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JP5565866B2 - 火災被害低減構造 - Google Patents
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Description

本発明は、火災被害低減構造に関する。
従来より、鉄筋コンクリート造建物が火災の被害を受けた場合には、この建物を再使用するために、火災を受けた部分を補修している。具体的には、建物の梁や柱のうち300℃以上受熱した部分をはつり落として、その後、このはつり落とした部分にコンクリートを打設する。
ところで、柱の一部をはつり落とそうとしても、この柱には大きな軸力が作用しているため、まず、柱に作用する軸力を仮受けする仮設部材を設置する必要がある。よって、柱の補修にかなりの時間がかかる、という問題があった。
この問題を解決するため、以下のような2つの方法が提案されている。
第1に、鉄筋コンクリート造の柱部材の表面を薄肉鋼板で被覆する方法が提案されている(特許文献1参照)。この薄肉鋼板は、コンクリート表面に当接している。
この提案によれば、火災の熱が薄肉鋼板に伝わるため、柱部材のコンクリート表面の温度が急激に上昇するのを抑制できるから、コンクリートの爆裂を防止できる。
第2に、珪酸カルシウム板を鉄筋コンクリート部材の表面に設けることが提案されている(特許文献2参照)。この珪酸カルシウム板とコンクリート表面との間には、空気層が設けられている。
この提案によれば、珪酸カルシウム板とコンクリート表面との間に空気層を設けたので、この空気層が断熱層となるから、珪酸カルシウム板をコンクリート表面に直接設けた場合に比べて、コンクリート表面の温度の上昇を抑制でき、コンクリートの爆裂を防止できる。
特開平11−93295号公報 特開2004−360193号公報
しかしながら、第1の方法では、薄肉鋼板がコンクリートに接しているため、火災の熱がコンクリートにも伝達されてしまい、コンクリートの爆裂を効果的に抑制できなかった。
また、第2の方法では、空気層が断熱層になるため、コンクリート表面の温度の上昇が緩和されるが、珪酸カルシウム板の厚みを厚くする必要があり、柱のサイズが大型化してしまう。
本発明は、部材のサイズが大型化するのを抑制しつつ、コンクリートの爆裂を効果的に抑制できる火災被害低減構造を提供することを目的とする。
請求項1に記載の火災被害低減構造は、鉄筋コンクリート造の躯体と、当該躯体の表面に空気層を挟んで設けられた鋼製のカバー部と、を備え、前記躯体は、断面矩形状の柱躯体であり、前記カバー部は、4枚の略L字形状の鋼板を用意し、当該鋼板のそれぞれを前記躯体の柱躯体の4つの角部を跨ぐように配置し、各鋼板の端部同士を重ね合わせることで、当該躯体の周囲を囲むことを特徴とする。
この発明によれば、空気層が断熱層となって、躯体温度の上昇が緩和されるため、躯体のコンクリートが爆裂するのを効果的に抑制できる。
また、カバー部を鋼製としたので、カバー部の厚みを薄くできるから、部材のサイズが大型化するのを抑制できる。
また、一度爆裂が発生すると、爆裂した部分のコンクリートが新たに露出するため、この露出したコンクリートが直火で加熱されてさらに爆裂する。このように爆裂を繰り返すことで、火災被害が躯体内部の奥深くに至る場合がある。しかしながら、この発明によれば、躯体のコンクリートが爆裂しても、カバー部が爆裂したコンクリート片を押さえ込むので、爆裂が連続して発生するのを抑えることができ、火災被害を低減できる。
本発明の火災被害低減構造は、前記カバー部の表面には、耐火塗料が塗布されていることが好ましい。
コンクリート躯体の表面に直接耐火塗料を塗布しても、コンクリートの下地では耐火塗料の塗膜が均一に加熱されないため、均一な断熱層を形成できず、コンクリート躯体を十分に保護することができない、という問題があった。
しかしながら、この発明によれば、鋼製のカバー部の表面に耐火塗料を塗布したので、鋼製の下地により耐火塗料の塗膜が均一に加熱されて、塗膜が均一な断熱層を形成するから、コンクリート躯体を保護できる。
本発明の火災被害低減構造は、前記空気層の厚みは、略5mmであることが好ましい。
この発明によれば、空気層の厚みを略5mmとしたので、空気層の厚みを最小限に抑えて部材のサイズが大型化するのを抑制しつつ、断熱層を確実に形成できる。
また、請求項1に記載の発明によれば、4枚の略L字形状の鋼板を組み合わせることでカバー部を構成したので、柱の断面サイズに多少の施工誤差があっても、柱の4つの側面を確実に覆うことができる。
本発明によれば、空気層が断熱層となって、躯体温度の上昇が緩和されるため、躯体のコンクリートが爆裂するのを効果的に抑制できる。また、カバー部を鋼製としたので、カバー部の厚みを薄くできるから、部材のサイズが大型化するのを抑制できる。また、躯体のコンクリートが爆裂しても、カバー部が爆裂したコンクリート片を押さえ込むので、爆裂が連続して発生するのを抑えることができ、火災被害を低減できる。
本発明の実施形態に係る火災被害低減構造が適用された建物の柱の横断面図および側面図である。 前記実施形態に係る柱の角部の横断面図および縦断面図である。 本発明の比較例および実施例に係るコンクリート躯体を1時間加熱した場合の温度分布を示す図である。 本発明の比較例および実施例に係るコンクリート躯体を2時間加熱した場合の温度分布を示す図である。 本発明の比較例および実施例に係るコンクリート躯体を3時間加熱した場合の温度分布を示す図である。 本発明の比較例および実施例に係るコンクリートの温度変化を示す図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る火災被害低減構造が適用された建物の柱10の横断面図および側面図である。図2は、柱10の角部の横断面図および縦断面図である。
柱10は、鉄筋コンクリート造の断面矩形状の柱躯体20と、柱躯体20の表面に空気層30を挟んで設けられた鋼製のカバー部40と、を備える。
空気層30の厚みは、略5mmである。
カバー部40の外側表面には、耐火塗料が塗布されて、塗膜50が形成されている。また、カバー部40の内側表面および柱躯体20のコンクリート表面には、白色塗料が塗布されている。
このカバー部40は、4枚の略L字形状の鋼板41から構成される。各鋼板41は、具体的には、平板部411と、この平板部411の一端側が折り曲げられた折り曲げ部412と、平板部411の内側面に取り付けられた平板状のスペーサ413と、を備える。
カバー部40は、以下の手順で組み立てられる。
まず、鋼板41を、柱躯体20の特定の角部を跨ぐように配置する。すなわち、特定の角部に隣接する一側面に対して鋼板41の折り曲げ部412を引っ掛けながら、この角部に隣接する別の一側面に対して鋼板41のスペーサ413を当接させる。これにより、鋼板41の平板部411は、柱躯体20の別の一側面を所定間隔だけ離れて覆う。
以上の手順を繰り返して、各鋼板41を柱躯体20の4つの角部を跨ぐように配置する。このとき、図1(b)に示すように、各鋼板41を上下に千鳥に配置する。
すると、各鋼板41の平板部411の端部は、隣接する鋼板41の折り曲げ部412の上に当接して重なり合い、柱躯体20の4つの側面を囲むことになる。
この状態で、裏当て板42を設けて所定間隔おきに隅肉溶接して、鋼板41同士を一体化させる。
ここで、カバー部40の内側表面および柱躯体20のコンクリート表面に白色塗料を塗布する理由は、以下の通りである。
鋼板からコンクリートに流入する熱流速qは、以下の式(1)で表される。式(1)において、鋼板の温度T、コンクリートの温度T、鋼板の放射率ε、コンクリートの放射率εとする。
Figure 0005565866
以上の式(1)より、放射率を低くすることで、鋼板からコンクリートへの熱流入を低減できることが判る。よって、鋼板の内側表面とコンクリート表面とに白色塗料を塗布することで放射率を低下させるのである。
[実施例および比較例]
600mm×600mmのコンクリート躯体を想定し、このコンクリート躯体に対して熱伝導解析を行った。
比較例1は、コンクリート躯体に鋼板を設けず、直接加熱した。
比較例2は、コンクリート躯体の表面に鋼板を直接貼り付け、鋼板の外側から加熱した。
実施例は、コンクリート躯体に空気層を挟んで鋼板を設け、鋼板の外側から加熱した。
図3〜図5は、それぞれ、比較例および実施例に係るコンクリート躯体を1時間、2時間、3時間加熱した場合の温度分布を示す図である。
図3〜図5のうち、(a)は比較例1であり、(b)は比較例2であり、(c)は実施例である。
また、図3〜図5において、0℃から100℃までの部分をA、100℃から200℃までの部分をB、200℃から300℃までの部分をC、300℃から400℃までの部分をD、400℃から500℃までの部分をE、500℃から600℃までの部分をF、600℃から700℃までの部分をG、700℃から800℃までの部分をH、800℃から900℃までの部分をI、900℃から1000℃までの部分をJ、1000℃から1100℃までの部分をK、1100℃から1200℃までの部分をLとする。
図3〜図5に示すように、空気層を挟んで鋼板を設けることにより、鋼板を直接貼り付けた場合や鋼板を設けない場合に比べて、加熱時間にかかわらずコンクリート躯体の温度上昇が抑制されていることが判る。また、加熱時間が長くなるに従って温度上昇の抑制効果が高くなることが判る。
次に、コンクリートに対して加熱実験を行った。
比較例1は、コンクリートに鋼板を設けず、直接加熱した。
比較例2は、コンクリートに接して鋼板を設け、この鋼板の外側から加熱した。この鋼板には耐火塗料を塗布しなかった。
実施例は、コンクリートに空気層を挟んで鋼板を設け、この鋼板の上に耐火塗料を塗布し、鋼板の外側から加熱した。
以上の実施例および比較例について、標準火災加熱温度曲線に沿って加熱して、鋼板表面温度およびコンクリート表面温度を計測した。
図6は、比較例および実施例に係るコンクリートの温度変化を示す図である。図6のうち、(a)は比較例1であり、(b)は比較例2であり、(c)は実施例である。
図6により、コンクリートと鋼板との間に空気層を設け、鋼板の上に耐火塗料を塗布すると、コンクリート表面温度の上昇を大きく抑制できることがわかる。
また、鋼板に耐火塗料を塗布した場合、コンクリート表面に耐火塗料を塗布した場合に比べて、コンクリート表面温度の上昇を抑制できることが判る。
この理由は、以下の通りである。すなわち、耐火塗料は加熱されて発泡することで断熱層を形成するが、発泡層の厚さは、塗料の膜厚と塗布下地面の温度に依存する。具体的には、膜厚が厚いほど、また、下地面の温度が高いほど、発泡層が厚くなって断熱性能が向上する。鋼板はコンクリートよりも熱容量が小さいため、鋼板表面が高温となり、発泡層の厚みが大きくなって、断熱性能が高くなるからである。
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)空気層30が断熱層となって、柱躯体20の温度の上昇が緩和されるため、柱躯体20のコンクリートが爆裂するのを効果的に抑制できる。
また、カバー部40を鋼製としたので、カバー部40の厚みを薄くできるから、部材のサイズが大型化するのを抑制できる。
また、柱躯体20のコンクリートが爆裂しても、カバー部40が爆裂したコンクリート片を押さえ込むので、爆裂が連続して発生するのを抑えることができ、火災被害を低減できる。
(2)鋼製のカバー部40の表面に耐火塗料の塗膜50を形成したので、鋼製の下地により耐火塗料の塗膜50が均一に加熱されて、塗膜50が均一な断熱層を形成するから、柱躯体20を保護できる。
(3)空気層30の厚みを略5mmとしたので、空気層の厚みを最小限に抑えて部材のサイズが大型化するのを抑制しつつ、断熱層を確実に形成できる。
(4)4枚の略L字形状の鋼板41を組み合わせることでカバー部40を構成したので、柱躯体20の断面サイズに多少の施工誤差があっても、柱躯体20の4つの側面を確実に覆うことができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
10…柱
20…柱躯体
30…空気層
40…カバー部
41…鋼板
42…裏当て板
50…塗膜
411…平板部
412…折り曲げ部
413…スペーサ

Claims (1)

  1. 鉄筋コンクリート造の躯体と、当該躯体の表面に空気層を挟んで設けられた鋼製のカバー部と、を備え、
    前記躯体は、断面矩形状の柱躯体であり、
    前記カバー部は、4枚の略L字形状の鋼板を用意し、当該鋼板のそれぞれを前記躯体の柱躯体の4つの角部を跨ぐように配置し、各鋼板の端部同士を重ね合わせることで、当該躯体の周囲を囲むことを特徴とする火災被害低減構造。
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