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JP5579031B2 - コンクリート構造物のひび割れ補修方法及びコンクリート構造物 - Google Patents
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Description

この発明は、コンクリート構造物及びコンクリート構造物のひび割れ補修方法に関する。
現在用いられている大半の構造物にコンクリートが用いられており、適切な配慮の下に工事がなされている。しかし、コンクリートはその材料強度を超える過度の引張応力、セメントの水和反応に伴う温度応力及び収縮に伴う引張応力によりひび割れが発生し、その完全な防止は非常に困難である。ひび割れはコンクリートの強度低下や気密性の低下等の直接的な劣化だけでなく、僅かなひび割れであっても空気中の炭酸ガスや酸性雨、あるいは塩分等が躯体に入り込み易くなることで、中性化や塩害等による劣化を促進し、鉄筋の錆を誘発することで早期劣化の原因となる。ひび割れによるコンクリートの早期劣化は、構造物の耐久性、安全性を低下させ、構造物の耐用年数を短いものにしてしまう。
そのため、コンクリート構造物に対して定期的な検査をしてひび割れを補修する必要がある。ひび割れ検査としては、コンクリート構造物の表面に現れているひび割れを目視により確認し、そのひび割れをコンクリート構造物の外部から直接に補修する方法がある。しかし、このような方法によるとコンクリート構造物の内部に発生しているひび割れを検出して補修することができない。また、ひび割れ検査のほとんどが人の手に頼っているのが現状であり、また検査は目視に頼るものが多く、検査の信頼性は確実とはいえない。また、核廃棄物処理施設や原子力発電所の壁面等は、施設の使用期間中には補修作業はおろか検査すらできない場合がある。
特許文献1には、「補修剤を内部に保持する補修剤保持体を、施工時に硬化前にコンクリートに混合しておくことを特徴とするコンクリート構造物のひび割れ補修方法。」(請求項1参照。)が記載されている。この発明によると「コンクリート構造物にひび割れが発生した際に、補修剤保持体が破損したり殻が破けたりすることにより、内部から補修剤が流れ出し、毛細張力によって微細なひび割れに充填され、自己修復される。」(段落番号0005参照。)と記載されている。
特許文献2には、コンクリート躯体の内部のひびや亀裂などの割れの検出や補修を行うための管路を形成する方法について記載されている。
特開2000−145158号公報 特開2005−68877号公報
この発明は、ひび割れが発生した場所を特定しなくても、コンクリート構造物の表面及び内部に発生したひび割れを補修することのできるコンクリート構造物及びコンクリート構造物のひび割れ補修方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段として、
(1)コンクリート構造物に、補修剤が導入される開口部と前記コンクリート構造物を形成する材料が露出する内壁面とを有する管路を形成し、その後前記内壁面の表面に表面処理により形成された、前記補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域を有する中空路を形成しておき、
前記開口部から前記中空路内に前記補修剤を導入して前記コンクリート構造物に形成されたひび割れに前記補修剤を圧入することを特徴とするコンクリート構造物のひび割れ補修方法であり、
前記(1)の好ましい態様は、
(2) 前記補修剤がひび割れに圧入された後に前記補修剤を前記中空路内から排出し、
(3) 前記水分遮断領域は、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂、及び表面含浸材よりなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤で形成され、
(4) 前記補修剤は、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂であり、
(5) 前記補修剤は粘度の異なる第1補修剤と第2補修剤とを有し、前記第1補修剤と前記第2補修剤とをそれぞれ経路の異なる中空路に導入することを特徴とするコンクリート構造物のひび割れ補修方法である。
前記他の課題を解決するための手段として、
(6)補修剤が導入される開口部とコンクリート構造物を形成する材料が露出する内壁面とを有する管路における前記内壁面の表面に表面処理により前記補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域を形成することにより得られた中空路を備え、
前記水分遮断領域は、前記内壁面の表面からコンクリートの内部に向かって広がる領域を有することを特徴とするコンクリート構造物である。
前記(6)の好ましい態様は、
(7)前記水分遮断領域は、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂、及び表面含浸材よりなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤で形成されることを特徴とする。
この発明のコンクリート構造物及びそのひび割れ補修方法によると、コンクリート構造物に形成されている中空路に補修剤を導入するだけで、コンクリート構造物の表面及び内部に形成されるひび割れを補修することができるので、ひび割れ検査をする必要がない。したがって、ひび割れ検査の手間とコストを削減することができる。また、見逃し易い細かいひび割れも補修することができる。
また、この発明のコンクリート構造物及びそのひび割れ補修方法によると、コンクリート構造物に中空路が配置されているので、ひび割れ発生場所から離れた場所にある中空路の開口部から補修剤を導入してひび割れに圧入することができる。したがって、ひび割れ検査や補修が困難な場所においても離れた場所から安全にひび割れを補修することができる。
さらに、このコンクリート構造物は、コンクリート構造物を形成する材料が露出する内壁面と前記内壁面の表面に表面処理により形成される、補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域とを備えた中空路を有するので、補修剤を中空路内に長期間にわたって保持しても硬化しない。したがって、コンクリート構造物にひび割れが発生する前に中空路に補修剤を導入しておけば、ひび割れが発生した際に中空路内の補修剤が自動的にひび割れに圧入されるので、コンクリート構造物に発生したひび割れが自己修復される。
この発明のコンクリート構造物のひび割れ補修方法は、中空路内に導入された補修剤がコンクリート構造物に形成されたひび割れに圧入された後に、補修剤を中空路内から排出するので、中空路が閉塞することがなく、複数回の補修が可能である。
この発明のコンクリート構造物のひび割れ補修方法は、複数の中空路に複数の粘度を有する補修剤を導入するので、細かいひび割れ及び大きなひび割れのいずれにも補修剤を圧入することができる。その結果、コンクリート構造物の内部及び表面のひび割れを確実に補修することができる。
従来のコンクリート構造物の一つとして、例えば、ガラス管をコンクリート構造物内に埋め込む構造では、コンクリートが硬化する際にガラス管とコンクリートとの間に隙間が生じ、コンクリート構造物とガラス管との間で同時にひび割れが生じないで、ガラス管内の補修剤がひび割れに注入されないということがあった。しかし、この発明のコンクリート構造物における中空路は、内壁面の表面に表面処理により形成される、前記補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域を有するので、コンクリート構造物の内部で発生した応力によりひび割れが形成される際に、その応力が水分遮断領域に直接に伝わるので、コンクリート構造物と水分遮断領域との間で同時にひび割れが発生する。したがって、中空路に充填された補修剤を確実にひび割れに圧入できるので、ひび割れを確実に補修することができる。
図1(a)はこの発明に係るコンクリート構造物の一例であるコンクリート構造物の断面説明図である。図1(b)は、図1(a)におけるコンクリート構造物をA方向から見た場合の側面図である。 図2は、中空路の形成方法の一例を説明するための説明図である。 図3は、コンクリート構造物のひび割れ補修方法の一例を説明するための説明図である。 図4は、コンクリート構造物のひび割れ補修方法の他の一例を説明するための説明図である。 図5は、コンクリート構造物のひび割れ補修方法の別の一例を説明するための説明図であり、図5(a)はコンクリート構造物の断面説明図であり、図5(b)は、図5(a)におけるコンクリート構造物をB方向から見た場合の側面図である。 図6は、実施例の試験手順を示すフローチャートである。 図7は、他の実施例の試験手順を示すフローチャートである。 図8は、さらに別の実施例の試験手順を示すフローチャートである。
以下に、この発明に係るコンクリート構造物及びそのひび割れ補修方法について図面を参照しつつ説明する。図1(a)はこの発明に係るコンクリート構造物の一例であるコンクリート構造物の断面説明図である。図1(b)は、図1(a)におけるコンクリート構造物をA方向から見た場合の側面図である。
この実施形態のコンクリート構造物1は、補修剤が導入される第1開口部3aと補修剤が排出される第2開口部3bと、前記コンクリート構造物1を形成する材料が露出する内壁面4と、前記内壁面4の表面に表面処理により形成される、前記補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域5とを備える中空路2を有する。
前記中空路2が形成される構造物としては、RCラーメン構造の建築物における梁、柱及び壁や橋、ダム等の土木構造物等におけるひび割れが発生すると想定される構造物を挙げることができる。特に、前記中空路2は、ひび割れ検査を行い、ひび割れの補修を行うのが困難な条件下にある核廃棄物処理施設や原子力発電所等のコンクリートにより形成される梁、柱及び壁等に好適に形成される。
この実施形態のコンクリート構造物1に形成される中空路2は、コンクリート構造物1の一方の外表面に第1開口部3aを有し、コンクリート構造物1を挟んでこの開口部3aとは反対側の外表面に第2開口部3bを有する。中空路は補修剤が導入される開口部を少なくとも1つ有していればよく、開口部から導入した補修剤を排出することができる限り開口部の数は特に限定されず、一つの開口部から補修剤を導入し、同じ開口部から補修剤を排出してもよいし、一つ以上の開口部から補修剤を導入し、1つ以上の開口部から補修剤を排出してもよい。
この実施形態の中空路2は、中空円柱形状を有しており、コンクリート構造物1の軸線より一方の面方向に偏心して第1開口部3aから第2開口部3bまで直線状に配置されている。中空路が形成される場所としては、ひび割れが発生することが想定される場所であり、中空路を形成することによりコンクリート構造物に対して要求される強度等に不具合を生じない場所である限り特に限定されず、例えば、RCラーメン構造の建築物の梁においては、梁の下方面とこの下方面に最も近くに配置されている主筋との間に配置されるのが好ましい。
中空路2は、図1に示されるように1つの直線状の中空路2が配置されてもよいし、複数の中空路が平行に又はランダムに配置されてもよいし、平行に配置された複数の平行配置中空路から所定間隔離れて前記平行配置中空路に直交するようにさらに平行配置中空路が配置され、上面から見ると格子状となる配置でもよい。さらに、この実施形態の中空路2は、直線状であるが、例えば1つ又は複数の波状のパイプを並べた配置であってもよいし、1つ又は複数の樹枝状に枝分かれしたパイプを並べた配置等種々の形状及び配置を採用することができる。上記いずれの形状及び配置であっても、コンクリート構造物に形成されるひび割れに補修剤が注入されて、十分に補修ができるように配置される。
図1(b)に示すように、この実施形態の中空路2は、中空路2が延びる方向に直交する断面形状が円形であるが、補修剤を導入及び排出でき、コンクリート構造物に発生したひび割れに補修剤を圧入することができる限り特に限定されず、多角形、不定形、雲形等の種々の形状を採ることができる。また、この断面の直径は、コンクリート構造物1の種類、大きさ及び中空路2の配置等によって異なるが、通常6mm以上15mm以下である。
この実施形態の中空路2の内壁面4は、コンクリート構造物1を形成する材料が露出している。コンクリート構造物1を形成する材料は、少なくとも細骨材と粗骨材とセメントと水とにより構成されるコンクリート原料を混合し、時間の経過と共にコンクリート原料におけるセメントと水とが水和することにより得られる、少なくとも細骨材と粗骨材とセメント水和物とにより構成されるコンクリート材料である。
コンクリート原料として使用される細骨材、粗骨材、セメント、及び水の種類は、特に限定されず、コンクリート構造物を形成するのに使用される公知の原料を使用することができる。また、コンクリート原料に含まれる原料として、細骨材、粗骨材、セメント、及び水以外に、コンクリート構造物を形成するのに使用される公知の化学混和剤、流動化剤、防錆剤、凝結遅延剤等の混和剤及びフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム等の混和材等を含有してもよい。
中空路2の内壁面4に形成される水分遮断領域5は、後述する表面処理により少なくとも一部の内壁面4に形成され、内壁面4の全面に形成されるのが好ましい。水分遮断領域5は、中空路2に導入される補修剤に対してコンクリート材料に含まれるセメント水和物やその他の水分を遮断して、補修剤が硬化するのを避ける。この実施形態における水分遮断領域5は、所定の厚みを有する層状又は膜状の硬化体の形態を有し、内壁面4の表面に直接に接触している。水分遮断領域の形態は、層状及び膜状に限定されず、内壁面4の表面から内部に向かって広がる領域として形成される態様、及び内壁面4の表面から内部に向かって広がる領域と内壁面4の表面に層状又は膜状の硬化体とを組合せた態様等を採ることができる。
中空路2は、例えば次のようにして形成することができる。図2は、中空路の形成方法の一例を説明するための説明図である。
まず、コンクリート構造物を形成するのに使用される型枠にコンクリート原料を打設する際に、所定の位置に所定の直径を有する例えば鋼棒6を配置する(第一工程)。そして、コンクリート原料が硬化した後、例えば普通ポルトランドセメントを使用した場合には打設してから1日以上経過してからこの鋼棒6を引き抜く。鋼棒6が引き抜かれた跡に中空円柱状の管路7が形成される(第二工程)。鋼棒6は、コンクリート構造物から引き抜き易くするために、コンクリート原料に埋設する前に表面に剥離剤をコーティングしておくのが好ましい。このようにして、2つの開口部3a,3bとコンクリート構造物1を形成する材料が露出する内壁面4とを有する管路7が形成される。
次いで、形成された管路7にコンプレッサー等で表面処理剤9を導入して、第1開口部3a及び第2開口部3bをそれぞれ蓋体8a,8bで密閉して、表面処理剤9を管路7に所定時間保持する(第三工程)。その後、蓋体8a,8bを取り外して、第1開口部3aからコンプレッサー等で空気圧をかけて第2開口部3bより表面処理剤9を排出させる。管路7から排出されなかった表面処理剤9を乾燥させると、管路9の内壁面4の表面に水分遮断領域10が形成される(第四工程)。管路7内に表面処理剤9が保持される時間は、表面処理剤9の種類により異なるが、通常15分以上60分以下である。
表面処理剤9の種類は、中空路に導入する補修剤とコンクリートに含まれる水分とを遮断する水分遮断領域を形成させることができる限り特に限定されず、例えば、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂等の空気中の湿気で硬化する一液湿気硬化型樹脂、二液反応型のポリエステル樹脂、二液反応型のポリメタクリレート樹脂(PMMA)、及び表面含浸材等を挙げることができる。表面含浸材としては、シラン系、ケイ酸塩系、有機樹脂系、亜硝酸塩系及びこれらの混合系を挙げることができ、シラン系としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルシリコネート等を挙げることができる。これらの中でも、シラン系の表面含浸剤は、中空路の内壁面から含浸されて水分遮断領域が形成されるので、中空路の直径が小さくならず、また中空路内に長時間保持しても硬化せず、低粘度であるので、排出し易く、作業性が良好であるので好ましい。
表面処理剤として、例えば、粘度が低く、コンクリート材料に浸透し易い樹脂を使用した場合には、表面処理剤は管路7のコンクリート材料が露出する内壁面4から浸透し、内壁面4の表面から内部に向かって所定の領域において補修剤と水分とを遮断する機能を有する水分遮断領域10が形成される。粘度が比較的高い場合には、表面処理剤は内壁面4から浸透すると共に、内壁面4の表面に層状又は膜状の硬化膜として形成されるので、硬化膜の表面からコンクリートの内部に向かって所定の深さまでの所定の厚みを有する水分遮断領域10が形成される。図2においては、内壁面4の表面から内部に向かって形成された水分遮断領域10の例が示されている。
表面処理剤は、その粘度が0.5mPa・s,23℃以上10,000mPa・s,23℃以下であるのが好ましく、0.5mPa・s,23℃以上2,000mPa・s,23℃以下であるのが特に好ましい。表面処理剤の粘度が前記範囲内であると、中空路の内壁面の全面に膜厚の薄い水分遮断領域を形成し易い。
このようにして、2つの開口部3a,3bとコンクリート構造物1を形成する材料が露出する内壁面4と前記内壁面4の表面に水分遮断領域10とを有する中空路2が形成される。
以上において、管路7が鋼棒6を使用して形成される方法について説明したが、形成方法は鋼棒を使用する方法に限定されず、例えばゴムチューブを使用する方法により形成することもできる。ゴムチューブを使用して管路7を形成する方法としては、例えば、コンクリート構造物を形成するのに使用される型枠にコンクリート原料を打設する際に、所定の位置にゴムチューブを配置して、コンクリート原料の重量によりゴムチューブが潰れないようにゴムチューブ内に所定の圧力をかけ、コンクリート原料が硬化した後、例えば普通ポルトランドセメントを使用した場合には打設してから1日以上経過してからゴムチューブを引き抜く方法がある。ゴムチューブを使用すると、容易に曲がった管路を形成することができるので、例えば、梁と柱とに連通する管路を形成しやすい。
次に、前記方法等により中空路を形成しておいたコンクリート構造物のひび割れ補修方法を説明する。
(第一の実施形態)
図3は、コンクリート構造物のひび割れ補修方法の一例を説明するための説明図である。
図1に示したコンクリート構造物1と同じ構造を有するコンクリート構造物1を図3(a)に示し、このコンクリート構造物1の補修方法について説明する。まず、中空路2の第1開口部3aから補修剤11を例えばコンプレッサー13を用いて導入する。補修剤11を導入する時期は、コンクリート構造物1の表面にひび割れが発見された後、又はコンクリート構造物1にひび割れが発生すると想定される時期である。このとき、第2開口部3bは栓体12により密閉されている。中空路2内はコンプレッサー13により0.05Pa以上0.2Pa以下に保持されたまま1時間以上6時間以下の期間にわたって補修剤11が収容される(第I工程)。補修剤11が所定の圧力で所定期間にわたって中空路2内に保持されると、コンクリート構造物1に形成されたひび割れ14に補修剤11が圧入される。補修剤がひび割れに圧入されたことは、コンクリート構造物の表面に補修剤が漏出することにより確認することができる(第II工程)。なお、図3(a)〜図3(c)に示されるコンクリート構造物は、コンクリート構造物に引張り力が発生した際にひび割れが発生した例が模式的に示されている。
補修剤11は、コンクリートのひび割れに充填されて硬化し、ひび割れによるコンクリート構造物の耐力低下を防止する物質であり、例えば、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂等の空気中の湿気で硬化する一液湿気硬化型樹脂を挙げることができる。前記エポキシ樹脂がひび割れに圧入されるとコンクリート材料に含まれる水酸化カルシウム等の水和物の水分と反応して硬化する。その結果、コンクリート構造物の強度の低下及び中性化等を防止して、コンクリート構造物の耐力を維持することができる。
補修剤は、その粘度が50mPa・s,23℃以上14,000mPa・s,23℃以下であるのが好ましく、50mPa・s,23℃以上2,000mPa・s,23℃以下であるのがより好ましく、50mPa・s,23℃以上250mPa・s,23℃以下であるのが特に好ましい。補充剤の粘度が50mPa・s,23℃以上250mPa・s,23℃以下であると、中空路の直径が比較的小さくても、中空路から補修剤を排出し易いので、中空路が閉塞されることなく、繰り返し補修剤を中空路に導入することができる。また、ひび割れ幅が0.1mm程度の小さいひび割れにも補修剤を充填することができるので、ひび割れを確実に補修することができる。
次いで、補修剤11を中空路2に導入してから所定期間経過後に栓体12を取り外し、コンプレッサー13による空気圧で補修剤11を第2開口部3bから排出する(第III工程)。このとき、中空路内に残留している前記エポキシ樹脂は水分遮断領域により水分が遮断されているので、完全に硬化することがない。したがって、中空路2内に存在した補修剤11のほとんどが排出され、中空路2は閉塞されない。このようにして、コンクリート構造物1に形成されたひび割れ14は補修される。
補修剤11を中空路2に導入する時期は、例えば、コンクリート構造物1にひび割れ14が発生すると想定される時期に、例えば5年毎に定期的に補修剤11を中空路2に導入してもよいし、コンクリート構造物1の表面にひび割れ14が発見された後に不定期に補修剤11を中空路2に導入してもよい。補修剤11を中空路2から排出する時期は、ひび割れ14に補修剤11が確実に充填された後であればよい。
前記補修方法によると、補修作業を終えた後にも中空路2は閉塞していないので、さらに所定期間経過した後にコンクリート構造物1にひび割れが発生した際に、又はひび割れが発生すると想定される時期に、補修剤を中空路に導入してひび割れに圧入することにより、ひび割れを補修することができる。したがって、繰り返しひび割れを補修することができる。
(第二の実施形態)
図4は、コンクリート構造物のひび割れ補修方法の他の例を説明するための説明図である。
図1に示したコンクリート構造物1と同じ構造を有するコンクリート構造物1を図4(a)に示し、このコンクリート構造物1の補修方法について説明する。まず、第一の実施形態の補修方法と同様にして、第1開口部3aから補修剤11を導入する。補修剤11を導入する時期は、コンクリート原料を打設して硬化した後であって、ひび割れが発生していないと想定される時期である(第i工程)。中空路2内は、ひび割れが発生すると想定される時期まで、例えば数年間にわたってコンプレッサー13により0.05Pa以上0.2Pa以下に保持される。その間に、コンクリート構造物1にひび割れ14が発生し、内壁面4にも同時にひび割れ14が発生すると(第ii工程)、内壁面4に形成されたひび割れ14から補修剤11が圧入され、補修剤11はコンクリート中に含まれる水酸化カルシウム等の水和物の水分と反応して硬化する(第iii工程)。このようにして、コンクリート構造物1に形成されたひび割れ14は補修される。なお、図4(a)〜図4(c)に示されるコンクリート構造物は、コンクリート構造物に引張り力が発生した際にひび割れが発生した例が模式的に示されている。
前記補修方法によると、コンクリート構造物にひび割れが発生する前に中空路に補修剤が導入され、所定の圧力で保持されるので、コンクリート構造物にひび割れが発生すると、同時に内壁面にもひび割れが形成され、内壁面に形成されたひび割れを介して中空路内に存在する補修剤がコンクリート構造物内のひび割れに圧入される。したがって、ひび割れ検査した後に検出されたひび割れを補修するという従来の作業手順によらずに、コンクリート構造物に発生したひび割れが自己修復される。
(第三の実施形態)
図5は、コンクリート構造物のひび割れ補修方法の別の例を説明するための説明図である。図5(a)は、コンクリート構造物の断面説明図であり、図5(b)は図5(a)に示したコンクリート構造物をB方向から見た場合の側面図である。
図5(a)に示したコンクリート構造物31は、図1に示したコンクリート構造物1における中空路2と同様の中空円柱形状を有する第1中空路15を有し、第1中空路15と同様の形状を有する複数の第2中空路16,第3中空路17,第4中空路18が互いに交じり合うことなく等間隔に平行に配置されている。このように経路の異なる複数の中空路15〜18を有するコンクリート構造物31の補修方法について説明する。
まず、第一の実施形態の補修方法と同様にして、第1開口部19a、20a,21a,22aから補修剤を導入する。補修剤は、2種類の粘度の異なる第1補修剤23と第2補修剤24とを使用し、この2種類の第1補修剤23と第2補修剤24とをコンクリート構造物31に配列されている中空路15〜18に同じ粘度の補修剤が隣同士にならないように交互に導入する。例えば、第1中空路15と第3中空路17は粘度の低い第1補修剤23を導入し、第2中空路16と第4中空路18は第1補修剤23よりも粘度の高い第2補修剤24を導入する。低粘度の補修剤としては、例えば50mPa・s,23℃以上250mPa・s,23℃以下の補修剤を、高粘度の補修剤としては、例えば1500mPa・s,23℃以上14000mPa・s,23℃以下の補修剤を挙げることができる。
補修剤23,24を導入する時期は、第一の実施形態の補修方法のようにひび割れ発生後であってもよいし、第二の実施形態の補修方法のようにひび割れ発生前であってもよい。補修剤が中空路15〜18に保持される期間及び圧力等については、補修剤の種類及び補修剤を導入する時期等により異なり、上述した第一の実施形態の補修方法又は第二の実施形態の補修方法に例示される方法等により行なわれる。このようにして、コンクリート構造物31に形成されたひび割れは補修される。
前記補修方法によると、粘度の低い補修剤はひび割れ幅の小さいひび割れに充填され易く、補修剤の粘度が高くなるほどひび割れ幅の大きいひび割れに充填され易くなるところ、粘度の異なる複数の補修剤が経路の異なる複数の中空路に導入されるので、ひび割れ幅の大小によらず、すべての大きさのひび割れに補修剤を隅々まで圧入することができる。その結果、コンクリート構造物の内部及び表面のひび割れを確実に補修することができる。
前記いずれの実施形態によるひび割れ補修方法によっても、コンクリート構造物に形成されている中空路に補修剤を導入するだけで、コンクリート構造物の表面及び内部に形成されるひび割れを補修することができるので、ひび割れ検査をする必要がない。したがって、ひび割れ検査の手間とコストを削減することができる。また、見逃し易い細かいひび割れも補修することができる。
また、前記いずれの実施形態によるひび割れ補修方法も、コンクリート構造物に中空路が配置されているので、ひび割れ発生場所から離れた場所にある中空路の開口部から補修剤を導入してひび割れに圧入することができる。したがって、ひび割れ検査や補修が困難な場所、例えば核廃棄物処理施設や原子力発電所の壁面等でも離れた場所から安全にひび割れを補修することができる。
この発明に係るコンクリート構造物及びそのひび割れ補修方法は、前述した実施形態に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
以下に実施例を挙げてこの発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によってこの発明はなんら限定されない。
<ひび割れの補修による強度回復率>
図6に示す試験手順にしたがって、中空路が設けられたモルタル供試体に補修剤を注入して、ひび割れ補修前後における曲げ強度を測定した。
(モルタル供試体の作製)
コンクリートの代わりにモルタル供試体を作製し、モルタル供試体を用いて本願発明のコンクリート構造物及びそのひび割れ補修方法について評価した。セメントは、JIS R 5210に規定される普通ポルトランドセメントを用い、細骨材は豊浦硅砂を用い、セメント:細骨材=1:3(質量比)、水セメント比を72%として、セメントと細骨材と水とを練り混ぜてモルタルを作製した。このモルタルを40×40×150mmの型枠に打ち込み、中央に直径6mmの鋼棒を配置して、28日間養生を行った(第1養生)。なお、第1養生の条件は、2日間湿空養生(温度20℃、湿度90%RH)後、5日間水中養生し、その後21日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)である。
第1養生終了後に鋼棒を引き抜き、2つの開口部を有する1つの中空路が配置されたモルタル硬化体を得た。
表1に示す表面処理剤をシリンダーに充填し、モルタル硬化体に設けられた中空路の開口部からシリンダーに充填された表面処理剤を導入した。なお、表面処理剤を導入した開口部とは反対側に設けられた開口部は、パテで密閉した。シラン系表面含浸剤は30分間、一液湿気硬化型エポキシ樹脂は15分間中空路内に保持してから排出し、温度30℃の乾燥機に1日間静置して表面処理剤を乾燥させた。このようにして、中空路の内壁面の表面に水分遮断領域が形成されたモルタル供試体を実施例毎に3本づつ形成した。
Figure 0005579031
(補修剤の注入)
表2に示す補修剤をシリンダーに充填し、モルタル供試体に設けられた中空路の開口部からシリンダーに充填された補修剤を導入し、シリンダーにゴムを取り付け、常に中空路内に圧力が加わっている状態にした。なお、補修剤を導入した開口部とは反対側に設けられた開口部は、パテで密閉した。補修剤を注入後、28日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)した(第2養生)。
Figure 0005579031
(ひび割れの形成)
第2養生後に、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)にしたがって、全自動圧縮試験機を用いて曲げ試験を行い、最大荷重に達してから破壊されるまでの荷重を機械的に制御することにより、ひび割れ幅0.05mm〜0.20mmであるひび割れをモルタル供試体に形成した。最大荷重に達したときの曲げ強度を第1載荷の曲げ強度として、表3に示した。なお、表3には、モルタル共試体3本の曲げ強度の平均値を示した。
(第3養生)
上述したように、モルタル供試体にひび割れを形成した後に、促進養生を行った(第3養生)。第3養生の養生条件は、5日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)後、4時間オートクレーブ養生(温度50℃)し、20時間乾燥機(温度50℃)で養生し、その後1日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)である。
第3養生終了後、パテとシリンダーを取り外して、中空路にコンプレッサーで空気圧を送り込むことにより中空路に充填されている補修剤を排出した。
(曲げ強度試験)
補修剤を排出した後、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)にしたがって、全自動圧縮試験機を用いて曲げ試験を行い、曲げ強度を測定した。このときの測定値を第2載荷の曲げ強度として、表3に示した。なお、表3には、モルタル共試体3本の曲げ強度の平均値を示した。
ひび割れを形成する際に測定した第1載荷の曲げ強度と第3養生後に測定した第2載荷の曲げ強度とを比較して、以下の計算式にしたがって、強度回復率を算出した。結果を表3に示す。
C=(B/A)×100(%)
A:第1載荷の曲げ強度(N/mm
B:第2載荷の曲げ強度(N/mm
C:強度回復率(%))
Figure 0005579031
この発明の範囲内にある実施例1〜4のモルタル供試体は、ひび割れを補修した後に曲げ強度の回復が見られた。一方、この発明の範囲外にある、水分遮断領域を有さない比較例1のモルタル供試体の曲げ強度回復率は低かった。これは補修剤が中空路内で硬化してしまい、ひび割れに補修剤が充分に充填されなかったためであると考えられる。
<中空路の直径の変化>
図7に示す試験手順にしたがって、中空路が設けられたモルタル供試体に補修剤を注入して、補修剤を中空路に導入する前後における中空路の直径を測定した。
まず、実施例1と同様にして12本のモルタル供試体を作製した。
次いで、実施例1と同様にして第1載荷の曲げ試験を行って、モルタル供試体にひび割れを形成した。
次いで、実施例1と同様にして表4に示す補修剤を注入後、1日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)した後、中空路にコンプレッサーで空気圧を送り込むことにより中空路に充填されている補修剤を排出した。
次いで、促進養生を行った。促進養生の条件は、4日間湿空養生(温度20℃、湿度90%RH)後、4時間オートクレーブ養生(温度50℃)し、20時間乾燥機(温度50℃)で養生し、その後1日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)である。
次いで、作製したモルタル供試体のうち6本をJIS R 5201(セメントの物理試験方法)にしたがって、全自動圧縮試験機を用いて曲げ試験(第2載荷)を行い、その後、電動カッターを用いてモルタル供試体を中空路に直交する方向に4等分に切断し、それぞれの切断面における中空路の直交する2方向の直径を測定し、すべての測定値の算術平均値を中空路の直径として、表4に示した。
さらに、残りの6本のモルタル供試体について、上述した補修剤の注入から曲げ強度試験(第3載荷)及び中空路の直径測定までの作業を繰り返し、中空路の直径の平均値を表4に示した。
Figure 0005579031
直径が6mmの中空路に補修剤を導入及び排出後、所定の期間を置いて再度補修剤を導入及び排出したところ、粘度の異なる補修剤B及びCのいずれについても、中空路は閉塞されなかった。この結果から、コンクリート構造物にひび割れが発生した場合に、補修剤を中空路に導入してひび割れ補修した後に補修剤を排出することができ、中空路が閉塞されないので、繰り返しひび割れの補修ができることが示された。
<補修剤の粘度とひび割れ幅の関係>
図8に示す試験手順にしたがって、中空路が設けられたモルタル供試体に、粘度の異なる2種類の補修剤を導入して、ひび割れ幅とひび割れ補修前後における曲げ強度とを測定した。
まず、実施例1と同様にして18本のモルタル供試体を作製した。
次いで、実施例1と同様にして第1載荷の曲げ試験を行って、モルタル供試体にひび割れを形成した。最大荷重に達したときの曲げ強度を第1載荷の曲げ強度として、表5に示した。形成されたひび割れのひび割れ幅は、ひび割れが発生し始めた面のひび割れにクラックスケールをあてて測定した。
次いで、実施例1と同様にして表5に示す補修剤を注入後、1日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)した後、中空路にコンプレッサーで空気圧を送り込むことにより中空路に充填されている補修剤を排出した。
次いで、補修剤を排出した後のモルタル供試体を7日間乾燥養生(温度20℃、湿度60%RH)した。
次いで、乾燥養生した後のモルタル供試体をJIS R 5201(セメントの物理試験方法)にしたがって、全自動圧縮試験機を用いて曲げ試験(第2載荷)を行い、曲げ強度を測定した。このときの測定値を第2載荷の曲げ強度として、表5に示した。
また、実施例1と同様にして第1載荷の曲げ強度に対する第2載荷の曲げ強度の強度回復率を算出し、表5に示した。
Figure 0005579031
粘度の低い補修剤Cを用いて、ひび割れ幅が0.10〜0.34(mm)の範囲内にあるひび割れを補修した場合、モルタル供試体の強度回復率は高かった。一方、補修剤Cより粘度が高い補修剤Bを用いて、ひび割れ幅が0.10〜0.36(mm)の範囲内にあるひび割れを補修した場合、ひび割れ幅の小さいモルタル供試体の強度回復率が充分ではなかった。この結果から、ひび割れ幅の小さいひび割れ程、低粘度の補修剤が充填され易く、ひび割れに補修剤が充分に充填されることにより強度回復率が高くなったと推定される。
1 コンクリート構造物
2,15,16,17,18 中空路
3a,3b,19a,19b,20a,21a,22a 開口部
4 内壁面
5,10 水分遮断領域
6 鋼棒
7 管路
8a,8b 蓋体
9 表面処理剤
11,23,24 補修剤
12 栓体
13 シリンダー
14 ひび割れ

Claims (7)

  1. コンクリート構造物に、補修剤が導入される開口部と前記コンクリート構造物を形成する材料が露出する内壁面とを有する管路を形成し、その後前記内壁面の表面に表面処理により形成された、前記補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域を有する中空路を形成しておき、
    前記開口部から前記中空路内に前記補修剤を導入して前記コンクリート構造物に形成されたひび割れに前記補修剤を圧入することを特徴とするコンクリート構造物のひび割れ補修方法。
  2. 前記補修剤がひび割れに圧入された後に前記補修剤を前記中空路内から排出することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物のひび割れ補修方法。
  3. 前記水分遮断領域は、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂、及び表面含浸材よりなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤で形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物のひび割れ補修方法。
  4. 前記補修剤は、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物のひび割れ補修方法。
  5. 前記補修剤は粘度の異なる第1補修剤と第2補修剤とを有し、前記第1補修剤と前記第2補修剤とをそれぞれ経路の異なる中空路に導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物のひび割れ補修方法。
  6. 補修剤が導入される開口部とコンクリート構造物を形成する材料が露出する内壁面とを有する管路における前記内壁面の表面に表面処理により前記補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域を形成することにより得られた中空路を備え、
    前記水分遮断領域は、前記内壁面の表面からコンクリートの内部に向かって広がる領域を有することを特徴とするコンクリート構造物。
  7. 前記水分遮断領域は、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂、及び表面含浸材よりなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤で形成されることを特徴とする請求項6に記載のコンクリート構造物。
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