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JP5482628B2 - 鋳造品の検査方法 - Google Patents
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JP5482628B2 - 鋳造品の検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳造品の検査方法に関する。特に、鋳造品の内部の異常を特定する技術に関する。
特許文献1には、鋳造品内部に渦電流を生じさせ、渦電流の分布や変化を検出することによって、鋳造品の欠陥を特定する技術が開示されている。ここでいう「欠陥」とは、典型的には鋳造品の強度が不足する箇所である。
特開2005−91288号公報
渦電流は、鋳造品の温度によって流れ方が変化する。このため、特許文献1の技術では、高温状態にある鋳造品の欠陥を正確に特定することができない。また、特許文献1の技術では、渦電流を検出するために鋳造品にプローブを取り付ける必要がある。高温状態にある鋳造品にプローブを取り付けることは通常はできない。以上の理由から、特許文献1の技術では、高温状態にある鋳造品の検査を行うことができない。したがって、特許文献1の技術では、型から取り出した鋳造品が冷却された後でなければ、鋳造品を検査できない。検査のための冷却時間を省略することができれば、鋳造品の製造効率を向上させることができる。即ち、高温状態にある鋳造品の検査を行うことができれば、製造効率の向上が見込める。なお、「高温状態にある鋳造品」とは、典型的には、鋳造直後の鋳造品である。
本明細書は、高温状態にある鋳造品の検査を行うことができる鋳造品の検査方法を提供する。
本明細書が開示する技術は、鋳造品の表面から発せられる赤外線強度を用いて鋳造品を検査する技術を提供する。この技術は、詳しくは後述するが、鋳造品の品質と鋳造品表面の粗さとの間に相関があるという知見、及び、鋳造品表面の粗さと表面から放射される赤外線強度との間にも相関があるという知見に基づいて創作されたものである。
本明細書が開示する鋳造品の検査方法は、鋳造品表面において熱放射赤外線比率が基準値よりも高い高放射領域の赤外線強度を検出するとともに、鋳造品表面において検査対象として定められた検査領域の赤外線強度を検出するステップと、検査領域の赤外線強度と高放射領域の赤外線強度との比率を算出するステップを有している。なお、上記の「領域の赤外線強度」とは、その領域内の鋳造品の表面で生じている赤外線の強度を意味する。典型的には、「領域の赤外線強度」は、鋳造品の表面をサーモグラフィ装置で撮影したときにその領域で計測される赤外線の強度に相当する。
高放射領域及び検査領域の赤外線強度を検出するステップでは、これらの領域の赤外線強度に加えて他の領域の赤外線強度を検出してもよい。例えば、典型的には、サーモグラフィ装置で鋳造品表面の広い範囲の赤外線強度分布を計測した後、計測範囲に含まれる高放射領域と検査領域について、それらの領域の赤外線強度を特定すればよい。また、検査領域は、複数存在していてもよい。
また、鋳造品の表面で観測される赤外線には、鋳造品からの熱放射により生じる赤外線と、鋳造品の表面で反射した赤外線が含まれている。上記の「熱放射赤外線比率」とは、鋳造品の表面で生じている赤外線のうちで熱放射により生じている赤外線の割合を意味する。したがって、上記の「高放射領域」とは、熱放射により生じている赤外線の割合が高い部分を意味する。鋳造品に形成されている凹部の内側等の部分には、外部から赤外線が到達し難いので、反射による赤外線が少なくなる。したがって、このような部分は、熱放射赤外線比率が高くなり、高放射領域として用いることができる。赤外線強度を検出する高放射領域は、予め決めておいてもよいし、検査する毎に特定してもよい。高放射領域の熱放射赤外線比率は、なるべく高いことが好ましい。例えば、基準値を95%等の100%に近い値に設定することができる。この場合には、熱放射赤外線比率が95%以上の領域の中で高放射領域を選択することができる。また、基準値は、相対的に定めることもできる。例えば、周囲の領域よりも熱放射赤外線比率が相対的に高い領域を高放射領域としてもよいし、鋳造品表面の赤外線強度の観測範囲の中で熱放射赤外線比率が最大の領域を高放射領域としてもよい。
この検査方法では、型から取り出された鋳造品の表面のうちの検査領域と高放射領域の赤外線強度を検出する。次に、検査領域の赤外線強度と高放射領域の赤外線強度との比率(以下、強度比率という)を算出する。高放射領域で観測される赤外線の多くは熱放射による赤外線である。また、型から取り出された鋳造品の温度は、鋳造品の全体で略均一に分布している。このため、鋳造品の各部から熱放射により生じている赤外線の強度は、高放射領域の赤外線強度と略等しい。したがって、前記強度比率は、検査領域の熱放射赤外線比率に相当する値となる。熱放射赤外線比率は、鋳造品のうちの表面が粗い(面粗度が高い)部分では低くなり、表面が滑らかな(面粗度が低い)部分では高くなる。したがって、前記強度比率から、検査領域の面粗度を特定することができる。他方、粗材(金型から取り出しただけの鋳造品であって切削加工前の鋳造品)の構造特性(特に、強度に関わる構造の特性)は、粗材(鋳造品)の表面の面粗度と相関があることが知られている。したがって、検査領域の面粗度を特定することで、検査領域の粗材の異常を特定することができる。ここで、「粗材の異常」とは、粗材の強度が想定された強度よりも低いこと、或いは、粗材の表面に「カジリ」(後述)が発生していること、などである。また、赤外線強度の測定は、高温状態にある鋳造品に対して容易に行うことができる。即ち、この検査方法は、型から取り出された高温状態にある鋳造品を検査するのに好適である。
上述した検査方法は、検査領域を叩くことで生じる音の周波数を検出するステップをさらに有することが好ましい。また、上述した検査方法は、検査領域を叩くことで生じる音の減衰率を検出するステップをさらに有することが好ましい。
鋳造品を叩くことで生じる音の周波数は、叩いた部分の粗材の構造特性に応じて変化する。粗材の結晶粒径が小さい場合には、叩くことで生じる音の周波数は高くなる。したがって、検査領域を叩くことで生じる音の周波数を検出することで、検査領域の粗材の異常を特定することができる。また、鋳造品を叩くことで生じる音は、叩いた部分にクラック等の欠陥があると、早く減衰する。したがって、検査領域を叩くことで生じる音の減衰率を検出することで、検査領域の粗材の異常を特定することができる。鋳造品を叩く検査も、鋳造品が高温のときに実施することができる。これらの音による検査と上述した熱放射赤外線比率による検査を組み合わせて用いることで、より精密な検査を行うことができる。
上述した検査方法は、算出された比率(すなわち、強度比率)を予め用意された基準強度比率と比較することで、検査領域の品質を分別するステップをさらに有することが好ましい。基準強度比率は、実験等により予め定められる強度比率であり、鋳造品の特定の品質(典型的には強度)と一意に対応する強度比率に相当する。例えば、基準強度比率は、鋳造品に要求される強度に対応する強度比率として実験によって定められる。
この検査方法では、強度比率を予め用意された基準強度比率(例えば、通常時に得られる強度比率)と比較することで、検査領域内の表面の面粗度が通常時の面粗度と近いか否かを判定することができる。基準強度比率と大きく異なる強度比率が算出された場合には、検査領域に何らかの異常があることが分かる。一例として、検査で得られた強度比率が基準強度比率よりも大きければその鋳造品は品質合格に分類され、検査で得られた強度比率が基準強度比率よりも小さければその鋳造品は品質不良に分類される。
粗大構造の粗材の内部構造を示す模式的な断面図。 緻密構造の粗材の内部構造を示す模式的な断面図。 二層構造の粗材の内部構造を示す模式的な断面図。 実施例の検査方法を示すフローチャート。 熱放射による赤外線A1と反射による赤外線A2の説明図。 各検査領域のマスタ熱放射赤外線比率を示す表。
以下に、実施例に係る検査方法の特徴を列記する。
(特徴1)実施例は、繊維状カーボンが塗布されたキャビティ面を用いて鋳造されたダイカスト製品を検査する方法に関する。
(特徴2)ダイカスト製品の表面に複数の検査領域が定められている。
(特徴3)検査領域毎に赤外線強度を検出し、検査領域毎に強度比率を算出する。
(特徴4)検査領域毎に通常時の熱放射赤外線比率が定められている。なお、「通常時の熱放射赤外線比率」とは、予め定められた品質基準に合格した鋳造品の熱放射赤外線比率を意味する。
(特徴5)検査領域毎に、検出した強度比率と通常時の熱放射赤外線比率を比較する。
実施例の検査方法では、ダイカスト製品を検査する。最初に、検査対象のダイカスト製品について説明する。実施例の検査方法で検査するダイカスト製品は、Al(アルミニウム)に少量の他種金属(Cu、Si、Mg等)を添加した合金の溶湯を金型内に流し込み、溶湯を凝固させることによって製造される。溶湯が凝固する際には、まず、溶湯内で初晶が析出する。溶湯の温度が低下するに従って、初晶の数が増大するとともに、各初晶の粒径が増大する。さらに温度が下がると、初晶の周囲の溶湯が凝固して共晶となる。したがって、ダイカスト製品の粗材の内部には、多数の初晶が存在している。初晶の粒径は、溶湯を冷却する際の冷却速度等によって大きく変化する。一般に、溶湯が急速に冷却されるほど、初晶の粒径は小さくなる。初晶の粒径が小さいほど、ダイカスト製品の粗材の強度が向上する。
この実施例の検査方法で検査するダイカスト製品は、キャビティ面に繊維状カーボン(カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等)が塗布された金型を用いて製造される。繊維状カーボンを用いたアルミダイカスト法の詳細については、日本特許公開公報第2010−131651号を参照されたい。繊維状カーボンは、キャビティ面の一部にのみ塗布される。繊維状カーボンが塗布されるキャビティ面は、ダイカスト製品のうち特に強度が必要な部分を成形する面である。また、キャビティ面には、繊維状カーボンが塗布されていない面も存在する。繊維状カーボンが塗布されていない面には、断熱材に覆われている面と、繊維状カーボンと断熱材の何れにも覆われていない面が含まれている。キャビティ面の種類によって、溶湯の冷却過程は異なる。以下に、キャビティ面の種類毎に溶湯の冷却過程を説明する。
最初に、断熱材に覆われているキャビティ面について説明する。ゲート近傍のキャビティ面は、断熱材により被覆されている。このため、この領域では、溶湯から金型に熱が伝わり難い。すなわち、溶湯が冷却され難い。したがって、ゲートの近傍で溶湯が流れ易く、溶湯をキャビティ全体に行き渡らせることができる。キャビティへ溶湯を充填した後の溶湯を冷却する段階においては、この領域では、溶湯が緩やかに冷却される。したがって、この領域で凝固した粗材では、図1に示すように、初晶100の粒径が全体的に大きくなる。この場合、初晶の粒径は12μm以上となる。以下では、図1に示すように初晶の粒径が大きい粗材の構造を、粗大構造という。粗大構造の粗材は、強度が低い。したがって、ダイカスト製品のうちの強度がそれほど必要とされない箇所のみが粗大構造となるように、金型のゲートの位置等は考慮されている。このように、通常は、ダイカスト製品のうちの強度がそれほど必要とされない箇所のみが粗大構造となるが、鋳造時に異常が生じた場合には、その他の箇所が粗大構造となるおそれがある。初晶の粒径が大きいと、当然ながら粗材の表面は粗くなる。即ち、粗大構造を有する粗材の表面は粗くなる(面粗度が高くなる)。
次に、繊維状カーボンに覆われているキャビティ面について説明する。キャビティ内に溶湯を流入させている間は、キャビティ面上の繊維状カーボンの熱伝導率が低い。このため、溶湯から金型に熱が伝わり難く、溶湯が流れ易い。キャビティが溶湯で満たされると、キャビティ面上の繊維状カーボンに高い圧力が加わって繊維状カーボンの熱伝導率が上昇する。これによって、溶湯から熱が奪われ、溶湯が凝固する。このように、繊維状カーボンに覆われているキャビティ面の近傍の領域では、キャビティが溶湯で満たされたタイミングから、この領域の溶湯全体が急速に冷却される。したがって、この領域で凝固した粗材は、図2に示すように、初晶100の粒径が小さくなる。この場合、初晶の粒径は、表面側の領域で5μm未満となり、内部側に向かうほど初晶の粒径が増大するが、最も内部の領域でも初晶の粒径は12μm未満となる。以下では、図2に示すように初晶100の粒径が小さい構造を、緻密構造という。緻密構造の粗材は、強度が高い。緻密構造の粗材は表面が粗い繊維状カーボンにより成形されるので、緻密構造の粗材の表面は粗くなる(面粗度が高くなる)。
次に、繊維状カーボンや断熱材に覆われていないキャビティ面について説明する。キャビティ面が断熱性の部材に覆われていないので、この領域では溶湯から金型に熱が伝わり易い。このため、キャビティ内に溶湯を流入させ始めた段階で、キャビティ面上で溶湯が冷却されて凝固する。その後、キャビティ内が溶湯で満たされると、キャビティ面から離れた位置の溶湯からも徐々に熱が奪われて、溶湯全体が凝固する。このように、この領域では、キャビティ面上では急速に溶湯が冷却されて、キャビティ面から離れた位置では溶湯が緩やかに冷却される。したがって、この領域で凝固した粗材は、図3に示すように、表面側の領域102では初晶100の粒径が小さいが、内部の領域104では初晶100の粒径が大きくなる。この場合、初晶の粒径は、表面側の領域102で5μm未満となるが、内部側の領域104では12μm以上となる。以下では、図3に示すように初晶の粒径が表面側の領域より内部側の領域で極端に大きくなっている構造を、二層構造という。二層構造の粗材は、緻密構造の粗材よりは強度が低い。二層構造の粗材ではその表面側の領域の初晶の粒径が小さいので、二層構造の粗材の表面は滑らかとなる(面粗度が低くなる)。
次に、実施例の検査方法について説明する。実施例の検査方法を行う対象である検査領域は、予め決められている。検査領域は、ダイカスト製品の表面において複数個所定められている。以下では、3つの検査領域B1〜B3が存在しているとして説明する。この検査方法では、図4に示すフローチャートに従って各工程が行われる。
ステップS2では、金型から取り出された直後でまだ高温のダイカスト製品を、サーモグラフィ装置によって撮影する。図5に示すように、サーモグラフィ装置120は、ダイカスト製品110から赤外線を検出する。これによって、サーモグラフィ装置120は、ダイカスト製品110の表面における赤外線強度分布を示す画像を出力する。なお、本実施例では、汎用のサーモグラフィ装置を用いている。このため、サーモグラフィ装置は、検出された赤外線強度を温度に換算した温度分布を示す画像を出力する。しかし、後述するように、サーモグラフィ装置により検出される赤外線には、ダイカスト製品の温度と相関する赤外線A1(ダイカスト製品の熱放射による赤外線)の他に、温度と相関がない赤外線A2(反射による赤外線)が含まれている。したがって、サーモグラフィ装置により出力されるデータは、正確には、温度分布を示しているというより、赤外線強度分布を任意単位で示しているといえる。ステップS2で検出される赤外線強度分布には、検査領域B1〜B3の赤外線強度と、後述する擬似黒体部の赤外線強度が含まれている。
ステップS4では、ステップS2で検出された赤外線強度分布から、擬似黒体部の赤外線強度を特定する。「擬似黒体部」とは、ダイカスト製品の表面のうちで熱放射赤外線比率が高い部分に付した呼び名である。擬似黒体部について以下に説明する。図5に示すように、ダイカスト製品110からの赤外線(すなわち、サーモグラフィ装置120により検出される赤外線)には、ダイカスト製品110からの熱放射により生じる赤外線A1と、外部からダイカスト製品110に到達した赤外線A3がダイカスト製品110の表面で反射することで生じる赤外線A2が含まれている。ダイカスト製品110からの赤外線のうちの熱放射による赤外線A1の割合が熱放射赤外線比率である。ダイカスト製品110に形成されている凹部112内には、外部からの赤外線A3がほとんど到達しない。したがって、凹部112内からは反射による赤外線A2がほとんど生じない。このため、凹部112内の熱放射赤外線比率は、略100%である。熱放射赤外線比率が100%である物質は、一般に、黒体と呼ばれる。凹部112内は、熱放射赤外線比率が略100%であるので、ここでは擬似黒体部という。ステップS4で赤外線強度を検出する擬似黒体部は、予め決められている。本実施例では、サーモグラフィ装置120による撮影範囲のうちで最も熱放射赤外線比率が高い領域が、擬似黒体部として予め定められている。
ステップS6では、ステップS2で検出された赤外線強度分布と、ステップS4で特定された擬似黒体部の赤外線強度から、ダイカスト製品の表面における熱放射赤外線比率分布を算出する。すなわち、上述したように、擬似黒体部から出る赤外線の略全ては、熱放射による赤外線である。一方、擬似黒体部以外のダイカスト製品の表面から出る赤外線には、熱放射による赤外線と反射による赤外線が含まれている。また、金型から取り出した直後のダイカスト製品では、略均一に温度が分布している。したがって、擬似黒体部以外のダイカスト製品の表面から熱放射により放出される赤外線の強度は、擬似黒体部の赤外線強度と略等しい。このため、擬似黒体部の赤外線強度を所定の領域の赤外線強度で除算することで、その領域の熱放射赤外線比率を算出することができる。鋳造品表面の各部において熱放射赤外線比率を算出することで、ダイカスト製品の表面の熱放射赤外線比率分布を得ることができる。即ち、擬似黒体部の赤外線強度を、赤外線強度分布の各位置における赤外線強度で除し、そうして新たに生成される分布が熱放射赤外線比率分布となる。
ダイカスト製品の表面は、その表面状態によって赤外線放射率が変化する。なお、ここでいう「赤外線放射率」とは、ある温度の物質の表面から放射するエネルギー量と、同温度の黒体(放射で与えられたエネルギーを100%吸収する仮想物体)から放射するエネルギー量との比率をいう。ダイカスト製品の表面のうち、表面が滑らかな(面粗度が低い)部分では赤外線放射率が低くなる。赤外線放射率が低い部分(表面が滑らかな部分)では、表面で赤外線が反射し易いので、反射による赤外線の比率が増え、熱放射赤外線比率が低くなる。したがって、ダイカスト製品の表面のうち、上述した二層構造の部分の表面では熱放射赤外線比率が低くなる。これに対し、上述した緻密構造、及び、粗大構造の部分の表面では熱放射赤外線比率が高くなる。したがって、熱放射赤外線比率から、ダイカスト製品の各部が二層構造であるか否かを判別することができる。
ステップS8では、ステップS6で算出された熱放射赤外線比率分布から、検査領域B1〜B3における熱放射赤外線比率を特定する。そして、検査領域B1〜B3の熱放射赤外線比率を、マスタ熱放射赤外線比率と比較する。なお、マスタ熱放射赤外線比率は、検査領域の通常時の熱放射赤外線比率を定めたものである。なお、「通常時の熱放射赤外線比率」とは、予め定められた品質基準に合格した鋳造品の熱放射赤外線比率を意味する。図6に示すように、マスタ熱放射赤外線比率は、検査領域毎に定められている。各検査領域のマスタ熱放射赤外線比率は、従来の実績に基づいて予め定められている。検査領域B1は、通常は二層構造である部分である。したがって、マスタ熱放射赤外線比率が低い。検査領域B2は、通常は緻密構造である部分である。したがって、マスタ熱放射赤外線比率が高い。検査領域B3は、通常は二層構造である部分である。但し、検査領域B3は、周囲をリブに囲まれているため反射による赤外線が生じ難い(擬似黒体部に近い状態である)ので、マスタ熱放射赤外線比率が高い。
例えば、ダイカスト工程においてキャビティ面から繊維状カーボンが剥離すると、その剥離した領域の近傍で凝固した粗材は、二層構造となり、緻密構造に比べて強度が低下する。緻密構造となるべき箇所は、強度が必要とされる箇所である。したがって、緻密構造となるべき箇所が二層構造となると、強度が不足するおそれがある。上記の通り、二層構造の粗材の熱放射赤外線比率は、緻密構造の粗材の熱放射赤外線比率に比べて低い。したがって、検査領域B2の熱放射赤外線比率がマスタ熱放射赤外線比率よりも低ければ、検査領域B2の一部が二層構造になっている可能性が極めて高いことが分かる。これによって、強度が予め定められた要求仕様に満たない不良を検出することができる。
また、ダイカスト製品の表面の一部が、金型に焼きついて、ダイカスト製品から剥がれることがある。すると、その剥がれた部分の表面が粗くなる。このような欠陥は、「カジリ」と呼ばれる。カジリが生じると、その部分の熱放射赤外線比率が高くなる。また、湯ジワ等の他の欠陥が生じた場合にも、表面が粗くなり、熱放射赤外線比率が高くなる。したがって、検査領域B1〜B3の熱放射赤外線比率がマスタ熱放射赤外線比率よりも高くなっている場合には、その検査領域内にカジリ、湯ジワ等の欠陥が存在していることが分かる。
以上に説明したように、ステップS8では、各検査領域B1〜B3の熱放射赤外線比率をマスタ熱放射赤外線比率と比較することで、各検査領域内における異常の有無を判定する。なお、ステップS4〜S8の一連の処理は、サーモグラフィ装置に接続された演算装置(図示省略)により実行される。
ステップS10では、各検査領域B1〜B3を鉄球等の打撃手段で叩き、これによって生じた音を集音マイクにより検出する。さらに、マイクに接続されている演算装置によって、マイクで検出された波形を周波数解析する。これによって、ダイカスト製品の固有振動数を検出する。さらに、音の減衰率を検出する。また、この演算装置は、検出された固有振動数と減衰率に基づいて、各検査領域の良否を判定する。
ダイカスト製品を叩くことで生じる音の波形を周波数解析すると、通常は、いくつかの周波数でピーク(極大値)が得られる。本実施例の場合には、100Hz程度の低周波数領域と、1kHz程度の中周波数領域と、10kHz程度の高周波数領域で極大値が得られる。これらの周波数は、ダイカスト製品毎に固有の振動数である。低周波数領域の固有振動数は、ダイカスト製品の形状によって変化する。したがって、低周波数領域の固有振動数と予め決められた周波数(良品で得られる低周波数領域の固有振動数)との差を算出し、その差に基づいて、ダイカスト製品が設計通りの形状であるか否かを判定することができる。中周波数領域の固有振動数は、叩いた領域の肉厚等によって変化する。中周波数領域の固有振動数が予め決められた周波数(良品で得られる中周波数領域の固有振動数)との差を算出し、その差に基づいて、叩いた領域が設計通りの肉厚であるか否かを判定することができる。また、中周波数領域の固有振動数は、粗材が二層構造である場合や、粗材中に鋳巣がある場合にも変化することがある。したがって、中周波数領域の固有振動数により、これらの有無を検査することもできる。高周波数領域の固有振動数は、叩いた領域の粗材の内部の初晶の粒径によって変化する。初晶の粒径が大きければ、高周波数領域の固有振動数は低くなり、初晶の粒径が小さければ、高周波数領域の固有振動数は高くなる。このため、叩いた領域が緻密構造や二層構造であれば、高周波数領域の固有振動数は高くなり、叩いた領域が粗大構造であれば、高周波数領域の固有振動数は低くなる。すなわち、高周波数領域の固有振動数と予め決められた周波数(良品で得られる高周波数領域の固有振動数)との差を算出し、その差に基づいて、叩いた領域が粗大構造であるか否かを判定可能である。上述した熱放射赤外線比率による検査では、二層構造であるか否かを判定可能であるので、熱放射赤外線比率による検査と、高周波数領域の固有振動数による検査を組み合わせることで、ダイカスト製品の各部が、緻密構造と、粗大構造と、二層構造の何れの構造であるかを正確に特定することができる。
また、叩くことで生じる音の減衰率は、叩いた領域内におけるクラックの有無によって変化する。ダイカスト工程において何らかの異常が生じると、ダイカスト製品の表面や表面近傍の内部に微小なクラックが生じることがある。クラックが生じている場合には、減衰率は大きくなり、クラックが生じていなければ、減衰率は小さくなる。したがって、減衰率を検出することで、検査領域近傍におけるクラックの有無を判別することができる。
また、このように、固有振動数と音の減衰率に基づく判定を行う場合には、音圧が判定結果に影響することがない。したがって、ダイカスト製品を叩くときの強さにばらつきが生じても、正確に判定をすることができる。
なお、ステップS10は、ダイカスト製品が金型から取り出されてから常温に冷却されるまでの間(すなわち、未だ高温状態にある間)に行う。このため、ステップS10を実行する際のダイカスト製品の温度は、ダイカスト製品の冷却速度や、金型から取り出されてからステップS10を実行するまでの時間等によって変化する。上述した固有振動数や減衰率は、ダイカスト製品の温度によっても変化する。すなわち、ステップS10で検出される固有振動数や減衰率には、ダイカスト製品の温度によって大きな誤差が生じる。しかしながら、この温度による誤差は、ダイカスト製品の温度が分かっていれば補正することができる。本実施例の検査方法では、ステップ4において、擬似黒体部の赤外線強度を特定する。上述したように、擬似黒体部の赤外線強度は、ダイカスト製品の温度を表している。したがって、ステップS10では、温度による誤差を補正して正確に固有振動数及び減衰率による検査を行うことができる。
以上に説明したように、本実施例の検査方法によれば、ダイカスト製品の各検査領域が、緻密構造であるか、二層構造であるか、粗大構造であるかを正確に特定することができる。さらに、この検査方法によれば、ダイカスト製品の各検査領域に、クラック、カジリ、湯ジワ、鋳巣等の欠陥が有るか否かを検査することができる。また、この検査方法は、金型から取り出した直後の高温のダイカスト製品を検査することができる。ダイカスト製品が常温まで冷却されるのを待つ必要がない。したがって、この検査方法をダイカスト製品の製造ラインに適用することによって、ダイカスト製品を効率よく製造することができる。
また、サーモグラフィ装置によれば、広範囲の赤外線強度分布を短時間で検出することができる。また、サーモグラフィ装置によれば、非接触でダイカスト製品の赤外線強度分布を検出することができる。すなわち、検査のためにダイカスト製品に機器を設置する必要がない。したがって、短時間でダイカスト製品を検査することができる。
なお、上述した実施例では、ステップS10において、音の周波数と減衰率を検出したが、ダイカスト製品中における音の速度を検出してもよい。ダイカスト製品中における音の速度は、ダイカスト製品の内部構造によって変化する。したがって、検出される音の速度によって、ダイカスト製品の内部構造に異常がないかを検査することができる。
また、上述した実施例では、ステップS4で赤外線強度を検出する擬似黒体部が予め決められていた。この擬似黒体部は、以下のように決定することができる。まず、製造ラインで製造されたダイカスト製品を用意し、このダイカスト製品の凹部(擬似黒体部として使用できそうな箇所)に熱電対を取り付ける。次に、ダイカスト製品を恒温槽に入れて所定時間加熱する。次に、ダイカスト製品を恒温槽から取り出し、サーモグラフィ装置によってダイカスト製品の表面の赤外線強度分布を検出する。上述した通り、サーモグラフィ装置によれば、赤外線強度は、温度に換算した値として出力される。次に、熱電対により検出される温度と、サーモグラフィ装置により出力される温度との差が小さい箇所を特定する。このように、熱電対により検出される温度(実際の温度)とサーモグラフィ装置により出力される温度(赤外線強度から換算した温度)との差が小さくなる領域を、擬似黒体部としてステップS4で用いることができる。
なお、上述した実施例では、ステップS4で赤外線強度を特定する擬似黒体部が予め決められていたが、ステップS2における検出結果に応じて、ステップS4で赤外線強度を検出する擬似黒体部を変更してもよい。
実施例の検査方法では、ステップS2で検出された赤外線強度分布と、ステップS4で特定された擬似黒体部の赤外線強度から、ダイカスト製品の表面における熱放射赤外線比率分布を算出する。具体的には、擬似黒体部の赤外線強度を検査領域の赤外線強度で除算することで、検査領域の熱放射赤外線比率を算出する。擬似黒体部の赤外線強度を検査領域の赤外線強度で除算した値が、強度比率(検査領域の赤外線強度と高放射領域の赤外線強度との比率)に相当する。
実施例の検査方法では、サーモグラフィ装置による赤外線強度の計測範囲内で最も熱放射赤外線比率が高くなる領域を擬似黒体部として特定し、擬似黒体部の赤外線強度を使って上記のとおり強度比率を算出した。擬似黒体部として用いることができる領域が複数想定される場合は、熱放射赤外線比率が予め定められた基準値(基準となる熱放射赤外線比率)よりも高い領域を擬似黒体部として特定してもよい。即ち、実施例の検査方法は、鋳造品表面において熱放射赤外線比率が基準値よりも高い高放射領域(擬似黒体部)の赤外線強度を検出するとともに、鋳造品表面における検査領域の赤外線強度を検出し、次いで、検査領域の赤外線強度と高放射領域の赤外線強度との比率(強度比率)を算出する。
実施例の検査方法では、得られた強度比率を指標として、鋳造品の良否が判定される。具体的には、得られた強度比率をマスタ熱放射赤外線比率と比較して良否が判定される。「マスタ熱放射赤外線比率」は、良品と判定された鋳造品における検査領域の強度比率に相当する。即ち、「マスタ熱放射赤外線比率」が「基準強度比率」に相当する。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
100:初晶
110:ダイカスト製品
112:凹部
120:サーモグラフィ装置

Claims (4)

  1. 鋳造品の検査方法であって、
    鋳造品表面において熱放射赤外線比率が基準値よりも高い高放射領域の赤外線強度を検出するとともに、鋳造品表面において検査対象として定められた検査領域の赤外線強度を検出するステップと、
    検査領域の赤外線強度と高放射領域の赤外線強度との比率を算出するステップと、
    を有していることを特徴とする検査方法。
  2. 検査領域を叩くことで生じる音の周波数を検出するステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
  3. 検査領域を叩くことで生じる音の減衰率を検出するステップをさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の検査方法。
  4. 算出された比率を予め用意された基準強度比率と比較することで、検査領域の品質を分別するステップをさらに有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の検査方法。
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