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JP5482003B2 - 熱間鍛造非調質鋼 - Google Patents
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Description

本発明は、低コストで高い耐力を確保できる熱間鍛造非調質鋼に関する。
クランクシャフトやコンロッド等自動車のエンジン部品のような比較的大きな部品は、必要な成形荷重が高くなることから、変形抵抗を小さくできる熱間で鍛造により製造されることが多い。強度の優れた熱間鍛造品を得るには、焼入焼もどし、すなわち調質処理を行なうことが最適であるが、多大なエネルギーを必要とすることから、従来より熱間鍛造のままで必要な強度を確保でき、焼入焼もどしを省略することができる熱間鍛造用非調質鋼が多く用いられている。
この熱間鍛造用非調質鋼の中で最も多く用いられているのが、Vを添加し鋼中にその炭化物を析出させ、その析出強化によって強度を高め、必要な強度を確保する、V含有のフェライトパーライト型非調質鋼であり、昭和50年代より使用が開始され、数多くの改善がなされ、現在に到っている。
しかし、近年原油価格が急激に変化し、ガソリン価格が大幅に高騰する場合が頻発していることや、温暖化防止に伴うCO排出量低減の必要性から、自動車の燃費向上のため、エンジン部品についてもその軽量化のための強度改善策の新規提案に対する要求が極めて強く、一方でコストに対する要求もますます厳しくなっている。
このような中でコストを大きく上昇させることなく従来鋼より強度を大きく改善することのできる新しい熱間鍛造用非調質鋼の開発が強く望まれている。
従来、熱間鍛造用非調質鋼の強度を高めるために最も重要なポイントとなる元素はVと考えられ、強度を高めるにはVを増量するのが最も簡単に強度を高めることができる方策であると考えられていた。ところが、V増量はコストの増加につながるとともに、最近特殊鋼製造に必要不可欠となる合金鉄の大幅な価格変動が非常に頻繁となり、コストが安定した材料の提供を行なっていくためには、V増量に依存した強度向上策を採用するのは、難しいのが現状である。
そのような中で、最近コストに大きな影響を及ぼさないが、不純物として鋼中に含有しているNについて、その量を低減することにより強度を高めようとする試みが提案されている(特許文献1等)。すなわち、析出強化元素であるVはCだけでなくNとも結びつきやすい元素であるため、Nが鋼中に存在しているとVの一部がCではなくNと結びつき、本来強度向上のために添加したVの強度向上効果が低下してしまうからである。
従って、特許文献1に記載の発明では、強度向上に寄与可能となるV炭化物の析出量を、V含有率を大きく変化することなく増やすために、Vと結合する可能性のあるNについて、その含有率の上限を制限するとともに、さらにVと同様にNと結合しやすい元素であるTi、Nb、Zrも添加してNを固定し、鋼中に含有する全Vのうちの強度向上に寄与するVの割合を高めようとする内容の発明が提案されている。
特開2008−240130号公報
しかしながら、上記の従来技術では、以下の問題がある。
前記文献では、Nの上限を80ppmに制限しているものの、それだけでなくNと結合しやすい元素であるTi、Nb、Zrを添加することにより、Nを固定し、V炭化物の析出量の増加を図っている。しかしながら、Nの上限を制限しVNの生成を抑制することで、V炭化物の強度向上効果を高めることによりコスト面で有利な対策を提案しているのに、一方でコスト増につながるTi、Zr、Nbを添加することを必須としている。従って、コスト面で優れた鋼の製造が難しいという問題がある。
また、Ti、Zr、NbはNと結合しやすいと同時に、Cとも結合しやすい元素である。従って、Nの固定のために添加したはずのTi、Zr、Nbの一部がCと結合して炭化物を形成することとなるため、その結果狙いとは逆にV炭化物を生成を減少させる原因となり、狙い通りの効果が得られないという問題がある。さらに、Nbは添加するとベイナイトが生成しやすくなり、フェライトパーライト型非調質鋼の一部にベイナイトが生成した場合には耐力が低下するという問題がある。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、Ti、Nb、Zr等のN固定元素を用いず、かつNを意図的に極力低減することにより、従来の同程度のV含有率の非調質鋼に比べ大幅に耐力を改善可能とし、比較的低コストで高い耐力が確保できる熱間鍛造非調質鋼の提供を可能にすることを目的とするものである。
Nは大気中に約78%の割合で含有し、大気内で溶解するとその含有は製造上避けることができない元素としてよく知られた元素である。特に本発明である熱間鍛造非調質鋼等の特殊鋼においては、高炉や転炉を用いての製造よりも、スクラップを用い電気炉で製造される場合が多く、電気炉溶解の場合には、Nは高炉、転炉での製造に比較して含有率が高くなる傾向にある。そして、従来は前記したごく一部の先願を除けば、NもCと同様に析出物である窒化物や炭窒化物を形成し、非調質鋼の強度向上に寄与する元素であるとして認識されており、製造上含有が避けられない元素であると認識されているにもかかわらず、特にその含有率を低減しようとする試みはされておらず、先願に記載されているN含有率の範囲は、電気炉溶解による通常の製造工程で普通に含有するレベルである100ppmレベルを完全に含む範囲が指定されているものがほとんどであった。
本発明者等は、V等の炭化物形成元素の添加を大きく増量することなく、強度、特に耐力の改善を図ることができないかについて検討するため、V等の炭化物形成元素がどのような状態で鋼中に存在した場合に最も効率よく耐力を改善できるかについて詳しく調査した。その結果、前記した先願と同様にV等の炭化物形成元素がNと結合して窒化物として存在することを可能な限り抑え、NではなくCのみと優先的に結合させ、炭化物として多量に析出させる必要があるという結論に到った。
しかしながら、前記した先願ではVをCと優先的に結合させるために、Nの上限を80ppmに制限することに加え、Nを窒化物として固定するために、Nとの親和力の大きい元素であるTi、Nb、Zrを1種又は2種以上添加すること必須としており、これらの元素の添加によりコストが上昇するおそれがある。そこで、さらに検討した結果、Nの上限をさらに下げて、60ppmとした場合には、窒化物となりえるN自体が通常より大きく減少しているため、Ti、Nb、Zr等のN固定元素は逆に添加しない方がよいこと、すなわち、N含有率が60ppm以下に低減されている状態でTi、Nb、Zrを添加した場合、Nが既に十分に少ないため、これらの元素の一部がNではなくCと結合して炭化物を形成し、その結果Cを消費してしまうため、かえってV炭化物析出による強度向上効果が減少してしまうこと、Nbを添加した場合、焼入性が上昇してベイナイト組織が生成し、耐力が大きく低下することを新規に見出し、本発明を完成したものである。
以上の検討の結果得られた本発明の熱間鍛造用非調質鋼は、質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.040〜0.100%、Cr:0.50%以下、Mo:0.05%以下、V:0.20〜0.40%、Al:0.050%以下、N:0.0060%以下、Nb:0.02%未満を含有(但し、V(%)+30N(%)≦0.375%である場合を除く。)し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、Ceq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+Vが0.9以上で、熱間鍛造し空冷後の硬さがHv340以上であり、組織がベイナイト面積率10%以下のフェライトパーライトであることを特徴とする。
本発明である熱間鍛造非調質鋼は、製造上含有が避けられない元素であるNについて、その上限を厳しく管理し、0.0060%以下としたことを特徴とするものである。これにより、添加したVを窒化物としてではなく、その大半を炭化物として優先的に存在させ、添加したVの全量に対する炭化物としての存在比率を高めることにより、V添加量を増量することなく、耐力を大きく改善したものである。また、Nの上限を0.0060%まで低減したことにより、先願でN固定のために添加されていたTi、Nb、Zrの添加が不要となり、比較的低コストの材料で高い耐力を有する熱間鍛造用非調質鋼を提供することが可能となる。
Ceqが0.9程度の供試材におけるN含有率と0.2%耐力との関係を示すグラフ図。 Ti、Zrを含有した場合の0.2%耐力への影響を示すグラフ図。 Nbを含有した場合のベイナイト面積率への影響を示すグラフ図。 ベイナイトが生じた場合の0.2%耐力への影響を示すグラフ図。
本発明である熱間鍛造非調質鋼は、前述したように、質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.040〜0.100%、Cr:0.50%以下、Mo:0.05%以下、V:0.20〜0.40%、Al:0.050%以下、N:0.0060%以下、Nb:0.02%未満を含有(但し、V(%)+30N(%)≦0.375%である場合を除く。)し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、Ceq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+Vが0.9以上で、熱間鍛造し空冷後の硬さがHv340以上であり、組織がベイナイト面積率10%以下のフェライトパーライトであることを特徴とする。
以下、成分等本発明の各要件について、その上下限を限定した理由について説明する。
C:0.30〜0.50%
Cは、熱間鍛造後の冷却時にVと結合して炭化物となってフェライト中に析出し、析出強化によって強度(特に耐力)を改善する元素であり、本発明の高い耐力を達成するために必要不可欠となる元素である。この効果を得るためには、0.30%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cを増量していくと被削性が低下し、鍛造後に行なう所定形状への機械加工が困難となるため、上限を0.50%とした。
Si:0.05〜1.00%
Siは、溶解後の精錬時に脱酸のために必要となる元素であり、最低でも0.05%以上の含有が必要である。しかしながら、Si量が増加すると熱間鍛造時の加熱及びその後の冷却過程において、表面が脱炭されやすくなり、疲労強度低下の原因となる。従って、上限を1.00%とした。望ましくは0.30%以下とするのが良い。
Mn:0.50〜1.50%
Mnは、製鋼時の脱酸ならびに鋼の強度、靭性バランスを調整するために添加される元素であり、0.50%以上の含有が必要である。しかし、Mnはその添加量を増量していくとベイナイト組織が生じやすくなり、ベイナイト組織が増加すると本発明で最も重視している特性である耐力が低下する原因となる。従って、その上限を1.50%とした。
S:0.04〜0.10%
熱間鍛造のみでは、最終部品形状までの加工は不可能であることから、鍛造し冷却後に必ず機械加工が必要となる。Sは、被削性向上に効果のある元素として知られており、本発明で得られた鍛造品を最終形状に機械加工する際に必要な被削性を確保するためには不可欠な元素となるため、0.04%以上の含有が必要である。しかし、多量に含有すると被削性は改善されるが、鍛造時に割れが生じやすくなるため、上限を0.10%とした。
Cr:0.50%以下
Crは、Mnと同様に鋼の強度、靭性バランスを調整するために有効な元素である。しかしながら、添加量を増加していくと、Mnの場合と同様にベイナイト組織が生じやすくなり、耐力低下の原因となるため、上限を0.50%とした。
Mo:0.05%以下
Moは、Mn、Crと比較して非常に少量の含有でベイナイト組織を生じさせるため、高い耐力を得るためには望ましくない元素である。Moは、本発明では不純物としての含有であるが、少量でもその含有の影響が大きいことから、上限を0.05%と明確に示すこととした。
V:0.20〜0.40%
Vは、熱間鍛造後の冷却時に炭化物となってフェライト中に析出し、析出強化により強度(特に耐力)を改善する元素であり、本発明にとって最も重要となる元素である。しかしながら、Vはコストに大きく影響する元素であり、かつ添加量を増加していくと、強度改善効果が小さくなり、コスト増に見合う機械的性質改善効果が得られなくなるため、上限を0.40%とした。
Al:0.050%以下
Alは、脱酸処理を行なう際に効果のある元素であり、Alにより脱酸を行なう場合には、必要となる元素である。しかしながら、その添加量を増加すると硬質なアルミナ系の介在物が増加し、被削性が低下する傾向となる。従って、多量の含有は望ましくないので、上限を0.050%とした。
N:0.0060%以下
Nは、大気中に最も多く含まれる元素であり、大気溶解をする場合には製造上不純物として含有が避けられない元素である。そして、特にその量に配慮せずに製造した場合、電気炉溶解では、鋼中に0.008〜0.012%程度含有するのが普通である。この程度の量のNが含有した場合、Vの一部がNと結合して窒化物となることでVを消費してしまうため、V炭化物生成による強度向上効果が低下してしまう。
従って、本発明ではV炭化物の析出による強度改善効果を最大限活かし、Vの添加量を大きく増やすことなく高強度達成を可能とするため、Nの上限を0.0060%以下と通常含有する不純物レベルから、さらに低減したものである。0.0060%以下のN含有率からなる鋼を安定して製造するには、溶解直後の精錬時に、その含有率をチェックしつつ製造することが不可欠となる。なお、0.0060%以下のN含有率は、真空脱ガス装置(RH)等で処理することにより達成が可能である。
また、本発明ではNの上限を0.0060%に抑制しているので、先願のようにTi等のNと親和力のある元素を添加してNを固定しなくても、V炭化物の強度向上効果を十分に得ることができる。かつTi等のN固定元素はCと結合しやすい元素でもあるため、N固定元素の添加によるCの消費もなく、その結果、V添加量を増量しなくても、V炭化物析出量が増加し、同じV含有率で達成できる強度を高めることができる。
Nb:0.02%未満
Nbは、Nを固定する元素として知られており、前記した先願では重要元素として知られている。しかしNbは固溶すると焼入性が上昇し、少量の含有であってもベイナイト組織が生じる原因となる元素である。その場合繰返し記載している通り耐力低下の原因となるため、本発明では望ましくない元素であり、その許容される上限の含有率を明確にする必要があるため、上限を0.02%未満とした。
Nb以外のN固定元素として知られるTi、Zrについては、Nbに比べ少量含有によるベイナイト組織生成への影響が小さいため、特に上限は明記しないが、前記した通り積極添加は好ましくないため、Tiは0.010%未満、Zrは0.020%未満であることが望ましい。
また、Ceq(炭素当量)=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+Vが0.9以上である。なお、上記式における、C、Si、Mn、Cr、Vは、それぞれの成分の鋼中含有率(質量%)である。
本発明では、0.2%耐力で850MPaという高い強度を達成することを目的としており、その達成のためには、上記した式で定められる炭素当量が0.9以上となるよう成分調整した上で、既に説明したV炭化物の析出強化を図る必要がある。
なお、特に上限は示していないが、あまり炭素当量が高くなりすぎると被削性が低下する傾向があるので、高くても1.2以下程度とすることが望ましい。
次に本発明の熱間鍛造非調質鋼では、Hv340以上と規定している。硬さは被削性を重視するのであれば、従来の多くの非調質鋼がそうであるようにHv300以下とする方が望ましい。しかし、本発明では0.2%耐力を850MPa以上を達成することを目的としており、そのためには硬さをHv340以上とすることが必要条件である。硬さをHv340以上とした上で、さらに組織がベイナイト面積率10%以下のフェライトパーライト組織とする等、前記した説明通りの対策を実行することにより、目的とする優れた耐力を達成することができる。
また、本発明における熱間鍛造非調質鋼の熱間鍛造後の組織は、ベイナイト面積率が10%以下のフェライトパーライト組織である。
既に何度も説明している通り、本発明ではフェライトパーライト組織であることを基本としており、耐力低下の原因となるベイナイト組織はできるだけ少ない方が望ましい。さらにベイナイト組織の割合が高くなると、同一硬さで比較しても被削性が低下するという問題がある。しかし、ベイナイト組織の存在が少量であればその悪影響は比較的小さいので、許容できる最大値を明確にするために上限を10%と明記したものである。
なお、各成分含有率及びCeqが上記した条件を全て満足していたとしても、全ての成分がベイナイトの生じやすい条件の組合せだった場合(例えば、Mn、Cr、Mo、Nbが全て上限値近く含有の場合等)には、鍛造後の冷却条件によっては、ベイナイト面積率が10%以上となる場合がありえる。この場合はベイナイト面積率が10%範囲内となるよう成分を調整する必要があり、ベイナイト面積率が10%以下となるよう調整した後の熱間鍛造非調質鋼のみが本発明の範囲内となり、かつ目的とする強度を確保できるものである。
次に本発明の効果を実施例により説明する。
表1に、実施例として用いた供試材の化学成分を示す。このうち、1〜9鋼は本発明の条件を満足する実施例であり、10〜32鋼は一部の条件が本発明で規定した条件を満足しない比較例に該当する供試材である。
なお、表1中に記載の成分のうちP、Cu、Ni、Ti、Zrについては、特許請求の範囲に記載していないが、供試材中に不純物として含まれていた含有率を示したものである。また、Ti、Zrについては、本発明では不純物としてのみの含有を許容するものであるが、積極添加された場合との違いを明確にするため、一部の供試材では積極添加しており、その含有率を示したものである。ここで、表中の−で表示したのは、含有率がNbについては0.01%未満、TiとZrについては0.009%未満であることを意味する。また、表1中でTiが0.009%である鋼No.6、Zrが0.018%である鋼No.7は、Ti、Zrを不純物として含むスクラップを用いたために、少量Ti、Zrを含む供試材となったことを意味する。
Figure 0005482003
そして、表1に記載の成分からなる電気炉溶解し、熱間圧延された棒鋼を鍛伸し、φ35mmの丸棒を製造した後、実際の熱間鍛造における標準的な温度である1200℃に加熱し30分保持後ファン空冷して室温まで冷却し、以下に示す通り硬さ、ベイナイト面積率、0.2%耐力の測定を行なった。
硬さ、ベイナイト面積率は、供試材を切断し、T断面のD/4部分について測定した。硬さの評価は、ビッカース硬さ(JISZ2244(2003)に準拠)を測定することにより実施した。また、ベイナイト面積率は、ナイタールで腐食し、光学顕微鏡を用いて観察することにより行なった。
強度については、引張試験により0.2%耐力を測定することにより行なった。引張試験は、硬さ、ベイナイト面積率を測定した場所と同様にD/4部から切り出して作製した試験片により実施した。
硬さ、ベイナイト面積率、0.2%耐力の測定結果を表2にまとめて示す。
Figure 0005482003
実験結果に対する評価は、表2に示した結果に基づき、わかりやすくグラフに記載した図1〜図4を使って説明する。
まず、本発明の最も特徴となる試験結果を示すために、0.2%耐力に及ぼすN含有率の影響を記載した図1について説明する。
図1は、Ceqの変化により耐力への影響が生じないよう0.9程度となるよう成分調整した上で、V含有率が0.2%程度でN含有率を59ppmから200ppmまで変化した供試材(鋼No.2、10、11)とV含有率が0.3%程度でN含有率が47ppmから227ppmまで変化した供試材(鋼No.1、12、13)について、引張試験により得られた0.2%耐力の結果を示したものである。
図1より、0.2%耐力はN含有率の変化により大きく変化し、V含有率を0.2%とそれほど高い含有率としない場合であっても、N含有率を60ppm以下とすることによって、850MPa以上の高強度を得ることが可能となることがわかる。また、V含有率を0.3%とした場合では、さらに高い900MPa程度まで耐力を高めることが可能である。この高い耐力が得られる効果は、従来のようにN含有率について何ら低減する処置を実施していない場合には困難であり、図1から明らかなように、脱ガス処理の操業条件の見直し等により、意図的にN含有率を60ppm以下となるよう製造した母材を用い、熱間鍛造した場合に限って得ることができるものである。
次に図2は、先願でN固定のために添加していたTiとZrについてその含有率による0.2%耐力への影響を把握するために表2の結果をプロットしたものである。図2の結果に用いた供試材は、表2に示した本発明に該当する実施例のうち、Ceqが0.90〜0.94の供試材(鋼No.1、2、6〜8)と、Nを低減せずに150ppm程度含有し、N固定元素であるTi又はZrが積極添加された比較例(鋼No.19、25)と、Nを本発明と同様に60ppm以下に低減しているものの、N固定元素を本発明とは異なり積極添加した供試材(鋼No.14〜25)である。なお、図1の場合と同様にCeqの変化による耐力への影響を考慮して、Ceqは一部を除いて0.9程度となるように調整した供試材を用いた。但し、一部の比較例には、Ceqが1.0程度の供試材も含まれている。
図2の結果から明らかなように、本発明では、全ての供試材について850MPa以上の耐力を示し、比較例のうちNを低減していない供試材(鋼No.19、25)についても同様に850MPa以上の耐力を示した。鋼No.19、25の比較例はV含有率が0.20〜0.21%、Ceqが0.90%と前記した本発明の供試材の中の最も低い鋼No.2とほぼ同じであることを考慮すれば、前記した本発明の供試材の耐力に比較して若干低めであることは、V含有率とCeqの差であると判断することができ、本発明と同等の耐力を示すということができる。従って、N含有率が高い場合には、N固定元素であるTi、Zrの添加は一定の効果を示すということができる。
ところが、Nを低減しつつN固定元素であるTi、Zrを積極添加した比較例(鋼No.14〜25)については、一部にV含有率が0.35%以上であったり、Ceqが1.0%と高い供試材が含まれ、高い硬さ及び耐力を得るのに有利な条件となっているにもかかわらず、全ての供試材について耐力が850MPa未満となるとともに、硬さがHv340以下と低下したものがあった。これは、本発明のように、Nを60ppm以下に低減した場合では、N固定元素の添加はV炭化物の増加に寄与せず、逆にV炭化物となる可能性のあるCの一部を消費して、耐力が低下したと推定される。
次に、図3は、比較例のうち、Nb、Nを除く成分が本発明の条件を満足する供試材(鋼No.26〜29と、Nb以外の成分が本発明の条件を満足する供試材(鋼No.30)について、Nbを含有しないか、その含有率が0.01%未満である本発明の供試材(鋼No.1〜9)の結果と比較することにより、Nb含有によるベイナイト面積率への影響をグラフにプロットしたものである。図3から明らかなように、Nを低減しているかどうかに関係なく、Nbを含有するとベイナイトが生成し、表2及び後述の図4の結果から明らかなように、耐力が低下することがわかる。
ここで、ベイナイト面積率がNb含有率の増加に伴い上昇していくのではなく、Nbを微量添加した場合に最大に達し、さらにNbを増量すると徐々にベイナイト面積率が低下する傾向となっているのは、Nbが少量しか固溶しないため、添加量を増加すると固溶しないNbが炭化物や窒化物として析出し、結晶粒微細化効果が得られた結果、焼入性が低下した影響が結果に反映したためと推定される。また、一部の鋼で硬さがHv340以下とCeqがほぼ同じである本発明の供試材に比較して低くなっているのは、Ti、Zr添加による場合と同様にV炭化物減少の影響によるものと推定される。
次に図4は、比較例のうちNb又はMoを含有することにより、組織の一部にベイナイトが生成した供試材(鋼No.26〜32)と、ベイナイトが生成していない本発明の供試材について0.2%耐力を比較したものである。ここで、鋼No.26〜32のCeqが0.90〜0.98であることを考慮し、Ceqによる影響を排除するため、本発明の供試材についてはCeqが1.0以上である供試材を除外してプロットした。この結果から明らかなように、ベイナイト面積率は10%以下であれば、耐力への影響は小さく、850MPa以上の高い0.2%耐力を確保することができるのに対し、Nb、Moの含有により10%以上の面積率でベイナイトが生じた供試材については、耐力が大きく低下することがわかる。
以上説明した結果から明らかなように、本発明ではN含有率を60ppm以下とすることで、窒化物生成によるVの消費を抑制して、V炭化物の析出強化による強度向上効果がより大きく得られるようにしたことにより、同じV添加量でもより高い強度の得られる熱間鍛造非調質鋼を製造可能としたものである。さらに、N含有率を60ppm以下としたことにより、N固定元素の添加を不要とし、コスト面で非常に優れた非調質鋼の製造が可能となり、その効果は非常に大きいものである。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.040〜0.100%、Cr:0.50%以下、Mo:0.05%以下、V:0.20〜0.40%、Al:0.050%以下、N:0.0060%以下、Nb:0.02%未満を含有(但し、V(%)+30N(%)≦0.375%である場合を除く。)し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、Ceq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+Vが0.9以上で、熱間鍛造し空冷後の硬さがHv340以上であり、組織がベイナイト面積率10%以下のフェライト・パーライトであることを特徴とする熱間鍛造非調質鋼。
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