以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
図1は、本発明に係る多機能型発音体1を備えた、携帯情報端末100の操作面側の構成を概略的に示す部分斜視図である。図1に示すように、本実施の形態の携帯情報端末100は、携帯電話であって、上部筐体101と、表示部102と、放音孔103と、ヒンジ部104と、下部筐体105と、操作ボタン106と、数字ボタン107とを備える。
携帯情報端末100の放音孔103の近傍には、受話音などを発生するレシーバとしての機能と、着信時に振動を発生する振動体としての機能とを有する、多機能型発音体1が内蔵されている。多機能型発音体1は、着信音などを発生するスピーカとしての機能を有してもよい。多機能型発音体1は、長径と短径とを有する形状に形成されており、そのため、多機能型発音体1をより限られたスペースに搭載することができる。
図2は、多機能型発音体1の構成を示す斜視図である。図3は、多機能型発音体1の断面図である。図4は、図3に示す矢印IV方向から見た多機能型発音体1の平面図である。なお図3には、図4に示すIII−III線に沿う多機能型発音体1の断面図が図示されている。図2〜図4に示すように、多機能型発音体1は、フレーム2と、カバー4と、ハウジング6と、磁気回路部10と、振動板20と、ボイスコイル28と、サスペンション30と、重り50とを主に備える。
フレーム2は、平面形状環状に形成されている。フレーム2の内周側上部には、カバー4が取り付けられている。カバー4は、上面に向けて台形状の断面形状を有するように形成されている。フレーム2の内周側下部には、ハウジング6が取り付けられている。ハウジング6は、下面に向けて矩形状の断面形状を有するように形成されている。フレーム2、カバー4およびハウジング6により取り囲まれた空間は、多機能型発音体1の内部空間を形成する。
図4に示すように、フレーム2は、平面形状が概略レーストラック形状に形成されている。レーストラック形状とは、対向する二つの半円部と、これらの半円部を接続する二つの平行な直線部とから構成される形状である。レーストラック形状のフレーム2は、長径と短径とを有する。図4中の寸法Aで示される、フレーム2の径(差し渡しの長さ)のうち寸法が最大のものを、フレーム2の長径と称する。図4中の寸法Bで示される、フレーム2の径のうち寸法が最小のものを、フレーム2の短径と称する。
図形(この場合、フレーム2の外形)が長径を有する方向を長径方向、図形が短径を有する方向を短径方向と称する。当該図形を二本の平行な直線で挟んだときの当該平行な直線間の距離を差し渡し幅と定義すると、長径方向(図4中左右方向)において図形(フレーム2)の差し渡し幅が相対的に大きく、短径方向(図4中上下方向)において図形(フレーム2)の差し渡し幅が相対的に小さい。長径方向と短径方向とが直交する形状に、フレーム2は形成されている。
振動板20は、多機能型発音体1の厚み方向(図3中の上下方向、図4における奥行き方向)に振動可能なように、薄板によって形成されている。振動板20は、たとえば厚さ8〜50μmの可撓性膜である。振動板20は、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)またはPEI(ポリエーテルイミド)などに代表される、合成樹脂で形成されている。振動板20は、チタンなどの金属材または紙で形成されてもよい。
振動板20は、平面視における中央側の中央部21と、中央部21の外周部に形成されボイスコイル28が固定される環状の接着部22と、接着部22の外周側に形成された周辺部23と、周辺部23の外周側に形成された外周部24と、を含む。中央部21と周辺部23とは、図3に示す断面視において、円弧状に形成されている。接着部22の下面に筒状のボイスコイル28の上面が接着されることにより、ボイスコイル28は振動板20に結合されている。振動板20は、外周部24の下面とフレーム2の上面とが対向するように、周縁がフレーム2の上部に取付けられている。
振動板20の周辺部23には、複数の溝26が形成されている。溝26は、振動板20の中心部から広がり出る、放射状に形成されている。なお溝26は、振動板20の中心部を基点とする螺旋状に形成されていてもよい。
カバー4は、外周部24の上面とカバー4の外周部の下面とが対向するように、振動板20の上部に取付けられている。カバー4は、振動板20を覆うように形成されている。カバー4は、振動板20を介して、フレーム2に支持されている。フレーム2の上面に振動板20の外周部24が載置され、フレーム2の上面とカバー4の下面とによって振動板20を支持することにより、振動板20は多機能型発音体1の内部において振動可能に支持されている。
サスペンション30は、外周側に設けられた固定部32を有する。サスペンション30は、固定部32の上面とフレーム2の下面とが対向し、かつ、固定部32の下面とハウジング6の外周部の上面とが対向するように配置されて、フレーム2とハウジング6とによって挟持されている。サスペンション30は、フレーム2により支持されている。サスペンション30は、フレーム2にインサート成形されてもよい。
サスペンション30はまた、内周側に設けられた振動部34を有する。振動部34の下面側には、ヨーク16が固定されている。ヨーク16は強磁性体、たとえば軟鉄で形成されている。ヨーク16は、サスペンション30の振動部34の下面に取り付けられたフランジ状(鍔状)の外周部と、ボイスコイル28の外周面と間隔をあけてボイスコイル28の外周側に配置されたスリーブ状の円筒部と、ボイスコイル28およびマグネット12の下側に配置された底面部とを有する。ヨーク16は、外周部の上面側でサスペンション30の振動部34に接触している。ヨーク16の底面部は、ボイスコイル28の下面と間隔をあけて配置されており、かつヨーク16の底面部の中央部にはマグネット12が配置されている。
マグネット12は、フェライト磁石、ネオジム磁石などの永久磁石であって、短円柱状の形状を有する。マグネット12は、ボイスコイル28の内周面と間隔をあけて、ボイスコイル28の内周側に配置されている。マグネット12は、フレーム2の中央部分に配置されている。ボイスコイル28は、マグネット12の形成する磁場中に配置されている。マグネット12は、ヨーク16の底面部に固着されて、壺状のヨーク16の内部に配置されている。柱状のマグネット12は、筒状のボイスコイル28により取り巻かれている。ヨーク16の外周部および円筒部は、マグネット12の周囲に配置されている。
強磁性体のプレート14は、マグネット12の上面、すなわちマグネット12の振動板20側に配置されている。プレート14の外周面と、ヨーク16の内周面との間に、磁気回路のギャップが形成されている。筒状のボイスコイル28は、このギャップ内に配置されている。マグネット12、プレート14およびヨーク16により、磁気回路部10が形成されている。フレーム2は、サスペンション30を介して、磁気回路部10を弾性的に支持している。
重り50は、フレーム2の内部に配置されている。重り50は、平面形状が環状に形成されている。重り50は、ヨーク16の外周部の下面側および円筒部の外周側に取り付けられている。重り50は、ヨーク16の円筒部と底面部とを取り囲むように、ヨーク16の外周部に固着されている。磁気回路部10と重り50とは、フレーム2に対して相対的に動作する可動部を構成する。重り50は、振動可能に形成されている。
サスペンション30は、振動部34がヨーク16の上面に取り付けられて、可動部を支持する。サスペンション30は、ヨーク16を介在させて、重り50を懸架する。サスペンション30は、重り50および磁気回路部10を上下動可能に、弾性的に支持する。サスペンション30の振動部34は、可動部とともに振動可能に設けられている。サスペンション30と可動部とは、機械振動系を形成する。
図2および図4に示すように、フレーム2は、フレーム2の一部が外周側へ張り出して形成された、一対の中継端子8を有する。中継端子8は、ボイスコイルリードと外部接続用のワイヤなどを接続する。
図5は、サスペンション30の平面図である。図5には、図3に示す矢印IV方向、すなわちサスペンション30を含む機械振動系の振動方向から見たサスペンション30の平面形状が図示されている。サスペンション30は、その外形の平面形状が長径と短径とを有するように形成されている。サスペンション30の外形の径のうち寸法が最大のものを、サスペンション30の長径と称する。サスペンション30の外形の径のうち寸法が最小のものを、サスペンション30の短径と称する。
図5には、サスペンション30の長径方向が図中左右方向に、サスペンション30の短径方向が図中上下方向に示されている。サスペンション30は、長径方向において差し渡し幅が相対的に大きく、短径方向において差し渡し幅が相対的に小さい。サスペンション30の外形は、長径方向と短径方向とが直交する形状に形成されている。
図5に示すように、サスペンション30は、固定部32と、振動部34と、一対の腕部36とを含む。サスペンション30は、中心Osを対称軸とした、ほぼ軸対称な形状に形成されている。
固定部32は、フレーム2とハウジング6との間に挟持されフレーム2に対して固定される箇所であり、サスペンション30の外周部に設けられている。固定部32は、サスペンション30を平面視した場合の、サスペンション30の外形を形成する。固定部32は、平面形状が長径と短径とを有する、略レーストラック形状に形成されている。固定部32の長径側には、固定部32から外周側に突起した一対の突起が形成されている。固定部32の短径側にも同様に、一対の突起が形成されている。これら突起がフレーム2に形成された切欠き部に嵌合することにより、サスペンション30は、フレーム2に対して位置決めされている。
振動部34は、磁気回路部10を形成するヨーク16が接着され、ヨーク16を介在させて重り50を懸架する。振動部34は、磁気回路部10および重り50とともに、振動可能に形成されている。図5に示すように、振動部34は、平面形状が略円環状に形成されている。振動部34は、サスペンション30の短径方向において、固定部32に最も近接している。サスペンション30の短径方向において、振動部34の外周部分の一部に切り欠きが形成されることにより、所定の寸法の固定部32の内部に配置される振動部34の、全体としての直径が増大されている。
腕部36は、固定部32と振動部34とを連結するように形成されている。腕部36は、外周側の端部である外側連結部42と、内周側の端部である内側連結部43とを有する。外側連結部42において、腕部36は、固定部32に連結されている。内側連結部43において、腕部36は、振動部34に連結されている。外側連結部42は、固定部32の長径側の一部に固定されている。
腕部36は、外側連結部42において、長径側の固定部32に連結されている。つまり、腕部36が固定部32に連結される外側連結部42は、サスペンション30の外形を形成する固定部32の径が最大となる位置、またはその近傍に設けられる。腕部36は、環状の固定部32の径が最大となる位置またはその近傍において、固定部32に連結される。
このような構成を備える本実施の形態の多機能型発音体1によると、多機能型発音体1の外形が長径と短径とを有する角型形状であり、典型的には図4に示す長径の寸法Aは短径の寸法Bの1.5倍以上である。そのため、平面形状が円形状のサスペンションを備える従来の多機能型発音体と比較して、幅狭なスペースに多機能型発音体1を配置することができるので、携帯情報端末の内部で多機能型発音体1を設置可能な場所を増加させることができ、多機能型発音体1の配置の自由度を向上させることができる。
図1に示す携帯電話の上部筐体101に多機能型発音体1を内蔵させる場合、多機能型発音体1を設置するために必要なスペースの幅を狭くすることができるので、表示部102の面積を大きくすることが可能となる。また、多機能型発音体1を放音孔103近傍に内蔵した場合に発生するデッドスペースを、従来の円形状の多機能型発音体と比較して、低減することができる。
重り50が取り付けられる振動部34は、サスペンション30の短径側において固定部32に非連結状態で近接し、サスペンション30の長径側の固定部32に腕部36を介して連結される。腕部36の一端は、固定部32が振動部34から離れる長径方向の位置において、固定部32に連結されている。そのため、所定の腕部36の長さを確保できるので、多機能型発音体1の十分な振動特性を確保することができる。短径方向の固定部32に最も近接する振動部34の外周側の一部が切欠かれているために、腕部36に連結される部分の振動部34の径方向寸法を増大させることができ、サスペンション30の強度を確保することができる。
サスペンション30の腕部36について、さらに詳細に説明する。腕部36は、サスペンション30の短径方向に沿って互いに平行に、サスペンション30の外周側から内周側へ順に並べられて配置された、第一腕37、第二腕38および第三腕39を有する。腕部36はまた、第一腕37と第二腕38との互いの端部を連結する第一屈曲46を有する。腕部36はまた、第二腕38と第三腕39との互いの端部を連結する第二屈曲47を有する。腕部36は、屈曲部を形成する第一屈曲46と第二屈曲47とを有する。
このように、腕部36が屈曲部を有しており、第一腕37に対して第二腕38が折り返され、また第二腕38に対して第三腕39が折り返されるように腕部36が形成されているために、固定部32と振動部34とを連結する腕部36の全体の長さを増大することができる。そのため、フレーム2に固定された固定部32に対する振動部34の振動特性の調整範囲を、より大きくすることができ、多機能型発音体1の振動性能を容易に確保することができる。屈曲部が複数形成されていることにより、腕部36の長さをより増大させることができるので、多機能型発音体1の振動性能をより容易に確保することができる。
ここで、多機能型発音体1の共振周波数について説明する。多機能型発音体1が固有振動を起こす周波数であって、多機能型発音体1が内蔵された携帯情報端末が上下方向(厚み方向)に最も振動しやすくなる周波数のうち最も低い周波数を、最低共振周波数fと称する。最低共振周波数fは、以下の数式(1)で表わされる。
上式中、kはサスペンション30のばね定数であり、腕部36の長さ、幅、厚みなどを調整することにより任意のばね定数kを得ることが可能である。またMは、サスペンション30に懸架される磁気回路部10および重り50の合計重量である。腕部36の寸法、および、重り50の重量を調整することにより、共振周波数を任意に調整することができる。
数式(1)より明らかなように、ばね定数kと重量Mとの調整可能な範囲を大きくすることで、最低共振周波数fの調整範囲も大きくなる。多機能型発音体1の振動の周波数を共振周波数に合わせることで、多機能型発音体1が内蔵された携帯情報端末の使用者が最も振動を感じやすくなる。共振周波数は多機能型発音体1の仕様によって異なる。種々の共振周波数に合わせるために、腕部36の長さ、重り50の重量などを調整する必要があるが、腕部36の調整範囲が小さければ、所望の共振周波数に合わせることができない可能性がある。
そこで、腕部36が屈曲部である第一屈曲46、第二屈曲47を有する構成とすることにより、腕部36が有し得る長さの最大値を上げることができ、腕部36の長さの調整範囲を広げることができる。多機能型発音体1の共振周波数は多機能型発音体の仕様によって異なるが、腕部36の長さを調整することで、種々の共振周波数に容易に合わせることが可能となる。そのため、多機能型発音体1の設計の自由度を向上することができる。
図6は、重り50の平面図である。図6には、図3に示す矢印IV方向、すなわち重り50を含む機械振動系の振動方向から見た、重り50の平面形状が図示されている。
図6に示すように、重り50は、その外形の平面形状が長径と短径とを有するように形成されている。重り50の外形の径のうち寸法が最大のものを、重り50の長径と称する。重り50の外形の径のうち寸法が最小のものを、重り50の短径と称する。図6には、重り50の長径方向が図中左右方向に、重り50の短径方向が図中上下方向に示されている。重り50は、長径方向において差し渡し幅が相対的に大きく、短径方向において差し渡し幅が相対的に小さい。重り50の外形は、長径方向と短径方向とが直交する形状に形成されている。重り50は、外形がレーストラック形状に形成されている。
重り50は、長径と短径とを有する角型形状の多機能型発音体1の内部空間に配置される。そのため、多機能型発音体1の外形に合わせて、重り50を長径と短径とを有するように形成することで、重り50の体積を増大させることができる。これにより重り50の重量が大きくなり、多機能型発音体1の寸法を大きくせずに機械振動系の質量を大きくできる。したがって、より大きな振動を発生できる多機能型発音体1が提供され、多機能型発音体1の振動量を十分に確保することができる。また、上述した数式(1)中の重量Mの調整範囲をより大きくすることができるので、多機能型発音体1の発生する振動を共振周波数に合わせることが、一層容易になる。
図7は、重り50の部分断面図である。図6および図7を参照して、重り50の中央部には、重り50を厚み方向に貫通する孔部58が形成されている。図3に示すように、この孔部58にヨーク16が嵌合することにより、磁気回路部10と重り50とは一体の構造体を形成する。重り50のサスペンション30に対向する表面53には、段差部52が形成されている。段差部52において、重り50の厚みが変化している。つまり、段差部52よりも内周側の重り50の厚みと比較して、段差部52よりも重り50の外周側の厚みが相対的に小さい。
重り50の、段差部52よりも内周側には、高位部54が形成されている。高位部54において、サスペンション30に対向する重り50の表面53は、重り50の底面55に対して、相対的に大きく離れた高い位置にある。重り50の、段差部52よりも外周側には、低位部56が形成されている。低位部56において、重り50の表面53は、底面55に対して相対的に小さく離れた低い位置にある。高位部54における重り50の厚みは、低位部56における重り50の厚みよりも、大きくなっている。
段差部52は、レーストラック形状の重り50の短径方向と平行に形成されている。サスペンション30に重り50が取り付けられたとき、段差部52の延びる方向は、サスペンション30の腕部36の第一腕37、第二腕38および第三腕39の延在する方向と、同じ方向になっている。
図5に示す、サスペンション30の腕部36の、サスペンション30の長径に沿う最外周側の屈曲部である第一屈曲46と、サスペンション30の平面形状の中心Osとの間の距離を、距離bとする。距離bは、サスペンション30の長径方向における外周側から二本目の第二腕38の内周側と、サスペンション30の中心Osとの間の距離を示す。図6に示す、重り50の長径に沿う、段差部52と重り50の平面形状の中心Owとの間の距離を、距離cとする。サスペンション30と重り50とは、距離bが距離cよりも大きくなるように、形成されている。そのため、サスペンション30と重り50とが一体に組み付けられたとき、サスペンション30の腕部36の第二腕38、第一屈曲46および第一腕37は、重り50の段差部52よりも外周側に配置される。
図8は、サスペンション30と重り50との分解斜視図である。図8に示すように、重り50を、サスペンション30と略同一形状の平面形状に形成することによって、多機能型発音体1の内部空間に占める重り50の体積を、さらに増大させることができる。これにより、重り50の重量をさらに大きくすることが可能となるため、多機能型発音体1の振動量をさらに増大させることができ、また、多機能型発音体1の発生する振動をさらに容易に共振周波数に合わせることができる。
次に、上述した構成を備える多機能型発音体1の動作について説明する。上記の構成により、多機能型発音体1を図1に示す携帯情報端末100に組み込んだ状態において、マグネット12から発生する磁束がプレート14およびヨーク16によって導かれて、ボイスコイル28の配置されている空隙に収束されて磁界が発生する。そして、ボイスコイル28にたとえば交番電流などの電流が入力される。ボイスコイル28に電流が供給されると、ボイスコイル28を流れる電流とマグネット12から発生する磁界とによって、フレミングの左手の法則に基づいて、ボイスコイル28と磁気回路部10との間に駆動力が発生する。
この駆動力の大きさは、ボイスコイル28に入力される電流に応じて変化する。交流の電流に応じて変化する駆動力により、ボイスコイル28が上下に振動する。ボイスコイル28がマグネット12、プレート14およびヨーク16で形成される磁気回路部10中のギャップ内で変動し、ボイスコイル28に取り付けられた振動板20が振動する。これにより、電気信号(電流)が音響(振動)に変換され、多機能型発音体1は音声を発生する。振動板20の振動によって得られた発生音は、放音孔103を通じて、携帯電話の前方へと放出される。
一方、交流の電流に応じて変化する駆動力は、サスペンション30に支持された重り50と磁気回路部10とを含む可動部に働き、可動部は上下に振動する。特に、ボイスコイル28に入力される電流の周波数が、この機械振動系の共振周波数と一致する場合に、可動部は大きく振動する。この振動がサスペンション30からフレーム2に伝達されて、フレーム2が振動する。このようにして、多機能型発音体1は振動を発生する。多機能型発音体1を携帯電話の上部筐体101に固定すれば、多機能型発音体1の振動時に上部筐体101を振動させて、携帯電話の使用者に振動を感知させ着信などを知らせることができる。
図9は、可動部が静止している状態の、サスペンション30と重り50との位置関係を示す模式図である。図10は、可動部が上方へ振動している状態の、サスペンション30と重り50との位置関係を示す模式図である。図11は、可動部が下方へ振動している状態の、サスペンション30と重り50との位置関係を示す模式図である。図9〜図11では、サスペンション30のうち、フレーム2に固定された固定部32と、ヨーク16を介して重り50を懸架する振動部34と、腕部36が屈曲する第一屈曲46および第二屈曲47とが図示されている。
本発明者らは、多機能型発音体1の振動解析および実験の結果を鋭意検討し、サスペンション30の腕部36が屈曲する屈曲部のうち内周側に位置する第二屈曲47は、重り50の上下移動に伴って振動するが、屈曲部のうち外周側に位置する第一屈曲46は、重り50が上下に振動する際にもほとんど移動しないことを見出した。
つまり、図9に示す静止状態から図10に示す上方へ振動する状態へ移行するとき、ヨーク16の取り付けられた内側連結部43と、屈曲部のうち内側連結部43に近い側の第二屈曲47とは、重り50の上方への移動に従って、上方へ移動している。また、図9に示す静止状態から図11に示す下方へ振動する状態へ移行するとき、内側連結部43と第二屈曲47とは、重り50の下方への移動に従って、下方へ移動している。しかしながら、図10および図11に示すように、サスペンション30の固定部32はフレームに固定されており、屈曲部のうち固定部32に近い側の第一屈曲46は、重り50が上下へ振動しても、その位置をほとんど変化させていない。
図9〜図11に示す可動部が振動している状態のうち、可動部が上方へ振動している状態において、重り50がサスペンション30へ最も接近する。つまり、図10に示す状態において、重り50とサスペンション30との接触が最も発生しやすくなる。サスペンション30のうち、重り50と共に振動する箇所は、重り50に接触する可能性が小さい。サスペンション30のうち重り50の振動時に移動しない第一屈曲46は、重り50に接触する可能性が最も大きい。第一屈曲46と重り50との接触が発生すると、衝突による異常音である干渉音が発生する問題がある。
そこで、本実施の形態のサスペンション30と重り50とは、上述したように、第一屈曲46とサスペンション30との中心Osとの間の距離b(図5参照)が、重り50に形成された段差部52と重り50の中心Owとの間の距離c(図6参照)よりも大きくなるように、形成されている。そのため、図9〜図11に示す通り、サスペンション30の長径方向(図中左右方向)において、第一屈曲46と段差部52との間には、隙間が形成されている。この隙間の、サスペンション30の長径方向における寸法は、たとえば0.15mm以上とすることができる。
重り50において段差部52よりも外周側の、第一屈曲46に対向する低位部56は、重り50が上方に振動したときにも第一屈曲46と重り50との干渉が発生しないように、その厚みを決定されている。段差部52によって、重り50の表面53(図7参照)の一部が表面53に対して窪んだ凹みが形成されるが、この凹みの深さは、サスペンション30と重り50とが最も接近した場合に、サスペンション30と重り50とが衝突しない深さに、決定されている。
このようにすれば、重り50が上下に振動するときにサスペンション30と重り50とが接触して干渉音が発生することを、抑制することができる。重り50の一部のみを加工することで干渉音の発生を抑制できるので、加工に伴う重り50の体積の減少が最小限に抑えられ、十分な振動量が得られる程度の重り50の重量を確保することができる。サスペンション30の腕部36に第一屈曲46と第二屈曲47とを形成し、重り50との接触が発生し得る箇所を第一屈曲46と特定することで、重り50の加工が必要な箇所の特定が可能となっている。
重り50の表面53の一部のみを加工して厚み方向の寸法が相対的に小さい低位部56を形成し、低位部56と高位部54との境界を形成する段差部52は第一屈曲46と第二屈曲47との間に配置される。これにより、サスペンション30と重り50との接触を確実に回避することができる。加えて、重り50の重量を確保できるので、多機能型発音体1の可動部の振動量を十分に大きく確保することができる。
図5に示す、サスペンション30の固定部32の長径側の外周と、サスペンション30の中心Osとの間の距離を、距離aとする。距離aは、サスペンション30の長径に沿う、サスペンション30の中心Osから外周までの距離のうち最大の距離である。サスペンション30は、上述した第一屈曲46とサスペンション30の中心Osとの間の距離bが距離aの0.6倍以上であるように、形成されている。
このようにサスペンション30の形状を特定することで、第一屈曲46を、サスペンション30の長径方向における、より外周側に配置することができる。サスペンション30の外形を形成する固定部32に第一屈曲46を近接させて配置することで、重り50に形成される段差部52を、重り50のより外周側に配置することができる。つまり、重り50を平面視した場合の、重り50が加工されて形成される低位部56の面積を、より小さくすることができる。したがって、重り50に必要な加工量をさらに小さくでき、重り50の重量をさらに大きく確保できるので、多機能型発音体1の可動部の振動量をさらに大きくすることができる。
なお、これまでの説明においては、ヨーク16がサスペンション30の振動部34に固定され、磁気回路部10を介在させて重り50がサスペンション30により懸架される例について説明した。本発明の多機能型発音体1はこの構成に限られず、たとえば、重り50が直接サスペンション30に固定されてもよい。但し、磁気回路部10がサスペンション30に取り付けられるほうが、サスペンション30の腕部36の長さをより大きくでき、可動部の振動特性の調整範囲をより大きくできる点で、有利であると考えられる。
また、多機能型発音体1の外形を形成するフレーム2がレーストラック形状に形成され、サスペンション30および重り50もまた、フレーム2の形状に合わせてレーストラック形状に形成された例について説明したが、この構成に限られるものではない。フレーム2、サスペンション30および重り50は、たとえば楕円形状などの、長径と短径とを有する任意の形状に形成されてもよい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。