JP5567969B2 - 光変調素子およびこれを用いた空間光変調器 - Google Patents
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スピン注入磁化反転素子には上下に電流を供給するための電極材料を設けるため、スピン注入磁化反転素子に光を入射するためには、回折型の空間光変調器の光変調素子であれば上または下の一方に、あるいは透過型の空間光変調器の光変調素子であれば上下共に、光を透過する透明電極材料を適用しなくてはならない。透明電極材料は、金属電極材料と比べて導電性が大きく劣るため、複数の画素に均一な電流を供給することが困難であるという問題がある。特により多数の光変調素子を2次元アレイ状に配列した高精細の空間光変調器になるほど中央部で動作が遅れる虞がある。これを防止するためには、電極(配線)を厚膜化したり、大電流を供給して空間光変調器を動作させたりする必要があり、省電力化の点で改良の余地がある。
かかる構成によれば、容易に2つの磁化固定層を互いに反平行な磁化に固定することができる。
かかる構成によれば、1つの画素の複数の光変調素子において、磁化自由層の磁化方向を、それぞれ異なる方向とすることができる。これにより、画素の多段階表示が可能となる。
本発明に係る空間光変調器によれば、金属電極材料で一対の電極を形成することで省電力化を図ることができる。さらに、効率的なスピン注入磁化反転による偏光変調が可能となり、画素の開口率が増大したものとなる。
≪光変調素子≫
[第1実施形態]
図1(a)に示すように、本発明の光変調素子1は、光を透過させる基板7上に形成され、磁化自由層3と、第1中間層21および第2中間層22(以下、適宜、中間層21,22という)と、第1磁化固定層11および第2磁化固定層12(以下、適宜、磁化固定層11,12という)と、がこの順序で積層されたスピン注入磁化反転素子構造を有する。また、第1磁化固定層11の上面にはX電極51が、第2磁化固定層12の上面にはY電極52が、それぞれ電極層として接続されている。そして光変調素子1は、磁化固定層11,12上に接続した一対の電極であるX電極51とY電極52(以下、適宜、電極51,52という)との間に電流が供給され、磁化自由層3の磁化方向を変化させることによって、下方から基板7を透過して入射した光をその偏光方向を変化させて回折し、異なる2値の光(偏光成分)に変調して下方へ出射するものである。なお、反射光は0次回折光と表現できるので、回折には反射も含むものである。
なお、本実施形態では、光変調素子1として、磁化方向が垂直方向(層表面と直交する方向)の場合について説明する。
以下、光変調素子1の構成について説明する。
磁化自由層3は、2つの磁化固定層11,12上にそれぞれ接続した電極層を一対の電極(X電極51およびY電極52)間に電流が供給されることにより、磁化方向が変化するものである。すなわち、X電極51とY電極52との間に供給される電流の向きに応じて、注入される電子のスピンと磁化自由層3内の電子スピンとの相互作用により磁化自由層3内の磁化の向きが反転する。
磁化固定層11,12は、同一平面上に分離した2つの磁化固定層、すなわち、第1磁化固定層11および第2磁化固定層12からなり、この2つの磁化固定層11,12のそれぞれが、1つの磁化自由層3上に、中間層21,22を挟んで積層されている。磁化固定層11,12は、磁化方向が所定方向、すなわち、高さ方向と平行な方向(垂直な方向)の一方の向きに固定されており、第1磁化固定層11および第2磁化固定層12は、互いに反平行な磁化に固定されている。また、磁化固定層11,12は強磁性材料からなり、磁化自由層3よりも保磁力の大きい磁性体である。
第1中間層21および第2中間層22は、それぞれ、磁化自由層3と第1磁化固定層11との間、および、磁化自由層3と第2磁化固定層12との間に配置される層である。中間層21,22は、磁化自由層3の磁化状態と磁化固定層11,12の磁化状態とを分離するために必要であり、後記する「光変調素子の磁区状態の変移」で説明するとおり、磁化自由層3と磁化固定層11,12との間でスピン偏極した電子をやり取りする際の通路として機能する。このように、中間層21、22はスピンの通路として機能するため、中間層21、22には、スピン軌道相互作用が小さく、スピン拡散長(スピンを保持する距離)の長い材料を用いることが好ましい。
また、TMR型の磁気抵抗効果素子の場合には、中間層21、22として、マグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)、MgF2等の絶縁材料が用いられる。中間層21、22を絶縁体層とすることにより、光変調素子1の磁気抵抗効果比(MR比)を改善することができ、MR比に反比例する磁化反転電流を低減することができる。また、TMR型の場合には、中間層21、22の厚さは、0.6〜2nm程度が好ましい。
図1(b)に示すように、本発明に係る光変調素子1Aは、光を透過させる基板7上に形成され、磁化自由層3と、中間層2Aと、第1磁化固定層11および第2磁化固定層12と、保護層41,42と、がこの順序で積層されたスピン注入磁化反転素子構造を有する。中間層2Aの形態および保護層41,42以外については、前記第1実施形態に係る光変調素子1と同様であるため、ここでは、中間層2Aの形態および保護層41,42について説明する。
図1(b)に示すように、中間層2Aについては、TMR型の素子とする場合には、中間層2Aに絶縁材料を用いるため、同一平面上に分離したものとせず、磁化自由層3と同様に1つの中間層2Aとして形成してもよい。このような構成とすることで、後記する光変調器の製造方法において、素子膜をエッチングやミリング加工等により掘り下げる際に、素子膜の中央を中間層2Aの上面または途中まで除去すればよいため、過度なエッチング等が行なわれた場合であっても、磁化自由層3が損傷することを防止できる。
保護層41,42は、必要に応じて、それぞれ第1磁化固定層11とX電極51との間、および、第2磁化固定層12とY電極52との間に設けられる層である。保護層41,42は、磁化固定層11,12の酸化や現像処理時のアルカリ性薬品等によるダメージを防止する役割を担う層であり、特に、光変調素子1Aを形成する際の熱処理における磁化固定層11,12の酸化を防止する。また、保護層41,42を構成する材料には、熱処理の際に磁化固定層11,12を構成する材料と反応しない性質が求められる。このような要求を満たす材料として、Ta、Ru等を用いることができる。特にRuは、それ自体が酸化されても抵抗率が増大しないため本発明の光変調素子1Aに用いることが好ましい。なお、ここでは、1つの中間層2Aとした光変調素子1Aについて例示しているが、第1実施形態の光変調素子1においても、保護層41,42を備える構成としてもよい。
その他、前記各実施形態では、垂直磁化の場合について説明したが、磁化方向が層表面と平行な方向である面内磁化であってもよい。面内磁化の場合には、磁化自由層3および磁化固定層11,12には、面内磁気異方性を有する材料を使用する。なお、磁化固定層11,12のうちの一方を磁気交換結合膜を備えた多層構造とする場合、面内磁化であれば、CoFe/Ru/CoFe/IrMn(IrMnの代わりに、FeMn、PtMn等の反強磁性材料を用いることも可能)等とすることが好ましい。
次に、本発明の空間光変調器について、ここでは、図1(a)の光変調素子1を用いた場合を例にして説明する。
[第1実施形態]
図2に、空間光変調器10の構成を底面から見た模式図を示す。
図2に示すように、空間光変調器10は、前記記載の光変調素子1を用いたものであり、光を透過させる基板7(図1参照)と、この基板7上に2次元配列された複数の画素4と、複数の画素4から1以上の画素4を選択する画素選択手段(画素選択部94)と、この画素選択手段が選択した画素4に所定の電流を供給する電流供給手段(電源93)と、を備える。画素選択手段および電流供給手段の駆動(動作)は、電流制御手段である電流制御部90により制御されている。そして、空間光変調器10は、基板7を透過して画素選択手段が選択した画素4に入射した光の偏光の向きを特定の方向に変化させて回折して出射する。
以下、各構成について説明する。
基板7は、光変調素子1、電極51,52を形成するための土台となるものである。空間光変調器10では、後記するように、基板7を透過して光変調素子1に入射した後に回折される光を利用するため、基板7としては、SiO2、MgO、サファイア、石英ガラス等の透過性に優れた透明基板を用いる。
画素4は、空間光変調器10の光の入射面に、2次元アレイ状に配列されて画素アレイ40を構成する。すなわち、画素アレイ40は、平面視で複数のX電極51と、平面視でX電極51と直交する複数のY電極52と、を備え、X電極51とY電極52との交点毎に1つの画素4を設ける。本実施形態では、画素アレイ40は、4行×4列の16個の画素4からなる構成で例示される。
光変調素子1は、X電極51とY電極52との間に一定の電流を供給したときに、光変調素子1に入射した入射光の偏光面をカー効果により一定角度回転させて回折する役割を担う。光変調素子1の平面視での大きさは、一例として、磁化自由層3の幅(横方向の長さ)(ここでの幅とは、2つの磁化固定層11,12が同一平面上に並んだ方向、以下同じ)が400nm、長さ(縦方向の長さ)が300nm、あるいは、幅が300nm、長さが400nm等である。また、第1磁化固定層11および第2磁化固定層12の幅がそれぞれ150nm、第1磁化固定層11と第2磁化固定層12との間隔が100nm等である。ただし、光変調素子1等の大きさは、これに限定されるものではない。
X電極51は、光変調素子1に電流を供給するための一対の電極のうち、片方の電極であり、Y電極52は、もう一方の電極である。X電極51およびY電極52を構成する材料としては、安価で導電性に優れた銅(Cu)が好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、金(Au)や白金(Pt)等の貴金属を用いてもよい。そして後記するように、入射偏光は基板7側から光変調素子1に入射し、磁化自由層3で回折されるため、電極51,52は光を透過させる必要がない。そのため、電極51,52を、透明材料で構成する必要はない。電極51,52の幅は、基板7上に形成する光変調素子1の形状に合わせて、適宜、定められる。空間光変調器10では、光変調素子1を縦横に一定間隔で二次元配置する構成としているため、X電極51は、帯状の形状を有し、一定幅かつ一定間隔で第1磁化固定層11上に設けられている。また、Y電極52も、その長手方向がX電極51の長手方向と直交するように、一定間隔で平行に配置されて、第2磁化固定層12上に設けられている。
絶縁部材6は、X電極51およびY電極52の電極や、光変調素子1,1間を絶縁するための部材である。絶縁部材6としては、SiO2やAl2O3等の従来公知の絶縁材料を用いればよい。
電源93および画素選択部94の駆動動作は、電流制御部90により制御される。
〈電流制御部〉
図2に示すように、電流制御部90は、空間光変調器10の駆動動作を制御する。そして、電流制御部90は、画素選択部94(画素選択手段)と、画素選択部94によって制御される電源93(電流供給手段)とを備える。
画素選択部94は、所謂、コンピュータであり、図示しない中央演算装置がROMに格納されたプログラムを実行することにより、X電極選択部91、Y電極選択部92および電源93の動作制御が行われる。なお、X電極選択部91、Y電極選択部92による各選択は、画素選択部94に、人為的に予め所望のプログラムを設定し、このプログラムを実行することで行なわれる。
次に、空間光変調器10の動作について、図3を参照して説明する。
まず、光源である光学系OPSから、レーザー光が照射される。この光学系OPSから照射されたレーザー光は様々な偏光成分を含んでいるので、これを基板7の下方の偏光子PFiを透過させて、1つの偏光成分の光とする。以下、1つの偏光成分の光を偏光と称する。この偏光(入射偏光)は、画素アレイ40(図2参照)のすべての画素4に所定の入射角で入射する。入射偏光は、それぞれの画素4において、基板7を透過して光変調素子1に入射し、当該光変調素子1の磁化自由層3によるカー効果により、偏光方向が所定角度回転した出射偏光として光変調素子1から出射し、再び基板7を透過して画素4から出射する。それぞれの画素4から出射したすべての出射偏光は、偏光子PFoに到達する。偏光子PFoは、特定の偏光、ここでは入射偏光に対して角度θk旋光した偏光のみを透過させ、この透過した出射偏光が検出器PDに入射する。一方、角度−θk旋光した偏光は、偏光子PFoを透過できない。なお、偏光子PFi,PFoはそれぞれ偏光板等であり、検出器PDはスクリーン等の画像表示手段やカメラ等である。
次に、光変調素子1の磁区状態の変移について、図4を参照して説明する。
図4(a)に示すように、初期状態として、磁化の方向は、磁化自由層3では下向き、第1磁化固定層11では上向き、第2磁化固定層12では下向きであるとする。
そして、2つの磁化固定層11,12を備えることで、スピン注入の効率を向上させることができ、また、光の入射面(出射面)の面積を広くしても磁化自由層3の磁化反転が効率よく起きるため、画素4の開口率を増大させることができる。
次に、空間光変調器10の製造方法の一例について、図1、2を適宜参照して説明する。なお、ここでは、保護層41,42を設けない場合について説明する。
図5、6に示すように、空間光変調器10Aは、配列された、2つの磁化固定層11,12が同一平面上に並んだ方向に隣り合う2つの画素4において、光変調素子1の2つを、1つの同じY電極52に接続される2つの光変調素子1の第2磁化固定層12を一体として1つの一体型素子15としたものである。具体的には、図6に示すように、1つの光変調素子1の第2磁化固定層12と、この光変調素子1に隣り合う光変調素子1の第2磁化固定層12とが1つの磁化固定層Fとして構成されている。その他の構成については、前記第1実施形態の空間光変調器10と同様である。
まず、基板7上に磁化自由層用膜301、中間層用膜302、磁化固定層用膜303、第1電極層用膜304を積層した素子膜Aを形成する(図7(a))。次に、レジストBにより素子膜Aの中央部を分断するような孔の空いたレジストパターンを形成する(図7(b))。その後、素子膜Aの中央を基板7の上面まで除去し、溝を挟んで、2つの素子膜Aa,Abとする(図7(c))。その後、レジストBを剥離せずに、絶縁部材6を全面に堆積し、形成された溝を中間層用膜302の上面の高さまで絶縁部材6で埋め、さらに、磁化固定層用膜303を全面に積層し、形成された溝を、中間層用膜302上の磁化固定層用膜303の上面の高さまで磁化固定層用膜303で埋める(図7(d))。これにより、磁化固定層用膜303を溝の部分でつなげて一体膜303aとする。なお、これらの際、レジストB上にも絶縁部材6が堆積し、さらに、この絶縁部材6上にも磁化固定層用膜303が堆積する(図7(d))。
図8に示すように、空間光変調器10Bは、1つの画素4が3つの光変調素子1から構成されており、これらの光変調素子1は、共通の電極51,52を備えている。その他の構成については、前記第1実施形態の空間光変調器10と同様である。
その他、前記各実施形態においては、1つの画素4が、1つまたは3つの光変調素子1を備える場合について説明したが、1つの画素4が備える光変調素子1は、2つでも、4つ以上であってもよい。なお、2つの場合は、前記した中間状態は1つとなる。すなわち、複数の画素4のそれぞれが複数の光変調素子1を有するものとしてもよい。
2A 中間層
3 磁化自由層
4 画素
6 絶縁部材
7 基板
10,10A,10B 空間光変調器
11 第1磁化固定層
12 第2磁化固定層
15 一体型素子
21 第1中間層
22 第2中間層
40 画素アレイ
41,42 保護層
51 X電極(電極)
52 Y電極(電極)
90 電流制御部(電流制御手段)
91 X電極選択部
92 Y電極選択部
93 電源(電流供給手段)
94 画素選択部(画素選択手段)
Claims (5)
- 光を透過させる基板上に形成され、磁化自由層と、中間層と、磁化固定層と、がこの順序で積層されたスピン注入磁化反転素子構造を有し、前記磁化固定層上に接続した一対の電極間に電流が供給され、前記磁化自由層の磁化方向を変化させることによって前記基板を透過して入射した光をその偏光方向を変化させて回折して出射する光変調素子であって、
前記磁化固定層は、同一平面上に分離した2つの磁化固定層からなり、
前記2つの磁化固定層は、互いに反平行な磁化に固定され、かつ前記磁化自由層よりも保磁力の大きい磁性体であることを特徴とする光変調素子。 - 前記2つの磁化固定層のうちの一方は、磁気交換結合膜を備えた多層構造であることを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
- 請求項1または請求項2に記載の光変調素子を用いた空間光変調器であって、
光を透過させる基板と、この基板上に2次元配列された複数の画素と、この複数の画素から1以上の画素を選択する画素選択手段と、この画素選択手段が選択した画素に所定の電流を供給する電流供給手段と、を備え、
前記画素は、前記光変調素子と、前記2つの磁化固定層上にそれぞれ接続され、前記光変調素子に電流を供給する一対の前記電極と、を有することを特徴とする空間光変調器。 - 前記配列された、前記2つの磁化固定層が同一平面上に並んだ方向に隣り合う2つの画素において、前記光変調素子の2つを、1つの同じ電極に接続される前記2つの光変調素子の磁化固定層を一体として1つの一体型素子としたことを特徴とする請求項3に記載の空間光変調器。
- 前記複数の画素のそれぞれが複数の光変調素子を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の空間光変調器。
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