JP5495033B2 - ステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法 - Google Patents
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文献1〜4〕。
しかし、精度や定量性の観点から、また観測した事象が塑性変形と原理的にどのように関連しているのか不明な場合もあり、必ずしも確立された方法ではない。
一方、金属材料の経年劣化に対して、損傷測定の原理が明確な計測手法として電気化学的な手法(アノード特性/電気化学エッチング)がある〔非特許文献5〜7〕。
される。また、材料の溶解挙動の変化はアノード特性の変化を意味するため、アノード分極曲線の変化などとして塑性ひずみを検出できる可能性もある。
そこで、電気化学的な手法を用いて塑性ひずみを検出する技術の開発を進め、本発明を完成することに成功した。
〔1〕溶液成分として硝酸溶液を使用し、定電位条件下に、被検ステンレス鋼材を電気化学的測定に付して、ステンレス鋼材の塑性ひずみを検出することを特徴とするステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
〔2〕電気化学的測定は、被検ステンレス鋼材をエッチングして結晶粒上に直線状のエッチング痕を現出せしめるものであることを特徴とする上記〔1〕記載のステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
〔3〕被検ステンレス鋼材をエッチングして結晶粒上に直線状のエッチング痕を現出せしめ、エッチング痕密度を求め、該エッチング痕密度を指標としてステンレス鋼材の塑性ひずみを検出することを特徴とする上記〔2〕記載のステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
〔4〕被検ステンレス鋼材を硝酸溶液中−400mV以下の電位の条件でエッチングすること
を特徴とする上記〔2〕又は〔3〕記載のステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての文献(参考文献を含む)は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
エッチング痕は、特定の溶液成分・電位において材料をエッチングせしめることにより現出せしめることができる。当該溶液成分としては、鉱酸の水溶液が挙げられる。鉱酸としては、特には硝酸が好適に使用できる。好ましい態様では、当該溶液成分は、硝酸水溶液であり、典型的な場合0.8〜1.5N HNO3水溶液であり、より好適には1N HNO3水溶液であ
る。
としては、-600mVSCE及びそれ以下が挙げられる。エッチングに際しては、該電位は、典
型的な場合、一定の電位(定電位)とされることができる。該定電位の保持期間としては、所定のエッチング痕を現出できるように選択でき、特には限定されず、適切な時間を選択できるが、一つの態様では、例えば、5〜30分間、一つのより好ましい態様では、約8〜22分間であり、より好ましい態様では、おおよそ20分間である。
HNO3、-600mVSCEである。一つのより好ましい態様では、当該電位で約20分間エッチングされる。定電位エッチング後、定量化を行うことも可能である。定量化は、被検材の表面を、例えば、顕微鏡などで観察し、単位面積当たりのエッチングされたエッチング痕の数を数えて「エッチング痕密度」を求める。予め塑性ひずみをそれぞれの量付与してある標準材について測定して求めておいたひずみとエッチング痕密度との関係を基礎に、被検材に加えられた塑性ひずみの程度を、測定された「エッチング痕密度」から決定できる。ここで「エッチング痕密度」は、被検材の表面を顕微鏡で観察し、単位面積当たりのエッチングされたエッチング痕の数と定義される。
上記において、エッチングされた被検金属材の表面を観察するのは、CCDカメラを備え
た顕微鏡などの検出器と、場合によっては、画像処理プログラムとリンクされたコンピューターなどのシステムを使用して行うことも可能である。本発明は、こうした画像処理システムと連携した検出技術も包含する。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
供試材は溶体化処理(1150℃, 30min)後、平板試験片に加工し、引張による塑性ひずみ
を付与した。付与した塑性ひずみはそれぞれ1, 3, 10, 20, 30%である。塑性ひずみ付与
後、電気化学測定用の試験片に加工し、アノード・カソード分極測定及び定電位エッチング試験に供した。電気化学測定用試験片は試験面が引張軸に対して垂直なものと平行なものの2種類を作成した。参照電極には飽和甘こう電極(SCE)を用い、電位はSCE基準で表し
ている。
供試材にはSUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼を用いた。化学組成を表1(Table1)
に示す。
い、カソード処理を施した後、自然電位から貴方向に電位の掃引を行った。電位の掃引速度は30mV/minである。カソード分極測定にはアノード分極測定において最も明瞭なエッチング痕が得られた1N HNO3を用いた。N2で脱気後、自然電位から卑方向に電位の掃引を開
始した。これらの測定からHNO3での特有なエッチング痕の現れる電位の探索を行い、その電位(-600mVSCE)で20min定電位エッチングを行った。表面の組織観察には金属顕微鏡を用い、塑性ひずみの定量化を行った。
分極測定後、溶液により程度に差はあるが塑性ひずみ付与材には、粒界とは別に無数の線状のエッチング痕が観察された。中でもHNO3が最もはっきりとエッチング痕が観察できた。図1にHNO3でのアノード分極測定後の試験片の組織写真を示す。なお、溶体化材では塑性ひずみ付与材で見られた様なエッチング痕は非常に少なかった。個々の結晶粒上のエッチング痕はほぼ直線状で、複数の粒を貫いているものは確認されなかった。図1の試料の試験面は引張軸に対して垂直になるように取っている。エッチング痕は様々な角度を成しているが1つの粒の中にあるエッチング痕は多くても3種類であった。金属材料の塑性変形は、結晶面のすべりあるいは双晶の発生と成長による。今回の試験に用いたSUS316L
のようなfcc構造では、すべり面および双晶面はともに4つの{111}面である事が知られ
ている(図2)。観察されたエッチング痕は結晶粒毎に向きが異なり、同じ粒の中では特定の方向を向いているなど結晶の方位と密接な関係にあると考えられる。一方で、図1に認められるように、HNO3でのアノード分極測定後の試料表面には、結晶粒ごとに明確な高低差が生じている。これは、当該電気化学試験条件において、当該材料の溶解速度が結晶方位に強く依存していることを示唆する事実である。さらに、図1に認められるように、塑性ひずみ付与材に特徴的に現れる溝状エッチング痕は、凸な結晶粒(すなわち、溶解速度の低い方位となっていた結晶粒)の上でよりはっきりと現出していた。これらの事実に基づけば、塑性ひずみ付与材に特徴的に現れる溝状エッチング痕の形成機構は次のように理解できる。溶解速度の低い方位の面上に相対的に溶解の速い方位の部分が直線的な帯状に形成されていたために、その部分が優先溶解して、直線上溝状のエッチング痕として現れたものであろう。塑性ひずみを付与された試験片にのみ形成されたこの方位の異なる帯状の部分は変形双晶であり、すなわち、溝状エッチング痕は変形双晶がエッチングされたものと理解される。
現出することが分かった。アノード分極測定ではこの電位域で掃引は行っていないが、カソード処理の際HNO3では-600mVで10min電位の保持を行った。アノード分極測定後に、エ
ッチング痕が観察されたのはこのためであると考えられる。
定量化には試験片の試験面が引張軸に対して平行になるように取ったものを用いた。これは実際の構造物で観察する際、観察できる面は引張軸に対して平行な面の場合が多いためである。試験片の表面を金属顕微鏡で観察し、単位面積当たりの溝状エッチング痕の数を数え「エッチング痕密度」として定義した。
結果を図5に示す。ひずみとエッチング痕密度との間には明確な一対一の相関性が認められた。予ひずみを与えていない溶体化材においてもわずかではあるがエッチング痕が確認された。これは、試料作成時の切断や表面研磨などの影響が現れている可能性が考えられる。しかし、予ひずみ1%との間には明確な相違が確認されており、少なくとも1%の塑性ひずみは明確に検出する感度を有することが示された。
以上になるまで貴方向に電位の掃引を行った。図6(a)-(c)にアノード分極測定後の試験
片の表面写真を示し、図6(d)にアノード分極測定時の電位の軌跡を示す。HNO3ではエッ
チング痕が鮮明に観察された。H2SO4、HClでは僅かにエッチング痕が観察されたが、数や鮮明さでは明らかにHNO3には及ばなかった。
の掃引を行っていない試験片でも溝状エッチング痕が確認された。つまり、溝状エッチング痕が形成されたのはカソード処理中である事になる。試しにカソード処理を施さず1000mVSCEまで電位の掃引を行った。溝状エッチングは形成されたが、カソード処理後ほどは
っきりとは観察されなかった。効果的なエッチング電位は自然電位よりカソード側であると考えられる。
ード分極測定後の試験片の表面写真を示し、図9(e)にカソード分極測定時の電位の軌跡
を示す。-300mVSCEまではエッチング痕は確認されず、-400mVSCE以下の電位でエッチング痕が確認される。-400mVSCE以下の電位でエッチング痕が形成されると考えられる。
おいては明確な検出感度を有する事が示され、電気化学的手法の塑性ひずみ検出への適用
性が示された。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
Claims (4)
- 溶液成分として硝酸溶液を使用し、定電位条件下に、被検ステンレス鋼材を電気化学的測定に付して、ステンレス鋼材の塑性ひずみを検出することを特徴とするステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
- 電気化学的測定は、被検ステンレス鋼材をエッチングして結晶粒上に直線状のエッチング痕を現出せしめるものであることを特徴とする請求項1記載のステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
- 被検ステンレス鋼材をエッチングして結晶粒上に直線状のエッチング痕を現出せしめ、エッチング痕密度を求め、該エッチング痕密度を指標としてステンレス鋼材の塑性ひずみを検出することを特徴とする請求項2記載のステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
- 被検ステンレス鋼材を硝酸溶液中−400mV以下の電位の条件でエッチングすることを特徴
とする請求項2又は3記載のステンレス鋼の塑性ひずみの検出方法。
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| JP2009195141 | 2009-08-26 | ||
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