JP5488829B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐剥離性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層が、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着形成された状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム(以下、α型Al2O3で示す)層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆工具が広く知られており、そして、上部層のα型Al2O3層の結晶方位を調整することによって、鋼や鋳鉄などの切削加工において、すぐれた耐摩耗性を発揮するようになることも知られている。
また、下部層−上部層間の層間密着性を向上させるために、下部層と上部層との間に、特定の結晶方位を有するTi2O3からなる所定層厚の中間層を設けた被覆工具(特許文献1)が提案されており、また、被覆工具の耐摩耗性を向上させるため、硬質被覆層を5層構造で構成し、そのうちの一つの層を特定の結晶方位を有するTi2O3層、他の一つの層を特定の結晶方位を有するAl2O3層とした被覆工具(特許文献2)も提案されており、さらに、上記Ti2O3からなる中間層に代えて、Al2O3とCr2O3との固溶体(以下、(Al,Cr)2O3で示す)からなる中間層を、下部層と上部層間に介在形成することにより、層間剥離を防止するようにした被覆工具(特許文献3)も提案されている。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
チタンの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、及び、2〜15μmの平均層厚を有するα型酸化アルミニウム層からなる上部層、
上記の下部層と上部層からなる硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
上記Ti化合物層からなる下部層と上記α型酸化アルミニウム層からなる上部層との界面において、平均粒径5〜100nmのクロム酸化物粒子が、界面単位長さ当り30〜80%の線分割合で島状に点在分布していることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記のα型酸化アルミニウム層からなる上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、表面研磨面の法線に対して前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すことを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層は、硬質被覆層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と中間層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する接合強度を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速重切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
Ti化合物層からなる下部層とα型Al2O3層からなる上部層との界面には、平均粒径5〜50nmのCr2O3粒子が、界面単位長さ当り30〜80%の線分割合で島状に点在分布していることが必要である。
Cr2O3粒子を下部層と上部層との界面に形成するための処理は、例えば、以下のように行うことができる。
すなわち、Ti化合物層からなる下部層を通常の化学蒸着で工具基体表面に蒸着形成した後、
反応ガス組成 : 容量%で、
CrCl3 2.0〜4.0%、
CO2 4.5〜7.0%、
HCl 2.5〜5.0%、
残部H2
工具基体温度: 850〜920℃
反応圧力 : 12〜20 kPa
処理時間 : 3〜10 分
という蒸着条件で処理することにより、下部層表面に、平均粒径5〜100nmの Cr2O3粒子を、界面単位長さ当たり30〜80%の線分割合で島状に点在分布させることができる。
また、下部層表面におけるCr2O3粒子の分布の形態、即ち、上部層を形成した後の下部層と上部層との界面において、Cr2O3粒子が島状に点在分布するか否か、さらに、界面単位長さに占めるCr2O3粒子の線分割合は、前記蒸着条件のうちの特に、圧力によって影響を受けるが、Cr2O3粒子が島状に点在分布し、その界面単位長さ当たりの線分割合が30%未満の場合には、上部層と下部層の界面に発生する結晶成長歪みを十分に緩和できず、一方、Cr2O3粒子が島状に点在分布するものの、界面単位長さ当たりの線分割合が80%を超える場合には、製造上の理由からCr2O3粒子の平均粒径が比較的大きくなり、Cr2O3粒子上に成長する上部層Al2O3が粒成長を起こし、硬質被覆層にチッピングが発生しやすくなる。またCr2O3は相対的に高温強度が低いものであるために、その割合が過剰になるとそれを起点として硬質被覆層の上部層との界面にクラックが発生し易くなることから、下部層表面(上部層を形成した後の下部層と上部層との界面)に島状に点在分布するCr2O3粒子の界面単位長さ当たりの線分割合は30〜80%となるように、蒸着条件のうち特に圧力を制御する。
また、Cr2O3粒子の平均粒径およびその存在割合については、高分解能透過型電子顕微鏡において、加速電圧200kV、倍率20000倍、プローブ径5nmの条件にて、例えば、界面長さ10μmについてエネルギー分散型X線分析装置測定を行い、Cr2O3粒子の粒径を測定するとともに、測定界面長さに存在するCr2O3粒子の占める線分長さをカウントすることにより、Cr2O3粒子の平均粒径およびその線分割合を求めた。
なお、Cr2O3粒子の平均粒径およびその線分割合は、いずれも、10点測定を行った場合の平均値である。
上部層を構成するα型Al2O3層は、高温硬さおよび耐熱性にすぐれ、高熱発生を伴う高速重切削加工において、基本的な役割として耐摩耗性を維持する。
この発明では、下部層と上部層との間の界面に、所定の平均粒径のCr2O3粒子を所定割合で島状に点在分布せしめているため、上部層を蒸着形成する際に、Cr2O3粒子の上に形成されたα型Al2O3層であるか、Cr2O3粒子の存在しない下部層(Ti化合物層)の上に形成されたα型Al2O3層であるかによって、α型Al2O3結晶粒の成長形態が異なるものとる。
その結果、下部層−上部層間の密着強度は向上するとともに、上部層として、特定の結晶方位分布を有するα型Al2O3層を形成した場合には、すぐれた耐摩耗性を発揮することから、高熱発生を伴うとともに、切刃に高負荷が連続的に作用する高速重切削加工においても、硬質被覆層の耐剥離性、耐摩耗性を向上させることができる。
即ち、通常の化学蒸着装置を用い、
第1段階として、
反応ガス組成 :容量%で、
AlCl3 4.0〜7.0%、
CO2 11〜20%、
HCl 2.0〜9.0%、
H2S 0.1〜0.2%、
H2:残り、
反応雰囲気温度:1000〜1030℃、
反応雰囲気圧力:13〜15kPa、
反応時間 : 5〜30分
という条件(但し、第1段階の進行とともに、AlCl3の含有割合を徐々に減少させ、CO2の含有割合は、AlCl3/CO2の流量比を一定に保ちつつ徐々に減少させ、その反面、H2Sの含有割合を徐々に増加させ、また、反応雰囲気温度も徐々に高める)で蒸着を行い、
次いで、第2段階として、通常の蒸着条件(例えば、表3のα型Al2O3層の蒸着条件参照)でα型Al2O3層を成膜すると、このα型Al2O3層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、図2に例示されるように、傾斜角区分0〜10度の範囲内に存在する度数の合計は、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占めるようになり、このようなα型Al2O3層は、この発明で規定する特定の結晶方位分布を有し、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
なお、α型Al2O3層からなる上部層の平均層厚が2μm未満では、長期使用における工具寿命の長寿命化を期待することができず、また、上部層の平均層厚が15μmを超えるようになると、切刃部にチッピング、欠損、剥離等が発生し易くなることから、上部層の平均層厚は、2〜15μmと定めた。
ついで、表4に示される条件にて、下部層表面に微量のCr2O3粒子を形成し、
ついで、表5に示される条件にて、表6に示される組み合わせおよび目標層厚で、Al2 O3 層を上部層として蒸着形成する、
ことにより本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
比較被覆工具1〜13の下部層(Ti化合物層)、上部層(Al2 O3 層)およびCr2O3粒子については、表7に示す。
Cr2O3粒子の平均粒径およびその存在形態については、高分解能透過型電子顕微鏡において、加速電圧200kV、倍率20000倍、プローブ径5nmの条件にて界面長さ10μmについてエネルギー分散型X線分析装置測定を行い、Cr2O3の粒径を測定するとともに、測定界面長さに存在するCr2O3粒子の占める線分長さをカウントすることにより、Cr2O3粒子の平均粒径およびその線分割合を求めた。
なお、Cr2O3粒子の平均粒径およびその線分割合ともに、10点測定を行った場合の平均値である。
表6に、上記測定で求めたCr2O3粒子の平均粒径およびその線分割合を示す。
なお、比較被覆工具10〜13については、本発明被覆工具と同様にして、Cr2O3粒子の平均粒径およびその線分割合を求めた。
表7に、上記測定で求めたCr2O3粒子の平均粒径およびその線分割合を示す。
[切削条件A]
被削材:JIS・FCD450の丸棒、
切削速度: 400 m/min、
切り込み: 5.0 mm、
送り: 0.35 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件でのダクタイル鋳鉄の乾式高速重切削試験(通常の切削速度及び送りは、それぞれ200m/min、0.3mm/rev)、
[切削条件B]
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度: 380 m/min、
切り込み: 4.5 mm、
送り: 0.35 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件でのクロムモリブデン鋼の乾式高速重切削試験(通常の切削速度及び送りは、それぞれ220m/min、0.3mm/rev)、
[切削条件C]
被削材:JIS・S30Cの丸棒、
切削速度: 380 m/min、
切り込み: 4.5 mm、
送り: 0.40 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での炭素鋼の乾式高速重切削試験(通常の切削速度及び送りは、それぞれ250m/min、0.3mm/rev)
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表8に示した。
しかるに、硬質被覆層の下部層と上部層との界面に、Cr2O3粒子が存在しない比較被覆工具、あるいは、Cr2O3粒子が存在しても本発明で規定する範囲外のCr2O3粒子であるような比較被覆工具においては、高速重切削という厳しい切削条件下では、硬質被覆層の層間密着強度が不十分であるために、硬質被覆層に剥離、チッピングが発生したり、あるいは、耐摩耗性が劣る等の理由から、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (2)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
チタンの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、及び、2〜15μmの平均層厚を有するα型酸化アルミニウム層からなる上部層、
上記の下部層と上部層からなる硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
上記Ti化合物層からなる下部層と上記α型酸化アルミニウム層からなる上部層との界面において、平均粒径5〜100nmのクロム酸化物粒子が、界面単位長さ当り30〜80%の線分割合で島状に点在分布していることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 上記のα型酸化アルミニウム層からなる上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、表面研磨面の法線に対して前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すことを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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