以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る検査システムは、複数の検査用液体を用いて抗原等の検体の検出や分析を行う生化学検査に用いられる。この検査システムは、図1に示されるように、検査チップ10と、検査装置2とを備える。検査装置2は、検査チップ10において生化学反応を生じさせてその結果を測定及び分析する装置であり、検査チップ10に検査用液体Lを注入及び吸引することにより生化学反応を生じさせる送液部(送液装置)30と、検査チップ10を所定位置に保持すると共に当該検査チップ10を所定位置に搬送可能な保持搬送部57と、検体等の検出を行う検出部60と、検査装置2の各部の制御を行う制御部70と、を有する。
ここで、本実施形態における複数の検査用液体Lとしては、検出対象である検体等を含む試料溶液や、検査チップ10の流路22内を洗浄する際に用いられる洗浄液、バッファ液等が用いられるが、これらに限定されず、抗体液や標識抗体液、反応抑止液、生化学検査において用いられる他の薬液等も含まれる。
検査チップ10は、抗原抗体反応等による生体物質の検査や分析等に用いられるチップである。本実施形態に係る検査チップ10は、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する分析装置や、検体若しくは検体に標識された蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づく増強電場により励起されて発した蛍光を測定する分析装置等に用いられる、いわゆるクレッチマン配置のセンサーチップである。
具体的に、検査チップ10は、図2(A)に示されるように、検査チップ本体(チップ本体)11と、検査チップ10に設けられた流路(液体収容部)22の端部開口(流路開口)25を封止する封止部材(弾性部材)12とを備える。
検査チップ本体11は、金属膜13を有し、内部に入射した励起光α(図1及び図10参照)が金属膜13で反射することにより当該金属膜13において表面プラズモン共鳴が生じるプリズム部14と、このプリズム部14と共同して検査用液体Lが流れる流路22を形成する流路部材15とを備える。
プリズム部14は、表面プラズモンを生じさせるための励起光αが内部に入射するプリズム本体部と、プリズム本体部16の特定の面17の面上に形成される金属膜13とを有する。
プリズム本体部16は、当該検査チップ10が検査装置2の検出部60に設置されて検体の分析を行うときに、検出部60の励起光源61からの励起光αを内部に入射させる入射面18と、この内部に入射した励起光αを当該面上に形成された金属膜13で反射する成膜面17と、成膜面17上の金属膜13で反射された励起光αをプリズム本体部16の外部に出射する出射面19とをその表面に含む。このプリズム本体部16は、透明なガラス又は樹脂により形成される。
尚、本実施形態のプリズム本体部16は、プリズムのみで構成されているが、これに限定されない。例えば、図2(B)に示されるように、プリズム本体部16Aは、プリズム161と、金属膜13が設けられる基板部162とを有してもよい。即ち、プリズム部14Aは、基板163とこの基板163上に成膜される金属膜13とを有する基板部162と、プリズム161と、を備える。具体的に、基板163は、プリズム161と同じ屈折率を有し、表面(厚さ方向における一方の面)163aの面上に金属膜13を有する。この基板163は、裏面(厚さ方向における他方の面)163bをプリズム161に向けて当該プリズム161の所定の面161aの面上にマッチングオイル164を介して配置される。このようにプリズム部14Aがプリズム161と金属膜13を備えた基板部162とを有することで、剥がれや汚れ、損傷等によって金属膜13を交換する必要が生じたときに、基板部162のみを交換してプリズム161を使い続けることができるため、コスト削減を図ることができる。
図2(B)に戻り、金属膜13は、プリズム本体部16の成膜面17上に成膜(形成)された金属製の薄膜である。本実施形態の金属膜13は、金により形成されている。この金属膜13は、プリズム部14においてプリズム本体部16側からの励起光αが当該金属膜13で全反射されることにより生じるエバネッセント波を増幅するための部材である。尚、金属膜13は、表面プラズモン共鳴を生じさせることができるように膜厚が100nm以下の薄膜であり、好ましくは膜厚が30〜70nmとなるように成膜面17上に成膜される。
また、金属膜13の表面(プリズム本体部16と反対側の面)13aには、反応膜20が設けられる。この反応膜20は、試料溶液(検査用液体)に含まれる検体(特定の抗原等)を捕捉するための生理活性物質21が金属膜13上に固定されることにより形成されている。本実施形態では、生理活性物質21として抗体が用いられる。この生理活性物質21は、表面処理によって金属膜13の表面13aに固定される。具体的に、生理活性物質21は、金属膜13の表面13aにおいて、プリズム本体部16が流路部材15と共同して流路22を形成したときにこの流路22を流れる試料溶液と接する領域に固定される。尚、図2(A)における生理活性物質(抗体)21は、模式的に示したものであり、実際の形態とは異なる。
流路部材15は、プリズム本体部16の成膜面17上(詳しくは、金属膜13上)に設けられ、プリズム部14と共同して流路22を形成する。この流路部材15は、透明な樹脂により形成される。本実施形態の流路部材15は、水平方向に拡がる板状の部材である。流路22は、生化学反応(例えば、抗原抗体反応等)が行われる反応部23と、この反応部23と検査チップ10の外部とを連通する複数(本実施形態では2つ)の連通部24と、を有する。
反応部23は、流路部材15の裏面(図2(A)において下側の面)15bに設けられた溝とプリズム部14(詳しくは、プリズム本体部16上の金属膜13)とにより囲まれている。即ち、この反応部23では、試料溶液が金属膜13の表面(生理活性物質21が固定されている領域)13aと接しつつ流れる。そのため、この流路22に試料溶液を流すことにより、この試料溶液が生理活性物質21と接しつつ流れる。本実施形態の検査チップ10では、送液部30のノズル部材31から吐出される検体等を含む試料溶液や薬液群等の検査用液体Lにより反応部23での反応促進、反応停止、洗浄等が行われ、その後、生理活性物質21によって捕捉された試料溶液中の検体等が光学的に検査される。この反応部23は、連通部24よりも内径が小さい。具体的に、反応部23の内径は、毛細管現象が発露する程度の大きさ(例えば、30〜200μm程度の大きさ)である。
各連通部24は、一方の端部が流路部材15の表面(図2(A)において上側の面)15aで開口し、他方の端部(前記一方の端部と反対側の端部)が反応部23と接続されている。本実施形態では、一対の連通部24、24が反応部23の両端から検査チップ本体11の上面、即ち、流路部材15の上面15aに向ってそれぞれ延び、検査チップ本体11の上面(表面)15aで開口することによって、これら反応部23と一対の連通部24、24とにより一本の流路22が形成されている。
封止部材12は、検査チップ本体11の表面において、流路開口25を覆って流路22内を密閉状態にするシート状の部材である。本実施形態では、封止部材12は、検査チップ本体11の上面15aにおいて、その全域を覆うように設けられているが、少なくとも、流路開口25を封止することができる領域に設けられていればよい。このような領域に封止部材12が設けられることにより、流路22内を密閉することができる。
この封止部材12は、複数のシートが積層された多層シートである。この封止部材12において、積層方向に隣接するシート同士は、接着剤又は粘着剤によって接着されている。本実施形態の封止部材12は、第1シート(第1のシート)26と第2シート(第2のシート)27と第3のシート28とが順に積層された3層構造である。
第1シート26は、送液部30のノズル部材31をその先端側から押し当てることにより穿孔可能な所定の延性を有すると共に、封止部材12をノズル部材が貫通したときに、封止部材12に形成された穴(挿入開口29)を囲う部位(即ち、封止部材12の挿入開口周縁部290)がノズル部材31の外周面37aと密着して封止部材12とノズル部材31との間における密着性(シール性)を確保することができる所定の弾性を有する高分子フィルムである(図3参照)。具体的に、第1シート26は、低弾性で且つ高延性を有するシート(例えば、破断伸びが200〜720%で且つ弾性率が0.05〜0.5GPA)のシートである。本実施形態の第1シート26は、低密度ポリエチレン(LDPE)により形成され、30〜70μmの厚さを有する。このLDPEで形成される第1シートでは、例えば、破断伸びが480〜720%であり、弾性率が0.19〜0.4GPAである。
尚、第1シート26の素材は、LDPEに限定されず、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、脂肪族芳香族コポリエステル等の高延性及び低弾性の高分子フィルムであればよい。これらの素材により形成される第1シート26では、素材がLLDPEの場合、例えば、破断伸びが230〜690%、弾性率が0.17〜0.39GPAであり、素材がEVAの場合、例えば、破断伸びが550%、弾性率が0.05〜0.14GPAである。
第2シート27は、第1シート26よりも延性が低い(破断伸び率が50%以下の)素材で形成され、封止部材12において第1シート26よりも内側(検査チップ本体11側)に位置している。本実施形態の第2シート27は、アルミニウム(AL)により形成され、3〜10μmの厚さを有する。このALで構成される第2シート27では、例えば、破断伸びが20〜25%であり、弾性率が70GPAである。
尚、第2シート27の素材は、ALに限定されず、例えば、銅(Cu)、スズ(Sn)、金(Au)等であればよい。これらの素材により形成される第2シート27は、素材がCuの場合、例えば、破断伸びが7〜13%、弾性率が130GPAであり、素材がSnの場合、例えば、破断伸びが20%、弾性率が50GPAであり、素材がAuの場合、例えば、破断伸びが42%である。
第2シート27が、アルミニウムにより形成されることによって流路22内と検査チップ10の外部との間の水分の遮断性と遮光性とが十分に確保される。尚、第1シート26よりも外側に第2シート27が配置されていてもよい。
第3シート28は、粘着剤により構成される粘着フィルムであり、20〜100μmの厚さを有する。この第3シート28によって、封止部材12が検査チップ本体11に強固に接着される。
送液部(送液装置)30は、ノズル部材31と、ポンプ32と、ノズル駆動部33とを備える(図3参照)。また、送液部30は、各種薬液(検査用液体)が貯留された複数の薬液容器や薬液チップ等(図示省略)と、使用済みの検査用液体Lを廃棄するための廃液容器(図示省略)と、使用済みのノズル部材31を廃棄するためのピペット廃棄用容器(図示省略)と、を備える。
ノズル部材31は、先端に開口35を有し、この開口35から検査チップ10の流路22に検査用液体Lを吐出し(注入し)及び吸引する。本実施形態では、ノズル部材31として、ポンプ32に着脱可能に取り付けるピペットチップが用いられる。
このピペットチップ31は、その内部に先端の開口35から上方に向かって延び且つ検査用液体Lを貯留可能な液体貯留部36を有する。本実施形態のピペットチップ31は、上下方向に長尺なノズル部材であり、その内部に当該ピペットチップ31の軸方向(図3における上下方向)に沿って貫通する貫通孔が設けられている。そして、この貫通孔のピペットチップ31の先端の開口35側(開口35から前記の貫通孔に挿入されたポンプノズル41の先端まで)の部位が液体貯留部36を構成する。即ち、本実施形態の液体貯留部36は、ピペットチップ31の先端の開口35から当該ピペットチップ31の接続されたポンプノズル41まで連通する柱状の空間を囲う部位である。
ピペットチップ31の先端部37は、先端に向って外径(直径)が徐々に小さくなるいわゆるテーパー形状の外周面37aを有する。
詳しくは、ピペットチップ31は、封止部材12との密着性を高めるためにポリプロピレン等の弾性部材により形成され、先端側がテーパー形状に形成されている。このテーパー形状の部位は、先端に向って一定の割合で縮径し、即ち、傾斜角が一定であり、この傾斜角がピペットチップ31の軸方向に対して1°〜15°となるように形成されている。そして、ピペットチップ31先端の開口35の周囲を囲う先端面38は、ピペットチップ31の軸と直交若しくは略直交する。
ポンプ32は、流体の吸引及び排出を行うポンプ本体40と、このポンプ本体40にピペットチップ31を接続するためのポンプノズル41と、を有する。ポンプ本体40は、制御部70と接続され、この制御部70によって制御される。ポンプノズル41は、ピペットチップ31の貫通孔の内周面に対応する形状の外周面41aを有する。これにより、ピペットチップ31の貫通孔内に当該ピペットチップ31の基部側からポンプノズル41が差し込まれることにより、ピペットチップ31がポンプノズル41と勘合する。尚、本実施形態では、ピペットチップ31の軸方向において、ピペットチップ31に対してポンプノズル41から当該ピペットチップ31を離間させる方向に力を加えることにより、ポンプ32からピペットチップ31を取り外すことができる。
ノズル駆動部33は、ポンプ32を昇降させることにより、このポンプ32に接続されたピペットチップ31を昇降させることができる。具体的に、ノズル駆動部33は、昇降部45と水平方向移動部51とを有する。
昇降部45は、ポンプ32を保持してこれを昇降させることにより、ピペットチップ31の先端が下方(即ち、保持搬送部57に保持された状態の検査チップ10の上面)を向いた姿勢で当該ピペットチップ31を昇降(Z軸方向に往復移動)させる。具体的に、昇降部45は、リニアステージ46とZ軸モータ50とを有する。リニアステージ46は、送りネジ47と、上下方向に延びるガイド部材48と、これら送りネジ47及びガイド部材48にそれぞれ係合し、ポンプ32を所定の範囲内で上下動可能に保持する移動台49とを備える。Z軸モータ50は、リニアステージ46の送りネジ47を回転させることにより、移動台49をガイド部材48に沿ってZ軸方向に移動させる(即ち、昇降させる)。このZ軸モータ50は、制御部70に接続され、この制御部70によって制御される。
水平方向移動部51は、ポンプ32を水平方向(本実施形態ではX軸方向:図3における左右方向)、即ち、Z軸方向と直交する方向に移動させる。本実施形態の水平方向移動部51は、ピペットチップ31が取り付けられた状態のポンプ32と昇降部45とを一緒にX軸方向に移動させる。具体的に、水平方向移動部51は、リニアステージ52とX軸モータ53とを備える。リニアステージ52は、送りネジ54と、X軸方向に延びるガイド部材55と、これら送りネジ54及びガイド部材55にそれぞれ係合し、昇降部45を保持する移動台56とを備える。X軸モータ53は、リニアステージ52の送りネジ54を回転させることにより、移動台56をガイド部材55に沿ってX軸方向に移動させる。このX軸モータ53は、制御部70に接続され、この制御部70によって制御される。
保持搬送部57は、チップ挿入口(図示省略)等から検査装置2に挿入された検査チップ10を保持して送液部30の所定位置に搬送し、この位置で保持する。そして、保持搬送部57は、送液部30において検査チップ10の流路22内での生化学反応(本実施形態では、生理活性物質21による検体等の捕捉や捕捉された検体への蛍光物質の標識等)が終了した後、この検査チップ10を検出部60の所定位置へ搬送し、この位置で保持する。
具体的に、保持搬送部57は、送液部30において、流路部材15が上側でプリズム部14が下側となる姿勢(図3に示す姿勢)で、且つ検査チップ本体11の上面15aに開口する2つの流路開口25がピペットチップ31のX軸方向の軌道下にそれぞれ位置するように検査チップ10を保持する。また、保持搬送部57は、検出部60において、流路部材15が上側でプリズム部14が下側となる姿勢で、且つ励起光源61から射出される励起光αがプリズム部14の入射面18から当該プリズム部14内に入射する位置で検査チップ10を保持する。
検出部60は、励起光αを照射する励起光源61と、励起蛍光を測定する励起蛍光測定部62と、を備える。励起光源61は、検査チップ10のプリズム部14に対して入射面18から励起光αを入射させて金属膜13で反射させることにより、金属膜13にプラズモン共鳴を生じさせる。このとき、金属膜13における生理活性物質21が固定された領域(流路22の反応部23に対応する領域)の裏側から当該金属膜13に励起光αが入射するように、励起光源61は、励起光αを射出する。これにより金属膜13に生じたプラズモン共鳴に起因する増強電場によって、生理活性物質21に捕捉された検体等又は検体等に標識された蛍光物質が発光する。また、励起蛍光測定部62は、保持搬送部57によって検出部60内で保持された状態の検査チップ10の上方に位置し(図1及び図10参照)、前記増強電場によって励起された励起蛍光の光量を測定し、この測定結果を制御部70に出力する。
薬液容器、廃液容器、及びピペット廃棄用容器は、ピペットチップ31を上方から差し込めるようにそれぞれ上端部が開口する若しくは開口可能な容器であり、ピペットチップ31のX軸方向の軌道下にそれぞれ配置されている。
制御部70は、検査装置2の各部を当該機能に応じて制御する回路であり、例えば、検査装置2の各部を当該機能に応じて制御するための制御プログラムや励起蛍光測定部62からの出力に基づいて検体等の検出や分析を行う演算プログラム等の各種の所定のプログラム、および、前記所定のプログラムの実行に必要なデータ等の各種の所定のデータ等を記憶する、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、前記所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の演算処理や制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる前記CPUのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)、並びに、これらの周辺回路を備えたマイクロコンピュータ等によって構成される。この制御部70は、図4に示されるように、機能的に、送液制御部71と、搬送制御部72と、検査制御部73と、を備える。
送液制御部71は、送液部30の各部を制御し、ノズル位置制御部74とポンプ制御部75とを有する。
ノズル位置制御部74は、ピペットチップ31の位置、詳しくは、保持搬送部57に保持された状態の検査チップ10に対するピペットチップ31の相対位置を制御し、水平方向移動部51を制御することによりピペットチップ31のX軸方向の位置を制御するX軸方向制御部76と、昇降部45を制御することによりピペットチップ31のZ軸方向の位置を制御するZ軸方向制御部77とを有する。
X軸方向制御部76は、水平方向移動部51のX軸モータ53を制御し、移動台56をガイド部材55に沿ってX軸方向に移動させる。具体的に、X軸方向制御部76は、各薬液容器(図示省略)、廃液容器(図示省略)、ピペット廃棄用容器(図示省略)の各開口の上方位置と、検査チップ本体11の上面15aの各流路開口25の上方位置と、にピペットチップ31が移動するようにX軸モータ53を制御する。
Z軸方向制御部77は、X軸方向制御部76によりピペットチップ31がX軸方向の所定の位置に移動した後、昇降部45のZ軸モータ50を制御し、移動台49をガイド部材48に沿ってZ軸方向に移動させる。これにより、ピペットチップ31の昇降を行うことができる。具体的に、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31がX軸方向に移動するときには当該ピペットチップ31が検査チップ10、薬液容器、廃液容器、及びピペット廃棄用容器と干渉しない高さ位置(退避位置)までピペットチップ31を上昇させ、ピペットチップ31がX軸方向に沿って薬液容器や廃液容器等の開口の上方位置、又は検査チップ本体11の流路開口25の上方位置に移動したときに当該ピペットチップ31を降下させる。
詳しくは、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31がX軸方向に沿って薬液容器の開口の上方位置に移動したときは、ピペットチップ31を所定の高さ位置まで降下させ、ピペットチップ31の先端を薬液容器内に貯留されている検査用液体(試料溶液や洗浄液、バッファ液等)内に差し込む。そして、ポンプ制御部75によってポンプ32が制御されてピペットチップ31内に検査用液体Lが吸引された後、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31を退避位置まで上昇させる。
また、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31がX軸方向に沿って廃液容器の開口の上方位置に移動したときは、ピペットチップ31を降下させ、その先端側が開口から廃液容器内に差し込まれた状態となったときにピペットチップ31の降下を停止させる。そして、ポンプ制御部75によってポンプ32が制御されてピペットチップ31内の検査用液体Lが吐出された後、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31を退避位置まで上昇させる。
また、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31がX軸方向に沿ってピペット廃棄用容器の開口の上方位置に移動したときは、ピペットチップ31を降下させ、当該ピペットチップ31が開口からピペット廃棄用容器内に差し込まれた状態となったときにピペットチップ31の降下を停止させる。そして、Z軸方向制御部77は、図略のピペット着脱装置によってポンプ32からピペットチップ31を取り外し、ピペットチップ31を廃棄する。その後、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31を退避位置まで上昇させ、前記ピペット着脱装置によって新たなピペットチップ31をポンプ32に取り付ける。
また、Z軸方向制御部77は、検査チップ10の流路22内への検査用液体Lの注入及び吸引を行うために、又は封止部材12に空気穴29Aを穿孔するためにピペットチップ31がX軸方向に沿って流路開口25の上方位置に移動したときは、所定の位置までピペットチップ31を降下させてその先端部37を流路開口25を通じて流路22内へ差し込む。このとき、流路開口25が封止部材12で覆われていれば、ピペットチップ31の先端が押し当てられることによりこの封止部材12が穿孔され、ピペットチップ31の先端部37が流路22内に差し込まれる。一方、既に、封止部材12がピペットチップ31によって穿孔されている場合には、形成されている開口(挿入開口29)を通じてピペットチップ31の先端部37が流路22内に差し込まれる。そして、ポンプ制御部75によってポンプ32が制御されてピペットチップ31によって検査用液体Lが吐出及び吸引された後、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31を退避位置まで上昇させる。
ポンプ制御部75は、ノズル位置制御部74によってピペットチップ31が所定の位置まで移動したとき、又はピペットチップ31が所定の位置を移動している間、ポンプ32を作動させる。
詳しくは、ポンプ制御部75は、液体貯留部36内に検査用液体Lが貯留された状態でピペットチップ31が流路22の流路開口25に向けて降下する場合には、ピペットチップ31の先端面38が封止部材12の表面(図3における上側の面)に接近したときに(図7(A)参照)ポンプ32を駆動させて液体貯留部36内の検査用液体Lを吸引させる。これにより、検査用液体Lが液体貯留部36内をゆっくり上昇し始める。そして、ピペットチップ31が封止部材12を通過してピペットチップ31の先端面38が封止部材12と接していない状態まで先端部37が流路22内に挿入されたときに(図8(C)参照)、ポンプ制御部75は、ポンプ32を停止させて液体貯留部36内の検査用液体Lの吸引を停止させる。これにより、ピペットチップ31の降下時に当該ピペットチップ31の先端(先端面38)が上下方向において封止部材12の挿入開口周縁部(筒状の部位)290を通過するときに、検査用液体Lが液体貯留部36内を上昇していることになるため、この間(即ち、ピペットチップ31の先端が上下方向において封止部材12の挿入開口周縁部(筒状の部位)290を通過する間)にピペットチップ31の先端から雫のように検査用液体Lが溜まる(図5参照)ことを防ぐことができる。尚、ポンプ制御部75は、このピペットチップ31の先端が封止部材12を通過する間に検査用液体Lがポンプ32内に浸入しない速度で検査用液体Lを液体貯留部36内で上昇させる。また、ポンプ制御部75は、ピペットチップのZ軸方向の位置に基づいて、ピペットチップ31内の検査用液体Lの吸引の開始及び停止の時期を判断する。このピペットチップ31のZ軸方向の位置は、ピペットチップ31の退避位置からの降下量等に基づいて判断してもよく、また、ピペットチップ31の先端等の位置を位置センサー等によって測定してもよい。
同様に、ポンプ制御部75は、液体貯留部36内に検査用液体Lが貯留された状態でその先端部37が流路22内に挿入されている状態から当該ピペットチップ31が上昇する場合には、ピペットチップ31の先端面38が封止部材12の挿入開口周縁部290に接近したときにポンプ32を駆動させて液体貯留部36内の検査用液体Lを吸引させる。これにより、検査用液体Lが液体貯留部36内をゆっくり上昇し始める。そして、ピペットチップ31が封止部材12の挿入開口29から引き抜かれてピペットチップ31の先端面38が封止部材12の表面よりも上方位置までピペットチップ31が上昇したときに、ポンプ制御部75は、ポンプ32を停止させて液体貯留部36内の検査用液体Lの吸引を停止させる。これにより、ピペットチップ31の上昇時に当該ピペットチップ31の先端(先端面38)が封止部材12の挿入開口周縁部290を通過するときに検査用液体Lが液体貯留部36内を上昇していることになるため、この間(即ち、ピペットチップ31の先端が上下方向において封止部材12の挿入開口周縁部290を通過する間)にピペットチップ31の先端から雫のように検査用液体Lが溜まる(図5参照)ことを防ぐことができる。尚、この場合もピペットチップ31が降下するときと同様に、ポンプ制御部75は、このピペットチップ31の先端が封止部材12を通過する間に検査用液体Lがポンプ32内に浸入しない速度で検査用液体Lを液体貯留部36内で上昇させる。また、ポンプ制御部75は、前記のピペットチップ31の降下時と同様に、上昇時においてもピペットチップ31のZ軸方向の位置に基づいて、ピペットチップ31内の検査用液体Lの吸引の開始及び停止の時期を判断する。
以上のように、ピペットチップ31の昇降時における当該ピペットチップ31の先端が封止部材12の挿入開口周縁部290を通過するときに検査用液体Lが液体貯留部36内を上昇しているようにすることにより、この間のピペットチップ31の先端から雫のように検査用液体Lが溜まることが効果的に防止され、その結果、ピペットチップ31の昇降時におけるピペットチップ31内に貯留された検査用液体Lが挿入開口周縁部290(封止部材12)に付着することを確実に防止することができる。
また、ポンプ制御部75は、ピペットチップ31の先端部37が挿入開口29を通じて流路22内に挿入されたときに、適宜、ポンプ32を駆動することによって、流路22内への検査用液体Lの注入、流路22内からの検査用液体Lの吸引、並びに、流路22内への検査用液体Lの注入と吸引との繰り返し等によって、検査用液体L同士を混合させたり生化学反応の促進等を図ったりする。
また、ポンプ制御部75は、ピペットチップ31の先端部37が廃液容器内に差し込まれたときに、ポンプ32を駆動して液体貯留部36内の検査用液体L(詳しくは、使用済みの検査用液体L等)をピペットチップ31から吐出させ、検査用液体Lを廃液容器に廃棄する。
搬送制御部72は、保持搬送部57を制御する。具体的に、搬送制御部72は、保持搬送部57に検査チップ10が設置されると、この保持搬送部57を駆動して送液部30の所定位置に検査チップ10を搬送させ、前記所定位置で保持させる。そして、搬送制御部72は、送液部30での工程が終了すると、保持搬送部57によって、送液部30における検査チップ10の姿勢(流路部材15が上側で且つプリズム部14が下側となる姿勢)を維持しつつ当該検査チップ10を検出部60の所定位置に搬送させ、前記所定位置で保持させる。
検査制御部73は、検出部60の各部を制御すると共に励起蛍光の測定結果を処理する。具体的に、検査チップ10が検出部60に搬送されると、検査制御部73は、励起光源61から検査チップ10に向けて励起光αを照射させる。また、検査制御部73は、励起光αの照射によって検査チップ10の金属膜13近傍に生じたプラズモン共鳴に起因する増強電場によって生じた励起蛍光の光量を励起蛍光測定部62に測定させる。そして、検査制御部73は、この励起蛍光測定部62からの出力に基づいて検体の分析を行い、その結果を当該検査装置2の外部(例えば、モニター等の表示装置やプリンター等)や当該検査装置2の記憶手段(図示省略)等に出力する。
このような検査システム1では、以下のようにして生化学検査が行われる。
<検査チップの設置及び空気穴形成工程>
検査チップ10がチップ挿入口(図示省略)等から検査装置2に挿入されると、制御部70は、保持搬送部57によって送液部30の前記所定位置に検査チップ10を移動させる。このとき、検査チップ10の二つの流路開口25,25は、いずれも封止部材12によって覆われ、これにより流路22内が密閉状態となっている(図2(A)参照)。検査チップ10が送液部30の所定位置に配置されると、制御部70は、ノズル位置制御部74によって、一方の流路開口25を封止している封止部材12の部位をピペットチップ31を降下させてその先端部37を貫通させることにより、流路22内と検査チップ10の外部とを連通する穴(空気穴)29Aを形成する(図6参照)。この空気穴29Aを形成することにより、他方の流路開口25から検査用液体Lが注入しやすくなる。
<送液工程>
次に、制御部70は、ノズル位置制御部74とポンプ制御部75とによって、薬液容器から当該検査装置2における生化学シーケンスに必要な検査用液体L(本実施形態では検体等を含む試料溶液)をピペットチップ31に定量(即ち、所定の量の試料溶液を液体貯留部36内に吸引)し、このピペットチップ31を他方の流路開口25(封止部材12によって封止されている側の流路開口25)の上方位置に移動させる(図7(A)参照)。そして、制御部70は、ノズル位置制御部74によって、液体貯留部36内に試料溶液が貯留された状態のピペットチップ31を降下させて当該ピペットチップ31の先端部37によって流路開口25を封止している封止部材12を穿孔する。
詳しくは、制御部70は、ピペットチップ31を降下させてその先端が封止部材12に接近したときにポンプ32を作動させて液体貯留部36内の試料溶液を吸引する。これにより、試料溶液が液体貯留部36内をゆっくりと上昇する(図7(A)の矢印A参照)。制御部70は、さらにピペットチップ31を降下させることにより、その先端面38が封止部材12に当接する。これにより、他方の流路開口25を覆っている封止部材12の部位がピペットチップ31の先端面38に押されて徐々に延び始める(図8(A)参照)。このとき、試料溶液は、液体貯留部36内をゆっくり上昇しているため、封止部材12と接触しない。そして、封止部材12において延性の低い第2シート27が延び限界に達し、ピペットチップ31からの力の集中するピペットチップ31先端の角部から破断し始める(図8(B)参照)。さらに、制御部70がピペットチップ31を降下させてピペットチップ31の先端部37を流路22内に押し込むと、封止部材12における第2シート27が破断した領域に対応する第1シート26がピペットチップ31の先端部37の外周面37aに密着するようにして延び、当該外周面37aに沿った筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成される。さらに制御部70がピペットチップ31を降下させると、第1シート26も延び限界に達して破断する(図8(C)参照)。これにより、封止部材12に挿入開口29が形成される。
このように、ピペットチップ31の先端が封止部材12を通過すると、制御部70は、ポンプ32による液体貯留部36内の試料溶液の吸引を停止する。これにより、ピペットチップ31の降下時に当該ピペットチップ31の先端が挿入開口29を通過するときに試料溶液(検査用液体L)がピペットチップ31内の液体貯留部36内を上昇していることとなる(図8(A)乃至図8(C)参照)、即ち、ピペットチップ31の先端が挿入開口29を通過するときに試料溶液が液体貯留部36内において先端の開口35よりも上側に位置していることとなるため、この間のピペットチップ31の先端から雫のように試料溶液が溜まることを防ぐことができる。その結果、ピペットチップ31を降下させてその先端が挿入開口29を通過するときに、ピペットチップ31内に貯留した試料溶液が検査チップ10の封止部材12における挿入開口周縁部(筒状の部位)290に付着することを確実に防止することができる。
そして、制御部70は、ピペットチップ31の先端が流路22の反応部23近傍(図7(B)に示す位置)まで挿入されると、ピペットチップ31の降下を停止する。このとき、封止部材12において所定の弾性を有する第1シート26によってピペットチップ31の先端部37の外周面37aに密着する筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成されているため、ピペットチップ31と封止部材12との間に十分な密着性が確保されている。
次に、制御部70は、ポンプ制御部75によって、ピペットチップ31内の試料溶液を流路22内に吐出させる(図7(B)参照)。このとき、流路22内での気泡の発生を防ぐために、制御部70は、先ず、ゆっくりした送液を行い、流路22(詳しくは、反応部23)内が試料溶液で満たされた後に、反応部23を流れる試料溶液の流速を上げて、生理活性物質21と試料溶液に含まれる検体等との生化学反応(生理活性物質21による検体等の捕捉)を促進させる。本実施形態では、制御部70は、流速を10000〜20000uL/min程度まで上げる。このように流速を上げると、封止部材12におけるピペットチップ31が貫通している部位に加わる流路22内の圧力が大きくなるが、筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成されているため、ピペットチップ31と封止部材12との間からの液漏れが効果的に抑制される。これは、流路22内の圧力は流路22を囲む面に対して直交する方向に加わるため、流路内圧が高くなったときに挿入開口周縁部(筒状の部位)290が無いと封止部材12の開口周縁部が流路内圧によって延び易くこれにより液漏れし易いが(図9(A)参照)、前記の挿入開口周縁部290が形成されると、この部位をピペットチップ31の外周面37aに押し付ける方向に圧力(流路内圧)が加わるため液漏れし難い(図9(B)参照)からである。また、挿入開口周縁部290が形成されることにより、図9(A)及び図9(B)に示されるように、挿入開口周縁部(筒状の部位)290の部位が無い場合に比べて、検査チップ本体11から封止部材12を剥離させる方向に働く力(図9(A)及び図9(B)に示す剥離モーメント)も小さくすることができ、これにより、検査チップ本体11から封止部材12が剥離することにより生じる液漏れも効果的に防ぐことができる。
尚、本実施形態では、反応部23の内径(図2(A)における金属膜表面13aからの高さ)が30〜200μm程度であるため、試料溶液が反応部23を流れるときの流路抵抗が大きく、これにより、流路22内の圧力は、大気圧(0.1MPA)よりも相対圧力で+0.1MPA程度高くなる。詳しくは、流路抵抗は、流路22の形状や、流路22の長さ、送液速度、検査用液体Lの粘性等によって規定される。また、反応部23での生化学反応の反応速度は、流路22の形状と検査用液体Lの速度(流速)とに依存する。本実施形態のような生化学検査においては、金属膜13に形成された反応膜20の近傍のみで検査用液体Lが流れるように流路22の内径(反応膜20が形成された金属膜表面13aからの高さ)を小さく且つ反応部23での検査用液体Lの流速を大きくして生化学反応の反応速度を大きくすることが好ましいため、反応部23を流れる試料溶液の流路抵抗が大きくなり、その結果、流路22内の圧力(詳しくは、ピペットチップ31の先端部37が挿入されている挿入開口29近傍での圧力)が高くなる。
制御部70は、ポンプ制御部75によって、流路22内への試料溶液の注入及び吸引を所定回数繰り返した後、流路22内の試料溶液を全てピペットチップ31内に吸引する(図7(C)参照)。この吸引は、流路22内に液残りが生じないようにゆっくりと行われる。尚、流路22内の試料溶液が吸引されるときには、流路22内の圧力が低くなるが、挿入開口周縁部290とピペットチップ31とが密着しているため、これらの間を通って外部から空気等が流路内に侵入するのを防ぐことができ、これにより、ピペットチップ31によって効率よく試料溶液を吸引することができる。
流路22内の試料溶液が全て吸引されると、制御部70は、ノズル位置制御部74によってピペットチップ31を上昇させ、ピペットチップ31の先端を流路22(挿入開口29)から引き抜く。このとき、流路22内に挿入されているピペットチップ31の先端が封止部材12の開口周縁部(筒状の部位)290の下端に接近すると、制御部70は、ポンプ制御部75によって、ピペットチップ31内の試料溶液を吸引して当該試料溶液を液体貯留部36内でゆっくり上昇させる。そして、ピペットチップ31の先端が挿入開口周縁部290を通過してピペットチップ31の先端部37全体が流路22から引き抜かれると、制御部70は、ポンプ32による試料溶液の吸引を停止する。これにより、ピペットチップ31の上昇時における当該ピペットチップ31の先端が挿入開口29を通過するときに試料溶液がピペットチップ31内の液体貯留部36内を上昇していることとなるため、この間のピペットチップ31の先端から雫のように試料溶液が溜まることを防ぐことができる。その結果、ピペットチップ31を上昇させてその先端が挿入開口29を通過するときに、ピペットチップ31内に貯留した試料溶液が検査チップ10における挿入開口周縁部(筒状の部位)290に付着することを確実に防止することができる。
制御部70は、ノズル位置制御部74によってピペットチップ31を廃液容器(図示省略)まで移動させた後、ポンプ制御部75によってピペットチップ31から廃液容器内に使用済みの試料溶液を吐出する。
次に、制御部70は、ピペットチップ31によって薬液収容部(図示省略)から吸引した他の検査用液体(本実施形態では洗浄液)の流路22内への注入及び吸引を繰り返して流路22内を洗浄した後、この洗浄に用いた洗浄液を全て流路22内から吸引して廃液容器(図示省略)に廃棄する。
この、送液(反応部23での反応、洗浄)工程が所定回数繰り返される。この繰り返しにおいては、同じ試料溶液L(本実施形態では検体等を含む試料溶液)の注入等が行われても良く、他の検査用液体(例えば、反応膜20を構成する生理活性物質21に捕捉させた検体等に標識する蛍光物質を含む溶液)等の注入及び吸引が行われてもよい。
この繰り返しにおいて、封止部材12に形成された挿入開口29へのピペットチップ31の先端部37の挿入及び引き抜きが繰り返される。このとき、封止部材12では、挿入開口29に挿入されたピペットチップ31の先端部37の外周面37aと接する挿入開口周縁部290(第1シート26)が所定の弾性を有しているため、ピペットチップ31の先端部37の挿入開口29への挿入及び引き抜きが繰り返されても、挿入される度に挿入開口周縁部290とピペットチップ31の先端部37の外周面37aとの密着性が確保される。これにより、ピペットチップ31から流路22内への検査用液体Lの注入及び吸引時にピペットチップ31と封止部材12との間からの液漏れが抑制される。また、挿入開口周縁部290が形成されることにより、流路22内での検査用液体Lの注入及び吸引の繰り返しに起因する圧力変動が繰り返されても、検査チップ本体11からの封止部材12の剥離も効果的に抑制される。
所定回数の送液工程が終了すると、制御部70は、ピペットチップ31によって薬液容器(図示省略)から吸引したバッファ液(他の検査用液体)を挿入開口29を通じて挿入された先端部37から流路22内に注入する。そして、制御部70は、このバッファ液が流路22内に注入されている状態で、ピペットチップ31を上昇させて先端部37を挿入開口29から引き抜く。この引き抜きにおいては、ピペットチップ31の先端が挿入開口29を通過するときに、ポンプ32による吸引を行わない。このバッファ液を注入する工程よりも後に流路22内に検査用液体Lを注入する工程が行われないことから、挿入開口周縁部290に付着した検査用液体L同士の混合による汚染が生じないためである。
このバッファ液の注入が行われた後、制御部70は、ピペットチップ31をピペット廃棄用容器(図示省略)に移動させ、ピペット着脱装置(図示省略)によりポンプ32からピペットチップ31を取り外し、使用済みのピペットチップ31をピペット廃棄用容器に廃棄する。その後、制御部70は、Z軸方向制御部77によってピペットチップ31を退避位置まで上昇させ、前記ピペット着脱装置によって新たなピペットチップ31をポンプ32に取り付ける。
<検査工程>
次に、制御部70は、保持搬送部57によって検査チップ10を送液部30から検出部60に搬送させる。検査チップ10が検出部60に搬送されて所定位置で保持されると、制御部70は、検査制御部73によって励起光源61から検査チップ10に向けて励起光αを照射させる。このとき、検査チップ10の入射面18からプリズム部14内に入射した励起光αが金属膜13の反応膜20が設けられた(生理活性物質21が固定された)部位の裏側で全反射し、この全反射により金属膜13においてプラズモン共鳴が生じるような角度で励起光αが検査チップ10に対して照射される(図10参照)。このプラズモン共鳴により形成された増強電場によって、生理活性物質21に捕捉された検体(抗原)等に標識された蛍光物質が励起され蛍光を発する。制御部70は、励起蛍光測定部62によってこの励起蛍光の光量を測定し、この測定結果に基づいて検査制御部73において例えば単位面積あたりの励起蛍光の光量等を導出する。そして、制御部70は、導出した結果を外部(例えば、モニター等の表示装置やプリンター等の印字装置)や当該検査装置2の記憶手段(図示省略)等に出力して測定を終了する。
以上の検査システム1によれば、ピペットチップ31を昇降させてその先端が挿入開口29を通過するときに、ピペットチップ内に貯留した検査用液体(例えば、試料溶液)Lが検査チップ10における挿入開口29の周縁部290に付着することを防止することができる。これは、ピペットチップ31の昇降時において当該ピペットチップ31の先端が挿入開口29を通過するときに検査用液体Lがピペットチップ31の液体貯留部36内を上昇しているようにすることで、この間のピペットチップ31の先端から雫のように検査用液体Lが溜まることを防ぐことができるためである。
また、本実施形態によれば、ピペットチップ31の先端部37を流路22内に挿入することによってピペットチップ31の先端部37の外周面37aと封止部材12の挿入開口周縁部290とが密着するため、流路22内の圧力が変動しても、ピペットチップ31の先端部37が挿入された挿入開口29からの液漏れを防止することができる。しかも、ピペットチップ31が挿入される開口(挿入開口)29の直径が封止部材12を備えない場合の流路開口(チップ開口)25に比べてより小さくなるため、検査用液体Lが検査チップ10の挿入開口周縁部290に付着することをより効果的に防止することができる。即ち、ピペットチップ31を挿入開口29に抜き差しするときに、その先端が挿入開口周縁部290と接し易いが、ピペットチップ31の先端が挿入開口29を通過するときに液体貯留部36に貯留された検査用液体Lが上昇するように吸引されることで、この検査用液体Lが挿入開口周縁部290に付着することを効果的に防止することができる。これにより、複数の検査用液体Lを流路22に注入及び吸引するときに、挿入開口周縁部290に付着した異なる検査用液体L同士の混合による汚染を防止することができる。
また、本実施形態によれば、当該検査システム1によって検査が行われるまで(即ち、封止部材12に挿入開口29が形成されるまで)流路22内が封止(密閉)された状態になるため、この流路22内に収容された液体等の蒸発や当該液体への他の物質の混入を確実に防ぐことができる。又は、流路22内の状態(例えば、湿度等)を維持することが可能となり、流路22内の生理活性物質21の汚染や乾燥等を防ぐことができる。
また、本実施形態によれば、ピペットチップ31が着脱可能にポンプ32に取り付けられるため、所定の回数又は所定の工程で使用された後の汚れたピペットチップ31を清浄なピペットチップ31に容易に交換することができ、これにより、検査の精度が保ち易くなる。また、汎用品等の安価なピペットチップ31を用いれば、ピペットチップ31の交換頻度が高くてもコストの上昇を抑えることができる。
本実施形態によれば、ピペットチップ31を封止部材12に突き刺したときに、ピペットチップ31と封止部材12との間の密着性(シール性)が十分に確保されると共に、ピペットチップ31の挿抜や流路22内の圧力変動を繰り返しても封止部材12を構成するシート26、27間に剥離が生じ難く、これにより、液漏れを効果的に防ぐことができる。
また、本実施形態によれば、隣接するシート26、27同士が接着剤や粘着剤によって接着されることにより、隣接するシート同士が熱溶着のみによって接着されている場合に比べて各シート26、27同士が強固に接着されるため、流路22内の圧力変動やピペットチップ31の挿抜が繰り返されても封止部材12を構成する各シート26、27間での剥離が生じ難い。
また、本実施形態によれば、封止部材12において第1シート26が最も外側に位置することで、ピペットチップ31を封止部材12に突き刺して挿入開口周縁部(筒状の部位)290が形成されたときに弾性を有する第1シート26がピペットチップ31の周面37aと接するため、挿入開口周縁部290とピペットチップ31の外周面37aとがより密着してこれらの間の密着性がより向上する。
また、本実施形態によれば、第1シート26の破断伸び率が、200%以上720%以下であり、第2シート27の破断伸び率が、50%以下であるため、ピペットチップ31を封止部材12に突き刺したときに、挿入開口周縁部(筒状の部位)290が好適に形成される。
また、本実施形態によれば、第2シート27がアルミニウムにより形成されるため、流路22内と外部(検査チップ10の外部)との間の水分の遮断性と遮光性とが十分に確保される。これにより、流路22内に設けられた生理活性物質21を乾燥や光から保護することが可能となる。
また、本実施形態の流路22では、中間部位(反応部23)の内径が端部(連通部24)の内径よりも小さいため、流路開口25からピペットチップ31によって試料溶液Lを注入して反応部23内を流れる試料溶液Lの流速を上げると流路抵抗が高くなり、これにより、流路22内の開口25周辺の圧力が大気圧よりも高くなる。このような流路22を備えた検査チップ10において、本実施形態の封止部材12が用いられることで、ピペットチップ31を封止部材12に突き刺したときに、ピペットチップ31と封止部材12との間の密着性が十分に確保されると共に、ピペットチップ31の挿抜や流路22内の圧力変動を繰り返してもシート26、27間に剥離が生じ難く、これにより、液漏れをより効果的に防ぐことができる。
尚、本発明の検査システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
検査チップ10に設けられる液体収容部22の具体的構成は限定されない。例えば、本実施形態では、一本の流路によって液体収容部が構成されているが、流路が途中で複数の分岐流路に分岐して各分岐流路の端部が検査チップ本体11の表面でそれぞれ開口していてもよい。また、液体収容部は、検査チップ本体の上面に形成された下方に向かって窪んだ凹部(いわゆるウェル)であってもよい。
また、上記実施形態のノズル部材は、着脱可能にポンプ32等に取り付けられるピペットチップ31であるが、これに限定されず、ポンプ等に固着されたノズル部材であってもよい。即ち、上記実施形態のように使い捨てのノズル部材でなくてもよい。
また、上記実施形態では、ノズル部材(ピペットチップ31)と検査チップ10との間から液漏れが生じないように、ノズル部材31の先端部37を貫通させることにより形成された挿入開口周縁部290とノズル部材31の外周面37aとが密着するように構成されているがこれに限定されない。例えば、図11に示されるように、ノズル部材の先端部37の外周面37aに流路開口25に対応した形状のゴム等の弾性部材12Bを設け、この弾性部材12Bによってノズル部材の外周面37aと検査チップ本体11の流路開口25の周縁部との間を密閉するように構成されてもよい。この場合、制御部は、ノズル部材の先端が検査チップ本体11における流路開口25を通過する間、液体貯留部内で検査用液体Lがゆっくり上昇するようにポンプによって検査用液体Lを吸引する。
尚、弾性部材12Bは、流路開口25の周縁部に固着され、この弾性部材12Bの貫通孔にノズル部材の先端部37を挿入するように構成されてもよい。この場合、制御部は、ノズル部材の先端が弾性部材12Bの貫通孔を通過する間、液体貯留部内で検査用液体Lがゆっくり上昇するようにポンプによって検査用液体Lを吸引する。
検査チップ10に設けられる封止部材の具体的構成は限定されない。上記実施形態においては、所定の延性及び所定の弾性を有する第1シート26と、第1シート26よりも延性の小さな第2シート27と、粘着層である第3シートとを順に積層した3層構造からなるが、これに限定されず、第1シートと第2シートとを含み、且つ、上下に隣接する各層同士が接着剤又は粘着剤によって接着されていれば、2層や4層以上のシート状部材であってもよい。例えば、具体的には、図12に示されるように、封止部材12Aは、第1シート26と、第2シート27と、第1シート26と、第3シート27とが順に積層されることで形成されてもよい。このような封止部材12Aであっても、ノズル部材によって、挿入開口29を形成するときに、各層の延性の違いに基づき、第2シート27から破断し始めると共に最も上側の第1シート26によって所定の弾性を有する筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成される。