼戻し処理を行ってから使用してもよい。
次に、発明者等はブレーキディスクの硬さとマルテンサイト組織中の転位密度との関係を調査した。その結果、硬さとマルテンサイト中の転位密度とは密接な関係があり、マルテンサイト中の転位密度を適正範囲に調整することにより、ブレーキディスクの硬さを適正範囲に制御することが可能であること、そして、ブレーキディスクの焼戻しによる軟化を防止するためには、マルテンサイト組織中の転位の回復を抑制することが有効であることを知見した。
供試材から25mm角の測定試料を切り出して測定面を鏡面研磨し、Cu-Kα線(λ=0.1788965nm)を線源とするX線回折(θ-2θ測定)を実施した。次に、測定された回折ピークの拡がりからWilliamson-Hall法を適用して、不均一歪(ε)を導出した。すなわち、母相bcc鉄の(110)、(211)および(220)面の回折ピークを用い、測定した回折ピークの半価幅(β)と回折角(θ)およびX線の波長との間でβcosθ/λとsinθ/λの関係をプロットし、これらの直線の傾きからεを導出した。表2の転位密度(ρ)はこのεとbcc鉄のバーガースベクトル(b)を用いて次記式(2)(非特許文献2より)から求めたものである。
鋼種1、2は、1150℃で1分焼入れた後、表2に示す各条件で焼戻しを行った。鋼種3〜12は、それぞれ1150℃で1分、1200℃で2分 の2水準で焼入れた後、700℃で1時間の焼戻し処理を行なった。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.02〜0.10%、N:0.02〜0.10%、C+N:0.08〜0.16%、Si:0.5%以下、Al:0.1%以下(0%を含む)、Mn:0.3〜3.0%、Cr:10.5〜13.5%、Nb:0.05〜0.60%、V:0.15〜0.80%、Nb+V:0.25〜0.95%、Ni:0.02〜2.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、式(1)で表されるFp値が80.0〜96.0であり、鋼中の含有窒素量を[N]、臭素−メタノール混合溶液を用いて定量される析出状態の窒素量を[N’]とした場合に、700℃で1時間の焼戻し後の[N]−[N’]の値が0.057質量%以上であることを特徴とする耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系Cr含有鋼。
Fp値=-230[C]+5[Si]-5[Mn]-6[Cu]+10[Cr]-12[Ni]+32[Nb]+22[V]+12[Mo]+8[W]+10[Ta]+40[Al]-220[N] ・・・・・(1)
なお、上記式中の[M]は、鋼中に含有される元素Mの量(質量%)を示す。 - さらに、質量%で、Moを0.1〜2.0%含有することを特徴とする請求項1に記載の耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系Cr含有鋼。
- さらに、質量%で、B:0.0002〜0.0060%を含有することを特徴とする請求項2に記載の耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系Cr含有鋼。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の低炭素マルテンサイト系Cr含有鋼を用いて製造されたことを特徴とする耐熱性に優れたブレーキディスク。
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