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JP5565322B2 - 溶接継手 - Google Patents
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JP5565322B2 - 溶接継手 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼構造物の疲労強度健全性を向上する技術に関するものである。特に、溶接部の疲労き裂発生特性を改善するとともに、疲労き裂がその後、成長し母材部に進入したときには、母材部で疲労き裂進展抵抗特性を発揮する溶接継手に関するものである。
建築、橋梁などの各種溶接鋼構造物や、船舶、自動車などの輸送用機械、さらには産業用機械、建築用機械などの各種機械には、多くの部位に構造部材として、鋼材が使われている。
このような鋼材が使用された構造物や機械(以下、「鋼構造物」と記す。)には通常、供用中に繰返し荷重が負荷される。そのため、鋼構造物の強度健全性を確保するためには、繰返し荷重に対する抵抗性、すなわち、疲労強度を向上させることが必要不可欠である。
鋼構造物においては、一般に、溶接継手の溶接部が損傷の起点となることが多く、疲労強度を向上させるためには溶接継手の疲労特性を改善することが必要になる。溶接継手の疲労特性を改善するための設計面からの検討としては、例えば、FEM(有限要素法)などの応力解析コードを用いて構造的な応力集中を回避するような最適形状設計が行なわれている。また、適切な形状・位置にリブ等を設置し、補強によって応力を下げる工夫などが行なわれている。一方、施工面からの検討としては、グラインダー処理、化粧盛り溶接などによる余盛り止端形状の仕上げ加工が行われている。
しかしながら、設計面からの改善効果は既に飽和状態に近づいており、設計面でのさらなる改善は望めない状況にある。また、上記のような仕上げ加工により疲労特性の改善効果は期待できるものの、膨大な工数が必要となり、製造コストが増加するという問題が生じる。
そこで、上記のような設計面又は施工面からのアプローチとは別に、材料面からのアプローチによって溶接部の疲労特性を改善する試みも行われている。例えば、特許文献1には、変態温度を低くした特殊な溶接材料を用いる溶接施工方法が提案されている。この方法によれば、溶接部に発生する引張り残留応力を緩和でき、疲労寿命を向上させることができるとしている。
また、材料面からの検討として、母材となる鋼板の改善も試みられている(例えば、特許文献2〜6参照)。
特開2003−290972号公報 特開2007−290032号公報 特開平11−310846号公報 特開2008−255469号公報 特開2008−255468号公報 特開2008−248314号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鋼構造物に要求される疲労強度レベルに応じて溶接材料を使い分ける必要があり、利便性に劣る。また、変態温度の低い溶接材料は必然的に溶接性が悪くなるので、余盛り止端形状をなだらかにすることは極めて困難である。そのため、余盛り止端において応力集中が発生し易くなり、疲労強度を十分に向上させることができない。
また、特許文献1に記載の方法により作製された溶接継手の品質を保証するためには、溶接部に発生している残留応力を測定する必要がある。しかしながら、溶接部の残留応力を非破壊で測定するためには多くの工数が必要であるので、利便性に劣る。したがって、特許文献1に記載の方法は、工業的に品質を保証する方法を如何に実現するかという点で大きな課題を残している。
特許文献2に記載の技術は、溶接部の疲労き裂発生特性に特化した技術であるため、き裂が発生した後のことは考慮されていない。したがって、き裂の進展を十分に阻止することができない。
特許文献3〜6に記載の技術は、母材部の疲労き裂進展特性に特化した技術である。したがって、溶接部における疲労き裂の発生を十分に防止することができない。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、特別な設計および施工を行うことなく溶接部の疲労き裂発生特性を改善できかつ疲労き裂が母材部に進入したときには母材部で疲労き裂進展抵抗特性を発揮する溶接継手を提供することを目的とする。
具体的には、造船、建築構造物、橋梁、建設機械などの分野に用いられる疲労強度に優れた溶接継手、特に引張強さが490〜570MPa級の溶接継手を提供することを目的とする。
本発明者は、溶接継手としての利便性を重視し、母材の静的強度特性、破壊靱性、溶接性および溶接部の破壊靱性などにも留意を払い検討した。具体的には、種々の母材の組織観察、CT試験片を用いた疲労き裂進展試験、種々の溶接継手を用いた疲労試験および溶接熱履歴を再現した試験片を用いた引張試験を行った。その結果、次の知見を得た。
(a)溶接継手の母材となる鋼板は、硬質部と軟質部の2種類の組織が複合形成されたものであればよい。この場合、硬質部と軟質部との界面近傍において、き裂進展の停留効果を得ることができる。
(b)硬質部の硬度と軟質部の硬度との差は、ビッカース硬度(Hv)で150以上であればよい。この場合、き裂先端の転位の移動が軟質部と硬質部との界面で阻止されるとともに、バーガースベクトルが界面に直交する転位が、軟質部と硬質部との界面近傍の軟質部内に配列するため、傾角粒界が形成される。この傾角粒界は、粒界一次転位のみにより構成されるため、粒界凝集力が高く、破壊の抵抗となりやすい。さらに、形成された傾角粒界には転位が突入しにくいため、引続き繰り返し応力が作用する場合には、粒界に隣接する軟質部側に新しい傾角粒界が形成される。このような経過を繰返すことにより、大きな体積を有する傾角粒界の集合部が形成される。この集合部はき裂進展の抵抗となり、母材のき裂進展抑制特性を向上させることができる。
(c)溶接部における疲労き裂の発生を防止するためには、疲労損傷領域の局所化を避ける必要がある。疲労損傷領域の局所化を避けるためには、溶接継手の溶接部に応力集中が発生することを防止すればよい。溶接部において応力集中が発生することを防止するためには、溶接熱影響部(HAZ)、母材、溶接金属の3つの材料の硬度を近づけることができればよい。
本発明者らは、数多くの鋼材から複数の溶接継手を作製し、硬度分布測定ならびに疲労試験を実施した。その結果、溶接熱影響部の硬度(HAZ硬度)が下記の不等式(1)を満たすことにより、溶接継手の疲労特性が向上することが判明した。
{Min(母材硬度、溶接金属硬度)}×1.5≧(HAZ硬度の最大値)・・・式(1)
ここで、Min(母材硬度、溶接金属硬度)とは、母材の硬度および溶接金属の硬度のうちの低い方の値を意味する。また、HAZ硬度の最大値とは、溶接熱影響部における硬度の最大値を意味する。
なお、溶接継手では、通常、溶接金属の強度を母材強度より高めに設定するオーバーマッチという思想に基づいて溶接金属が選定される。そのため、多くの場合は、式(1)中のMin(母材硬度、溶接金属硬度)は母材硬度を意味することになる。また、通常、溶接熱影響部はサブmmから数mm程度の領域に形成される。
(d)疲労強度の高い溶接継手を得るには、破壊起点となる溶接熱影響部での疲労強度の向上も検討する必要がある。
一般に平滑材(溶接熱履歴を経ていない普通鋼)の疲労強度は引張強度が大きいほど大きい。平滑材に溶接を施した場合、溶接に起因する残留応力が発生する。残留応力は高強度鋼ほど大きく、残留応力の分、疲労強度に対抗する実質的な抵抗力は高強度鋼ほど低下するので、溶接熱影響部での疲労強度は母材の疲労強度を引き継ぐわけではない。よって、溶接熱影響部での疲労強度の向上には、溶接熱履歴を受けて発生した残留応力を考慮する必要がある。そこで、発明者はこれらの事実を、平均応力の影響を考慮した疲労限度線図の一つである修正Goodman線図に基づき検討した。
疲労限度線図は、横軸に平均応力σmをとり、同じ時間強度を示す応力振幅σaを結んだ線であり、疲労強度を評価するために用いられる。この疲労限度線以下であれば疲労破壊を起こさないと判断することができるものである。
図4は平滑材について修正Goodman線図を説明する図である。修正Goodman線図は、横軸に平均応力σmを、そして縦軸に応力振幅σaで表示した疲労限度(疲労強度)を取ることによって表される。具体的には、縦軸に交わる点(y切片)に平均応力σmが0となる完全両振り疲労限度を採用し、そして横軸に交わる点(x切片)に引張強度を採用して、その間を直線で結んだ線である(図中実線で示す)。ここで、完全両振り疲労限度とは、引張応力と圧縮応力が同じ大きさのとき、すなわち、応力比(σmin/σmax)が−1であるときの疲労限度である。回転曲げでの疲労試験の疲労強度が代表的である。これに対して、完全片振り疲労限度とは応力比(σmin/σmax)が0であり、図中に横軸に対して45゜にプロットされる(図中点線で示す)。
したがって、鋼材の任意の平均応力下での疲労強度は修正Goodman線図から容易に予測できる。図4に示すとおり、一般的な普通鋼の場合、疲労強度と引張強度の比はほぼ一定の値を取るので、高強度鋼ほど疲労強度は大きくなる。
次に、図5は平滑形状のHAZについての修正Goodman線図である。このような材料に溶接を施すと溶接熱履歴により溶接熱影響部の粒径が大きくなるので、疲労限度は低下する。図5に示すとおり、高強度鋼、中強度鋼、低強度鋼ともに、疲労限度は低下する。なお、図5ではHAZの疲労限度は母材のそれの80%と仮定した。
そして、図6は止端での切欠き形状を備えるHAZについての修正Goodman線図である。実際の溶接では余盛りの形成による応力集中が生じるので、図6に示すとおり、直線の傾きは小さく(緩やか)になる。このとき、各鋼材に同じ条件(例えば、応力比0の疲労試験)で疲労試験を行った場合の疲労限度の差は小さくなる。
さらに、図7は止端での切欠き形状を備えかつ溶接残留応力を有するHAZについての修正Goodman線図である。溶接により余盛りの形成による応力集中が生じるだけでなく、残留応力が溶接熱影響部に生じる。したがって、実継手の疲労強度は、高強度鋼ほど残留応力は大きいため、この影響を受けて疲労限度は一定となり、高強度鋼でも低強度鋼も変わらなくなる。図7に示すとおりである。
以上の検討から、溶接熱影響部における疲労強度として、修正Goodman線図上の直線の傾きをより大きく(急に)すれば同じ引張強度でも疲労強度を大きくすることができることを思索した。そこで、当該直線の傾きに当たる溶接熱影響部における疲労強度と引張強度の比、すなわち熱履歴を受けた溶接熱影響部における[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比を0.45以上とすることで高い疲労強度が得られることを知得した。
本発明は、上記の知見を基礎として完成したものであって、その要旨は下記の溶接継手にある。
(1)質量%で、
C:0.01〜0.10%、
Si:0.04〜0.60%、
Mn:0.50〜2.00%、
P:0.025%以下、
S:0.011〜0.020%
Al:0.003〜0.060%、
Ti:0.001〜0.100%、
N:0.0020〜0.0120%、
Mo:0.04〜0.50%
を含有し、
残部はFeと不純物からなる化学組成を有し、
硬質部の素地とこの素地中に分散した軟質部からなる複合組織を有し、硬質部と軟質部の硬度差がビッカース硬度で150以上である母材を溶接してなる溶接継手であって、
溶接熱影響部の硬度が、母材、溶接金属の各々の硬度と下記の不等式(1)の関係を満たすと共に、溶接熱影響部における[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比が0.45以上であることを特徴とする溶接継手。
{Min(母材硬度、溶接金属硬度)}×1.5≧(HAZ硬度の最大値) ・・・式(1)ただし、Min(母材硬度、溶接金属硬度)とは、母材の硬度および溶接金属の硬度のうちの低い方の値を意味する。HAZ硬度の最大値とは、溶接熱影響部における硬度の最大値を意味する。
(2)母材が、Feの一部に代えて、質量%で、
Cr:2.0%以下、
Ni:1.5%以下、
Cu:1.5%以下
のうちの1種以上を含有することを特徴とする上記(1)の溶接継手。
母材が、Feの一部に代えて、質量%で、
Cu:0.1%未満を含有し、Cu/Sn比が1.0以下であることを特徴とする上記(1)の溶接継手。
(3)母材が、Feの一部に代えて、質量%で、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下
のうちの1種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)の溶接継手。
(4)母材が、Feの一部に代えて、質量%で、
B:0.0030%以下を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかの溶接継手。
本発明に係る溶接継手によれば、特別な設計および施工を行うことなく溶接部の疲労き裂発生特性を改善できかつ疲労き裂が母材部に進入したときには母材部で疲労き裂進展抵抗特性を発揮することができる。より具体的には、従来通りの構造設計の下、溶接施工に関しては、特殊な溶接材料を使用することなく、また、溶接後の余盛り止端形状をグラインダーなどで形状処理を行うことなく、溶接継手の疲労強度健全性を高めることができる。
溶接熱履歴を再現するための供試材を示す図である。 溶接熱履歴の一例を示す図である。 引張試験片を示す図である。 平滑材について修正Goodman線図を説明する図である。 平滑形状のHAZについての修正Goodman線図である。 止端での切欠き形状を備えるHAZについての修正Goodman線図である。 止端での切欠き形状を備えかつ溶接残留応力を有するHAZについての修正Goodman線図である。
以下に、本発明の各要件について詳しく説明する。ここで、化学組成を表す「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
1.母材組成
以下、本発明に係る溶接継手の母材の化学組成の作用効果を、その含有量の限定理由とともに説明する。なお、含有量に関する「%」は「質量%」を意味する。
C:0.01〜0.10%
Cは、鋼の強度を高める成分である。C含有量が0.01%未満では、母材が鋼構造物に必要な強度を確保することが困難になる。したがって、母材が鋼構造物に必要な強度レベルを確保するために、C含有量は0.01%以上とする。一方、C含有量が0.10%を超えると溶接性が低下するので、C含有量の上限は0.10%とする。望ましいC含有量は0.03〜0.06%である。
Si:0.04〜0.60%
Siは、鋼の脱酸のために必要な成分である。Si含有量が0.04%未満では適切な脱酸効果を期待できない。一方、Si含有量が0.60%を超えると母材の靱性が損なわれ、構造用鋼としての適正を欠くおそれがある。したがって、Si含有量は、0.04〜0.60%とする。望ましいSi含有量は、0.20〜0.50%である。
Mnは、鋼の強度を向上させる成分である。Mn含有量が0.50%未満では鋼構造物に必要な強度を確保できなくなる。一方、Mn含有量が2.00%を超えると、溶接熱影響部(HAZ)が硬化し溶接割れが発生しやすくなる。したがって、Mn含有量は、0.50〜2.00%とする。望ましいMn含有量は、0.80〜1.60%である。
P:0.025%以下
Pは、中心偏析を助長するなどして鋼の靭性を劣化させる成分である。そのため、Pの含有量は、0.025%以下とする。望ましいP含有量は、0.020%以下である。
S:0.020%以下
Sは、溶接割れの原因となる成分であり、割れの起点となり得るMnS等の介在物を形成する。そのため、Sの含有量は、0.020%以下とする。溶接熱影響部の靭性を十分に確保するためには、S含有量は0.015%以下とすることが望ましい。
Al:0.003〜0.060%
Alは、鋼の脱酸のために必要な成分である。Al含有量が0.003%未満では適切な脱酸効果を期待できない。一方、Al含有量が0.060%を超えると母材の清浄度および靱性が損なわれるおそれがある。したがって、母材のAl含有量は0.003〜0.060%とする。
Ti:0.001〜0.100%
Tiは、炭化物を生成することにより、軟質部を細粒化して強化するため、疲労き裂進展抑制特性の改善に有効な成分である。この効果を得るためには、Tiを0.001%含有させる必要があるので、Ti含有量は0.001%以上とする。一方、Ti含有量が0.100%を超えると、疲労き裂進展抑制特性の改善効果が飽和するとともに、母材の強度が上昇しすぎ、靱性が損なわれるおそれがある。したがって、母材のTi含有量は0.001〜0.100%とする。望ましいTi含有量は、0.010〜0.030%である。
N:0.0020〜0.0120%
Nは、TiNを生成して、溶接熱影響部の物性に影響する重要な成分である。Nの含有量は、継手疲労特性を向上させるためには、0.0020%以上必要である。一方、Nを過剰に添加するとTiNを形成しないNが母材の靱性を損なうおそれがある。したがって、N含有量は0.0020〜0.0120%とする。望ましいN含有量は、0.0050〜0.0090%である。
Mo:0.04〜0.50%
Moは、HAZにおける疲労特性を向上させる重要な成分である。ここで言う疲労特性とは、溶接継手の余盛り止端を再現した切欠き下の疲労特性であり、かつ、HAZ硬度との相対関係における疲労特性である。Moを含有させることにより、HAZ硬度はさほど高くすることなく、HAZ切欠き疲労強度を大きく改善できる。このような効果を得るには少なくともMoを0.04%含有させる。しかし、0.50%を超えて含有させても、これらの効果が飽和するとともに、母材強度が上昇しすぎて、靱性が損なわれるおそれがある。したがって、Mo含有量は0.04〜0.50%とする。望ましいMo含有量は、0.06〜0.30%である。
本発明に係る溶接継手の母材は、上記の元素を有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼材である。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明に係る溶接継手の母材は、上記の元素の他に、さらにCr、Ni、Cu、Nb、V、およびBよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有させてもよい。これらの元素を含有させてもよい理由とそのときの含有量は、次の通りである。
Cr:2.0%以下
Crは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、耐食性を向上させるとともに腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善、軟質部の転位構造の制御および微視的塑性変形の抑制に効果がある。しかし、2.0%を超えて含有させても、これらの効果が飽和するとともに、母材の強度が上昇しすぎて、靱性が損なわれるおそれがある。したがって、含有させる場合のCr含有量は2.0%以下、望ましくは1.8%以下とする。なお、腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善、軟質部の転位構造の制御および微視的塑性変形の抑制の効果を確実に得るためには、0.01%以上含有させることが望ましく、0.5%以上含有させることがより望ましい。
Ni:1.5%以下
Niは、必要に応じて含有させることができる。NiもCrおよびMoと同様に、耐食性を向上させるとともに腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善、軟質部の転位構造の制御および微視的塑性変形の抑制に効果がある。しかし、1.5%を超えて含有させても、これらの効果が飽和するとともに、母材の強度が上昇しすぎて、靱性が損なわれるおそれがある。したがって、含有させる場合のNi含有量は1.5%以下、望ましくは1.0%以下とする。なお、腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善、軟質部の転位構造の制御および微視的塑性変形の抑制の効果を確実に得るためには、0.1%以上含有させることが望ましく、0.5%以上含有させることがより望ましい。
Cu:1.5%以下
Cuは、必要に応じて含有させることができる。CuもCr、MoおよびNiと同様に、耐食性を向上させるとともに腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善、軟質部の転位構造の制御および微視的組成変形の抑制に効果がある。しかし、1.5%を超えて含有させても、これらの効果が飽和するとともに、母材の強度が上昇しすぎて、靱性が損なわれるおそれがある。したがって、含有させる場合のCu含有量は1.5%以下、望ましくは1.2%以下とする。なお、腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善、軟質部の転位構造の制御および微視的塑性変形の抑制の効果を確実に得るためには、0.1%以上含有させることが望ましく、0.3%以上含有させることがより望ましい。
Nb:0.1%以下
Nbは、必要に応じて含有させることができる。Nbは、炭化物を生成することにより、軟質部を細粒化して強化するため、腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善に効果がある。しかし、0.1%を超えて含有させても、この効果が飽和するとともに、母材の強度が上昇しすぎて、靱性が損なわれるおそれがある。したがって、含有させる場合のNb含有量は0.1%以下、望ましくは0.05%以下とする。なお、腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善の効果を確実に得るためには、0.01%以上含有させることが望ましく、0.02%以上含有させることがより望ましい。
V:0.1%以下
Vは、必要に応じて含有させることができる。VもNbと同様に、炭化物を生成することにより、軟質部を細粒化して強化するため、腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善に効果がある。しかし、0.1%を超えて含有させても、この効果が飽和するとともに、母材の強度が上昇しすぎて、靱性が損なわれるおそれがある。したがって、含有させる場合のV含有量は0.1%以下、望ましくは0.07%以下とする。なお、腐食環境下での疲労き裂進展抑制特性の改善の効果を確実に得るためには、0.005%以上含有させることが望ましく、0.01%以上含有させることがより望ましい。
B:0.0030%以下
Bは、必要に応じて含有させることができる。Bは、焼入性を著しく高める作用があり、強度上昇と疲労き裂進展抵抗性を向上させる効果がある。しかし、0.0030%を超えて含有させると靱性が劣化するおそれがある。したがって、含有させる場合のB含有量は0.0030%以下とする。なお、強度上昇と疲労き裂進展抵抗性向上の効果を確実に得るためには、0.0003%以上含有させることが望ましい。
2.母材の組織および硬度
本発明に係る溶接継手の母材は、硬質部の素地とこの素地中に分散した軟質部からなる複合組織を有するものである。硬質部はマルテンサイト、ベイナイト、パーライト、疑似パーライトおよび焼戻しマルテンサイトのうちの1種以上からなる組織であり、軟質部はフェライト組織である。母材を上記のように複合組織とするのは、硬質部と軟質部の2種類の組織を複合形成させて、硬質部と軟質部との界面近傍においてき裂進展の停留効果を得るためである。この効果は、硬質部と軟質部との存在比率(体積率)によっては、あまり影響を受けない。したがって、本発明に係る溶接継手の母材では、上記の存在比率は特に限定されない。
本発明に係る溶接継手の母材において、硬質部の硬度と軟質部の硬度との差は、ビッカース硬度(以下、Hvという。)で150以上である。軟質部と硬質部との硬度差をHvで150以上にする理由は次のとおりである。硬度差が150以上になると、き裂先端の転位の移動が軟質部と硬質部との界面で阻止されるとともに、バーガースベクトルが界面に直交する転位が、軟質部と硬質部との界面近傍の軟質部内に配列するため、傾角粒界が形成される。この傾角粒界は、粒界一次転位のみにより構成されるため、粒界凝集力が高く、破壊の抵抗となりやすい。さらに、形成された傾角粒界には転位が突入しにくいため、引続き繰り返し応力が作用する場合には、粒界に隣接する軟質部側に新しい傾角粒界が形成される。このような経過を繰返すことにより、大きな体積を有する傾角粒界の集合部が形成される。この集合部はき裂進展の抵抗となり、母材のき裂進展抑制特性を向上させることができる。
3.溶接継手の硬度分布
溶接継手の疲労強度を向上させるためには、疲労損傷領域の局所化を避けて、溶接部においてき裂が発生することを防止する必要がある。
一般に、溶接継手には、通常、溶接に伴い溶接余盛りが形成される。溶接余盛りは応力集中源となり、余盛り止端に大きな応力集中を生じさせる。この余盛り止端の形状に基づく応力集中を母材側で改善することは困難である。
ここで、溶接継手に応力集中を発生させる要因には、上記のような形状に起因する形状ノッチの他に、材質ノッチと呼ばれるものがある。材質ノッチとは、材料内の材質の変化・分布、すなわち、溶接継手の場合には、強度の変化・分布に基づく応力集中現象である。強度の変化・分布は硬度分布の測定で評価することができる。溶接継手は、溶接熱影響部(HAZ)、母材、溶接金属の3つの材料が連続して存在している。通常、これらの3つの材料の中では、溶接熱影響部の硬度が最も高い。材質ノッチの観点から応力集中を抑制するためには、上記の3つの材料の硬度がほぼ等しく、略均一な硬度分布となることが望ましい。言い換えると、最も硬度の高い溶接熱影響部の硬度を、母材および溶接金属の硬度(母材と溶接金属のうち硬度の低い材料の硬度)にできるだけ近づけることが望ましい。具体的には、下記の不等式(1)の関係を満たすように、母材、溶接金属および溶接熱影響部の硬度を規定することにより、溶接継手の疲労特性を向上させることができる。
{Min(母材硬度、溶接金属硬度)}×1.5≧(HAZ硬度の最大値) ・・・式(1)なお、Min(母材硬度、溶接金属硬度)とは、母材の硬度および溶接金属の硬度のうちの低い方の値を意味する。HAZ硬度の最大値とは、溶接熱影響部における硬度の最大値を意味する。
4.溶接熱影響部の[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比
溶接継手全体で疲労強度を高くするには、最弱部となる溶接熱影響部での疲労強度も考慮しなければばらない。上述のように修正Goodman線図からの検討より、線図上の直線の傾きを大きくすればよい。
修正Goodman線図でのy切片は、引張応力と圧縮応力の絶対値が同じ大きさのとき、すなわち、応力比(σmin/σmax)が−1であるときの疲労限度、すなわち回転曲げ疲労強度であり、そして、x切片は引張強度であることから、[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比を大きくすれば、Goodman線図上の直線の傾きを大きくすることができる。
特に、溶接熱影響部における[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比が0.45以上になれば、溶接熱影響部での疲労強度が向上する。
5.母材の製造
本発明の溶接継手の母材として使用する鋼板は、例えば、以下の手順により製造できる。
まず、上述の化学組成を有するスラブを900℃〜1250℃に加熱した後に熱間圧延を施すことにより鋼板を作製する。次いで、熱間圧延された鋼板を冷却する。その冷却工程においては、平均冷却速度が20℃/秒以上(好ましくは25℃/秒〜60℃/秒)の加速冷却でスラブを800℃から500℃まで冷却し、500℃以下(好ましくは450℃〜室温)で上記加速冷却を停止し、その後、鋼板表面における復熱温度幅が、加速冷却停止時の鋼板表面の温度の40%以下となるようにして冷却を終了する。ここで復熱温度幅とは、加速冷却を停止した直後の鋼板表面の温度と、冷却停止後に鋼板内部に蓄積された熱で再び鋼板表面の温度が上昇し、その上昇が安定した状態での鋼板表面の温度との差を意味する。
なお、スラブの加熱温度が900℃に満たない場合には、鋼材のフェライト率が高くなりすぎ、疲労き裂の進展抵抗特性が悪くなる。一方、スラブの加熱温度が1250℃を超える場合には、結晶粒径が粗大となりすぎ、鋼材の靱性が劣化してしまう。また、上記の冷却工程において、鋼板を800℃から500℃まで冷却する際の平均冷却速度が20℃/秒に満たない場合にはフェライトの析出が多くなり、疲労き裂の進展抵抗特性が悪くなる。このフェライトの析出を確実に防止するための好ましい冷却速度は、25℃/秒以上である。加速冷却を停止した後の復熱温度幅が加速冷却停止時の鋼板表面の温度の40%を超える場合には、鋼材中の初期転位密度が減少し、鋼材の繰返し軟化特性を引き出すことができず疲労き裂進展特性が悪くなる。加速冷却停止時の鋼板表面の温度が500℃を超える場合には、鋼材のフェライト率が高くなりすぎ、疲労き裂進展抵抗特性が悪くなる。フェライト率が高くなり過ぎることを確実に防止するための好ましい加速冷却停止温度は、450℃以下である。
6.溶接継手の製造
溶接継手の製造は、例えば、アーク溶接により行えばよい。なお、アーク溶接においては、一般に、大気ガス等のガス成分の溶接金属への溶け込みにより、溶接部の強度や靭性の低下が生じる。このため、フラックスまたはガスによるシールド効果を期待して、被覆アーク溶接(SMAW溶接; Shielded Metal Arc Welding)、マグ溶接(MAG溶接; Metal Active Gas Arc Welding)または炭酸ガスアーク溶接(CO溶接)によって溶接を行うことが好ましい。ここで、フラックスまたはシールドガスの量が少ないと大気ガス成分の溶接金属への溶け込みが多くなり、HAZ硬度が大きくなる。また、溶接継手の製造工程では、一般に、溶接後、溶接継手は大気中において放冷される。このとき、HAZの熱が十分に放出されず、他の領域からHAZに熱が伝達されるなどした場合にも、HAZ粒径が大きくなる。そのため、溶接継手の製造する際には、十分なシールドを行い、HAZの熱管理を十分に行う必要がある。
表1および2に示す化学組成の母材を、通常の溶製、鋳造により製造した。その後、表3に示す熱間圧延、冷却条件で供試材となる溶接継手の母材鋼板を製造した。なお、表1および2に示す製造条件のA〜Hは、表3に示す製造条件のA〜Hにそれぞれ対応している。
Figure 0005565322
Figure 0005565322
Figure 0005565322
母材鋼板の組織調査と硬度の測定は、母材鋼板をエポキシ樹脂に埋め込み、切断、断面の研磨、エッチングを施して、顕微鏡観察および微小領域の硬度の測定をすることにより行った。表1および2には、各母材鋼板の金属組織を素地相と分散相に分け、各々の相が軟質相であるのか、硬質相であるのかを記載すると共に、硬質相のビッカース硬度から軟質相のビッカース硬度を差し引いた硬度差を記載した。硬度測定はJIS Z2244−2003に従って実施した。
表1および2に示す各母材鋼板に対し、疲労き裂進展試験を実施した。また、被覆アーク溶接(SMAW溶接)、マグ溶接(MAG溶接)および炭酸ガスアーク溶接(CO溶接)のうちのいずれかの溶接方法で、各母材鋼板を用いて溶接継手を作製し、各溶接継手に対して疲労試験を実施した。被覆アーク溶接(SMAW溶接)、マグ溶接(MAG溶接)および炭酸ガスアーク溶接(CO溶接)の具体的な溶接条件は、表4に示すとおりである。なお、表1に示す溶接方法のSMAW、MAG、COは、表3に示す溶接方法にそれぞれ対応している。また、溶接継手の疲労試験では、荷重非伝達型十字継手を採用した。
Figure 0005565322
さらに、溶接継手に対しては、HAZ、母材、溶接金属の硬度を各々測定し、(HAZ硬度の最大値)/{Min(母材硬度, 溶接金属硬度)}を算出した。算出した値を、HAZ硬度比と称して表1および2に記載した。硬度測定はJIS Z2244−2003に従って実施した。
各溶接は、溶接材料メーカーの推奨条件で実施した。例えば、炭酸ガスアーク溶接(CO溶接)では、溶接材料として神戸製鋼所製のDW−100(ワイヤ径1.2mm)を用いて、溶接電圧250V、溶接電流26A、溶接速度26cm/minで溶接入熱量1.5kJ/mmとして実施した。
疲労き裂進展試験および疲労試験においては、母材鋼板および溶接継手を、電気油圧式閉ループ型疲労試験機疲労き裂進展試験では、動的荷重容量±98kNの試験機を、溶接継手疲労試験では動的荷重容量が±490kNの試験機を各々使用した。
母材鋼板の疲労き裂進展試験では、ASTM E−647に準拠したCT試験片を用い、応力拡大係数範囲ΔK(最大応力拡大係数と最小応力拡大係数との差)が20MPa・m1/2での疲労き裂進展速度を評価した。表1では、疲労き裂進展特性を、き裂進展速度が2.5×10−5mm/cycle以下の場合を“◎”、4.0×10−5mm/cycle以下の場合を“○”、4.0×10−5mm/cycleを超えた場合を“×”として記載した。
溶接継手の疲労試験では、応力振幅を試験条件として変化させ、応力振幅と疲労破断寿命との関係をSN線図で表し、疲労限度を導出した。この疲労試験において、荷重比(最小荷重を最大荷重で除した値)は0.1とした。また、疲労限度は5E6回(5×10回)疲労強度で定義した。なお、疲労破断寿命は、最大荷重時の変位(試験体に荷重を負荷するアクチュエータのシリンダーの変位)が、試験開始時に比べ1mm増した時点と定義したが、この時点で、疲労き裂は断面の5〜8割程度の面積まで成長していた。表1には、溶接継手の疲労強度を、5E6回疲労強度が100MPa以上の場合を“◎”、80MPa以上の場合を“○”、80MPa未満の場合を“×”として記載した。
本実施例においては、さらに、各溶接継手の溶接熱影響部(HAZ)における[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比を求めるための試験を行った。具体的には、まず、図1に示すように、各母材鋼板から、厚み:11mm、長辺:60mm、短辺11mmの供試材を作製した。そして、各溶接継手(表1のNo.1〜No.48に溶接継手)の溶接法および溶接条件にそれぞれ合致するよう、熱サイクルシミュレータ装置(富士電波工機製、15kW高周波加熱、Heガス冷却)を用いて各供試材に溶接熱履歴を再現した。図2に、溶接熱履歴の一例として、CO溶接法で溶接入熱1.5kJ/mmに対応した熱履歴を示す。なお、このシミュレーター装置は、供試材に装着された熱電対の出力を基に、設定された加熱速度および高温保持をインダクション・ヒータで、設定された冷却速度を液体窒素で制御できるようになっている。
上記のシミュレーター装置により溶接熱履歴が再現された各供試材(以下、再現材と称する。)から、精密加工により、図3に示す引張試験片(厚みt:0.5mm、平行部の長さ:3.8mm)をそれぞれ採取した。なお、溶接熱履歴の再現材の極表層部は特異な組織となっている可能性があるため、図1に示すように、再現材の表面から1mmの部分が引張試験片の板厚方向における中心となるように引張試験片が採取されている。このようにして作製された各引張試験片を、荷重容量4.9kNの引張試験機に予ひずみが付与されないように特殊治具を用いて取り付けた。
本実施例においては、上記の各引張試験片の引張試験結果からHAZの引張強度を求めた。
また、本実施例においては、回転曲げ疲労強度についても求めた。回転曲げ疲労試験は、平行部直径6mm、平行部長さ約40mm、コーナー部のRが30mmの小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、通常の方法により室温大気中にて実施した。打切り繰返し数を1.0×10回に設定し、未破断となった試験の最大応力と、最も長寿命で破断した試験の応力の中間値を、疲労強度と定義した。
表1に示すように、本発明例(No.1〜No.24)では、母材鋼板の疲労き裂進展特性および溶接継手の疲労強度が優れていることが分かる。一方、表2に示すように、本発明の要件を満足しない比較例(No.25〜No.50)は母材鋼材の疲労き裂進展特性または溶接継手の疲労強度が優れていないことが分かる。
具体的には、No.25〜No.40では、本発明で規定する母材鋼材の組成を満足せず、かつ一部のものについては母材組織、硬質・軟質相の硬度差、HAZ硬度比または[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比が本願発明の規定を満足しなかったため、母材鋼材の疲労き裂進展特性または溶接継手の疲労強度が優れなかった。
No.41〜No.44では、本発明で規定する母材鋼材の組成を満足するものの、製造条件が好ましくなかった。具体的には、表1〜3に示すように、No.41では冷却停止温度が高く、No.42および43では、復熱温度幅が大きく、No.44では、平均冷却速度が低くかつ冷却停止温度が高かった。そのため、母材組織または硬質・軟質相の硬度差が本発明の規定を満足せず、母材鋼材の疲労き裂進展特性または溶接継手の疲労強度が優れなかった。
No.45〜No.48においては、母材鋼材が本発明で規定する組成を満足し、母材組織および硬質・軟質相の硬度差を満足している。しかし、溶接継手を適切に製造できなかったため、溶接継手の疲労強度が優れなかった。具体的には、No.45およびNo.46では溶接継手の製造の際シールドガスの量を少なくしたため、HAZ硬度比および[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比が本発明の規定を満足せず、溶接継手の疲労強度が優れなかった。また、No.47では溶接継手の製造の際シールドガスの量を少なくしたため、また、No.48では1パス目の溶接を行った直後に2パス目の溶接を行ったため、[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比が本発明の規定を満足せず、溶接継手の疲労強度が優れなかった。
No.49および50においては、母材鋼材が本発明で規定する組成を満足している。しかし、製造方法が好ましくなかった。具体的には、No.49では平均冷却速度が低く、No.50では平均冷却速度が低くかつ冷却停止温度が高かった。そのため、母材組織または硬質・軟質相の硬度差が本発明の規定を満足せず、No.49ではHAZ硬度比および[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比が、No.50ではHAZ硬度比が本発明の規定を満足しなかったため、母材鋼材の疲労き裂進展特性および溶接継手の疲労強度が優れなかった。
本発明に係る溶接継手によれば、特別な設計および施工を行うことなく溶接部の疲労き裂発生特性を改善できかつ疲労き裂が母材部に進入したときには母材部で疲労き裂進展抵抗特性を発揮することができる。より具体的には、従来通りの構造設計の下、溶接施工に関しては、特殊な溶接材料を使用することなく、また、溶接後の余盛り止端形状をグラインダーなどで形状処理を行うことなく、溶接継手の疲労強度健全性を高めることができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.10%、
    Si:0.04〜0.60%、
    Mn:0.50〜2.00%、
    P:0.025%以下、
    S:0.011〜0.020%
    Al:0.003〜0.060%、
    Ti:0.001〜0.100%、
    N:0.0020〜0.0120%、
    Mo:0.04〜0.50%
    を含有し、
    残部はFeと不純物からなる化学組成を有し、
    硬質部の素地とこの素地中に分散した軟質部からなる複合組織を有し、硬質部と軟質部の硬度差がビッカース硬度で150以上である母材を溶接してなる溶接継手であって、
    溶接熱影響部の硬度が、母材、溶接金属の各々の硬度と下記の不等式(1)の関係を満たすと共に、溶接熱影響部における[回転曲げ疲労強度/引張強度]の比が0.45以上であることを特徴とする溶接継手。
    {Min(母材硬度、溶接金属硬度)}×1.5≧(HAZ硬度の最大値) ・・・式(1)
    ただし、Min(母材硬度、溶接金属硬度)とは、母材の硬度および溶接金属の硬度のうちの低い方の値を意味する。HAZ硬度の最大値とは、溶接熱影響部における硬度の最大値を意味する。
  2. 母材が、Feの一部に代えて、質量%で、
    Cr:2.0%以下、
    Ni:1.5%以下、
    Cu:1.5%以下
    のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接継手。
  3. 母材が、Feの一部に代えて、質量%で、
    Nb:0.1%以下、
    V:0.1%以下
    のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接継手。
  4. 母材が、Feの一部に代えて、質量%で、
    B:0.0030%以下を含有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の溶接継手。
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