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JP5529466B2 - 透明樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、電子機器部品用の光学部材として好適に用いられる耐熱性を有する透明樹脂成形体、及びその製造方法に関する。
携帯電話機、ノートパソコン、デジタルカメラ、液晶テレビ等では、導光板、光拡散シート、集光シート等として種々の光学フィルムが用いられている。又、ピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ、フレネルレンズ等としての種々の光学レンズが用いられている。これらの光学フィルムや光学レンズ等の光学部材を安価なものにするため、大量生産が容易な熱可塑性樹脂を構成材料とする光学部材への置き換えが進められており、この熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂やポリカーボネート等が広く使用されている。
一方、近年、各種電子機器の小型化、高性能化に対応するため搭載される電子部品の小型化が進められており、それに伴い電子部品を回路基板へ実装する方法としては高い実装密度が得られ生産効率も良いハンダリフローが一般的となってきている。又、環境問題に対応するため、ハンダリフローにも鉛フリーハンダの使用が望まれている。
このような近年の傾向にともない、前記の光学部材についても、鉛フリーハンダを使用してハンダリフローによる実装を可能にするため、鉛フリーハンダのリフロー温度(260℃)でも溶融せず形状を維持できる耐熱性が望まれている。しかし、汎用の熱可塑性樹脂よりなる光学部材ではこのような耐熱性を有することは困難である。そこで、光学部材に用いることができる透明性を有し、高い耐熱性を有する透明樹脂成形体の開発が望まれており、種々の提案がなされている。
特開2005−171051号公報 特開2008−231403号公報
例えば特許文献1には、耐熱性にすぐれる透明樹脂成形体を形成する樹脂として、芳香族ジヒドロキシ成分を有し、耐熱性が向上した芳香族ポリカーボネート樹脂が開示されており、リフローハンダ付けに対応する光学部材に用いられると記載されている。しかし、実施例に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は全て200℃以下である。そこで、260℃以上でのハンダリフローに耐える材料とするためには特殊なモノマーを大幅に増量する必要があり、この場合は、重合が困難となる、コストが大幅に上昇する等の問題がある。
又、特許文献2では、2液タイプの耐熱性透明樹脂成形物(成形体)からなる封止材やカメラレンズが開示されており、200℃雰囲気にて200時間後の透過率が低下しない点等高い耐熱性が示されている。しかし、実施例では硬化に1時間、焼成に3時間要している等、成形時間が非常に長く、大量生産を困難にしている。
このように従来は、光学フィルム、光学レンズ等の光学部材として使用できる高い透明性を有する透明樹脂成形体であって、鉛フリーハンダを使用したハンダリフローに使用可能な耐熱性を有し、さらに高い生産性を有し大量生産が容易なものは知られておらず、これらの特性を併せ持つ透明樹脂成形体の開発が望まれていた。
本発明は、鉛フリーハンダを使用したハンダリフローに使用可能な高い耐熱性、光学部材として使用できる高い透明性を併せ持ち、かつ生産が容易な透明樹脂成形体、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の問題について鋭意検討した結果、炭素−水素結合を有するフッ素樹脂からなる樹脂組成物の成形体に、電離放射線を、フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気及びフッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気で、それぞれ1回以上照射して樹脂を架橋することにより、高い耐熱性と高い透明性を併せ持ち、かつ生産性に優れる透明樹脂成形体が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、炭素−水素結合を有するフッ素樹脂からなる樹脂組成物の成形体であって、前記フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気で1回以上の電離放射線の照射により前記樹脂組成物が架橋され、及び、前記フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気で1回以上の電離放射線の照射により前記樹脂組成物が架橋されていることを特徴とする透明樹脂成形体(請求項1)を提供する。
前記樹脂組成物を構成するフッ素樹脂としては、フッ素を含有しかつ炭素−水素結合を有する熱可塑性樹脂であって、透明な成形体とすることができ、かつ電離放射線の照射により架橋するものであれば特に限定されない。フッ素樹脂は、熱可塑性樹脂であるので、後述するような成形方法により、光学部材となる成形体を、高い生産性で容易に生産することができる。
炭素−水素結合を有し電離放射線の照射により架橋するフッ素樹脂としては、具体的には、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンターポリマー等を挙げることができる。
又、エチレンとテトラフルオロエチレン又は式(1):CF=CF−Rf(式中、Rfは、−CF又は−ORfを表す。Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物との共重合体等も挙げることができる。これらの共重合体はその比率により透明性、融点、架橋特性を変えることができるが、電離放射線を照射する前の成形体の透過率が400nmの波長にて20%以上であるものがより好ましい。
本発明に用いられるフッ素樹脂としては、反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものを用いることもできる。ここで、反応性官能基としては、カルボニル基、カルボニル基を有する基、例えばカルボニルジオキシ基又はハロホルミル、水酸基及びエポキシ基等を挙げることができる。
本発明に用いられるフッ素樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、他の成分を共重合させたもの、エチレン部位に他の成分をグラフト重合させたものも用いることもできる。このようなフッ素樹脂としては市販品を用いることができ、例えば、ダイキン工業社製のネオフロンRP−4020(商品名)を挙げることができる。
又、前記成形体を形成する樹脂組成物は、前記フッ素樹脂からなるものであるが、前記樹脂組成物としては、前記のフッ素樹脂に、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂成分を添加したポリマーアロイを用いることも可能である。このような他の樹脂成分としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、熱可塑性エラストマー、炭素−水素結合を有さないフッ素樹脂、又これら樹脂の共重合体等が挙げられる。
請求項2の発明は、前記樹脂組成物が、分子量1000以下で炭素−炭素二重結合を分子内に少なくとも2つ以上有する添加剤を、前記フッ素樹脂の100重量部に対し、0.05重量部以上、20重量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂成形体である。
前記フッ素樹脂からなる樹脂組成物には、電離放射線の照射による架橋効率を向上させるため、分子量が1000以下であり、炭素−炭素二重結合を分子内に少なくとも2つ以上有している多官能性モノマーを添加することが好ましく、その添加量は、フッ素樹脂の100重量部に対し、0.05重量部以上、20重量部以下が好ましい。
この多官能性モノマー(添加剤)の添加量が0.05重量部未満の場合でも、電離放射線の照射により架橋し、本発明が目的とする耐熱性が得られるが、若干架橋効率が低く、照射線量が多量に必要となる。一方、添加量が20重量部より多い場合、樹脂組成物を作成する際の混練時の取り扱いが困難となる、成形品より添加剤がブリードアウトする、又添加剤自体の自己重合により透明性が低下する等の問題が生じる場合があり、特性の低下を引き起こす可能性がある。又、添加量を0.05重量部以上、20重量部以下とすることにより、樹脂組成物内への添加が容易となる。より好ましくは1重量部以上15重量部以下である。
前記多官能性モノマー(添加剤)の分子量は1000以下のものであるが、分子量を1000以下とすることにより、透明性を維持しながら耐熱性に優れた成形体が得られるとの効果がより顕著になる。又、分子量1000以下であるものは、フッ素樹脂との混練を容易に実施できる程度の粘度を有し、又添加剤自体の着色が少ないものが多い点でも好ましい。
前記多官能性モノマー(添加剤)の例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、1,6−ジビニル(パーフルオロヘキサン)等を挙げることができる。中でも、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ジビニル(パーフルオロヘキサン)等が好ましく用いられる。
上記の添加剤としては、市販品の多官能性モノマーを使用することもできる。ただし、市販品の多官能性モノマーには、安定剤等が本発明の効果に影響を与える程度含まれている場合があるので、使用前には本発明の効果についての簡易な予備試験等を行い本発明の効果に影響を与えないことを確認することが好ましい。上記の添加剤としては、安定剤の配合量が1000ppm以下のものが通常用いられ、本発明の効果への影響を防ぐためには、配合量が少ないものほど好ましい。
前記樹脂組成物には、前記の成分に加えて、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤等の各種添加剤を混合することができる。
この樹脂組成物は、これらの材料をオープンロール、加圧ニーダー、単軸混合機、2軸混合機等の既知の混合装置を用いて混合することにより作製することができる。使用するフッ素樹脂(べース樹脂)の融点以上の温度で溶融混合することが好ましい。
次に上記にて作製した樹脂組成物の成形方法について説明する。本発明の透明樹脂成形体を製造するための成形方法としては、射出成形、プレス成形、押出成形等、既存の成形方法として広く用いられている方法を採用することができる。本発明に使用される樹脂組成物の融点は、フッ素樹脂の種類、例えばフッ素樹脂を構成するモノマー比率により調節することが可能である。融点が300℃未満であるフッ素樹脂を使用する場合は前記の既存の成形方法を容易に適用することができる。なお、融点300℃以上であるフッ素樹脂を使用する場合はフッ化水素による機械の腐食を考慮したメッキ処理を施す必要がある。
成形の際には、材料表面に金型・成形ロール面が転写しやすく、粗い面が転写されると光の散乱を誘発し透過率を低下させる原因となり得る。そこで、直接成形体と接する設備の金型や成形ロール面は研磨されていることが好ましく、特に面粗度Ra=1.6a程度に研磨されていることが好ましい。
本発明の透明樹脂成形体は、前記のようにして形成された成形体に、成形体を構成するフッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気で1回以上の電離放射線の照射(1回目の照射)、及び、フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気で1回以上の電離放射線の照射(2回目の照射)を施し、前記樹脂組成物を架橋したものであることを特徴とする。本発明の透明樹脂成形体の材料である樹脂組成物を構成するフッ素樹脂は、容易に成形体を得られる熱可塑性樹脂であるが、電離放射線の照射により架橋された後は、熱可塑性樹脂を材料にしているにも係わらず、鉛フリーハンダを使用したハンダリフローに耐える耐熱性を有する成形体となる。
電離放射線源としては、加速電子線やガンマ線、X線、α線、紫外線等を例示することができるが、線源利用の簡便さや電離放射線の透過厚み、架橋処理の速度等、工業的利用の観点から加速電子線が好ましい。加速電子線の加速電圧は、成形品の肉厚等に応じて適宜設定すればよい。例えば厚さ2mm程度の成形品であれば、加速電圧は100〜10,000kVの間で選定される。
電離放射線の照射線量が大きい程、樹脂組成物の架橋度が向上し、耐熱性が向上する。しかし、照射線量が大きすぎる場合は、成形体の着色、白濁や、樹脂の分解等の問題が生じる場合がある。従って、通常、1回目の照射及び2回目の照射の合計で、100kGy以上、1500kGy未満の照射線量が好ましい。この範囲内であれば、鉛フリーハンダを使用したハンダリフローに耐える耐熱性が得られ、又、前記の問題は生じない。
前記のようにして樹脂組成物の成形体を得た後、この成形体に電離放射線の照射が施されるが、電離放射線の照射は、フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気、好ましくはガラス転移点以下の温度雰囲気で少なくとも1回以上、及び、フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気で少なくとも1回以上行われる。フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気で電離放射線が照射され架橋が施されることで、成形体を、2回目の照射を行う際にフッ素樹脂の融点以上に加熱しても、溶融や変形が見られず成形体の形状が維持される。
1回目の照射の後、成形体は、フッ素樹脂の融点以上に加熱され、2回目の照射が行われる。その結果、高い透明性を有する成形体が得られる。フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気では、フッ素樹脂の結晶は溶融しており結晶が存在しない状態であるが、この状態にて照射して架橋を生成するので、結晶量が低減し成形体の透明性が向上するものと思われる。
1回目の照射の照射線量としては、50kGy以上が好ましい。この照射線量が50kGy未満では、架橋不十分となり、2回目の照射のためにフッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気に加熱した際に成形体が溶融や変形する場合がある。又、1回目の照射の照射線量は、1000kGy以下が好ましい。1000kGyを超えると、フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気に加熱しても、結晶が溶融せず、透明性の高い成形体が得られにくい。
2回目の照射の照射線量としては、50kGy以上が好ましい。又、2回目の照射の温度は、好ましくは、フッ素樹脂の融点より10℃以上高い温度である。2回目の照射の温度が、フッ素樹脂の融点に近い場合は、十分に結晶が溶融した状態での架橋ができず、結晶量の低減が不十分となり透明性の向上が不十分となる場合がある。
本発明の透明樹脂成形体は、電離放射線の照射により成形体を構成する樹脂組成物が架橋されているので、鉛フリーハンダを用いたハンダリフローに耐える耐熱性を有するものとすることができる。具体的には、280℃×60秒間の熱暴露がされても、変形、収縮や透過率(400nm)の変化が観測されないとの優れた耐熱性を有するものとすることができる。
又、電離放射線の照射により成形体を構成する樹脂組成物が架橋されているので、光に対する安定性も向上する。具体的には、本発明の透明樹脂成形体を、20cdの白色LEDに100日間暴露しても高い透過率を維持するものとすることができる。
このような高い耐熱性を有する透明樹脂成形体、及び、このような高い光安定性を有する透明樹脂成形体は、従来技術では得られなかった新規なものである。そこで本発明は、さらに、これらの透明樹脂成形体を請求項4及び請求項5において提供する。
請求項3の発明は、フッ素樹脂からなる樹脂組成物の成形体であって、厚さを2mmとしたときの400nm波長光の透過率が85%以上であり、280℃で60秒間の加熱による収縮が縦方向、横方向のいずれについても3%以内であり、かつ280℃で60秒間の加熱後の前記透過率が85%以上であることを特徴とする透明樹脂成形体である。
請求項4の発明は、フッ素樹脂からなる樹脂組成物の成形体であって、厚さを2mmとしたときの400nm波長光の透過率が85%以上であり、20cdの白色光に2000時間暴露後の前記透過率が85%以上であることを特徴とする透明樹脂成形体である。
本発明は、前記の透明樹脂成形体に加えて、請求項5として、炭素−水素結合を有するフッ素樹脂からなる樹脂組成物を成形する成形工程、成形工程で得られた成形体に、前記フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気で1回以上の電離放射線を照射して樹脂組成物を架橋する1回目の照射工程、前記フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気で1回以上の電離放射線を照射して樹脂組成物を架橋する2回目の照射工程を有することを特徴とする透明樹脂成形体の製造方法を提供する。この製造方法の発明は、請求項1の発明を生産方法の側面からとらえたものであり、前記の透明樹脂成形体は、この方法により製造することができる。フッ素樹脂、電離放射線、1回目の照射、2回目の照射の意味は請求項1の発明についての説明と同じである。
本発明の透明樹脂成形体は、鉛フリーハンダを使用したハンダリフローに使用可能な高い耐熱性、光学部材として使用できる高い透明性を併せ持ち、かつ生産が容易な透明樹脂成形体である。この透明樹脂成形体は、本発明の透明樹脂成形体の製造方法により容易に製造することができる。
次に本発明を実施するための形態を実施例により説明する。なお、本発明の範囲はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々の変更が可能である。
先ず、実施例、比較例で行った樹脂組成物ペレット及び評価用プレートの作製について説明する。
[樹脂組成物ペレットの作製]
表1〜3に示す配合処方の樹脂及び添加剤を、二軸混合機(30mmφ、L/D=30)を使用し、バレル温度を190℃〜280℃に設定し、スクリュー回転数100rpmで溶融混合して樹脂組成物を作製した後、ストランドカットペレタイザで樹脂組成物ペレットを作製した。バレル温度は処方の樹脂の融点より10℃以上高くなるように適宜選定した。
[評価用プレートの作製]
上記で得られた樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形、プレス成形又は押出成形を行い、得られた成形体(プレート)に電子線照射をして作製した(比較例1では電子線照射を行っていない。)。射出成形、プレス成形、押出成形の条件、及び電子線照射の条件を以下に示す。
1)射出成形
樹脂組成物ペレットを型締力40tクラスの射出成形機(日精樹脂社製)に投入し、面粗度Ra=1.6aレベルで研磨したSUS304製の金型を用いて、射出成形を実施し、所定の肉厚のプレートを作製した。この成形方法は、厚みが0.8mm以上の成形体作製時に使用した。
2)プレス成形
樹脂組成物ペレットを熱プレス機にて、融点より20℃高い温度にて、10分間、200N/cmにてプレスし、0.3mm厚のプレプレスシートを作製した。続いて所定の肉厚の金枠内に前記で作製したプレプレスシートを設置し、面粗度Ra=1.6aレベルで研磨したSUS304製の2mm板(鏡面板)をスペーサーとして上下に配置し、融点より20℃高い温度にて、10分、40N/cmにてプレスし、所定の肉厚のプレート(フィルム)を作製した。この成形方法は、厚みが0.25mm未満の成形体作製時に使用した。
3)押出成形
樹脂組成物ペレットを20mmφ押出機(東洋機械社製の単軸タイプ)に投入し、ダイス口に設置されたTダイにて押出した。得られたフィルムに、面粗度Ra=1.6aレベルで研磨した面を有するSUS304製のロール(鏡面のステンロール)にて平滑面を転写させ、厚さ調節をおこない、所定の肉厚のプレートを作製した。この成形方法は、厚みが0.25mm以上、0.8mm未満の成形体作製時に使用した。
4)電子線照射の条件
上記成形により作製したプレートに、加速電圧2000kVの加速電子線を、表1〜3に記載の所定温度、所定線量で照射した。具体的には、実施例では、表の1回目照射の欄に記載の温度及び線量で、フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気での電子線照射(以後、「1回目の照射」と言う。)を行った後、下記の方法で透過率1の測定を行い、その後、表の2回目照射の欄に記載の温度及び線量で、フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気での電子線照射(以後、「2回目の照射」と言う。なお、比較例3では、フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気での電子線照射は行わなかったが、この場合でも、フッ素樹脂の融点以上温度雰囲気での電子線照射を「2回目の照射」とする。)を行った。温調は、照射機内部に設置された恒温槽にて行った。なお、温調は、成形体の一方から熱を与えるホットプレートタイプの温調機により行うことも可能であるが、成形体の周囲全ての雰囲気を加熱できる恒温槽タイプがより好ましい。
なお、実施例2では、1回目の照射後、透過率1の測定を行わないで、連続して2回目の照射を行った。又、比較例1では、1回目の照射及び2回目の照射のいずれも行わなかった。他の比較例では、表2、3に記載の条件で、1回目の照射及び/又は2回目の照射を行ったが、比較例2、比較例5では2回目の照射を行わず、比較例3では1回目の照射を行わなかった。
[評価方法]
次に、上記のようにして得られた評価用プレートの評価方法について説明する。
(1)透過率1
1回目の照射が終了した段階で取り出したプレートから10mm×10mm角にてカッティングして得たサンプルについて、紫外領域200nmから近赤外領域1000nmの透過率を測定し、波形が連続していることを確認した。この測定により得られた400nmでの透過率を透過率1として表1〜3に示した。なお、電子線照射を行わなかった比較例1、1回目の照射を行わなかった比較例3では、成形により得られたプレートについて上記の透過率の測定を行い透過率1とした。
(2)初期基礎物性の測定
1)透過率2及び透過率3(フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気での電子線照射後の透過率)
上記方法で2回目の電子線照射を行ったプレートから10mm×10mm角のサンプルをカッティングした。得られたサンプルについて紫外領域200nmから近赤外領域1000nmの透過率を測定し、波形が連続していることを確認した。この測定により得られた400nmでの透過率を透過率2、850nmでの透過率を透過率3として表1〜3に示した。なお、比較例1では成形後の電子線照射が行われていないプレート、比較例2では1回目の電子線照射を行った後のプレートについての400nm、850nmの測定値を、それぞれ透過率2及び透過率3とした(即ち、この場合は透過率1=透過率2である。)。
2)色目/形状
2回目の照射(フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気での電子線照射)を行った後のプレートの色目/形状を目視で確認し、その結果を表1〜3の「色目/形状」欄に示した。照射後のプレートの着色、ヘイズ(白濁)、溶融による変形、照射分解による形状維持不可等の問題が無いものを「良好」とした。
(3)耐熱性の評価
1)加熱後の色目/形状
2回目の照射(フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気での電子線照射、)後のプレートを30mm×30mm角にカッティングし、280℃の恒温槽内に60秒間静置して加熱した後の色目/形状を目視で確認した。その結果を表1〜3に「加熱後の色目/形状」として示す。加熱によるプレートの軟化、溶融による変形、しわの発生、着色、ヘイズ(白濁)等の問題が無いものを、「加熱後の色目/形状」欄では「維持」とした。なお、溶融による変形については、ノギスによる測定にて一辺が29.9mm以下のサイズに収縮しているものを変形有りとした。
なお、比較例1では電子線照射を行っていないプレートについて、比較例2では1回目の照射後のプレートについて、比較例5では1回目の照射後アニールを行ったプレートについて、この測定を行った。
2)透過率4及び透過率5(加熱後の透過率)
上記方法にて、恒温槽内で加熱したプレートを10mm×10mm角にてカッティングしたサンプルについて、紫外領域200nmから近赤外領域1000nmの透過率を測定し、波形が連続していることを確認した。この測定により得られた400nmでの透過率を透過率4、850nmでの透過率を透過率5として表1〜3に示した。
(4)光安定性の評価
1)光暴露後の色目/形状
2回目の照射(フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気での電子線照射、)後のプレートを、10mm×10mm角にてカッティングしたサンプルを、パトライト社製の白色LED“CLE−24”(中心光度20cd)の光源より5mmの位置に設置し、100日間の光暴露を行った。この光暴露後の色目/形状を目視で確認し、その結果を表1〜3に、「光暴露後の色目/形状」として示す。光暴露によるプレートの変形、しわの発生、着色、ヘイズ(白濁)等の問題が無いものを、「光暴露後の色目/形状」欄では「維持」とした。
なお、比較例1では電子線照射を行っていないプレートについて、比較例2では1回目の照射後のプレートについて、比較例5では1回目の照射後アニールを行ったプレートについて、この測定を行った。
2)透過率6及び透過率7(光暴露後の透過率)
光暴露後、上記と同様にして、紫外領域200nmから近赤外領域1000nmの透過率を測定し、波形が連続していることを確認した。この測定により得られた400nmでの透過率を透過率6、850nmでの透過率を透過率7として表1〜3に示した。
次に、実施例、比較例で、樹脂組成物ペレットの作製に使用した材料を以下に示す。
[樹脂]
1)エチレン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンの共重合体(以下「EFEP」とする。):比重1.72〜1.76。融点155〜170℃。
2)エチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体(以下「ETFE」とする。):比重1.73−1.87。融点225−265℃。
3)テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンの共重合体(以下「FEP」とする。):比重2.15。融点255−270。
4)ポリカーボネート(以下「PC」とする。):三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「ユーピロンS3000」。
[添加剤(架橋助剤)]
1)トリアリルイソシアヌレート(MEHQ50ppm添加品)(表1〜3中では添加剤1と示す)。
2)トリメチロールプロパントリメタクリレート(MEHQ50ppm添加品)(表1〜3中では添加剤2と示す)。
実施例1
樹脂としてフッ素樹脂EFEP(融点155〜170℃)を用い、添加剤(架橋助剤)を添加せずに樹脂組成物ペレットの作製、射出成形を行い、表1に示す条件にて1回目の照射及び2回目の照射を行って評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施した。表1に示す評価結果より、次のことが明らかである。
・表1の「色目/形状」の欄は「良好」であり、280℃での加熱による変形が全くみられなかった。
・透過率1は74%と低い値を示すものの、透過率2では90%以上を示しており、又、280℃×60秒の加熱後の透過率4、100日間の白色LED暴露後の透過率6も、85%以上の高い透過率を有していた。この結果が示すように、2回目の照射後のサンプル(本発明品)について、高い透明性、優れた耐熱性、光に対する安定性が確認された。
実施例2
実施例1と同様に、添加剤(架橋助剤)を添加せずに樹脂組成物ペレットの作製、射出成形を行い、表1に示す条件にて1回目の照射及び2回目の照射を行って評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施した。ただし、実施例1と異なり、1回目と2回目の照射を連続で行い(従って、透過率1の測定はできなかった。)、又、実施例1よりは1回目の照射量を増やし、一方2回目の照射量を減らしている。表1に示す評価結果より、次のことが明らかである。
・表1の「色目/形状」の欄は「良好」であり、280℃での加熱による変形が全くみられなかった。
・透過率2では90%以上を示しており、又、280℃×60秒の加熱後の透過率4、100日間の白色LED暴露後の透過率6も85%以上の高い透過率を有していた。この結果が示すように、2回目の照射後のサンプル(本発明品)について、高い透明性、優れた耐熱性、光に対する安定性が確認された。
実施例3〜8
樹脂としてフッ素樹脂EFEPを用い、表1、2に示す配合処方で、添加剤(架橋助剤)を添加して、樹脂組成物ペレットの作製、成形を行い、表1に示す条件にて1回目の照射及び2回目の照射を行って評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施した場合である。電子線照射量は、1回目の照射については実施例1と同じであり(実施例2より少ない。)、2回目の照射については実施例2と同じである(実施例1より少ない。)。
又、実施例4では成形品の厚みを0.15mmとし、実施例5では成形品の厚みを8mmとし、実施例3、6、7では実施例1、2と同じ2mm、実施例8では成形品の厚みを0.5mmとした。従って、成形は、実施例4ではプレス成形、実施例3、5、6、7では射出成型、実施例8では押出成形で行った。実施例6は、添加剤1の量を増やした以外は実施例3と同様な条件で行った場合である。又、実施例7は、添加剤1の代わりに添加剤2を用いた以外は実施例3と同様な条件で行った場合である。表1、2に示す評価結果より、次のことが明らかである。
・表1、2の「色目/形状」の欄は「良好」であり、280℃での加熱による変形が全くみられなかった。
・透過率1は全ての実施例にて75%以下と低い値を示すものの、透過率2では添加剤の量や種類の違い、プレート厚みの違いに関わらず、全て85%以上を示しており、又、280℃×60秒の加熱後の透過率4、100日間の白色LED暴露後の透過率6も、プレート厚みの違いにかかわらず、全て85%以上の高い透過率を有していた。この結果が示すように、高い透明性、優れた耐熱性、光に対する安定性が確認された。添加剤(架橋助剤)として多官能性モノマーを添加することで、照射時の線量を低減することが可能であることも、実施例1、2の結果と、実施例3、7の結果の比較により示されている。
実施例9
樹脂としてフッ素樹脂ETFE(融点265℃)を用い、2回目の照射の温度を300℃とした以外は、実施例3と同様にして評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施した。その評価結果を表2に示す。
表2に示されるように、透過率2、280℃×60秒の加熱後の透過率4、100日間の白色LED暴露後の透過率6の全てが85%以上を示しており、この結果より、樹脂をETFEに代えた場合についても、高い透明性、優れた耐熱性、光に対する安定性が確認された。
比較例1
1回目の照射、2回目の照射のいずれも行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施した。その評価結果を表2に示す。透過率1(=透過率2)は75%と低く、目視にて白濁したプレートであり、透明部材としての使用は困難であると判断される。
さらに、280℃×60秒の加熱後には溶融がみられ、耐熱性が不十分であり、鉛フリーハンダを用いたリフローに耐えられないものと判断される。又、100日間の白色LED暴露後の透過率6、透過率7は、暴露前の透過率2、透過率3よりそれぞれ下がっており、光に対する安定性が十分でないと判断される。
比較例2
1回目の照射のみ実施し、2回目の照射を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施し、その評価結果を表2に示した。透過率1(=透過率2)は68%と低く、目視にて白濁したプレートであり、透明部材としての使用は困難であると判断される。
280℃×60秒の加熱をしても溶融がみられずプレートの形状は維持されたが、加熱後の透過率4、透過率5は、暴露前の透過率2、透過率3よりそれぞれ下がっている。また、透過率2が68%と透明度が低く、目視にて白濁したプレートであり、ハンダリフローに耐える耐熱性を有するものの、透明部材としての使用は困難であり、かつ、色目の維持の面でも十分でないと判断される。
比較例3
1回目の照射を行なわずに透過率1の測定した後、2回目の照射のみ実施したこと以外は、実施例3と同様にして評価用プレートを作製した。フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気での照射を実施していないため、この段階では架橋がなされていないので、融点以上の温度雰囲気としたときに溶融が発生し、この溶融した状態で電子線照射がされ架橋されたため、成形体としての形状を維持できなかった。従って、透過率2、3の測定、耐熱性の評価、光安定性の評価を行うことはできなかった。
比較例4
1回目の照射の線量を1000kGyとしたこと以外は、実施例1(1回目の照射の線量を100kGy)と同様の条件にて評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施し、その評価結果を表3に示した。
280℃×60秒の加熱をしても溶融がみられずプレートの形状は維持され、鉛フリーハンダを用いたハンダリフローに耐える耐熱性を有すると判断される。しかし、フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気での電子線照射を実施したが、透過率1から透過率2への向上が小さい。又、透過率2が70%と透明度が低く、目視にて白濁したプレートであり、透明部材としての使用は困難と判断される。1回目の照射が1000kGyであり、また2回の照射の合計線量が1000kGyより大きいことが白濁の原因であると思われる。
比較例5
2回目の照射を行わず、1回目の照射を実施し透過率1を測定した後に、融点以上の220℃の温度雰囲気に置いてアニール処理をしたこと以外は、実施例3と同様にして評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施し、その評価結果を表3に示した。
280℃×60秒の加熱をしても溶融がみられずプレートの形状は維持され、鉛フリーハンダを用いたハンダリフローに耐える耐熱性を有すると判断される。しかし、透過率1から透過率2への向上が小さく、又、透過率2が70%と透明度が低く、目視にて白濁したプレートであり、透明部材としての使用は困難と判断される。この結果より、フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気での電子線照射が必要であると判断される。
比較例6
樹脂として、EFEPの代わりに、炭素−水素結合を有さないFEP(融点255℃)を用い、2回目の照射の温度を300℃としたこと以外は、実施例3と同様な条件にて評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施し、その評価結果を表3に示した。電子線照射により、架橋よりも分解が進行してしまい、成形体は脆く形状維持が困難となってしまった(表3の「色目/形状」欄では「ボロボロ」と示す。)。従って、フッ素樹脂であっても、炭素−水素結合を有さないFEPは使用できないことが、この結果より示されている。
比較例7
樹脂として、EFEPの代わりに、汎用のPCを用い、2回目の照射の温度を250℃(PCの軟化点以上)としたこと以外は、実施例3と同様な条件にて評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記の評価を実施し、その評価結果を表3に示した。照射によって緑色に着色がみられ、透明部材としての使用は困難と判断される。さらに架橋が不十分であるため2回目の照射時に溶融が見られ、汎用のPCでは本発明の効果が得られないことが示された。
Figure 0005529466
Figure 0005529466
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本発明の透明樹脂成形体は、熱及び光に対する高い安定性と高い透明性を併せ持つ。従って、光学レンズ、光学フィルム等の光学部材として好適に用いられ、又高い耐熱性を有するので回路基板等へ鉛フリーハンダを用いたハンダリフローで実装することができる。

Claims (3)

  1. 炭素−水素結合を有するフッ素樹脂からなる樹脂組成物の成形体であって、前記フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気で1回以上の電離放射線の照射により前記樹脂組成物が架橋され、及び、前記フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気で1回以上の電離放射線の照射により前記樹脂組成物が架橋されていることを特徴とする透明樹脂成形体。
  2. 前記樹脂組成物が、分子量1000以下で炭素−炭素二重結合を分子内に少なくとも2つ以上有する添加剤を、前記フッ素樹脂の100重量部に対し、0.05重量部以上、20重量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂成形体。
  3. 炭素−水素結合を有するフッ素樹脂からなる樹脂組成物を成形する成形工程、成形工程で得られた成形体に、前記フッ素樹脂の融点未満の温度雰囲気で1回以上の電離放射線を照射して樹脂組成物を架橋する1回目の照射工程、前記フッ素樹脂の融点以上の温度雰囲気で1回以上の電離放射線を照射して樹脂組成物を架橋する2回目の照射工程を有することを特徴とする透明樹脂成形体の製造方法。
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